説明

卓上型簡易漬物器

【課題】構成部品点数を減らして製造を簡素化し、かつ、漬物の食味を落とさず、漬物器でありながら卓上で用いる食器と同様に取扱いが可能な漬物器を提供する。
【解決手段】有底の中空体からなる容器本体と、容器本体の開口部を塞ぐ上蓋とからなる漬物器において、容器本体は底部と外壁部とが一体形成されてなり、上蓋は蓋部とつまみ部と重石部とが一体形成されてなり、容器本体ど重石部とは入れ子式に構成されると共に、重石部の縦方向寸法は外壁部内面の縦方向寸法より小さいことを特徴とする卓上型簡易漬物器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、特に野菜類を小片化して塩漬けや酢漬けや梅酢漬けにするのに好適な卓上型の簡易漬物器に関するものである。つまり、漬物器の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来から漬物器は種種のものが発明されてきている。重石に工夫を凝らしたものが多く、重石とする合成樹脂製の容器に砂や水を詰めることにより、重石の重さを漬物とする野菜の種類や量に適合させることに主眼を置くものがある。また、ばねを用いて重石とするものも発明されている。しかし、構成を簡素化し、かつ卓上型を意識したものや簡易的に漬物をつけることに配慮された発明は数えるほどである。
【0003】
今の日本社会ではなぜか、減塩の必要性が声高に叫ばれており、塩分の摂取量を減らそうとする風潮が強い。このような風潮と食の西洋化の影響で、国民の中に漬物離れの現象が起きており、自ら漬物を漬けて食べる人は減少の一途を辿っている。しかし、もともと米を主食として暮らしてきた日本人にとって漬物はなくてはならない、そしてぴったりの食材であって、漬物が食物繊維や乳酸菌を摂取する上で甚だ好ましく、食物繊維が塩分を包み込んで吸収を妨げる作用があることは、意外に知られていない。また、漬物を好む食生活を送っている人々においてすら、漬物を漬けるのは最も単純な塩漬けであっても結構手間がかかると思い込まされているふしがあり、少量の野菜を漬けこむことに適した漬物器もあまり普及していないこととあいまって、家庭で漬物を漬けこむ風習が薄れると同時に、既製品の漬物に頼りがちになってきている。
【0004】
このような状況の中で先行技術を見てみると、実用新案登録第3070913号公報のものは、卓上型を意識したものであり、材質にガラスや瀬戸物を適用することを意識したものではあるが、複数種の漬物の提供を意図した多連式ものであって、重石には圧縮バネを採用するものである。実公昭37−31498号公報のものは、容器本体と重石と上蓋とを有するものではあるが、重石の構成から推して、卓上型を意識したものとは考えられない。実開昭54−95598号のマイクロフィルムのものは、入れ子式になってはいるが、重石の構成から推して、やはり卓上型を意識したものとは考えられない。特開平8−23877号公報のものは、構成が簡単ではあるが、重石にねじを用いている為に、簡易操作性に難点があることは否めない。特開2004−357657号公報のものは、空き瓶の利用を意識したものであり、実質的に蓋と一体の重石を有してはいるものの、あくまで重石はバネから成るものである。
【特許文献1】実用新案登録第3070913号公報
【特許文献2】実公昭37−31498号公報
【特許文献3】実開昭54−95598号のマイクロフィルム
【特許文献4】特開平8−23877号公報
【特許文献5】特開2004−357657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その目的とするところは、誰でも簡単に漬物を作ることができると共に、構成要素をたった2つに絞ることにより、洗浄が手軽で清潔感に溢れ、卓上に置いて利用するのに適した漬物器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の卓上型簡易漬物器は上記課題を解決するために、有底の中空体からなる容器本体と、容器本体の開口部を塞ぐ上蓋とからなる漬物器において、容器本体は底部と外壁部とが一体形成されてなり、上蓋は蓋部とつまみ部と重石部とが一体形成されてなり、容器本体と重石部とは入れ子式に構成されると共に、重石部の縦方向寸法は外壁部内面の縦方向寸法より小さいことを特徴とする。
【0007】
本発明は更に、容器本体と上蓋の材質が共にガラスであることを特徴とする。
【0008】
本発明は更に、容器本体と上蓋の材質が共に陶磁器であることを特徴とする。
【0009】
本発明は更に、容器本体と上蓋の材質が共に合成樹脂であることを特徴とする。
【0010】
本発明は更に、容器本体と上蓋の材質が共に透明又は半透明であることを特徴とする。
【0011】
本発明は更に、蓋部の裏面には、外縁部から重石部に亘って伸びる複数の溝が形成されてなることを特徴とする
【発明の効果】
【0012】
このように、たった二つの構成要素である容器本体と上蓋の重石部とが入れ子式に組合わされることにより、例えば、野菜類を刻んで塩漬け(一夜漬けや浅漬けが好適)する場合、漬け込み当初においても重石が傾くことなく均等な重石効果が得られると共に、上蓋の蓋部が容器本体の外壁部上端に接した時点で重石効果は消滅するから、過度に漬物を圧縮することがない。また、上蓋の蓋部が容器本体を覆うことにより、空気中の塵やほこりが容器本体に侵入することを防止でき、漬物を保存利用する際には衛生上も好ましい。さらに、卓上で用いても、漬物容器から直接箸で漬物を取出しながら食事をすることもできるから、漬物器そのものが取り皿の役目も兼用しうる。そして食事が終了した段階では、後片付けや洗浄も食器類と一緒に行えば良いから、取扱いが甚だ便利である。
【0013】
容器本体と上蓋の材質を共にガラス製あるいは陶磁器製とすれば重し効果が十分に得られると共に、見た目にも食器風の外観をかもし出すので、食事の際に卓上に置いて他の食器類と一緒に用いるのにも好適である。
【0014】
容器本体と上蓋の材質を共に合成樹脂製とした時に、材質によって重し効果が低い場合には成型の際に重石部に比重の高い材料を封じ込めるようにすれば良い。このように、プラスチック成型で製造することが可能であるから、量産も可能で材料費と手間に係る製造コストの大幅な低減を図ることができる。
【0015】
容器本体と上蓋の材質を共に透明又は半透明とすれば、材料の清潔感をより一層高めることができると共に、容器本体内を目視することができるため、漬物の漬かり具合や漬け汁の様子が外部から視認できる。
【0016】
蓋部の裏面に、外縁部から重石部に亘って伸びる複数の溝を形成しておけば、漬物を食事に供する時に漬け汁を抜く際、容器本体と上蓋とを手で持って傾けたり或いは逆さにすれば簡単に漬け汁のみを捨てることができる。
【0017】
これらの発明に共通することは、もともと少量の野菜類を小片化して漬け込むことを前提としているので、もしも漬け込みに失敗したとしても受ける損害が微々たるものであるから、気楽に試行錯誤することが可能で、失敗したとしてもめげてしまうリスクがほとんどないのである。このようなことから、漬け込み野菜の種類や塩加減、塩の種類、添加調味料や香辛料、呼び水の量や種類等を適宜試すのに好適であって、個々人の好みに合う漬物を見つけ出すことが甚だ容易になしうるのである。また、冷蔵庫の隅に眠っている使い残しの野菜などを無駄なく利用することが可能であって、単にサラダを作るような感覚で、漬物という伝統的な乳酸食品を一人住まいの人でも手軽に作ることができるのである。漬物の漬け方や材料の利用法等の例を書いた説明書きを容器に封入して消費者に提供すれば、漬物になじみが薄い人でも、漬物名人の域に達するのにそれほどの時間を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
有底の中空体からなる容器本体と、容器本体の開口部を塞ぐ上蓋とからなる漬物器において、容器本体は底部と外壁部とが一体形成されてなり、上蓋は蓋部とつまみ部と重石部とが一体形成されてなり、容器本体と重石部とは入れ子式に構成されると共に、重石部の縦方向寸法は外壁部内面の縦方向寸法より小さいことを特徴とする卓上型簡易漬物器。
【0019】
容器本体と上蓋の材質が共にガラスであることを特徴とする請求項1に記載される卓上型簡易漬物器。
【0020】
容器本体と上蓋の材質が共に陶磁器であることを特徴とする請求項1に記載される卓上型簡易漬物器。
【0021】
容器本体と上蓋の材質が共に合成樹脂であることを特徴とする請求項1に記載される卓上型簡易漬物器。
【0022】
容器本体と上蓋の材質が共に透明又は半透明であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載される卓上型簡易漬物器。
【0023】
蓋部の裏面には、外縁部から重石部に亘って伸びる複数の溝が形成されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載される卓上型簡易漬物器。
【実施例】
【0024】
図1はこの出願の各発明に共通な漬物器の断面図である。容器本体1は、底部3と底部3から等しい高さで立ちあがり外周部を区画する外壁部2とからなり、上方に抜ける中空部を有している。一方、上蓋4は、容器本体1の開口を塞ぐのに十分な寸法をもつ蓋部6と、指でつまんで上蓋4を上げ下ろしするのに有効なつまみ部5と、漬物に重しをかけるのに有効な重石部7とから一体構成されている。そして、外壁部2と重石部7とは入れ子式になっていると共に、重石部の縦方向寸法hは外壁部内面の縦方向寸法Hより小さく形成されている。これは、上蓋4が蓋部6を有しているから、蓋部6が外壁部2に当接した時点で、重石部7が漬物に強い重しをかけ続けることを終了することを意味する。したがって、従来の漬物器に多くありがちであった、いたずらに重しをかけ続けて漬物をつぶし、食味を低下させるといったことを防止することができるので、少量の野菜類を漬けこんだとしても美味しい漬物をこしらえる上で甚だ有効なのである。
【0025】
図1をもとに漬物器の材料について述べれば、容器本体1と上蓋4とは、ともにガラス製であることが好ましい。また、陶磁器製であっても良い。さらに、合成樹脂製であっても良い。比重が小さい合成樹脂製の場合は、重石部7に比重の大きい材料を成型時に包み込むことにより、重石としての効果を高めることができる。
【0026】
材質が透明または半透明の場合には、重石部7に外から目視できるものを包み込んでも良い。合成樹脂材料の中に包み込んだ比重の大きい材料の形状は、円形の色彩豊かな輪であったり人形等であったり、外から見て人の美感に訴えるものであれば一層好ましい。そして、各発明の材質の点に閧して、容器本体1の材料と上蓋4の材料とは、必ずしも同じでなくて良いことは自明であろう。
【0027】
図2は、この出願の請求項6に係る発明の上蓋の下面図である。上蓋4には、上蓋の外縁部から重石部7に亘って伸びる複数の溝8が形成されている。漬物を食事に供する時に漬け汁を抜く際、容器本体と上蓋とを手で持って傾けたり或いは逆さにすれば簡単に漬け汁のみを捨てることができて便利である。この例で上蓋4の外形は円形であるが、全ての発明について言えることは、上蓋4の外縁部9、重石部7及び容器本体1の上面形状はいずれも円形であることを必須とせず、楕円形や多角形形状等を排除するもので決してないことは論を待たない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この出願の発明は、たった2つの構成部材からなる漬物器であるから、製造が容易であって量産も可能である。また構成自体の独自性により、重しのかけ過ぎが自動的に阻止され、美味しい漬物を提供することができる。そしてその取扱いの簡便さから、漬物になじみの薄い人びとにも、日本古来の漬物の一端を手軽に味わってもらうことができる。そして、漬物器をまるで食器のような感覚で用いることができる。このように、この出願の発明が社会文化面に与える好影響は計り知れない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この出願の各発明に共通な漬物器の断面図である。
【図2】この出願の請求項6に係る発明の上蓋の下面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 容器本体
2 外壁部
3 底部
4 上蓋
5 つまみ部
6 蓋部
7 重石部
8 溝部
9 外縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底の中空体からなる容器本体と、容器本体の開口部を塞ぐ上蓋とからなる漬物器において、容器本体は底部と外壁部とが一体形成されてなり、上蓋は蓋部とつまみ部と重石部とが一体形成されてなり、容器本体と重石部とは入れ子式に構成されると共に、重石部の縦方向寸法は外壁部内面の縦方向寸法より小さいことを特徴とする卓上型簡易漬物器。
【請求項2】
容器本体と上蓋の材質が共にガラスであることを特徴とする請求項1に記載される卓上型簡易漬物器。
【請求項3】
容器本体と上蓋の材質が共に陶磁器であることを特徴とする請求項1に記載される卓上型簡易漬物器。
【請求項4】
容器本体と上蓋の材質が共に合成樹脂であることを特徴とする請求項1に記載される卓上型簡易漬物器。
【請求項5】
容器本体と上蓋の材質が共に透明又は半透明であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載される卓上型簡易漬物器。
【請求項6】
蓋部の裏面には、外縁部から重石部に亘って伸びる複数の溝が形成されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載される卓上型簡易漬物器。

【図1】
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【図2】
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