説明

半PC柱とその製造方法

【発明の詳細な説明】
《産業上の利用分野》
本発明は中空な断面形状を有し、かつ柱主筋を後から配設することのできる半プレキャストコンクリート柱とその柱体を得るための製造方法に関する。
《従来の技術》
近年、鉄筋コンクリート構造物の施工効率がよく、あるいは良質なコンクリート製品が得られる等の理由で、高層建築物にもプレキャストコンクリートが使用されている。
そして、プレキャストコンクリート柱の柱・梁仕口や柱同士を軸方向に連結接続するためにプレキャストコンクリート製中空柱体を用いている場合が増えてきている。
このような中空柱体は遠心コンクリート成形機で作るのが一般的であり、型枠を回転させながら、型枠内にコンクリートを投入すると、コンクリートは遠心力によって型枠内壁面にきつく密着しながらそのまま硬化し、内部中空の柱体を得る。
上記型枠は回転させる関係上筒型が一般的であった。
《発明が解決しようとする課題》
しかし、建物の柱は断面矩形に形成されているものが普通であり、立方形に組まれた柱型枠を遠心成形機で回転しているものはあまりなく、これは遠心力に耐える強度であること及び脱型作業が困難な現実的事情によるものであった。
本発明は叙述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的はプレキャスト製中空柱体であって、他の部材との接合を容易にするほか柱主筋を後から配設できるようにした半PC柱と、これを得るための製造方法を提供するにある。
《課題を解決するための手段》
上記目的を達成するために、本発明に係る半PC柱は、遠心成形される管状の半PC柱であって、上記半PC柱の管状部分にその周方向に沿って環状に配筋されるフープ筋の互いに向かい合う対向部分相互間を繋ぐように掛け渡して中子を設けたことを特徴とする。この中子は、一対のループ筋を十字形状に配筋して形成しても良い。
また本発明に係る半PC柱の製造方法は、縦横に鉄筋を配したPC版を枠に組んで遠心成形用の外型枠を構成するとともに、互いに向かい合うその対向部分相互間を繋ぐようにして中子を掛け渡したフープ筋を、外型枠内面からの離隔位置を決めながら配置した後、外型枠を遠心コンクリート成形機に搭載して当該成形機にて回転しながらその内部にコンクリートを打ち込んで外型枠と一体化させることを特徴とする。
《作用》
遠心成形用の外型枠は鉄筋コンクリート製のPC版なので遠心コンクリート成形機の遠心力にも充分に耐え、またPC版が、遠心コンクリート成形機内に打ち込まれるコンクリートと一体化して捨て型枠になると同時に、これにより運搬時の衝撃にも十分に耐える。また、中子によって剪断耐力が向上する。さらに、フープ筋および中子を含む配筋を完了した状態で半PC柱の成形が完了するので、現場での配筋作業を少なくすることができ、現場施工性が向上する。また柱主筋の配筋の際、半PC柱の端部側に位置する中子を利用して、当該半PC柱内に後から挿通される柱主筋をこの中子に結束することなどにより、柱主筋を簡単に位置決めすることができ、柱主筋の作業性も向上する。
また、中子は、これが予め埋め込まれた半PC柱を形成する遠心成形時のコンクリートと、現場で半PC柱内に後打ちされる現場打設コンクリートとの付着性を向上させ、これらコンクリートの構造的な一体化を促進する機能を発揮する。
《実施例》
以下、本発明の好適な実施例について図面を参照して詳細に説明する。
第1図は遠心コンクリート成形機に搭載される外型枠を構成する型枠堰板に使用するPC版1を示し、このPC版1は細い鋼線を縦に正三角形状に折曲げ、この三角形が縦横に連続する立体金網2を同一平面上に展開し、その下半分にモルタル3を打設している。
立体金網2の露出頂部は上記正三角形の頂角であり、露出頂部間に鋼線4を縦横に渡設している。立体金網2の下半分が打設モルタル3の鉄筋になっている次第である。
第2図に型枠装置5の概略を示す。この型枠装置5は概ねPC版1の立体金網2が露出する面を内側にして、四角な立方体形に強固に組み、断面矩形に構成している。更に、現場での作業工程を軽減するとともに、得られる半PC柱13の強度を増す目的で、型枠装置5については第3図R>図のようにしている。
これはドーナツ状のスペーサ15を嵌入配設したフープ筋16を前出実施例の型枠装置5の内側、かつ軸方向に間欠的に配置している。
予めフープ筋16を具えた半PC柱13が得られる。
このフープ筋16には柱の中間部に配する柱主筋を拘束し、剪断耐力を増強するための中子17を配し、中子付きの半PC柱13を得る。すなわち、半PC柱13の管状部分にその周方向に沿って環状に配筋されるフープ筋16の互いに向かい合う対向部分相互間を繋ぐように掛け渡して中子17を設けて構成される。この中子17は第6図に示すように、一対のループ筋を十字形状に配筋して形成しても良い。換言すれば、井の字型に縦横に設けてもよい。
そして、半PC柱13の製造に際してはフープ筋16の四隅に断面直角三角形の角材6を通し、これを仮固定している。
仮固定の手段としては鋼線4に番線で軽く止めることでもよい。また、PC版1を四角に組む手段は、その外周に帯板を掛け回して緊結することでもよい。
然して、その側面開口部分はコンクリート打ち込み用の開口を残して閉塞する。更に型枠装置5の両側に夫々円盤7を嵌着し、第4図の如く遠心コンクリート成形機8に載せて、円盤7を回転させることにより型枠装置5が回転する。
遠心コンクリート成形機8は左右に間隔を空けて配置した回転輪9−9aを有し、一方の回転輪9はモータ10の出力軸に取り付けた駆動輪11でベルト12を介して回す。
型枠装置5の側面開口を閉塞する鉄板の中心にコンクリート圧送ホースを回転自在に連結し、型枠装置5を回転させて、更に回転速度を上げながらコンクリートを投入する。
遠心力によりコンクリートは凝集され、余剰な水は型枠の端部から流出される。高品質なコンクリートを得るために回転中に余剰水をできるだけ多く排出することが望ましい。
コンクリートがほぼ固化したならば遠心コンクリート成形機8を止め、型枠装置5の側端面を閉塞する鉄板及び角材6,円盤7を外す。第5図または第6図の如き製品が得られる。遠心力と角材6によって内部に矩形状の空間を形成した半PC柱13が出来上がる。
型枠装置5のPC版1と後打ちのコンクリート14とがPC版1の表面から突出している立体金網2の部分と相俟って強度に付着一体化する。また、中子17は、これが予め埋め込まれた半PC柱13を形成する遠心成形時のコンクリートと、現場で半PC柱13内に後打ちされる現場打設コンクリートとの付着性を向上させ、これらコンクリートの構造的な一体化を促進することができる。
そして、型枠装置5は半PC柱13を遠心成形する際の遠心成形用の外型枠を兼ねながら、そのまま半PC柱13の構成材になり、脱型する必要がない。そして、半PC柱13は現場にて所要部位に組み、その内部空間中に柱主筋を通してコンクリートを現場打ちするのである。フープ筋16と中子17が予め配されているので、現場での配筋作業の大部分を省略することができて現場作業の効率が極めて向上する効果を奏する。また柱主筋の配筋の際には、半PC柱13の端部側に位置する中子17を利用して、当該半PC柱13内に後から挿通される柱主筋をこの中子17に結束することなどにより、柱主筋を簡単に位置決めすることができ、柱配筋の作業性も向上する。
《効果》
以上詳細に説明したように、本発明によれば遠心コンクリート成形機の遠心力に充分に耐え得るPC版の使用により、密実で強度に優れた断面矩形状の中空な半PC柱を形成することができる。
また、PC版が、遠心コンクリート成形機内に打ち込まれるコンクリートと一体化する捨て型枠を兼ねており、脱型作業を伴なわないし、またフープ筋と中子が配されているので、現場での配筋作業の大部分を省略することができて現場作業の効率が極めて向上する効果を奏するとともに、フープ筋および中子が配してあるため、剪断耐力が向上し、断面積のかなり大きな半PC柱を提供することができる。
また柱主筋の配筋の際、半PC柱の端部側に位置する中子を利用して、当該半PC柱内に後から挿通される柱主筋をこの中子に結束することなどにより、柱主筋を簡単に位置決めすることができ、柱配筋の作業性の向上も図ることができる。
また、中子は、これが予め埋め込まれた半PC柱を形成する遠心成形時のコンクリートと、現場で半PC柱内に後打ちされる現場打設コンクリートとの付着性を向上させ、これらコンクリートの構造的な一体化を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
図は何れも本発明の実施例に係り、第1図はPC版を示す斜視図、第2図は第1図のPC版を矩形に組んで構成した遠心コンクリート成形機用の型枠装置を示す平面図、第3図3図は実施例に係る型枠装置を示す横断面図、第4図は第3図の型枠装置を配置した遠心コンクリート成形機の状態を示す側面図、第5図は本発明の型枠装置によって得られた本発明の半PC柱を例示する平面図、第6図は本発明の型枠装置によって得られた本発明の他の半PC柱を例示する平面図である。
1……PC版、2……立体金網
3……モルタル、4……鋼線
5……型枠装置、6……角材
7……円盤、8……遠心コンクリート成形機
9……回転輪、10……モータ
11……駆動輪、12……ベルト
13……半PC柱、14……コンクリート
15……スペーサ、16……フープ筋
17……中子

【特許請求の範囲】
【請求項1】遠心成形される管状の半PC柱であって、上記半PC柱の管状部分にその周方向に沿って環状に配筋されるフープ筋の互いに向かい合う対向部分相互間を繋ぐように掛け渡して中子を設けたことを特徴とする半PC柱。
【請求項2】前記中子が、一対のループ筋を十字形状に配筋して形成されている請求項1に記載の半PC柱。
【請求項3】縦横に鉄筋を配したPC版を枠に組んで遠心成形用の外型枠を構成するとともに、互いに向かい合うその対向部分相互間を繋ぐようにして中子を掛け渡したフープ筋を、該外型枠内面からの離隔位置を決めながら配置した後、該外型枠を遠心コンクリート成形機に搭載して該成形機にて回転しながらその内部にコンクリートを打ち込んで該外型枠と一体化させることを特徴とする半PC柱の製造方法。

【第2図】
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【第3図】
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【第5図】
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【第1図】
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【第4図】
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【第6図】
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【公告番号】特公平7−103635
【公告日】平成7年(1995)11月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−257219
【出願日】昭和63年(1988)10月14日
【公開番号】特開平2−106304
【公開日】平成2年(1990)4月18日
【出願人】(999999999)株式会社大林組
【参考文献】
【文献】特開昭61−290137(JP,A)
【文献】特開昭63−241252(JP,A)
【文献】実開昭49−69717(JP,U)
【文献】実開昭56−75230(JP,U)