説明

単位生産システム、および総合生産システム

【課題】 生産量の増減等に応じた迅速な対応を可能とし、イニシャルコストおよびランニングコストの無駄を省くことができる単位生産システム等を提供することを課題とする。
【解決手段】 複数の製造工程の任意の1の工程に用いられる1以上の製造装置13,14と、製造装置13,14に、製造装置13,14を稼動するための用力を供給する1以上のユティリティ設備21〜28と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製品等の製造工程に用いられる製造設備を備えた単位生産システム、および総合生産システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製品等の複数の製造工程のうち、任意の1の工程に用いられる複数の製造装置(半導体製造装置)を備えた単位生産システム(製品製造システム)と、この単位生産システムを、複数の製造工程のそれぞれに適用した総合生産システム(生産ライン)とが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−180867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このような総合生産システムでは、各製造装置に、各製造装置を稼動するための用力(駆動電力、冷却水、圧縮エアー等)を供給するユティリティ設備が集約的に設けられていた。すなわち、総合生産システム内の単一のユティリティ設備から、各単位生産システムの各製造装置に用力が供給されていた(セントラル方式)。このセントラル方式は、総合生産システムがフル稼働する場合には、全体が有機的且つ効率良く機能する。しかしながら、生産量の増減等に対応させるべく、単位生産システムを増減させようとしても、増減した単位生産システムに応じてユティリティ設備を大幅に改装しなければならず、迅速な対応を図ることができなかった。
【0004】
本発明は、生産量の増減等に応じた迅速な対応を可能とし、イニシャルコストおよびランニングコストの無駄を省くことができる単位生産システム、および総合生産システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の単位生産システムは、複数の製造工程の任意の1の工程に用いられる1以上の製造装置と、製造装置に、製造装置を稼動するための用力を供給する1以上のユティリティ設備と、を備えたことを特徴とする。
この場合、ユティリティ設備は、発電設備、純水製造設備、冷却水供給設備、真空設備、圧縮空気供給設備、バルクガス供給設備、特殊材料ガス供給設備、薬液供給設備、純水回収設備、排水処理設備、廃液回収設備および排気処理設備の少なくとも1の設備、を有することが好ましい。
【0006】
この構成によれば、製造装置は、独自に備えたユティリティ設備から供給される用力により稼動する。このため、従来のセントラル方式のように総合生産システム全体のユティリティ設備の改装を要することなく、製造工程において製造装置を容易に増減させることができる。したがって、生産量の増減等に応じて迅速な対応を図ることができる。また、量産初期段階において、増産に備えて大型の単位生産システムを予め設けておく必要がないため、イニシャルコストおよびランニングコストの無駄を省くことができる。
【0007】
これらの場合、ユティリティ設備は、設備機器と、設備機器と製造装置とを接続する設備配管と、から成ることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、製造装置と、設備機器とを配管接続することで、設備機器の設置の自由度を高めることができる。
【0009】
これらの場合、複数の製造工程が、電子デバイスを製造するものであることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、電子デバイスの生産量が増減等した場合にも、これに応じて、迅速な対応を図ることができると共に、イニシャルコストおよびランニングコストの無駄を省くことができる。
なお、電子デバイスとは、例えば、半導体製品やフラットパネルディスプレイ(液晶表示装置、有機EL装置等)等が考えられる。
【0011】
本発明の総合生産システムは、上記した単位生産システムを、複数の製造工程のそれぞれに適用したことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、上記した単位生産システムを適用することで、総合生産システム全体のユティリティ設備を設ける必要がなくなるため、製造工程において製造装置を容易に増減させることができる。したがって、生産量の増減等に応じて迅速な対応が可能になると共に、イニシャルコストおよびランニングコストの無駄を省くことができるでき、適切な生産管理に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して、本発明の単位生産システムおよび総合生産システムについて説明する。この単位生産システムは、半導体製品の複数の製造工程(前工程)のうち、任意の1の工程に用いられる1以上の半導体製造装置を備えたものであり、総合生産システムとは、この単位生産システムを、複数の製造工程のそれぞれに適用したものである。
【0014】
図1および図2は、本実施形態の総合生産システムSの一部を示したものであって、複数の単位生産システムのうち、7つの単位生産システムを示したものである。7つの単位生産システムは、材料となるシリコンウエーハ(以下「ウエーハ」という。)に付着した不純物を取り除くため、ウエーハを洗浄する第1洗浄システムSaと、ウエーハを高温スチーム等の雰囲気に晒し、ウエーハ表面にシリコン酸化膜を成長させる熱処理システムSbと、フォトリソグラフィー処理により、シリコン酸化膜に回路パターンを焼き込むためのリソグラフィーシステムScと、不純物拡散層を形成するため、リンやヒ素等の不純物を打ち込む不純物導入システムSdと、フォトリソグラフィー処理の後、不要となったレジストを除去するレジスト除去システムSeと、ウエーハ上の金属や有機物等の不純物を取り除く第2洗浄システムSfと、不純物導入システムSdにより打ち込まれた不純物を活性化すると共に、シリコン結晶に加わったダメージを回復するアニールシステムSgとから構成されている。
【0015】
各単位生産システムは、生産能力等に応じて、同種の製造装置を1台以上備えていたり、複数種の製造装置を備えていたりする。すなわち、第1洗浄システムSaは、2台のウエット洗浄装置11を備え、熱処理システムSbは、1台の酸化装置12を備え、リソグラフィーシステムScは、露光装置13と、コーター/デベロッパ装置14とを1台ずつ備え、不純物導入システムSdは、3台のイオン打ち込み装置15を備え、レジスト除去システムSeは、2台のアッシング装置16を備え、第2洗浄システムSfは、2台のウエット洗浄装置11を備え、アニールシステムSgは、1台のアニール装置17を備えている。
【0016】
なお、各単位生産システムに設置する製造装置の台数は任意であり、複数種の半導体製品を製造する場合には、必要に応じて、各単位生産システムに同種の製造装置を複数台設置するようにする。
【0017】
さらに、各単位生産システムは、各製造装置に、各製造装置を稼動するための用力(駆動電力、冷却水、圧縮エアー等)を供給する独自のユティリティ設備が設けられている。具体的には、駆動電力を供給する発電設備21と、洗浄液等として用いられる純水を供給する純水製造設備22と、冷却水を供給する冷却水供給設備23と、製造装置の各部に対しエアー吸引等を行うための真空設備24と、製造装置の各部を駆動・制御するための圧縮空気を供給する圧縮空気供給設備25と、各種パージ、キャリア、保安等のために窒素ガス等を供給するバルクガス供給設備26と、ケイ素系ガス、エッチング系ガス等の特殊ガスを供給する特殊材料ガス供給設備27と、洗浄液等となる薬液を供給する薬液供給設備28とを備えている。
【0018】
もっとも、第1洗浄システムSaおよび第2洗浄システムSfは、特殊材料ガス供給設備27を備えておらず、熱処理システムSb、不純物導入システムSdおよびアニールシステムSgは、純水製造設備22および薬液供給設備28を備えていない。
【0019】
また、図示省略したが、各単位生産システムは、上記のユティリティ設備のほか、必要に応じて、純水回収設備、排水処理設備、廃液回収設備、排気処理設備等を備えている。そして、これらの各ユティリティ設備は、設備機器と、設備機器と上記の各製造装置とを接続する設備配管と、から構成されている(図では、各設備機器を黒丸で示し、各設備配管を実線で示す。)。これによれば、製造装置と、設備機器とを配管接続することで、設備機器の設置の自由度を高めることができる。
【0020】
ところで、上記7つの単位生産システムのうち、例えばリソグラフィーシステムScが、他の6つの単位生産システムに比べ、単位生産能力当たりの購入価格および稼働費用が著しく高いものとする。また、量産初期段階において、総合生産システムS全体で求められる生産能力が、例えば「50」であるとする。この場合、量産初期段階で、リソグラフィーシステムScについては、イニシャルコストおよびランニングコストを削減すべく、必要最低限の生産能力を有するもの(上記の初期生産量「50」以上であって、最も生産能力の低いもの)を設置するようにする。例えば、生産能力「100」のリソグラフィーシステムScを設置する。
【0021】
一方、他の6つの単位生産システムについては、増産に備えて予め生産能力が高いもの(例えば「500」)を設置する(図1参照)。つまり、この場合、リソグラフィーシステムScの生産能力が、総合生産システムS全体の生産能力を規定することになる。
【0022】
その後、生産が順調に伸び、総合生産システムS全体の生産量が、「100」を超えたとする。そこで、この増産に対応すべく、生産能力「100」のリソグラフィーシステムScを、1つ増設するようにする(図2参照)。すなわち、2つのリソグラフィーシステムScを備えたことで、リソグラフィーシステムScの生産能力が「200」となり、総合生産システムS全体の生産能力も「200」となる。さらに、総合生産システムS全体の生産量が「300」、「400」と増加した場合には、順次リソグラフィーシステムScを増設するようにする。
【0023】
このように、リソグラフィーシステムScは、独自に備えたユティリティ設備から供給される用力により稼動するため、従来のセントラル方式のように総合生産システムS全体のユティリティ設備の改装を要することなく、製造工程においてリソグラフィーシステムScを容易に増設することができる。また、その後生産量が減少した場合にも、同様に、製造工程からリソグラフィーシステムScを容易に除去することができる。
【0024】
なお、本実施形態では、量産初期段階において、リソグラフィーシステムScのみ、必要最低限の生産能力を有するものを設置するようにしたが、他の単位生産システムについても、量産初期段階では必要最低限の生産能力を有するものを設置し、増産に併せて、各単位生産システムを増設するようにしてもよい。
【0025】
以上のように、本実施形態の単位生産システムおよび総合生産システムSによれば、独自のユティリティ設備を備えたリソグラフィーシステムScを増設・除去することで、生産量の増減等に応じて迅速な対応を図ることができる。また、量産初期段階において、増産に備えて大型の単位生産システムを予め設けておく必要がないため、イニシャルコストおよびランニングコストの無駄を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】量産初期段階における総合生産システムの一部概念図である。
【図2】生産量の増加に伴って、リソグラフィーシステムを増設した状態を示す総合生産システムの一部概念図である。
【符号の説明】
【0027】
11…洗浄装置 12…酸化装置 13…露光装置 14…コーター/デベロッパ装置 15…イオン打ち込み装置 16…アッシング装置 17…アニール装置 21…発電設備 22…純水製造設備 23…冷却水供給設備 24…真空設備 25…圧縮空気供給設備 26…バルクガス供給設備 27…特殊材料ガス供給設備 28…薬液供給設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製造工程の任意の1の工程に用いられる1以上の製造装置と、
前記製造装置に、前記製造装置を稼動するための用力を供給する1以上のユティリティ設備と、
を備えたことを特徴とする単位生産システム。
【請求項2】
前記ユティリティ設備は、
発電設備、純水製造設備、冷却水供給設備、真空設備、圧縮空気供給設備、バルクガス供給設備、特殊材料ガス供給設備、薬液供給設備、純水回収設備、排水処理設備、廃液回収設備および排気処理設備の少なくとも1の設備、を有することを特徴とする請求項1に記載の単位生産システム。
【請求項3】
前記ユティリティ設備は、
設備機器と、
前記設備機器と前記製造装置とを接続する設備配管と、
から成ることを特徴とする請求項1または2に記載の単位生産システム。
【請求項4】
前記複数の製造工程が、電子デバイスを製造するものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の単位生産システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の単位生産システムを、前記複数の製造工程のそれぞれに適用したことを特徴とする総合生産システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−277142(P2006−277142A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93165(P2005−93165)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】