説明

単軌条運搬車における荷物の積卸し方法。

【課題】 山林も原野に敷設された軌条を走行する運搬車において、荷物が重量物であっても、重機等の設備のない途中の荷卸し場所に安定、かつ、安全に卸せるようにする。
【解決手段】 単軌条を走行する牽引車と、牽引車で牽引されて荷物を積載する台車を有する単軌条運搬車における荷物の積卸し方法であり、台車にホイスト装置を吊架するホイストポストを前後に傾動可能に起立させておき、運搬車が荷物の積卸し場所に来ると、ホイストポストを垂直に調整してその姿勢で固定するとともに、台車上の荷物をホイスト装置で吊り上げ、積卸し場所とホイストポストにスライドバーを掛け渡して荷物をホイスト装置でスライドバーを滑らせながら荷卸し場所に降ろす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜地や山林に架設される単軌条を走行する単軌条運搬車における荷物の積卸し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、パイプラインは山林、原野、砂漠等を非常に永い距離に亘って敷設される。したがって、その路線に沿ってパイプを運搬しなければならないが、その敷設地は道路が整備されていないのが通常である。このような場合の運搬手段として単軌条運搬車が使用されている。単軌条運搬車は、その軌条を支柱で支持すればよいから、地上の整備が不要であるし、山林に敷設する場合には木々の伐採をわずかな幅ですればよいから、環境破壊が少ない上に敷設コストが低いので重宝されている。
【0003】
単軌条運搬車は、下記特許文献1等で知られているように、軌条と運搬車にラックとピニオンを設けた噛合式のものが多く、急坂地でも走行できるのが特徴である。一方で、簡便な単軌条であるから、あまり大重量の荷物は積めないが、直径400mm、長さ12m位のパイプライン用の長尺パイプは積む必要がある。これ位のパイプの重量であると、人力では積込み及び積卸しができない。したがって、リフトやウインチ等の重機によることになるが、少なくとも、資材が置かれている積込み場所では重機の設備はある。しかし、路線の途中である積卸し場所では重機等の設備はないし、仮に、重機を運搬車に積載して運搬しようとしても、重量が重すぎて運搬することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−85263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、重機の設備がない山林や原野の不整地でも、比較的少人数で容易に荷物が積卸せるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、単軌条を走行する牽引車と、牽引車で牽引されて荷物を積載する台車を有する単軌条運搬車における荷物の積卸し方法であり、台車にホイスト装置を吊架するホイストポストを前後に傾動可能に起立させておき、運搬車が荷物の積卸し場所に来ると、ホイストポストを垂直に調整してその姿勢で固定するとともに、台車上の荷物をホイスト装置で吊り上げ、積卸し場所とホイストポストにスライドバーを掛け渡して荷物をホイスト装置でスライドバーを滑らせながら荷卸し場所に降ろすことを特徴とする単軌条運搬車における荷物の積卸し方法を提供したものである。
【0007】
そして、この積卸し方法において、請求項2に記載した、前後二つの台車で荷物を支持しており、ホイスト装置がそれぞれの台車に設けられる手段、請求項3に記載した、ホイストポストに係止バーを取り付け、スライドバーに複数の係止フックを設けて係止フックの一つを選択して係止バーに係止する手段、請求項4に記載した、荷物が長尺のパイプである手段を提供する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の手段によると、ホイスト装置を吊架するホイストポストは前後に傾動可能であるから、軌条が傾斜していても垂直の姿勢にでき、地面との間でスライドバーを安定して掛け渡すことができる。また、ホイスト装置による積卸しであるから、省力的である。これにおいて、台車にはホイスト装置を設備しておくだけでよいから、たいしたコスト高にはならないし、重量増にもならない。さらに、台車にはスライドバー等を積載しておくだけでよいから、荷物の重量増もあまりたいしたものにはならない。請求項2及び3の手段によると、荷物の積卸しがより容易で安全になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】単軌条運搬車の側面図である。
【図2】単軌条運搬車の平面図である。
【図3】台車とホイスト装置の関係を示す後面図である。
【図4】ホイストポストの側面図である。
【図5】荷物の積卸しの状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は直径400mm、長さ12mのパイプライン用の長尺パイプを運搬する単軌条運搬車の側面図、図2は平面図であるが、この運搬車は地上に支柱1によって架設された軌条2を案内として走行するものであり、牽引車3と荷物(パイプ)4を積む台車5とからなる。この場合の軌条2は、パイプラインの敷設路線に沿うものであり、山林、原野、砂漠といった無人地帯を長い範囲に亘って架設され、途中に急な勾配(前後傾斜)やカーブがあるのが特徴である。
【0011】
牽引車3は軌条2を上下から保持する四つの車輪を有する車輪ユニット6で支持されて軌条2上を転倒することなく走行する。車輪ユニット6と軌条2との関係は公知であるから、ここでは詳細は省略するが、要するに、軌条2にはラックが貼設されているものである。牽引車3には内燃機関型のエンジン7とミッション8が装備されており、ミッション8の出力軸は車輪ユニット6の一つの車輪を構成する駆動輪に連結されている。駆動輪にはピニオンが設けられており、ピニオンをラックに噛み合わせて走行するものである。
【0012】
したがって、急坂でも走行できるのがこの運搬車の特徴である。なお、軌条2の勾配が急になると、エンジン7の姿勢が傾き、その作動に障害が出ることもあるので、エンジン7の姿勢を水平に保つ本出願人所有に係る特許第3932013号の水平保持装置を組み込むこともある。本例の牽引車3は大きな推進力が出せるように二両連結されており、後方の牽引車3の後方には操縦者が座る座席を有する操縦車両9が連結されており、操縦車両9には後記するホイスト装置を駆動する発電機10が搭載されている。
【0013】
台車5も四つの車輪で軌条2を上下から保持する車輪ユニット11で支持されている。本例の場合、車輪ユニット11で前後軸受12を介して下部フレーム13を支持しており、下部フレーム13に水平回転可能なターンテーブル14を載せてその上に上部フレーム15を取り付け、上部フレーム15に荷物4を載せる架台16を設けたものである。そして、一つの荷物4を前後二輌の台車5で受けるようにしており、台車5と荷物4はワイヤ17で固定されている。したがって、台車5間の連結は荷物4でできることになり、殊更、連結装置は必要ない。なお、荷物4とこれを支持する台車5のセットは二両以上のこともある。
【0014】
これにより、上部フレーム15は車輪ユニット11に対して前後軸受12で前後回動が可能になり、ターンテーブル14で水平回転が可能になる。軌条2の勾配が大きいことや荷物4が長いこと及び軌条2のカーブに対処するためである。なお、二つの牽引車3、操縦車両9及び台車5は前後回動と左右回動が可能な牽引装置18で連結されている。なお、操縦車両9も車輪ユニット11で軌条2に支持されている。
【0015】
本例の台車5にはホイスト装置19が設けられている。図3は台車5の横断面図、図4は一部側面図であるが、上部フレーム15にホイスト装置19を吊架するホイストポスト20を立てている。ホイストポスト20は上部フレーム15に設けたブラケット21に支持軸22で枢支されており、ホイストポスト20はピン22の回りを前後に傾けられるようになっている。このため、ホイストポスト20とブラケット21に孔23をあけ(ブラケット20の孔23は複数設ける)、これに位置決めピン24を通して傾きを固定するようにしている。
【0016】
ホイストポスト20の傾動はブラケット21に設けられたハンドル25で行う。このため、ハンドル25とホイストポスト20とは伝動機構26で連結されており、ハンドル25を回せば、ホイストポスト20が傾動できるようになっている。この場合の伝動機構26は、逆転が不能なウォーム機構27が好ましく(ホイストポスト20が惰性で動いたりしないため)、ホイストポスト20に支持軸22を中心にしてウォームホイル27aを貼着し、ウォームホイル27aに噛み合うウォーム27bをハンドル25側に延ばしてハンドル25とベベルギア機構28で連結している。
【0017】
ホイスト装置19は電動式のもので、モータや減速機を内蔵する本体29からフック30を吊り下げたもので、ホイストポスト20に横架するジブ31に吊架されている。また、本体29にはホイスト装置19を操縦する操作盤32も吊り下げられており、操作盤32に設けられたボタン類を操作してフック30を昇降させる。なお、ホイスト装置19の電源は上記した発電機10からとる。
【0018】
以上により、運搬車は荷物4を積載して走行するが、目的地に来ると荷物4を降ろさなければならない。このとき、荷物4の重量は重いし、地面も不整地が多く、しかも、軌条2が傾斜している場合が多いら、人力で降ろすには非常に難渋するのは上記したおりである。そこで、スライドバー33を使用する。図5はスライドバー33による荷卸し状態の説明図であるが、スライドバー33は棒状のもので、走行するときには台車5に積み込んでおく。
【0019】
荷卸し場所に来ると、軌条2が傾斜している場合、まず、ハンドル25を操作してホイストポスト20を垂直にセットする。次に、荷物4のワイヤ17にフック30を引っ掛け、操作盤32を操作してホイスト装置19によって荷物4を上方まで引き上げる。次いで、スライドバー33をホイストポスト20と地面34との間に斜めに掛け渡す。このとき、スライドバー34を強固に固定するため、ホイストポスト20に係止バー35を取り付けておき、スライドバー34に設けたフック36で係止する。
【0020】
この場合、フック36は複数段に設ける。その理由は、台車5と地面34との高さは様々であるから、フック36を選択してもっとも安定した姿勢に掛け渡すためである。さらに、このとき、支柱1や台車5も地面34に対してアウトリガー37で支えてグラグラしないように固定する(アウトリガー37も台車5に積み込んで運ぶ)。なお、この作業は前後の台車5においてそれぞれに行う。
【0021】
スライドバー33を掛け渡すと、次に、フック30を徐々に降ろして荷物4をスライドバー33に擦らせながら所定の置き場所まで降ろす。このとき、置き場所を地面34に掘った窪み38にすれば、安定して降ろせる。なお、前後の台車5のフック30は同期して降下させる必要があるから、通常は二人でそれぞれの操作盤32を操作することになる。したがって、軌条運搬車の運転から荷物4の積卸しを二人の人員でできることになる。さらに、二つの操作盤32を一人で操作できるとなれば、人員は一人でもよい。
【0022】
ところで、以上は荷物4の積卸しについてのものであるが、積込みであっても同様に適用できる。積込み場所でも重機等の設備がない場合もあるから、この方法によって荷物4を台車5に積み込んでもよい。さらに、荷物4はパイプライン用の長尺パイプに限られるものではない。ただ、ある程度長尺の荷物4に対して有益であることは事実であるから、山奥の土木工事等で使用される鋼材等であってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 支柱
2 軌条
3 牽引車
4 荷物
5 台車
6 車輪ユニット
7 エンジン
8 ミッション
9 操縦車両
10 発電機
11 車輪ユニット
12 前後軸受
13 下部フレーム
14 ターンテーブル
15 上部フレーム
16 架台
17 ワイヤ
18 牽引装置
19 ホイスト装置
20 ホイストポスト
21 ブラケット
22 支持軸
23 孔
24 位置決めピン
25 ハンドル
26 伝動機構
27 ウォーム機構
27aウォームホイル
27bウォーム
28 ベベルギア機構
29 ホイスト装置の本体
30 ホイスト装置のフック
31 ホイストポストのジブ
32 操作盤
33 スライドバー
34 地面
35 係止バー
36 フック
37 アウトリガー
38 窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単軌条を走行する牽引車と、牽引車で牽引されて荷物を積載する台車を有する単軌条運搬車における荷物の積卸し方法であり、台車にホイスト装置を吊架するホイストポストを前後に傾動可能に起立させておき、運搬車が荷物の積卸し場所に来ると、ホイストポストを垂直に調整してその姿勢で固定するとともに、台車上の荷物をホイスト装置で吊り上げ、積卸し場所とホイストポストにスライドバーを掛け渡して荷物をホイスト装置でスライドバーを滑らせながら荷卸し場所に降ろすことを特徴とする単軌条運搬車における荷物の積卸し方法。
【請求項2】
前後二つの台車で荷物を支持しており、ホイスト装置がそれぞれの台車に設けられる請求項1の単軌条運搬車における荷物の積卸し方法。
【請求項3】
ホイストポストに係止バーを取り付け、スライドバーに複数の係止フックを設けて係止フックの一つを選択して係止バーに係止する請求項1又は2の単軌条運搬車における荷物の積卸し方法。
【請求項4】
荷物が長尺のパイプである請求項1〜3いずれかの単軌条運搬車における荷物の積卸し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−274834(P2010−274834A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130624(P2009−130624)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000134981)株式会社ニッカリ (43)