説明

単室型燃料電池

【課題】発電に供される複数の電極対を有する単室型燃料電池において、各電極対への反応ガスの配流性を向上する技術を提供する。
【解決手段】単室型燃料電池100は、電解質10がアノード20とカソード30とに挟持された複数の発電体130を空間的に連続した筐体部110に収容している。各発電体130は、互いに同じ電極同士が対向するように配置され、各電極間にガス流路部材40が介装される。これにより、アノード20に面したアノードガス流路と、カソード30に面したカソードガス流路とが構成される。各発電体130は、反応ガスを誘導するための流路壁として機能し、各アノードガス流路に接続された各ガス供給口101から供給される水素と酸素とを含む反応ガスは、各発電体130の電極面に沿ってアノードガス流路からカソードガス流路へと誘導されてガス排出口102から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池として、単室型燃料電池が知られている。単室型燃料電池は、電解質に配置されたアノード及びカソードが、空間的に連続した単室内に配置されており、当該単室内に反応ガスとして燃料ガスと酸化ガスとがともに供給されることにより発電する(特許文献1等)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−243412号公報
【特許文献2】特開2005−174662号公報
【特許文献3】特開2006−114368号公報
【特許文献4】特開2007−30529号公報
【0004】
ところで、単室型燃料電池では、通常、単室内に設けられた複数組のアノード及びカソード(電極対)を直列または並列に接続し、各電極対ごとに発電された電気を集電して出力する。各電極対ごとの発電量を一定のレベルに保持するためにも、各電極対に対する反応ガスの配流性が向上されることが好ましい。
【0005】
しかし、一般に、燃料ガスと酸化ガスとの重さが水素と酸素のように著しく異なる場合には、燃料ガスと酸化ガスとが単室内において互いに偏在してしまい、反応ガスの配流性が低下してしまう可能性がある。また、各電極対ごとの発電量に応じて消費されるガス量は異なるため、単室内に供給された反応ガスに含まれる燃料ガスと酸化ガスとの濃度比が、各電極対の配置される領域ごとに不均一となり、さらに反応ガスの配流性が低下してしまう可能性がある。特に、燃料ガスとして水素を用いる場合には、こうした反応ガスの配流性が低いほど、局所的に反応ガス中の水素濃度が水素の爆発限界を超えてしまう可能性が高くなる。これまで、こうした問題に対して十分な工夫がなされてこなかったのが実情であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、発電に供される複数の電極対を有する単室型燃料電池において、各電極対への反応ガスの配流性を向上する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
燃料ガスと酸化ガスとの供給を受けて発電する単室型燃料電池であって、電解質に配置される第1の電極と第2の電極とを含む複数組の電極対と、前記複数組の電極対を収納する空間的に連続した単室と、前記第1の電極に面して設けられた第1のガス流路と、前記第2の電極に面して設けられた第2のガス流路と、前記第1のガス流路と前記第2のガス流路との間に設けられた前記反応ガスを誘導するための流路壁と、前記第1のガス流路に接続され、前記燃料ガスと前記酸化ガスとを反応ガスとして供給するための複数のガス供給口と、前記第2のガス流路に接続され、反応に供されることのなかったガスを含む排ガスを排出するための複数のガス排出口とを備え、前記反応ガスは、前記流路壁に沿って前記第1のガス流路から前記第2のガス流路へと誘導される、単室型燃料電池。
この単室型燃料電池によれば、各ガス供給口から各電極対ごとに第1の電極に面した第1のガス流路へと反応ガスが供給され、第1のガス流路から第2のガス流路へと反応ガスが順に誘導される。これによって、単室内における反応ガスの流れが整流され、単室内において燃料ガスと酸化ガスとが互いに偏在してしまうことを抑制できる。従って、発電に供される複数の電極対を有する単室型燃料電池において、各電極対への反応ガスの配流性を向上することができる。
【0009】
[適用例2]
適用例1に記載の単室型燃料電池であって、前記電解質は複数の電解質を含み、前記複数の電解質はそれぞれ、前記第1の電極と前記第2の電極によって挟持されて複数の発電体を構成し、前記複数の発電体のそれぞれは、前記単室内において前記1の電極同士又は前記第2の電極同士が対向し合うように並列に配置され、前記複数の発電体のそれぞれが前記流路壁として機能する、単室型燃料電池。
この単室型燃料電池によれば、各発電体の配置構成により容易に単室内にガス流路を構成でき、反応ガスの流れを整流することができる。従って、発電に供される複数の発電体を有する単室型燃料電池において、各発電体への反応ガスの配流性を向上することができる。
【0010】
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の単室型燃料電池であって、前記燃料ガスは水素を含み、前記反応ガスは、爆発下限界値以下の水素濃度で前記単室内に供給され、前記第1の電極はアノードとして機能し、前記第2の電極はカソードとして機能する、単室型燃料電池。
この単室型燃料電池によれば、各発電体への反応ガスの配流性を向上させるとともに、水素をアノードガス流路で酸素より先に消費させるため、単室内において局所的に水素濃度が水素の爆発下限界値よりも大きくなってしまうことを抑制できる。
【0011】
[適用例4]
適用例1または適用例2に記載の単室型燃料電池であって、前記燃料ガスは水素を含み、前記反応ガスは、爆発上限界値以上の水素濃度で前記単室内に供給され、前記第1の電極はカソードとして機能し、前記第2の電極はアノードとして機能する、単室型燃料電池。
この単室型燃料電池によれば、各発電体への反応ガスの配流性を向上させるとともに、酸素をカソードガス流路で水素よりも先に消費させるため、単室内において局所的に水素濃度が水素の爆発上限界値よりも小さくなってしまうことを抑制できる。
【0012】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池、その燃料電池を備えた燃料電池システム、その燃料電池システムを搭載した車両等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
A.第1実施例:
図1は本発明の一実施例としての燃料電池システムの構成を示す概略図である。この燃料電池システム1000は、水素と空気との混合ガスを反応ガスとして単室型燃料電池100(後述)に供給して、単室型燃料電池100の発電電力を出力する発電システムである。燃料電池システム1000は、単室型燃料電池100と、水素タンク200と、エアコンプレッサ300とを備える。
【0014】
水素タンク200とエアコンプレッサ300とは、配管210,310,400を介して単室型燃料電池100と接続される。具体的には、以下のような構成で接続される。水素タンク200は水素配管210と接続され、エアコンプレッサ300は空気配管310と接続される。水素配管210と空気配管310とはその下流側が混合ガス配管400の上流側の同一端部に接続される。混合ガス配管400は、下流側が複数の分岐配管402に分岐しており、各分岐配管402が、単室型燃料電池100に設けられた複数のガス供給口101に接続される。この構成により、単室型燃料電池100には、複数のガス供給口101を介して、水素タンク200に貯蔵された水素とエアコンプレッサ300が出力する高圧空気との混合ガスが供給される。
【0015】
単室型燃料電池100は、さらに、ガス排出配管410と接続されている。具体的には、単室型燃料電池100に設けられた複数のガス排出口102と、ガス排出配管410の複数の分岐配管412とが接続される。このガス排出配管410を介して、単室型燃料電池100で燃料電池反応に供されることのなかった排ガスや、燃料電池反応によって生成された水分が外部へと排出される。
【0016】
なお、水素配管210の上流側には水素遮断弁211が設けられ、その下流側には水素の圧力を調整するための圧力調整弁212が設けられている。一方、空気配管310には、高圧空気の圧力を調整するための圧力調整弁311が設けられている。また、ガス排出配管410には遮断弁414が設けられている。この燃料電池システム1000の制御部(図示せず)は、これらのバルブ211,212,311,414の開閉動作を制御することによって、混合ガスの混合比や供給量、排ガスの流れなどを制御することができる。
【0017】
ところで、水素と酸素との混合気体は点火により爆発的な燃焼を発生する可能性があることが知られている。水素が他の気体と混合された場合に、水素が爆発的に燃焼する可能性が著しく高くなる水素濃度の範囲を一般に「水素の爆発限界」と呼ぶ。単室型燃料電池100に供給される反応ガスの水素濃度は、水素の爆発限界から外れていることが好ましい。
【0018】
図2は、水素の爆発限界を説明するための説明図であり、水素濃度を示す数直線に水素の爆発限界を図示してある。この数直線上に示された2つのハッチング領域A1,A2は、水素が爆発的に燃焼する可能性が低い濃度範囲を示しており、2つのハッチング領域A1,A2に挟まれた水素濃度の範囲が水素の爆発限界を示している。本明細書では、水素の爆発限界の2つの境界値x1,x2(x1<x2)をそれぞれ、「爆発下限界値」及び「爆発上限界値」と呼ぶ。なお、一般に、空気中での水素の爆発限界は、20℃、1気圧で、爆発下限界値が約4%であり、爆発上限界値が約75%である。本実施例では、反応ガスの水素濃度を0%〜爆発下限界値x1の範囲内の濃度d1(0<d1≦x1)で単室型燃料電池100に供給する。
【0019】
図3は、単室型燃料電池100の構成を示す分解斜視図であり、単室型燃料電池100の本体部120と、本体部120を収容する筐体部110とを便宜上分離して図示した図である。図3には、説明の便宜のために、互いに直交する3軸(x軸,y軸,z軸)を図示してある。なお、紙面に向かって上下方向に沿った方向がz軸方向と一致する。
【0020】
筐体部110は略直方体の中空の部材である。筐体部110は、x−y平面と平行な図に示されない底面が開口した開口部111を有する。筐体部110は、その開口部111から本体部120を収容することができる。筐体部110のx−z平面と平行な2つの面のうちの1つの側面112には、反応ガスのための複数のガス供給口101と複数のガス排出口102とが交互に一列に設けられている。以下、この側面112を「配管接続面112」と呼ぶ。
【0021】
本体部120は、複数の発電体130と、複数のガス流路部材40と、固定基板140とを備える。複数の発電体130はそれぞれ、薄膜状の電解質10と2つの電極(アノード20とカソード30)を備える。電解質10は、アノード20及びカソード30によって挟持されている。電解質10としては、例えば、イットリア安定化ジルコニアなどのジルコニア系固体電解質を用いることができる。各発電体130は、固定基板140(後述)に設けられた配線(図示せず)により互いに電気的に接続されている。
【0022】
図4は、発電中の各発電体130における燃料電池反応及び各発電体の電気的な接続を説明するための説明図である。図4には、図3のz軸方向に沿って見たときの各発電体130が模式的に示してある。
【0023】
各発電体130のアノード20及びカソード30にはそれぞれ、電解質10と接触する面側に燃料電池反応を促進するための触媒が担持された触媒層が形成されている(図示せず)。アノード20及びカソード30に担持されている触媒は、それぞれ触媒活性が異なるため、各電極20,30に水素及び酸素の混合ガス(反応ガス)が供給されると、下記反応式(a),(b)に示す燃料電池反応が各電極20,30で促進される。
アノード:H2+O2-→H2O+2e- …(a)
カソード:1/2O2+2e-→O2- …(b)
なお、酸素イオンは、各発電体130において電解質10の内部をカソード30からアノード20へ向かって伝導する。各電極20,30は、直流電源ラインDCLに並列に接続されており、各発電体130で発電された電気が集電されて直流電源ラインDCLを介して外部負荷2000へと出力される。
【0024】
ガス流路部材40(図3)は、単室型燃料電池100に供給された反応ガスの流路として機能する部材である。ガス流路部材40は、供給された反応ガスを、その厚み方向および面に沿った方向に拡散・透過することができるガス透過性を有する板状部材である。ガス流路部材40は各発電体130の間に介装され、本体部120が筐体部110に収容されたときに、ガス供給口101又はガス排出口102と直接的に接続する。これにより、ガス流路部材40は、反応ガスを発電体130の各電極20,30の全面に渡って供給する。ガス流路部材40としては、例えば、カーボンペーパや発泡金属などの多孔質部材や、いわゆるエキスパンドメタルやパンチングメタルなどの加工部材などによって構成できる。
【0025】
固定基板140は、単室型燃料電池100の底面部を構成する板状部材であり、その面積は筐体部110の開口部111とほぼ一致する。固定基板140の面上には、各発電体130とガス流路部材40とが交互に積層された積層体150がその積層方向を図中のx軸方向として固定的に配置される。なお、本体部120が筐体部110に収容されたときに、積層体150と筐体部110の配管接続面112に対向する面113(以後、「配管対向面113」と呼ぶ)との間には空隙160が生じる。この空隙160は各ガス流路部材40の端面に面しており、各ガス流路部材40からの反応ガスが集合するガス流路として機能する。以後、この空隙160を「集合ガス流路160」と呼ぶ。なお、集合ガス流路160にもガス流路部材が配置されるものとしても良い。
【0026】
図5は、単室型燃料電池100の内部における反応ガスの流れを説明するための説明図である。図5は、図3のz軸方向に沿って単室型燃料電池100を見たときの概略断面図であり、便宜上、ガス流路部材40の図示が省略されている。なお、図5には、図3のx軸、y軸、z軸に対応するx軸、y軸、z軸が図示してある。
【0027】
図中の矢印に示すように、ガス供給口101から供給された反応ガスは、まず、アノード20に面した流路(以後、「アノードガス流路」と呼ぶ)を通過する。その後、集合ガス流路160を介してカソード30に面した流路(以後、「カソードガス流路」と呼ぶ)へと流入し、各ガス排出口102から外部へと排出される。即ち、この単室型燃料電池100では、アノードガス流路とカソードガス流路とが各発電体130によって区分けられており、各発電体130が反応ガスを誘導するための流路壁として機能していると解釈することができる。
【0028】
図6は、比較例としての単室型燃料電池100aを説明するための概略断面図である。図6は、筐体部110にガス供給口101a及びガス排出口102aが側面112,113にそれぞれ1つずつ設けられており、各発電体130が配管接続面112から離れて配置されている点以外は、ほぼ図5と同じである。
【0029】
この単室型燃料電池100aでは、図中の矢印に示すように、反応ガスは、ガス供給口101aから流入した後に各発電体130ごとのアノードガス流路またはカソードガス流路へと分流する。この単室型燃料電池100aでは、各発電体130Dとガス供給口101aとの間の距離がそれぞれ異なるため、筐体部110の内部で重量の軽い水素と重量の重い酸素との移動度の相違から互いに偏在してしまう可能性が高い。また、この単室型燃料電池100aでは、各発電体130ごとの反応ガスの消費量の差異により、各発電体130が配置された領域ごとに反応ガス中の水素と酸素との濃度比が不均一となってしまう可能性が高い。
【0030】
即ち、本実施例の単室型燃料電池100に比較して、この単室型燃料電池100aでは、各発電体130Dに対する反応ガスの配流性が低い。反応ガスの配流性が低いほど、各発電体130の発電量が不均一となり、発電効率の低下の原因となる。また、反応ガスの配流性の低下が著しい場合には、筐体部110内部において局所的に水素濃度が爆発限界を超えてしまう可能性が高くなる。
【0031】
しかし、本実施例の単室型燃料電池100(図5)の構成によれば、各発電体130ごとにガス供給口101からアノードガス流路に直接的に反応ガスが供給されるため、各発電体130に対する反応ガスの配流性が向上している。また、本実施例の単室型燃料電池100では、各発電体130ごとにガス流路の上流側(即ち、アノードガス流路)で水素が酸素より先に消費される。即ち、反応ガス中の水素濃度は、アノードガス流路において、供給時よりさらに低下することとなる。従って、本実施例のように、爆発下限界値x1より小さい水素濃度d1の反応ガスが供給される場合(図2)、反応ガス中の水素の濃度がその流路において爆発下限値x1より大きくなってしまう可能性が低減される。即ち、単室型燃料電池100の内部で水素が爆発的に燃焼してしまう危険性が低減する。
【0032】
このように、本実施例の単室型燃料電池100によれば、各発電体130への反応ガスの配流性を向上できる。また、単室型燃料電池100の内部において水素と酸素の濃度比の不均一性が増大することを抑制でき、単室型燃料電池100の内部で局所的に反応ガス中の水素濃度が爆発限界を超えてしまうことを抑制できる。
【0033】
B.第2実施例:
図7は本発明の第2実施例としての燃料電池システムの構成を示す概略図である。図7は、ガス供給口101とガス排出口102との配置が入れ替わっている点と、水素分離膜416と水素循環配管420とが追加されている点以外はほぼ図1と同じである。
【0034】
水素分離膜416はガス排出配管410と接続されている。水素分離膜416は、ガス排出配管410から流入した排ガス中の水素を分離して水素以外の他のガスを大気中へと排出する。水素分離膜416は、さらに、水素循環配管420と接続されており、排ガスから分離した水素を水素循環配管420へと誘導する。水素循環配管420は、水素配管210に接続されており、排ガスから分離された水素を供給側へと循環させる。なお、水素循環配管420には、水素の逆流を防止するための逆止弁422が設けられている。
【0035】
ところで、この燃料電池システム1000Bでは、反応ガス中の水素濃度を図2で説明した爆発上限界値x2〜100%の範囲内である濃度d2で単室型燃料電池100に供給する。このように高い水素濃度で反応ガスが供給されるため、排ガス中の水素濃度も高くなる。そのため、この第2実施例では、上述した水素の循環流路を設けて、水素の利用効率を向上させるとともに、水素利用の安全性を向上させている。
【0036】
図8は、第2実施例の単室型燃料電池100Bの内部における反応ガスの流れを説明するための説明図である。図8は、ガス供給口101とガス排出口102との配置が入れ替わっており、反応ガスがカソード30に面した流路に供給されてアノード20に面した流路から排出されている点以外は、ほぼ図5と同じである。このように、供給時の反応ガス中の水素濃度が爆発上限界値x2より高い場合には、カソード30において先に酸素を消費させることにより、反応ガスの水素濃度が、その流路において爆発上限界値x2より小さくなってしまうことを抑制できる。
【0037】
このように、第2実施例の単室型燃料電池100Bによれば、第1実施例と同様に各発電体130への反応ガスの配流性が向上されるとともに、局所的に反応ガス中の水素濃度が爆発上限界値より小さくなってしまうことを抑制できる。
【0038】
C.第3実施例:
図9(A),(B)は、本発明の第3実施例としての単室型燃料電池100Cの構成を示す概略断面図である。図9(A),(B)には、図8と同様に互いに直交する3軸(x軸、y軸、z軸)を図示してある。図9(A)は、単室型燃料電池100Cを図中のy軸方向に沿って見たときの概略断面図であり、図9(B)は、単室型燃料電池100Cをz軸方向に沿って見たときの概略断面図である。なお、この単室型燃料電池100Cは、以下に特に説明を付する点以外は、第1実施例で説明した単室型燃料電池100と同様であり、第1実施例で説明した燃料電池システム1000で用いることが可能である。
【0039】
この単室型燃料電池100Cでは、1つの薄膜状の電解質10Cの一方の面上に複数組の略長方形のアノード20およびカソード30が配置されている。具体的には、各電極20,30は、電解質10C上において、y軸方向を長辺方向として、交互にx軸方向に並列に配置されている(図9(B))。このような構成であっても、各電極20,30に水素と酸素とを含む反応ガスが供給されると、電解質10Cの内部を酸素イオンがカソード30からアノード20に向かって伝導することにより発電反応が生じる。
【0040】
電解質10Cおよび2つの電極20,30は、中空の略直方体である筐体部110に収容されるが、筐体部110には、各電極20,30の配置領域をそれぞれ区分けるための隔壁114が設けられている。筐体部110のx−z平面に平行な配管接続面112には、隔壁114によって区分けられた各電極20,30の配置領域ごとにガス供給口101及びガス排出口102が、x軸方向に交互に設けられている。なお、各隔壁114は、配管接続面112とは連接されているが、配管対向面113とは連接されていない。これによって、第1実施例の単室型燃料電池100と同様に、ガス供給口101に接続するアノードガス流路と、ガス排出口102に接続するカソードガス流路と、アノードガス流路及びカソードガス流路に接続する集合ガス流路160とが形成される。
【0041】
単室型燃料電池100Cの構成によれば、発電に供される各電極対(1組のアノード20とカソード30)に対する反応ガスの配流性を向上できる。また、局所的に反応ガス中の水素濃度が水素の爆発限界を超えてしまうことを抑制できる。
【0042】
D.第4実施例:
図10(A),(B)は、本発明の第4実施例としての単室型燃料電池100Dの構成を示す概略図である。図10(A),(B)には、図9(A),(B)と同様に、互いに直交する3軸が図示してある。図10(A)は、単室型燃料電池100Dを図中のz軸方向に沿って見たときの概略断面図であり、図10(B)は、単室型燃料電池100Dをy軸方向に沿って見たときの概略断面図である。なお、この単室型燃料電池100Dは、以下に特に説明を付する点以外は、第3実施例で説明した単室型燃料電池100Cと同様である。
【0043】
この単室型燃料電池100Dは複数の円筒形状の発電体130Dが中空の略直方体の筐体部110に収容されている。発電体130Dは、円筒形状の電解質10の内周面を被覆するようにアノード20が設けられ、その外周面を被覆するようにカソード30が設けられている。各発電体130Dは、各ガス供給口101がアノード20に囲まれ、各ガス排出口102が各発電体130Dの外周側に存在するように、筐体部110の配管接続面112に接触して配置される。即ち、各発電体130Dの内周側がアノードガス流路を構成し、外周側がカソードガス流路を構成する。なお、各発電体130Dの端部と配管対向面113との間には空隙が設けられており、集合ガス流路160を構成する。
【0044】
このような構成により、この単室型燃料電池100Dでも、各発電体130Dごとにガス供給口101から反応ガスが供給され、各発電体130Dが流路壁として機能して反応ガスの流れが整流される。これによって、各発電体130Dへの反応ガスの配流性を向上させることができる。また、局所的に反応ガス中の水素濃度が水素の爆発限界を超えてしまうことを抑制できる。
【0045】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0046】
E1.変形例1:
上記実施例において、ガス排出口102は各発電体130ごとに設けられていたが、ガス排出口102は、各発電体130ごとに設けられていなくとも良い。例えば、ガス排出口102は、配管対向面113に1つのみ設けられているものとしても良い。ただし、各発電体130の各電極20,30に対応してガス供給口101又はガス排出口102が設けられていれば、上記実施例のように、アノードガス流路にもカソードガス流路にも良好にガスを誘導することが可能となるため好ましい。
【0047】
E2.変形例2:
上記実施例において、反応ガスとして水素及び高圧空気が単室型燃料電池100に供給されていたが、他のガスが供給されるものとしても良い。例えば、水素に換えて炭化水素ガスが供給されるものとしても良い。この場合には、アノード20には、炭化水素の改質反応を促進する触媒が担持されることが好ましい。
【0048】
さらに、上記実施例の単室型燃料電池100では、燃料ガスと酸化ガスとが混合されてガス供給口101から供給されていたが、燃料ガスと酸化ガスとがそれぞれ別々の供給口から供給されるものとしても良い。
【0049】
E3.変形例3:
上記実施例において、各発電体130は、電気的に並列に接続されていたが、直列に接続されるものとしても良い。
【0050】
E4.変形例4:
上記第3実施例及び第4実施例の単室型燃料電池100C,100Dでは、第1実施例の単室型燃料電池100と同様に、水素濃度d1の反応ガスが供給される燃料電池システム1000に用いられていた。しかし、単室型燃料電池100C,100Dのガス供給口101とガス排出口102とを入れ替えることにより、第2実施例で説明した燃料電池システム1000Bに単室型燃料電池100C,100Dを用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1実施例の燃料電池システムの構成を示す概略図。
【図2】水素の爆発限界を説明するための説明図。
【図3】単室型燃料電池の概略構成を示す分解斜視図。
【図4】単室型燃料電池の各発電体の電気的な接続を示す説明図。
【図5】第1実施例の単室型燃料電池内部における反応ガスの流れを示す説明図。
【図6】比較例の単室型燃料電池内部における反応ガスの流れを示す説明図。
【図7】第2実施例の燃料電池システムの構成を示す概略図。
【図8】第2実施例の単室型燃料電池内部における反応ガスの流れを示す説明図。
【図9】第3実施例の単室型燃料電池の構成及びその内部における反応ガスの流れを示す説明図。
【図10】第4実施例の単室型燃料電池の構成及びその内部における反応ガスの流れを示す説明図。
【符号の説明】
【0052】
10,10C…電解質
20…アノード
30…カソード
40…ガス流路部材
100,100a,100B,100C,100D…単室型燃料電池
101,101a…ガス供給口
102,102a…ガス排出口
110…筐体部
111…開口部
112…配管接続面
113…配管対向面
114…隔壁
120…本体部
130,130D…発電体
140…固定基板
150…積層体
160…集合ガス流路
200…水素タンク
210…水素配管
211,212,311,414…バルブ
300…エアコンプレッサ
310…空気配管
400…混合ガス配管
402…分岐配管
410…ガス排出配管
412…分岐配管
416…水素分離膜
420…水素循環配管
422…逆止弁
1000,1000B…燃料電池システム
2000…外部負荷
A1,A2…ハッチング領域
DCL…直流電源ライン
d1,d2…水素濃度
x1,x2…水素爆発限界値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化ガスとの供給を受けて発電する単室型燃料電池であって、
電解質に配置される第1の電極と第2の電極とを含む複数組の電極対と、
前記複数組の電極対を収納する空間的に連続した単室と、
前記第1の電極に面して設けられた第1のガス流路と、
前記第2の電極に面して設けられた第2のガス流路と、
前記第1のガス流路と前記第2のガス流路との間に設けられた前記反応ガスを誘導するための流路壁と、
前記第1のガス流路に接続され、前記燃料ガスと前記酸化ガスとを反応ガスとして供給するための複数のガス供給口と、
前記第2のガス流路に接続され、反応に供されることのなかったガスを含む排ガスを排出するための複数のガス排出口と、
を備え、
前記反応ガスは、前記流路壁に沿って前記第1のガス流路から前記第2のガス流路へと誘導される、単室型燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の単室型燃料電池であって、
前記電解質は複数の電解質を含み、
前記複数の電解質はそれぞれ、前記第1の電極と前記第2の電極によって挟持されて複数の発電体を構成し、
前記複数の発電体のそれぞれは、前記単室内において前記1の電極同士又は前記第2の電極同士が対向し合うように並列に配置され、前記複数の発電体のそれぞれが前記流路壁として機能する、単室型燃料電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の単室型燃料電池であって、
前記燃料ガスは水素を含み、
前記反応ガスは、爆発下限界値以下の水素濃度で前記単室内に供給され、
前記第1の電極はアノードとして機能し、前記第2の電極はカソードとして機能する、単室型燃料電池。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の単室型燃料電池であって、
前記燃料ガスは水素を含み、
前記反応ガスは、爆発上限界値以上の水素濃度で前記単室内に供給され、
前記第1の電極はカソードとして機能し、前記第2の電極はアノードとして機能する、単室型燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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