説明

印刷システム、印刷実行装置、印刷方法、印刷実行方法および印刷実行用プログラム

【課題】印刷要求と印刷実行指示が異なるタイミングで行われ、かつ、印刷要求時点で文書データを印刷する出力装置が決定していない場合であっても、印刷要求時の印刷設定に基づいて、出力装置が保証する品質で文書データを印刷できる印刷システムを提供する。
【解決手段】共通印刷設定指定手段71は、出力端末ごとに設定可能なそれぞれの印刷設定を包含する共通印刷設定の中から、印刷要求が行われる文書データに対する印刷設定をユーザに指定させる。作成対象選択手段92は、出力端末および文書データを指定して印刷実行指示が行われたときに、印刷出力用データ作成手段91の中からその出力端末に応じて一の印刷出力用データ作成手段を選択する。選択された印刷出力用データ作成手段91は、抽出された印刷設定に基づいて、抽出された文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介して文書データを印刷する印刷システム、印刷実行装置、印刷方法、印刷実行方法および印刷実行用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレットPC(パーソナルコンピュータ)といった可搬型の電子デバイスの普及に伴い、社外など公共の場においてオフィスワークを実施する場面が拡大することが予想される。電子デバイスの普及により、電子データを用いたプレゼンテーションの利用は増加しているが、顧客相手の打ち合わせの場では、依然として紙に印刷した資料を使用するケースが多々見受けられる。
【0003】
また、クラウド型のプリンティングサービスを考えた場合、いつでもどこでもデータが利用であるという利点を生かして、どこにいても印刷が可能なプリンティングサービスの需要が高まってくると考えられる。したがって、プリンタ、複合機等の出力端末に印刷用データを蓄積する方式に代わり、ネットワーク環境(ネットワーク上の記憶装置など)に印刷用データを蓄積しておき、印刷直前に出力端末に送信する方式が拡大することが考えられる。
【0004】
ところで、ユーザが文書データを印刷する場合、一般な方法では、ユーザは、出力するプリンタを指定して印刷要求を行う。このとき、印刷要求を行う端末には、プリンタごとに準備されたプリンタドライバがインストールされている。ユーザがプリンタごとに定められた印刷設定を指定して印刷要求を行うと、端末は、指定された印刷設定に基づいて文書データを各プリンタの印刷用データに変換する。そして、端末から印刷実行指示が行われると、プリンタは、端末が変換した印刷用データに基づいて印刷処理を行う。
【0005】
ここで、印刷要求とは、印刷対象とする文書データとその文書データを印刷する方法(以下、印刷設定と記す。)を指定することを示し、印刷実行指示とは、印刷設定に基づいて出力装置に文書データを印刷させる指示を行うことを示す。
【0006】
特許文献1には、印刷データの変換または展開を行う印刷制御装置が記載されている。特許文献1に記載された印刷制御装置は、プリンタに印刷される印刷データと、その印刷データのX方向の画素数やデータ作成時の解像度などを示す印刷パラメータとを記憶する。そして、印刷時に指定したプリンタの印刷パラメータと、出力するプリンタの印刷パラメータとを比較して、もとの印刷データが変換される。
【0007】
特許文献2には、出力指示された印刷データをセキュアに印刷する印刷システムが記載されている。特許文献2に記載された印刷システムでは、ユーザが携帯端末をプリンタにかざすと、そのプリンタから通知を受けた印刷管理サーバが、ユーザに対応する印刷データの一覧をユーザの携帯端末に送信する。そして、ユーザが選択した印刷データを携帯端末が印刷管理サーバに送信し、さらに、ユーザが再度携帯端末をプリンタにかざすと、印刷管理サーバは、そのプリンタにユーザの選択した印刷データを出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−216482号公報
【特許文献2】特開2009−301185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方で、例えば、印刷要求を行った文書データを外出先のプリンタで印刷したい場合、印刷要求を行う時点では、出力するプリンタが決定していない。しかし、どこにいても印刷を可能にするためには、文書データを出力可能なプリンタの選択肢を広くすることが必要である。印刷要求時に指定したプリンタしか印刷ができないとすると、印刷可能なプリンタの選択肢が狭まってしまい、どこにいても印刷を可能にするプリンティングサービスの要求を満たすことができないからである。
【0010】
しかし、一般的な方法では、印刷要求を行った後でプリンタを指定することは困難である。そのため、仮にプリンタごとのプリンタドライバを用いて印刷用データを作成した場合、その印刷用データが必ずしも指定したプリンタから出力されるとは限らない。そのため、この印刷用データが印刷要求時に指定されたプリンタ以外のプリンタから出力された場合、必ずしもプリンタが保証する印刷画質で文書データが印刷されるとは限らないという問題がある。
【0011】
特許文献1に記載された印刷制御装置も、プリンタが先に指定されることを前提としている。そのため、特許文献1に記載された印刷制御装置は、指定したプリンタに基づいて作成した印刷用データを出力するプリンタに合わせて再度変換する処理が必要になる。しかし、特許文献1に記載された印刷制御装置で変換した印刷用データが、必ずしも出力されるプリンタの性能にあったデータになるとは限らない。すなわち、指定されたプリンタを用いて通常印刷される品質の文書データが印刷されるとは限らないという問題がある。
【0012】
特許文献2に記載された印刷システムでは、プリンタに印刷データを出力する際、プリンタのIPアドレスをもとにプリンタドライバを選択し、選択されたプリンタドライバを通して帳票データが印刷される。しかし、特許文献2に記載された印刷システムでは、保存された帳票データに印刷実行指示を行うことができるだけであり、ユーザは出力される文書データがどのような設定で印刷されるか、出力指示を行うまで分からないという問題がある。そのため、印刷実行指示が行われるときには、ユーザが文書データの印刷要求を行った際の印刷設定が反映されることが好ましい。
【0013】
そこで、本発明は、印刷要求と印刷実行指示が異なるタイミングで行われ、かつ、印刷要求時点で文書データを印刷する出力装置が決定していない場合であっても、印刷要求時の印刷設定に基づいて、出力装置が保証する品質で文書データを印刷できる印刷システム、印刷実行装置、印刷方法、印刷実行方法および印刷実行用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による印刷システムは、文書データの印刷要求を受け付ける印刷要求受付手段と、少なくとも印刷要求がなされた文書データを記憶する文書データ記憶手段と、出力端末に文書データを印刷させる印刷実行手段とを備え、印刷要求受付手段が、出力端末ごとに設定可能なそれぞれの印刷設定を包含する共通印刷設定の中から、印刷要求が行われる文書データに対する印刷設定をユーザに指定させる共通印刷設定指定手段と、文書データに対して指定された印刷設定を、その文書データとともに文書データ記憶手段に記憶させる印刷設定登録手段とを含み、印刷実行手段が、文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する1つ以上の印刷出力用データ作成手段と、出力端末および文書データを指定して印刷実行指示が行われたときに、印刷出力用データ作成手段の中からその出力端末に応じて一の印刷出力用データ作成手段を選択する作成対象選択手段と、印刷実行指示で指定された文書データおよびその文書データに指定された印刷設定を文書データ記憶手段から抽出する印刷関連情報抽出手段とを含み、作成対象選択手段により選択された印刷出力用データ作成手段が、抽出された印刷設定に基づいて、抽出された文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成することを特徴とする。
【0015】
本発明による印刷実行装置は、文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する1つ以上の印刷用データ作成手段と、出力端末および文書データを指定して印刷実行指示が行われたときに、印刷出力用データ作成手段の中からその出力端末に応じて一の印刷出力用データ作成手段を選択する作成対象選択手段と、文書データの印刷要求が行われたときに、出力端末ごとに設定可能なそれぞれの印刷設定を包含する共通印刷設定の中から、文書データに対して指定された印刷設定と、その文書データとを記憶する文書データ記憶手段から、印刷実行指示で指定された文書データおよびその文書データに指定された印刷設定を抽出する印刷関連情報抽出手段とを備え、作成対象選択手段により選択された印刷出力用データ作成手段が、抽出された印刷設定に基づいて、抽出された文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成することを特徴とする。
【0016】
本発明による印刷方法は、文書データの印刷要求を受け付ける印刷要求受付手段が、出力端末ごとに設定可能なそれぞれの印刷設定を包含する共通印刷設定の中から、印刷要求が行われる文書データに対する印刷設定をユーザに指定させ、印刷要求受付手段が、文書データに対して指定された印刷設定を、その文書データとともに文書データ記憶手段に記憶させ、出力端末に文書データを印刷させる印刷実行手段が、出力端末および文書データを指定して印刷実行指示が行われたときに、文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する1つ以上の印刷出力用データ作成手段の中から、その出力端末に応じて一の印刷出力用データ作成手段を選択し、印刷実行手段が、印刷実行指示で指定された文書データおよびその文書データに指定された印刷設定を文書データ記憶手段から抽出し、選択された印刷出力用データ作成手段が、抽出された印刷設定に基づいて、抽出された文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成することを特徴とする。
【0017】
本発明による印刷実行方法は、出力端末に文書データを印刷させる印刷実行手段が、出力端末および文書データを指定して印刷実行指示が行われたときに、文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する1つ以上の印刷出力用データ作成手段の中からその出力端末に応じて一の印刷出力用データ作成手段を選択し、印刷実行手段が、文書データの印刷要求が行われたときに、出力端末ごとに設定可能なそれぞれの印刷設定を包含する共通印刷設定の中から、文書データに対して指定された印刷設定と、その文書データとを記憶する文書データ記憶手段から、印刷実行指示で指定された文書データおよびその文書データに指定された印刷設定を抽出し、選択された印刷出力用データ作成手段が、抽出された印刷設定に基づいて、抽出された文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成することを特徴とする。
【0018】
本発明による印刷実行用プログラムは、コンピュータに、文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する印刷用データ作成処理、出力端末および文書データを指定して印刷実行指示が行われたときに、印刷出力用データ作成処理の中からその出力端末に応じて一の印刷出力用データ作成処理を選択する作成対象選択処理、および、文書データの印刷要求が行われたときに、出力端末ごとに設定可能なそれぞれの印刷設定を包含する共通印刷設定の中から、文書データに対して指定された印刷設定と、その文書データとを記憶する文書データ記憶手段から、印刷実行指示で指定された文書データおよびその文書データに指定された印刷設定を抽出する印刷関連情報抽出処理を実行させ、作成対象選択処理で選択された印刷出力用データ作成処理で、抽出された印刷設定に基づいて、抽出された文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、印刷要求と印刷実行指示が異なるタイミングで行われ、かつ、印刷要求時点で文書データを印刷する出力装置が決定していない場合であっても、印刷要求時の印刷設定に基づいて、出力装置が保証する品質で文書データを印刷できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による印刷システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態による印刷システムの動作例を示すシーケンス図である。
【図3】本発明の実施例による印刷システムの例を示すブロック図である。
【図4】本発明による印刷システムの最小構成の例を示すブロック図である。
【図5】本発明による印刷実行装置の最小構成の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明による印刷システムの一実施形態を示すブロック図である。本実施形態における印刷システムは、デスクトップサービス処理装置10と、スプール装置20と、印刷実行装置30と、操作端末40と、出力端末50とを備えている。
【0023】
操作端末40は、文書データの作成や編集操作を行う端末である。なお、以下の説明で、文書データとは、ユーザがアプリケーションソフト等を利用して作成および編集を行うことが可能なデータを意味する。また、文書データは、ワードプロセッシングソフトで作成および編集されるデータに限定されない。文書データには、例えば、表計算ソフトで作成および編集されるデータなども含まれる。また、操作端末40は、文書データを指定してデスクトップサービス処理装置10に印刷要求を行う。操作端末40は、例えば、ノートPC、タブレットや、スマートフォン、携帯電話機などにより実現される。
【0024】
操作端末40は、文書データの作成や編集を行うアプリケーションプログラムを実装する端末であってもよい。また、操作端末40自身は、アプリケーションプログラムを実装せず、デスクトップサービス処理装置10が備えるアプリケーションを操作する機能のみを備えた端末であってもよい。すなわち、操作端末40とデスクトップサービス処理装置10とが、1つの装置(印刷要求受付装置)で実現されていてもよい。本実施形態では、操作端末40は、後述するデスクトップサービス処理装置10が備えるアプリケーション実行部11を介して文書データを操作する場合について説明する。
【0025】
デスクトップサービス処理装置10は、アプリケーション実行部11と、共通ドライバ実行部12とを備えている。アプリケーション実行部11は、文書データの作成や編集操作を行う。なお、アプリケーション実行部11は、文書データの種類ごとに定められたアプリケーションプログラムに従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。例えば、アプリケーションプログラムは、デスクトップサービス処理装置10の記憶部(図示せず)に記憶され、CPUは、そのアプリケーションプログラムを読み込み、そのアプリケーションプログラムに従って、アプリケーション実行部11として動作する。
【0026】
また、アプリケーション実行部11は、操作端末40を介してユーザから文書データの印刷要求を受け付け、文書データに指定された印刷設定と文書データとを共通ドライバ実行部12に通知する。具体的には、アプリケーション実行部11は、出力端末50ごとに設定可能な印刷設定(以下、出力端末個別設定と記す。)を包含する設定(以下、共通印刷設定と記す。)の中から、印刷する文書データに指定する印刷設定を受け付ける。さらに、アプリケーション実行部11は、アプリケーション固有の印刷設定も併せて受け付けてもよい。
【0027】
アプリケーション固有の印刷設定として、例えば、ページ指定や、文書データ中の印刷範囲(シート)指定などが挙げられる。このとき、アプリケーション実行部11は、通常ユーザがアプリケーションプログラムを利用して印刷指示を行う方法により印刷要求を受け付けることが望ましい。すなわち、アプリケーション実行部11は、各アプリケーションプログラムが備える印刷設定の機能に基づいて動作することが望ましい。このようにすることで、ユーザは、通常の操作と違和感なく印刷要求を行うことができる。さらに、管理者は、各アプリケーションプログラムの修正に必要なコストを抑えることができる。
【0028】
なお、共通印刷設定は、少なくとも各出力端末個別設定で共通の印刷設定を含むことが好ましい。ユーザの多くが印刷時に指定する一般的な印刷設定は、ほとんどの出力端末で設定が可能である。そのため、各出力端末個別設定で共通の印刷設定を共通印刷設定に含めることで、ユーザが望む印刷設定が欠落することを回避できる。
【0029】
また、共通印刷設定には、少なくとも2つ以上の出力端末個別設定に含まれる印刷設定を含めてもよい。すなわち、共通印刷設定には、全ての出力端末個別設定に含まれる印刷設定だけでなく、一部の出力端末個別設定間で共通に含まれる印刷設定を含めてもよい。また、印刷設定を示す機能名が異なっていても、印刷設定の内容(機能)が共通であれば、その印刷設定を共通印刷設定に含めてもよい。例えば、「両面印刷」と、「裏表印刷」とが、共に、紙面の裏および表の両方に印刷を行う印刷設定であるとする。このとき、紙面の裏および表の両方に印刷を行う印刷設定を共通印刷設定に含めてもよい。その場合、例えば、印刷設定の画面を表示する際、選択させる印刷設定を共通にし、その印刷設定に付加する説明をそれぞれ併記するようにしてもよい。
【0030】
共通ドライバ実行部12は、共通印刷設定の中から、印刷要求が行われる文書データに対する印刷設定をユーザに指定させる。具体的には、共通ドライバ実行部12は、アプリケーション実行部11がユーザから印刷要求を受け付ける際、ユーザに共通印刷設定を指定させるように、アプリケーション実行部11に指示する。例えば、アプリケーション実行部11が印刷要求を受け付ける際に印刷設定を入力させるダイアログ画面を表示するとする。この場合、共通ドライバ実行部12は、そのダイアログ画面に、共通印刷設定に含まれる印刷設定を入力される項目を加えたダイアログ画面を表示させるようにアプリケーション実行部11に指示してもよい。
【0031】
そして、共通ドライバ実行部12は、アプリケーション実行部11を介して、印刷設定が指定された文書データの印刷要求を受け取ると、印刷要求を行ったユーザの識別情報(以下、ユーザIDと記す。)と、文書データと、指定された印刷設定とをスプール装置20に送信し、後述するスプールデータ記憶部22に記憶させる。以下、ユーザIDと、印刷要求が行われた文書データと、その文書データに指定された印刷設定とを合わせて、印刷要求情報と記す。
【0032】
具体的には、共通ドライバ実行部12は、各出力端末50に応じたプリンタドライバ(以下、各社ドライバと記すこともある。)の仕様を包含するプリンタドライバ(以下、共通ドライバと記す。)に従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。すなわち、共通ドライバは、各社ドライバ仕様を包含するプリンタドライバということができる。
【0033】
また、共通ドライバ実行部12は、印刷要求情報の作成と合わせ、予め定めた設定および指定された印刷設定に基づいて文書データを変換した画像データを作成してもよい。このようなデータを作成することで、ユーザは、印刷される文書データの概略を把握できる。また、画像データを作成しておくことで、その画像データをそのまま印刷することも可能になる。
【0034】
スプール装置20は、印刷要求情報制御部21と、スプールデータ記憶部22とを備えている。印刷要求情報制御部21は、デスクトップサービス処理装置10から印刷要求情報を受信すると、スプールデータ記憶部22に受信した印刷要求情報を記憶させる。また、印刷要求情報制御部21は、後述する印刷実行装置30の印刷要求情報抽出31から印刷要求情報の取得を要求されると、スプールデータ記憶部22から印刷要求情報を抽出し、抽出した印刷要求情報を印刷実行装置30に送信する。また、印刷要求情報制御部21は、ユーザが印刷要求を行った文書データの一覧を印刷実行装置30から要求された場合、スプールデータ記憶部22からそのユーザに対応する印刷要求情報を抽出し、印刷実行装置30に送信してもよい。
【0035】
スプールデータ記憶部22は、ユーザIDと、印刷要求が行われた文書データと、その文書データに指定された印刷設定とを対応づけて記憶する。また、スプールデータ記憶部22は、共通ドライバ実行部12が作成した画像データを合わせて記憶してもよい。スプールデータ記憶部22は、例えば、磁気ディクス等により実現される。
【0036】
出力端末50は、印刷要求が行われた文書データを出力する端末である。出力端末50は、MFP(Multifunction Peripheral)や、プリンタなどにより実現される。
【0037】
出力端末50は、操作部51と、印刷制御部52とを備えている。操作部51は、ユーザによる印刷実行指示を受け付ける。具体的には、操作部51は、ユーザにより文書データを指定して印刷実行指示が行われると、指定された文書データを識別する情報と、出力端末50自身の識別情報(以下、出力端末識別情報と記す。)とを印刷実行装置30に送信する。操作部51は、例えば、ユーザからの操作を受け付ける操作パネルや、ユーザIDを記憶したICカードを読み取るカード読取装置などにより実現される。ただし、操作部51の内容は、上記内容に限定されない。
【0038】
また、操作部51は、文書データに指定された印刷設定の変更指示をユーザから受け付けてもよい。具体的には、操作部51は、印刷要求が行われた後に指定された印刷設定(変更指示)を印刷実行装置30に送信する。
【0039】
印刷制御部52は、印刷実行指示を行うユーザの認証を行う。印刷制御部52は、例えば、ICカードに記載されたユーザIDをもとにユーザを認証してもよく、操作パネルを介して入力されるユーザIDおよびパスワードを用いてユーザを認証してもよい。ただし、ユーザを認証する方法は、上記方法に限定されない。ユーザを認証する方法は広く知られており、詳細な説明は省略する。
【0040】
また、印刷制御部52は、スプール装置20に記憶された文書データのうち、ユーザが印刷要求を行った文書データの一覧を、印刷実行装置30に要求してもよい。そして、印刷制御部52は、受け取った文書データの一覧を操作部51に表示し、その中から印刷する文書データをユーザに指定させてもよい。そして、印刷制御部52は、印刷実行装置30から出力端末50用の印刷出力用データを受け取ると、その印刷出力用データに基づいて文書データを印刷する。
【0041】
ここで、印刷出力用データとは、出力端末50が実際に印刷を行う際に利用されるデータのことを意味する。具体的には、印刷出力用データとは、後述する端末固有ドライバ実行部33により作成され、各出力端末50が行う印刷動作を制御するデータである。印刷出力用データの例として、例えば、印刷動作を制御する制御コードなどが挙げられる。
【0042】
また、印刷制御部52は、出力した文書データに関するログ情報をログ管理記憶部(図示せず)に記憶させてもよい。このログ情報は、例えば、文書データを印刷したユーザに対する課金処理に用いることができる。
【0043】
以下の説明では、出力端末50自身が操作部51と印刷制御部52を備えている場合について説明する。ただし、文書データの出力を行う装置(例えば、プリンタなど)と、操作部51と、印刷制御部52とが、それぞれ別の装置で実現されていてもよい。例えば、操作部51および印刷制御部52を含むコンピュータが、他のプリンタ装置に対して印刷処理を指示するようにしてもよい。
【0044】
印刷実行装置30は、印刷要求情報抽出部31と、印刷データ変換制御部32と、端末固有ドライバ実行部33と、アプリケーション実行部34と、印刷制御部35とを備えている。
【0045】
印刷要求情報抽出部31は、印刷対象として指定された文書データおよび印刷設定(すなわち、印刷要求情報)をスプール装置20に要求する。このとき、印刷要求情報抽出部31は、印刷実行指示を行ったユーザIDに一致する文書データおよび印刷設定をスプール装置20に要求する。このようにすることで、他のユーザが文書データを印刷することを抑制できる。また、印刷要求情報抽出部31は、印刷制御部52からユーザが印刷要求を行った文書データの一覧を要求された場合、そのユーザに対応する印刷要求情報をスプール装置20に要求してもよい。
【0046】
さらに、印刷要求情報抽出部31は、スプール装置20から受け取った印刷設定を出力端末50に送信してもよい。印刷要求の際に指定された印刷設定を出力端末50に送信することで、ユーザが文書データの印刷状況を確認できる。
【0047】
アプリケーション実行部34は、印刷要求情報抽出部31が抽出した文書データから印刷用データを作成する。ここで、印刷用データとは、アプリケーションプログラムに従ってアプリケーション実行部34が作成する印刷用のデータである。この印刷用データは、後述する端末固有ドライバ実行部33が作成する各出力端末50用の印刷出力用データの元データになることから、中間データと言うこともできる。
【0048】
また、その文書データに対してユーザからアプリケーション固有の印刷設定が指定されている場合、アプリケーション実行部34は、その印刷設定を反映させた印刷用データを作成する。
【0049】
さらに、アプリケーション実行部34は、後述する印刷制御部35により印刷設定を指定して文書データの印刷指示が行われると、指定された印刷設定に基づいて、文書データから印刷用データを作成する。
【0050】
アプリケーション実行部34は、文書データごとに定められたアプリケーションプログラムに従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。例えば、アプリケーションプログラムは、印刷実行装置30の記憶部(図示せず)に記憶され、CPUは、そのアプリケーションプログラムを読み込み、アプリケーションプログラムに従って、アプリケーション実行部34として動作する。具体的には、印刷対象の文書データが指定されると、アプリケーション実行部34は、その文書データに対応するアプリケーションプログラムに従って印刷用データを作成する。
【0051】
なお、アプリケーション実行部34と、デスクトップサービス処理装置10におけるアプリケーション実行部11とは同一のアプリケーションプログラムに従って動作することが望ましい。ユーザは、アプリケーション実行部11を利用して印刷要求を行うため、実際に印刷用データを作成するアプリケーションプログラムが印刷要求を受けるアプリケーションプログラムと同一であれば、ユーザが想定する品質で印刷用データが作成されるからである。
【0052】
印刷制御部35は、印刷要求情報抽出部31により抽出された印刷設定をアプリケーション実行部34に指定して、印刷実行指示が行われた文書データの印刷を指示する。具体的には、印刷制御部35は、指定された印刷設定をもとに、印刷実行指示が行われた文書データに対応するアプリケーションプログラムに従って動作するアプリケーション実行部34を特定する。
【0053】
そして、印刷制御部35は、特定したアプリケーション実行部34に対し、文書データおよび抽出された印刷設定を指定して、その文書データの印刷を指示する。また、印刷制御部35は、操作部51から印刷設定の変更指示を受信すると、アプリケーション実行部34に、そのアプリケーション実行部34を動作させるアプリケーションプログラムで設定可能な印刷設定を指定して、文書データの印刷を指示してもよい。なお、ここで指定する印刷設定は、抽出した印刷設定と同様であってもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
なお、アプリケーションプログラムが1種類の場合、アプリケーション実行部34は一意に決定される。そのため、アプリケーションプログラムが1種類の場合、印刷実行装置30は、印刷制御部35を含んでいなくてもよい。
【0055】
端末固有ドライバ実行部33は、印刷対象として指定された文書データから、各出力端末50に対応する印刷用データを作成する。具体的には、端末固有ドライバ実行部33は、アプリケーション実行部34が生成した印刷用データを、出力端末50ごとに定められた印刷設定に応じて印刷出力用データに変換する。その際、端末固有ドライバ実行部33は、印刷要求情報抽出部31が抽出した印刷設定を反映させた印刷出力用データを作成する。
【0056】
このように、端末固有ドライバ実行部33は、印刷要求の際にユーザが指定した印刷設定を反映させた印刷出力用データを作成するため、印刷要求時の印刷設定に基づいて文書データを印刷できる。そして、端末固有ドライバ実行部33は、作成した印刷出力用データを出力端末50に送信し、その印刷出力用データに基づいて文書データを印刷させる。
【0057】
また、端末固有ドライバ実行部33は、操作部51を介してユーザから印刷設定の変更指示を受信した場合、アプリケーション実行部34が生成した印刷用データを、変更後の印刷設定に応じて印刷出力用データに変換してもよい。すなわち、端末固有ドライバ実行部33は、印刷要求が行われた後に指定された印刷設定に基づいて印刷出力用データを作成してもよい。また、端末固有ドライバ実行部33は、印刷要求時に指定された印刷設定が、印刷実行指示が行われた出力端末50で設定できない印刷設定の場合、印刷設定が出来ない旨を出力端末50に通知し、新たな印刷設定を受け付けてもよい。
【0058】
このような変更指示を反映させることで、印刷要求の際には指定できなかった印刷設定を出力結果に反映させることが可能になる。また、例えば、印刷要求時の共通印刷設定に含まれる印刷設定に出力端末50が対応していなかった場合であっても、印刷実行指示の時点で変更することが可能になるため、ユーザにとって思わぬ挙動で文書データが印刷されることを抑制できる。
【0059】
端末固有ドライバ実行部33は、各出力端末50に応じたプリンタドライバ(すなわち、各社ドライバ)に従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。なお、各社ドライバは、出力端末50の種類ごとに準備される。
【0060】
印刷実行装置30は、出力端末50ごとに端末固有ドライバ実行部33を備えていてもよい。すなわち、印刷実行装置30が出力端末50ごとに複数の端末固有ドライバ実行部33を備えていてもよい。また、1つの端末固有ドライバ実行部33が、複数の各社ドライバに従って動作する機能を備えていてもよい。この場合、端末固有ドライバ実行部33は、後述する印刷データ変換制御部32が選択したドライバに対応する機能を実行するようにしてもよい。以下の説明では、印刷実行装置30が、出力端末50ごとに端末固有ドライバ実行部33を備える場合について説明する。
【0061】
印刷データ変換制御部32は、操作部51を介して指定された出力端末識別情報に基づいて、印刷出力用データを作成させる端末固有ドライバ実行部33を特定する。例えば、印刷実行装置30が出力端末50ごとに1つまたは複数の端末固有ドライバ実行部33を備えている場合、印刷データ変換制御部32は、その端末固有ドライバ実行部33の中から、印刷出力用データを作成させる一の端末固有ドライバ実行部33を選択してもよい。また、端末固有ドライバ実行部33が複数の各社ドライバに従って動作する機能を備えている場合、印刷データ変換制御部32は、出力端末識別情報に対応する機能を特定し、その機能を実行する指示を端末固有ドライバ実行部33に行ってもよい。このように、印刷データ変換制御部32は、各社ドライバ固有の機能を制御するディスパッチャの役割を果たす。
【0062】
また、印刷データ変換制御部32は、アプリケーション実行部34がどの出力端末50に対しても行う共通の処理を実行させる論理プリンタを作成してもよい。この場合、各端末固有ドライバ実行部33は、ドライバ(すなわち、出力端末50)ごとに印刷設定が異なる部分の処理を実装しておけばよい。このようにすることで、出力端末50が様々な企業の製品を含む(すなわち、マルチベンダの)場合であっても、それぞれの出力端末50の導入が容易になる。
【0063】
印刷要求情報抽出部31と、印刷データ変換制御部32と、印刷制御部35とは、プログラム(印刷実行プログラム)に従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。例えば、プログラムは、印刷実行装置30の記憶部(図示せず)に記憶され、CPUは、そのプログラムを読み込み、プログラムに従って、印刷要求情報抽出部31、印刷データ変換制御部32および印刷制御部35として動作してもよい。また、印刷要求情報抽出部31と、印刷データ変換制御部32と、印刷制御部35とは、それぞれが専用のハードウェアで実現されていてもよい。
【0064】
次に、動作について説明する。図2は、本実施形態における印刷システムの動作例を示すシーケンス図である。まず、デスクトップサービス処理装置10が、操作端末40から文書データの印刷要求を受け付ける(ステップS1)。具体的には、アプリケーション実行部11を利用して文書データを作成しているユーザにより、その文書データの印刷要求が行われると、アプリケーション実行部11は、印刷設定を入力させるダイアログ画面を表示させる。ダイアログ画面には、各アプリケーション固有の印刷設定を指定する画面と、各出力端末50の印刷設定を包含する共通印刷設定の中から印刷設定を指定する画面とが含まれる。
【0065】
各アプリケーション固有の印刷設定として、例えば、ページ指定や、文書データ中の印刷範囲(シート)指定などが挙げられる。また、共通印刷設定として、例えば、両面印刷指定や、2in1指定、モノクロ/カラー指定などが挙げられる。
【0066】
印刷設定を指定して文書データの印刷要求が行われると、共通ドライバ実行部12は、印刷要求情報(すなわち、指定された文書データ、印刷設定および印刷要求を行ったユーザIDを含む情報)を作成する(ステップS2)。
【0067】
ここで、共通ドライバ実行部12は、同時指定が許可されない印刷設定がされた場合、自動で設定を変更する、エラー表示を行うなどの禁則処理を行ってもよい。同時指定が許可されない印刷設定として、例えば、両面印刷指定と裏紙使用可指定とが挙げられる。なお、同時指定を許可しない印刷設定の組合せは、共通印刷設定を作成する管理者等により、予め定められる。共通ドライバ実行部12は、禁則処理において同時指定が許可されない印刷設定を検出した場合、ユーザに対する警告表示を行ってもよい。
【0068】
そして、共通ドライバ実行部12は、作成した印刷要求情報をスプール装置20に送信する(ステップS3)。スプール装置20が印刷要求情報を受信すると、印刷要求情報制御部21は、その印刷要求情報をスプールデータ記憶部22に記憶させる(ステップS4)。
【0069】
次に、ユーザにより、出力端末50を介して印刷実行装置30に文書データの印刷実行指示が行われると(ステップS5)、印刷要求情報抽出部31は、印刷要求情報の取得をスプール装置20に要求する(ステップS6)。印刷要求情報制御部21は、印刷要求情報抽出部31が要求する印刷要求情報をスプールデータ記憶部22から抽出(ステップS7)し、抽出した印刷要求情報を印刷実行装置30に送信する(ステップS8)。
【0070】
印刷実行装置30が印刷要求情報に含まれる文書データを受信すると、アプリケーション実行部34は、受信した文書データに対応するアプリケーションプログラムに従って、印刷用データを作成する。一方、印刷データ変換制御部32は、印刷指示が行われた出力端末50の出力端末識別情報に基づいて、印刷出力用データを作成させる端末固有ドライバ実行部33を特定する。そして、特定された端末固有ドライバ実行部33は、アプリケーション実行部34が生成した印刷用データを、出力端末50ごとに定められた印刷設定および印刷要求情報に含まれる印刷設定に応じて印刷出力用データに変換する。このようにして、出力端末50に応じた印刷出力用データが作成される(ステップS9)。
【0071】
端末固有ドライバ実行部33は、作成した印刷出力用データを出力端末50に送信する(ステップS10)。出力端末50がその印刷出力用データを受信すると、印刷制御部52は、その印刷出力用データに基づいて印刷を行う(ステップS11)。
【0072】
以上のように、本実施形態によれば、共通ドライバ実行部12が、共通印刷設定の中から、印刷要求が行われる文書データに対する印刷設定をユーザに指定させ、指定された印刷設定をその文書データとともにスプール装置20のスプールデータ記憶部22に記憶させる。また、印刷データ変換制御部32が、出力端末および文書データを指定して印刷実行指示が行われたときに、端末固有ドライバ実行部33の中からその出力端末に応じて一の端末固有ドライバ実行部33を選択する。さらに、印刷要求情報抽出部31が、印刷実行指示で指定された文書データおよびその文書データに指定された印刷設定をスプール装置20のスプールデータ記憶部22から抽出する。そして、選択された端末固有ドライバ実行部33が、抽出された印刷設定に基づいて、抽出された文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する。
【0073】
以上のような処理を行うことにより、印刷要求と印刷実行指示が異なるタイミングで行われ、かつ、印刷要求時点で文書データを印刷する出力装置が決定していない場合であっても、印刷要求時の印刷設定に基づいて、出力装置が保証する品質で文書データを印刷できる。
【実施例】
【0074】
以下、具体的な実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲は以下に説明する内容に限定されない。本実施例では、本発明による印刷システムをクラウドコンピューティングに適用した場合について説明する。
【0075】
図3は、本実施例による印刷システムの例を示すブロック図である。本実施例における印刷システムは、プリンタサービス実行部100と、デスクトップサービス実行部110と、操作端末140と、出力端末150とを備えている。また、プリンタサービス実行部100は、スプール部120と、印刷部130と、監視部160とを備えている。
【0076】
本実施例におけるデスクトップサービス実行部110は、上記実施形態におけるデスクトップサービス処理装置10に対応する。また、本実施例におけるスプール部120は、上記実施形態におけるスプール装置20に対応する。また、本実施例における印刷部130は、上記実施形態における印刷実行装置30に対応する。
【0077】
まず、操作端末140を介して、ユーザが印刷要求を行う動作について説明する。ユーザは、ノートPCや、タブレット、スマートフォンなどの操作端末140を介して、デスクトップサービス実行部110が備えるアプリケーション実行部111を利用して、文書データ113の作成および編集等を行う。そして、ユーザが文書データの印刷要求を行うと、アプリケーション実行部111は共通ドライバ実行部112に印刷情報の作成を要求する。具体的には、アプリケーション固有の印刷設定と共通印刷設定に含まれる印刷設定の少なくとも一方がアプリケーション実行部111を利用してユーザにより指定された場合、共通ドライバ実行部112は、指定された文書データと印刷設定とをスプール部120の文書データ記憶部121と、印刷設定記憶部122に、それぞれ記憶させる。
【0078】
また、共通ドライバ実行部112は、予め定めた設定に基づいて文書データを変換した画像データを作成してもよい。例えば、Windows(登録商標)の場合、共通ドライバ実行部112は、Windowsにおける画像ファイルフォーマットであるWMF(Windows Metafile)形式の画像データを作成してもよい。ただし、画像データの形式はWMF形式に限定されない。なお、文書データから画像データを作成する方法は広く知られているため、詳細な説明は省略する。このような画像データを作成することで、出力端末が既に決まっている場合には、印刷までの時間を短縮することができる。この場合、共通ドライバ実行部112は、作成した画像データをスプール部120の画像データ記憶部123に記憶させる。
【0079】
なお、共通ドライバ実行部112は、各社ドライバが備える仕様を包含する共通ドライバに従って動作するCPUにより実現される。
【0080】
次に、ユーザが出力端末150を介して印刷実行指示を行う動作について説明する。まず、ユーザは、印刷を行う装置として選択した出力端末150または出力端末150に接続された機器(以下、単に出力端末150と記す。)を利用して、ユーザ認証を行う。ここでは、A社のMFPで文書データを印刷するものとする。
【0081】
ユーザ認証が行われると、選択された出力端末150は、認証したユーザのユーザIDおよび出力端末150を識別する出力端末識別情報をプリントサービス実行部100の印刷部130に通知する。
【0082】
通知を受けた印刷部130は、受信したユーザIDに紐付いた印刷要求情報をスプール部120の文書データ記憶部121および印刷設定記憶部122から抽出する。印刷部130が文書データを抽出すると、抽出した文書データに対応するアプリケーションプログラムに従って動作するアプリケーション動作部131が自動起動する。そして、そのアプリケーション動作部131が、文書データに対応するアプリケーションプログラムに従って、印刷用データを作成する。
【0083】
一方、出力端末150から出力端末識別情報の通知を受けた印刷部130は、その出力端末識別情報によって識別される出力端末に対応する各社ドライバ実行部132を選択する。選択された各社ドライバ実行部132は、アプリケーション動作部131が作成した印刷用データを出力端末150に対応する印刷出力用データに変換する。具体的には、各社ドライバ実行部132は、アプリケーション動作部131が作成した印刷用データを出力端末150ごとに設定された印刷設定を反映させた印刷出力用データに変換する。
【0084】
また、出力端末150は、印刷する文書データに設定された印刷設定の変更指示を受け付け、その変更指示を印刷部130に通知してもよい。印刷設定の変更指示が印刷部130に通知されると、各社ドライバ実行部132は、アプリケーション動作部131が作成した印刷用データを出力端末150ごとに設定された印刷設定および出力端末150から受信した印刷設定を反映させた印刷出力用データに変換する。
【0085】
各社ドライバ実行部132は、作成した印刷出力用データを出力端末150に送信する。印刷出力用データを受信した出力端末150は、その印刷出力用データを用いて文書データの印刷を行う。
【0086】
出力端末150は、文書データの印刷後、出力した文書データに関するログ情報を監視部160に通知する。通知を受けた監視部160は、マルチベンダログ管理記憶部161に受信したログ情報を記憶させる。ログ情報には、少なくとも、ユーザIDおよび出力端末を示す情報が含まれる。他にも、ログ情報として、例えば、印刷日時、文書データのサイズ、印刷枚数などが含まれる。このような情報を記憶しておくことで、任意の場所で印刷実行指示がされた場合であっても、費用請求先を特定することが可能になる。
【0087】
次に、本発明の最小構成の例を説明する。図4は、本発明による印刷システムの最小構成の例を示すブロック図である。また、図5は、本発明による印刷実行装置の最小構成の例を示すブロック図である。本発明による印刷システムは、文書データの印刷要求を受け付ける印刷要求受付手段70(例えば、デスクトップサービス処理装置10)と、少なくとも印刷要求がなされた文書データを記憶する文書データ記憶手段80(例えば、スプール装置20)と、出力端末(例えば、出力端末50)に文書データを印刷させる印刷実行手段90(例えば、印刷実行装置30)とを備えている。
【0088】
印刷要求受付手段70は、出力端末ごとに設定可能なそれぞれの印刷設定(例えば、出力端末個別設定)を包含する共通印刷設定の中から、印刷要求が行われる文書データに対する印刷設定をユーザに指定させる(例えば、ダイアログ画面を表示してユーザに指定させる)共通印刷設定指定手段71(例えば、共通ドライバ実行部12)と、文書データに対して指定された印刷設定を、その文書データとともに文書データ記憶手段80に記憶させる印刷設定登録手段72(例えば、共通ドライバ実行部12)とを含む。
【0089】
印刷実行手段90は、文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する1つ以上の印刷出力用データ作成手段91(例えば、端末固有ドライバ実行部33)と、出力端末および文書データを指定して印刷実行指示が行われたときに、印刷出力用データ作成手段91の中からその出力端末に応じて一の印刷出力用データ作成手段を選択する作成対象選択手段92(例えば、印刷データ変換制御部32)と、印刷実行指示で指定された文書データおよびその文書データに指定された印刷設定を文書データ記憶手段80から抽出する印刷関連情報抽出手段93(例えば、印刷要求情報抽出部31)とを含んでいる。
【0090】
作成対象選択手段92により選択された印刷出力用データ作成手段91は、抽出された印刷設定に基づいて、抽出された文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する。
【0091】
また、本発明による印刷実行装置(例えば、印刷実行装置30)は、印刷出力用データ作成手段91と、作成対象選択手段92と、印刷関連情報抽出手段93とを備えている。なお、本発明による印刷実行装置の印刷出力用データ作成手段91、作成対象選択手段92および印刷関連情報抽出手段93は、図4に例示する内容と同様である。
【0092】
そのような構成により、印刷要求と印刷実行指示が異なるタイミングで行われ、かつ、印刷要求時点で文書データを印刷する出力装置が決定していない場合であっても、印刷要求時の印刷設定に基づいて、出力装置が保証する品質で文書データを印刷できる。
【0093】
また、印刷設定登録手段72は、文書データの印刷要求を行ったユーザの識別情報を、印刷設定および文書データとともに文書データ記憶手段80に記憶させ、印刷関連情報抽出手段93は、印刷実行指示を行ったユーザの識別情報に一致する文書データおよび印刷設定を文書データ記憶手段80から抽出してもよい。このようにすることで、他のユーザが文書データを印刷することを抑制できる。
【0094】
また、印刷出力用データ作成手段91は、印刷要求が行われた後に指定された印刷設定(例えば、印刷設定の変更指示)に基づいて、印刷出力用データを作成してもよい。このように、印刷要求後に印刷設定の変更ができるため、印刷要求の際には指定できなかった印刷設定を出力結果に反映させることが可能になる。
【0095】
また、印刷実行手段90は、文書データの種類ごとに定められたアプリケーションプログラムに従って動作するアプリケーション実行手段(例えば、アプリケーション実行部34)を含んでいてもよい。そして、印刷要求受付手段70の印刷設定登録手段72は、アプリケーションプログラムで指定される印刷設定であるアプリケーション固有印刷設定を、共通印刷設定の中から指定された印刷設定とともに文書データ記憶手段80に記憶させてもよい。また、アプリケーション実行手段は、アプリケーション固有印刷設定に従って文書データを印刷用データに変換し、印刷出力用データ作成手段は、印刷用データを出力端末に対応する印刷出力用データに変換してもよい。
【0096】
このように、文書データの作成や編集に用いられるアプリケーションで印刷要求を行う際にアプリケーション固有印刷設定が指定された場合、印刷実行手段90側では、対応するアプリケーションに従って動作するアプリケーション実行手段が、そのアプリケーション固有印刷設定を反映させた印刷用データを作成する。そのため、出力装置が保証する品質に加え、アプリケーションが保証する品質で文書データを印刷できる。
【0097】
また、共通印刷設定指定手段71は、指定された印刷設定のうち、同時指定が許可されない印刷設定を検出してもよい。また、印刷要求受付手段70は、予め定められた印刷設定および指定された印刷設定に基づいて文書データを変換した画像データを作成する画像データ作成手段を含んでいてもよい。
【0098】
また、本発明による印刷システムは、出力した文書データに関するログ情報を記憶するログ情報記憶部(例えば、マルチベンダログ管理記憶部161)を備えていてもよい。そして、印刷出力用データ作成手段91は、文書データに対する印刷出力用データが作成された後、少なくともその文書データを印刷した出力端末および印刷実行指示を行ったユーザを示す情報をログ情報としてログ情報記憶部に記憶させてもよい。
【0099】
また、共通印刷設定には、出力端末ごとに設定可能なそれぞれの印刷設定のうち、少なくとも各出力端末個別設定で共通の印刷設定が含まれていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、ネットワークを介して文書データを印刷する印刷システムに好適に適用される。
【符号の説明】
【0101】
10 デスクトップサービス処理装置
11,34 アプリケーション実行部
12 共通ドライバ実行部
20 スプール装置
21 印刷要求情報制御部
22 スプールデータ記憶部
30 印刷実行装置
31 印刷要求情報抽出部
32 印刷データ変換制御部
33 端末固有ドライバ実行部
35 印刷制御部
40 操作端末
50 出力端末
51 操作部
52 印刷制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文書データの印刷要求を受け付ける印刷要求受付手段と、
少なくとも前記印刷要求がなされた文書データを記憶する文書データ記憶手段と、
出力端末に前記文書データを印刷させる印刷実行手段とを備え、
前記印刷要求受付手段は、
出力端末ごとに設定可能なそれぞれの印刷設定を包含する共通印刷設定の中から、印刷要求が行われる文書データに対する印刷設定をユーザに指定させる共通印刷設定指定手段と、
前記文書データに対して指定された印刷設定を、当該文書データとともに前記文書データ記憶手段に記憶させる印刷設定登録手段とを含み、
前記印刷実行手段は、
前記文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する1つ以上の印刷出力用データ作成手段と、
出力端末および文書データを指定して印刷実行指示が行われたときに、前記印刷出力用データ作成手段の中から当該出力端末に応じて一の印刷出力用データ作成手段を選択する作成対象選択手段と、
前記印刷実行指示で指定された文書データおよび当該文書データに指定された印刷設定を前記文書データ記憶手段から抽出する印刷関連情報抽出手段とを含み、
前記作成対象選択手段により選択された印刷出力用データ作成手段は、抽出された印刷設定に基づいて、抽出された文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
印刷設定登録手段は、文書データの印刷要求を行ったユーザの識別情報を、印刷設定および文書データとともに文書データ記憶手段に記憶させ、
印刷関連情報抽出手段は、印刷実行指示を行ったユーザの識別情報に一致する文書データおよび印刷設定を前記文書データ記憶手段から抽出する
請求項1記載の印刷システム。
【請求項3】
印刷出力用データ作成手段は、印刷要求が行われた後に指定された印刷設定に基づいて、印刷出力用データを作成する
請求項1または請求項2記載の印刷システム。
【請求項4】
印刷実行手段は、
文書データの種類ごとに定められたアプリケーションプログラムに従って動作するアプリケーション実行手段を含み、
印刷要求受付手段の印刷設定登録手段は、前記アプリケーションプログラムで指定される印刷設定であるアプリケーション固有印刷設定を、共通印刷設定の中から指定された印刷設定とともに文書データ記憶手段に記憶させ、
前記アプリケーション実行手段は、前記アプリケーション固有印刷設定に従って文書データを印刷用データに変換し、
印刷出力用データ作成手段は、前記印刷用データを出力端末に対応する印刷出力用データに変換する
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項5】
共通印刷設定指定手段は、指定された印刷設定のうち、同時指定が許可されない印刷設定を検出する
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項6】
印刷要求受付手段は、
予め定められた印刷設定および指定された印刷設定に基づいて文書データを変換した画像データを作成する画像データ作成手段を含む
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項7】
出力した文書データに関するログ情報を記憶するログ情報記憶部を備え、
印刷出力用データ作成手段は、文書データに対する印刷出力用データが作成された後、少なくとも当該文書データを印刷した出力端末および印刷実行指示を行ったユーザを示す情報をログ情報として前記ログ情報記憶部に記憶させる
請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項8】
共通印刷設定には、出力端末ごとに設定可能なそれぞれの印刷設定のうち、少なくとも共通の印刷設定が含まれる
請求項1から請求項7のうちのいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項9】
文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する1つ以上の印刷用データ作成手段と、
出力端末および文書データを指定して印刷実行指示が行われたときに、前記印刷出力用データ作成手段の中から当該出力端末に応じて一の印刷出力用データ作成手段を選択する作成対象選択手段と、
文書データの印刷要求が行われたときに、出力端末ごとに設定可能なそれぞれの印刷設定を包含する共通印刷設定の中から、前記文書データに対して指定された印刷設定と、当該文書データとを記憶する文書データ記憶手段から、前記印刷実行指示で指定された文書データおよび当該文書データに指定された印刷設定を抽出する印刷関連情報抽出手段とを備え、
前記作成対象選択手段により選択された印刷出力用データ作成手段は、抽出された印刷設定に基づいて、抽出された文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する
ことを特徴とする印刷実行装置。
【請求項10】
印刷出力用データ作成手段は、印刷要求が行われた後に指定された印刷設定に基づいて、印刷出力用データを作成する
請求項9記載の印刷実行装置。
【請求項11】
文書データの印刷要求を受け付ける印刷要求受付手段が、出力端末ごとに設定可能なそれぞれの印刷設定を包含する共通印刷設定の中から、印刷要求が行われる文書データに対する印刷設定をユーザに指定させ、
前記印刷要求受付手段が、前記文書データに対して指定された印刷設定を、当該文書データとともに文書データ記憶手段に記憶させ、
出力端末に前記文書データを印刷させる印刷実行手段が、出力端末および文書データを指定して印刷実行指示が行われたときに、文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する1つ以上の印刷出力用データ作成手段の中から、当該出力端末に応じて一の印刷出力用データ作成手段を選択し、
前記印刷実行手段が、前記印刷実行指示で指定された文書データおよび当該文書データに指定された印刷設定を前記文書データ記憶手段から抽出し、
選択された印刷出力用データ作成手段が、抽出された印刷設定に基づいて、抽出された文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項12】
印刷要求受付手段が、文書データの印刷要求を行ったユーザの識別情報を、印刷設定および文書データとともに文書データ記憶手段に記憶させ、
印刷実行手段が、印刷実行指示を行ったユーザの識別情報に一致する文書データおよび印刷設定を前記文書データ記憶手段から抽出する
請求項11記載の印刷方法。
【請求項13】
出力端末に文書データを印刷させる印刷実行手段が、出力端末および文書データを指定して印刷実行指示が行われたときに、文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する1つ以上の印刷出力用データ作成手段の中から当該出力端末に応じて一の印刷出力用データ作成手段を選択し、
前記印刷実行手段が、文書データの印刷要求が行われたときに、出力端末ごとに設定可能なそれぞれの印刷設定を包含する共通印刷設定の中から、前記文書データに対して指定された印刷設定と、当該文書データとを記憶する文書データ記憶手段から、前記印刷実行指示で指定された文書データおよび当該文書データに指定された印刷設定を抽出し、
選択された印刷出力用データ作成手段が、抽出された印刷設定に基づいて、抽出された文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する
ことを特徴とする印刷実行方法。
【請求項14】
印刷出力用データ作成手段が、印刷要求が行われた後に指定された印刷設定に基づいて、印刷用データを作成する
請求項13記載の印刷実行方法。
【請求項15】
コンピュータに、
文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成する印刷用データ作成処理、
出力端末および文書データを指定して印刷実行指示が行われたときに、前記印刷出力用データ作成処理の中から当該出力端末に応じて一の印刷出力用データ作成処理を選択する作成対象選択処理、および、
文書データの印刷要求が行われたときに、出力端末ごとに設定可能なそれぞれの印刷設定を包含する共通印刷設定の中から、前記文書データに対して指定された印刷設定と、当該文書データとを記憶する文書データ記憶手段から、前記印刷実行指示で指定された文書データおよび当該文書データに指定された印刷設定を抽出する印刷関連情報抽出処理を実行させ、
前記作成対象選択処理で選択された印刷出力用データ作成処理で、抽出された印刷設定に基づいて、抽出された文書データから出力端末に対応する印刷出力用データを作成させる
ための印刷実行用プログラム。
【請求項16】
コンピュータに、
印刷出力用データ作成処理で、印刷要求が行われた後に指定された印刷設定に基づいて、印刷出力用データを作成させる
請求項15記載の印刷実行用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−216064(P2012−216064A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80781(P2011−80781)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】