印判装置及び印判システム
【課題】捺印場所の間違いを未然に防止することができる印判装置及び印判システムを提供する。
【解決手段】書類Sに接触して押印する印字体113と、書類Sに設けられ、情報を記憶するIC回路部150と情報を送受信するタグアンテナ151とを備えた無線タグTに対し無線通信を行うためのループアンテナ160と、このループアンテナ160を介し、無線タグTのIC回路部150に記憶した情報を非接触で取得し、この取得した情報に応じて駆動され、印字体113の接触による押印動作を阻止可能なストッパ180とを有する。
【解決手段】書類Sに接触して押印する印字体113と、書類Sに設けられ、情報を記憶するIC回路部150と情報を送受信するタグアンテナ151とを備えた無線タグTに対し無線通信を行うためのループアンテナ160と、このループアンテナ160を介し、無線タグTのIC回路部150に記憶した情報を非接触で取得し、この取得した情報に応じて駆動され、印字体113の接触による押印動作を阻止可能なストッパ180とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を記憶するIC回路部と情報を送受信するタグアンテナとを備えた無線タグを有する捺印対象物に対し捺印及び無線通信が可能な印判装置及び印判システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、企業等において稟議書や企画書などの書類が回覧される際には、回覧状況を確認するため、書類に対し印判装置による捺印が行われる。近年、無線タグとリーダ(読み取り装置)/ライタ(書き込み装置)との間で非接触で情報の読み取り/書き込みを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが様々な分野において実用化されつつあり、上記印判装置にRFIDシステムを適用したものについても提案されている。
【0003】
例えば上記RFIDシステムを印判装置に適用した従来技術として、特許文献1に記載のものがある。この従来技術では、印判装置(電子印鑑装置)による押印動作時に、書類に設けられた無線タグ(RFIDタグ)に対し押印情報(捺印情報)を書き込む。これにより、その後リーダ/ライタを用いて書類の無線タグから書き込まれた押印情報を読み出すことによって、押印情報の一括管理を可能としている。
【特許文献1】特開2007−193569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、企業等において使用される稟議書や企画書などの書類には、例えば起案者や決済者等用に単数若しくは複数の捺印場所が予め定められている。そして、対応する者によって捺印場所に対し印判装置による捺印が行われる。このとき、例えば書類の内容に応じて決済者(決済する権限)に変更が生じたり、組織変更による役職の変更等により起案者や決済者に変更が生じる場合があり、捺印場所の間違いが生じる可能性があった。また、一般に書類の内容に応じて捺印する権限(決済する権限等)は変動するものであるが、書類に対し捺印権限のない者が誤って捺印してしまう可能性もあった。このような場合に、上記従来技術では捺印場所の間違いや権限のない者による誤った捺印を未然に防止することができなかった。
【0005】
本発明の目的は、捺印場所の間違いや権限のない者による誤った捺印等の不適切な捺印を未然に防止することができる印判装置及び印判システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1発明の印判装置は、捺印対象物に接触して押印する印字体と、前記捺印対象物に設けられ、情報を記憶するIC回路部と情報を送受信するタグアンテナとを備えた無線タグに対し無線通信を行うための印判アンテナと、前記印判アンテナを介し、前記無線タグの前記IC回路部に記憶した情報を非接触で取得する情報取得手段と、前記情報取得手段で取得した情報に応じて駆動され、前記印字体の接触による押印動作を阻止可能な押印ロック手段とを有することを特徴とする。
【0007】
本願第1発明の印判装置においては、印判アンテナが書類等の捺印対象物に設けた無線タグと無線通信を行い、情報取得手段が無線タグのIC回路部が記憶した情報を非接触で取得する。そして、押印ロック手段が、その情報取得手段が取得した情報に応じて駆動され、印字体の押印動作を阻止可能となっている。
【0008】
これにより、複数の捺印箇所のある捺印対象物において、各捺印箇所に無線タグを設け対応する情報を記憶させておくことで、印判装置が捺印箇所に近接したときにその捺印箇所の無線タグの記憶情報を取得し、押印動作の阻止又は許容を切り替えることができる。この結果、印判装置が正しい捺印箇所に捺印されようとしている場合には押印動作を許容し、印判装置が誤った捺印箇所に捺印されようとしている場合には押印動作を阻止することが可能となる。また、印判装置が権限のある捺印箇所に捺印されようとしている場合には押印動作を許容し、印判装置が権限のない捺印箇所に捺印されようとしている場合には押印動作を阻止することが可能となる。したがって、操作者の勘違い等による捺印場所の間違いや権限のない者による誤った捺印等の不適切な捺印を未然に防止することができる。
【0009】
また、情報取得手段での情報取得が行えなかった場合には、押印ロック手段で押印動作を阻止することも可能となる。これにより、無線タグが設置されていない捺印対象物に対し誤って操作者が捺印してしまうのを未然に防止することもできる。
【0010】
第2発明の印判装置は、上記第1発明において、前記印判アンテナは、前記タグアンテナに対応した偏波面特性を備えた、ダイポールアンテナ、又は平面アンテナ、若しくはループアンテナであることを特徴とする。
【0011】
これにより、印判アンテナを構成するダイポールアンテナ、平面アンテナ、ループアンテナからの偏波面の方向と、捺印箇所のタグアンテナの偏波面の方向とが合致しているかどうか(あるいは合致の度合い)に応じて、情報取得手段による情報取得結果に差を生じさせることが可能となる。この結果、押印動作時において、捺印箇所に対する印判アンテナの方向(言い換えれば操作者が持つ印判装置全体の方向)が正しいかどうかに応じて、押印動作の阻止又は許容を切り替えることができる。したがって、印判装置が正しい捺印箇所に捺印される場合でも、正しい向きで捺印されようとしている場合には押印動作を許容し、誤った向きで捺印されようとしている場合には押印動作を阻止することが可能となる。したがって、操作者の勘違い、握り違い等による捺印方向の間違いを未然に防止することができる。
【0012】
第3発明の印判装置は、上記第1又は第2発明において、前記押印動作時における前記印判装置の前記捺印対象物への接近時に連動して、前記印判アンテナを介した前記情報取得手段による情報取得開始指示のための信号を出力する信号出力手段を有することを特徴とする。
【0013】
これにより、捺印箇所へ近接させて捺印を行う際に、自動的に捺印箇所の無線タグへの情報読み取りを開始することができる。この結果、正しい捺印箇所へ捺印しようとしているのに情報取得が開始されず誤って押印動作が阻止されるのを確実に防止することができる。また、(オン・オフ切り替えがなく)情報取得手段による情報読み取りを常時行う場合のような電力消費の無駄を防止することができる。
【0014】
第4発明の印判装置は、上記第1又は第2発明において、前記押印動作時における前記印判装置の前記捺印対象物への接近時に前記印判アンテナを介した前記情報取得手段による情報取得開始を手動指示するための操作手段を有することを特徴とする。
【0015】
これにより、捺印箇所へ近接させて捺印を行う際に、操作手段を介し、操作者の意志によって確実に捺印箇所の無線タグへの情報読み取りを開始することができる。この結果、操作者が捺印しようとしている捺印箇所の無線タグ以外の無線タグから誤って情報取得を行うのを確実に防止することができる。また、(オン・オフ切り替えがなく)情報取得手段による情報読み取りを常時行う場合のような電力消費の無駄を防止することができる。
【0016】
上記目的を達成するために、第5発明の印判システムは、情報を記憶するIC回路部と情報を送受信するタグアンテナとを有する無線タグを備えた捺印対象物と、前記捺印対象物へ捺印を行うための印判装置とを有する印判システムであって、前記印判装置は、前記捺印対象物に接触して押印する印字体と、前記無線タグに対し無線通信を行うための印判アンテナと、前記印判アンテナを介し、前記無線タグの前記IC回路部に記憶した情報を非接触で取得する情報取得手段と、前記情報取得手段で取得した情報に応じて駆動され、前記印字体の接触による押印動作を阻止可能な押印ロック手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
本願第5発明の印判システムにおいては、印判装置の印判アンテナが書類等の捺印対象物に設けた無線タグと無線通信を行う。そして、印判装置の情報取得手段が無線タグのIC回路部が記憶した情報を非接触で取得し、押印ロック手段が、その情報取得手段が取得した情報に応じて駆動され、印字体の押印動作を阻止可能となっている。
【0018】
これにより、複数の捺印箇所のある捺印対象物において、各捺印箇所に無線タグを設け対応する情報を記憶させておくことで、印判装置が捺印箇所に近接したときにその捺印箇所の無線タグの記憶情報を取得し、押印動作の阻止又は許容を切り替えることができる。この結果、印判装置が正しい捺印箇所に捺印されようとしている場合には押印動作を許容し、印判装置が誤った捺印箇所に捺印されようとしている場合には押印動作を阻止することが可能となる。したがって、操作者の勘違い等による捺印場所の間違いを未然に防止することができる。
【0019】
また、情報取得手段での情報取得が行えなかった場合には、押印ロック手段で押印動作を阻止することも可能となる。これにより、無線タグが設置されていない捺印対象物に対し誤って操作者が捺印してしまうのを未然に防止することもできる。
【0020】
第6発明の印判システムは、上記第5発明において、前記無線タグの前記IC回路部は、前記捺印対象物への押印権限に関する権限関連情報を記憶しており、前記情報取得手段は、前記印判アンテナを介し前記IC回路部に記憶した前記権限関連情報を非接触で取得し、前記押印ロック手段は、前記情報取得手段で取得された前記権限関連情報に応じて、前記印字体の接触による押印動作の阻止・許容を切り替えることを特徴とする。
【0021】
本願第6発明の印判システムにおいては、捺印箇所の無線タグが、対応する権限関連情報を記憶し、情報取得手段で取得した権限関連情報に応じて押印動作の阻止・許容が切り替えられる。
【0022】
これにより、各捺印箇所の無線タグに当該捺印箇所に対応する権限関連情報を記憶させておくことで、その権限に対応した正しい印判装置で捺印が行われようとした場合にはその印判装置による押印動作を許容し、その権限に対応していない誤った印判装置で捺印されようとしている場合にはその印判装置による押印動作を阻止することができる。したがって、権限のない操作者の勘違い等による捺印を未然に防止することができる。
【0023】
第7発明の印判システムは、上記第6発明において、前記印判装置とネットワーク通信を介し接続されたサーバを有し、前記印判装置は、前記情報取得手段で取得した前記権限関連情報と、当該印判装置の識別情報とを、前記ネットワーク通信を介し前記サーバへ出力する情報出力手段を有し、前記サーバは、前記ネットワーク通信を介し前記印判装置の前記情報出力手段より入力した、前記権限関連情報と前記識別情報とに基づき、前記印判装置による前記押印動作の阻止・許容を判定する判定手段を有し、前記印判装置の前記押印ロック手段は、前記サーバの前記判定手段による判定結果に応じて、前記印字体の接触による押印動作の阻止・許容を切り替えることを特徴とする。
【0024】
本願第7発明においては、印判装置の情報取得手段で取得され情報出力手段で出力された権限関連情報を用い、サーバの判定手段が印判装置の押印動作を阻止すべきか許容すべきかを判定する。そして、その判定結果に応じて印判装置の押印ロック手段が押印動作の阻止・許容を切り替える。このように、押印動作の判定を印判装置側でなくサーバ側で行うことで、判定基準の設定や変更をサーバのみで容易に行うことができ、利便性が向上する。特に、各捺印箇所の無線タグのタグ識別情報と各捺印箇所ごとの捺印権限との対応付けをサーバ側にて設定しておくようにすれば、印判装置側では、情報取得手段で無線タグから(権限関連情報としての)タグ識別情報のみを取得してサーバへ出力するとともに、上記対応付けに基づく捺印許可(押印動作の許容)・不許可(押印動作の阻止)の判定結果を取得するだけで足りる。したがって、印判装置側の制御機能を簡素化したり、必要なメモリ容量を低減することができる。
【0025】
第8発明の印判システムは、上記第5乃至第7発明のいずれかにおいて、前記無線タグの前記タグアンテナは、前記捺印対象物に対し所定の方向となる第1偏波面を生成し、前記印判装置の前記押印ロック手段は、前記印判アンテナより生成される第2偏波面の方向と前記第1偏波面の方向との合致性に基づき、前記印字体の接触による押印動作の阻止・許容を切り替えることを特徴とする。
【0026】
これにより、押印動作時における操作者が持つ印判装置の方向が正しいかどうかに応じて、押印動作の阻止又は許容を切り替えることができる。したがって、印判装置が正しい捺印箇所に捺印される場合でも、正しい向きで捺印されようとしている場合には押印動作を許容し、誤った向きで捺印されようとしている場合には押印動作を阻止することが可能となる。したがって、操作者の勘違い、握り違い等による捺印方向の間違いを未然に防止することができる。
【0027】
第9発明の印判システムは、上記第5乃至第8発明のいずれかにおいて、前記印判装置は、前記押印ロック手段が前記印字体の接触による押印動作を許容するように切り替わった場合に、前記押印動作に対応する押印情報を、前記印判アンテナを介し前記無線タグの前記IC回路部に書き込む情報書き込み手段を備えることを特徴とする。
【0028】
捺印時における押印情報を情報書き込み手段で無線タグに書き込むことにより、その後捺印箇所への捺印がかすれたり汚れたりして外見上不鮮明になった場合であっても、正しく捺印されたことを情報として確認することが可能となる。また、例えば無線タグとの通信機能を有しない通常の印判装置で押印されることにより、見かけ上捺印箇所への捺印が行われている場合であっても、無線タグに書き込まれた押印情報を確認することによって、無線タグとの通信機能を有する印判装置による正しい捺印であるか否かを確認することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、捺印場所の間違いや権限のない者による誤った捺印等の不適切な捺印を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1は、本実施形態の印鑑装置の内部構造を表す縦断面図である。
【0032】
図1に示す印鑑装置100(印判装置)は、書類等の捺印対象物に対し捺印すると共に、捺印対象物に設けられた無線タグT(後述)に対し無線通信を行うことが可能な電子印鑑装置である。この印鑑装置100は、上端にインキ補充口111及びこれに着脱自在に嵌合された補充口栓112を備え、下端にインキを含浸した多孔性印材よりなり捺印対象物に接触して押印する印字体113を備えた、円筒状の印鑑本体110と、この印鑑本体110の外周面に回動自在に嵌合固定され、上方より弾性体120(コイルスプリング等)の一端を係止する円筒状の外周ケース130と、この外周ケース130の上部に上記補充口栓112の外周を覆うように着脱自在に嵌合され、捺印の際に操作者によって握られる握り部135と、上記印鑑本体110及び外周ケース130に対し印鑑の軸方向(図1中上下方向)にスライド可能に設けられ、下方より弾性体120の他端を係止するスライダ140とを有している。
【0033】
上記スライダ140は、通常時(捺印を行わない時)には弾性体120の付勢力により図1に示す軸方向位置に弾性保持されており、印字体113はスライダ140の内部に収納された状態となっている。捺印時には、スライダ140は捺印対象物へ接触することにより弾性体120の付勢力に抗して軸方向一方側(図1中上側)にスライドする。そして、スライダ140が軸方向一方側に距離L3だけスライドすると、スライダ140の内部において印鑑本体110の外周面に対し摺動可能に形成されたリング状の摺動突部141が、外周ケース130の内部において印鑑本体110の外周面に嵌合したリング状の嵌合突部131に接触する。このとき、印字体113がスライダ140の下端より露出し、捺印対象物へ接触して押印することが可能となっている。
【0034】
また、印鑑装置100は、スライダ140の内部において印鑑本体110の外周面に設けられ、捺印対象物に設けられた無線タグTに対し無線通信を行うためのコイル状のループアンテナ160(印判アンテナ)と、押印動作時における印鑑装置100の捺印対象物への接近時に連動して、上記ループアンテナ160を介した無線タグTからの情報取得開始指示のための信号を出力するリミットスイッチ170(信号出力手段)と、ループアンテナ160を介し無線タグTから取得した情報に応じて駆動され、印字体113の接触による押印動作を阻止可能なストッパ180(押印ロック手段)とを有している。なお、ここでは印鑑装置100が内蔵するアンテナとしてコイル状のループアンテナを採用しているが、これに限られず、例えばダイポールアンテナや平面アンテナ等を用いてもよい。
【0035】
上記リミットスイッチ170は、先端部に回動可能なレバー171を有している。このレバー171は、スライダ140が軸方向一方側に距離L1だけスライドした際に摺動突部141に接触して持ち上げられるようになっており、これによりリミットスイッチ170はON信号を制御回路190(図2参照)に出力する。また、捺印が終了し、スライダ140が弾性体120の付勢力により軸方向他方側にスライドして上記距離L1の位置より下端側(図1中下側)に戻った際には、レバー171は図示しない弾性手段により復帰するようになっており、これによりリミットスイッチ170はOFF信号を制御回路190に出力するようになっている。なお、ここでは情報取得開始指示のための信号を出力する信号出力手段としてリミットスイッチを用いるようにしたが、このような接触式の検出手段に限られず、例えば光学センサにより摺動突部141の端部を検出する等、非接触式の検出手段を用いてもよい。
【0036】
上記ストッパ180は、ソレノイド等のアクチュエータから構成されており、スライダ140の摺動突部141の摺動経路に対してプランジャ181を進退可能である。ストッパ180がプランジャ181を突出させた場合には、スライダ140は軸方向一方側に距離L2しかスライドすることができなくなる。その結果、印字体113はスライダ140の下端から露出せず、印字体113の接触による押印動作を阻止できるようになっている。一方、ストッパ180がプランジャ181を退避させた場合には、スライダ140は軸方向一方側に距離L3だけスライドすることが可能となる。その結果、印字体113がスライダ140の下端より露出し、捺印対象物へ接触して押印することが可能となっている。なお、ここでは印字体113の接触による押印動作を阻止可能な押印ロック手段としてソレノイドを用いるようにしたが、例えば電磁石の磁力の反発力(又は引力)によりスライダ140のスライドを制限する等、その他のロック手段を用いてもよい。
【0037】
図2は印鑑装置100の電気的構成を表す機能ブロック図である。
【0038】
印鑑装置100は、捺印対象物である書類Sに設けられ、情報を記憶するIC回路部150と情報を送受信するコイル状のタグアンテナ151とを備えた無線タグTとの間でHF帯等の無線通信により情報の送受信を行う上記ループアンテナ160と、上記リミットスイッチ170及びストッパ180と、ループアンテナ160を介し上記無線タグTへアクセスする(読み取り及び書き込みを行う)ための送信回路191及び受信回路192と、これら送受信回路191,192とループアンテナ160とを接続するアンテナ共用器193と、印鑑装置100の識別情報である印鑑識別情報が記憶されたメモリ194と、ストッパ180、送信回路191、及び受信回路192等の制御を行う制御回路190とを有している。そして、上記構成である印鑑装置100と捺印対象物である書類Sとが、印鑑システムIS(印判システム)を構成している。
【0039】
なお、上記ではアンテナ共用器193を用いて1つのアンテナで情報の送受信を行う構成としたが、これに限られず、送信回路191と受信回路192とに対応してアンテナを各々設けるようにしてもよい。また、上記では無線タグTが有するタグアンテナとしてコイル状のループアンテナを採用しているが、これに限られず、例えばダイポールアンテナや平面アンテナ等を用いてもよい。
【0040】
上記送信回路191は、ループアンテナ160を介して無線タグTにアクセスする(読み取り/書き込みを行う)ための搬送波を発生させると共に、上記制御回路190から入力される制御信号に基づいて上記搬送波を変調して質問波を出力する。また、上記受信回路192は、無線タグTからループアンテナ160を介して受信された応答波(応答信号)の復調を行い、上記制御回路190に出力する。
【0041】
リミットスイッチ170は、前述したように、スライダ140が軸方向一方側(図2中上側)に距離L1だけスライドした際(図2中一点鎖線で示す)にON信号を制御回路190に出力する。これにより制御回路190は、送信回路191に制御信号を出力し、ループアンテナ160を介し、無線タグTのIC回路部150に記憶した情報を非接触で取得する。制御回路190は、この取得したタグ情報に応じ、印字体113による押印動作を阻止する場合にはストッパ180に制御信号を出力してプランジャ181を突出させ、スライダ140のスライド範囲を通常位置(図2中実線で示す)から距離L2だけスライドした位置(図2中二点鎖線で示す)までの範囲に限定する。一方、制御回路190は、印字体113による押印動作を許可する場合にはストッパ180に制御信号を出力してプランジャ181を退避させ、スライダ140を通常位置から距離L3だけスライドした位置(図2中点線で示す)までスライド可能とする。
【0042】
図3は、上記無線タグTの機能的構成を表す機能ブロック図である。
【0043】
この図3において、無線タグTは、印鑑装置100側のループアンテナ160と非接触で信号の送受信を行う上記タグアンテナ151と、このタグアンテナ151に接続された上記IC回路部150とを有している。
【0044】
IC回路部150は、タグアンテナ151により受信された質問波を整流する整流部152と、この整流部152により整流された質問波のエネルギーを蓄積し駆動電源とするための電源部153と、上記タグアンテナ151により受信された質問波からクロック信号を抽出して制御部157に供給するクロック抽出部154と、所定の情報信号を記憶し得るメモリ部155と、上記タグアンテナ151に接続された変復調部156と、上記整流部152、クロック抽出部154、及び変復調部156等を介して無線タグTの作動を制御するための制御部157とを備えている。
【0045】
変復調部156は、タグアンテナ151により受信された上記印鑑装置100のループアンテナ160からの質問波の復調を行い、また、上記制御部157からの返信信号を変調し、タグアンテナ151より応答波として送信する。
【0046】
クロック抽出部154は受信した信号からクロック成分を抽出し、当該クロック成分の周波数に対応したクロックを制御部157に供給する。
【0047】
制御部157は、上記変復調部156により復調された受信信号を解釈し、上記メモリ部155において記憶された情報信号に基づいて返信信号を生成し、この返信信号を上記変復調部156により上記タグアンテナ151から返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0048】
上記無線タグTのIC回路部150には、書類Sへの押印権限に関する権限関連情報が記憶されている。この権限関連情報について、図4を用いて説明する。
【0049】
図4は、印鑑装置100の使用場面の一例を示す図である。
【0050】
図4において、この例では捺印対象物である書類Sが稟議書である場合を示している。この書類Sには、起案者、承認者(起案者の上司等)、及び決裁者用の3つの捺印箇所s1,s2,s3が設けられており、各捺印箇所s1,s2,s3に対応する位置には無線タグT1,T2,T3(上記無線タグTと同等の構成である)がそれぞれ設けられている。なお、ここでは無線タグT1,T2,T3を捺印箇所s1,s2,s3の下方にそれぞれ設けるようにしたが、捺印箇所s1,s2,s3の領域内やその他の通信可能な位置に設けてもよい。
【0051】
無線タグT1,T2,T3の上記IC回路部150には、捺印箇所s1,s2,s3への押印権限に関する権限関連情報がそれぞれ記憶されている。この権限関連情報は、各捺印箇所に対し押印可能な権能レベルを表す情報(例えば各捺印箇所への押印権限を有する役職を表す情報)である。例えば図4に示す例では、起案者に対応する無線タグT1のIC回路部150には担当、承認者に対応する無線タグT2のIC回路部150には係長、決裁者に対応する無線タグT3のIC回路部150には部長に対応する役職を表す情報が記憶されている。一方、印鑑装置100の上記メモリ194に記憶された印鑑識別情報には、当該印鑑装置100の操作者の権限関連情報(例えば上記と同様の役職情報)が含まれている。
【0052】
なお、上記無線タグT1,T2,T3のIC回路部150に記憶される権限関連情報は、上記役職情報そのもの(社長、部長、課長等)であってもよいし、これら役職情報に関連付けられた識別情報(タグID等)でもよい。無線タグT1,T2,T3のIC回路部150に識別情報を記憶させる場合には、当該識別情報と役職情報との関連付け情報(テーブル)を印鑑装置100のメモリ194に記憶させておき、当該関連付け情報を参照して役職情報を取得すればよい。一方、印鑑装置100のメモリ194に記憶される権限関連情報は、役職情報そのものとなっている。
【0053】
制御回路190は、捺印箇所に対応する無線タグTのIC回路部150からループアンテナ160を介して取得した権限関連情報と、メモリ194から読み出した印鑑装置100の権限関連情報とを比較し、印鑑装置100を使用する操作者の役職が捺印箇所に対応する役職以上である場合には、印鑑装置100による捺印を許可する。一方、印鑑装置100を使用する操作者の役職が捺印箇所に対応する役職より下である場合には、印鑑装置100による捺印動作を不許可とする。例えば図4に示す例では、印鑑装置100を使用する操作者の役職が部長以上(部長、役員、社長等)である場合には、捺印箇所s3に決裁の捺印を行うことができる。一方、印鑑装置100を使用する操作者の役職が部長より下(課長、係長、担当等)である場合には、捺印箇所s3に決裁の捺印を行うことができないようになっている。
【0054】
図5は、印鑑装置100の制御回路190によって実行される制御内容を表すフローチャートである。なお、制御回路190は、例えば印鑑装置100の電源投入時に本フローを開始するようになっており、この際には印鑑装置100による捺印がロックされた状態(すなわちストッパ180がプランジャ181を突出させた状態)で本フローを開始するようになっている(以下同様)。
【0055】
ステップS10では、制御回路190は、リミットスイッチ170からスライダ140が軸方向一方側に距離L1だけスライドしたことを表すON信号が入力されたか否かを判定する。ON信号が入力されるまで本ステップを繰り返し、入力されると判定が満たされてステップS20に移る。
【0056】
ステップS20では、制御回路190は、送信回路191に制御信号を出力し、無線タグT(のIC回路部150のメモリ部155。以下同様)に記憶されたタグ情報(すなわち権限関連情報)を取得するための問い合わせ信号として、所定の変調を行った質問波をループアンテナ160を介して読み取り対象の無線タグT(言い換えれば捺印しようとする捺印箇所に対応する無線タグT)に送信する。
【0057】
ステップS30では、制御回路190は、上記問い合わせ信号に対応して読み取り対象の無線タグTから返信されたリプライ信号をループアンテナ160を介して受信したか否かを判定する。捺印対象物である書類Sに無線タグTが設けられていない場合や無線通信が失敗した場合等、リプライ信号を受信しなかった場合には、判定が満たされずに本フローを終了する。一方、リプライ信号を受信した場合には、判定が満たされてステップS40に移る。
【0058】
ステップS40では、制御回路190は、上記ループアンテナ160を介して受信したリプライ信号に基づき、当該無線タグTに記憶されたタグ情報(権限関連情報)を取得する。
【0059】
ステップS50では、制御回路190は、メモリ194から印鑑装置100の印鑑識別情報を読み出す。
【0060】
ステップS60では、制御回路190は、上記ステップS40で無線タグTから取得した権限関連情報と、上記ステップS50でメモリ194から読み出した印鑑識別情報に含まれる権限関連情報とに基づき、印鑑装置100による書類S(の対応する捺印箇所)への捺印を許可するか否かを判定する。すなわち制御回路190は、上述したように無線タグTから取得した権限関連情報とメモリ194から読み出した印鑑装置100の権限関連情報とを比較し、印鑑装置100を使用する操作者の役職が捺印箇所に対応する役職より下である場合には、印鑑装置100による捺印動作を不許可とする。この場合には、判定が満たされずに本フローを終了する。一方、印鑑装置100を使用する操作者の役職が捺印箇所に対応する役職以上である場合には、印鑑装置100による捺印を許可する。この場合には、判定が満たされてステップS70に移る。
【0061】
ステップS70では、制御回路190は、ストッパ180に制御信号を出力し、ストッパ180のプランジャ181を退避させる。これにより、スライダ140は軸方向一方側に距離L3だけスライドすることが可能となり、印鑑装置100による捺印ロックが解除された状態となる。その結果、印字体113がスライダ140の下端より露出し、捺印対象物へ接触して押印することができる。
【0062】
ステップS80では、制御回路190は、リミットスイッチ170からスライダ140が弾性体120の付勢力により軸方向他方側にスライドして距離L1の位置より下端側(図1中下側)に戻ったことを表すOFF信号が入力されたか否かを判定する。印鑑装置100による書類Sへの捺印が終了し、印鑑装置100の書類Sからの離間に連動してスライダ140が通常位置に復帰すると、リミットスイッチ170からOFF信号が入力され、判定が満たされてステップS90に移る。
【0063】
ステップS90では、制御回路190は、ストッパ180に制御信号を出力し、ストッパ180のプランジャ181を突出させる。これにより、スライダ140は軸方向一方側に距離L2しかスライドすることができなくなり、印鑑装置100は捺印がロックされた状態に復帰する。その後、本フローを終了する。
【0064】
なお、上記ステップS40は、特許請求の範囲各項記載の印判アンテナを介し、無線タグのIC回路部に記憶した情報を非接触で取得する情報取得手段を構成する。
【0065】
以上説明した本実施形態の印鑑装置100においては、ループアンテナ160を介して書類Sに設けた無線タグTと無線通信を行い、無線タグTのIC回路部150が記憶した権限関連情報を非接触で取得する。そして、制御回路190がこの無線タグTから取得した権限関連情報と印鑑装置100の印鑑識別情報に含まれる権限関連情報とを比較することにより、その比較結果に応じてストッパ180が駆動され、印字体113の押印動作を阻止可能となっている。
【0066】
これにより、前述の図4に示す例のように複数の捺印箇所s1,s2,s3のある書類Sにおいて、各捺印箇所s1,s2,s3に無線タグT1,T2,T3をそれぞれ設け対応する権限関連情報を記憶させておくことで、印鑑装置100が捺印箇所s1,s2,s3のいずれかに近接したときに対応する捺印箇所の無線タグTの記憶情報を取得し、印鑑装置100の権限関連情報と比較することにより、印字体113の押印動作の阻止又は許容を切り替えることができる。この結果、印鑑装置100が正しい捺印箇所(操作者の権限に対応する捺印箇所)に捺印されようとしている場合には印字体113の押印動作を許容し、印鑑装置100が誤った捺印箇所(操作者の権限に対応していない捺印箇所)に捺印されようとしている場合には印字体113の押印動作を阻止することができる。したがって、操作者の勘違い等による捺印場所の間違いや、権限のない者による誤った捺印等の不適切な捺印を未然に防止することができる。
【0067】
また、無線タグTが設けられていない書類Sに対し捺印を実行しようとする場合には、無線タグTからの情報取得が行えないことから、ストッパ180で印字体113の押印動作を阻止することができる。これにより、無線タグTが設置されていない書類Sに対し誤って操作者が捺印してしまうのを未然に防止することもできる。
【0068】
また、本実施形態では特に、捺印動作時における印鑑装置100の書類Sへの接近時に連動して、スライダ140が軸方向一方側に距離L1だけスライドした際に、リミットスイッチ170から制御回路190に対しループアンテナ160を介した無線タグTからの情報取得開始指示のための信号を出力する。これにより、捺印箇所へ近接させて捺印を行う際に、自動的に捺印箇所の無線タグTへの情報読み取りを開始することができる。この結果、正しい捺印箇所へ捺印しようとしているのに情報取得が開始されず誤って押印動作が阻止されるのを確実に防止することができる。また、ループアンテナ160を介した無線タグTからの情報読み取りを常時行う場合に比べ、印鑑装置100の電力消費の無駄を防止することができる。
【0069】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0070】
(1)捺印可否の判定をサーバで行う場合
上記実施形態では、印鑑装置100による捺印可否判定を印鑑装置100自身(制御回路190)で行うようにしたが、これに限られず、別途設けたサーバで捺印可否判定を行うようにしてもよい。
【0071】
図6は、本変形例の印鑑システムIS(印判システム)の全体構成を表すシステム構成図である。
【0072】
図6において、印鑑システムISは、無線タグTを備えた捺印対象物である書類Sと、書類Sへ捺印を行うための印鑑装置100と、この印鑑装置100と有線あるいは無線によるネットワーク通信NW(無線LAN、Bluetooth等)を介して接続されたサーバ200と、このサーバ200と接続されたデータベース300とを有している。
【0073】
印鑑装置100及び書類Sの構成は前述の実施形態と同様である。なお本変形例においては、無線タグT1,T2,T3(図6では図示省略)のIC回路部150に記憶される権限関連情報は、役職情報そのものに関連付けられた識別情報(この例ではタグID)である。また同様に、印鑑装置100のメモリ194に記憶される印鑑識別情報も、当該情報そのものに関連付けられた識別情報(この例では印鑑識別ID)となっている。上記タグIDと役職情報との関連付け情報、及び印鑑識別IDと印鑑識別情報(役職情報を含む)との関連付け情報(テーブル)は、上記データベース300に格納保持されており、サーバ200が必要に応じて参照可能となっている。
【0074】
本変形例では、印鑑装置100が、ループアンテナ160を介して無線タグTから取得した上記タグID及びメモリ194から読み出した印鑑識別IDをネットワーク通信NWを介しサーバ200に送信する。サーバ200は、これら受信したタグID及び印鑑識別IDに基づき、印鑑装置100による押印動作の阻止・許容を判定し、その判定結果を印鑑装置100に送信する。これにより、印鑑装置100の制御回路190は、上記受信したサーバ200の判定結果に応じてストッパ180を駆動させ、印鑑装置100による捺印の可否(言い換えれば印字体113の接触による押印動作の阻止・許容)を切り替える。
【0075】
図7は、本変形例の印鑑装置100の制御回路190によって実行される制御内容を表すフローチャートである。なお、この図7において、前述の図5と同様の手順には同符号を付している。
【0076】
ステップS10〜ステップS50は前述の図5と同様であるので説明を省略する。ステップS51では、制御回路190は、上記ステップS40で無線タグTから取得したタグIDと、上記ステップS50でメモリ194から読み出した印鑑識別IDとを、ネットワーク通信NWを介してサーバ200に送信する。
【0077】
ステップS52では、制御回路190は、サーバ200より送信された印鑑装置100による捺印の可否に関する情報をネットワーク通信NWを介して受信する。
【0078】
ステップS60では、制御回路190は、上記ステップS52でサーバ200から受信した捺印可否情報に基づき、印鑑装置100による書類S(の対応する捺印箇所)への捺印を許可するか否かを判定する。サーバ200から捺印不可に対応する情報を受信した場合には、判定が満たされずに本フローを終了する。一方、サーバ200から捺印可能に対応する情報を受信した場合には、判定が満たされてステップS70に移る。
【0079】
その後のステップS70〜ステップS90については、前述の図5と同様であるので説明を省略する。
【0080】
なお、上記ステップS51は、特許請求の範囲各項記載の情報取得手段で取得した権限関連情報と、当該印判装置の識別情報とを、ネットワーク通信を介しサーバへ出力する情報出力手段を構成する。
【0081】
図8は、上記サーバ200の制御回路210(図示せず)によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【0082】
ステップS110では、制御回路210は、無線タグTのタグID及び印鑑装置100の印鑑識別IDを、印鑑装置100よりネットワーク通信NWを介して受信したか否かを判定する(図7中ステップS51参照)。タグID及び印鑑識別IDを受信するまで本ステップを繰り返し、受信したら判定が満たされてステップS120に移る。
【0083】
ステップS120では、制御回路210はデータベース300にアクセスし、上記受信したタグID及び印鑑識別IDに基づきデータベース300に格納された関連付け情報を検索して、タグIDに対応する役職情報と、印鑑識別IDに対応する印鑑識別情報に含まれる役職情報とを取得する。
【0084】
ステップS130では、制御回路210は、上記データベース300から取得したタグIDに対応する役職情報及び印鑑識別IDに対応する役職情報に基づき、印鑑装置100による書類S(の対応する捺印箇所)への捺印を許可するか否かを判定する。すなわち制御回路210は、前述と同様に両方の役職情報を比較し、印鑑装置100を使用する操作者の役職が捺印箇所に対応する役職以上である場合には、印鑑装置100による捺印を許可する。この場合には、判定が満たされてステップS140に移り、制御回路210は、捺印可能に対応する情報をネットワーク通信NWを介して印鑑装置100に送信する。そして、本フローを終了する。一方、印鑑装置100を使用する操作者の役職が捺印箇所に対応する役職より下である場合には、印鑑装置100による捺印動作を不許可とする。この場合には、判定が満たされずにステップS150に移り、制御回路210は、捺印不可に対応する情報をネットワーク通信NWを介して印鑑装置100に送信する。そして、本フローを終了する。
【0085】
なお、上記ステップS130は、特許請求の範囲各項記載のネットワーク通信を介し印判装置の情報出力手段より入力した、権限関連情報と識別情報とに基づき、印判装置による押印動作の阻止・許容を判定する判定手段を構成する。
【0086】
以上説明した変形例においては、印鑑装置100においてループアンテナ160を介して無線タグTから取得され、ネットワーク通信NWを介して出力されたタグIDを用い、サーバ200の制御回路210が印鑑装置100の押印動作を阻止すべきか許容すべきかを判定する。そして、その判定結果が印鑑装置100に送信されると、印鑑装置100においてはその判定結果に応じてストッパ180が印字体113による押印動作の阻止・許容を切り替える。このように、押印動作の判定を印鑑装置100側でなくサーバ200側で行うことで、例えば判定基準の設定や変更がある場合であってもサーバ200側のみで容易に行うことができ、利便性が向上する。特に、上記変形例のように、各捺印箇所の無線タグTのタグIDと各捺印箇所ごとの捺印権限との対応付けをサーバ200側(正確にはデータベース300)にて設定しておくことにより、印鑑装置100側では、無線タグTから権限関連情報としてのタグIDのみを取得してサーバ200へ出力するとともに、サーバ200側で行われる上記対応付けに基づく捺印許可・不許可の判定結果を取得するだけで足りる。したがって、印鑑装置100側の制御機能を簡素化したり、必要なメモリ容量を低減することができる。
【0087】
なお、以上説明した変形例(1)においては、無線タグTのIC回路部150に記憶される権限関連情報及び印鑑装置100のメモリ194に記憶される印鑑識別情報として識別情報(タグID、印鑑識別ID)を記憶させるようにしたが、必ずしも識別情報である必要はなく、前述の実施形態と同様に権限関連情報そのもの及び印鑑識別情報そのものを記憶させるようにしてもよい。この場合、データベース300を不要とすることができる。
【0088】
(2)アンテナの偏波面特性を利用する場合
本変形例は、印鑑装置100の内蔵アンテナ及び無線タグTのタグアンテナとして偏波面特性を備えたアンテナを用い、両アンテナの偏波面特性を対応させることにより、捺印箇所に対する印鑑装置100の捺印方向が正しいかどうかに応じて捺印の可否を切り替えるものである。
【0089】
図9は、本変形例の印鑑装置100の使用場面の一例を示す図である。図9(a)は捺印動作が許容される場合、図9(b)は捺印動作が阻止される場合を示している。
【0090】
これら図9(a)及び図9(b)において、捺印対象物である書類Sには、前述した3つの捺印箇所s1,s2,s3が設けられており、各捺印箇所s1,s2,s3に対応する位置には無線タグT1′,T2′,T3′がそれぞれ設けられている。これら無線タグT1′,T2′,T3′は、情報を記憶するIC回路部150′と情報を送受信するダイポールアンテナ151′とをそれぞれ備えている。これらのダイポールアンテナ151′は、書類Sに対し所定の方向となる偏波面(第1偏波面。図9に示す例では、図9中左右方向に略平行且つ書類Sに略垂直な偏波面)特性を有している。また本変形例の印鑑装置100は、その内部に印鑑装置100に対し所定の方向となる偏波面(第2偏波面)特性を備えたダイポールアンテナ160′を有している。上記印鑑装置100のダイポールアンテナ160′の偏波面の方向と、無線タグTのダイポールアンテナ151′の偏波面の方向とが合致した場合に、印鑑装置100による捺印が正しい方向で行われるように、上記ダイポールアンテナ151′,160′の偏波面特性は対応付けられている。なお、印鑑装置100のその他の構成は、前述の実施形態と同様である。
【0091】
印鑑装置100の制御回路190は、図9(a)に示すように、印鑑装置100のダイポールアンテナ160′の偏波面の方向と無線タグTのダイポールアンテナ151′の偏波面の方向とが合致した場合(あるいは合致の度合いが所定値以上である場合)には、ストッパ180のプランジャ181を退避させて捺印ロックを解除する。その結果、印鑑装置100による捺印箇所s3への捺印が許容される。一方、図9(b)に示すように、印鑑装置100のダイポールアンテナ160′の偏波面の方向と無線タグTのダイポールアンテナ151′の偏波面の方向とが合致しない場合(あるいは合致の度合いが所定値より下である場合)には、ストッパ180のプランジャ181を突出させて捺印ロック状態とする。その結果、印鑑装置100による捺印箇所s3への捺印が阻止されるようになっている。
【0092】
図10は、本変形例における印鑑装置100の制御回路190によって実行される制御内容を表すフローチャートである。なお、この図10において、前述の図5と同様の手順には同符号を付している。
【0093】
ステップS10〜ステップS20は前述の図5と同様であるので説明を省略する。次のステップS30Aでは、制御回路190は、鑑装置100のダイポールアンテナ160′の偏波面の方向と無線タグTのダイポールアンテナ151′の偏波面の方向とが合致するか否か(あるいは合致の度合いが所定値以上であるか否か)をタグが読めるか否かで判定する。両者の偏波面が合致するまで(すなわちタグが読めるまで)上記ステップS20のタグ読み取りと本ステップを繰り返し、(操作者が印鑑装置100の向きを是正することにより)偏波面が合致した(すなわちタグが読めた)場合には、判定が満たされてステップS40に移る。その後のステップS40〜ステップS90は前述の図5と同様であるので説明を省略する。
【0094】
以上説明した変形例によれば、印鑑装置100が内蔵するダイポールアンテナ160′からの偏波面の方向と、捺印箇所に対応する無線タグTのタグアンテナ151′の偏波面の方向とが合致しているかどうか(あるいは合致の度合い)に応じて、印鑑装置100による捺印の可否を決定することができる。この結果、押印動作時において、操作者が持つ印鑑装置100の方向が正しいかどうかに応じて、押印動作の阻止又は許容を切り替えることができる。したがって、印鑑装置100が正しい捺印箇所に捺印される場合でも、正しい向きで捺印されようとしている場合には押印動作を許容し、誤った向きで捺印されようとしている場合には押印動作を阻止することができる。したがって、操作者の勘違い、握り違い等による捺印方向の間違いを未然に防止することができる。
【0095】
なお、上記変形例では印鑑装置100の内蔵アンテナ及び無線タグTのタグアンテナとしてダイポールアンテナを用いるようにしたが、これに限られず、偏波面特性を備えた平面アンテナ、若しくはループアンテナ等を用いてもよい。
【0096】
(3)捺印時に無線タグに対し情報書き込みを行う場合
図11は、本変形例における印鑑装置100の制御回路190によって実行される制御内容を表すフローチャートである。なお、この図11において、前述の図5と同様の手順には同符号を付している。
【0097】
ステップS10〜ステップS70は前述の図5と同様であるので説明を省略する。ステップS75では、制御回路190は、送信回路191に制御信号を出力し、無線タグTに対し印鑑装置100の押印動作に対応する押印情報(前述した印鑑識別情報、日付、操作者情報等)を書き込むための書き込み信号として、所定の変調を行った質問波をループアンテナ160を介して書き込み対象の無線タグT(言い換えれば捺印しようとする捺印箇所に対応する無線タグT)に送信する。その後のステップS80及びステップS90は前述の図5と同様であるので説明を省略する。
【0098】
なお、上記ステップS75は、特許請求の範囲各項記載の押印ロック手段が印字体の接触による押印動作を許容するように切り替わった場合に、押印動作に対応する押印情報を、印判アンテナを介し無線タグのIC回路部に書き込む情報書き込み手段を構成する。
【0099】
本変形例によれば、捺印時における押印情報を無線タグTに書き込むことにより、その後捺印箇所への捺印がかすれたり汚れたりして外見上不鮮明になった場合であっても、無線タグTに書き込まれた押印情報をリーダで読み取って確認することによって、正しく捺印されたことを情報として確認することができる。また、例えば無線タグTとの通信機能を有しない通常の印鑑で押印されることにより、見かけ上捺印箇所への捺印が行われている場合であっても、無線タグTに書き込まれた押印情報を確認することによって、無線タグTとの通信機能を有する印鑑装置100による正しい捺印であるか否かを確認することもできる。
【0100】
(4)印鑑装置に通信開始を指示するための操作ボタンを設ける場合
上記実施形態では、リミットスイッチ170で印鑑装置100の書類Sへの接近を検出し、自動的に無線タグTへの情報読み取りを開始するようにしたが、これに限られず、押印動作時における印鑑装置100の書類Sへの接近時にループアンテナ160を介した無線タグTからの情報取得開始を手動指示するための操作ボタン(操作手段。図示せず)を印鑑装置100に設けておき、操作者が手動操作で情報読み取りを実行できるようにしてもよい。
【0101】
図12は、本変形例における印鑑装置100の制御回路190によって実行される制御内容を表すフローチャートである。なお、この図12において、前述の図5と同様の手順には同符号を付している。
【0102】
ステップS5では、制御回路190は、操作者により操作ボタンが操作されたか否かを、操作ボタンからのON信号が入力されたか否かにより判定する。ON信号が入力されるまで本ステップを繰り返し、入力された場合には判定が満たされてステップS20に移る。その後のステップS20〜ステップS90は前述の図5と同様であるので説明を省略する。
【0103】
以上説明した変形例によれば、捺印箇所へ近接させて捺印を行う際に、操作ボタンを介し、操作者の意志によって確実に捺印箇所の無線タグTへの情報読み取りを開始することができる。この結果、操作者が捺印しようとしている捺印箇所の無線タグT以外の無線タグTから誤って情報取得を行うのを確実に防止することができる。また、無線タグTからの情報読み取りを常時行う場合に比べ、印鑑装置100の電力消費の無駄を防止することができる。
【0104】
(5)その他
以上では、捺印対象物である書類Sに捺印箇所が複数ある場合を例にとって説明したが、捺印箇所が1つしかない場合にも本発明は適用可能であることは言うまでもない。この場合、捺印対象物である書類Sに対し捺印権限の無い者が誤って捺印してしまうことを防ぐことができる。
【0105】
以上では、印鑑装置100を用いる操作者が捺印箇所への捺印権限を有するか否かに応じて捺印の許可・不許可を行う場合を例にとって説明したが、これに限られず、例えば各印鑑装置100による捺印の順番が予め定まっている場合において(スタンプラリー等)、印鑑装置100による捺印が適正な順番であるか否かに応じて捺印の許可・不許可を実行するようにしてもよい。
【0106】
また以上では、印判装置として個人が所有する印鑑を用いる場合を例にとって説明したが、これに限られず、例えば会社名や所定のメッセージ等を表示するスタンプに適用してもよい。
【0107】
なお、本明細書において説明したフローチャートは、本発明を当該フローチャートに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は変更等を行ってもよい。さらに、本明細書において説明した機能ブロック図において、図中に示す矢印は信号の流れ方向の一例を示すものであり、信号の流れ方向を矢印方向のみに限定するものではない。
【0108】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0109】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の一実施形態の印鑑装置の内部構造を表す縦断面図である。
【図2】印鑑装置の電気的構成を表す機能ブロック図である。
【図3】無線タグの機能的構成を表す機能ブロック図である。
【図4】印鑑装置の使用場面の一例を示す図である。
【図5】印鑑装置の制御回路によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【図6】捺印可否の判定をサーバで行う変形例における印鑑システムの全体構成を表すシステム構成図である。
【図7】捺印可否の判定をサーバで行う変形例における印鑑装置の制御回路によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【図8】サーバの制御回路によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【図9】アンテナの偏波面特性を利用する変形例における印鑑装置の使用場面の一例を示す図である。
【図10】アンテナの偏波面特性を利用する変形例における印鑑装置の制御回路によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【図11】捺印時に無線タグに対し情報書き込みを行う変形例における印鑑装置の制御回路によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【図12】印鑑装置に通信開始を指示するための操作ボタンを設ける変形例における印鑑装置の制御回路によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0111】
100 印鑑装置(印判装置)
113 印字体
150 IC回路部
150′ IC回路部
151 タグアンテナ
151′ ダイポールアンテナ
160 ループアンテナ(印判アンテナ)
160′ ダイポールアンテナ(印判アンテナ)
170 リミットスイッチ(信号出力手段)
180 ストッパ(押印ロック手段)
200 サーバ
IS 印鑑システム(印判システム)
NW ネットワーク通信
T 無線タグ
S 書類(捺印対象物)
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を記憶するIC回路部と情報を送受信するタグアンテナとを備えた無線タグを有する捺印対象物に対し捺印及び無線通信が可能な印判装置及び印判システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、企業等において稟議書や企画書などの書類が回覧される際には、回覧状況を確認するため、書類に対し印判装置による捺印が行われる。近年、無線タグとリーダ(読み取り装置)/ライタ(書き込み装置)との間で非接触で情報の読み取り/書き込みを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが様々な分野において実用化されつつあり、上記印判装置にRFIDシステムを適用したものについても提案されている。
【0003】
例えば上記RFIDシステムを印判装置に適用した従来技術として、特許文献1に記載のものがある。この従来技術では、印判装置(電子印鑑装置)による押印動作時に、書類に設けられた無線タグ(RFIDタグ)に対し押印情報(捺印情報)を書き込む。これにより、その後リーダ/ライタを用いて書類の無線タグから書き込まれた押印情報を読み出すことによって、押印情報の一括管理を可能としている。
【特許文献1】特開2007−193569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、企業等において使用される稟議書や企画書などの書類には、例えば起案者や決済者等用に単数若しくは複数の捺印場所が予め定められている。そして、対応する者によって捺印場所に対し印判装置による捺印が行われる。このとき、例えば書類の内容に応じて決済者(決済する権限)に変更が生じたり、組織変更による役職の変更等により起案者や決済者に変更が生じる場合があり、捺印場所の間違いが生じる可能性があった。また、一般に書類の内容に応じて捺印する権限(決済する権限等)は変動するものであるが、書類に対し捺印権限のない者が誤って捺印してしまう可能性もあった。このような場合に、上記従来技術では捺印場所の間違いや権限のない者による誤った捺印を未然に防止することができなかった。
【0005】
本発明の目的は、捺印場所の間違いや権限のない者による誤った捺印等の不適切な捺印を未然に防止することができる印判装置及び印判システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1発明の印判装置は、捺印対象物に接触して押印する印字体と、前記捺印対象物に設けられ、情報を記憶するIC回路部と情報を送受信するタグアンテナとを備えた無線タグに対し無線通信を行うための印判アンテナと、前記印判アンテナを介し、前記無線タグの前記IC回路部に記憶した情報を非接触で取得する情報取得手段と、前記情報取得手段で取得した情報に応じて駆動され、前記印字体の接触による押印動作を阻止可能な押印ロック手段とを有することを特徴とする。
【0007】
本願第1発明の印判装置においては、印判アンテナが書類等の捺印対象物に設けた無線タグと無線通信を行い、情報取得手段が無線タグのIC回路部が記憶した情報を非接触で取得する。そして、押印ロック手段が、その情報取得手段が取得した情報に応じて駆動され、印字体の押印動作を阻止可能となっている。
【0008】
これにより、複数の捺印箇所のある捺印対象物において、各捺印箇所に無線タグを設け対応する情報を記憶させておくことで、印判装置が捺印箇所に近接したときにその捺印箇所の無線タグの記憶情報を取得し、押印動作の阻止又は許容を切り替えることができる。この結果、印判装置が正しい捺印箇所に捺印されようとしている場合には押印動作を許容し、印判装置が誤った捺印箇所に捺印されようとしている場合には押印動作を阻止することが可能となる。また、印判装置が権限のある捺印箇所に捺印されようとしている場合には押印動作を許容し、印判装置が権限のない捺印箇所に捺印されようとしている場合には押印動作を阻止することが可能となる。したがって、操作者の勘違い等による捺印場所の間違いや権限のない者による誤った捺印等の不適切な捺印を未然に防止することができる。
【0009】
また、情報取得手段での情報取得が行えなかった場合には、押印ロック手段で押印動作を阻止することも可能となる。これにより、無線タグが設置されていない捺印対象物に対し誤って操作者が捺印してしまうのを未然に防止することもできる。
【0010】
第2発明の印判装置は、上記第1発明において、前記印判アンテナは、前記タグアンテナに対応した偏波面特性を備えた、ダイポールアンテナ、又は平面アンテナ、若しくはループアンテナであることを特徴とする。
【0011】
これにより、印判アンテナを構成するダイポールアンテナ、平面アンテナ、ループアンテナからの偏波面の方向と、捺印箇所のタグアンテナの偏波面の方向とが合致しているかどうか(あるいは合致の度合い)に応じて、情報取得手段による情報取得結果に差を生じさせることが可能となる。この結果、押印動作時において、捺印箇所に対する印判アンテナの方向(言い換えれば操作者が持つ印判装置全体の方向)が正しいかどうかに応じて、押印動作の阻止又は許容を切り替えることができる。したがって、印判装置が正しい捺印箇所に捺印される場合でも、正しい向きで捺印されようとしている場合には押印動作を許容し、誤った向きで捺印されようとしている場合には押印動作を阻止することが可能となる。したがって、操作者の勘違い、握り違い等による捺印方向の間違いを未然に防止することができる。
【0012】
第3発明の印判装置は、上記第1又は第2発明において、前記押印動作時における前記印判装置の前記捺印対象物への接近時に連動して、前記印判アンテナを介した前記情報取得手段による情報取得開始指示のための信号を出力する信号出力手段を有することを特徴とする。
【0013】
これにより、捺印箇所へ近接させて捺印を行う際に、自動的に捺印箇所の無線タグへの情報読み取りを開始することができる。この結果、正しい捺印箇所へ捺印しようとしているのに情報取得が開始されず誤って押印動作が阻止されるのを確実に防止することができる。また、(オン・オフ切り替えがなく)情報取得手段による情報読み取りを常時行う場合のような電力消費の無駄を防止することができる。
【0014】
第4発明の印判装置は、上記第1又は第2発明において、前記押印動作時における前記印判装置の前記捺印対象物への接近時に前記印判アンテナを介した前記情報取得手段による情報取得開始を手動指示するための操作手段を有することを特徴とする。
【0015】
これにより、捺印箇所へ近接させて捺印を行う際に、操作手段を介し、操作者の意志によって確実に捺印箇所の無線タグへの情報読み取りを開始することができる。この結果、操作者が捺印しようとしている捺印箇所の無線タグ以外の無線タグから誤って情報取得を行うのを確実に防止することができる。また、(オン・オフ切り替えがなく)情報取得手段による情報読み取りを常時行う場合のような電力消費の無駄を防止することができる。
【0016】
上記目的を達成するために、第5発明の印判システムは、情報を記憶するIC回路部と情報を送受信するタグアンテナとを有する無線タグを備えた捺印対象物と、前記捺印対象物へ捺印を行うための印判装置とを有する印判システムであって、前記印判装置は、前記捺印対象物に接触して押印する印字体と、前記無線タグに対し無線通信を行うための印判アンテナと、前記印判アンテナを介し、前記無線タグの前記IC回路部に記憶した情報を非接触で取得する情報取得手段と、前記情報取得手段で取得した情報に応じて駆動され、前記印字体の接触による押印動作を阻止可能な押印ロック手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
本願第5発明の印判システムにおいては、印判装置の印判アンテナが書類等の捺印対象物に設けた無線タグと無線通信を行う。そして、印判装置の情報取得手段が無線タグのIC回路部が記憶した情報を非接触で取得し、押印ロック手段が、その情報取得手段が取得した情報に応じて駆動され、印字体の押印動作を阻止可能となっている。
【0018】
これにより、複数の捺印箇所のある捺印対象物において、各捺印箇所に無線タグを設け対応する情報を記憶させておくことで、印判装置が捺印箇所に近接したときにその捺印箇所の無線タグの記憶情報を取得し、押印動作の阻止又は許容を切り替えることができる。この結果、印判装置が正しい捺印箇所に捺印されようとしている場合には押印動作を許容し、印判装置が誤った捺印箇所に捺印されようとしている場合には押印動作を阻止することが可能となる。したがって、操作者の勘違い等による捺印場所の間違いを未然に防止することができる。
【0019】
また、情報取得手段での情報取得が行えなかった場合には、押印ロック手段で押印動作を阻止することも可能となる。これにより、無線タグが設置されていない捺印対象物に対し誤って操作者が捺印してしまうのを未然に防止することもできる。
【0020】
第6発明の印判システムは、上記第5発明において、前記無線タグの前記IC回路部は、前記捺印対象物への押印権限に関する権限関連情報を記憶しており、前記情報取得手段は、前記印判アンテナを介し前記IC回路部に記憶した前記権限関連情報を非接触で取得し、前記押印ロック手段は、前記情報取得手段で取得された前記権限関連情報に応じて、前記印字体の接触による押印動作の阻止・許容を切り替えることを特徴とする。
【0021】
本願第6発明の印判システムにおいては、捺印箇所の無線タグが、対応する権限関連情報を記憶し、情報取得手段で取得した権限関連情報に応じて押印動作の阻止・許容が切り替えられる。
【0022】
これにより、各捺印箇所の無線タグに当該捺印箇所に対応する権限関連情報を記憶させておくことで、その権限に対応した正しい印判装置で捺印が行われようとした場合にはその印判装置による押印動作を許容し、その権限に対応していない誤った印判装置で捺印されようとしている場合にはその印判装置による押印動作を阻止することができる。したがって、権限のない操作者の勘違い等による捺印を未然に防止することができる。
【0023】
第7発明の印判システムは、上記第6発明において、前記印判装置とネットワーク通信を介し接続されたサーバを有し、前記印判装置は、前記情報取得手段で取得した前記権限関連情報と、当該印判装置の識別情報とを、前記ネットワーク通信を介し前記サーバへ出力する情報出力手段を有し、前記サーバは、前記ネットワーク通信を介し前記印判装置の前記情報出力手段より入力した、前記権限関連情報と前記識別情報とに基づき、前記印判装置による前記押印動作の阻止・許容を判定する判定手段を有し、前記印判装置の前記押印ロック手段は、前記サーバの前記判定手段による判定結果に応じて、前記印字体の接触による押印動作の阻止・許容を切り替えることを特徴とする。
【0024】
本願第7発明においては、印判装置の情報取得手段で取得され情報出力手段で出力された権限関連情報を用い、サーバの判定手段が印判装置の押印動作を阻止すべきか許容すべきかを判定する。そして、その判定結果に応じて印判装置の押印ロック手段が押印動作の阻止・許容を切り替える。このように、押印動作の判定を印判装置側でなくサーバ側で行うことで、判定基準の設定や変更をサーバのみで容易に行うことができ、利便性が向上する。特に、各捺印箇所の無線タグのタグ識別情報と各捺印箇所ごとの捺印権限との対応付けをサーバ側にて設定しておくようにすれば、印判装置側では、情報取得手段で無線タグから(権限関連情報としての)タグ識別情報のみを取得してサーバへ出力するとともに、上記対応付けに基づく捺印許可(押印動作の許容)・不許可(押印動作の阻止)の判定結果を取得するだけで足りる。したがって、印判装置側の制御機能を簡素化したり、必要なメモリ容量を低減することができる。
【0025】
第8発明の印判システムは、上記第5乃至第7発明のいずれかにおいて、前記無線タグの前記タグアンテナは、前記捺印対象物に対し所定の方向となる第1偏波面を生成し、前記印判装置の前記押印ロック手段は、前記印判アンテナより生成される第2偏波面の方向と前記第1偏波面の方向との合致性に基づき、前記印字体の接触による押印動作の阻止・許容を切り替えることを特徴とする。
【0026】
これにより、押印動作時における操作者が持つ印判装置の方向が正しいかどうかに応じて、押印動作の阻止又は許容を切り替えることができる。したがって、印判装置が正しい捺印箇所に捺印される場合でも、正しい向きで捺印されようとしている場合には押印動作を許容し、誤った向きで捺印されようとしている場合には押印動作を阻止することが可能となる。したがって、操作者の勘違い、握り違い等による捺印方向の間違いを未然に防止することができる。
【0027】
第9発明の印判システムは、上記第5乃至第8発明のいずれかにおいて、前記印判装置は、前記押印ロック手段が前記印字体の接触による押印動作を許容するように切り替わった場合に、前記押印動作に対応する押印情報を、前記印判アンテナを介し前記無線タグの前記IC回路部に書き込む情報書き込み手段を備えることを特徴とする。
【0028】
捺印時における押印情報を情報書き込み手段で無線タグに書き込むことにより、その後捺印箇所への捺印がかすれたり汚れたりして外見上不鮮明になった場合であっても、正しく捺印されたことを情報として確認することが可能となる。また、例えば無線タグとの通信機能を有しない通常の印判装置で押印されることにより、見かけ上捺印箇所への捺印が行われている場合であっても、無線タグに書き込まれた押印情報を確認することによって、無線タグとの通信機能を有する印判装置による正しい捺印であるか否かを確認することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、捺印場所の間違いや権限のない者による誤った捺印等の不適切な捺印を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1は、本実施形態の印鑑装置の内部構造を表す縦断面図である。
【0032】
図1に示す印鑑装置100(印判装置)は、書類等の捺印対象物に対し捺印すると共に、捺印対象物に設けられた無線タグT(後述)に対し無線通信を行うことが可能な電子印鑑装置である。この印鑑装置100は、上端にインキ補充口111及びこれに着脱自在に嵌合された補充口栓112を備え、下端にインキを含浸した多孔性印材よりなり捺印対象物に接触して押印する印字体113を備えた、円筒状の印鑑本体110と、この印鑑本体110の外周面に回動自在に嵌合固定され、上方より弾性体120(コイルスプリング等)の一端を係止する円筒状の外周ケース130と、この外周ケース130の上部に上記補充口栓112の外周を覆うように着脱自在に嵌合され、捺印の際に操作者によって握られる握り部135と、上記印鑑本体110及び外周ケース130に対し印鑑の軸方向(図1中上下方向)にスライド可能に設けられ、下方より弾性体120の他端を係止するスライダ140とを有している。
【0033】
上記スライダ140は、通常時(捺印を行わない時)には弾性体120の付勢力により図1に示す軸方向位置に弾性保持されており、印字体113はスライダ140の内部に収納された状態となっている。捺印時には、スライダ140は捺印対象物へ接触することにより弾性体120の付勢力に抗して軸方向一方側(図1中上側)にスライドする。そして、スライダ140が軸方向一方側に距離L3だけスライドすると、スライダ140の内部において印鑑本体110の外周面に対し摺動可能に形成されたリング状の摺動突部141が、外周ケース130の内部において印鑑本体110の外周面に嵌合したリング状の嵌合突部131に接触する。このとき、印字体113がスライダ140の下端より露出し、捺印対象物へ接触して押印することが可能となっている。
【0034】
また、印鑑装置100は、スライダ140の内部において印鑑本体110の外周面に設けられ、捺印対象物に設けられた無線タグTに対し無線通信を行うためのコイル状のループアンテナ160(印判アンテナ)と、押印動作時における印鑑装置100の捺印対象物への接近時に連動して、上記ループアンテナ160を介した無線タグTからの情報取得開始指示のための信号を出力するリミットスイッチ170(信号出力手段)と、ループアンテナ160を介し無線タグTから取得した情報に応じて駆動され、印字体113の接触による押印動作を阻止可能なストッパ180(押印ロック手段)とを有している。なお、ここでは印鑑装置100が内蔵するアンテナとしてコイル状のループアンテナを採用しているが、これに限られず、例えばダイポールアンテナや平面アンテナ等を用いてもよい。
【0035】
上記リミットスイッチ170は、先端部に回動可能なレバー171を有している。このレバー171は、スライダ140が軸方向一方側に距離L1だけスライドした際に摺動突部141に接触して持ち上げられるようになっており、これによりリミットスイッチ170はON信号を制御回路190(図2参照)に出力する。また、捺印が終了し、スライダ140が弾性体120の付勢力により軸方向他方側にスライドして上記距離L1の位置より下端側(図1中下側)に戻った際には、レバー171は図示しない弾性手段により復帰するようになっており、これによりリミットスイッチ170はOFF信号を制御回路190に出力するようになっている。なお、ここでは情報取得開始指示のための信号を出力する信号出力手段としてリミットスイッチを用いるようにしたが、このような接触式の検出手段に限られず、例えば光学センサにより摺動突部141の端部を検出する等、非接触式の検出手段を用いてもよい。
【0036】
上記ストッパ180は、ソレノイド等のアクチュエータから構成されており、スライダ140の摺動突部141の摺動経路に対してプランジャ181を進退可能である。ストッパ180がプランジャ181を突出させた場合には、スライダ140は軸方向一方側に距離L2しかスライドすることができなくなる。その結果、印字体113はスライダ140の下端から露出せず、印字体113の接触による押印動作を阻止できるようになっている。一方、ストッパ180がプランジャ181を退避させた場合には、スライダ140は軸方向一方側に距離L3だけスライドすることが可能となる。その結果、印字体113がスライダ140の下端より露出し、捺印対象物へ接触して押印することが可能となっている。なお、ここでは印字体113の接触による押印動作を阻止可能な押印ロック手段としてソレノイドを用いるようにしたが、例えば電磁石の磁力の反発力(又は引力)によりスライダ140のスライドを制限する等、その他のロック手段を用いてもよい。
【0037】
図2は印鑑装置100の電気的構成を表す機能ブロック図である。
【0038】
印鑑装置100は、捺印対象物である書類Sに設けられ、情報を記憶するIC回路部150と情報を送受信するコイル状のタグアンテナ151とを備えた無線タグTとの間でHF帯等の無線通信により情報の送受信を行う上記ループアンテナ160と、上記リミットスイッチ170及びストッパ180と、ループアンテナ160を介し上記無線タグTへアクセスする(読み取り及び書き込みを行う)ための送信回路191及び受信回路192と、これら送受信回路191,192とループアンテナ160とを接続するアンテナ共用器193と、印鑑装置100の識別情報である印鑑識別情報が記憶されたメモリ194と、ストッパ180、送信回路191、及び受信回路192等の制御を行う制御回路190とを有している。そして、上記構成である印鑑装置100と捺印対象物である書類Sとが、印鑑システムIS(印判システム)を構成している。
【0039】
なお、上記ではアンテナ共用器193を用いて1つのアンテナで情報の送受信を行う構成としたが、これに限られず、送信回路191と受信回路192とに対応してアンテナを各々設けるようにしてもよい。また、上記では無線タグTが有するタグアンテナとしてコイル状のループアンテナを採用しているが、これに限られず、例えばダイポールアンテナや平面アンテナ等を用いてもよい。
【0040】
上記送信回路191は、ループアンテナ160を介して無線タグTにアクセスする(読み取り/書き込みを行う)ための搬送波を発生させると共に、上記制御回路190から入力される制御信号に基づいて上記搬送波を変調して質問波を出力する。また、上記受信回路192は、無線タグTからループアンテナ160を介して受信された応答波(応答信号)の復調を行い、上記制御回路190に出力する。
【0041】
リミットスイッチ170は、前述したように、スライダ140が軸方向一方側(図2中上側)に距離L1だけスライドした際(図2中一点鎖線で示す)にON信号を制御回路190に出力する。これにより制御回路190は、送信回路191に制御信号を出力し、ループアンテナ160を介し、無線タグTのIC回路部150に記憶した情報を非接触で取得する。制御回路190は、この取得したタグ情報に応じ、印字体113による押印動作を阻止する場合にはストッパ180に制御信号を出力してプランジャ181を突出させ、スライダ140のスライド範囲を通常位置(図2中実線で示す)から距離L2だけスライドした位置(図2中二点鎖線で示す)までの範囲に限定する。一方、制御回路190は、印字体113による押印動作を許可する場合にはストッパ180に制御信号を出力してプランジャ181を退避させ、スライダ140を通常位置から距離L3だけスライドした位置(図2中点線で示す)までスライド可能とする。
【0042】
図3は、上記無線タグTの機能的構成を表す機能ブロック図である。
【0043】
この図3において、無線タグTは、印鑑装置100側のループアンテナ160と非接触で信号の送受信を行う上記タグアンテナ151と、このタグアンテナ151に接続された上記IC回路部150とを有している。
【0044】
IC回路部150は、タグアンテナ151により受信された質問波を整流する整流部152と、この整流部152により整流された質問波のエネルギーを蓄積し駆動電源とするための電源部153と、上記タグアンテナ151により受信された質問波からクロック信号を抽出して制御部157に供給するクロック抽出部154と、所定の情報信号を記憶し得るメモリ部155と、上記タグアンテナ151に接続された変復調部156と、上記整流部152、クロック抽出部154、及び変復調部156等を介して無線タグTの作動を制御するための制御部157とを備えている。
【0045】
変復調部156は、タグアンテナ151により受信された上記印鑑装置100のループアンテナ160からの質問波の復調を行い、また、上記制御部157からの返信信号を変調し、タグアンテナ151より応答波として送信する。
【0046】
クロック抽出部154は受信した信号からクロック成分を抽出し、当該クロック成分の周波数に対応したクロックを制御部157に供給する。
【0047】
制御部157は、上記変復調部156により復調された受信信号を解釈し、上記メモリ部155において記憶された情報信号に基づいて返信信号を生成し、この返信信号を上記変復調部156により上記タグアンテナ151から返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0048】
上記無線タグTのIC回路部150には、書類Sへの押印権限に関する権限関連情報が記憶されている。この権限関連情報について、図4を用いて説明する。
【0049】
図4は、印鑑装置100の使用場面の一例を示す図である。
【0050】
図4において、この例では捺印対象物である書類Sが稟議書である場合を示している。この書類Sには、起案者、承認者(起案者の上司等)、及び決裁者用の3つの捺印箇所s1,s2,s3が設けられており、各捺印箇所s1,s2,s3に対応する位置には無線タグT1,T2,T3(上記無線タグTと同等の構成である)がそれぞれ設けられている。なお、ここでは無線タグT1,T2,T3を捺印箇所s1,s2,s3の下方にそれぞれ設けるようにしたが、捺印箇所s1,s2,s3の領域内やその他の通信可能な位置に設けてもよい。
【0051】
無線タグT1,T2,T3の上記IC回路部150には、捺印箇所s1,s2,s3への押印権限に関する権限関連情報がそれぞれ記憶されている。この権限関連情報は、各捺印箇所に対し押印可能な権能レベルを表す情報(例えば各捺印箇所への押印権限を有する役職を表す情報)である。例えば図4に示す例では、起案者に対応する無線タグT1のIC回路部150には担当、承認者に対応する無線タグT2のIC回路部150には係長、決裁者に対応する無線タグT3のIC回路部150には部長に対応する役職を表す情報が記憶されている。一方、印鑑装置100の上記メモリ194に記憶された印鑑識別情報には、当該印鑑装置100の操作者の権限関連情報(例えば上記と同様の役職情報)が含まれている。
【0052】
なお、上記無線タグT1,T2,T3のIC回路部150に記憶される権限関連情報は、上記役職情報そのもの(社長、部長、課長等)であってもよいし、これら役職情報に関連付けられた識別情報(タグID等)でもよい。無線タグT1,T2,T3のIC回路部150に識別情報を記憶させる場合には、当該識別情報と役職情報との関連付け情報(テーブル)を印鑑装置100のメモリ194に記憶させておき、当該関連付け情報を参照して役職情報を取得すればよい。一方、印鑑装置100のメモリ194に記憶される権限関連情報は、役職情報そのものとなっている。
【0053】
制御回路190は、捺印箇所に対応する無線タグTのIC回路部150からループアンテナ160を介して取得した権限関連情報と、メモリ194から読み出した印鑑装置100の権限関連情報とを比較し、印鑑装置100を使用する操作者の役職が捺印箇所に対応する役職以上である場合には、印鑑装置100による捺印を許可する。一方、印鑑装置100を使用する操作者の役職が捺印箇所に対応する役職より下である場合には、印鑑装置100による捺印動作を不許可とする。例えば図4に示す例では、印鑑装置100を使用する操作者の役職が部長以上(部長、役員、社長等)である場合には、捺印箇所s3に決裁の捺印を行うことができる。一方、印鑑装置100を使用する操作者の役職が部長より下(課長、係長、担当等)である場合には、捺印箇所s3に決裁の捺印を行うことができないようになっている。
【0054】
図5は、印鑑装置100の制御回路190によって実行される制御内容を表すフローチャートである。なお、制御回路190は、例えば印鑑装置100の電源投入時に本フローを開始するようになっており、この際には印鑑装置100による捺印がロックされた状態(すなわちストッパ180がプランジャ181を突出させた状態)で本フローを開始するようになっている(以下同様)。
【0055】
ステップS10では、制御回路190は、リミットスイッチ170からスライダ140が軸方向一方側に距離L1だけスライドしたことを表すON信号が入力されたか否かを判定する。ON信号が入力されるまで本ステップを繰り返し、入力されると判定が満たされてステップS20に移る。
【0056】
ステップS20では、制御回路190は、送信回路191に制御信号を出力し、無線タグT(のIC回路部150のメモリ部155。以下同様)に記憶されたタグ情報(すなわち権限関連情報)を取得するための問い合わせ信号として、所定の変調を行った質問波をループアンテナ160を介して読み取り対象の無線タグT(言い換えれば捺印しようとする捺印箇所に対応する無線タグT)に送信する。
【0057】
ステップS30では、制御回路190は、上記問い合わせ信号に対応して読み取り対象の無線タグTから返信されたリプライ信号をループアンテナ160を介して受信したか否かを判定する。捺印対象物である書類Sに無線タグTが設けられていない場合や無線通信が失敗した場合等、リプライ信号を受信しなかった場合には、判定が満たされずに本フローを終了する。一方、リプライ信号を受信した場合には、判定が満たされてステップS40に移る。
【0058】
ステップS40では、制御回路190は、上記ループアンテナ160を介して受信したリプライ信号に基づき、当該無線タグTに記憶されたタグ情報(権限関連情報)を取得する。
【0059】
ステップS50では、制御回路190は、メモリ194から印鑑装置100の印鑑識別情報を読み出す。
【0060】
ステップS60では、制御回路190は、上記ステップS40で無線タグTから取得した権限関連情報と、上記ステップS50でメモリ194から読み出した印鑑識別情報に含まれる権限関連情報とに基づき、印鑑装置100による書類S(の対応する捺印箇所)への捺印を許可するか否かを判定する。すなわち制御回路190は、上述したように無線タグTから取得した権限関連情報とメモリ194から読み出した印鑑装置100の権限関連情報とを比較し、印鑑装置100を使用する操作者の役職が捺印箇所に対応する役職より下である場合には、印鑑装置100による捺印動作を不許可とする。この場合には、判定が満たされずに本フローを終了する。一方、印鑑装置100を使用する操作者の役職が捺印箇所に対応する役職以上である場合には、印鑑装置100による捺印を許可する。この場合には、判定が満たされてステップS70に移る。
【0061】
ステップS70では、制御回路190は、ストッパ180に制御信号を出力し、ストッパ180のプランジャ181を退避させる。これにより、スライダ140は軸方向一方側に距離L3だけスライドすることが可能となり、印鑑装置100による捺印ロックが解除された状態となる。その結果、印字体113がスライダ140の下端より露出し、捺印対象物へ接触して押印することができる。
【0062】
ステップS80では、制御回路190は、リミットスイッチ170からスライダ140が弾性体120の付勢力により軸方向他方側にスライドして距離L1の位置より下端側(図1中下側)に戻ったことを表すOFF信号が入力されたか否かを判定する。印鑑装置100による書類Sへの捺印が終了し、印鑑装置100の書類Sからの離間に連動してスライダ140が通常位置に復帰すると、リミットスイッチ170からOFF信号が入力され、判定が満たされてステップS90に移る。
【0063】
ステップS90では、制御回路190は、ストッパ180に制御信号を出力し、ストッパ180のプランジャ181を突出させる。これにより、スライダ140は軸方向一方側に距離L2しかスライドすることができなくなり、印鑑装置100は捺印がロックされた状態に復帰する。その後、本フローを終了する。
【0064】
なお、上記ステップS40は、特許請求の範囲各項記載の印判アンテナを介し、無線タグのIC回路部に記憶した情報を非接触で取得する情報取得手段を構成する。
【0065】
以上説明した本実施形態の印鑑装置100においては、ループアンテナ160を介して書類Sに設けた無線タグTと無線通信を行い、無線タグTのIC回路部150が記憶した権限関連情報を非接触で取得する。そして、制御回路190がこの無線タグTから取得した権限関連情報と印鑑装置100の印鑑識別情報に含まれる権限関連情報とを比較することにより、その比較結果に応じてストッパ180が駆動され、印字体113の押印動作を阻止可能となっている。
【0066】
これにより、前述の図4に示す例のように複数の捺印箇所s1,s2,s3のある書類Sにおいて、各捺印箇所s1,s2,s3に無線タグT1,T2,T3をそれぞれ設け対応する権限関連情報を記憶させておくことで、印鑑装置100が捺印箇所s1,s2,s3のいずれかに近接したときに対応する捺印箇所の無線タグTの記憶情報を取得し、印鑑装置100の権限関連情報と比較することにより、印字体113の押印動作の阻止又は許容を切り替えることができる。この結果、印鑑装置100が正しい捺印箇所(操作者の権限に対応する捺印箇所)に捺印されようとしている場合には印字体113の押印動作を許容し、印鑑装置100が誤った捺印箇所(操作者の権限に対応していない捺印箇所)に捺印されようとしている場合には印字体113の押印動作を阻止することができる。したがって、操作者の勘違い等による捺印場所の間違いや、権限のない者による誤った捺印等の不適切な捺印を未然に防止することができる。
【0067】
また、無線タグTが設けられていない書類Sに対し捺印を実行しようとする場合には、無線タグTからの情報取得が行えないことから、ストッパ180で印字体113の押印動作を阻止することができる。これにより、無線タグTが設置されていない書類Sに対し誤って操作者が捺印してしまうのを未然に防止することもできる。
【0068】
また、本実施形態では特に、捺印動作時における印鑑装置100の書類Sへの接近時に連動して、スライダ140が軸方向一方側に距離L1だけスライドした際に、リミットスイッチ170から制御回路190に対しループアンテナ160を介した無線タグTからの情報取得開始指示のための信号を出力する。これにより、捺印箇所へ近接させて捺印を行う際に、自動的に捺印箇所の無線タグTへの情報読み取りを開始することができる。この結果、正しい捺印箇所へ捺印しようとしているのに情報取得が開始されず誤って押印動作が阻止されるのを確実に防止することができる。また、ループアンテナ160を介した無線タグTからの情報読み取りを常時行う場合に比べ、印鑑装置100の電力消費の無駄を防止することができる。
【0069】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0070】
(1)捺印可否の判定をサーバで行う場合
上記実施形態では、印鑑装置100による捺印可否判定を印鑑装置100自身(制御回路190)で行うようにしたが、これに限られず、別途設けたサーバで捺印可否判定を行うようにしてもよい。
【0071】
図6は、本変形例の印鑑システムIS(印判システム)の全体構成を表すシステム構成図である。
【0072】
図6において、印鑑システムISは、無線タグTを備えた捺印対象物である書類Sと、書類Sへ捺印を行うための印鑑装置100と、この印鑑装置100と有線あるいは無線によるネットワーク通信NW(無線LAN、Bluetooth等)を介して接続されたサーバ200と、このサーバ200と接続されたデータベース300とを有している。
【0073】
印鑑装置100及び書類Sの構成は前述の実施形態と同様である。なお本変形例においては、無線タグT1,T2,T3(図6では図示省略)のIC回路部150に記憶される権限関連情報は、役職情報そのものに関連付けられた識別情報(この例ではタグID)である。また同様に、印鑑装置100のメモリ194に記憶される印鑑識別情報も、当該情報そのものに関連付けられた識別情報(この例では印鑑識別ID)となっている。上記タグIDと役職情報との関連付け情報、及び印鑑識別IDと印鑑識別情報(役職情報を含む)との関連付け情報(テーブル)は、上記データベース300に格納保持されており、サーバ200が必要に応じて参照可能となっている。
【0074】
本変形例では、印鑑装置100が、ループアンテナ160を介して無線タグTから取得した上記タグID及びメモリ194から読み出した印鑑識別IDをネットワーク通信NWを介しサーバ200に送信する。サーバ200は、これら受信したタグID及び印鑑識別IDに基づき、印鑑装置100による押印動作の阻止・許容を判定し、その判定結果を印鑑装置100に送信する。これにより、印鑑装置100の制御回路190は、上記受信したサーバ200の判定結果に応じてストッパ180を駆動させ、印鑑装置100による捺印の可否(言い換えれば印字体113の接触による押印動作の阻止・許容)を切り替える。
【0075】
図7は、本変形例の印鑑装置100の制御回路190によって実行される制御内容を表すフローチャートである。なお、この図7において、前述の図5と同様の手順には同符号を付している。
【0076】
ステップS10〜ステップS50は前述の図5と同様であるので説明を省略する。ステップS51では、制御回路190は、上記ステップS40で無線タグTから取得したタグIDと、上記ステップS50でメモリ194から読み出した印鑑識別IDとを、ネットワーク通信NWを介してサーバ200に送信する。
【0077】
ステップS52では、制御回路190は、サーバ200より送信された印鑑装置100による捺印の可否に関する情報をネットワーク通信NWを介して受信する。
【0078】
ステップS60では、制御回路190は、上記ステップS52でサーバ200から受信した捺印可否情報に基づき、印鑑装置100による書類S(の対応する捺印箇所)への捺印を許可するか否かを判定する。サーバ200から捺印不可に対応する情報を受信した場合には、判定が満たされずに本フローを終了する。一方、サーバ200から捺印可能に対応する情報を受信した場合には、判定が満たされてステップS70に移る。
【0079】
その後のステップS70〜ステップS90については、前述の図5と同様であるので説明を省略する。
【0080】
なお、上記ステップS51は、特許請求の範囲各項記載の情報取得手段で取得した権限関連情報と、当該印判装置の識別情報とを、ネットワーク通信を介しサーバへ出力する情報出力手段を構成する。
【0081】
図8は、上記サーバ200の制御回路210(図示せず)によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【0082】
ステップS110では、制御回路210は、無線タグTのタグID及び印鑑装置100の印鑑識別IDを、印鑑装置100よりネットワーク通信NWを介して受信したか否かを判定する(図7中ステップS51参照)。タグID及び印鑑識別IDを受信するまで本ステップを繰り返し、受信したら判定が満たされてステップS120に移る。
【0083】
ステップS120では、制御回路210はデータベース300にアクセスし、上記受信したタグID及び印鑑識別IDに基づきデータベース300に格納された関連付け情報を検索して、タグIDに対応する役職情報と、印鑑識別IDに対応する印鑑識別情報に含まれる役職情報とを取得する。
【0084】
ステップS130では、制御回路210は、上記データベース300から取得したタグIDに対応する役職情報及び印鑑識別IDに対応する役職情報に基づき、印鑑装置100による書類S(の対応する捺印箇所)への捺印を許可するか否かを判定する。すなわち制御回路210は、前述と同様に両方の役職情報を比較し、印鑑装置100を使用する操作者の役職が捺印箇所に対応する役職以上である場合には、印鑑装置100による捺印を許可する。この場合には、判定が満たされてステップS140に移り、制御回路210は、捺印可能に対応する情報をネットワーク通信NWを介して印鑑装置100に送信する。そして、本フローを終了する。一方、印鑑装置100を使用する操作者の役職が捺印箇所に対応する役職より下である場合には、印鑑装置100による捺印動作を不許可とする。この場合には、判定が満たされずにステップS150に移り、制御回路210は、捺印不可に対応する情報をネットワーク通信NWを介して印鑑装置100に送信する。そして、本フローを終了する。
【0085】
なお、上記ステップS130は、特許請求の範囲各項記載のネットワーク通信を介し印判装置の情報出力手段より入力した、権限関連情報と識別情報とに基づき、印判装置による押印動作の阻止・許容を判定する判定手段を構成する。
【0086】
以上説明した変形例においては、印鑑装置100においてループアンテナ160を介して無線タグTから取得され、ネットワーク通信NWを介して出力されたタグIDを用い、サーバ200の制御回路210が印鑑装置100の押印動作を阻止すべきか許容すべきかを判定する。そして、その判定結果が印鑑装置100に送信されると、印鑑装置100においてはその判定結果に応じてストッパ180が印字体113による押印動作の阻止・許容を切り替える。このように、押印動作の判定を印鑑装置100側でなくサーバ200側で行うことで、例えば判定基準の設定や変更がある場合であってもサーバ200側のみで容易に行うことができ、利便性が向上する。特に、上記変形例のように、各捺印箇所の無線タグTのタグIDと各捺印箇所ごとの捺印権限との対応付けをサーバ200側(正確にはデータベース300)にて設定しておくことにより、印鑑装置100側では、無線タグTから権限関連情報としてのタグIDのみを取得してサーバ200へ出力するとともに、サーバ200側で行われる上記対応付けに基づく捺印許可・不許可の判定結果を取得するだけで足りる。したがって、印鑑装置100側の制御機能を簡素化したり、必要なメモリ容量を低減することができる。
【0087】
なお、以上説明した変形例(1)においては、無線タグTのIC回路部150に記憶される権限関連情報及び印鑑装置100のメモリ194に記憶される印鑑識別情報として識別情報(タグID、印鑑識別ID)を記憶させるようにしたが、必ずしも識別情報である必要はなく、前述の実施形態と同様に権限関連情報そのもの及び印鑑識別情報そのものを記憶させるようにしてもよい。この場合、データベース300を不要とすることができる。
【0088】
(2)アンテナの偏波面特性を利用する場合
本変形例は、印鑑装置100の内蔵アンテナ及び無線タグTのタグアンテナとして偏波面特性を備えたアンテナを用い、両アンテナの偏波面特性を対応させることにより、捺印箇所に対する印鑑装置100の捺印方向が正しいかどうかに応じて捺印の可否を切り替えるものである。
【0089】
図9は、本変形例の印鑑装置100の使用場面の一例を示す図である。図9(a)は捺印動作が許容される場合、図9(b)は捺印動作が阻止される場合を示している。
【0090】
これら図9(a)及び図9(b)において、捺印対象物である書類Sには、前述した3つの捺印箇所s1,s2,s3が設けられており、各捺印箇所s1,s2,s3に対応する位置には無線タグT1′,T2′,T3′がそれぞれ設けられている。これら無線タグT1′,T2′,T3′は、情報を記憶するIC回路部150′と情報を送受信するダイポールアンテナ151′とをそれぞれ備えている。これらのダイポールアンテナ151′は、書類Sに対し所定の方向となる偏波面(第1偏波面。図9に示す例では、図9中左右方向に略平行且つ書類Sに略垂直な偏波面)特性を有している。また本変形例の印鑑装置100は、その内部に印鑑装置100に対し所定の方向となる偏波面(第2偏波面)特性を備えたダイポールアンテナ160′を有している。上記印鑑装置100のダイポールアンテナ160′の偏波面の方向と、無線タグTのダイポールアンテナ151′の偏波面の方向とが合致した場合に、印鑑装置100による捺印が正しい方向で行われるように、上記ダイポールアンテナ151′,160′の偏波面特性は対応付けられている。なお、印鑑装置100のその他の構成は、前述の実施形態と同様である。
【0091】
印鑑装置100の制御回路190は、図9(a)に示すように、印鑑装置100のダイポールアンテナ160′の偏波面の方向と無線タグTのダイポールアンテナ151′の偏波面の方向とが合致した場合(あるいは合致の度合いが所定値以上である場合)には、ストッパ180のプランジャ181を退避させて捺印ロックを解除する。その結果、印鑑装置100による捺印箇所s3への捺印が許容される。一方、図9(b)に示すように、印鑑装置100のダイポールアンテナ160′の偏波面の方向と無線タグTのダイポールアンテナ151′の偏波面の方向とが合致しない場合(あるいは合致の度合いが所定値より下である場合)には、ストッパ180のプランジャ181を突出させて捺印ロック状態とする。その結果、印鑑装置100による捺印箇所s3への捺印が阻止されるようになっている。
【0092】
図10は、本変形例における印鑑装置100の制御回路190によって実行される制御内容を表すフローチャートである。なお、この図10において、前述の図5と同様の手順には同符号を付している。
【0093】
ステップS10〜ステップS20は前述の図5と同様であるので説明を省略する。次のステップS30Aでは、制御回路190は、鑑装置100のダイポールアンテナ160′の偏波面の方向と無線タグTのダイポールアンテナ151′の偏波面の方向とが合致するか否か(あるいは合致の度合いが所定値以上であるか否か)をタグが読めるか否かで判定する。両者の偏波面が合致するまで(すなわちタグが読めるまで)上記ステップS20のタグ読み取りと本ステップを繰り返し、(操作者が印鑑装置100の向きを是正することにより)偏波面が合致した(すなわちタグが読めた)場合には、判定が満たされてステップS40に移る。その後のステップS40〜ステップS90は前述の図5と同様であるので説明を省略する。
【0094】
以上説明した変形例によれば、印鑑装置100が内蔵するダイポールアンテナ160′からの偏波面の方向と、捺印箇所に対応する無線タグTのタグアンテナ151′の偏波面の方向とが合致しているかどうか(あるいは合致の度合い)に応じて、印鑑装置100による捺印の可否を決定することができる。この結果、押印動作時において、操作者が持つ印鑑装置100の方向が正しいかどうかに応じて、押印動作の阻止又は許容を切り替えることができる。したがって、印鑑装置100が正しい捺印箇所に捺印される場合でも、正しい向きで捺印されようとしている場合には押印動作を許容し、誤った向きで捺印されようとしている場合には押印動作を阻止することができる。したがって、操作者の勘違い、握り違い等による捺印方向の間違いを未然に防止することができる。
【0095】
なお、上記変形例では印鑑装置100の内蔵アンテナ及び無線タグTのタグアンテナとしてダイポールアンテナを用いるようにしたが、これに限られず、偏波面特性を備えた平面アンテナ、若しくはループアンテナ等を用いてもよい。
【0096】
(3)捺印時に無線タグに対し情報書き込みを行う場合
図11は、本変形例における印鑑装置100の制御回路190によって実行される制御内容を表すフローチャートである。なお、この図11において、前述の図5と同様の手順には同符号を付している。
【0097】
ステップS10〜ステップS70は前述の図5と同様であるので説明を省略する。ステップS75では、制御回路190は、送信回路191に制御信号を出力し、無線タグTに対し印鑑装置100の押印動作に対応する押印情報(前述した印鑑識別情報、日付、操作者情報等)を書き込むための書き込み信号として、所定の変調を行った質問波をループアンテナ160を介して書き込み対象の無線タグT(言い換えれば捺印しようとする捺印箇所に対応する無線タグT)に送信する。その後のステップS80及びステップS90は前述の図5と同様であるので説明を省略する。
【0098】
なお、上記ステップS75は、特許請求の範囲各項記載の押印ロック手段が印字体の接触による押印動作を許容するように切り替わった場合に、押印動作に対応する押印情報を、印判アンテナを介し無線タグのIC回路部に書き込む情報書き込み手段を構成する。
【0099】
本変形例によれば、捺印時における押印情報を無線タグTに書き込むことにより、その後捺印箇所への捺印がかすれたり汚れたりして外見上不鮮明になった場合であっても、無線タグTに書き込まれた押印情報をリーダで読み取って確認することによって、正しく捺印されたことを情報として確認することができる。また、例えば無線タグTとの通信機能を有しない通常の印鑑で押印されることにより、見かけ上捺印箇所への捺印が行われている場合であっても、無線タグTに書き込まれた押印情報を確認することによって、無線タグTとの通信機能を有する印鑑装置100による正しい捺印であるか否かを確認することもできる。
【0100】
(4)印鑑装置に通信開始を指示するための操作ボタンを設ける場合
上記実施形態では、リミットスイッチ170で印鑑装置100の書類Sへの接近を検出し、自動的に無線タグTへの情報読み取りを開始するようにしたが、これに限られず、押印動作時における印鑑装置100の書類Sへの接近時にループアンテナ160を介した無線タグTからの情報取得開始を手動指示するための操作ボタン(操作手段。図示せず)を印鑑装置100に設けておき、操作者が手動操作で情報読み取りを実行できるようにしてもよい。
【0101】
図12は、本変形例における印鑑装置100の制御回路190によって実行される制御内容を表すフローチャートである。なお、この図12において、前述の図5と同様の手順には同符号を付している。
【0102】
ステップS5では、制御回路190は、操作者により操作ボタンが操作されたか否かを、操作ボタンからのON信号が入力されたか否かにより判定する。ON信号が入力されるまで本ステップを繰り返し、入力された場合には判定が満たされてステップS20に移る。その後のステップS20〜ステップS90は前述の図5と同様であるので説明を省略する。
【0103】
以上説明した変形例によれば、捺印箇所へ近接させて捺印を行う際に、操作ボタンを介し、操作者の意志によって確実に捺印箇所の無線タグTへの情報読み取りを開始することができる。この結果、操作者が捺印しようとしている捺印箇所の無線タグT以外の無線タグTから誤って情報取得を行うのを確実に防止することができる。また、無線タグTからの情報読み取りを常時行う場合に比べ、印鑑装置100の電力消費の無駄を防止することができる。
【0104】
(5)その他
以上では、捺印対象物である書類Sに捺印箇所が複数ある場合を例にとって説明したが、捺印箇所が1つしかない場合にも本発明は適用可能であることは言うまでもない。この場合、捺印対象物である書類Sに対し捺印権限の無い者が誤って捺印してしまうことを防ぐことができる。
【0105】
以上では、印鑑装置100を用いる操作者が捺印箇所への捺印権限を有するか否かに応じて捺印の許可・不許可を行う場合を例にとって説明したが、これに限られず、例えば各印鑑装置100による捺印の順番が予め定まっている場合において(スタンプラリー等)、印鑑装置100による捺印が適正な順番であるか否かに応じて捺印の許可・不許可を実行するようにしてもよい。
【0106】
また以上では、印判装置として個人が所有する印鑑を用いる場合を例にとって説明したが、これに限られず、例えば会社名や所定のメッセージ等を表示するスタンプに適用してもよい。
【0107】
なお、本明細書において説明したフローチャートは、本発明を当該フローチャートに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は変更等を行ってもよい。さらに、本明細書において説明した機能ブロック図において、図中に示す矢印は信号の流れ方向の一例を示すものであり、信号の流れ方向を矢印方向のみに限定するものではない。
【0108】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0109】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の一実施形態の印鑑装置の内部構造を表す縦断面図である。
【図2】印鑑装置の電気的構成を表す機能ブロック図である。
【図3】無線タグの機能的構成を表す機能ブロック図である。
【図4】印鑑装置の使用場面の一例を示す図である。
【図5】印鑑装置の制御回路によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【図6】捺印可否の判定をサーバで行う変形例における印鑑システムの全体構成を表すシステム構成図である。
【図7】捺印可否の判定をサーバで行う変形例における印鑑装置の制御回路によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【図8】サーバの制御回路によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【図9】アンテナの偏波面特性を利用する変形例における印鑑装置の使用場面の一例を示す図である。
【図10】アンテナの偏波面特性を利用する変形例における印鑑装置の制御回路によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【図11】捺印時に無線タグに対し情報書き込みを行う変形例における印鑑装置の制御回路によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【図12】印鑑装置に通信開始を指示するための操作ボタンを設ける変形例における印鑑装置の制御回路によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0111】
100 印鑑装置(印判装置)
113 印字体
150 IC回路部
150′ IC回路部
151 タグアンテナ
151′ ダイポールアンテナ
160 ループアンテナ(印判アンテナ)
160′ ダイポールアンテナ(印判アンテナ)
170 リミットスイッチ(信号出力手段)
180 ストッパ(押印ロック手段)
200 サーバ
IS 印鑑システム(印判システム)
NW ネットワーク通信
T 無線タグ
S 書類(捺印対象物)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捺印対象物に接触して押印する印字体と、
前記捺印対象物に設けられ、情報を記憶するIC回路部と情報を送受信するタグアンテナとを備えた無線タグに対し無線通信を行うための印判アンテナと、
前記印判アンテナを介し、前記無線タグの前記IC回路部に記憶した情報を非接触で取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段で取得した情報に応じて駆動され、前記印字体の接触による押印動作を阻止可能な押印ロック手段と
を有することを特徴とする印判装置。
【請求項2】
前記印判アンテナは、
前記タグアンテナに対応した偏波面特性を備えた、ダイポールアンテナ、又は平面アンテナ、若しくはループアンテナである
ことを特徴とする請求項1記載の印判装置。
【請求項3】
前記押印動作時における前記印判装置の前記捺印対象物への接近時に連動して、前記印判アンテナを介した前記情報取得手段による情報取得開始指示のための信号を出力する信号出力手段を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の印判装置。
【請求項4】
前記押印動作時における前記印判装置の前記捺印対象物への接近時に前記印判アンテナを介した前記情報取得手段による情報取得開始を手動指示するための操作手段を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の印判装置。
【請求項5】
情報を記憶するIC回路部と情報を送受信するタグアンテナとを有する無線タグを備えた捺印対象物と、
前記捺印対象物へ捺印を行うための印判装置と
を有する印判システムであって、
前記印判装置は、
前記捺印対象物に接触して押印する印字体と、
前記無線タグに対し無線通信を行うための印判アンテナと、
前記印判アンテナを介し、前記無線タグの前記IC回路部に記憶した情報を非接触で取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段で取得した情報に応じて駆動され、前記印字体の接触による押印動作を阻止可能な押印ロック手段と
を備えることを特徴とする印判システム。
【請求項6】
前記無線タグの前記IC回路部は、
前記捺印対象物への押印権限に関する権限関連情報を記憶しており、
前記情報取得手段は、
前記印判アンテナを介し前記IC回路部に記憶した前記権限関連情報を非接触で取得し、
前記押印ロック手段は、
前記情報取得手段で取得された前記権限関連情報に応じて、前記印字体の接触による押印動作の阻止・許容を切り替える
ことを特徴とする請求項5記載の印判システム。
【請求項7】
前記印判装置とネットワーク通信を介し接続されたサーバを有し、
前記印判装置は、
前記情報取得手段で取得した前記権限関連情報と、当該印判装置の識別情報とを、前記ネットワーク通信を介し前記サーバへ出力する情報出力手段を有し、
前記サーバは、
前記ネットワーク通信を介し前記印判装置の前記情報出力手段より入力した、前記権限関連情報と前記識別情報とに基づき、前記印判装置による前記押印動作の阻止・許容を判定する判定手段を有し、
前記印判装置の前記押印ロック手段は、前記サーバの前記判定手段による判定結果に応じて、前記印字体の接触による押印動作の阻止・許容を切り替える
ことを特徴とする請求項6記載の印判システム。
【請求項8】
前記無線タグの前記タグアンテナは、
前記捺印対象物に対し所定の方向となる第1偏波面を生成し、
前記印判装置の前記押印ロック手段は、
前記印判アンテナより生成される第2偏波面の方向と前記第1偏波面の方向との合致性に基づき、前記印字体の接触による押印動作の阻止・許容を切り替える
ことを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1項記載の印判システム。
【請求項9】
前記印判装置は、
前記押印ロック手段が前記印字体の接触による押印動作を許容するように切り替わった場合に、前記押印動作に対応する押印情報を、前記印判アンテナを介し前記無線タグの前記IC回路部に書き込む情報書き込み手段を備える
ことを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか1項記載の印判システム。
【請求項1】
捺印対象物に接触して押印する印字体と、
前記捺印対象物に設けられ、情報を記憶するIC回路部と情報を送受信するタグアンテナとを備えた無線タグに対し無線通信を行うための印判アンテナと、
前記印判アンテナを介し、前記無線タグの前記IC回路部に記憶した情報を非接触で取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段で取得した情報に応じて駆動され、前記印字体の接触による押印動作を阻止可能な押印ロック手段と
を有することを特徴とする印判装置。
【請求項2】
前記印判アンテナは、
前記タグアンテナに対応した偏波面特性を備えた、ダイポールアンテナ、又は平面アンテナ、若しくはループアンテナである
ことを特徴とする請求項1記載の印判装置。
【請求項3】
前記押印動作時における前記印判装置の前記捺印対象物への接近時に連動して、前記印判アンテナを介した前記情報取得手段による情報取得開始指示のための信号を出力する信号出力手段を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の印判装置。
【請求項4】
前記押印動作時における前記印判装置の前記捺印対象物への接近時に前記印判アンテナを介した前記情報取得手段による情報取得開始を手動指示するための操作手段を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の印判装置。
【請求項5】
情報を記憶するIC回路部と情報を送受信するタグアンテナとを有する無線タグを備えた捺印対象物と、
前記捺印対象物へ捺印を行うための印判装置と
を有する印判システムであって、
前記印判装置は、
前記捺印対象物に接触して押印する印字体と、
前記無線タグに対し無線通信を行うための印判アンテナと、
前記印判アンテナを介し、前記無線タグの前記IC回路部に記憶した情報を非接触で取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段で取得した情報に応じて駆動され、前記印字体の接触による押印動作を阻止可能な押印ロック手段と
を備えることを特徴とする印判システム。
【請求項6】
前記無線タグの前記IC回路部は、
前記捺印対象物への押印権限に関する権限関連情報を記憶しており、
前記情報取得手段は、
前記印判アンテナを介し前記IC回路部に記憶した前記権限関連情報を非接触で取得し、
前記押印ロック手段は、
前記情報取得手段で取得された前記権限関連情報に応じて、前記印字体の接触による押印動作の阻止・許容を切り替える
ことを特徴とする請求項5記載の印判システム。
【請求項7】
前記印判装置とネットワーク通信を介し接続されたサーバを有し、
前記印判装置は、
前記情報取得手段で取得した前記権限関連情報と、当該印判装置の識別情報とを、前記ネットワーク通信を介し前記サーバへ出力する情報出力手段を有し、
前記サーバは、
前記ネットワーク通信を介し前記印判装置の前記情報出力手段より入力した、前記権限関連情報と前記識別情報とに基づき、前記印判装置による前記押印動作の阻止・許容を判定する判定手段を有し、
前記印判装置の前記押印ロック手段は、前記サーバの前記判定手段による判定結果に応じて、前記印字体の接触による押印動作の阻止・許容を切り替える
ことを特徴とする請求項6記載の印判システム。
【請求項8】
前記無線タグの前記タグアンテナは、
前記捺印対象物に対し所定の方向となる第1偏波面を生成し、
前記印判装置の前記押印ロック手段は、
前記印判アンテナより生成される第2偏波面の方向と前記第1偏波面の方向との合致性に基づき、前記印字体の接触による押印動作の阻止・許容を切り替える
ことを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1項記載の印判システム。
【請求項9】
前記印判装置は、
前記押印ロック手段が前記印字体の接触による押印動作を許容するように切り替わった場合に、前記押印動作に対応する押印情報を、前記印判アンテナを介し前記無線タグの前記IC回路部に書き込む情報書き込み手段を備える
ことを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか1項記載の印判システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−301274(P2009−301274A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154250(P2008−154250)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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