説明

単結晶インゴットの円筒研削装置および加工方法

【課題】単結晶インゴットのマークの位置を検出する工程において、マークの認識精度を向上することができ、それによって、マーク位置検出の工程のやり直しを低減してウェーハの製造効率を向上し、マークの誤認識防止のためのオペレータによる作業をなくして操業の簡略化を図ることができる単結晶インゴットの円筒研削装置および加工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも、予め結晶線を基準にしてマークを付された前記単結晶インゴットの側面の画像を取り込むカメラと、前記取り込んだ画像を処理するコントローラーから成り、前記マークの位置を認識して記憶する画像処理手段により前記予め付されたマークの位置を認識して記憶する円筒研削装置および加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程において、単結晶インゴットの側面を円筒研削し、オリエンテーションフラットおよび/またはノッチを加工する単結晶インゴットの円筒研削装置および加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程において、一般に、チョクラルスキー引上げ法などによって製造された円柱状の単結晶インゴットは、所定の直径になるよう外周面が研削された後(円筒研削)、その外周面の所定の結晶方位にオリエンテーションフラット(以下、OFと略すこともある。)またはノッチ加工が施される。その後、単結晶インゴットをスライス加工することによって、ウェーハが製造される。
OFおよびノッチは、単結晶インゴットの特定の結晶方位の位置に加工され、例えば、ウェーハに対する半導体パターンの形成工程のような、後の工程でのウェーハに対する位置決め基準として利用される。したがって、単結晶インゴットにOFまたはノッチ加工する際、所定の結晶方位を検出し、その結晶方位に対する特定の位置へ正確に位置決めすることが必要となる。
【0003】
一般的に単結晶インゴットの結晶方位の検出はX線回折法が用いられている。すなわち、単結晶インゴットの加工装置にX線回折装置を組み込み、加工装置に支持された単結晶インゴットの側面にX線を照射し、その側面で回折したX線の強度を測定することにより単結晶インゴットの結晶方位を検出する(特許文献1、特許文献2参照)。
また、例えば、結晶方位が<111>といった、結晶軸に傾きを持たせた単結晶シリコンインゴットでは、加工するOFまたはノッチに結晶線を基準とした方向性があるため、X線回折測定の開始位置を特定する必要がある。そのため、例えば、予めオペレータにより加工する単結晶インゴットの特定の場所に光を反射する色(例えば、白のライン)をマークし、そのマークの位置をX線回折測定の開始位置とするというような方法が取られている。
【0004】
このような単結晶インゴットに付されたマークの位置を認識することができるセンサーを用いたマークの位置検出装置が開示されており(特許文献3参照)、単結晶インゴットの円筒研削およびOFまたはノッチの加工工程を自動で処理する自動円筒研削装置等において利用されている。
図4はX線回折装置と光電センサーを有した従来の円筒研削装置の一例を示した概略説明図である。
図4に示すように、単結晶インゴット105はクランプ102によってその端面を保持されている。そして、前記したような予め単結晶インゴット105に付されたマークを、光電センサー120によって認識し、その位置を記憶することができるようになっている。
また、X線回折装置109では、光電センサー120で記憶したマークの位置を開始位置にして、X線源111からX線が単結晶インゴット105の側面に向けて照射され、前記側面から回折したX線の強度をX線検知器110によって測定できるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開平3−255948号公報
【特許文献2】特開平6−89887号公報
【特許文献3】特公平6−44588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記したようなマークを検出するセンサーは、一般的に光を投光し被照射物からの反射光のレベルを検出するものであり、このようなセンサーを用いてマークの検出を行うと、単結晶インゴット105のファセット部、あるいは円筒表面の凸凹で光が反射して本来検出すべきマーク以外で検出してしまうといった、マークの誤認識をしてしまうことがあった。
【0007】
従来、単結晶インゴットに付されたマークの位置を検出する工程でのマーク位置の誤認識に対して、例えば、単結晶インゴットの外周上で2つ以上のマークを認識した場合には誤認識と判定して、この工程を停止してやり直したり、あるいは、ファセット部を有する単結晶インゴットを加工する場合には特に誤認識が発生し易いため、そのファセット部を、光を吸収する(例えば黒色)色にて予め塗りつぶす等の対策を行っていた。このことにより、加工装置の稼働率が低下してウェーハの製造効率が悪化したり、オペレータの作業増加につながっていた。
【0008】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、マークの位置を検出する工程において、マークの認識精度を向上することができ、これによって、マーク位置検出の工程のやり直しを低減してウェーハの製造効率を向上し、マークの誤認識防止のためのオペレータによる作業をなくして操業の簡略化を図ることができる単結晶インゴットの円筒研削装置および加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明によれば、少なくとも、単結晶インゴットを保持して軸周りに回転させるクランプと、前記単結晶インゴットの回転軸方向に移動可能な円筒研削ホイールと、前記単結晶インゴットにオリエンテーションフラットおよび/またはノッチ加工を行う砥石とを具備した単結晶インゴットの円筒研削装置であって、少なくとも、予め結晶線を基準にしてマークを付された前記単結晶インゴットの側面の画像を取り込むカメラと、前記取り込んだ画像を処理するコントローラーから成り、前記マークの位置を認識して記憶する画像処理手段と、前記単結晶インゴットの結晶方位をX線回折測定するためのX線回折装置とを具備し、前記画像処理手段により前記予め付されたマークの位置を記憶し、前記クランプにより前記インゴットを軸周りに回転させながら前記円筒研削ホイールを前記インゴットの回転軸方向に移動させて前記インゴットの側面を円筒研削した後、前記X線回折装置により前記インゴットの結晶方位をX線回折測定し、前記マークの位置を基準として前記測定した回折ピークから所定の結晶方位の位置を特定し、前記特定した位置を基準として任意の位置に前記砥石によりオリエンテーションフラットおよび/またはノッチ加工を行うものであることを特徴とする単結晶インゴットの円筒研削装置が提供される(請求項1)。
【0010】
このように、少なくとも、予め結晶線を基準にしてマークを付された前記単結晶インゴットの側面の画像を取り込むカメラと、前記取り込んだ画像を処理するコントローラーから成り、前記マークの位置を認識して記憶する画像処理手段と、前記単結晶インゴットの結晶方位をX線回折測定するためのX線回折装置とを具備し、前記画像処理手段により前記予め付されたマークの位置を記憶し、前記クランプにより前記インゴットを軸周りに回転させながら前記円筒研削ホイールを前記インゴットの回転軸方向に移動させて前記インゴットの側面を円筒研削した後、前記X線回折装置により前記インゴットの結晶方位をX線回折測定し、前記マークの位置を基準として前記測定した回折ピークから所定の結晶方位の位置を特定し、前記特定した位置を基準として任意の位置に前記砥石によりオリエンテーションフラットおよび/またはノッチ加工を行えば、マークの位置を検出する工程において、マークの認識精度を向上することができる。それによって、指定された任意の位置に正確にオリエンテーションフラットおよび/またはノッチ加工を行うことができる。さらに、マーク位置検出の工程のやり直しを低減してウェーハの製造効率を向上し、誤認識防止のためのオペレータによる作業をなくして操業の簡略化を図ることができる。
【0011】
このとき、前記加工される単結晶インゴットは結晶方位が<111>、<511>、<100>4°OFFのいずれかの単結晶シリコンインゴットであることができる(請求項2)。
このように、前記加工される単結晶インゴットは結晶方位が<111>、<511>、<100>から4°程度傾けた<100>4°OFF(以下、単に<100>4°OFFと記載する)のいずれかの単結晶シリコンインゴットのような、結晶軸に傾きがある単結晶シリコンインゴットであっても、本発明ではマークの認識精度を向上してマークの位置を記憶することができるので、利点が大であり、マーク位置検出の工程のやり直しを低減しつつ、また、オペレータによる事前作業をせずに、前記記憶したマークを基準にして所定の結晶方位を測定することができ、所定の位置にオリエンテーションフラットおよびノッチ加工することができる。
【0012】
また、本発明は、単結晶インゴットの端面を軸周りに回転可能なクランプにより保持して、前記クランプにより前記単結晶インゴットを軸周りに回転させながら、円筒研削ホイールを前記インゴットの側面に当接させ、前記円筒研削ホイールを前記インゴットの回転軸方向に移動させて、前記インゴットの側面を円筒研削した後、前記インゴットに砥石でオリエンテーションフラットおよび/またはノッチ加工を行う単結晶インゴットの加工方法であって、少なくとも、前記単結晶インゴットに予め結晶線を基準にしてマークを付け、前記単結晶インゴットの外側面の画像を画像処理手段に取り込んで画像処理して前記インゴットのマークの位置を認識して記憶し、前記円筒研削ホイールで前記インゴットの側面を円筒研削した後、前記インゴットの結晶方位をX線回折法により測定し、前記マークの位置を基準として前記測定した回折ピークから所定の結晶方位の位置を特定し、前記特定した位置を基準として任意の位置に前記砥石によりオリエンテーションフラットおよび/またはノッチ加工を行うことを特徴とする単結晶インゴットの加工方法を提供する(請求項3)。
【0013】
このように、少なくとも、前記単結晶インゴットに予め結晶線を基準にしてマークを付け、前記単結晶インゴットの外側面の画像を画像処理手段に取り込んで画像処理して前記インゴットのマークの位置を認識して記憶し、前記円筒研削ホイールで前記インゴットの側面を円筒研削した後、前記インゴットの結晶方位をX線回折法により測定し、前記マークの位置を基準として前記測定した回折ピークから所定の結晶方位の位置を特定し、前記特定した位置を基準として任意の位置に前記砥石によりオリエンテーションフラットおよび/またはノッチ加工を行えば、マークの位置を検出する工程において、マークの認識精度を向上することができる。それによって、指定された任意の位置に正確にオリエンテーションフラットおよび/またはノッチ加工を行うことができる。さらに、マーク位置検出の工程のやり直しを低減してウェーハの製造効率を向上し、誤認識防止のためのオペレータによる作業をなくして操業の簡略化を図ることができる。
【0014】
このとき、前記加工する単結晶インゴットは結晶方位が<111>、<511>、<100>4°OFFのいずれかの単結晶シリコンインゴットとすることができる(請求項4)。
このように、前記加工する単結晶インゴットを結晶方位が<111>、<511>、<100>4°OFFのいずれかの単結晶シリコンインゴットのような、結晶軸に傾きがある単結晶シリコンインゴットであっても、本発明ではマークの認識精度を向上して、マークの位置を記憶することができるので、マーク位置検出の工程のやり直しを低減しつつ、また、オペレータによる事前作業をせずに、前記記憶したマークを基準にして所定の結晶方位を測定することができ、所定の位置にオリエンテーションフラットおよびノッチ加工することができる。
【0015】
またこのとき、前記画像処理手段に取り込んだ画像に対し、検出範囲を限定する画像処理および/または前記マーク以外の領域を、前記マークの色と異なる色でマスクする画像処理を行うことが好ましい(請求項5)。
このように、前記画像処理手段に取り込んだ画像に対し、検出範囲を限定する画像処理および/または前記マーク以外の領域を、前記マークの色と異なる色でマスクする画像処理を行えば、マークの位置を検出する工程において、マークの認識精度をより効果的に向上することができる。それによって、マーク位置検出の工程のやり直しをより確実に低減してウェーハの製造効率を向上し、マークの誤認識防止のためのオペレータによる作業をなくして操業の簡略化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、円筒研削装置において、画像処理手段を用いて単結晶インゴットに予め付されたマークの位置を認識して記憶し、クランプによりインゴットを軸周りに回転させながら円筒研削ホイールをインゴットの回転軸方向に移動させて前記インゴットの側面を円筒研削した後、X線回折装置により前記インゴットの結晶方位をX線回折測定し、前記マークの位置を基準として前記測定した回折ピークから所定の結晶方位の位置を特定し、前記特定した位置を基準として任意の位置に砥石によりOFおよび/またはノッチ加工を行うので、マークの位置を検出する工程において、マークの認識精度を向上することができる。それによって、マーク位置検出の工程のやり直しを低減してウェーハの製造効率を向上し、マークの誤認識防止のためのオペレータによる作業をなくして操業の簡略化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従来、半導体製造工程における単結晶インゴットの円筒研削後のOFおよび/またはノッチの加工工程において、単結晶インゴットに予め付されたマークの位置を認識する際に起こる誤認識に対して、例えば、単結晶インゴットの外周上に2つ以上のマークを認識した場合には誤認識と判定して、その工程を停止してやり直したり、あるいは、ファセット部を有する単結晶インゴットを加工する場合には、そのファセット部を、光を吸収する(例えば黒色)色にて予め塗りつぶす等の対策を行っていた。そのことにより、装置の稼働率が低下してウェーハの製造効率が悪化したり、オペレータの作業増加につながっていた。
【0018】
そこで、本発明者はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、従来、一般的に使用されているマークを検出する光センサーでは、単結晶インゴット表面の凸凹部、あるいはファセット部で光が乱反射することによってマークを誤認識してしまうことが判明した。そして、その代りに単結晶インゴットの側面の画像を取り込み、その画像を画像処理してマークを認識させれば、マークの認識精度を向上することができることを見出した。すなわち、本発明では、円筒研削装置において、単結晶インゴットのマークの位置を検出する工程で、カメラにより単結晶インゴットの側面の画像を取り込み、その画像をコントローラーで画像処理してマークを認識することとした。
【0019】
図1は本発明に係る円筒研削装置の一例を示す概略図である。図1(A)はその概略前面図であり、図1(B)は概略側面説明図である。
図1(A)および(B)に示すように、本発明の円筒研削装置1は、単結晶インゴット5の端面を保持するクランプ2、単結晶インゴット5の側面を円筒研削する円筒研削ホイール3、単結晶インゴット5にOFまたはノッチを加工する砥石4を具備している。
【0020】
クランプ2は軸周りに回転可能であり、クランプ2によって保持された単結晶インゴット5を軸周りに回転できるようになっている。
加工される単結晶インゴット5には、予め結晶線を基準にして特定の色のマークが付されている。ここで、前記マークの色は特に限定されず、後述する画像処理手段にて認識できる色であれば良く、例えば黄色や白とすることができる。
またここで、前記マークの形状および大きさは特に限定されないが、例えば直径5〜10mmの円形状とすることができる。
【0021】
また、円筒研削ホイール3は、その軸周りに高速回転可能である。また、円筒研削ホイール3は軸方向に前後動自在であり、前進することで単結晶インゴット5の側面に当接して研削するようになっている。また、単結晶インゴット5の側面に沿って移動可能となっており、トラバース研削が可能となっている。そして、単結晶インゴット5をクランプ2により軸周りに回転させながら、円筒研削ホイール3を前記のようにトラバース動させ単結晶インゴット5の側面を研削することができるものとなっている。
【0022】
また同様に、砥石4もトラバース動が可能となっており、単結晶インゴット5の軸周りの回転を停止した状態で、砥石4を単結晶インゴット5の側面に当接させ、OFまたはノッチを加工することができるようになっている。
【0023】
また、本発明に係る円筒研削装置1は、図1(A)および(B)に示すように、少なくとも、単結晶インゴット5の側面の画像を取り込むカメラ6と、その画像を処理するコントローラー7とからなる画像処理手段8と、単結晶インゴット5の結晶方位をX線回折測定するためX線回折装置9とを具備している。
【0024】
ここで、前記カメラ6はCCDカメラとすることができる。CCDカメラであればより高感度な画像を取り込むことができるので好ましいが、特に限定されるわけではない。
また、カメラ6はコントローラー7に接続されており、カメラ6で取り込んだ画像データがコントローラー7に送られ、コントローラー7でその画像データを処理して、画像内のマークの有無を判定することができるようになっている。そして、前記マークの有無の判定において、マーク有りと判定された際には、その画像を取り込んだ単結晶インゴット5の位置(回転角度)を記憶しておくことができるようになっている。
【0025】
このように、カメラ6により単結晶インゴット5の側面の画像を取り込み、その画像データをコントローラー7により処理してマークの認識を行うので、マークの認識精度を向上することができるものとなっている。これによって、指定された任意の位置にOFおよび/またはノッチ加工を行うことができる。さらに、マーク位置検出の工程のやり直しを低減してウェーハの製造効率を向上し、マークの誤認識防止のためのオペレータによる作業をなくして操業の簡略化を図ることができるものとなっている。
【0026】
ここで、前記画像を取り込む領域の大きさは、単結晶インゴット5の円周方向の長さが、少なくとも60°以内とすることが望ましい。このように、前記画像を取り込む領域の大きさを、単結晶インゴット5の円周方向の長さが、少なくとも60°以内となるようにすれば、実際のマークの位置と、前記のようにしてマークの位置として記憶した単結晶インゴット5の位置との誤差が大きくなってしまうのを防ぐことができる。あるいは、取り込んだ画像をコントローラ7で処理する際、画像内で処理するエリアを複数箇所に分割してマークを認識するようにしても良い。このように、複数のエリアに分割して画像処理すれば、マークの位置の検出精度を向上することができる。
【0027】
このとき、画像処理手段に取り込んだ画像に対し、検出範囲を限定したり、マーク以外の領域を、マークの色と異なる色でマスクすることが好ましい。
このように、検出範囲を限定したり、マーク以外の領域を、マークの色と異なる色でマスクしたりして画像処理すれば、マークの位置の検出精度を向上することができる。
【0028】
具体的な方法として、例えば以下のように行うことができる。図5(A)は、画像処理手段に取り込んだ画像を示した説明図である。この取りこんだ画像の内、図5(B)に示すように、検出範囲16を限定し、該検出範囲16の領域においてのみマーク15の有無を判定するようにすれば、マークの位置の検出精度をより向上することができる。
【0029】
または、取り込んだ画像(図5(A))の内、図5(C)に示すように、マーク15の色(例えば黄色)以外の領域をマークと別の色(例えば黒)でマスクした後、取り込んだ画像の領域内においてマークの位置を検出するようにすれば、マークの認識精度をより向上することができる。
【0030】
あるいは、図5(D)に示すように、上記を組み合わせ、取り込んだ画像(図5(A))の内、マーク15の色以外の領域をマークと別の色でマスクし、検出範囲16限定し、該検出範囲16の領域においてのみマークの有無を判定することで、マークの認識精度をより向上し、マークの位置をより正確に検出することができる。
【0031】
そして、単結晶インゴット5のマークの位置を、単結晶インゴット5の円筒研削加工前に記憶しておけば、たとえ円筒研削してマークが消えてしまっても、円筒研削の後の工程で行うX線回折法による結晶方位の測定をする工程で、マークの位置を基準として使用することができる。
【0032】
また、X線回折装置9は、単結晶インゴット5の側面に向けてX線源11からX線を照射し、その側面で回折したX線の強度をX線検知器10で測定することができるようになっている。そして、単結晶インゴット5の結晶格子面へのX線入射角度と、同格子面からの回折角度とが等しくなったとき、X線検知器10で測定する強度が最大となる。このようにして得られた回折ピークから単結晶インゴット5の結晶方位を測定することができる。
【0033】
また、図1(A)に示すような、単結晶インゴット5の回転角度が所定の位置となるように制御可能な位置決め手段14を設けることができる。位置決め手段14はクランプ2と接続されており、この位置決め手段14によってクランプ2の回転角度を制御して、単結晶インゴット5が所定の位置となるように制御することができるようになっている。さらに、位置決め手段14は画像処理手段8と接続されており、画像処理手段8で記憶したマークの位置情報を位置決め手段14に送信し、位置決め手段14でX線回折測定の開始位置が画像処理手段8から送信されたマーク位置となるようにクランプ2の回転位置を制御することによって、単結晶インゴット5の位置決めを自動で行うことができる。すなわち、位置決め手段14によって、これらの一連の工程を自動化することができる。
【0034】
ここで、前記画像処理手段8のカメラ6および前記X線回折装置9は、単結晶インゴット5の側面からの距離を一定としておくことが望ましい。そのため、例えば、図1(B)に示すような、単結晶インゴット5の回転軸に垂直方向で前後動自在なテーブル12を設け、該テーブル12上にカメラ6およびX線回折装置9を設置する構成とすることができる。図1(A)および(B)に示す円筒研削装置1では、テーブル12上にX線回折装置9を設置し、カメラ6をX線回折装置9に設置する構成としている。
また、図1(B)に示すような、取り込む画像に一定の照度を与えるための照明13を設置することもできる。取り込む画像に一定の照度を与えることにより、マークの認識精度をより向上させることができる。
【0035】
このようにして特定した結晶方位の位置を基準として指定された任意の位置に砥石4を用いて、OFおよび/またはノッチを加工することができるものとなっている。
このとき、前記加工される単結晶インゴット5は結晶方位が<111>、<511>、<100>4°OFFのいずれかの単結晶シリコンインゴットであることができる。
【0036】
本発明の円筒研削装置1は、予め単結晶インゴット5に付したマークの位置を画像処理手段8により記憶することができるので、結晶方位が<111>、<511>、<100>4°OFFといった、結晶軸に傾きのある単結晶シリコンインゴットであっても、記億したマークの位置を基準にして、X線回折装置9で測定した回折ピークから所定の結晶方位を特定することができ、特定の位置にOFおよび/またはノッチ加工することができる。具体的には、記憶したマークの位置を開始位置としてX線回折測定し、その結果得られた回折ピークとマークの位置の関係(すなわち、開始時からの回折ピークの順番)から所定の結晶方位を特定できる。
【0037】
次に本発明に係る単結晶インゴットの加工方法について説明する。
図2は本発明に係る単結晶インゴットの加工工程のフロー図の一例である。
本発明の単結晶インゴットの加工方法では、図1に示すような円筒研削装置1を用いることができ、まず、単結晶インゴット5に結晶線を基準にして特定の色のマークを付ける(図2A)。ここで、前記マークの色は特に限定されず、後述する画像処理手段にて認識できる色であれば良く、例えば黄色や白とすることができる。
またここで、前記マークの形状および大きさは特に限定されないが、例えば直径5〜10mmの円形状とすることができる。
【0038】
次に、クランプ2で単結晶インゴット5の両端部を保持する。そして、単結晶インゴット5を軸周りにゆっくり回転させながら、単結晶インゴット5の側面の画像をカメラ6で取り込み、その取り込んだ画像データをコントローラー7で画像処理してマークを認識し、マークの位置を記憶する(図2B)。
このように、単結晶インゴット5の側面の画像をカメラ6で取り込み、その取り込んだ画像データをコントローラー7で画像処理してマークを認識することで、マークの認識精度を向上することができる。それによって、マーク位置検出の工程のやり直しを低減してウェーハの製造効率を向上し、マークの誤認識防止のためのオペレータによる作業をなくして操業の簡略化を図ることができる。
【0039】
次に、単結晶インゴット5をクランプ2により軸周りに回転させながら、円筒研削ホイール3をトラバース動させ単結晶インゴット5の側面を所望の直径に研削する(図2C)。
【0040】
その後、図1(A)および(B)に示すようなX線回折装置9を用いて、前記記憶したマークの位置を開始位置として、単結晶インゴット5を軸周りにゆっくり回転させながら、単結晶インゴット5の側面にX線を照射し、X線回折測定する。そして、マークの位置を基準とした回折ピークとの関係から所定の結晶方位の位置を特定する(図2D)。
このように、マークの位置を基準にしてX線回折ピークとの関係から所定の結晶方位の位置を特定すれば、単結晶インゴット5が、結晶方位が<111>、<511>、<100>4°OFFといった、結晶軸に傾きのある単結晶シリコンインゴットであっても、所定の結晶方位を特定することができ、その特定した位置を基準として指定された任意の位置に正確にOFおよび/またはノッチ加工をすることができる。
【0041】
ここで、例えば、結晶方位が<111>の単結晶シリコンインゴットの3時方向の結晶方位を特定する場合について説明する。図3に示すように、X線回折測定の結果から、単結晶シリコンインゴットの側面上で(a)〜(f)の計6本の回折ピークが得られる。これらの回折ピークは、例えば回折ピークの強弱などから3時方向の回折ピークを9時方向の回折ピークと区別して特定することはできないが、本発明のように、マークの位置からX線回折を行うようにすれば、マークの位置から1本目、3本目、5本目の回折ピークといった関係から3時方向の結晶方位を特定することができる。すなわち、(a)、(c)、(e)の中からいずれか1つを選択すれば良い。
【0042】
そして、前記のようにして特定した結晶方位の位置に砥石4を用いてOFおよび/またはノッチを加工する(図2E)。
【0043】
以上説明したように、本発明では、円筒研削装置において、画像処理手段により予め付されたマークの位置を記憶し、クランプによりインゴットを軸周りに回転させながら円筒研削ホイールをインゴットの回転軸方向に移動させて前記インゴットの側面を円筒研削した後、X線回折装置により前記インゴットの結晶方位をX線回折測定し、前記マークの位置を基準として前記測定した回折ピークから所定の結晶方位の位置を特定し、前記特定した位置に砥石によりOFおよび/またはノッチ加工を行うので、マークの位置を検出する工程において、マークの認識精度を向上することができる。それによって、マーク位置検出の工程のやり直しを低減してウェーハの製造効率を向上し、マークの誤認識防止のためのオペレータによる作業をなくして操業の簡略化を図ることができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
(実施例)
図1に示すような円筒研削装置を用い、図2に示すような加工工程で、結晶方位が<111>の単結晶シリコンインゴットの加工を行った。
まず、オペレータにより加工する単結晶シリコンインゴットに予め1つの結晶線の位置に白色のマークを付けた。そして、単結晶シリコンインゴットを円筒研削装置へ搬入し、クランプにより保持させた。
【0046】
次に、画像処理手段によりマークの位置を認識して記憶した。この際、マーク以外の領域は黒色でマスクする画像処理を行った。
次に、単結晶シリコンインゴットの側面を円筒研削し、その後、画像処理手段で記憶したマークの位置を開始位置にしてX線回折測定を行い、回折ピークから結晶方位が<110>の位置を特定した。
次に、砥石を用いて特定した位置にOFを加工した。
【0047】
このようにして、100本の単結晶シリコンインゴットの加工を行ったところ、1度もマークの位置を検出する工程をやり直しすることもなく、所望の位置にOFを加工することができた。
このことから、本発明の円筒研削装置および加工方法は、マークの位置を検出する工程において、マークの認識精度を向上することができ、それによって、マーク位置検出の工程のやり直しを低減してウェーハの製造効率を向上し、マークの誤認識防止のためのオペレータによる作業をなくして操業の簡略化を図ることができることが確認できた。
【0048】
(比較例1)
図4に示すような従来の円筒研削装置を用いて、結晶方位が<111>の単結晶シリコンインゴットの側面を円筒研削し、面方位が(110)と一致する位置にOF加工を行った。
まず、オペレータにより加工する単結晶シリコンインゴットに予め結晶線の位置に白色のマークを付けた。そして、単結晶シリコンインゴットを円筒研削装置へ搬入し、クランプにより保持させた。
【0049】
次に、光電センサーによりマークの位置を検出した。この際、単結晶シリコンインゴットのファセット部でマークの誤認識が発生してしまった。その後、この工程を繰返し行い、マークの位置を認識して記憶した。
次に、単結晶シリコンインゴットの側面を円筒研削し、光電センサーで記憶したマークの位置を開始位置にしてX線回折測定を行い、回折ピークから面方位が(110)の位置を特定した。
次に、砥石により特定した位置にOFを加工した。
このように、100本のインゴットを加工したところ、マークの位置を検出する工程でファセット部および凸凹部での誤認識が約90%以上の確率で発生し、マーク位置検出工程のやり直しが必要であった。
【0050】
(比較例2)
オペレータにより、予め単結晶シリコンインゴットのファセット部を黒色で塗りつぶした以外、比較例1と同様の条件で単結晶インゴットを円筒研削し、OFを加工した。
その結果、マークの位置を検出する工程において、誤認識は10%程度の発生に改善してマークの位置を記憶することができたが、改善は不十分である上に、オペレータによる事前のファセット部を黒色で塗りつぶし作業が必要であった。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る円筒研削装置の一例を示した概略図である。(A)円筒研削装置の概略前面図。(B)円筒研削装置の概略側面説明図。
【図2】本発明における単結晶インゴットの加工工程の一例を示すフロー図である。
【図3】本発明の単結晶インゴットの加工工程において、結晶方位が<111>の単結晶インゴットの3時方向の結晶方位を特定する際の概略説明図である。
【図4】従来の円筒研削装置の一例を示した概略側面説明図である。
【図5】本発明における画像処理の一例を示した説明図である。(A)画像処理手段に取り込んだ画像。(B)(A)の画像に検出範囲を限定した様子。(C)(A)の画像にマーク以外の領域をマークと異なる色でマスクした様子。(D)(A)の画像に検出範囲を限定し、マーク以外の領域をマークと異なる色でマスクした様子。
【符号の説明】
【0053】
1…円筒研削装置、2…クランプ、3…円筒研削ホイール、
4…砥石、5…単結晶インゴット、6…カメラ、
7…コントローラー、8…画像処理手段、9…X線回折装置、
10…X線検知器、11…X線源、12…テーブル、
13…照明、14…位置決め手段、15…マーク、16…検出範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、単結晶インゴットを保持して軸周りに回転させるクランプと、前記単結晶インゴットの回転軸方向に移動可能な円筒研削ホイールと、前記単結晶インゴットにオリエンテーションフラットおよび/またはノッチ加工を行う砥石とを具備した単結晶インゴットの円筒研削装置であって、少なくとも、予め結晶線を基準にしてマークを付された前記単結晶インゴットの側面の画像を取り込むカメラと、前記取り込んだ画像を処理するコントローラーから成り、前記マークの位置を認識して記憶する画像処理手段と、前記単結晶インゴットの結晶方位をX線回折測定するためのX線回折装置とを具備し、前記画像処理手段により前記予め付されたマークの位置を記憶し、前記クランプにより前記インゴットを軸周りに回転させながら前記円筒研削ホイールを前記インゴットの回転軸方向に移動させて前記インゴットの側面を円筒研削した後、前記X線回折装置により前記インゴットの結晶方位をX線回折測定し、前記マークの位置を基準として前記測定した回折ピークから所定の結晶方位の位置を特定し、前記特定した位置を基準として任意の位置に前記砥石によりオリエンテーションフラットおよび/またはノッチ加工を行うものであることを特徴とする単結晶インゴットの円筒研削装置。
【請求項2】
前記加工される単結晶インゴットは結晶方位が<111>、<511>、<100>4°OFFのいずれかの単結晶シリコンインゴットであることを特徴とする請求項1に記載の単結晶インゴットの円筒研削装置。
【請求項3】
単結晶インゴットの端面を軸周りに回転可能なクランプにより保持して、前記クランプにより前記単結晶インゴットを軸周りに回転させながら、円筒研削ホイールを前記インゴットの側面に当接させ、前記円筒研削ホイールを前記インゴットの回転軸方向に移動させて、前記インゴットの側面を円筒研削した後、前記インゴットに砥石でオリエンテーションフラットおよび/またはノッチ加工を行う単結晶インゴットの加工方法であって、少なくとも、前記単結晶インゴットに予め結晶線を基準にしてマークを付け、前記単結晶インゴットの外側面の画像を画像処理手段に取り込んで画像処理して前記インゴットのマークの位置を認識して記憶し、前記円筒研削ホイールで前記インゴットの側面を円筒研削した後、前記インゴットの結晶方位をX線回折法により測定し、前記マークの位置を基準として前記測定した回折ピークから所定の結晶方位の位置を特定し、前記特定した位置を基準として任意の位置に前記砥石によりオリエンテーションフラットおよび/またはノッチ加工を行うことを特徴とする単結晶インゴットの加工方法。
【請求項4】
前記加工する単結晶インゴットは結晶方位が<111>、<511>、<100>4°OFFのいずれかの単結晶シリコンインゴットとすることを特徴とする請求項3に記載の単結晶インゴットの加工方法。
【請求項5】
前記画像処理手段に取り込んだ画像に対し、検出範囲を限定する画像処理および/または前記マーク以外の領域を、前記マークの色と異なる色でマスクする画像処理を行うことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の単結晶インゴットの加工方法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−233819(P2009−233819A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85195(P2008−85195)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】