印刷システムおよびプリンタ
【課題】登録した印刷ジョブの所在を把握できる印刷システムおよび印刷装置を提供すること。
【解決手段】印刷システム500は,PC100から,指定のプリンタに印刷ジョブを登録するものであり,ユーザがその指定のプリンタに対して印刷指示を入力することによって印刷を開始する。さらに,プリンタは,印刷対象となる印刷ジョブの選定条件(例えば,ユーザID)を決定し,他プリンタにその選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているか否かを判断する。そして,その選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているプリンタがある場合には,そのプリンタの識別情報をユーザに報知する。
【解決手段】印刷システム500は,PC100から,指定のプリンタに印刷ジョブを登録するものであり,ユーザがその指定のプリンタに対して印刷指示を入力することによって印刷を開始する。さらに,プリンタは,印刷対象となる印刷ジョブの選定条件(例えば,ユーザID)を決定し,他プリンタにその選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているか否かを判断する。そして,その選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているプリンタがある場合には,そのプリンタの識別情報をユーザに報知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,印刷システムおよびプリンタに関する。さらに詳細には,プリンタに対して印刷ジョブを登録し,その印刷ジョブの印刷指示を契機に印刷を開始する印刷システムおよびプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,印刷ジョブをプリンタに登録し,登録先のプリンタでその印刷ジョブの印刷指示を行ってから印刷を実行する技術がある。例えば,特許文献1には,複数のプリンタに同一のセキュアジョブをそれぞれ登録すること,また,何れかのプリンタにて認証を行った後にセキュアジョブの印刷を開始すること等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−131842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した従来の印刷システムには,次のような問題があった。すなわち,印刷ジョブを登録したプリンタと,印刷ジョブを登録していないプリンタとが混在する環境では,ユーザは,どのプリンタに印刷ジョブを登録したのかを覚えておかないと,所望の印刷物を得られないことがある。
【0005】
本発明は,前記した従来の印刷システムが有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,登録した印刷ジョブの所在を把握できる印刷システムおよび印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた印刷システムは,プリンタと,プリンタに印刷ジョブを登録する情報処理装置とを有し,プリンタは印刷ジョブの印刷指示を契機に印刷を開始する印刷システムであって,印刷対象となる印刷ジョブの選定条件を決定する決定手段と,決定手段にて決定した選定条件に合致する印刷ジョブが,他プリンタに登録されているか否かを判断する判断手段と,判断手段にて他プリンタに選定条件に合致する印刷ジョブがあると判断された場合に,その印刷ジョブが登録されているプリンタの識別情報をユーザに報知する報知手段とを備えることを特徴としている。
【0007】
本発明の印刷システムは,情報処理装置からプリンタに印刷ジョブ(例えば,セキュアジョブ)を登録するシステムであり,ユーザがそのプリンタに対して印刷指示を入力することによって印刷を開始する。さらに,プリンタは,印刷対象となる印刷ジョブの選定条件に基づいて,他プリンタにその選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているか否かを判断する。選定条件としては,例えばジョブIDやユーザIDが該当する。また,印刷ジョブの登録時間や,印刷データの種類であってもよい。そして,その選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているプリンタの識別情報を,ユーザに報知する。具体的に,報知されるプリンタの識別情報としては,例えば,プリンタ名,機種名,設置場所が該当する。
【0008】
すなわち,本発明の印刷システムでは,選定条件に合致する印刷ジョブの,他プリンタでの所在を取得し,その結果をユーザに報知する。これにより,ユーザは,所望の印刷ジョブが登録されているプリンタを把握できる。例えば,ユーザが印刷ジョブの登録後にその登録先のプリンタを忘れたとしても,登録元に戻って履歴を確認することなく,印刷ジョブの所在を知ることができる。その結果として,所望の印刷ジョブの印刷を確実に実行できる。
【0009】
また,本発明の印刷システムの判断手段は,自プリンタに選定条件に合致する印刷ジョブが登録されていない場合に,他プリンタにその選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているか否かを判断するとよい。すなわち,選定条件に合致する印刷ジョブが自プリンタに無い場合に,その印刷ジョブの所在を確認する必要性が高まる。一方で,選定条件に合致する印刷ジョブが自プリンタにある場合には,自プリンタでその印刷ジョブを印刷することができ,他プリンタの登録状態を知る必要性は低い。そのため,選定条件に合致する印刷ジョブが自プリンタに無いことを条件に,他プリンタの登録状態を判断する方が好ましい。
【0010】
また,本発明の印刷システムの報知手段は,選定条件に合致する印刷ジョブと,その印刷ジョブが登録されているプリンタの識別情報とを対応付けて報知するとよい。この構成によれば,どの印刷ジョブがどのプリンタに登録されているかを把握し易い。
【0011】
また,本発明の印刷システムの判断手段は,他プリンタに選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているか否かを,当該他プリンタに問い合わせるとよい。他プリンタに直接問い合わせることで,印刷ジョブを集中管理するサーバが不要となる。そのため,システムが簡素化できる。
【0012】
また,本発明の印刷システムは,判断手段の判断対象となった他プリンタに対し,判断手段にて選定条件に合致する印刷ジョブと判断された印刷ジョブの削除を指示する指示手段を備えるとよい。報知された印刷ジョブのうち,不要な印刷ジョブがあった場合には,その印刷ジョブを削除できる構成にすることで,削除対象の印刷ジョブが登録されているプリンタに出向くユーザの手間を省くことができる。
【0013】
また,本発明の印刷システムの報知手段は,報知内容を用紙に印刷するとよい。この構成によれば,報知内容を印刷物として出力するため,報知内容が明示され,使い勝手がよい。
【0014】
また,本発明の印刷システムは,他プリンタから,選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているか否かを問い合わされたことを契機に,登録されている印刷ジョブの中から当該選定条件に合致する印刷ジョブを抽出する抽出手段と,抽出手段にて抽出された印刷ジョブを印刷する際に,ユーザに対してパスワードの入力を指示し,正しいパスワードが入力されなかった場合には,印刷を禁止する禁止手段とを備えるとよい。印刷ジョブが登録されていないプリンタを操作するユーザとしては,登録先を忘れてしまったユーザの他,悪意を持った第三者(例えば,盗んだ社員証を持っている者)が挙げられる。そこで,他プリンタからの問い合わせに対して印刷ジョブが存在することを明かした場合,その印刷ジョブを自プリンタで印刷する際にはユーザ入力によるパスワード認証を行う。これにより,印刷ジョブを真のユーザ以外の者に印刷されることを防止できる。
【0015】
また,本発明は,プリンタに登録された印刷ジョブの,選定条件を決定する決定手段と,決定手段にて決定した選定条件に合致する印刷ジョブの,印刷を指示する印刷指示手段と,印刷指示手段による指示を契機に印刷を行う印刷手段と,決定手段にて決定した選定条件に合致する印刷ジョブが,他プリンタに登録されているか否かを判断する判断手段と,判断手段にて他プリンタに選定条件に合致する印刷ジョブがあると判断された場合に,その印刷ジョブが登録されているプリンタの識別情報をユーザに報知する報知手段とを備えることを特徴とするプリンタを含んでいる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,登録した印刷ジョブの所在を把握できる印刷システムおよび印刷装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態にかかる印刷システムの構成を示すブロック図である。
【図2】印刷システムに含まれるPCおよびプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】セキュア印刷の概略を示すブロック図である。
【図4】各プリンタに共通の情報を記憶するデータベースの構成を示す図である。
【図5】自プリンタの情報を記憶するデータベースの構成を示す図である。
【図6】PCによるジョブ送信処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】プリンタによるジョブ受信処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】プリンタによるジョブ表示処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】プリンタによる他機ジョブ一覧作成処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】自プリンタに認証ユーザの印刷ジョブが有った場合の,自機ジョブ一覧の例を示す図である。
【図11】自プリンタに認証ユーザの印刷ジョブが無かった場合の,他機ジョブ一覧の例を示す図である。
【図12】プリンタによる登録ジョブ印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,本発明にかかる印刷システムを具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,複数のプリンタと,プリンタにセキュアジョブを登録するパーソナルコンピュータ(PC)とを備えた印刷システムに本発明を適用したものである。
【0019】
[印刷システムの全体構成]
本形態の印刷システム500は,図1に示すように,プリンタに印刷データを出力するPC100と,セキュア印刷機能を有するプリンタ201,202,203とを備えている。各プリンタ201,202,203は,同じモデル(機種)である必要はなく,互いに異なっていてもよい。印刷システム500では,PC100とプリンタ201,202,203とがイーサネット(登録商標)等のネットワーク300を介して接続されている。
【0020】
PC100には,プリンタ201,202,203に対応する印刷ジョブを出力するプリンタドライバ110が組み込まれている。本形態のプリンタドライバ110は,複数の機種に対応可能なユニバーサルドライバであり,各プリンタ201,202,203のスペックに合わせた印刷ジョブを生成する。なお,PC100に組み込まれるプリンタドライバは,ユニバーサルプリンタドライバに限るものではなく,各プリンタに対応するプリンタドライバをそれぞれ組み込んだ形態であってもよい。
【0021】
プリンタ201には,画像形成部や操作部等を制御するファームウェア211が組み込まれている。他のプリンタ202,203にも,それぞれその機種に応じたファームウェア221,231が組み込まれている。
【0022】
なお,印刷システム500を構成するプリンタ,PCはそれぞれ何台接続されていてもよい。また,印刷システム500には,その他の情報処理装置や画像処理装置を接続してもよい。
【0023】
[PCの構成]
続いて,PC100の概略構成について説明する。PC100は,図2に示すように,CPU51と,ROM52と,RAM53と,HDD54と,キーボードやマウス等からなる操作部55と,液晶ディスプレイ等からなる表示部56と,ネットワークインターフェース57と,USBインターフェース58とを有している。
【0024】
PC100のHDD54には,オペレーティングシステム(OS)や,各種のデバイスを制御するデバイスドライバや,ワープロ,表計算ソフト等の印刷指示機能を有するアプリケーションプログラム等が組み込まれている。上述したプリンタドライバ110もHDD54に組み込まれている。
【0025】
CPU51は,ROM52から読み出した制御プログラムやHDD54から読み出したアプリケーションプログラム等に従って,その演算結果をRAM53またはHDD54に記憶させながら各種の処理を行う。上述したプリンタドライバ110の動作もCPU51によって処理される。
【0026】
ネットワークインターフェース57やUSBインターフェース58は,外部装置との通信を可能にするインターフェースである。本形態では,ネットワークインターフェース57を介してプリンタ201等とのデータの送受信を行う。
【0027】
[プリンタの構成]
続いて,プリンタ201の概略構成について説明する。プリンタ201は,図2に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM(Non Volatile RAM)34と,ASIC35と,ネットワークインターフェース37とを備えた制御部30を備えている。また,制御部30は,用紙に画像を形成する画像形成部10と,動作状況の表示やユーザによる入力操作の受付を行う操作パネル40とに電気的に接続されている。なお,プリンタ202,203についても概ね同様の構成である。
【0028】
ROM32には,プリンタ201を制御するための制御プログラムであるファームウェア211や各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
【0029】
CPU31(決定手段,判断手段,報知手段,指示手段,抽出手段,禁止手段の一例)は,ROM32から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,プリンタ201の各構成要素を,ASIC35を介して制御する。上述したファームウェア211の動作もCPU31によって処理される。
【0030】
ネットワークインターフェース37は,外部装置との通信を可能にするインターフェースである。本形態では,ネットワークインターフェース37を介してPC100等とのデータの送受信を行う。
【0031】
[セキュア印刷の概要]
続いて,印刷システム500のセキュア印刷について説明する。本形態の印刷システム500では,ユーザ認証を必要とする印刷ジョブであるセキュアジョブを所望のプリンタに送信する。セキュアジョブを受信したプリンタでは,セキュアジョブをメモリに登録し,印刷待機状態になる。その後,そのプリンタでユーザ認証を行い,そのユーザのセキュアジョブの印刷を行う。以下,このようなセキュアジョブを利用した印刷をセキュア印刷とする。
【0032】
具体的に,印刷システム500では,図3に示すように,PC100で生成されたセキュアジョブを,印刷システム500内の所望のプリンタ(図3ではプリンタ201)に送信し,そのプリンタのNVRAM34あるいはRAM33に登録する(1)。
【0033】
ユーザは,セキュアジョブの送信先であるプリンタ(図3ではプリンタ201)において,ユーザ認証に必要な情報を入力する(2)。ユーザが認証された場合には,自プリンタに登録されているセキュアジョブのうち,その認証されたユーザ(以下,「認証ユーザ」とする)が登録したセキュアジョブを抽出し,その抽出結果を一覧表示する。そして,一覧表示されたセキュアジョブの中から,認証ユーザによって選択されたセキュアジョブの印刷を開始する(3)。
【0034】
一方,認証ユーザが登録したジョブが1つもない場合,他プリンタ(図3ではプリンタ202,203)にその認証ユーザの印刷ジョブに関する情報を問い合わせる(4)。その後,他プリンタはその認証ユーザの印刷ジョブに関する情報を応答する(5)。応答を受け取ったプリンタ(図3ではプリンタ201)は,受け取った情報を出力する(6)。
【0035】
このセキュア印刷は,ユーザ認証が行われるまで印刷が開始されない。そのため,印刷物を第三者に見られる,あるいは持ち去られる心配がなく,機密性が高いという利点がある。さらに,機密性が高いことから,機密文書の印刷が想定され,印刷の確実性に対する要求も高い。また,セキュアジョブを登録していないプリンタにユーザ認証を行ったとしても,他プリンタの情報を出力することから,所望のセキュアジョブをどのプリンタに登録したのかを把握できる。
【0036】
なお,プリンタ201,202,203はグループ化されており,各プリンタ201,202,203は,図4に示すようなグループ共通の情報を記憶するデータベース215を有している。具体的に,データベース215には,グループに共通するプリンタパスワード,管理対象となるユーザ名および各ユーザに割り当てられたユーザIDとユーザパスワード,グループに属するプリンタ名および各プリンタのIPアドレスが記憶される。以下,データベース215を「管理DB215」とする。
【0037】
また,各プリンタ201,202,203は,図5に示すようなプリンタ個別の情報を記憶するデータベース216を有している。具体的に,データベース216には,プリンタ名,プリンタの設置場所を示す情報,登録されているジョブ名および各ジョブの所有ユーザおよび参照フラグの情報が記憶される。すなわち,データベース216には,印刷ジョブのジョブ情報として,ジョブ名と,所有ユーザと,参照フラグとが1つのレコードになって記憶される。参照フラグの詳細については,後述する。以下,データベース216を「プリンタDB216」とする。
【0038】
[セキュア印刷の動作]
続いて,前述したセキュア印刷の手順について,PC100での動作と,プリンタ201,202,203の動作とに分けて詳説する。なお,以下の説明では,プリンタ201の動作としてプリンタの動作を説明するが,プリンタ202,203についても同様の動作を行う。
【0039】
[ジョブ送信処理(PC)]
始めに,PC100のプリンタドライバ110によって実行されるジョブ送信処理について,図6のフローチャートを参照しつつ説明する。ジョブ送信処理は,プリンタドライバ110がアプリケーションプログラム等を介して印刷指示を受け付けたことを契機に実行される。
【0040】
先ず,印刷ジョブのジョブ情報を取得する(S101)。S101では特に,印刷ジョブがセキュアジョブであるか否かの設定情報を取得する。そして,S101で決定したジョブ情報に基づいて,印刷指示された印刷ジョブがセキュアジョブか否かを判断する(S102)。
【0041】
印刷ジョブがセキュアジョブの場合には(S102:YES),セキュアジョブの登録先として選択されたプリンタの情報を取得し,そのプリンタに対してセキュアジョブを送信する(S103)。セキュアジョブには,各プリンタのスペックに合わせて生成されたPDL形式の印刷データと,セキュアジョブであることを示す情報とが含まれる。S103の後,ジョブ送信処理を終了する。
【0042】
印刷ジョブがセキュアジョブでない場合には(S102:NO),送信先として選択されたプリンタに印刷ジョブを送信する(S111)。S111の後,ジョブ送信処理を終了する。
【0043】
[ジョブ受信処理(プリンタ)]
続いて,プリンタ201のファームウェア211によって実行されるジョブ受信処理について,図7のフローチャートを参照しつつ説明する。ジョブ受信処理は,PC100から送られてくる印刷ジョブを受信したことを契機に実行される。
【0044】
先ず,受信した印刷ジョブがセキュアジョブか否かを判断する(S201)。セキュアジョブでなければ(S201:NO),受信した印刷ジョブの印刷を開始する(S211)。S211の後,ジョブ受信処理を終了する。
【0045】
セキュアジョブであれば(S201:YES),そのセキュアジョブをRAM33に登録する(S202)。すなわち,印刷データとユーザ情報とをプリンタDB216に記憶する。このとき,参照フラグの情報が付加される。参照フラグの初期値はオフである。セキュアジョブの登録後は,ジョブ受信処理を終了する。
【0046】
つまり,プリンタ201は,セキュアジョブ以外の印刷ジョブを受信した後は,即時に印刷を開始し,セキュアジョブを受信した後は,即時に印刷を開始するのではなく,セキュアジョブをメモリに記憶して印刷指示待ち状態となる。
【0047】
[ジョブ表示処理(プリンタ)]
続いて,プリンタ201のファームウェア211によって実行されるジョブ表示処理(決定手段,判断手段,報知手段,指示手段の一例)について,図8のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0048】
プリンタ201は,セキュアジョブを印刷するにあたって,ユーザ認証を行う。ジョブ表示処理は,このユーザ認証によってユーザが認証されたことを契機に実行される。なお,プリンタ201は,例えば,操作パネル40を利用した手入力や,ICタグ等を利用した無線通信による入力によって,ユーザの特定に必要な識別番号の入力を受け付ける。そして,その識別番号に基づいてユーザを識別する。
【0049】
先ず,印刷ジョブの選定条件を決定する(S221)。本形態では,ユーザ認証によって特定されたユーザ(認証ユーザ)のユーザIDを取得する。そして,その認証ユーザが,管理DB215に登録されている管理対象ユーザであるか否かを判断する(S222)。管理対象ユーザでなければ(S222:NO),ジョブ表示処理を終了する。すなわち,管理対象ユーザ以外のユーザによるセキュアジョブの印刷を禁止する。
【0050】
管理対象ユーザの場合には(S222:YES),プリンタDB216の中から,認証ユーザの印刷ジョブ(本形態ではセキュアジョブ)を検索する(S223)。そして,検索対象の印刷ジョブがあったか否かを判断する(S224)。
【0051】
検索対象の印刷ジョブがあった場合には(S224:YES),自プリンタに登録されている自機ジョブ一覧として,S223で検索された印刷ジョブの一覧を作成する(S231)。そして,S231で作成した自機ジョブ一覧を,操作パネル40の表示部に表示する(S232)。S232の後,ジョブ表示処理を終了する。
【0052】
一方,検索対象の印刷ジョブがなかった場合には(S224:NO),他プリンタに対して認証ユーザの印刷ジョブに関する情報を問い合わせる。具体的には,先ず,問い合わせ先のプリンタを検索する(S225)。本形態では,管理DB215を参照し,グループ内のプリンタのうち,自プリンタ以外のプリンタであって問い合わせを行っていないプリンタ(未処理プリンタ)を1つ抽出する。
【0053】
未処理プリンタがある場合には(S226:YES),その未処理プリンタに認証ユーザの印刷ジョブに関する情報を問い合わせ,他プリンタに登録されているジョブ一覧を作成する他機ジョブ一覧作成処理を実行する(S227)。
【0054】
ここで,S227の他機ジョブ一覧作成処理について,図9のフローチャートを参照しつつ説明する。先ず,S225で抽出された未処理プリンタである抽出プリンタに対し,認証ユーザの印刷ジョブが登録されているか否かを問い合わせる(S251)。この問い合わせに際しては,プリンタパスワードと認証ユーザのユーザIDが付加される。S251による問い合わせ後は,抽出プリンタからの応答があるまで待機する(S252)。
【0055】
一方,S251による問い合わせを受信した抽出プリンタでは,その受信を契機に応答処理(抽出手段の一例)を実行する。応答処理では,先ず,プリンタパスワードを照合し(S301),プリンタパスワードが合致するか否かを判断する(S302)。すなわち,同じグループに属するプリンタであるか否かを確認する。プリンタパスワードは,管理DB215に記憶されている。
【0056】
プリンタパスワードが合致しない場合には(S302:NO),該当する印刷ジョブが無い旨の情報であるジョブ無し情報を作成し(S311),そのジョブ無し情報を問い合わせ元のプリンタに応答する(S307)。すなわち,グループに属していないプリンタからの問い合わせに対して認証ユーザの印刷ジョブの情報を応答してしまうと,認証ユーザの印刷ジョブの情報が漏れる可能性があり,セキュアジョブの秘密性を欠くことになる。そこで,グループに属していないプリンタからの問い合わせに対しては,印刷ジョブの登録状況に拘らず,ジョブ無し情報を応答する。
【0057】
プリンタパスワードが合致する場合には(S302:YES),抽出プリンタのプリンタDB216の中から,認証ユーザの印刷ジョブを検索する(S303)。そして,検索対象の印刷ジョブがあったか否かを判断する(S304)。
【0058】
検索対象の印刷ジョブがあった場合には(S304:YES),抽出プリンタに登録されているジョブ一覧として,S303で検索された印刷ジョブの一覧を作成する(S305)。さらに,自プリンタ(ここでは抽出プリンタ)に対する処理として,S304で検索された印刷ジョブの参照フラグをオンに変更する(S306)。
【0059】
その後,ジョブ一覧の情報を,問い合わせ元のプリンタに応答する(S307)。なお,ジョブ一覧の情報を応答する場合には,ジョブ一覧情報の他,抽出プリンタのプリンタ名,およびプリンタの設置場所が付加される。プリンタ名および設置場所は,プリンタDB216に記憶されている。
【0060】
一方,検索対象の印刷ジョブがなかった場合には(S304:NO),ジョブ無し情報を作成し(S311),そのジョブ無し情報を問い合わせ元のプリンタに応答する(S307)。S307の後,抽出プリンタによる応答処理を終了する。
【0061】
他機ジョブ一覧作成処理の説明に戻り,抽出プリンタからの応答があった場合には(S252:YES),認証ユーザの印刷ジョブがあったか否かを判断する(S253)。認証ユーザの印刷ジョブがある場合(S253:YES),すなわち抽出プリンタからジョブ一覧情報を受信した場合には,他機ジョブ一覧に,受信したジョブ一覧情報を追加する(S254)。S254の後,あるいは抽出プリンタに認証ユーザの印刷ジョブがなかった場合(S253:NO),すなわち抽出プリンタからジョブ無し情報を受信した場合には,他機ジョブ一覧作成処理を終了する。
【0062】
図8のジョブ表示処理の説明に戻り,S227にて他機ジョブ一覧を更新した後,S225に戻り,再度未処理プリンタを検索する。未処理プリンタがある場合には(S226:YES),S227の他機ジョブ一覧作成処理を行う。すなわち,他機ジョブ一覧作成処理を未処理プリンタがなくなるまで繰り返す。
【0063】
未処理プリンタが無い場合には(S226:NO),これまでに作成した他機ジョブ一覧を,操作パネル40の表示部に表示する(S232)。S232の後,ジョブ表示処理を終了する。
【0064】
すなわち,ジョブ表示処理では,認証ユーザの印刷ジョブが自プリンタに登録されている場合には,自プリンタに登録されている,認証ユーザの印刷ジョブの一覧を出力する。一方,認証ユーザの印刷ジョブが自プリンタに登録されていない場合には,他プリンタに登録されている,認証ユーザの印刷ジョブの一覧を出力する。
【0065】
[表示例]
以下,S232での表示例について説明する。例えば,「UserA」がプリンタ201で印刷を行うものとする。プリンタ201には,図10に示すように,UserAの印刷ジョブを含む複数の印刷ジョブが登録されていたとする。
【0066】
この場合,ジョブ表示処理では,プリンタDB216からUserAの印刷ジョブを抽出し,UserAの印刷ジョブ一覧である自機ジョブ一覧217を作成する。そして,自機ジョブ一覧217の内容を操作パネル40の表示部に出力する。
【0067】
このとき,操作パネル40の表示部には,図10に示したように,印刷ボタン41と,削除ボタン42と,一覧印刷ボタン43とが表示される。印刷ボタン41が押下されると,選択されている印刷ジョブの印刷を開始する。削除ボタン42が押下されると,選択されている印刷ジョブをメモリから削除する。これに伴って,自機ジョブ一覧217およびプリンタDB216についても該当レコードを削除する。一覧印刷ボタン43が押下されると,自機ジョブ一覧217の内容を印刷する。
【0068】
一方,プリンタ201には,UserAの印刷ジョブが登録されていなかったとする。そして,プリンタ202,203には,図11に示すように,UserAの印刷ジョブを含む複数の印刷ジョブが登録されていたとする。
【0069】
この場合,ジョブ表示処理では,プリンタ202,203にUserAの印刷ジョブがあるか否かを問い合わせ,プリンタ202,203がそれぞれ作成したUserAの印刷ジョブ一覧を取得する。そして,プリンタ201では,他プリンタに存在するUserAの印刷ジョブ一覧である他機ジョブ一覧218を作成する。そして,他機ジョブ一覧218の内容を操作パネル40の表示部に出力する。プリンタ201は,問い合わせを行った他プリンタ202,203からプリンタ名および設置場所の情報を取得しており,他機ジョブ一覧218を表示する際には,図11に示すように,各印刷ジョブについて,どのプリンタに登録されているか,さらにそのプリンタがどこに設置されているかを関連付けて表示する。
【0070】
また,操作パネル40の表示部には,図11に示したように,削除ボタン42と,一覧印刷ボタン43とが表示される。削除ボタン42が押下されると,選択されている印刷ジョブの削除指令を,その印刷ジョブが登録されている他プリンタに出力する。これに伴って,他機ジョブ一覧218についても該当レコードを削除する。一覧印刷ボタン43が押下されると,他機ジョブ一覧218の内容を印刷する。
【0071】
なお,操作パネル40の表示部に表示される項目やレイアウトは,図10ないし図11に限るものではない。すなわち,少なくとも認識ユーザの印刷ジョブが登録されているプリンタの識別情報を表示すればよく,印刷ジョブ名や設置場所等については必ずしも表示しなくてもよい。また,反対に,印刷ジョブの詳細情報(ページ数や登録日時等)等,表示項目を増やしてもよい。
【0072】
また,他機ジョブ一覧218を表示した際には,印刷ボタン41については,機密性を考慮して表示しない。すなわち,印刷ジョブが登録されていないプリンタを操作するユーザとしては,悪意を持って操作する第三者(例えば,盗んだ社員証を持っている者)である可能性も否めない。そのため,無条件で印刷を許可することは好ましくないことから,印刷ボタン41を非表示として,遠隔操作での印刷,あるいは他プリンタから印刷ジョブを転送しての印刷は行わない。
【0073】
[登録ジョブ印刷処理(プリンタ)]
続いて,プリンタ201のファームウェア211によって実行される登録ジョブ印刷処理(禁止手段の一例)について,図12のフローチャートを参照しつつ説明する。プリンタ201では,操作パネル40の表示部に表示された印刷ボタン41を押下することで,自プリンタに登録されている印刷ジョブを印刷できる。登録ジョブ印刷処理は,この印刷ボタン41の押下を契機に実行される。
【0074】
先ず,印刷が指示された印刷ジョブの参照フラグがオンであるか否かを判断する(S271)。参照フラグは,他プリンタから,特定のユーザの印刷ジョブについての問い合わせを受けた際,検索された印刷ジョブについてはオンになっている(図9のS306参照)。参照フラグがオフの場合には(S271:NO),選択された印刷ジョブの印刷を開始し(S274),登録ジョブ印刷処理を終了する。
【0075】
参照フラグがオンの場合には(S271:YES),ユーザパスワードの入力を受け付ける(S272)。前述したように,他プリンタからの問い合わせが,悪意を持った第三者である可能性がある。そこで,他プリンタからの問い合わせの対象となった印刷ジョブについては,印刷に先立ってユーザパスワードの入力を要求し,印刷ジョブの機密性を高める。
【0076】
ユーザパスワードの入力を受け付けた後,そのパスワードが管理DB215に登録されているユーザパスワードと合致するか否かを判断する(S273)。パスワードが合致する場合には(S273:YES),選択された印刷ジョブの印刷を開始する(S274)。一方,パスワードが合致しない場合には(S273:NO),エラーメッセージを表示し(S281),選択された印刷ジョブの印刷を回避する。S274またはS281の後,登録ジョブ印刷処理を終了する。
【0077】
以上詳細に説明したように本形態の印刷システム500によれば,選定条件(本形態では,認証ユーザの印刷ジョブ)に合致する印刷ジョブの,他プリンタでの所在を取得し,その結果を操作パネル40の表示部に報知する。これにより,ユーザは,選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているプリンタを把握できる。そのため,例えば,ユーザが印刷ジョブの登録後にその登録先のプリンタを忘れたとしても,登録元に戻って履歴を確認することなく,印刷ジョブの所在を知ることができ,その結果として所望の印刷ジョブの印刷を確実に実行できる。
【0078】
また,印刷ジョブを登録した後,印刷指示をし忘れた場合,その印刷ジョブの印刷が何時までたっても実行されず,その印刷ジョブがプリンタのメモリに放置されることになるが,本形態の印刷システム500によれば,他プリンタの登録状況を報知することで,印刷忘れの印刷ジョブの存在を認識することもできる。
【0079】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,プリンタは,印刷機能を備えるものであればよく,複合機や複写機であっても適用可能である。また,情報処理装置についても,PCに限るものではない。例えば携帯情報端末やワークステーションであってもよい。
【0080】
また,実施の形態では,セキュアジョブを所定のプリンタに登録する印刷システムに本発明を適用しているが,登録される印刷ジョブはセキュアジョブに限るものではない。すなわち,指定したプリンタに印刷ジョブを登録し,プリンタはその印刷ジョブの印刷指示を契機に印刷を開始するものであればよく,例えば,印刷開始の際に認証の必要がない印刷ジョブであっても適用可能である。
【0081】
また,実施の形態では,報知対象となる印刷ジョブの選定条件が,認証ユーザの印刷ジョブとなっているが,これに限るものではない。例えば,印刷ジョブの登録時間や,印刷データの種類であってもよい。
【0082】
また,実施の形態では,グループ内のプリンタの1つに印刷ジョブが登録されるが,必ずしも1つである必要はない。すなわち,印刷ジョブは,複数のプリンタに同時に登録されてもよい。この場合,登録されたうちの1つのプリンタで当該印刷ジョブの印刷が実行されたことを契機に,他プリンタに対して同一の印刷対象に基づく印刷ジョブの削除を指示する。
【0083】
また,実施の形態では,自プリンタに認証ユーザの印刷ジョブが登録されていない場合に,他プリンタに認証ユーザの印刷ジョブについて問い合わせているが,他プリンタに問い合わせる条件は,これに限るものではない。例えば,自プリンタの登録状況に関係なく,選定条件の決定後に他プリンタにその選定条件に合致する印刷ジョブの登録状況を毎回問い合わせてもよい。また,選定条件の決定後の即時ではなく,ユーザの指示に基づいて問い合わせてもよい。
【0084】
また,実施の形態では,他プリンタに,選定条件に合致する印刷ジョブの有無を直接問い合わせているが,これに限るものではない。例えば,グループ内の全プリンタの印刷ジョブの登録状況を集中管理するプリンタサーバを配置した場合,そのプリンタサーバに問い合わせてもよい。
【符号の説明】
【0085】
100 パーソナルコンピュータ(PC)
110 プリンタドライバ
201,202,203 プリンタ
211,221,231 ファームウェア
500 印刷システム
【技術分野】
【0001】
本発明は,印刷システムおよびプリンタに関する。さらに詳細には,プリンタに対して印刷ジョブを登録し,その印刷ジョブの印刷指示を契機に印刷を開始する印刷システムおよびプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,印刷ジョブをプリンタに登録し,登録先のプリンタでその印刷ジョブの印刷指示を行ってから印刷を実行する技術がある。例えば,特許文献1には,複数のプリンタに同一のセキュアジョブをそれぞれ登録すること,また,何れかのプリンタにて認証を行った後にセキュアジョブの印刷を開始すること等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−131842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した従来の印刷システムには,次のような問題があった。すなわち,印刷ジョブを登録したプリンタと,印刷ジョブを登録していないプリンタとが混在する環境では,ユーザは,どのプリンタに印刷ジョブを登録したのかを覚えておかないと,所望の印刷物を得られないことがある。
【0005】
本発明は,前記した従来の印刷システムが有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,登録した印刷ジョブの所在を把握できる印刷システムおよび印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた印刷システムは,プリンタと,プリンタに印刷ジョブを登録する情報処理装置とを有し,プリンタは印刷ジョブの印刷指示を契機に印刷を開始する印刷システムであって,印刷対象となる印刷ジョブの選定条件を決定する決定手段と,決定手段にて決定した選定条件に合致する印刷ジョブが,他プリンタに登録されているか否かを判断する判断手段と,判断手段にて他プリンタに選定条件に合致する印刷ジョブがあると判断された場合に,その印刷ジョブが登録されているプリンタの識別情報をユーザに報知する報知手段とを備えることを特徴としている。
【0007】
本発明の印刷システムは,情報処理装置からプリンタに印刷ジョブ(例えば,セキュアジョブ)を登録するシステムであり,ユーザがそのプリンタに対して印刷指示を入力することによって印刷を開始する。さらに,プリンタは,印刷対象となる印刷ジョブの選定条件に基づいて,他プリンタにその選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているか否かを判断する。選定条件としては,例えばジョブIDやユーザIDが該当する。また,印刷ジョブの登録時間や,印刷データの種類であってもよい。そして,その選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているプリンタの識別情報を,ユーザに報知する。具体的に,報知されるプリンタの識別情報としては,例えば,プリンタ名,機種名,設置場所が該当する。
【0008】
すなわち,本発明の印刷システムでは,選定条件に合致する印刷ジョブの,他プリンタでの所在を取得し,その結果をユーザに報知する。これにより,ユーザは,所望の印刷ジョブが登録されているプリンタを把握できる。例えば,ユーザが印刷ジョブの登録後にその登録先のプリンタを忘れたとしても,登録元に戻って履歴を確認することなく,印刷ジョブの所在を知ることができる。その結果として,所望の印刷ジョブの印刷を確実に実行できる。
【0009】
また,本発明の印刷システムの判断手段は,自プリンタに選定条件に合致する印刷ジョブが登録されていない場合に,他プリンタにその選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているか否かを判断するとよい。すなわち,選定条件に合致する印刷ジョブが自プリンタに無い場合に,その印刷ジョブの所在を確認する必要性が高まる。一方で,選定条件に合致する印刷ジョブが自プリンタにある場合には,自プリンタでその印刷ジョブを印刷することができ,他プリンタの登録状態を知る必要性は低い。そのため,選定条件に合致する印刷ジョブが自プリンタに無いことを条件に,他プリンタの登録状態を判断する方が好ましい。
【0010】
また,本発明の印刷システムの報知手段は,選定条件に合致する印刷ジョブと,その印刷ジョブが登録されているプリンタの識別情報とを対応付けて報知するとよい。この構成によれば,どの印刷ジョブがどのプリンタに登録されているかを把握し易い。
【0011】
また,本発明の印刷システムの判断手段は,他プリンタに選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているか否かを,当該他プリンタに問い合わせるとよい。他プリンタに直接問い合わせることで,印刷ジョブを集中管理するサーバが不要となる。そのため,システムが簡素化できる。
【0012】
また,本発明の印刷システムは,判断手段の判断対象となった他プリンタに対し,判断手段にて選定条件に合致する印刷ジョブと判断された印刷ジョブの削除を指示する指示手段を備えるとよい。報知された印刷ジョブのうち,不要な印刷ジョブがあった場合には,その印刷ジョブを削除できる構成にすることで,削除対象の印刷ジョブが登録されているプリンタに出向くユーザの手間を省くことができる。
【0013】
また,本発明の印刷システムの報知手段は,報知内容を用紙に印刷するとよい。この構成によれば,報知内容を印刷物として出力するため,報知内容が明示され,使い勝手がよい。
【0014】
また,本発明の印刷システムは,他プリンタから,選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているか否かを問い合わされたことを契機に,登録されている印刷ジョブの中から当該選定条件に合致する印刷ジョブを抽出する抽出手段と,抽出手段にて抽出された印刷ジョブを印刷する際に,ユーザに対してパスワードの入力を指示し,正しいパスワードが入力されなかった場合には,印刷を禁止する禁止手段とを備えるとよい。印刷ジョブが登録されていないプリンタを操作するユーザとしては,登録先を忘れてしまったユーザの他,悪意を持った第三者(例えば,盗んだ社員証を持っている者)が挙げられる。そこで,他プリンタからの問い合わせに対して印刷ジョブが存在することを明かした場合,その印刷ジョブを自プリンタで印刷する際にはユーザ入力によるパスワード認証を行う。これにより,印刷ジョブを真のユーザ以外の者に印刷されることを防止できる。
【0015】
また,本発明は,プリンタに登録された印刷ジョブの,選定条件を決定する決定手段と,決定手段にて決定した選定条件に合致する印刷ジョブの,印刷を指示する印刷指示手段と,印刷指示手段による指示を契機に印刷を行う印刷手段と,決定手段にて決定した選定条件に合致する印刷ジョブが,他プリンタに登録されているか否かを判断する判断手段と,判断手段にて他プリンタに選定条件に合致する印刷ジョブがあると判断された場合に,その印刷ジョブが登録されているプリンタの識別情報をユーザに報知する報知手段とを備えることを特徴とするプリンタを含んでいる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,登録した印刷ジョブの所在を把握できる印刷システムおよび印刷装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態にかかる印刷システムの構成を示すブロック図である。
【図2】印刷システムに含まれるPCおよびプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】セキュア印刷の概略を示すブロック図である。
【図4】各プリンタに共通の情報を記憶するデータベースの構成を示す図である。
【図5】自プリンタの情報を記憶するデータベースの構成を示す図である。
【図6】PCによるジョブ送信処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】プリンタによるジョブ受信処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】プリンタによるジョブ表示処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】プリンタによる他機ジョブ一覧作成処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】自プリンタに認証ユーザの印刷ジョブが有った場合の,自機ジョブ一覧の例を示す図である。
【図11】自プリンタに認証ユーザの印刷ジョブが無かった場合の,他機ジョブ一覧の例を示す図である。
【図12】プリンタによる登録ジョブ印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,本発明にかかる印刷システムを具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,複数のプリンタと,プリンタにセキュアジョブを登録するパーソナルコンピュータ(PC)とを備えた印刷システムに本発明を適用したものである。
【0019】
[印刷システムの全体構成]
本形態の印刷システム500は,図1に示すように,プリンタに印刷データを出力するPC100と,セキュア印刷機能を有するプリンタ201,202,203とを備えている。各プリンタ201,202,203は,同じモデル(機種)である必要はなく,互いに異なっていてもよい。印刷システム500では,PC100とプリンタ201,202,203とがイーサネット(登録商標)等のネットワーク300を介して接続されている。
【0020】
PC100には,プリンタ201,202,203に対応する印刷ジョブを出力するプリンタドライバ110が組み込まれている。本形態のプリンタドライバ110は,複数の機種に対応可能なユニバーサルドライバであり,各プリンタ201,202,203のスペックに合わせた印刷ジョブを生成する。なお,PC100に組み込まれるプリンタドライバは,ユニバーサルプリンタドライバに限るものではなく,各プリンタに対応するプリンタドライバをそれぞれ組み込んだ形態であってもよい。
【0021】
プリンタ201には,画像形成部や操作部等を制御するファームウェア211が組み込まれている。他のプリンタ202,203にも,それぞれその機種に応じたファームウェア221,231が組み込まれている。
【0022】
なお,印刷システム500を構成するプリンタ,PCはそれぞれ何台接続されていてもよい。また,印刷システム500には,その他の情報処理装置や画像処理装置を接続してもよい。
【0023】
[PCの構成]
続いて,PC100の概略構成について説明する。PC100は,図2に示すように,CPU51と,ROM52と,RAM53と,HDD54と,キーボードやマウス等からなる操作部55と,液晶ディスプレイ等からなる表示部56と,ネットワークインターフェース57と,USBインターフェース58とを有している。
【0024】
PC100のHDD54には,オペレーティングシステム(OS)や,各種のデバイスを制御するデバイスドライバや,ワープロ,表計算ソフト等の印刷指示機能を有するアプリケーションプログラム等が組み込まれている。上述したプリンタドライバ110もHDD54に組み込まれている。
【0025】
CPU51は,ROM52から読み出した制御プログラムやHDD54から読み出したアプリケーションプログラム等に従って,その演算結果をRAM53またはHDD54に記憶させながら各種の処理を行う。上述したプリンタドライバ110の動作もCPU51によって処理される。
【0026】
ネットワークインターフェース57やUSBインターフェース58は,外部装置との通信を可能にするインターフェースである。本形態では,ネットワークインターフェース57を介してプリンタ201等とのデータの送受信を行う。
【0027】
[プリンタの構成]
続いて,プリンタ201の概略構成について説明する。プリンタ201は,図2に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM(Non Volatile RAM)34と,ASIC35と,ネットワークインターフェース37とを備えた制御部30を備えている。また,制御部30は,用紙に画像を形成する画像形成部10と,動作状況の表示やユーザによる入力操作の受付を行う操作パネル40とに電気的に接続されている。なお,プリンタ202,203についても概ね同様の構成である。
【0028】
ROM32には,プリンタ201を制御するための制御プログラムであるファームウェア211や各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
【0029】
CPU31(決定手段,判断手段,報知手段,指示手段,抽出手段,禁止手段の一例)は,ROM32から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,プリンタ201の各構成要素を,ASIC35を介して制御する。上述したファームウェア211の動作もCPU31によって処理される。
【0030】
ネットワークインターフェース37は,外部装置との通信を可能にするインターフェースである。本形態では,ネットワークインターフェース37を介してPC100等とのデータの送受信を行う。
【0031】
[セキュア印刷の概要]
続いて,印刷システム500のセキュア印刷について説明する。本形態の印刷システム500では,ユーザ認証を必要とする印刷ジョブであるセキュアジョブを所望のプリンタに送信する。セキュアジョブを受信したプリンタでは,セキュアジョブをメモリに登録し,印刷待機状態になる。その後,そのプリンタでユーザ認証を行い,そのユーザのセキュアジョブの印刷を行う。以下,このようなセキュアジョブを利用した印刷をセキュア印刷とする。
【0032】
具体的に,印刷システム500では,図3に示すように,PC100で生成されたセキュアジョブを,印刷システム500内の所望のプリンタ(図3ではプリンタ201)に送信し,そのプリンタのNVRAM34あるいはRAM33に登録する(1)。
【0033】
ユーザは,セキュアジョブの送信先であるプリンタ(図3ではプリンタ201)において,ユーザ認証に必要な情報を入力する(2)。ユーザが認証された場合には,自プリンタに登録されているセキュアジョブのうち,その認証されたユーザ(以下,「認証ユーザ」とする)が登録したセキュアジョブを抽出し,その抽出結果を一覧表示する。そして,一覧表示されたセキュアジョブの中から,認証ユーザによって選択されたセキュアジョブの印刷を開始する(3)。
【0034】
一方,認証ユーザが登録したジョブが1つもない場合,他プリンタ(図3ではプリンタ202,203)にその認証ユーザの印刷ジョブに関する情報を問い合わせる(4)。その後,他プリンタはその認証ユーザの印刷ジョブに関する情報を応答する(5)。応答を受け取ったプリンタ(図3ではプリンタ201)は,受け取った情報を出力する(6)。
【0035】
このセキュア印刷は,ユーザ認証が行われるまで印刷が開始されない。そのため,印刷物を第三者に見られる,あるいは持ち去られる心配がなく,機密性が高いという利点がある。さらに,機密性が高いことから,機密文書の印刷が想定され,印刷の確実性に対する要求も高い。また,セキュアジョブを登録していないプリンタにユーザ認証を行ったとしても,他プリンタの情報を出力することから,所望のセキュアジョブをどのプリンタに登録したのかを把握できる。
【0036】
なお,プリンタ201,202,203はグループ化されており,各プリンタ201,202,203は,図4に示すようなグループ共通の情報を記憶するデータベース215を有している。具体的に,データベース215には,グループに共通するプリンタパスワード,管理対象となるユーザ名および各ユーザに割り当てられたユーザIDとユーザパスワード,グループに属するプリンタ名および各プリンタのIPアドレスが記憶される。以下,データベース215を「管理DB215」とする。
【0037】
また,各プリンタ201,202,203は,図5に示すようなプリンタ個別の情報を記憶するデータベース216を有している。具体的に,データベース216には,プリンタ名,プリンタの設置場所を示す情報,登録されているジョブ名および各ジョブの所有ユーザおよび参照フラグの情報が記憶される。すなわち,データベース216には,印刷ジョブのジョブ情報として,ジョブ名と,所有ユーザと,参照フラグとが1つのレコードになって記憶される。参照フラグの詳細については,後述する。以下,データベース216を「プリンタDB216」とする。
【0038】
[セキュア印刷の動作]
続いて,前述したセキュア印刷の手順について,PC100での動作と,プリンタ201,202,203の動作とに分けて詳説する。なお,以下の説明では,プリンタ201の動作としてプリンタの動作を説明するが,プリンタ202,203についても同様の動作を行う。
【0039】
[ジョブ送信処理(PC)]
始めに,PC100のプリンタドライバ110によって実行されるジョブ送信処理について,図6のフローチャートを参照しつつ説明する。ジョブ送信処理は,プリンタドライバ110がアプリケーションプログラム等を介して印刷指示を受け付けたことを契機に実行される。
【0040】
先ず,印刷ジョブのジョブ情報を取得する(S101)。S101では特に,印刷ジョブがセキュアジョブであるか否かの設定情報を取得する。そして,S101で決定したジョブ情報に基づいて,印刷指示された印刷ジョブがセキュアジョブか否かを判断する(S102)。
【0041】
印刷ジョブがセキュアジョブの場合には(S102:YES),セキュアジョブの登録先として選択されたプリンタの情報を取得し,そのプリンタに対してセキュアジョブを送信する(S103)。セキュアジョブには,各プリンタのスペックに合わせて生成されたPDL形式の印刷データと,セキュアジョブであることを示す情報とが含まれる。S103の後,ジョブ送信処理を終了する。
【0042】
印刷ジョブがセキュアジョブでない場合には(S102:NO),送信先として選択されたプリンタに印刷ジョブを送信する(S111)。S111の後,ジョブ送信処理を終了する。
【0043】
[ジョブ受信処理(プリンタ)]
続いて,プリンタ201のファームウェア211によって実行されるジョブ受信処理について,図7のフローチャートを参照しつつ説明する。ジョブ受信処理は,PC100から送られてくる印刷ジョブを受信したことを契機に実行される。
【0044】
先ず,受信した印刷ジョブがセキュアジョブか否かを判断する(S201)。セキュアジョブでなければ(S201:NO),受信した印刷ジョブの印刷を開始する(S211)。S211の後,ジョブ受信処理を終了する。
【0045】
セキュアジョブであれば(S201:YES),そのセキュアジョブをRAM33に登録する(S202)。すなわち,印刷データとユーザ情報とをプリンタDB216に記憶する。このとき,参照フラグの情報が付加される。参照フラグの初期値はオフである。セキュアジョブの登録後は,ジョブ受信処理を終了する。
【0046】
つまり,プリンタ201は,セキュアジョブ以外の印刷ジョブを受信した後は,即時に印刷を開始し,セキュアジョブを受信した後は,即時に印刷を開始するのではなく,セキュアジョブをメモリに記憶して印刷指示待ち状態となる。
【0047】
[ジョブ表示処理(プリンタ)]
続いて,プリンタ201のファームウェア211によって実行されるジョブ表示処理(決定手段,判断手段,報知手段,指示手段の一例)について,図8のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0048】
プリンタ201は,セキュアジョブを印刷するにあたって,ユーザ認証を行う。ジョブ表示処理は,このユーザ認証によってユーザが認証されたことを契機に実行される。なお,プリンタ201は,例えば,操作パネル40を利用した手入力や,ICタグ等を利用した無線通信による入力によって,ユーザの特定に必要な識別番号の入力を受け付ける。そして,その識別番号に基づいてユーザを識別する。
【0049】
先ず,印刷ジョブの選定条件を決定する(S221)。本形態では,ユーザ認証によって特定されたユーザ(認証ユーザ)のユーザIDを取得する。そして,その認証ユーザが,管理DB215に登録されている管理対象ユーザであるか否かを判断する(S222)。管理対象ユーザでなければ(S222:NO),ジョブ表示処理を終了する。すなわち,管理対象ユーザ以外のユーザによるセキュアジョブの印刷を禁止する。
【0050】
管理対象ユーザの場合には(S222:YES),プリンタDB216の中から,認証ユーザの印刷ジョブ(本形態ではセキュアジョブ)を検索する(S223)。そして,検索対象の印刷ジョブがあったか否かを判断する(S224)。
【0051】
検索対象の印刷ジョブがあった場合には(S224:YES),自プリンタに登録されている自機ジョブ一覧として,S223で検索された印刷ジョブの一覧を作成する(S231)。そして,S231で作成した自機ジョブ一覧を,操作パネル40の表示部に表示する(S232)。S232の後,ジョブ表示処理を終了する。
【0052】
一方,検索対象の印刷ジョブがなかった場合には(S224:NO),他プリンタに対して認証ユーザの印刷ジョブに関する情報を問い合わせる。具体的には,先ず,問い合わせ先のプリンタを検索する(S225)。本形態では,管理DB215を参照し,グループ内のプリンタのうち,自プリンタ以外のプリンタであって問い合わせを行っていないプリンタ(未処理プリンタ)を1つ抽出する。
【0053】
未処理プリンタがある場合には(S226:YES),その未処理プリンタに認証ユーザの印刷ジョブに関する情報を問い合わせ,他プリンタに登録されているジョブ一覧を作成する他機ジョブ一覧作成処理を実行する(S227)。
【0054】
ここで,S227の他機ジョブ一覧作成処理について,図9のフローチャートを参照しつつ説明する。先ず,S225で抽出された未処理プリンタである抽出プリンタに対し,認証ユーザの印刷ジョブが登録されているか否かを問い合わせる(S251)。この問い合わせに際しては,プリンタパスワードと認証ユーザのユーザIDが付加される。S251による問い合わせ後は,抽出プリンタからの応答があるまで待機する(S252)。
【0055】
一方,S251による問い合わせを受信した抽出プリンタでは,その受信を契機に応答処理(抽出手段の一例)を実行する。応答処理では,先ず,プリンタパスワードを照合し(S301),プリンタパスワードが合致するか否かを判断する(S302)。すなわち,同じグループに属するプリンタであるか否かを確認する。プリンタパスワードは,管理DB215に記憶されている。
【0056】
プリンタパスワードが合致しない場合には(S302:NO),該当する印刷ジョブが無い旨の情報であるジョブ無し情報を作成し(S311),そのジョブ無し情報を問い合わせ元のプリンタに応答する(S307)。すなわち,グループに属していないプリンタからの問い合わせに対して認証ユーザの印刷ジョブの情報を応答してしまうと,認証ユーザの印刷ジョブの情報が漏れる可能性があり,セキュアジョブの秘密性を欠くことになる。そこで,グループに属していないプリンタからの問い合わせに対しては,印刷ジョブの登録状況に拘らず,ジョブ無し情報を応答する。
【0057】
プリンタパスワードが合致する場合には(S302:YES),抽出プリンタのプリンタDB216の中から,認証ユーザの印刷ジョブを検索する(S303)。そして,検索対象の印刷ジョブがあったか否かを判断する(S304)。
【0058】
検索対象の印刷ジョブがあった場合には(S304:YES),抽出プリンタに登録されているジョブ一覧として,S303で検索された印刷ジョブの一覧を作成する(S305)。さらに,自プリンタ(ここでは抽出プリンタ)に対する処理として,S304で検索された印刷ジョブの参照フラグをオンに変更する(S306)。
【0059】
その後,ジョブ一覧の情報を,問い合わせ元のプリンタに応答する(S307)。なお,ジョブ一覧の情報を応答する場合には,ジョブ一覧情報の他,抽出プリンタのプリンタ名,およびプリンタの設置場所が付加される。プリンタ名および設置場所は,プリンタDB216に記憶されている。
【0060】
一方,検索対象の印刷ジョブがなかった場合には(S304:NO),ジョブ無し情報を作成し(S311),そのジョブ無し情報を問い合わせ元のプリンタに応答する(S307)。S307の後,抽出プリンタによる応答処理を終了する。
【0061】
他機ジョブ一覧作成処理の説明に戻り,抽出プリンタからの応答があった場合には(S252:YES),認証ユーザの印刷ジョブがあったか否かを判断する(S253)。認証ユーザの印刷ジョブがある場合(S253:YES),すなわち抽出プリンタからジョブ一覧情報を受信した場合には,他機ジョブ一覧に,受信したジョブ一覧情報を追加する(S254)。S254の後,あるいは抽出プリンタに認証ユーザの印刷ジョブがなかった場合(S253:NO),すなわち抽出プリンタからジョブ無し情報を受信した場合には,他機ジョブ一覧作成処理を終了する。
【0062】
図8のジョブ表示処理の説明に戻り,S227にて他機ジョブ一覧を更新した後,S225に戻り,再度未処理プリンタを検索する。未処理プリンタがある場合には(S226:YES),S227の他機ジョブ一覧作成処理を行う。すなわち,他機ジョブ一覧作成処理を未処理プリンタがなくなるまで繰り返す。
【0063】
未処理プリンタが無い場合には(S226:NO),これまでに作成した他機ジョブ一覧を,操作パネル40の表示部に表示する(S232)。S232の後,ジョブ表示処理を終了する。
【0064】
すなわち,ジョブ表示処理では,認証ユーザの印刷ジョブが自プリンタに登録されている場合には,自プリンタに登録されている,認証ユーザの印刷ジョブの一覧を出力する。一方,認証ユーザの印刷ジョブが自プリンタに登録されていない場合には,他プリンタに登録されている,認証ユーザの印刷ジョブの一覧を出力する。
【0065】
[表示例]
以下,S232での表示例について説明する。例えば,「UserA」がプリンタ201で印刷を行うものとする。プリンタ201には,図10に示すように,UserAの印刷ジョブを含む複数の印刷ジョブが登録されていたとする。
【0066】
この場合,ジョブ表示処理では,プリンタDB216からUserAの印刷ジョブを抽出し,UserAの印刷ジョブ一覧である自機ジョブ一覧217を作成する。そして,自機ジョブ一覧217の内容を操作パネル40の表示部に出力する。
【0067】
このとき,操作パネル40の表示部には,図10に示したように,印刷ボタン41と,削除ボタン42と,一覧印刷ボタン43とが表示される。印刷ボタン41が押下されると,選択されている印刷ジョブの印刷を開始する。削除ボタン42が押下されると,選択されている印刷ジョブをメモリから削除する。これに伴って,自機ジョブ一覧217およびプリンタDB216についても該当レコードを削除する。一覧印刷ボタン43が押下されると,自機ジョブ一覧217の内容を印刷する。
【0068】
一方,プリンタ201には,UserAの印刷ジョブが登録されていなかったとする。そして,プリンタ202,203には,図11に示すように,UserAの印刷ジョブを含む複数の印刷ジョブが登録されていたとする。
【0069】
この場合,ジョブ表示処理では,プリンタ202,203にUserAの印刷ジョブがあるか否かを問い合わせ,プリンタ202,203がそれぞれ作成したUserAの印刷ジョブ一覧を取得する。そして,プリンタ201では,他プリンタに存在するUserAの印刷ジョブ一覧である他機ジョブ一覧218を作成する。そして,他機ジョブ一覧218の内容を操作パネル40の表示部に出力する。プリンタ201は,問い合わせを行った他プリンタ202,203からプリンタ名および設置場所の情報を取得しており,他機ジョブ一覧218を表示する際には,図11に示すように,各印刷ジョブについて,どのプリンタに登録されているか,さらにそのプリンタがどこに設置されているかを関連付けて表示する。
【0070】
また,操作パネル40の表示部には,図11に示したように,削除ボタン42と,一覧印刷ボタン43とが表示される。削除ボタン42が押下されると,選択されている印刷ジョブの削除指令を,その印刷ジョブが登録されている他プリンタに出力する。これに伴って,他機ジョブ一覧218についても該当レコードを削除する。一覧印刷ボタン43が押下されると,他機ジョブ一覧218の内容を印刷する。
【0071】
なお,操作パネル40の表示部に表示される項目やレイアウトは,図10ないし図11に限るものではない。すなわち,少なくとも認識ユーザの印刷ジョブが登録されているプリンタの識別情報を表示すればよく,印刷ジョブ名や設置場所等については必ずしも表示しなくてもよい。また,反対に,印刷ジョブの詳細情報(ページ数や登録日時等)等,表示項目を増やしてもよい。
【0072】
また,他機ジョブ一覧218を表示した際には,印刷ボタン41については,機密性を考慮して表示しない。すなわち,印刷ジョブが登録されていないプリンタを操作するユーザとしては,悪意を持って操作する第三者(例えば,盗んだ社員証を持っている者)である可能性も否めない。そのため,無条件で印刷を許可することは好ましくないことから,印刷ボタン41を非表示として,遠隔操作での印刷,あるいは他プリンタから印刷ジョブを転送しての印刷は行わない。
【0073】
[登録ジョブ印刷処理(プリンタ)]
続いて,プリンタ201のファームウェア211によって実行される登録ジョブ印刷処理(禁止手段の一例)について,図12のフローチャートを参照しつつ説明する。プリンタ201では,操作パネル40の表示部に表示された印刷ボタン41を押下することで,自プリンタに登録されている印刷ジョブを印刷できる。登録ジョブ印刷処理は,この印刷ボタン41の押下を契機に実行される。
【0074】
先ず,印刷が指示された印刷ジョブの参照フラグがオンであるか否かを判断する(S271)。参照フラグは,他プリンタから,特定のユーザの印刷ジョブについての問い合わせを受けた際,検索された印刷ジョブについてはオンになっている(図9のS306参照)。参照フラグがオフの場合には(S271:NO),選択された印刷ジョブの印刷を開始し(S274),登録ジョブ印刷処理を終了する。
【0075】
参照フラグがオンの場合には(S271:YES),ユーザパスワードの入力を受け付ける(S272)。前述したように,他プリンタからの問い合わせが,悪意を持った第三者である可能性がある。そこで,他プリンタからの問い合わせの対象となった印刷ジョブについては,印刷に先立ってユーザパスワードの入力を要求し,印刷ジョブの機密性を高める。
【0076】
ユーザパスワードの入力を受け付けた後,そのパスワードが管理DB215に登録されているユーザパスワードと合致するか否かを判断する(S273)。パスワードが合致する場合には(S273:YES),選択された印刷ジョブの印刷を開始する(S274)。一方,パスワードが合致しない場合には(S273:NO),エラーメッセージを表示し(S281),選択された印刷ジョブの印刷を回避する。S274またはS281の後,登録ジョブ印刷処理を終了する。
【0077】
以上詳細に説明したように本形態の印刷システム500によれば,選定条件(本形態では,認証ユーザの印刷ジョブ)に合致する印刷ジョブの,他プリンタでの所在を取得し,その結果を操作パネル40の表示部に報知する。これにより,ユーザは,選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているプリンタを把握できる。そのため,例えば,ユーザが印刷ジョブの登録後にその登録先のプリンタを忘れたとしても,登録元に戻って履歴を確認することなく,印刷ジョブの所在を知ることができ,その結果として所望の印刷ジョブの印刷を確実に実行できる。
【0078】
また,印刷ジョブを登録した後,印刷指示をし忘れた場合,その印刷ジョブの印刷が何時までたっても実行されず,その印刷ジョブがプリンタのメモリに放置されることになるが,本形態の印刷システム500によれば,他プリンタの登録状況を報知することで,印刷忘れの印刷ジョブの存在を認識することもできる。
【0079】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,プリンタは,印刷機能を備えるものであればよく,複合機や複写機であっても適用可能である。また,情報処理装置についても,PCに限るものではない。例えば携帯情報端末やワークステーションであってもよい。
【0080】
また,実施の形態では,セキュアジョブを所定のプリンタに登録する印刷システムに本発明を適用しているが,登録される印刷ジョブはセキュアジョブに限るものではない。すなわち,指定したプリンタに印刷ジョブを登録し,プリンタはその印刷ジョブの印刷指示を契機に印刷を開始するものであればよく,例えば,印刷開始の際に認証の必要がない印刷ジョブであっても適用可能である。
【0081】
また,実施の形態では,報知対象となる印刷ジョブの選定条件が,認証ユーザの印刷ジョブとなっているが,これに限るものではない。例えば,印刷ジョブの登録時間や,印刷データの種類であってもよい。
【0082】
また,実施の形態では,グループ内のプリンタの1つに印刷ジョブが登録されるが,必ずしも1つである必要はない。すなわち,印刷ジョブは,複数のプリンタに同時に登録されてもよい。この場合,登録されたうちの1つのプリンタで当該印刷ジョブの印刷が実行されたことを契機に,他プリンタに対して同一の印刷対象に基づく印刷ジョブの削除を指示する。
【0083】
また,実施の形態では,自プリンタに認証ユーザの印刷ジョブが登録されていない場合に,他プリンタに認証ユーザの印刷ジョブについて問い合わせているが,他プリンタに問い合わせる条件は,これに限るものではない。例えば,自プリンタの登録状況に関係なく,選定条件の決定後に他プリンタにその選定条件に合致する印刷ジョブの登録状況を毎回問い合わせてもよい。また,選定条件の決定後の即時ではなく,ユーザの指示に基づいて問い合わせてもよい。
【0084】
また,実施の形態では,他プリンタに,選定条件に合致する印刷ジョブの有無を直接問い合わせているが,これに限るものではない。例えば,グループ内の全プリンタの印刷ジョブの登録状況を集中管理するプリンタサーバを配置した場合,そのプリンタサーバに問い合わせてもよい。
【符号の説明】
【0085】
100 パーソナルコンピュータ(PC)
110 プリンタドライバ
201,202,203 プリンタ
211,221,231 ファームウェア
500 印刷システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタと,前記プリンタに印刷ジョブを登録する情報処理装置とを有し,前記プリンタは印刷ジョブの印刷指示を契機に印刷を開始する印刷システムにおいて,
印刷対象となる印刷ジョブの選定条件を決定する決定手段と,
前記決定手段にて決定した選定条件に合致する印刷ジョブが,他プリンタに登録されているか否かを判断する判断手段と,
前記判断手段にて他プリンタに選定条件に合致する印刷ジョブがあると判断された場合に,その印刷ジョブが登録されているプリンタの識別情報をユーザに報知する報知手段と,
を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
請求項1に記載する印刷システムにおいて,
前記判断手段は,自プリンタに選定条件に合致する印刷ジョブが登録されていない場合に,他プリンタにその選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているか否かを判断することを特徴とする印刷システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する印刷システムにおいて,
前記報知手段は,選定条件に合致する印刷ジョブと,その印刷ジョブが登録されているプリンタの識別情報とを対応付けて報知することを特徴とする印刷システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する印刷システムにおいて,
前記判断手段は,他プリンタに選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているか否かを,当該他プリンタに問い合わせることを特徴とする印刷システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載する印刷システムにおいて,
前記判断手段の判断対象となった他プリンタに対し,前記判断手段にて選定条件に合致する印刷ジョブと判断された印刷ジョブの削除を指示する指示手段を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載する印刷システムにおいて,
前記報知手段は,報知内容を用紙に印刷することを特徴とする印刷システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載する印刷システムにおいて,
他プリンタから,選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているか否かを問い合わされたことを契機に,登録されている印刷ジョブの中から当該選定条件に合致する印刷ジョブを抽出する抽出手段と,
前記抽出手段にて抽出された印刷ジョブを印刷する際に,ユーザに対してパスワードの入力を指示し,正しいパスワードが入力されなかった場合には,印刷を禁止する禁止手段と,
を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項8】
プリンタに登録された印刷ジョブの,選定条件を決定する決定手段と,
前記決定手段にて決定した選定条件に合致する印刷ジョブの,印刷を指示する印刷指示手段と,
前記印刷指示手段による指示を契機に印刷を行う印刷手段と,
前記決定手段にて決定した選定条件に合致する印刷ジョブが,他プリンタに登録されているか否かを判断する判断手段と,
前記判断手段にて他プリンタに選定条件に合致する印刷ジョブがあると判断された場合に,その印刷ジョブが登録されているプリンタの識別情報をユーザに報知する報知手段と,
を備えることを特徴とするプリンタ。
【請求項1】
プリンタと,前記プリンタに印刷ジョブを登録する情報処理装置とを有し,前記プリンタは印刷ジョブの印刷指示を契機に印刷を開始する印刷システムにおいて,
印刷対象となる印刷ジョブの選定条件を決定する決定手段と,
前記決定手段にて決定した選定条件に合致する印刷ジョブが,他プリンタに登録されているか否かを判断する判断手段と,
前記判断手段にて他プリンタに選定条件に合致する印刷ジョブがあると判断された場合に,その印刷ジョブが登録されているプリンタの識別情報をユーザに報知する報知手段と,
を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
請求項1に記載する印刷システムにおいて,
前記判断手段は,自プリンタに選定条件に合致する印刷ジョブが登録されていない場合に,他プリンタにその選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているか否かを判断することを特徴とする印刷システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する印刷システムにおいて,
前記報知手段は,選定条件に合致する印刷ジョブと,その印刷ジョブが登録されているプリンタの識別情報とを対応付けて報知することを特徴とする印刷システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する印刷システムにおいて,
前記判断手段は,他プリンタに選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているか否かを,当該他プリンタに問い合わせることを特徴とする印刷システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載する印刷システムにおいて,
前記判断手段の判断対象となった他プリンタに対し,前記判断手段にて選定条件に合致する印刷ジョブと判断された印刷ジョブの削除を指示する指示手段を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載する印刷システムにおいて,
前記報知手段は,報知内容を用紙に印刷することを特徴とする印刷システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載する印刷システムにおいて,
他プリンタから,選定条件に合致する印刷ジョブが登録されているか否かを問い合わされたことを契機に,登録されている印刷ジョブの中から当該選定条件に合致する印刷ジョブを抽出する抽出手段と,
前記抽出手段にて抽出された印刷ジョブを印刷する際に,ユーザに対してパスワードの入力を指示し,正しいパスワードが入力されなかった場合には,印刷を禁止する禁止手段と,
を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項8】
プリンタに登録された印刷ジョブの,選定条件を決定する決定手段と,
前記決定手段にて決定した選定条件に合致する印刷ジョブの,印刷を指示する印刷指示手段と,
前記印刷指示手段による指示を契機に印刷を行う印刷手段と,
前記決定手段にて決定した選定条件に合致する印刷ジョブが,他プリンタに登録されているか否かを判断する判断手段と,
前記判断手段にて他プリンタに選定条件に合致する印刷ジョブがあると判断された場合に,その印刷ジョブが登録されているプリンタの識別情報をユーザに報知する報知手段と,
を備えることを特徴とするプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−88938(P2012−88938A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235136(P2010−235136)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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