説明

単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッド

【課題】 本発明は、メンテナンスコストを低くすることができるとともに、スプレーコーティング層の孔隙率を改善することができる単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッドを提供する。
【解決手段】 ノズル本体とノズルリングと放電室内蓋と放電室外蓋と外固定リングと二本の線材導管とからなる。ノズル本体は、気流通孔と二つの導管孔とを備え、気流通孔は、気体進入端と気体排出端とを備える。ノズルリングは、ノズル本体の気体排出端の端面に固定されるとともに、穿孔を備える。放電室内蓋は、ノズルリングに貼りつけられるとともに、内蓋通孔を備え、放電室外蓋は放電室内蓋の蓋をするために用いられ、放電室内蓋と放電室外蓋の間には電弧放電室が形成される。外固定リングは、ノズルリングに螺合される。二本の線材導管は、二つの導管孔内に配置されるとともに、順番に連結された絶縁段と導体段と線排出ヘッドとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶射機器(Thermal Spray Equipment)に関し、特に単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
溶射機は、部品の表面加工機器の一種であり、それぞれの目的に合わせて、部品の表面に各種様々なコーティング層を吹きつけて、部品の防腐、防錆、耐磨、絶縁、熱隔離、電磁波干渉防止等の能力を強化させることができる。
【0003】
従来の溶射機には様々な種類があり、それぞれ異なる特性をもっており、使用者の異なるニーズに応じて選択することができる。例えば、フレーム溶射(Flame Spray)は、酸素と燃焼ガスを混合させて燃焼させた火炎を熱源としてスプレー材料を溶かし、さらに高圧の空気によって素早い速度で底材の表面へと吹き付けて、堆積・凝固させて、コーティング層或いは膜厚を形成させる。電気アーク溶射(Electric ARC Spray)は、異なる電極を連結させた二本の金属線を相互に接触させて電弧を生じさせ、瞬間に生じる高熱で金属線材を熔化させ、さらに、高圧空気で細かい霧状にして底材に吹き付け、堆積・凝固させて、コーティング層或いは膜厚を形成させる。
【0004】
高速フレーム溶射(High Velocity Oxy−Fuel、略称HVOF)は、酸素の混合比率を増やした時の不安定燃焼を利用し、それによって形成されたジェットフレームで、融解させた粉末を音速を超える速度で勢いよく底材表面に堆積・凝固させて、コーティング層或いは膜厚を形成させる。プラズマ溶射(Plasma Spray)は、イオン化された気体(アルゴン、水素、窒素、ヘリウム)によって生じる高熱現象を熱源とし、粉末状のスプレー材料を溶かして、気体にして吹き付け、堆積・凝固させて、コーティング層或いは膜厚を形成させる。
【0005】
前述したいくつかの溶射機のスプレーコーティング方法は、それによって形成されるスプレーコーティング層の結合強度と孔隙率が優れているものの、その表面加工温度が常に摂氏二千度以上となるため、3C製品に使用するのは適していない。従来の電気アーク溶射機の溶射温度は、摂氏80度前後まで下げることができるものの、3C製品からすると、それでもその温度は高すぎるため、形成されるスプレーコーティング層の結合強度と孔隙率が不足する。このため、台湾特許第I343838号には、超低温の表面加工スプレーコーティング作業が可能であるとともに、形成されるスプレーコーティング層の結合強度と孔隙率を向上させることができる”低温溶射機のガンヘッド”が開示されている。しかしながら、メンテナンスコストが高すぎる上、スプレーコーティング層の孔隙率が不完全であるなどの欠点があるため、さらなる改良が待たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】台湾特許第I343838号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、耐久性があり、メンテナンスがしやすくメンテナンスコストを低くすることができるとともに、スプレーコーティング層の孔隙率を改善することができる単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述及びその他の目的を達成するために、本発明による単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッドは、ノズル本体と、ノズルリングと、放電室内蓋と、放電室外蓋と、外固定リングと、二本の線材導管と、からなる。
【0009】
その内、ノズル本体は、気流通孔と、前記気流通孔両側辺にそれぞれ位置するとともに所定の角度をなす二つの導管孔とを備え、前記気流通孔は、気体進入端と気体排出端とを備える。ノズルリングは、前記ノズル本体の前記気体排出端の端面にぴったりと貼りつけて固定されるとともに、前記気流通孔と前記二つの導管孔に対応する穿孔を備える。放電室内蓋は、前記ノズルリングに貼りつけられるとともに、前記穿孔に対応する内蓋通孔を備え、放電室外蓋は、前記放電室内蓋の蓋をするために用いられ、前記放電室内蓋と前記放電室外蓋の間には、電弧放電室が形成される。外固定リングは、前記ノズルリングに螺合され、それにより、前記放電室内蓋と前記放電室外蓋を前記ノズル本体の前記気体排出端に固定される。二本の線材導管は、前記二つの導管孔内に配置されて前記電弧放電室に近い位置まで延伸するとともに、順番に連結された絶縁段と導体段と線排出ヘッドとを備える。
【0010】
一実施形態において、単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッドのノズル本体は、一体成型のベークライトからなる。
【0011】
一実施形態において、単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッドの二本の線材導管の絶縁段は、テフロン(登録商標)からなり、その導体段と線排出ヘッドは銅からなる。その内、テフロン(登録商標)からなる絶縁段は、操作者が感電する危険から守ることができ、銅からなる線排出ヘッドは、線材導管が溶射温度によって損傷した時に、単独で線排出ヘッドを交換するだけでよいため、単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッドのメンテナンスコストを大幅に下げることができる。
【0012】
一実施形態において、単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッドの放電室内蓋は、ベークライトからなり、放電室外蓋及びノズルリングと外固定リングは、アルミニウム合金からなる。その内、アルミニウム合金からなるノズルリングを、ノズル本体の気体排出端の端面にぴったりと固定することで、ノズル本体と電弧放電室を相互に隔離させることができ、ノズル本体は、電弧放電室から生じる熱による劣化が起きにくくなる。
【0013】
一実施形態において、単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッドは、更に、ノズル本体に固定されるアルミニウム合金固定片を更に備え、それにより、ガンヘッドの操作ハンドルを取り付けやすくする。また、ノズル本体の二つの導管孔の間に形成された所定の角度は、好ましくは、25度から35度の間である。
【発明の効果】
【0014】
前述した単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッドは、メンテナンスがしやすく、耐久性があって、メンテナンスコストを大幅に下げられるだけでなく、以下の効果がある。
【0015】
1、電気アーク溶射機の表面加工温度を、摂氏9から40度の間で維持させることができ、3C製品の表面加工に使用するのに適している。
【0016】
2、電気アーク溶射機のスプレーコーティング層の結合強度を、150kgf/cm以上に維持させることができる。
【0017】
3、電気アーク溶射機から作られるスプレーコーティング層の孔隙率を、0.5%〜4.5%に下げることで、更に細かいスプレーコーティング層を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好ましい実施例の単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッドの組み立てた状態を示した斜視図である。
【図2】図1のガンヘッドの分解斜視図である。
【図3】図1のガンヘッドの垂直方向の断面図である。
【図4】図1のガンヘッドの水平方向の断面図である。
【図5】図2のノズルリングを別の角度から示した斜視図である。
【図6】図2の放電室内蓋を別の角度から示した斜視図である。
【図7】図2の放電室外蓋を別の角度から示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1から図7は、本発明の好ましい実施例による単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッドを示した図である。図に示すように、本発明による単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッド10は、ノズル本体11と、ノズルリング12と、放電室内蓋13と、放電室外蓋14と、外固定リング15と、二本の線材導管16、17と、アルミニウム合金固定片18とからなる。その内、アルミニウム合金固定片18は、この単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッド10を電気アーク溶射機の操作ハンドル(図示せず)に螺合するために設けられ、それにより、操作する人が操作を行いやすくすることができる。なお、組み立てる時は、ネジ181及びワッシャー182でアルミニウム合金固定片18をノズル本体11後方に螺合する。
【0020】
図において、二本の線材導管16、17は、それぞれ、導線穿孔を備えるとともに順番に連結される絶縁段161、171、導体段162、172、線排出ヘッド163、173からなる。絶縁段161、171は、テフロン(登録商標)等の絶縁材料からなり、操作する際に、操作する人が接触するのを防ぐことができる。導体段162、172は、銅でつくることができ、それにより、操作者が感電する危険を防ぐことができる。また、線排出ヘッド163、173は、銅からつくることができ、線材導管16、17が溶射温度により損傷した時に、単独で線排出ヘッド16、17を交換するだけでよく、単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッド10のメンテナンスコストを大幅に下げることができる。
【0021】
ノズル本体11は、気流通孔111と、気流通孔111両側辺にそれぞれ位置するとともに所定の角度をなす二つの導管孔116、117とを備える。気流通孔111は、空圧機(図示せず)から圧縮気体を取りこむための気体進入端112と気体排出端113を備え、ノズル本体11の二つの導管孔116、117の間に形成される所定の角度は、好ましくは、25度から35度の間である。
【0022】
ノズルリング12は、ノズル本体11の気体排出端113の端面にぴったりと貼りつけられ、位置決め栓121をノズル本体11とノズルリング12上の位置決め孔122にそれぞれ取り付けて位置決めした後に、さらに、ネジ123でノズル本体11を固定する。ノズルリング12には、気流通孔111と二つの導管孔116、117に対応する穿孔125を設けることで、二本の線材導管16、17の延伸空間及び気流通孔111から取り込まれた圧縮気体の気流経路にすることができる。
【0023】
放電室内蓋13は、位置決め孔132を位置決め栓121に合わせるようにしてノズルリング12に貼り付けられる。また、放電室内蓋13は、ノズルリング12の穿孔125に対応する内蓋通孔135を備える。内蓋通孔135は、同様に、二本の線材導管16、17の延伸空間及び気流通孔111から取り込まれた圧縮気体の気流経路とすることができる。放電室外蓋14は、放電室内蓋13の蓋をするために用いられ、放電室内蓋13と放電室外蓋14の間には、電弧放電室141が形成され、それにより、二本の線材導管16、17に設けられた導線穿孔内で、空気圧モーター等の駆動メカニズムにより金属線材を前進させることで火花放電させるための空間を提供することができる。
【0024】
外固定リング15は、それに設けられた内ネジ山によって、外ネジ山を備えるノズルリング12に螺合され、それにより、放電室内蓋13と放電室外蓋14は、ノズル本体11の気体排出端113に固定される。二本の線材導管16、17は、ノズル本体11の二つの導管孔116、117内にそれぞれ配置され、それにより、電弧放電室141の近くの位置まで延伸させることができ、それにより、二本の線材導管16、17内に引きこまれた金属線材を電弧放電室141に進入させて火花放電を行うことができる。
【0025】
その内、ノズル本体11は、好ましくは、一体成型のベークライトからなり、放電室内蓋13は、好ましくは、ベークライトからなり、放電室外蓋14、ノズルリング12と外固定リング15は、好ましくは、アルミニウム合金からなる。
【0026】
アルミニウム合金からなるノズルリング12が、ノズル本体11の気体排出端113端面にぴったりと貼りつけられて固定されるため、ノズル本体11と電弧放電室141を相互に隔離することができ、それにより、ノズル本体11は、電弧放電室141から生じる熱による劣化が起きにくくなる。また、二本の線材導管16の設計により、損傷した線排出ヘッド163、173を単独で交換するだけでよいため、耐久性が高いだけでなく単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッド10のメンテナンスコストを大幅に下げることができる。また、実験の測定結果によると、この単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッド10を使用した電気アーク溶射機からなるスプレーコーティング層の孔隙率は、0.5%〜4.5%まで下げることができ、さらに細かいスプレーコーティング層を得ることができる。
【符号の説明】
【0027】
10 単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッド
11 ノズル本体
111 気流通孔
112 気体進入端
113 気体排出端
116、117 導管孔
12 ノズルリング
121 位置決め栓
122、132 位置決め孔
123、181 ネジ
125 穿孔
13 放電室内蓋
135 内蓋通孔
14 放電室外蓋
141 電弧放電室
15 外固定リング
16、17 線材導管
161、171 絶縁段
162、172 導体段
163、173 線排出ヘッド
18 アルミニウム合金固定片
182 ワッシャー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体と、ノズルリングと、放電室内蓋と、放電室外蓋と、外固定リングと、二本の線材導管とからなる単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッドであって、
ノズル本体は、気流通孔と、前記気流通孔両側辺にそれぞれ位置するとともに所定の角度をなす二つの導管孔とを備え、前記気流通孔は、気体進入端と気体排出端とを備え、
ノズルリングは、前記ノズル本体の前記気体排出端の端面にぴったりと貼りつけて固定されるとともに、前記気流通孔と前記二つの導管孔に対応する穿孔を備え、
放電室内蓋は、前記ノズルリングに貼りつけられるとともに、前記穿孔に対応する内蓋通孔を備え、
放電室外蓋は、前記放電室内蓋の蓋をするために用いられ、前記放電室内蓋と前記放電室外蓋の間には、電弧放電室が形成され、
外固定リングは、前記ノズルリングに螺合され、それにより、前記放電室内蓋と前記放電室外蓋は前記ノズル本体の前記気体排出端に固定され、
二本の線材導管は、前記二つの導管孔内に配置されて前記電弧放電室に近い位置まで延伸するとともに、順番に連結された絶縁段と導体段と線排出ヘッドとを備えることを特徴とする、単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッド。
【請求項2】
前記ノズル本体は、一体成型のベークライトからなることを特徴とする、請求項1に記載の単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッド。
【請求項3】
前記二本の線材導管の前記絶縁段は、テフロン(登録商標)からなり、前記導体段と前記線排出ヘッドは、銅からなることを特徴とする、請求項1に記載の単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッド。
【請求項4】
前記放電室内蓋は、ベークライトからなることを特徴とする、請求項1に記載の単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッド。
【請求項5】
前記放電室外蓋及び前記ノズルリングと前記外固定リングは、アルミニウム合金からなることを特徴とする、請求項1に記載の単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッド。
【請求項6】
前記単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッドは、前記ノズル本体に固定されたアルミニウム合金固定片を更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッド。
【請求項7】
前記所定の角度は、25度から35度の間であることを特徴とする、請求項1に記載の単一気孔電気アーク溶射機ガンヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−76164(P2013−76164A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−209351(P2012−209351)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【出願人】(512247577)沈家企業股▲ふん▼有限公司 (1)
【氏名又は名称原語表記】SHEN’S GLORY INC.
【住所又は居所原語表記】1F., No. 11, Ln. 221, Songjiang Rd., Zhongshan Dist., Taipei City 104, Taiwan, R.O.C.
【Fターム(参考)】