印刷ライン幅設定装置、印刷ライン幅設定方法および印刷ライン幅設定プログラム
【課題】三次元形状のメディアに印刷する場合に印刷画質が低下するのを抑制する。
【解決手段】メディアMの表面形状情報と、三次元インクジェットプリンタの各軸の移動スケジュール情報とを取得すると、この表面形状情報及び移動スケジュール情報に基づいて、インクジェットヘッド12に対向するメディアMの表面の印刷可能面Jを算出し、この印刷可能面Jにおけるインクジェットヘッド12に最も近接する近接点Cを算出する。そして、インクジェットヘッド12から離間する方向において近接点Cから所定距離内にある範囲を印刷対象面Kとして算出し、この算出された印刷対象面Kに基づいて印刷ライン幅を設定する。印刷ライン幅は、印刷対象面Kの幅Lにインクジェットヘッド12に設けられたノズル間解像度を掛け合わせて印刷に使用するノズル数を算出し、このノズル数で形成される幅に設定する。
【解決手段】メディアMの表面形状情報と、三次元インクジェットプリンタの各軸の移動スケジュール情報とを取得すると、この表面形状情報及び移動スケジュール情報に基づいて、インクジェットヘッド12に対向するメディアMの表面の印刷可能面Jを算出し、この印刷可能面Jにおけるインクジェットヘッド12に最も近接する近接点Cを算出する。そして、インクジェットヘッド12から離間する方向において近接点Cから所定距離内にある範囲を印刷対象面Kとして算出し、この算出された印刷対象面Kに基づいて印刷ライン幅を設定する。印刷ライン幅は、印刷対象面Kの幅Lにインクジェットヘッド12に設けられたノズル間解像度を掛け合わせて印刷に使用するノズル数を算出し、このノズル数で形成される幅に設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元形状のメディアの表面に印刷ラインごとに印刷を行う三次元プリンタの印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定装置、印刷ライン幅設定方法および印刷ライン幅設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元形状のメディアに対しても印刷を行いたいとの要求から、特許文献1に記載された三次元インクジェットプリンタが考えられてきた。この特許文献1に記載された三次元インクジェットプリンタは、三次元形状のメディアを回転させながら所定幅の印刷ラインごとにメディアの表面に画像を印刷するものである。
【0003】
そして、この三次元インクジェットプリンタで画像を印刷するために、RIP(Raster Image Processor)では、ビットマップ形式やJPEG形式などの画像データを三次元インクジェットプリンタで印刷可能なドット形式の印刷データに変換するとともに、この印刷データを印刷ライン毎に分割している。そして、インクジェットプリンタでは、RIPから送信された印刷データを受信すると、メディアを回転させながらインクジェットヘッドからインク液滴を吐出することで、印刷ライン毎にメディアの表面に画像を印刷している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−008110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェットヘッドのノズル面は平面状であるのに対して、三次元形状のメディアはその表面が凹凸状に湾曲している。このため、インクジェットヘッドとメディア表面との間のギャップが全体的に不均一となり、印刷位置によってはギャップの許容範囲を超えてしまうことがある。ギャップの許容範囲を超えてしまうと、インクジェットヘッドから吐出されたインク液滴の飛行軌跡が変化することによりインク液滴の着弾位置がずれてしまい、また、インク液滴にミストが発生することによりメディア表面に着弾したインク液滴のドット形状が変形して、印刷画質が低下するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、三次元形状のメディアに印刷する場合に印刷画質が低下するのを抑制することができる印刷ライン幅設定装置、印刷ライン幅設定方法、印刷ライン幅設定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る印刷ライン幅設定装置は、複数のノズルを備えるインクジェットヘッドと三次元形状のメディアとを相対的に移動させてメディアの表面に印刷ラインごとに印刷を行う三次元インクジェットプリンタのための印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定装置であって、インクジェットヘッドとメディアとを相対的に移動させる移動スケジュール情報を取得する移動スケジュール情報取得手段と、メディアの表面形状情報を取得する表面形状情報取得手段と、表面形状情報取得手段により取得された表面形状情報と移動スケジュール情報取得手段により取得された移動スケジュール情報とに基づいて、インクジェットヘッドに対向するメディアの印刷可能面を算出し、印刷可能面におけるインクジェットヘッドに最も近接する近接点を算出し、印刷可能面においてインクジェットヘッドから離間する方向において近接点から所定距離内にある印刷対象面を算出する印刷対象面算出手段と、印刷対象面算出手段により算出された印刷対象面に基づいて、三次元インクジェットプリンタにおける印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る印刷ライン幅設定装置によれば、インクジェットヘッドとメディアとの相対的な移動スケジュール情報とメディアの表面形状情報とを取得することで、インクジェットヘッドとメディアとが相対的に移動された場合におけるインクジェットヘッドに対向するメディアの表面形状を算出することができる。このため、メディアの印刷可能面及びこの印刷可能面における近接点を算出するとともに、この近接点から印刷対象面を算出することができる。この印刷対象面は、近接点からインクジェットヘッドから離間する方向において所定距離内となるため、印刷対象面内では、インクジェットヘッドから吐出されたインク液滴の飛行軌跡が揃うとともに、ミストの発生などが抑制される。このため、印刷対象面に基づいて印刷ライン幅を設定することで、三次元形状のメディアに印刷する場合に印刷画質が低下するのを抑制することができる。
【0009】
そして、上記印刷ライン幅設定手段は、印刷対象面に対応するインクジェットヘッドのノズル数を算出し、この算出したノズル数により印刷ライン幅を設定することが好ましい。この印刷ライン幅設定装置によれば、印刷対象面に対応するインクジェットヘッドのノズル数により印刷ライン幅を設定することで、インクジェットヘッドにおけるノズルの密度に対応して印刷ライン幅を設定することができる。
【0010】
この場合、上記印刷ライン幅設定手段は、印刷対象面の幅にインクジェットヘッドに設けられたノズルの密度を掛け合わせることで、ノズル数を算出することが好ましい。この印刷ライン幅設定装置によれば、印刷対象面の幅にノズルの密度を掛け合わせてノズル数を算出することで、印刷対象面に対応するノズル数を適切に算出することができる。
【0011】
本発明に係る印刷ライン幅設定方法は、複数のノズルを備えるインクジェットヘッドと三次元形状のメディアとを相対的に移動させてメディアの表面に印刷ラインごとに印刷を行う三次元インクジェットプリンタのための印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定方法であって、インクジェットヘッドとメディアとを相対的に移動させる移動スケジュール情報を取得する移動スケジュール情報取得ステップと、メディアの表面形状情報を取得する表面形状情報取得ステップと、表面形状情報取得ステップにおいて取得された表面形状情報と移動スケジュール情報取得ステップにおいて取得された移動スケジュール情報とに基づいて、インクジェットヘッドに対向するメディアの印刷可能面を算出し、印刷可能面におけるインクジェットヘッドに最も近接する近接点を算出し、印刷可能面においてインクジェットヘッドから離間する方向において近接点から所定距離内にある印刷対象面を算出する印刷対象面算出ステップと、印刷対象面算出ステップにおいて算出された印刷対象面に基づいて、三次元インクジェットプリンタにおける印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定ステップと、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る印刷ライン幅設定方法によれば、インクジェットヘッドとメディアとの相対的な移動スケジュール情報とメディアの表面形状情報とを取得することで、インクジェットヘッドとメディアとが相対的に移動された場合におけるインクジェットヘッドに対向するメディアの表面形状を算出することができる。このため、メディアの印刷可能面及びこの印刷可能面における近接点を算出するとともに、この近接点から印刷対象面を算出することができる。この印刷対象面は、近接点からインクジェットヘッドから離間する方向において所定距離内となるため、印刷対象面内では、インクジェットヘッドから吐出されたインク液滴の飛行軌跡が揃うとともに、ミストの発生などが抑制される。このため、印刷対象面に基づいて印刷ライン幅を設定することで、三次元形状のメディアに印刷する場合に印刷画質が低下するのを抑制することができる。
【0013】
本発明に係る印刷ライン幅設定プログラムは、複数のノズルを備えるインクジェットヘッドと三次元形状のメディアとを相対的に移動させてメディアの表面に印刷ラインごとに印刷を行う三次元インクジェットプリンタのための印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定プログラムであって、コンピュータを、インクジェットヘッドとメディアとを相対的に移動させる移動スケジュール情報を取得する移動スケジュール情報取得手段と、メディアの表面形状情報を取得する表面形状情報取得手段と、表面形状情報取得手段により取得された表面形状情報と移動スケジュール情報取得手段により取得された移動スケジュール情報とに基づいて、インクジェットヘッドに対向するメディアの印刷可能面を算出し、印刷可能面におけるインクジェットヘッドに最も近接する近接点を算出し、印刷可能面においてインクジェットヘッドから離間する方向において近接点から所定距離内にある印刷対象面を算出する印刷対象面算出手段と、印刷対象面算出手段により算出された印刷対象面に基づいて、三次元インクジェットプリンタにおける印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定手段と、として機能させることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る印刷ライン幅設定プログラムによれば、インクジェットヘッドとメディアとの相対的な移動スケジュール情報とメディアの表面形状情報とを取得することで、インクジェットヘッドとメディアとが相対的に移動された場合におけるインクジェットヘッドに対向するメディアの表面形状を算出することができる。このため、メディアの印刷可能面及びこの印刷可能面における近接点を算出するとともに、この近接点から印刷対象面を算出することができる。この印刷対象面は、近接点からインクジェットヘッドから離間する方向において所定距離内となるため、印刷対象面内では、インクジェットヘッドから吐出されたインク液滴の飛行軌跡が揃うとともに、ミストの発生などが抑制される。このため、印刷対象面に基づいて印刷ライン幅を設定することで、三次元形状のメディアに印刷する場合に印刷画質が低下するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、三次元形状のメディアに印刷する場合に印刷画質が低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るRIPを備える三次元インクジェットプリンタシステムの構成を示した図である。
【図2】三次元インクジェットプリンタにおける各軸の関係を示した図である。
【図3】斜め上方から見た三次元インクジェットプリンタを模式的に示した図である。
【図4】正面から見た三次元インクジェットプリンタを模式的に示した図である。
【図5】側方から見た三次元インクジェットプリンタを模式的に示した図である。
【図6】印刷ラインを変更する場合の軸の動作を説明するための図である。
【図7】印刷ラインを変更する場合の軸の動作を説明するための図である。
【図8】印刷ラインを変更する場合の軸の動作を説明するための図である。
【図9】インク液滴を吐出する場合の動作を説明するための図である。
【図10】RIPの機能ブロック構成を示す図である。
【図11】印刷対象面を説明するための図である。
【図12】RIPの処理動作を示すフローチャートである。
【図13】印刷に使用するノズルの選択を説明するための図である。
【図14】印刷に使用するノズルの選択を説明するための図である。
【図15】印刷に使用するノズルの選択を説明するための図である。
【図16】印刷対象面を説明するための図である。
【図17】ノズル間解像度が低い場合における印刷方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る印刷ライン幅設定装置、印刷ライン幅設定方法、および、印刷ライン幅設定プログラムの好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態は、本発明に係る印刷ライン幅設定装置、印刷ライン幅設定方法、および、印刷ライン幅設定プログラムをRIPに適用したものである。また、本実施形態では、三次元形状のメディアMの一例として、球状のメディアMを用いて説明する。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0018】
図1は、本実施形態に係るRIPを備える三次元インクジェットプリンタシステムの構成を示した図である。図1に示すように、三次元インクジェットプリンタシステム1は、三次元インクジェットプリンタ10と、パソコン20とにより構成されている。そして、パソコン20には、三次元インクジェットプリンタ10で印刷するための画像データを作成するアプリケーション30と、この画像データを三次元インクジェットプリンタ10で印刷できる印刷データに変換するRIP40とが組み込まれている。
【0019】
三次元インクジェットプリンタ10は、三次元形状のメディアMに対して所定幅の印刷ラインごとに画像を印刷するものであって、本件出願人が先に出願した国際出願PCT/JP2008/072551号や特願2008−304228号などに記載されたものである。このため、三次元インクジェットプリンタ10には、インク液滴が吐出される複数のノズル11が設けられたインクジェットヘッド12と、メディアMを保持するメディア保持部13とが設けられている。そして、三次元インクジェットプリンタ10は、メディアMを回転させてインクジェットヘッド12とメディア保持部13とを三次元空間において相対的に移動させながら、インクジェットヘッド12のノズル11からインクを吐出させることで、所定の印刷ライン毎にメディアMの表面に画像を印刷する。
【0020】
三次元インクジェットプリンタ10は、X軸、Y軸、Z軸、A軸、B軸の5軸により、インクジェットヘッド12とメディア保持部13とを相対的に移動することが可能となっている。図2は、三次元インクジェットプリンタにおける各軸の関係を示した図、図3は、斜め上方から見た三次元インクジェットプリンタを模式的に示した図、図4は、正面から見た三次元インクジェットプリンタを模式的に示した図、図5は、側方から見た三次元インクジェットプリンタを模式的に示した図である。
【0021】
図2〜図5に示すように、X軸は、インクジェットヘッド12に対してメディアMを前後方向に移動させる軸である。Y軸は、X軸と垂直な軸であってメディアMに対してインクジェットヘッド12を左右方向に移動させる軸である。Z軸は、X軸及びY軸と垂直な軸であってインクジェットヘッド12に対してメディアMを上下方向に移動させる軸である。A軸は、インクジェットヘッド12に対してメディアMの傾斜角度を変更させる軸である。B軸は、インクジェットヘッド12に対してメディアMを回転させる軸である。なお、インクジェットヘッド12は、Y軸にのみ移動可能となっており、メディア保持部13は、X軸、Z軸、A軸、B軸に移動可能となっている。
【0022】
ここで、図6〜図9を参照して、三次元インクジェットプリンタ10の動作について説明する。図6〜図8は、印刷ラインを変更する場合の軸の動作を説明するための図、図9は、インク液滴を吐出する場合の動作を説明するための図である。
【0023】
まず、図6を参照して、A軸の回転中心OAとメディアMの中心Oとが同一である場合について考える。図6(a)に示すように、B軸を回転させると、現在印刷している印刷ラインL1がインクジェットヘッド12に対して主走査方向に移動する。このため、B軸を回転させているときにインクジェットヘッド12からインク液滴を吐出させることで、印刷ラインL1に画像が印刷される。そして、図6(b)に示すように、A軸を回転させると、メディアMの表面がインクジェットヘッド12に対して副走査方向に送り出されて、インクジェットヘッド12に対向する面が印刷ラインL1から次の印刷ラインである印刷ラインL2に切り替わる。なお、メディアMの形状は半径が一定の球状であるため、A軸のみを移動させることで、メディアMとインクジェットヘッド12とのギャップを所定距離に維持した状態で、副走査方向に向けてメディアMを送り出すことができる。
【0024】
しかしながら、実際には、図7に示すように、メディアMはメディア保持部13により保持されているため、メディアMの中心OがA軸の回転中心OAとはならない。すなわち、メディアMのA軸の回転半径は、回転中心OAからメディアMの中心Oまでの長さ(メディアMの半径+回転中心OAからメディアMの長さ)となる。このため、A軸を回転させると、A軸の回転半径に応じてメディアMがX軸方向及びZ軸方向にずれる。
【0025】
そこで、図8に示すように、メディアMを副走査方向に向けて送り出すときは、A軸を回転させながら、A軸を回転させた場合に生ずるメディアMの中心OのX軸方向の差分dX及びY軸方向の差分dYだけ、X軸及びZ軸を移動させる。これにより、メディアMの中心Oが移動しないため、インクジェットヘッド12とメディアMとのギャップを所定距離に維持した状態で、メディアMを副走査方向に向けて送り出すことができる。
【0026】
このようにして、メディアMを副走査方向に送り出して次の印刷ラインL2をインクジェットヘッド12に対向させると、図9に示すように、B軸のみを回転させることで、メディアMの印刷ラインL2がインクジェットヘッド12に対して主走査方向に移動するため、B軸のみを回転させながらインクジェットヘッド12からインク液滴を吐出させることで、印刷ラインL2に画像が印刷される。
【0027】
図10は、RIPの機能ブロック構成を示す図である。RIP40は、アプリケーション30により作成されたビットマップ形式やJPEG形式などの画像データを、三次元インクジェットプリンタ10で印刷可能なドット形式の印刷データに変換するとともに、三次元インクジェットプリンタ10のための印刷ライン幅を設定し、変換した印刷データを設定された印刷ライン幅に分割して三次元インクジェットプリンタ10に送信するものである。このため、図10に示すように、RIP40は、表面形状情報取得部41と、移動スケジュール情報取得部42と、印刷対象面算出部43と、印刷ライン幅設定部44として機能する。なお、RIP40は、例えば、CPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されており、上記の各機能を実現するためのコンピュータプログラムがROMなどに記憶されている。そして、CPUやRAM上に上記のコンピュータプログラムを読み込ませ、CPUの制御の下で動作させることで、上記の各機能が実現される。
【0028】
表面形状情報取得部41は、アプリケーション30で作成された画像データとともに、メディアMの表面形状情報を取得するものである。この表面形状情報は、メディアMの形状を定義する情報であり、本実施形態では、メディアMが球状であるため、球の半径rが表面形状情報として取得される。なお、表面形状情報は、何れから取得してもよく、例えば、アプリケーション30から取得してもよく、印刷オペレータからの直接入力により取得してもよい。
【0029】
移動スケジュール情報取得部42は、上述した三次元インクジェットプリンタ10において画像を印刷する場合の各軸の移動スケジュール情報を取得するものである。この移動スケジュール情報は、インクジェットヘッド12とメディアMとを相対的に移動させて印刷ライン毎にメディアMに画像を印刷するためのものである。すなわち、移動スケジュール情報は、メディアMとインクジェットヘッド12との間のギャップを所定距離に保持した状態で、インクジェットヘッド12に対してメディアMを主走査方向に移動させるとともに、インクジェットヘッド12に対してメディアMを副走査方向に送り出させるように、X軸、Y軸、Z軸、A軸、B軸を移動させるスケジュールである。なお、移動スケジュール情報は、何れから取得してもよく、例えば、アプリケーション30から取得してもよく、印刷オペレータからの直接入力により取得してもよい。また、表面形状情報取得部41において取得した表形状情報に基づいて、移動スケジュール情報取得部42が三次元インクジェットプリンタ10における各軸の移動スケジュール情報を算出することにより取得してもよい。
【0030】
印刷対象面算出部43は、表面形状情報取得部41により取得された表面形状情報と、移動スケジュール情報取得部42により取得された移動スケジュール情報とに基づいて、各印刷ライン幅に対応するメディアMの印刷対象面を算出するものである。
【0031】
図11は、印刷対象面を説明するための図である。図11に示すように、印刷対象面算出部43は、まず、表面形状情報と移動スケジュール情報とに基づいて、B軸が固定された状態でメディアMがA軸方向に回転される場合に、メディアMの表面におけるインクジェットヘッド12の全面に対向する印刷可能面Jを算出する。印刷可能面Jは、インクジェットヘッド12の全ノズル11からインク液滴を吐出した場合にメディアMの表面に画像が印刷される面である。印刷可能面Jの算出は、表面形状情報と移動スケジュール情報とに基づいて、インクジェットヘッド12とメディアMとが相対的に移動された場合にインクジェットヘッド12に対向するメディアMの表面形状を算出し、この算出結果から、インクジェットヘッド12の両端に対応するメディアM表面のA点及びE点を算出し、この算出されたA点とB点とで挟まれる面を印刷可能面Jとする。
【0032】
また、印刷対象面算出部43は、印刷可能面Jにおけるインクジェットヘッドに最も近接する近接点Cを算出する。すなわち、印刷可能面Jの表面形状に基づいて、インクジェットヘッド12と印刷可能面Jとの間のギャップ(離間距離)を算出することで、インクジェットヘッド12に最も近接する近接点Cを算出することができる。
【0033】
そして、印刷対象面算出部43は、インクジェットヘッド12から離間する方向において、印刷可能面Jにおいて近接点Cから所定距離内にある印刷対象面Kを算出する。すなわち、印刷対象面Kは、インクジェットヘッド12から印刷可能面Jに向けてインク液滴が吐出された場合に、近接点Cに着弾したインク液滴のドット画質に対して略同一画質のドット画質が得られる範囲である。印刷対象面Kの算出は、例えば、印刷可能面Jの表面形状に基づいて、インクジェットヘッド12と印刷可能面Jとの間のギャップ(離間距離)を算出し、近接点Cのギャップと所定範囲のギャップとなる範囲を算出することで求めることができる。なお、図11では、B点とD点とで挟まれた範囲が印刷対象面Kとなる。
【0034】
印刷ライン幅設定部44は、印刷対象面算出部43において算出された印刷対象面Kに基づいて、三次元インクジェットプリンタ10における印刷ライン幅を設定する。すなわち、印刷ライン幅設定部44は、印刷ライン幅を設定するために、まず、B点からD点までの直線距離である印刷対象面Kの幅Lを算出する。そして、この算出した印刷対象面Kの幅Lにインクジェットヘッド12に設けられたノズル11の密度(ノズル間解像度:dpi)を掛け合わせて、インクジェットヘッド12に設けられたノズル11のうち、印刷に使用するノズル数を算出する。
【0035】
そして、印刷ライン幅設定部44は、この算出したノズル数で形成される幅を、印刷ライン幅として設定する。すなわち、インクジェットヘッド12からインク液滴が吐出されるノズル11の幅が印刷ライン幅となる。
【0036】
次に、図12を参照して、RIP40の処理動作について説明する。図12は、RIPの処理動作を示すフローチャートである。なお、以下に説明する処理は、RIP40において、CPUなどで構成される処理部(不図示)が、ROMなどの記憶装置に記録されたコンピュータプログラムを実行させることで、以下の処理が行われる。
【0037】
まず、RIP40は、表面形状情報取得部41により、メディアMの表面形状情報を取得するとともに(ステップS1)、移動スケジュール情報取得部42により、三次元インクジェットプリンタ10における各軸の移動スケジュール情報を取得する(ステップS2)。
【0038】
その後、RIP40は、印刷対象面算出部43により、ステップS1において取得された表面形状情報とステップS2において取得された移動スケジュール情報とに基づいて、メディアM表面における印刷可能面Jを算出して(ステップS3)、この印刷可能面Jにおいてインクジェットヘッド12に最も近接する近接点Cを算出する(ステップS4)。そして、RIP40は、ステップS3において算出した印刷可能面Jから、インクジェットヘッド12から離間する方向において近接点Cから所定距離内にある印刷対象面Kを算出する(ステップS5)。
【0039】
その後、RIP40は、印刷ライン幅設定部44により、ステップS5により算出された印刷対象面Kに基づいて、印刷に使用するノズル数を算出し(ステップS6)、このノズル数で形成される幅を印刷ライン幅として設定する(ステップS7)。
【0040】
このようにして印刷ライン幅が設定されると、RIP40は、ステップS6において算出されたノズル数に基づいて、インクジェットヘッド12に設けられた複数のノズル11のうち印刷に使用するノズルを選択する。
【0041】
図13〜図15は、印刷に使用するノズルの選択を説明するための図である。図13に示すように、インクジェットヘッド12には、X軸方向に沿って配列された多数個(図では15個)のノズル11の列がY軸方向に沿って複数段(図では3段)に配列されている。そして、図14に示すように、このノズル11から、ステップS6において算出されたノズル数だけ、印刷に使用する印刷ノズル11aを選択する。印刷ノズル11aは、連続するノズル11であれば如何なるノズル11を選択してもよく、例えば、図14(a)に示すように、インクジェットヘッド12の一方端から他方端に向けて順に印刷ノズル11aを選択してもよく、図14(b)に示すように、インクジェットヘッド12の中央部から両端に向けて順に印刷ノズル11aを選択してもよい。そして、印刷ノズル11aとして選択されない不使用ノズル11bは印刷に使用されないため、実質的には、図15に示すように、擬似的に印刷ノズル11aのみが設けられた小さなインクジェットヘッド12であるものとして印刷を行う。
【0042】
なお、図14(a)に示すように、インクジェットヘッド12の一方端から他方端に向けて順に印刷ノズル11aを選択する場合、移動スケジュール情報は、インクジェットヘッド12の一方端に対応する位置に近接点が通る移動スケジュールとする。この場合、図16に示すように、インクジェットヘッド12の両端に対応するメディアM表面のF点及びH点とで挟まれる面が印刷可能面Jとなり、インクジェットヘッド12に最も近接するH点が近接点となる。そして、印刷可能面Jのうち、インクジェットヘッド12から離間する方向において近接点Hから所定距離内にあるG点とH点とで挟まれた範囲が印刷対象面Kとなる。
【0043】
その後、RIP40は、印刷データを印刷ライン幅に分割し、この分割した各印刷データをインクジェットヘッド12の印刷ノズル11aに対応付けて、三次元インクジェットプリンタ10に送信する。
【0044】
そして、三次元インクジェットプリンタ10では、RIP40から印刷データを取得すると、RIP40がステップS2において取得した移動スケジュール情報と同じスケジュールでメディアMを回転させながら、RIP40から送信された印刷データに基づいて印刷ノズル11aからインク液滴を吐出させる。これにより、印刷ライン毎にメディアMの表面に画像が印刷される。
【0045】
なお、印刷データの印刷解像度よりもノズル間解像度(ノズル11の密度)が低い場合は、図17に示すように、同一印刷ラインに対して複数回印刷を行うことで(図17では4回)、所定の印刷解像度を得ることができる。すなわち、同一印刷ラインに対してメディアMを所定回数させることで、印刷ノズル11aに対してメディアMの同一印刷ラインが所定回数通過する。そこで、メディアMを1回転させる度にメディアMを副走査方向に向けて印刷解像度分だけ送り出しながら印刷ノズル11aからインク液滴を吐出させることで、所定の印刷解像度の印刷画像が得られる。例えば、印刷解像度が600dpiであるのに対して、ノズル間解像度が150dpiである場合は、メディアMを副走査方向に向けて印刷解像度分ずつ送り出しながらメディアMを4回転させて同一印刷ラインに4回印刷することで、600dpiの印刷解像度を得ることができる。
【0046】
このように、本実施形態によれば、インクジェットヘッド12とメディアMとの相対的な移動スケジュール情報とメディアMの表面形状情報とを取得することで、インクジェットヘッド12とメディアMとが相対的に移動された場合におけるインクジェットヘッド12に対向するメディアMの表面形状を算出することができる。このため、印刷対象面算出部43により、メディアMの印刷可能面J及びこの印刷可能面Jにおける近接点Cを算出するとともに、この近接点Cから印刷対象面Kを算出することができる。この印刷対象面Kは、近接点Cからインクジェットヘッド12から離間する方向において所定距離内となるため、印刷対象面K内では、インクジェットヘッド12から吐出されたインク液滴の飛行軌跡が揃うとともに、ミストの発生などが抑制される。このため、印刷ライン幅設定部44により、印刷対象面Kに基づいて印刷ライン幅を設定することで、三次元形状のメディアMに印刷する場合に印刷画質が低下するのを抑制することができる。
【0047】
そして、印刷対象面Kに対応するインクジェットヘッド12のノズル数により印刷ライン幅を設定することで、インクジェットヘッド12のノズル間解像度に対応して印刷ライン幅を設定することができる。
【0048】
この場合、印刷対象面Kの幅にノズル間解像度を掛け合わせてノズル数を算出することで、印刷対象面に対応するノズル数を適切に算出することができる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、メディアMの形状が球状であるものとして説明したが、メディアMの形状は如何なる形状であってもよい。この場合、メディアMの形状を定義する情報を表面形状情報に持たせることで、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
また、上記実施形態では、本発明に係る印刷ライン幅設定装置、印刷ライン幅設定方法、および、印刷ライン幅設定プログラムをRIP40に適用したものとして説明したが、独立したアプリケーションに適用してもよく、三次元インクジェットプリンタ10に適用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…三次元インクジェットプリンタシステム、10…三次元インクジェットプリンタ、11…ノズル、11a…印刷ノズル、11b…不使用ノズル、12…インクジェットヘッド、13…メディア保持部、20…パソコン、30…アプリケーション、40…RIP、41…表面形状情報取得部、42…移動スケジュール情報取得部、43…印刷対象面算出部、44…印刷ライン幅設定部、C,H…近接点、J…印刷可能面、K…印刷対象面、L…印刷対象面の幅、L1,L2…印刷ライン、M…メディア、O…メディアの中心、OA…A軸の回転中心。
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元形状のメディアの表面に印刷ラインごとに印刷を行う三次元プリンタの印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定装置、印刷ライン幅設定方法および印刷ライン幅設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元形状のメディアに対しても印刷を行いたいとの要求から、特許文献1に記載された三次元インクジェットプリンタが考えられてきた。この特許文献1に記載された三次元インクジェットプリンタは、三次元形状のメディアを回転させながら所定幅の印刷ラインごとにメディアの表面に画像を印刷するものである。
【0003】
そして、この三次元インクジェットプリンタで画像を印刷するために、RIP(Raster Image Processor)では、ビットマップ形式やJPEG形式などの画像データを三次元インクジェットプリンタで印刷可能なドット形式の印刷データに変換するとともに、この印刷データを印刷ライン毎に分割している。そして、インクジェットプリンタでは、RIPから送信された印刷データを受信すると、メディアを回転させながらインクジェットヘッドからインク液滴を吐出することで、印刷ライン毎にメディアの表面に画像を印刷している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−008110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェットヘッドのノズル面は平面状であるのに対して、三次元形状のメディアはその表面が凹凸状に湾曲している。このため、インクジェットヘッドとメディア表面との間のギャップが全体的に不均一となり、印刷位置によってはギャップの許容範囲を超えてしまうことがある。ギャップの許容範囲を超えてしまうと、インクジェットヘッドから吐出されたインク液滴の飛行軌跡が変化することによりインク液滴の着弾位置がずれてしまい、また、インク液滴にミストが発生することによりメディア表面に着弾したインク液滴のドット形状が変形して、印刷画質が低下するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、三次元形状のメディアに印刷する場合に印刷画質が低下するのを抑制することができる印刷ライン幅設定装置、印刷ライン幅設定方法、印刷ライン幅設定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る印刷ライン幅設定装置は、複数のノズルを備えるインクジェットヘッドと三次元形状のメディアとを相対的に移動させてメディアの表面に印刷ラインごとに印刷を行う三次元インクジェットプリンタのための印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定装置であって、インクジェットヘッドとメディアとを相対的に移動させる移動スケジュール情報を取得する移動スケジュール情報取得手段と、メディアの表面形状情報を取得する表面形状情報取得手段と、表面形状情報取得手段により取得された表面形状情報と移動スケジュール情報取得手段により取得された移動スケジュール情報とに基づいて、インクジェットヘッドに対向するメディアの印刷可能面を算出し、印刷可能面におけるインクジェットヘッドに最も近接する近接点を算出し、印刷可能面においてインクジェットヘッドから離間する方向において近接点から所定距離内にある印刷対象面を算出する印刷対象面算出手段と、印刷対象面算出手段により算出された印刷対象面に基づいて、三次元インクジェットプリンタにおける印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る印刷ライン幅設定装置によれば、インクジェットヘッドとメディアとの相対的な移動スケジュール情報とメディアの表面形状情報とを取得することで、インクジェットヘッドとメディアとが相対的に移動された場合におけるインクジェットヘッドに対向するメディアの表面形状を算出することができる。このため、メディアの印刷可能面及びこの印刷可能面における近接点を算出するとともに、この近接点から印刷対象面を算出することができる。この印刷対象面は、近接点からインクジェットヘッドから離間する方向において所定距離内となるため、印刷対象面内では、インクジェットヘッドから吐出されたインク液滴の飛行軌跡が揃うとともに、ミストの発生などが抑制される。このため、印刷対象面に基づいて印刷ライン幅を設定することで、三次元形状のメディアに印刷する場合に印刷画質が低下するのを抑制することができる。
【0009】
そして、上記印刷ライン幅設定手段は、印刷対象面に対応するインクジェットヘッドのノズル数を算出し、この算出したノズル数により印刷ライン幅を設定することが好ましい。この印刷ライン幅設定装置によれば、印刷対象面に対応するインクジェットヘッドのノズル数により印刷ライン幅を設定することで、インクジェットヘッドにおけるノズルの密度に対応して印刷ライン幅を設定することができる。
【0010】
この場合、上記印刷ライン幅設定手段は、印刷対象面の幅にインクジェットヘッドに設けられたノズルの密度を掛け合わせることで、ノズル数を算出することが好ましい。この印刷ライン幅設定装置によれば、印刷対象面の幅にノズルの密度を掛け合わせてノズル数を算出することで、印刷対象面に対応するノズル数を適切に算出することができる。
【0011】
本発明に係る印刷ライン幅設定方法は、複数のノズルを備えるインクジェットヘッドと三次元形状のメディアとを相対的に移動させてメディアの表面に印刷ラインごとに印刷を行う三次元インクジェットプリンタのための印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定方法であって、インクジェットヘッドとメディアとを相対的に移動させる移動スケジュール情報を取得する移動スケジュール情報取得ステップと、メディアの表面形状情報を取得する表面形状情報取得ステップと、表面形状情報取得ステップにおいて取得された表面形状情報と移動スケジュール情報取得ステップにおいて取得された移動スケジュール情報とに基づいて、インクジェットヘッドに対向するメディアの印刷可能面を算出し、印刷可能面におけるインクジェットヘッドに最も近接する近接点を算出し、印刷可能面においてインクジェットヘッドから離間する方向において近接点から所定距離内にある印刷対象面を算出する印刷対象面算出ステップと、印刷対象面算出ステップにおいて算出された印刷対象面に基づいて、三次元インクジェットプリンタにおける印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定ステップと、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る印刷ライン幅設定方法によれば、インクジェットヘッドとメディアとの相対的な移動スケジュール情報とメディアの表面形状情報とを取得することで、インクジェットヘッドとメディアとが相対的に移動された場合におけるインクジェットヘッドに対向するメディアの表面形状を算出することができる。このため、メディアの印刷可能面及びこの印刷可能面における近接点を算出するとともに、この近接点から印刷対象面を算出することができる。この印刷対象面は、近接点からインクジェットヘッドから離間する方向において所定距離内となるため、印刷対象面内では、インクジェットヘッドから吐出されたインク液滴の飛行軌跡が揃うとともに、ミストの発生などが抑制される。このため、印刷対象面に基づいて印刷ライン幅を設定することで、三次元形状のメディアに印刷する場合に印刷画質が低下するのを抑制することができる。
【0013】
本発明に係る印刷ライン幅設定プログラムは、複数のノズルを備えるインクジェットヘッドと三次元形状のメディアとを相対的に移動させてメディアの表面に印刷ラインごとに印刷を行う三次元インクジェットプリンタのための印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定プログラムであって、コンピュータを、インクジェットヘッドとメディアとを相対的に移動させる移動スケジュール情報を取得する移動スケジュール情報取得手段と、メディアの表面形状情報を取得する表面形状情報取得手段と、表面形状情報取得手段により取得された表面形状情報と移動スケジュール情報取得手段により取得された移動スケジュール情報とに基づいて、インクジェットヘッドに対向するメディアの印刷可能面を算出し、印刷可能面におけるインクジェットヘッドに最も近接する近接点を算出し、印刷可能面においてインクジェットヘッドから離間する方向において近接点から所定距離内にある印刷対象面を算出する印刷対象面算出手段と、印刷対象面算出手段により算出された印刷対象面に基づいて、三次元インクジェットプリンタにおける印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定手段と、として機能させることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る印刷ライン幅設定プログラムによれば、インクジェットヘッドとメディアとの相対的な移動スケジュール情報とメディアの表面形状情報とを取得することで、インクジェットヘッドとメディアとが相対的に移動された場合におけるインクジェットヘッドに対向するメディアの表面形状を算出することができる。このため、メディアの印刷可能面及びこの印刷可能面における近接点を算出するとともに、この近接点から印刷対象面を算出することができる。この印刷対象面は、近接点からインクジェットヘッドから離間する方向において所定距離内となるため、印刷対象面内では、インクジェットヘッドから吐出されたインク液滴の飛行軌跡が揃うとともに、ミストの発生などが抑制される。このため、印刷対象面に基づいて印刷ライン幅を設定することで、三次元形状のメディアに印刷する場合に印刷画質が低下するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、三次元形状のメディアに印刷する場合に印刷画質が低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るRIPを備える三次元インクジェットプリンタシステムの構成を示した図である。
【図2】三次元インクジェットプリンタにおける各軸の関係を示した図である。
【図3】斜め上方から見た三次元インクジェットプリンタを模式的に示した図である。
【図4】正面から見た三次元インクジェットプリンタを模式的に示した図である。
【図5】側方から見た三次元インクジェットプリンタを模式的に示した図である。
【図6】印刷ラインを変更する場合の軸の動作を説明するための図である。
【図7】印刷ラインを変更する場合の軸の動作を説明するための図である。
【図8】印刷ラインを変更する場合の軸の動作を説明するための図である。
【図9】インク液滴を吐出する場合の動作を説明するための図である。
【図10】RIPの機能ブロック構成を示す図である。
【図11】印刷対象面を説明するための図である。
【図12】RIPの処理動作を示すフローチャートである。
【図13】印刷に使用するノズルの選択を説明するための図である。
【図14】印刷に使用するノズルの選択を説明するための図である。
【図15】印刷に使用するノズルの選択を説明するための図である。
【図16】印刷対象面を説明するための図である。
【図17】ノズル間解像度が低い場合における印刷方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る印刷ライン幅設定装置、印刷ライン幅設定方法、および、印刷ライン幅設定プログラムの好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態は、本発明に係る印刷ライン幅設定装置、印刷ライン幅設定方法、および、印刷ライン幅設定プログラムをRIPに適用したものである。また、本実施形態では、三次元形状のメディアMの一例として、球状のメディアMを用いて説明する。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0018】
図1は、本実施形態に係るRIPを備える三次元インクジェットプリンタシステムの構成を示した図である。図1に示すように、三次元インクジェットプリンタシステム1は、三次元インクジェットプリンタ10と、パソコン20とにより構成されている。そして、パソコン20には、三次元インクジェットプリンタ10で印刷するための画像データを作成するアプリケーション30と、この画像データを三次元インクジェットプリンタ10で印刷できる印刷データに変換するRIP40とが組み込まれている。
【0019】
三次元インクジェットプリンタ10は、三次元形状のメディアMに対して所定幅の印刷ラインごとに画像を印刷するものであって、本件出願人が先に出願した国際出願PCT/JP2008/072551号や特願2008−304228号などに記載されたものである。このため、三次元インクジェットプリンタ10には、インク液滴が吐出される複数のノズル11が設けられたインクジェットヘッド12と、メディアMを保持するメディア保持部13とが設けられている。そして、三次元インクジェットプリンタ10は、メディアMを回転させてインクジェットヘッド12とメディア保持部13とを三次元空間において相対的に移動させながら、インクジェットヘッド12のノズル11からインクを吐出させることで、所定の印刷ライン毎にメディアMの表面に画像を印刷する。
【0020】
三次元インクジェットプリンタ10は、X軸、Y軸、Z軸、A軸、B軸の5軸により、インクジェットヘッド12とメディア保持部13とを相対的に移動することが可能となっている。図2は、三次元インクジェットプリンタにおける各軸の関係を示した図、図3は、斜め上方から見た三次元インクジェットプリンタを模式的に示した図、図4は、正面から見た三次元インクジェットプリンタを模式的に示した図、図5は、側方から見た三次元インクジェットプリンタを模式的に示した図である。
【0021】
図2〜図5に示すように、X軸は、インクジェットヘッド12に対してメディアMを前後方向に移動させる軸である。Y軸は、X軸と垂直な軸であってメディアMに対してインクジェットヘッド12を左右方向に移動させる軸である。Z軸は、X軸及びY軸と垂直な軸であってインクジェットヘッド12に対してメディアMを上下方向に移動させる軸である。A軸は、インクジェットヘッド12に対してメディアMの傾斜角度を変更させる軸である。B軸は、インクジェットヘッド12に対してメディアMを回転させる軸である。なお、インクジェットヘッド12は、Y軸にのみ移動可能となっており、メディア保持部13は、X軸、Z軸、A軸、B軸に移動可能となっている。
【0022】
ここで、図6〜図9を参照して、三次元インクジェットプリンタ10の動作について説明する。図6〜図8は、印刷ラインを変更する場合の軸の動作を説明するための図、図9は、インク液滴を吐出する場合の動作を説明するための図である。
【0023】
まず、図6を参照して、A軸の回転中心OAとメディアMの中心Oとが同一である場合について考える。図6(a)に示すように、B軸を回転させると、現在印刷している印刷ラインL1がインクジェットヘッド12に対して主走査方向に移動する。このため、B軸を回転させているときにインクジェットヘッド12からインク液滴を吐出させることで、印刷ラインL1に画像が印刷される。そして、図6(b)に示すように、A軸を回転させると、メディアMの表面がインクジェットヘッド12に対して副走査方向に送り出されて、インクジェットヘッド12に対向する面が印刷ラインL1から次の印刷ラインである印刷ラインL2に切り替わる。なお、メディアMの形状は半径が一定の球状であるため、A軸のみを移動させることで、メディアMとインクジェットヘッド12とのギャップを所定距離に維持した状態で、副走査方向に向けてメディアMを送り出すことができる。
【0024】
しかしながら、実際には、図7に示すように、メディアMはメディア保持部13により保持されているため、メディアMの中心OがA軸の回転中心OAとはならない。すなわち、メディアMのA軸の回転半径は、回転中心OAからメディアMの中心Oまでの長さ(メディアMの半径+回転中心OAからメディアMの長さ)となる。このため、A軸を回転させると、A軸の回転半径に応じてメディアMがX軸方向及びZ軸方向にずれる。
【0025】
そこで、図8に示すように、メディアMを副走査方向に向けて送り出すときは、A軸を回転させながら、A軸を回転させた場合に生ずるメディアMの中心OのX軸方向の差分dX及びY軸方向の差分dYだけ、X軸及びZ軸を移動させる。これにより、メディアMの中心Oが移動しないため、インクジェットヘッド12とメディアMとのギャップを所定距離に維持した状態で、メディアMを副走査方向に向けて送り出すことができる。
【0026】
このようにして、メディアMを副走査方向に送り出して次の印刷ラインL2をインクジェットヘッド12に対向させると、図9に示すように、B軸のみを回転させることで、メディアMの印刷ラインL2がインクジェットヘッド12に対して主走査方向に移動するため、B軸のみを回転させながらインクジェットヘッド12からインク液滴を吐出させることで、印刷ラインL2に画像が印刷される。
【0027】
図10は、RIPの機能ブロック構成を示す図である。RIP40は、アプリケーション30により作成されたビットマップ形式やJPEG形式などの画像データを、三次元インクジェットプリンタ10で印刷可能なドット形式の印刷データに変換するとともに、三次元インクジェットプリンタ10のための印刷ライン幅を設定し、変換した印刷データを設定された印刷ライン幅に分割して三次元インクジェットプリンタ10に送信するものである。このため、図10に示すように、RIP40は、表面形状情報取得部41と、移動スケジュール情報取得部42と、印刷対象面算出部43と、印刷ライン幅設定部44として機能する。なお、RIP40は、例えば、CPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されており、上記の各機能を実現するためのコンピュータプログラムがROMなどに記憶されている。そして、CPUやRAM上に上記のコンピュータプログラムを読み込ませ、CPUの制御の下で動作させることで、上記の各機能が実現される。
【0028】
表面形状情報取得部41は、アプリケーション30で作成された画像データとともに、メディアMの表面形状情報を取得するものである。この表面形状情報は、メディアMの形状を定義する情報であり、本実施形態では、メディアMが球状であるため、球の半径rが表面形状情報として取得される。なお、表面形状情報は、何れから取得してもよく、例えば、アプリケーション30から取得してもよく、印刷オペレータからの直接入力により取得してもよい。
【0029】
移動スケジュール情報取得部42は、上述した三次元インクジェットプリンタ10において画像を印刷する場合の各軸の移動スケジュール情報を取得するものである。この移動スケジュール情報は、インクジェットヘッド12とメディアMとを相対的に移動させて印刷ライン毎にメディアMに画像を印刷するためのものである。すなわち、移動スケジュール情報は、メディアMとインクジェットヘッド12との間のギャップを所定距離に保持した状態で、インクジェットヘッド12に対してメディアMを主走査方向に移動させるとともに、インクジェットヘッド12に対してメディアMを副走査方向に送り出させるように、X軸、Y軸、Z軸、A軸、B軸を移動させるスケジュールである。なお、移動スケジュール情報は、何れから取得してもよく、例えば、アプリケーション30から取得してもよく、印刷オペレータからの直接入力により取得してもよい。また、表面形状情報取得部41において取得した表形状情報に基づいて、移動スケジュール情報取得部42が三次元インクジェットプリンタ10における各軸の移動スケジュール情報を算出することにより取得してもよい。
【0030】
印刷対象面算出部43は、表面形状情報取得部41により取得された表面形状情報と、移動スケジュール情報取得部42により取得された移動スケジュール情報とに基づいて、各印刷ライン幅に対応するメディアMの印刷対象面を算出するものである。
【0031】
図11は、印刷対象面を説明するための図である。図11に示すように、印刷対象面算出部43は、まず、表面形状情報と移動スケジュール情報とに基づいて、B軸が固定された状態でメディアMがA軸方向に回転される場合に、メディアMの表面におけるインクジェットヘッド12の全面に対向する印刷可能面Jを算出する。印刷可能面Jは、インクジェットヘッド12の全ノズル11からインク液滴を吐出した場合にメディアMの表面に画像が印刷される面である。印刷可能面Jの算出は、表面形状情報と移動スケジュール情報とに基づいて、インクジェットヘッド12とメディアMとが相対的に移動された場合にインクジェットヘッド12に対向するメディアMの表面形状を算出し、この算出結果から、インクジェットヘッド12の両端に対応するメディアM表面のA点及びE点を算出し、この算出されたA点とB点とで挟まれる面を印刷可能面Jとする。
【0032】
また、印刷対象面算出部43は、印刷可能面Jにおけるインクジェットヘッドに最も近接する近接点Cを算出する。すなわち、印刷可能面Jの表面形状に基づいて、インクジェットヘッド12と印刷可能面Jとの間のギャップ(離間距離)を算出することで、インクジェットヘッド12に最も近接する近接点Cを算出することができる。
【0033】
そして、印刷対象面算出部43は、インクジェットヘッド12から離間する方向において、印刷可能面Jにおいて近接点Cから所定距離内にある印刷対象面Kを算出する。すなわち、印刷対象面Kは、インクジェットヘッド12から印刷可能面Jに向けてインク液滴が吐出された場合に、近接点Cに着弾したインク液滴のドット画質に対して略同一画質のドット画質が得られる範囲である。印刷対象面Kの算出は、例えば、印刷可能面Jの表面形状に基づいて、インクジェットヘッド12と印刷可能面Jとの間のギャップ(離間距離)を算出し、近接点Cのギャップと所定範囲のギャップとなる範囲を算出することで求めることができる。なお、図11では、B点とD点とで挟まれた範囲が印刷対象面Kとなる。
【0034】
印刷ライン幅設定部44は、印刷対象面算出部43において算出された印刷対象面Kに基づいて、三次元インクジェットプリンタ10における印刷ライン幅を設定する。すなわち、印刷ライン幅設定部44は、印刷ライン幅を設定するために、まず、B点からD点までの直線距離である印刷対象面Kの幅Lを算出する。そして、この算出した印刷対象面Kの幅Lにインクジェットヘッド12に設けられたノズル11の密度(ノズル間解像度:dpi)を掛け合わせて、インクジェットヘッド12に設けられたノズル11のうち、印刷に使用するノズル数を算出する。
【0035】
そして、印刷ライン幅設定部44は、この算出したノズル数で形成される幅を、印刷ライン幅として設定する。すなわち、インクジェットヘッド12からインク液滴が吐出されるノズル11の幅が印刷ライン幅となる。
【0036】
次に、図12を参照して、RIP40の処理動作について説明する。図12は、RIPの処理動作を示すフローチャートである。なお、以下に説明する処理は、RIP40において、CPUなどで構成される処理部(不図示)が、ROMなどの記憶装置に記録されたコンピュータプログラムを実行させることで、以下の処理が行われる。
【0037】
まず、RIP40は、表面形状情報取得部41により、メディアMの表面形状情報を取得するとともに(ステップS1)、移動スケジュール情報取得部42により、三次元インクジェットプリンタ10における各軸の移動スケジュール情報を取得する(ステップS2)。
【0038】
その後、RIP40は、印刷対象面算出部43により、ステップS1において取得された表面形状情報とステップS2において取得された移動スケジュール情報とに基づいて、メディアM表面における印刷可能面Jを算出して(ステップS3)、この印刷可能面Jにおいてインクジェットヘッド12に最も近接する近接点Cを算出する(ステップS4)。そして、RIP40は、ステップS3において算出した印刷可能面Jから、インクジェットヘッド12から離間する方向において近接点Cから所定距離内にある印刷対象面Kを算出する(ステップS5)。
【0039】
その後、RIP40は、印刷ライン幅設定部44により、ステップS5により算出された印刷対象面Kに基づいて、印刷に使用するノズル数を算出し(ステップS6)、このノズル数で形成される幅を印刷ライン幅として設定する(ステップS7)。
【0040】
このようにして印刷ライン幅が設定されると、RIP40は、ステップS6において算出されたノズル数に基づいて、インクジェットヘッド12に設けられた複数のノズル11のうち印刷に使用するノズルを選択する。
【0041】
図13〜図15は、印刷に使用するノズルの選択を説明するための図である。図13に示すように、インクジェットヘッド12には、X軸方向に沿って配列された多数個(図では15個)のノズル11の列がY軸方向に沿って複数段(図では3段)に配列されている。そして、図14に示すように、このノズル11から、ステップS6において算出されたノズル数だけ、印刷に使用する印刷ノズル11aを選択する。印刷ノズル11aは、連続するノズル11であれば如何なるノズル11を選択してもよく、例えば、図14(a)に示すように、インクジェットヘッド12の一方端から他方端に向けて順に印刷ノズル11aを選択してもよく、図14(b)に示すように、インクジェットヘッド12の中央部から両端に向けて順に印刷ノズル11aを選択してもよい。そして、印刷ノズル11aとして選択されない不使用ノズル11bは印刷に使用されないため、実質的には、図15に示すように、擬似的に印刷ノズル11aのみが設けられた小さなインクジェットヘッド12であるものとして印刷を行う。
【0042】
なお、図14(a)に示すように、インクジェットヘッド12の一方端から他方端に向けて順に印刷ノズル11aを選択する場合、移動スケジュール情報は、インクジェットヘッド12の一方端に対応する位置に近接点が通る移動スケジュールとする。この場合、図16に示すように、インクジェットヘッド12の両端に対応するメディアM表面のF点及びH点とで挟まれる面が印刷可能面Jとなり、インクジェットヘッド12に最も近接するH点が近接点となる。そして、印刷可能面Jのうち、インクジェットヘッド12から離間する方向において近接点Hから所定距離内にあるG点とH点とで挟まれた範囲が印刷対象面Kとなる。
【0043】
その後、RIP40は、印刷データを印刷ライン幅に分割し、この分割した各印刷データをインクジェットヘッド12の印刷ノズル11aに対応付けて、三次元インクジェットプリンタ10に送信する。
【0044】
そして、三次元インクジェットプリンタ10では、RIP40から印刷データを取得すると、RIP40がステップS2において取得した移動スケジュール情報と同じスケジュールでメディアMを回転させながら、RIP40から送信された印刷データに基づいて印刷ノズル11aからインク液滴を吐出させる。これにより、印刷ライン毎にメディアMの表面に画像が印刷される。
【0045】
なお、印刷データの印刷解像度よりもノズル間解像度(ノズル11の密度)が低い場合は、図17に示すように、同一印刷ラインに対して複数回印刷を行うことで(図17では4回)、所定の印刷解像度を得ることができる。すなわち、同一印刷ラインに対してメディアMを所定回数させることで、印刷ノズル11aに対してメディアMの同一印刷ラインが所定回数通過する。そこで、メディアMを1回転させる度にメディアMを副走査方向に向けて印刷解像度分だけ送り出しながら印刷ノズル11aからインク液滴を吐出させることで、所定の印刷解像度の印刷画像が得られる。例えば、印刷解像度が600dpiであるのに対して、ノズル間解像度が150dpiである場合は、メディアMを副走査方向に向けて印刷解像度分ずつ送り出しながらメディアMを4回転させて同一印刷ラインに4回印刷することで、600dpiの印刷解像度を得ることができる。
【0046】
このように、本実施形態によれば、インクジェットヘッド12とメディアMとの相対的な移動スケジュール情報とメディアMの表面形状情報とを取得することで、インクジェットヘッド12とメディアMとが相対的に移動された場合におけるインクジェットヘッド12に対向するメディアMの表面形状を算出することができる。このため、印刷対象面算出部43により、メディアMの印刷可能面J及びこの印刷可能面Jにおける近接点Cを算出するとともに、この近接点Cから印刷対象面Kを算出することができる。この印刷対象面Kは、近接点Cからインクジェットヘッド12から離間する方向において所定距離内となるため、印刷対象面K内では、インクジェットヘッド12から吐出されたインク液滴の飛行軌跡が揃うとともに、ミストの発生などが抑制される。このため、印刷ライン幅設定部44により、印刷対象面Kに基づいて印刷ライン幅を設定することで、三次元形状のメディアMに印刷する場合に印刷画質が低下するのを抑制することができる。
【0047】
そして、印刷対象面Kに対応するインクジェットヘッド12のノズル数により印刷ライン幅を設定することで、インクジェットヘッド12のノズル間解像度に対応して印刷ライン幅を設定することができる。
【0048】
この場合、印刷対象面Kの幅にノズル間解像度を掛け合わせてノズル数を算出することで、印刷対象面に対応するノズル数を適切に算出することができる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、メディアMの形状が球状であるものとして説明したが、メディアMの形状は如何なる形状であってもよい。この場合、メディアMの形状を定義する情報を表面形状情報に持たせることで、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
また、上記実施形態では、本発明に係る印刷ライン幅設定装置、印刷ライン幅設定方法、および、印刷ライン幅設定プログラムをRIP40に適用したものとして説明したが、独立したアプリケーションに適用してもよく、三次元インクジェットプリンタ10に適用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…三次元インクジェットプリンタシステム、10…三次元インクジェットプリンタ、11…ノズル、11a…印刷ノズル、11b…不使用ノズル、12…インクジェットヘッド、13…メディア保持部、20…パソコン、30…アプリケーション、40…RIP、41…表面形状情報取得部、42…移動スケジュール情報取得部、43…印刷対象面算出部、44…印刷ライン幅設定部、C,H…近接点、J…印刷可能面、K…印刷対象面、L…印刷対象面の幅、L1,L2…印刷ライン、M…メディア、O…メディアの中心、OA…A軸の回転中心。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを備えるインクジェットヘッドと三次元形状のメディアとを相対的に移動させて前記メディアの表面に印刷ラインごとに印刷を行う三次元インクジェットプリンタのための印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定装置であって、
前記インクジェットヘッドと前記メディアとを相対的に移動させる移動スケジュール情報を取得する移動スケジュール情報取得手段と、
前記メディアの表面形状情報を取得する表面形状情報取得手段と、
前記表面形状情報取得手段により取得された前記表面形状情報と前記移動スケジュール情報取得手段により取得された前記移動スケジュール情報とに基づいて、前記インクジェットヘッドに対向する前記メディアの印刷可能面を算出し、前記印刷可能面における前記インクジェットヘッドに最も近接する近接点を算出し、前記印刷可能面において前記インクジェットヘッドから離間する方向において前記近接点から所定距離内にある印刷対象面を算出する印刷対象面算出手段と、
前記印刷対象面算出手段により算出された前記印刷対象面に基づいて、前記三次元インクジェットプリンタにおける印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定手段と、
を有することを特徴とする印刷ライン幅設定装置。
【請求項2】
前記印刷ライン幅設定手段は、前記印刷対象面に対応する前記インクジェットヘッドのノズル数を算出し、この算出したノズル数により前記印刷ライン幅を設定することを特徴とする請求項1に記載の印刷ライン幅設定装置。
【請求項3】
前記印刷ライン幅設定手段は、前記印刷対象面の幅に前記インクジェットヘッドに設けられたノズルの密度を掛け合わせることで、前記ノズル数を算出することを特徴とする請求項2に記載の印刷ライン幅設定装置。
【請求項4】
複数のノズルを備えるインクジェットヘッドと三次元形状のメディアとを相対的に移動させて前記メディアの表面に印刷ラインごとに印刷を行う三次元インクジェットプリンタのための印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定方法であって、
前記インクジェットヘッドと前記メディアとを相対的に移動させる移動スケジュール情報を取得する移動スケジュール情報取得ステップと、
前記メディアの表面形状情報を取得する表面形状情報取得ステップと、
前記表面形状情報取得ステップにおいて取得された前記表面形状情報と前記移動スケジュール情報取得ステップにおいて取得された前記移動スケジュール情報とに基づいて、前記インクジェットヘッドに対向する前記メディアの印刷可能面を算出し、前記印刷可能面における前記インクジェットヘッドに最も近接する近接点を算出し、前記印刷可能面において前記インクジェットヘッドから離間する方向において前記近接点から所定距離内にある印刷対象面を算出する印刷対象面算出ステップと、
前記印刷対象面算出ステップにおいて算出された前記印刷対象面に基づいて、前記三次元インクジェットプリンタにおける印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定ステップと、
を有することを特徴とする印刷ライン幅設定方法。
【請求項5】
複数のノズルを備えるインクジェットヘッドと三次元形状のメディアとを相対的に移動させて前記メディアの表面に印刷ラインごとに印刷を行う三次元インクジェットプリンタのための印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定プログラムであって、
コンピュータを、
前記インクジェットヘッドと前記メディアとを相対的に移動させる移動スケジュール情報を取得する移動スケジュール情報取得手段と、
前記メディアの表面形状情報を取得する表面形状情報取得手段と、
前記表面形状情報取得手段により取得された前記表面形状情報と前記移動スケジュール情報取得手段により取得された前記移動スケジュール情報とに基づいて、前記インクジェットヘッドに対向する前記メディアの印刷可能面を算出し、前記印刷可能面における前記インクジェットヘッドに最も近接する近接点を算出し、前記印刷可能面において前記インクジェットヘッドから離間する方向において前記近接点から所定距離内にある印刷対象面を算出する印刷対象面算出手段と、
前記印刷対象面算出手段により算出された前記印刷対象面に基づいて、前記三次元インクジェットプリンタにおける印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定手段と、
として機能させることを特徴とする印刷ライン幅設定プログラム。
【請求項1】
複数のノズルを備えるインクジェットヘッドと三次元形状のメディアとを相対的に移動させて前記メディアの表面に印刷ラインごとに印刷を行う三次元インクジェットプリンタのための印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定装置であって、
前記インクジェットヘッドと前記メディアとを相対的に移動させる移動スケジュール情報を取得する移動スケジュール情報取得手段と、
前記メディアの表面形状情報を取得する表面形状情報取得手段と、
前記表面形状情報取得手段により取得された前記表面形状情報と前記移動スケジュール情報取得手段により取得された前記移動スケジュール情報とに基づいて、前記インクジェットヘッドに対向する前記メディアの印刷可能面を算出し、前記印刷可能面における前記インクジェットヘッドに最も近接する近接点を算出し、前記印刷可能面において前記インクジェットヘッドから離間する方向において前記近接点から所定距離内にある印刷対象面を算出する印刷対象面算出手段と、
前記印刷対象面算出手段により算出された前記印刷対象面に基づいて、前記三次元インクジェットプリンタにおける印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定手段と、
を有することを特徴とする印刷ライン幅設定装置。
【請求項2】
前記印刷ライン幅設定手段は、前記印刷対象面に対応する前記インクジェットヘッドのノズル数を算出し、この算出したノズル数により前記印刷ライン幅を設定することを特徴とする請求項1に記載の印刷ライン幅設定装置。
【請求項3】
前記印刷ライン幅設定手段は、前記印刷対象面の幅に前記インクジェットヘッドに設けられたノズルの密度を掛け合わせることで、前記ノズル数を算出することを特徴とする請求項2に記載の印刷ライン幅設定装置。
【請求項4】
複数のノズルを備えるインクジェットヘッドと三次元形状のメディアとを相対的に移動させて前記メディアの表面に印刷ラインごとに印刷を行う三次元インクジェットプリンタのための印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定方法であって、
前記インクジェットヘッドと前記メディアとを相対的に移動させる移動スケジュール情報を取得する移動スケジュール情報取得ステップと、
前記メディアの表面形状情報を取得する表面形状情報取得ステップと、
前記表面形状情報取得ステップにおいて取得された前記表面形状情報と前記移動スケジュール情報取得ステップにおいて取得された前記移動スケジュール情報とに基づいて、前記インクジェットヘッドに対向する前記メディアの印刷可能面を算出し、前記印刷可能面における前記インクジェットヘッドに最も近接する近接点を算出し、前記印刷可能面において前記インクジェットヘッドから離間する方向において前記近接点から所定距離内にある印刷対象面を算出する印刷対象面算出ステップと、
前記印刷対象面算出ステップにおいて算出された前記印刷対象面に基づいて、前記三次元インクジェットプリンタにおける印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定ステップと、
を有することを特徴とする印刷ライン幅設定方法。
【請求項5】
複数のノズルを備えるインクジェットヘッドと三次元形状のメディアとを相対的に移動させて前記メディアの表面に印刷ラインごとに印刷を行う三次元インクジェットプリンタのための印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定プログラムであって、
コンピュータを、
前記インクジェットヘッドと前記メディアとを相対的に移動させる移動スケジュール情報を取得する移動スケジュール情報取得手段と、
前記メディアの表面形状情報を取得する表面形状情報取得手段と、
前記表面形状情報取得手段により取得された前記表面形状情報と前記移動スケジュール情報取得手段により取得された前記移動スケジュール情報とに基づいて、前記インクジェットヘッドに対向する前記メディアの印刷可能面を算出し、前記印刷可能面における前記インクジェットヘッドに最も近接する近接点を算出し、前記印刷可能面において前記インクジェットヘッドから離間する方向において前記近接点から所定距離内にある印刷対象面を算出する印刷対象面算出手段と、
前記印刷対象面算出手段により算出された前記印刷対象面に基づいて、前記三次元インクジェットプリンタにおける印刷ライン幅を設定する印刷ライン幅設定手段と、
として機能させることを特徴とする印刷ライン幅設定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−224910(P2011−224910A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98227(P2010−98227)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】
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