説明

印刷ジョブ処理システムおよび印刷ジョブ処理方法

【課題】複数ページの印刷を行なう際に各ページのラスタデータを効率良く生成する。
【解決手段】複数ページのうち、ラスタデータが未生成のページについて、直前に作成されたページのラスタデータの状態を基準として可変部分を変更するために要するページ変更コストを求め、求めたページ変更コストに応じて、次のラスタデータを生成する対象ページを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各ページで共通する固定部分と各ページで変化しうる可変部分とを含む複数ページの印刷を行なう際に実行される各ページのラスタデータを生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数ページの印刷を行なう際に、各ページを固定部分と可変部分に分けて、ページごとに可変部分の内容のみを変更しながら順次印刷を行なう可変印刷(バリアブルプリント)と呼ばれる技術が利用されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭54−119837号公報
【特許文献2】特開昭57−106990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の可変印刷では、複数ページの印刷を行なう際に各ページのラスタデータを効率良く生成することに関して十分な工夫がなされていないのが実情であった。本発明は、上述した可変印刷において、複数ページの印刷を行なう際に各ページのラスタデータを効率良く生成することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
1つの印刷ジョブとして複数ページのラスタデータを作成する印刷ジョブ処理システムであって、
各ページのラスタデータは、各ページで共通する固定部分と各ページで変化しうる可変部分と、を含み、
前記印刷ジョブ処理システムは、
前記複数ページの印刷ジョブの実行を管理するジョブ管理部と、
前記ジョブ管理部からの指示に従って各ページのラスタデータを生成する際に、前記固定部分については、最初に生成されたページのラスタデータのうち、前記固定部分に対応するラスタデータ固定部分を各ページで共通して利用するとともに、前記可変部分については、各ページで前記可変部分に対応するラスタデータ可変部分を生成して各ページ上にレイアウトすることにより、各ページのラスタデータを生成するレイアウト部と、
を備え、
前記ジョブ管理部は、
前記複数ページのうち、前記ラスタデータが未生成のページについて、直前に作成されたページのラスタデータの状態を基準として前記可変部分を変更するために要するページ変更コストを求め、求めたページ変更コストに応じて、次のラスタデータを生成する対象ページを選択する、
ことを特徴とする印刷ジョブ処理システム。
適用例1の印刷ジョブ処理システムによれば、ページ変更コストに応じて、次のラスタデータを生成する対象ページを選択することができるので、複数ページの印刷を行なう際に各ページのラスタデータを効率良く生成することできる。
【0007】
[適用例2]
適用例1記載の印刷ジョブ処理システムであって、
前記ジョブ管理部は、求めたページ変更コストが最も小さいページを前記対象ページとして選択することを特徴とする印刷ジョブ処理システム。
この印刷ジョブ処理システムによれば、ページ変更コストの小さいページ順に次のラスタデータを生成する対象ページを選択することができるので、複数ページの印刷を行なう際に各ページのラスタデータを効率良く生成することできる。
【0008】
[適用例3]
適用例1記載の印刷ジョブ処理システムであって、
前記可変部分は、画像部分と文字部分と、を含んでおり、
前記ジョブ管理部は、
前記ラスタデータが未生成のページについて、前記直前に作成されたページのラスタデータの状態を基準として前記画像部分を変更するために要する画像変更コストを求め、最も小さい画像変更コストのページを選択するとともに、選択したページが複数存在する場合には、前記直前に作成されたページのラスタデータの状態を基準として前記文字部分を変更するために要する文字変更コストを前記ページ変更コストとして求め、最も小さい文字変更コストのページを前記対象ページとして選択する、
ことを特徴とする印刷ジョブ処理システム。
この印刷ジョブ処理システムによっても、ページ変更コストの小さいページ順に次のラスタデータを生成する対象ページを選択することができるので、複数ページの印刷を行なう際に各ページのラスタデータを効率良く生成することできる。特に同じ画像変更コストのページが複数ある場合には、文字変更コストをページ変更コストとして求めて、最も小さい文字変更コストのページを対象ページとして選択することができるので、適用例2に比べてさらに効率良く各ページのラスタデータを生成することができる。
【0009】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれかに記載の印刷ジョブ処理システムであって、
前記ジョブ管理部には、可変部分を構成しうる印刷対象データごとの印刷対象データ変更コストが前記印刷ジョブの実行前に予め登録されており、
前記ジョブ管理部は、前記登録された印刷対象データ変更コストを用いて、前記ページ変更コストを計算することを特徴とする印刷ジョブ処理システム。
この印刷ジョブ処理システムによれば、各ページのページ変更コストを容易に求めることができる。
【0010】
[適用例5]
適用例4記載の印刷ジョブ処理システムであって、
前記ジョブ管理部は、対応する印刷対象データの印刷対象データ変更コストが登録されていない場合には、所定のコスト値を用いて前記ページ変更コストを計算することを特徴とする印刷ジョブ処理システム。
この印刷ジョブ処理システムによれば、印刷対象データ変更コストが登録されていない場合においても、ページ変更コストを求めることができる。
【0011】
[適用例6]
適用例5記載の印刷ジョブ処理システムであって、
前記ジョブ管理部は、前記所定のコスト値を用いて計算したページ変更コストのページを前記対象ページとして選択した場合には、前記レイアウト部において実際に要した印刷対象データ変更コストを求めて登録することを特徴とする印刷ジョブ処理システム。
この印刷ジョブ処理システムによれば、所定のコスト値を用いて計算したページ変更コストのページを対象ページとして選択した場合には、レイアウト部において実際に要した印刷対象データ変更コストを求めて登録することができる。
【0012】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、印刷ジョブ処理システムや印刷ジョブ処理方法、印刷データ生成システムや印刷データ生成方法、印刷システムや印刷方法、それらの方法やシステムの機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.印刷ジョブ処理システムの構成:
B.第1実施例の可変印刷処理手順:
C.第2実施例の可変印刷処理手順:
D.変形例:
【0014】
A.印刷ジョブ処理システムの構成:
図1は、本発明の可変印刷手順に従った処理を実行する印刷ジョブ処理システムの概略構成を示す説明図である。この印刷ジョブ処理システム100は、印刷処理部10と、ジョブ入力部20と、データサーバ30と、を備えている。
【0015】
ジョブ入力部20は、図示しない表示部に示されるユーザインタフェースとしてのジョブ入力画面21を有している。ジョブ入力画面21は、ユーザが所望する可変印刷(バリアブルプリント)を実行するために、各ページで共通する固定部分や可変部分のレイアウトを示したテンプレートおよび各ページで可変部分のレイアウトに配置される印刷対象を示したデータベースを選択することを許容する。また、ジョブ入力部20は、選択したテンプレートおよびデータベースに基づく印刷のジョブの実行を指示することを許容する。データサーバ30は、ユーザによって選択されるテンプレートや、データベース、テンプレートおよびデータベース中で指定される印刷対象データを格納している。
【0016】
印刷処理部10は、ジョブ管理部11と、レイアウト部12と、印刷部13と、を備えている。ジョブ管理部11は、ジョブ入力部20から入力された可変印刷の印刷ジョブに従って、レイアウト部12および印刷部13の動作を制御して、可変印刷を実行する。レイアウト部12は、テンプレートの情報やデータベースに基づいてジョブ管理部11から送信されるレイアウトデータや印刷対象データを用いてレイアウト処理を実行することにより、印刷対象ページのラスタデータを生成する。印刷部13は、生成したラスタデータを用いて印刷対象ページの印刷処理を実行する。
【0017】
B.第1実施例の可変印刷処理手順:
図2は、印刷ジョブ処理システム100において実行される第1実施例としての可変印刷処理の手順を示す説明図である。
【0018】
まず、ユーザは、所望する可変印刷を示す印刷ジョブを入力する(ステップ110)。具体的には、まず、ユーザは、ジョブ入力部20によって表示されるユーザインタフェースとしてのジョブ入力画面21(図1)を介して、各ページで共通する固定部分や可変部分のレイアウトを示したテンプレートおよび各ページで変化しうる可変部分のレイアウトに対応する印刷対象を示したデータベースを選択する。所望するデータベースの選択は、ジョブ入力画面21に示すように、データファイル選択欄22のデータベース名入力部22aに所望するデータベース名を入力、あるいは、選択タブ22bを押すことにより表示されるデータベース名の一覧の中から所望のデータベース名を選択することにより実行される。同様に、所望するテンプレートの選択は、テンプレート選択欄23のテンプレート名入力部23aに所望するテンプレート名を入力、あるいは、選択タブ23bを押すことにより表示されるデータベース名の一覧の中から所望のデータベース名を選択することにより実行される。印刷ジョブの入力は、実行ボタン24を押すことにより、実行される。入力された印刷ジョブは、印刷処理部10のジョブ管理部11に送信される。ここで、各種ボタンの押下や入力は、ジョブ入力部20に備えられる図示しない操作部を用いて実行される。
【0019】
なお、図1のジョブ入力画面21では、データベース名として「データベース1(database1.dat)が、テンプレート名として「テンプレート1(template1.dat)が選択されている例を示している。以下では、これらが選択された印刷ジョブが入力されたことを前提として説明する。
【0020】
図3は、入力された印刷ジョブの一例を示す説明図である。なお、図3の印刷ジョブは、XML形式で記述されている。この印刷ジョブは、レイアウト処理に関する記述LODと、印刷処理に関する記述PCDと、で構成される。
【0021】
レイアウト処理に関する記述LODは、レイアウト処理に用いられるデータ(レイアウト用データ)を定義する記述LDDと、レイアウト処理結果である印刷データ(以下、「ラスタデータ」と呼ぶ)を特定する名称を定義する記述RNDと、で構成されている。レイアウト用データを定義する記述LDDには、テンプレートの名称と、データベースの名称と、が含まれている。なお、図の例では、テンプレートとして、URLにより所在位置が特定されたテンプレート1の名称「template1.dat」が示されている。また、データベースとしても、同様に、URLにより所在位置が特定されたデータベース1の名称「database1.dat」が示されている。また、レイアウト処理結果を特定する名称を定義する記述RNDとしては、タグ<印刷データ>の属性として、処理結果としての印刷データ(ラスタデータ)を特定するデータの名称「data1」が示されている。
【0022】
印刷処理に関する記述PCDは、印刷に用いられる印刷データ(ラスタデータ)を特定する名称PDR、および、印刷の設定条件PCCと、印刷出力結果の名称と印刷部数とを定義する記述PODと、で構成されている。
【0023】
図4は、図3の印刷ジョブに示されたテンプレート1(tmplate1.dat)の例を示す説明図である。図4(A)はXML形式による記述例であり、図4(B)はテンプレート1によるレイアウト例を示している。
【0024】
図4(B)に示すように、テンプレート1は、ページごとに内容が変化しうる可変枠0,可変枠1、可変枠2と、各ページで内容が共通する固定枠の4つの印刷枠により構成されている。可変枠0は、利用されるデータベース(本例では図3に示すように「データベース1(database1.dat)」)中の「住所名前」が入力される文字枠(テキスト枠)であり、可変枠1はデータベース1中の「画像1」が入力される画像枠であり、可変枠2はデータベース1中の「画像2」が入力される画像枠である。また、固定枠は各ページに共通する文字列が入力される文字枠(テキスト枠)である。
【0025】
可変枠0は、図4(A)の第1行目の記述に対応する。可変枠0には、「key=”住所名前”」を検索キーとしてデータベース1を検索することにより、ページごとに順に対応する住所名前がレイアウトされる。可変枠1は、図4(A)の第3行目の記述に対応する。可変枠1には、「key=”画像1”」を検索キーとしてデータベース1を検索することにより、ページごとに順に対応する画像1がレイアウトされる。可変枠2は、図4(A)の第4行目の記述に対応する。可変枠2には、「key=”画像2”」を検索キーとしてデータベース2を検索することにより、ページごとに順に対応する画像2がレイアウトされる。
【0026】
固定枠は、図4(A)の第2行目の記述に対応する。固定枠には、「src=」で示された内容がレイアウトされる。図4(A)の例では、URLにより所在位置が特定された名称「abc.txt」のテキストデータの内容がレイアウトされる。
【0027】
図5は、図3の印刷ジョブに示されたデータベース1(database1.dat)の例を示す説明図である。図5(A)はCSV形式による記述例を示しており、図5(B)は、可変枠0に対応する住所名前、可変枠1に対応する画像1、および、可変枠2に対応する画像2の20ページ分のデータを表で示したものである。
【0028】
図2のステップS110において、上記したように、ジョブ管理部11は、ジョブ入力部20を介して入力された印刷ジョブを受け取ると、受け取った印刷ジョブに従って、以下で説明する処理(ステップS120〜S190)を実行する。
【0029】
まず、ジョブ管理部11は、ステップS120において、固定データ部分をレイアウト部12に送信する。ここで、固定データ部分とは、各ページで共通する印刷内容の部分(固定部分)である。本例では、図4(B)に示したテンプレート1の固定枠の部分であり、固定枠に対応する印刷内容のデータ「abc.txt」が、図4(A)に示した固定枠の記述中においてURLにより特定されている。
【0030】
次に、ジョブ管理部11は、ステップS130において、可変データ部分を含む未処理のページが存在するか否か判断し、未処理のページが存在する場合には(ステップS130:YES)、以下のステップS140〜S190あるいはステップS140〜S180の処理を繰り返し実行し、未処理のページが存在しなくなった場合には(ステップS130:NO)、印刷ジョブに従った処理の実行を終了する。ここで、可変データ部分とは、各ページで変化しうる印刷内容の部分(可変部分)である。本例では、図4(B)に示したテンプレート1の可変枠0,1,2の部分であり、可変枠に対応する印刷内容のデータは、図3に示したデータベース1において、図4(A)に示した各可変枠の記述中において「key=」により指定されている検索キーによって、それぞれ検索される。なお、可変枠0には「住所名前」のデータが入力され、可変枠1には「画像1」のデータが入力され、可変枠2には「画像2」のデータが入力される。
【0031】
そして、ジョブ管理部11は、ステップS140において、変更コストの一番小さいページを以下の処理の対象ページとして選択する。ここで、変更コストとは、前のページのレイアウト処理の結果得られたラスタデータの状態から対象ページのラスタデータを生成するための変更に要するコストを意味している。
【0032】
図6は、ステップS140における対象ページの選択手順を示す説明図である。まず、ステップS141では、印刷未実行のページのうち、この時点におけるラスタデータの状態を基準とする変更コストが未計算のページが存在するか否か判断する。ここで、変更コストが未計算のページが存在する場合には(ステップS141:YES)、ステップS142において各可変枠についての変更コストを求めるとともに、ステップS143において各可変枠の変更コストを合計することにより、そのページの変更コストを求める。そして、ステップS141にもどって変更コストが未計算のページが存在しないと判断される(ステップS141:NO)まで、すなわち、未計算のページが存在していると判断されている限り(ステップS141:YES)、ステップS142,S143の処理を繰り返す。
【0033】
一方、ステップS141において印刷未実行のページで変更コストが未計算のページが存在しないと判断された場合には(ステップS141:NO)、変更コストの一番小さいページを、レイアウト処理によって新たなラスタデータを生成する対象ページとして選択する。
【0034】
ここで、各可変枠における変更コストのうち、画像枠である可変枠1および2における変更コストは、コストデータ14(図1)を参酌することにより求めることができる。図7は、コストデータ14の一例を示す説明図である。このコストデータ14には、画像枠である可変枠1および2に対応する印刷対象データとしての画像データをレイアウト処理する際に要するコストが登録されている。なお、図7のコストデータ14は、図5(B)に示した画像1に対応する画像データとして4種類の画像データ「画像_10.jpg」〜「画像_13.jpg」と、画像2に対応する画像データとして3種類の画像データ「画像_20.jpg」〜「画像_22.jpg」と、が登録されている例を示している。また、コストデータ14には、未登録の画像データが印刷対象データとして指定されていた場合のコストが登録されている。なお、この未登録の画像データのコストとしては、登録されている画像データのコストの最大値よりも大きいコストが設定されていることが好ましい。例えば、本例では、登録されている画像データの最も大きい変更コストは、「画像_13.jpg」の「400」であるので、未登録の画像データの変更コストとして「500」が設定されている。一方、各可変枠の変更コストのうち、テキスト枠である可変枠0の変更コストとしては、例えば、それぞれの文字数を用いることができる。もちろん、画像データと同様に、あらかじめ変更コストを登録しておき、登録したコストデータを参酌して求めるようにしてもよい。
【0035】
図2に戻って、ステップS150において、ジョブ管理部11は、選択した対象ページの可変データ部分のうち、前のページのラスタデータの状態から変更される部分のデータを、レイアウト部12に送信する。これにより、レイアウト部12は、ステップS160において、選択した対象ページのレイアウト処理を実行してその対象ページのラスタデータ15を生成する。生成したラスタデータ15は、図3に示したように、データ名「data1」で表される。なお、ラスタデータ15は、所定の表色系(例えばRGB表色系)の各色成分の画素値が走査線順次に配列されたデータである。印刷部13は、ステップ170において、ラスタデータ15を用いて、印刷処理を実行する。これにより、選択した対象ページの印刷が実行される。
【0036】
なお、ジョブ管理部11は、ステップS180において、選択した対象ページの中に、コストデータ14に未登録のデータが含まれているか否か判断する。このとき、未登録のデータが含まれていない場合には(ステップS180:NO)、そのままステップS130に戻り、含まれている場合には(ステップS180:YES)、ステップS190の処理の後ステップS130に戻って、他のページの印刷処理を開始する。なお、ステップS190では、ジョブ管理部11は、レイアウト部12においてその未登録のデータのレイアウト処理に要したコストを、レイアウト部12から受け取ってコストデータ14中に新たに登録する。
【0037】
以上のようにして、複数ページのうち、直前にレイアウト処理されたページのラスタデータを基準として最も変更コストの小さいページを次のレイアウト処理の対象ページとして選択することにより、レイアウト処理の変更に要する時間が短く効率の良いページを対象ページとして順に選択することができる。
【0038】
図8は、図6に示した本実施例における手順で選択される対象ページの具体例を示す説明図である。ここでは、図5に示したデータベース1を例に説明する。まず、印刷ジョブを開始した最初の段階では、20ページのいずれもが印刷未実行ページであるので、全てのページについて、図8(A)に示すように、各可変枠についてそれぞれ変更コストを求め、求めた変更コストを合計することにより、各ページの変更コストを求める。このとき、NO.1のページが最も小さい変更コストとなるので、このページを対象ページとして選択し、レイアウト処理および印刷処理を実行することになる。
【0039】
次に、NO.1のページのラスタデータの状態を基準として、印刷未実行のページ、すなわち、NO.0,2〜19の19ページ分の各ページについて、それぞれ変更コストを求める。このとき、NO.0のページは、可変枠1(画像枠0)の画像1と可変枠2(画像枠1)の画像2がNO.1のページと同じであり、可変枠0(テキスト枠0)の文字列のみがNO.1のページと異なっているため、他のページに比べて変更コストが最も小さくなる。そこで、このNO.0のページを対象ページとして選択し、レイアウト処理および印刷処理を実行することになる。
【0040】
以降、同様にして前のページのラスタデータの状態を基準として、印刷未実行のページについて、それぞれ変更コストを求め、変更コストの最も小さいページを対象ページとして選択して、レイアウト処理および印刷処理を実行することができる。
【0041】
以上説明したように、前のページのラスタデータの状態からデータを変更するのに要する変更コストを未処理の各ページについてそれぞれ求めて、その中から最も小さい変更コストのページを対象ページとして選択することにより、複数ページの印刷処理を、変更コストの小さい順に実行することが可能であり、効率よく実行することができる。
【0042】
C.第2実施例の可変印刷処理手順:
第2実施例としての可変印刷処理の手順は、図2に示した第1実施例としての可変印刷処理の手順のうち、ステップS140において実行される対象ページの選択処理の詳細な手順が異なる点を除いて同じである。そこで、以下では、第2実施例における対象ページの選択処理についてのみ説明を加えることとする。
【0043】
図9は、第2実施例における対象ページの選択手順を示す説明図である。本実施例の対象ページの選択手順では、ステップS241において、印刷未実行のページのうち、前に処理が実行されたページと画像部分が共通するページが存在するか否か判断する。このとき、共通するページが存在する場合には(ステップS241:YES)、ステップS246〜S247の処理を実行後、この対象ページの選択の処理を終了する。一方、共通するページが存在しない場合には(ステップS241:NO)、ステップS242〜S245,S247〜S249の処理を実行後、この対象ページの選択の処理を終了する。
【0044】
まず、ステップS241において、印刷未実行のページのうち、前に処理が実行されたページと画像部分が共通するページが存在しない場合には(ステップS241:NO)、さらに、ステップS242において、印刷未実行のページのうち、この時点におけるラスタデータの状態を基準とする変更コストを計算していないページが存在するか否か判断する。ここで、変更コストが未計算のページが存在する場合には(ステップS242:YES)、ステップS243において各可変枠のうち画像枠についてのみ変更コストを求めるとともに、ステップS244において各画像枠の変更コストを合計することにより、そのページの画像枠変更コストを求める。なお、画像枠変更コストは、第1実施例と同様に、コストデータ14を参照することにより求めることができる。そして、ステップS242にもどって変更コストが未計算のページが存在しないと判断される(ステップS242:NO)まで、すなわち、未計算のページが存在していると判断されている限り(ステップS242:YES)、ステップS243,S244の処理を繰り返す。一方、変更コストが未計算のページが存在しない場合には(ステップS242:NO)、ステップS245において、画像枠変更コストの一番小さいページを、レイアウト処理を実行する対象ページの候補ページとして選択する。次に、ステップS247において、候補ページごとに、可変枠のうちのテキスト枠(文字枠)についてそれぞれ変更コストを求めるとともに、ステップS248において、候補ページごとに、それぞれの文字枠の変更コストを合計し、その結果をそのページの変更コストとする。そして、ステップS249において、ページの変更コストの一番小さいページを対象ページとして選択する。なお、テキスト枠の変更コストは、第1実施例と同様に、それぞれの文字数を用いることができる。
【0045】
一方、ステップS241において、印刷未実行のページのうち、前に処理が実行されたページと画像部分が共通するページが存在する場合には(ステップS241:YES)、ステップS246において、その画像部分が共通するページを対象ページの候補ページとして選択する。次に、上記したように、ステップS247において、候補ページごとに、テキスト枠についてそれぞれ変更コストを求めるとともに、ステップS248において、候補ページごとに、それぞれの文字枠の変更コストを合計し、その結果をそのページの変更コストとする。そして、ステップS249において、ページの変更コストの一番小さいページを対象ページとして選択する。
【0046】
図10は、図9に示した第2実施例における手順で選択される対象ページの具体例を示す説明図である。上記したように、図5に示したデータベース1を例に説明する。まず、印刷ジョブを開始した最初の段階では、20ページのいずれもが印刷未実行であり、前に処理が実行されたページと画像部分が共通するページは存在しないので、全てのページについて、図10(A)に示すように、各可変枠のうちの画像枠についてそれぞれ変更コストを求め、求めた変更コストを合計することにより、各ページの画像枠変更コストを求める。このとき画像枠変更コストの最も小さいページを対象ページの候補ページとして選択する。ここでは、図10(B)に示すように、NO.0およびNO.1の2ページが候補ページとして選択される。そして、各候補ページについて、文字枠についてそれぞれ変更コストを求め、求めた変更コストを合計して、ページの変更コストとする。ここで、NO.1の変更コストが最も小さくなるため、このNO.1のページを対象ページとして選択し、レイアウト処理および印刷処理を実行することになる。
【0047】
次に、NO.1のページと画像部分が共通するページのうち、最も小さい変更コストのページを対象ページとして選択する。本例の場合、図10(C)に示すように、NO.1のページに共通するページはNO.0のみであるので、NO.0のページを対象ページとして選択し、レイアウト処理および印刷処理を実行することになる。
【0048】
以上、説明したように、本実施例の対象ページの選択手順の場合には、可変枠のうち画像枠の画像が共通するページを候補ページとして選択し、その選択ページの中でテキスト枠の変更コストが最も小さいものを対象ページとして選択する。これにより、ページごとに、未処理のページの変更コストを全て計算するのではなく、前のページと画像が共通する場合には、テキスト枠の変更コストのみを計算することになる。この結果、最も小さい変更コストのページを対象ページとして選択することができるので、第1実施例の場合よりもさらに効率よく複数ページの印刷処理を実行し得る。
【0049】
D.変形例:
なお、本発明は上記した実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。
【0050】
D1.変形例1:
上記実施例では、テンプレートやデータベース等のデータをデータサーバから受け取る構成、具体的には、URLで特定される領域にあるテンプレートやデータベース等のデータを利用する場合の構成を例に説明したが、これに限定されるものではなく、他の種々の構成をとることができる。例えば、印刷処理部10内の図示しない外部記憶装置内に格納されているテンプレートやデータベース等のデータを受け取る構成としてもよい。また、図3に示した印刷ジョブに、テンプレートやデータベース等のデータを添付する構成としてもよい。
【0051】
D2.変形例2:
上記実施例では、変更コストの最も小さいページを対象ページとして選択する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、求めた変更コストに応じて、種々のページを対象ページとして選択する構成をとることができる。例えば、あらかじめ定めた閾値よりも小さい変更コストを有するページのうち、番号(「NO.」で表される)の一番小さいページを対象ページとして選択するようにしてもよい。
【0052】
D3.変形例3:
上記実施例では、未登録のデータに対しては、登録されたデータのコストよりも大きいコスト値を適宜設定して用いることとしているが、これに限定されるものではなく、あらかじめ定めた種々のコスト値を用いることができる。例えば、設定可能な最大サイズのコスト値を設定しておくこともできる。また、未登録のデータのサイズに応じたコスト値を用いることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の可変印刷手順に従った処理を実行する印刷ジョブ処理システムの概略構成を示す説明図である。
【図2】印刷ジョブ処理システム100において実行される第1実施例としての可変印刷処理の手順を示す説明図である。
【図3】入力された印刷ジョブの一例を示す説明図である。
【図4】図3の印刷ジョブに示されたテンプレート1(tmplate1.dat)の例を示す説明図である。
【図5】図3の印刷ジョブに示されたデータベース1(database1.dat)の例を示す説明図である。
【図6】ステップS140における対象ページの選択手順を示す説明図である。
【図7】コストデータ14の一例を示す説明図である。
【図8】図6に示した本実施例における手順で選択される対象ページの具体例を示す説明図である。
【図9】第2実施例における対象ページの選択手順を示す説明図である。
【図10】図9に示した第2実施例における手順で選択される対象ページの具体例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10…印刷処理部
11…ジョブ管理部
12…レイアウト部
13…印刷部
14…コストデータ
15…ラスタデータ
20…ジョブ入力部
21…ジョブ入力画面
22…データファイル選択欄
22a…データベース名入力部
22b…選択タブ
23…テンプレート選択欄
23a…テンプレート名入力部
23b…選択タブ
24…実行ボタン
30…データサーバ
100…印刷ジョブ処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの印刷ジョブとして複数ページのラスタデータを作成する印刷ジョブ処理システムであって、
各ページのラスタデータは、各ページで共通する固定部分と各ページで変化しうる可変部分と、を含み、
前記印刷ジョブ処理システムは、
前記複数ページの印刷ジョブの実行を管理するジョブ管理部と、
前記ジョブ管理部からの指示に従って各ページのラスタデータを生成する際に、前記固定部分については、最初に生成されたページのラスタデータのうち、前記固定部分に対応するラスタデータ固定部分を各ページで共通して利用するとともに、前記可変部分については、各ページで前記可変部分に対応するラスタデータ可変部分を生成して各ページ上にレイアウトすることにより、各ページのラスタデータを生成するレイアウト部と、
を備え、
前記ジョブ管理部は、
前記複数ページのうち、前記ラスタデータが未生成のページについて、直前に作成されたページのラスタデータの状態を基準として前記可変部分を変更するために要するページ変更コストを求め、求めたページ変更コストに応じて、次のラスタデータを生成する対象ページを選択する、
ことを特徴とする印刷ジョブ処理システム。
【請求項2】
請求項1記載の印刷ジョブ処理システムであって、
前記ジョブ管理部は、求めたページ変更コストが最も小さいページを前記対象ページとして選択することを特徴とする印刷ジョブ処理システム。
【請求項3】
請求項1記載の印刷ジョブ処理システムであって、
前記可変部分は、画像部分と文字部分と、を含んでおり、
前記ジョブ管理部は、
前記ラスタデータが未生成のページについて、前記直前に作成されたページのラスタデータの状態を基準として前記画像部分を変更するために要する画像変更コストを求め、最も小さい画像変更コストのページを選択するとともに、選択したページが複数存在する場合には、前記直前に作成されたページのラスタデータの状態を基準として前記文字部分を変更するために要する文字変更コストを前記ページ変更コストとして求め、最も小さい文字変更コストのページを前記対象ページとして選択する、
ことを特徴とする印刷ジョブ処理システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の印刷ジョブ処理システムであって、
前記ジョブ管理部には、可変部分を構成しうる印刷対象データごとの印刷対象データ変更コストが前記印刷ジョブの実行前に予め登録されており、
前記ジョブ管理部は、前記登録された印刷対象データ変更コストを用いて、前記ページ変更コストを計算することを特徴とする印刷ジョブ処理システム。
【請求項5】
請求項4記載の印刷ジョブ処理システムであって、
前記ジョブ管理部は、対応する印刷対象データの印刷対象データ変更コストが登録されていない場合には、所定のコスト値を用いて前記ページ変更コストを計算することを特徴とする印刷ジョブ処理システム。
【請求項6】
請求項5記載の印刷ジョブ処理システムであって、
前記ジョブ管理部は、前記所定のコスト値を用いて計算したページ変更コストのページを前記対象ページとして選択した場合には、前記レイアウト部において実際に要した印刷対象データ変更コストを求めて登録することを特徴とする印刷ジョブ処理システム。
【請求項7】
1つの印刷ジョブとして複数ページのラスタデータを作成する印刷ジョブ処理方法であって、
各ページのラスタデータは、各ページで共通する固定部分と各ページで変化しうる可変部分と、を含み、
前記印刷ジョブ処理方法は、
(a)前記印刷ジョブの実行を管理する工程と、
(b)各ページのラスタデータを生成する際に、前記固定部分については、最初に生成されたページのラスタデータのうち、前記固定部分に対応するラスタデータ固定部分を各ページで共通して利用するとともに、前記可変部分については、各ページで前記可変部分に対応するラスタデータ可変部分を生成して各ページ上にレイアウトすることにより、各ページのラスタデータを生成する工程と、
を備え、
前記工程(a)は、
前記複数ページのうち、前記ラスタデータが未生成のページについて、直前に作成されたページのラスタデータの状態を基準として前記可変部分を変更するために要するページ変更コストを求め、求めたページ変更コストに応じて、次のラスタデータを生成する対象ページを選択する工程を含む、
ことを特徴とする印刷ジョブ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−211474(P2009−211474A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54558(P2008−54558)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】