説明

印刷制御装置、印刷システムおよびプログラム

【課題】印刷待ちの複数の印刷ジョブ内にページ数が少ない印刷ジョブであるショートジョブが含まれている場合でも、印刷順序通りに印刷データへの変換処理を行う場合と比較して印刷データに変換する際の処理時間を短縮する。
【解決手段】印刷ジョブ選択部44は、印刷ジョブ格納部42に格納されている印刷ジョブが、ページ数が設定されたしきい値より多いロングジョブであるのか、そうでないショートジョブであるのかを判定する。印刷ジョブ割当部45は、ショートジョブと判定された印刷ジョブを4つのコントローラボード471〜474のうちの1つに割り当てる。さらに、印刷ジョブ選択部44は、格納されている後続の印刷ジョブの中からショートジョブを選択する。印刷ジョブ割当制御部45は、選択されたショートジョブを、既に他の印刷ジョブを割り当てたコントローラボード以外のコントローラボードに割り当てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御装置、印刷システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入力されてくる印刷ジョブを順次キューに登録し、そのつど描画モジュールを起動して印刷データへ変換することにより各印刷ジョブを並列処理する印刷処理装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、実行中の印刷ジョブの処理を続けるより、他の印刷待ちの印刷ジョブを実行した方が印刷処理の順番が最適である、または印刷機構を効率よく利用できる場合、実行中の印刷ジョブを中断して、印刷待ちの他の印刷ジョブを優先して実行する印刷装置が開示されている。
【0004】
特許文献3には、大量データ用、少量データ用、高解像度用、カラー用など複数のRIP能力の異なる描画モジュール(プロセッサ)で構成し、印刷ジョブを解析して、もしくはユーザ指定に従い、印刷ジョブの印刷データへの変換処理をどの描画モジュールに実行させるのかを決める並列処理方法が開示されている。
【0005】
特許文献4には、複数ページを複数のプロセッサで並列処理して印刷データを生成する場合に、実際の描画を行なうことなく各ページの描画属性パラメータの設定を行なう空描画を実行し、この空描画の終了したページについて設定された描画属性パラメータに基づき各プロセッサで実描画を実行するようにした印刷制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−091366号公報
【特許文献2】特開平10−289072号公報
【特許文献3】特開2002−215352号公報
【特許文献4】特許第3553985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、印刷待ちの複数の印刷ジョブ内に頁数が少ない印刷ジョブが含まれている場合でも、印刷順序通りに印刷データへの変換処理を行う場合と比較して、印刷ジョブを印刷データに変換する際の処理時間を短縮することが可能な印刷制御装置、印刷システムおよびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[印刷制御装置]
請求項1に係る本発明は、印刷指示に基づいて描画処理を行って印刷データを生成する複数の描画処理手段を起動可能な複数の変換ユニットと、
印刷待ちの印刷指示を格納する格納手段と、
印刷指示の頁数が、設定されたしきい値より多いか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により頁数が設定されたしきい値以下であると判定された印刷指示を、前記複数の変換ユニットのうちの一部の変換ユニットに割り当てる割当手段と、
前記割当手段が、頁数がしきい値以下の印刷指示を前記複数の変換ユニットのうちの一部の変換ユニットに割り当てた場合、前記格納手段において格納されている後続の印刷指示の中から頁数がしきい値以下である印刷指示を選択する選択手段とを備え、
前記割当手段は、前記選択手段により選択された印刷指示を、既に他の印刷指示を割り当てた変換ユニット以外の他の変換ユニットに割り当てる印刷制御装置である。
【0009】
請求項2に係る本発明は、前記判定手段が、印刷指示中において印刷内容を記述するための言語である頁記述言語の種類に基づいて、前記各印刷指示毎に前記しきい値を変更する請求項1記載の印刷制御装置である。
【0010】
請求項3に係る本発明は、前記割当手段が、前記判定手段により頁数が設定されたしきい値以下であると判定された印刷指示を、前記複数の変換ユニットのうちの1つの変換ユニットに対して割り当てる請求項1または2記載の印刷制御装置である。
【0011】
請求項4に係る本発明は、前記割当手段が、前記判定手段により頁数が設定されたしきい値より大きいと判定された印刷指示を、前記複数の変換ユニットの全てに対して割り当てる請求項1から3のいずれか1項記載の印刷制御装置である。
【0012】
[印刷システム]
請求項5に係る本発明は、印刷指示に基づいて描画処理を行って印刷データを生成する複数の描画処理手段を起動可能な複数の変換ユニットと、
印刷待ちの印刷指示を格納する格納手段と、
印刷指示の頁数が、設定されたしきい値より多いか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により頁数が設定されたしきい値以下であると判定された印刷指示を、前記複数の変換ユニットのうちの一部の変換ユニットに割り当てる割当手段と、
前記割当手段が、頁数がしきい値以下の印刷指示を前記複数の変換ユニットのうちの一部の変換ユニットに割り当てた場合、前記格納手段において格納されている後続の印刷指示の中から頁数がしきい値以下である印刷指示を選択する選択手段と、
前記複数の変換ユニットにより変換された印刷データに基づいて画像を出力する画像出力手段とを備え、
前記割当手段は、前記選択手段により選択された印刷指示を、既に他の印刷指示を割り当てた変換ユニット以外の他の変換ユニットに割り当てる印刷システムである。
【0013】
[プログラム]
請求項6に係る本発明は、印刷待ちの印刷指示の頁数が、設定されたしきい値より多いか否かを判定するステップと、
頁数が設定されたしきい値以下であると判定された印刷指示を、印刷指示に基づいて描画処理を行って印刷データを生成する複数の描画処理手段を起動可能な複数の変換ユニットのうちの一部の変換ユニットに割り当てるステップと、
頁数がしきい値以下の印刷指示を前記複数の変換ユニットのうちの一部の変換ユニットに割り当てた場合、格納されている後続の印刷指示の中から頁数がしきい値以下である印刷指示を選択するステップと、
選択された頁数がしきい値以下である印刷指示を、既に他の印刷指示を割り当てた変換ユニット以外の他の変換ユニットに割り当てるステップとをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る本発明によれば、印刷待ちの複数の印刷ジョブ内に頁数が少ない印刷ジョブが含まれている場合でも、印刷順序通りに印刷データへの変換処理を行う場合と比較して、印刷ジョブを印刷データに変換する際の処理時間を短縮することが可能な印刷制御装置を提供することができる。
【0015】
請求項2に係る本発明によれば、請求項1に係る本発明により得られる効果に加えて、頁記述言語の種類に応じた適切なしきい値を設定することが可能な印刷制御装置を提供することができる。
【0016】
請求項3に係る本発明によれば、請求項1または2に係る本発明により得られる効果に加えて、頁数が少ない印刷ジョブについては1つの変換ユニットに対して1つの印刷ジョブを対応させて割り当てることにより、割当手段による印刷ジョブの割り当て処理を簡素にすることが可能な印刷制御装置を提供することができる。
【0017】
請求項4に係る本発明によれば、請求項1から3のいずれか1項に係る本発明により得られる効果に加えて、頁数が多い印刷ジョブについては複数の変換ユニットを用いて効率的に印刷データへの変換処理を実行することが可能な印刷制御装置を提供することができる。
【0018】
請求項5に係る本発明によれば、印刷待ちの複数の印刷ジョブ内に頁数が少ない印刷ジョブが含まれている場合でも、印刷順序通りに印刷データへの変換処理を行う場合と比較して、印刷ジョブを印刷データに変換する際の処理時間を短縮することが可能な印刷システムを提供することができる。
【0019】
請求項6に係る本発明によれば、印刷待ちの複数の印刷ジョブ内に頁数が少ない印刷ジョブが含まれている場合でも、印刷順序通りに印刷データへの変換処理を行う場合と比較して、印刷ジョブを印刷データに変換する際の処理時間を短縮することが可能なプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態の印刷システムのシステム構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるコントローラ10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるコントローラ10の機能構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態の印刷システムにおける印刷データ変換処理装置31の動作を示すフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートにおけるステップS102における判定処理を詳細に説明するためのフローチャートである。
【図6】PDLの種類に基づいてしきい値αを設定する場合の一例を示す図である。
【図7】印刷ジョブ格納部42に格納されている印刷待ちの印刷ジョブの一例を示す図である。
【図8】ショートジョブであると判定された印刷ジョブA、C、Dをコントローラボード472、473にそれぞれ割り当てた際の様子を説明するための図である。
【図9】ロングジョブであると判定された印刷ジョブBをコントローラボード471〜474に割り当てた際の様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態の印刷システムの構成の一例を示す図である。この印刷システムは、図1に示されるように、前処理装置3と、バッファ装置4と、連続紙に対して印刷を行う印刷装置1と、バッファ装置5と、後処理装置6と、コントローラ10と、端末装置20とから構成されている。
【0022】
前処理装置3は、印刷されていない連続紙の送り出し等の前処理を行う。後処理装置6は、印刷が終了した連続紙の巻き取り等の後処理を行う。バッファ装置4、5は、前処理装置3と印刷装置1との間および、印刷装置1と後処理装置6との間の連続紙のテンションの保持等のために設けられている。
【0023】
端末装置20は、印刷ジョブ(印刷指示)を生成してネットワーク30経由にてコントローラ10に対して送信する。コントローラ10は、端末装置20から送信されてきた印刷ジョブに基づいて印刷装置1の印刷動作を制御する印刷制御装置として機能する。印刷装置1は、コントローラ10による制御に基づいて印刷ジョブに応じた画像を連続紙上に出力する。
【0024】
次に、上記で説明したコントローラ10のハードウェア構成を図2のブロック図を参照して説明する。
【0025】
本実施形態のコントローラ10は、図2に示されるように、印刷データ変換処理装置31と、出力動作制御装置32とから構成されている。
【0026】
印刷データ変換処理装置31は、端末装置20から受信した印刷ジョブを、ビットマップイメージのようなラスタイメージ等からなる印刷データに変換する。出力動作制御装置32は、印刷データ変換処理装置31により変換された印刷データに基づいて印刷装置1を制御して印刷処理を実行する。
【0027】
そして、印刷データ変換処理装置31は、メイン制御部71と、4つのコントローラボード471〜474とから構成されている。なお、ここではコントローラボードの数が4の場合を用いて説明するが、コントローラボードの数は4に限定されるものではない。
【0028】
メイン制御部71およびコントローラボード471〜474は、それぞれ、CPU11、メモリ12、ハードディスクドライブ(HDD)等の記憶装置13、ネットワークを介してデータの送受信を行う通信インタフェース(I/F)14を有する。これらの構成要素は、制御バス16を介して互いに接続されている。なお、図2では、メイン制御部71およびコントローラボード471〜474は単一のCPU11により動作するものとして示しているが、複数のCPUにより動作するマルチCPU構成とするようにしてもよい。
【0029】
CPU11は、メモリ12または記憶装置13に格納された制御プログラムに基づいて所定の処理を実行して、メイン制御部71やコントローラボート471〜474の動作をそれぞれ制御する。なお、本実施形態では、CPU11は、メモリ12または記憶装置13内に格納された制御プログラムを読み出して実行するものとして説明したが、当該プログラムをCD−ROM等の記憶媒体に格納してCPU11に提供することも可能である。
【0030】
図3は、上記の制御プログラムが実行されることにより実現されるコントローラ10の機能構成を示すブロック図である。
【0031】
図3を参照すると、メイン制御部71は、印刷ジョブ受信部41と、印刷ジョブ格納部42と、印刷ジョブ属性検出部43と、印刷ジョブ選択部44と、印刷ジョブ割当制御部45と、印刷データ変換制御部46とから構成されている。そして、コントローラボード(印刷データ変換ユニット)471〜474は、それぞれ、コントローラボード制御部61と、複数のRIP(Raster Image Processing)モジュール62とから構成されている。
【0032】
印刷ジョブ受信部41は、PDL(Page Description Language:ページ記述言語)で記述された印刷ジョブを端末装置20から受信して、印刷ジョブ格納部42に格納させる。印刷ジョブ格納部42は、印刷ジョブ受信部41により受信された印刷待ちの印刷ジョブを格納する。ここで、PDLとは、印刷ジョブ中において印刷内容を記述するための言語である。
【0033】
印刷ジョブ属性検出部43は、印刷ジョブ格納部42に格納されている印刷待ちの印刷ジョブの属性情報(ページ数、記述されているPDLの種類等の情報)を検出する。
【0034】
印刷ジョブ選択部44は、印刷ジョブのページ数とPDLの種類およびコントローラボード構成情報に基づいて、印刷対象とする印刷ジョブを決定する。ここで、コントローラボード構成情報とは、コントローラボード471〜474の数や、各コントローラボード471〜474上で動作可能なPDLの種類毎のRIPモジュール62の数等の情報である。
【0035】
印刷ジョブ割当制御部45は、印刷ジョブ選択部44により選択された印刷ジョブを、コントローラボード471〜474のいずれに割り当てるのかを決定する。
【0036】
印刷データ変換制御部46は、印刷ジョブ割当制御部45において決定された割り当て結果に基づいて、印刷ジョブ格納部42に格納されている印刷ジョブをコントローラボード471〜474に転送して印刷データへの変換処理を実行する。
【0037】
印刷データ変換制御部46は、先ず、印刷ジョブの印刷データへの変換先立ち、各コントローラボード471〜474に対して起動すべきRIPモジュール62のPDLの種類を指定する。そして、印刷データ変換制御部46は、印刷データへの変換処理を実行する際には、各コントローラボード471〜474に対して、印刷データへの変換処理を実行すべき印刷ジョブをページ単位で割り当てる。
【0038】
コントローラボード471〜474は、それぞれ、印刷ジョブに基づいて描画処理を行って印刷データを生成する複数のRIPモジュール(描画処理手段)を起動可能な変換ユニットである。コントローラボード471〜474は、それぞれ、印刷データへの変換処理を指示されると、コントローラボード制御部61の制御に基づいて、変換処理を行う印刷ジョブのPDL種別に応じたRIPモジュール62を起動する。
【0039】
そして、1つのコントローラボードにおいて起動可能なRIPモジュール62の数には上限があり、この上限は処理しようとする印刷ジョブが記述されているPDLの種類によって変わってくる。例えば、PDLの種類としては、ポストスクリプト(PostScript)、PDF(Portable Document Format)、PCL(Printer Control Language)等の様々な種類が存在する。そして、印刷ジョブが記述されているPDLの種類を処理するための処理負荷が大きいほど、起動可能なRIPモジュール62の数は少なくなる。なお、ここでは印刷指示を何等かのフォーマットに基づいて記述するものはPDLとして扱う。
【0040】
印刷ジョブ選択部44は、印刷データへの変換処理を行う印刷ジョブを選択する際に、印刷ジョブのページ数(頁数)が、設定されたしきい値より多いか否かを判定する。
【0041】
そして、印刷ジョブ割当部45は、印刷ジョブ選択部44によりページ数が設定されたしきい値以下であると判定された印刷ジョブ(以下、ショートジョブと称する場合がある。)を、4つのコントローラボード471〜474のうちの1つに割り当てる。
【0042】
そして、ページ数がしきい値以下の印刷ジョブが1つのコントローラボートに割り当てられた場合、印刷ジョブ選択部44は、印刷ジョブ格納部42に格納されている後続の印刷ジョブの中からページ数がしきい値以下である印刷ジョブを選択する。
【0043】
すると、印刷ジョブ割当制御部45は、印刷ジョブ選択部44により選択された印刷ジョブを、既に他の印刷ジョブを割り当てたコントローラボード以外のコントローラボードに割り当てる。例えば、ある印刷ジョブが既にコントローラボード471に対して割り当てられている場合、印刷ジョブ割当制御部45は、後続の印刷ジョブの中から選択された印刷ジョブをコントローラボード472に割り当てる。
【0044】
また、印刷ジョブ割当部45は、印刷ジョブ選択部44によりページ数が設定されたしきい値より大きい判定された印刷ジョブ(以下、ロングジョブと称する場合がある。)を、4つのコントローラボード471〜474の全てに割り当て、4つのコントローラボード471〜474による並列処理が行われるようにする。
【0045】
なお、印刷ジョブ選択部44は、印刷ジョブ格納部42に格納されている印刷ジョブがショートジョブであるかロングジョブであるかを判定するためのしきい値とするページ数として一定の値を用いてもよいし、このしきい値とするページ数を印刷ジョブの種類毎に変更するようにしてもよい。
【0046】
さらに、本実施形態では、印刷ジョブ割当部45が、ページ数が設定されたしきい値以下であると判定された印刷ジョブ(ショートジョブ)を4つのコントローラボード471〜474のうちの1つに割り当てるものとして説明しているが、4つのコントローラボード471〜474のうちの一部のコントローラボードに割り当てるようにしても良い。例えば、ショートジョブと判定された印刷ジョブを、コントローラボード471、472という2つのコントローラボードに割り当てるようにしてもよい。
【0047】
出力動作制御装置32は、印刷データ変換処理装置31から受信したページ単位の印刷データを、ページ番号により管理して、ページ順で印刷装置1に転送する。
【0048】
出力動作制御装置32は、ページ制御部51と、プリンタエンジン制御部52とから構成されている。ページ制御部51は、印刷データ変換処理装置31から受信したページ単位の印刷データを、各印刷データ毎にページ順に並べ替える処理を行う。プリンタエンジン制御部52は、ページ制御部51によりページ順に並び替えられた印刷データに基づいて印刷装置1を制御して印刷処理を実行する。
【0049】
この出力動作制御装置32により制御により、印刷装置1は、4つのコントローラボード471〜474により変換された印刷データに基づいて画像を出力する画像出力手段として機能する。
【0050】
次に、本実施形態の印刷システムにおける印刷データ変換処理装置31の動作を図4のフローチャートを参照して説明する。
【0051】
端末装置20から送信されてきた印刷ジョブが印刷ジョブ受信部41により受信されて印刷ジョブ格納部42に格納されると、印刷ジョブ属性検出部43は、格納されている印刷ジョブのうち印刷待ち順位が最先の印刷ジョブの属性情報を検出して確認する(ステップS101)。
【0052】
すると、印刷ジョブ選択部44では、その印刷順位が最先の印刷ジョブがロングジョブであるか否かが判定される(ステップS102)。ステップS102において印刷順位が最先の印刷ジョブがロングジョブであると判定された場合、印刷ジョブ割当制御部45は、そのロングジョブを4つのコントローラボード471〜474により各ページを並列処理するよう割り当てる(ステップS103)。
【0053】
ステップS102において印刷順位が最先の印刷ジョブがショートジョブであると判定された場合、印刷ジョブ選択部44は、印刷ジョブ格納部42に蓄積されている印刷ジョブ中にショートジョブがあるか否かを判定する(ステップS104)。蓄積されている印刷ジョブ中にショートジョブがない場合、印刷ジョブ割当制御部45は、印刷ジョブの割り当て処理を終了する。
【0054】
そして、ステップS104において蓄積されている印刷ジョブ中にショートジョブが存在すると判定された場合、印刷ジョブ割当制御部45は、そのショートジョブを、コントローラボード471〜474のうちのまだ印刷ジョブが割り当てられていないコントローラボードに対して割り当てる(ステップS106)。
【0055】
そして、コントローラボード471〜474のうちに空きのコントローラボードがある場合(ステップS107においてyes)、ステップS105、S106の処理が繰り返され、蓄積されている印刷ジョブのうちのショートジョブが空きのコントローラボードに順次割り当てられる。
【0056】
最後に、コントローラボード471〜474のうちに空きのコントローラボードがなくなると(ステップS107においてNo)、処理は終了する。
【0057】
次に、図4のフローチャートにおけるステップS102における判定処理を図5のフローチャートを参照して詳細に説明する。ここでは、印刷ジョブが記述されているPDLの種類に基づいて、ロングジョブであるかショートジョブであるかを判定するためのしきい値を変える場合を用いて説明する。
【0058】
先ず、印刷ジョブ選択部44は、ある印刷ジョブの判定を行う際に、印刷ジョブ属性検出部43により検出された印刷ジョブ属性情報に基づいて、その印刷ジョブに対するしきい値αを設定する(ステップS201)。例えば、図6に示すように、PDLの種類毎に異なるしきい値αを設定する。
【0059】
そして、印刷ジョブ選択部44では、判定対象の印刷ジョブのページ数が設定したしきい値αより大きいか否かに基づいて、その印刷ジョブがロングジョブであるかショートジョブであるかを判定する(ステップS202〜S204)。
【0060】
この図6に示した例では、印刷ジョブ選択部44は、ポストスクリプトで記述された印刷ジョブについては、ページ数が8以下であればショートジョブであると判定し、ページ数が9以上の場合にはロングジョブであると判定する。また、印刷ジョブ選択部44は、PDFで記述された印刷ジョブについては、ページ数が12以下であればショートジョブであると判定し、ページ数が13以上の場合にはロングジョブであると判定する。そして、印刷ジョブ選択部44は、PCLで記述された印刷ジョブについては、ページ数が16以下であればショートジョブであると判定し、ページ数が17以上の場合にはロングジョブであると判定する。
【0061】
このようにPDLの種類に応じてしきい値とするページ数が変更されているのは、処理負荷が大きいPDLの印刷ジョブを印刷データに変換する際には、起動可能なRIPモジュール62の数が少なくなるためである。
【0062】
例えば、PCLにより記述された印刷ジョブを印刷データに変換する際には、1つのコントローラボードにおいて4つのRIPモジュール62を起動可能な場合でも、より処理負荷が大きいポストスクリプトにより記述された印刷ジョブを印刷データに変換する際には、1つのコントローラボードにおいて2つのRIPモジュール62しか起動できない。そのため、本実施形態では、PDLの種類に応じてしきい値αを変化させているのである。
【0063】
次に、具体的な印刷ジョブの例を用いて本実施形態における印刷データ変換処理装置31の動作を説明する。例えば、印刷ジョブ格納部42には、図7に示すような印刷ジョブが蓄積されているものとする。
【0064】
このような場合、先ず、印刷ジョブ選択部44は、印刷順位が第1位の印刷ジョブAがロングジョブであるのかショートジョブであるのかを判定する。ここでは、印刷ジョブAのPDLの種類がポストスクリプトであるため、しきい値αは8ページである。そのため、ページ数が5ページの印刷ジョブAは、ショートジョブであると判定される。そのため、印刷ジョブ割当制御部45は、この印刷ジョブAをコントローラボード471に割り当てたものとする。
【0065】
次に、印刷ジョブ選択部44は、後続の印刷ジョブB〜Dの中からショートジョブを探して選択する。ここでは、印刷ジョブBはロングジョブであるため、印刷ジョブC、Dがショートジョブであると判定されて選択されたものとする。そのため、印刷ジョブ割当制御部45は、この印刷ジョブCをコントローラボード472に割り当て、この印刷ジョブDをコントローラボード473に割り当てたものとする。
【0066】
このような割り当て処理が行われた後、印刷データ変換制御部46は、図8に示すように、印刷ジョブAの各ページを順次コントローラボード471に転送し、印刷ジョブCの各ページを順次コントローラボード472に転送し、印刷ジョブDの各ページを順次コントローラボード473に転送する。そのため、ショートジョブであると判定された印刷ジョブA、C、Dの各ページは、コントローラボード471〜473の各RIPモジュール62によりそれぞれ並列処理されて印刷データに変換される。
【0067】
次に、ロングジョブであると判定された印刷ジョブBをコントローラボード471〜474に割り当てる際の様子を図9に示す。
【0068】
ロングジョブであると判定された印刷ジョブBは、印刷ジョブ割当制御部45により、4つのコントローラボード471〜474に対して割当てられる。そのため、印刷データ変換制御部46は、印刷ジョブBの各ページを順次コントローラボード471〜474に転送する。図9に示した例では、1ページ目がコントローラボード471に転送され、2ページ目がコントローラボード472に転送され、3、4ページ目がコントローラボード473、473に転送されている。そして、5ページ目以降も同様にコントローラボード471〜474に順次各ページ単位で転送されている。つまり、ロングジョブである印刷ジョブBは、4つのコントローラボード471〜474全てにより並列処理が行われることになる。
【0069】
[変形例]
上記実施形態では、連続紙に印刷を行う印刷システムに対して本願発明を適用する場合を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、予め一定サイズ毎に切断された印刷用紙であるいわゆるカット紙に印刷を行う印刷システムに対しても同様に本発明を適用することができるものである。
【符号の説明】
【0070】
1 印刷装置
3 前処理装置
4、5 バッファ装置
6 後処理装置
10 画像形成装置
11 CPU
12 メモリ
13 記憶装置
14 通信インタフェース(IF)
16 制御バス
20 端末装置
30 ネットワーク
31 印刷データ変換処理装置
32 出力動作制御装置
41 印刷ジョブ受信部
42 印刷ジョブ格納部
43 印刷ジョブ属性検出部
44 印刷ジョブ選択部
45 印刷ジョブ割当制御部
46 印刷データ変換制御部
51 ページ制御部
52 プリンタエンジン制御部
61 コントローラボード制御部
62 RIPモジュール
51 ページ制御部
52 プリンタエンジン制御部
471〜474 コントローラボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷指示に基づいて描画処理を行って印刷データを生成する複数の描画処理手段を起動可能な複数の変換ユニットと、
印刷待ちの印刷指示を格納する格納手段と、
印刷指示の頁数が、設定されたしきい値より多いか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により頁数が設定されたしきい値以下であると判定された印刷指示を、前記複数の変換ユニットのうちの一部の変換ユニットに割り当てる割当手段と、
前記割当手段が、頁数がしきい値以下の印刷指示を前記複数の変換ユニットのうちの一部の変換ユニットに割り当てた場合、前記格納手段において格納されている後続の印刷指示の中から頁数がしきい値以下である印刷指示を選択する選択手段とを備え、
前記割当手段は、前記選択手段により選択された印刷指示を、既に他の印刷指示を割り当てた変換ユニット以外の他の変換ユニットに割り当てる印刷制御装置。
【請求項2】
前記判定手段は、印刷指示中において印刷内容を記述するための言語である頁記述言語の種類に基づいて、前記各印刷指示毎に前記しきい値を変更する請求項1記載の印刷制御装置。
【請求項3】
前記割当手段は、前記判定手段により頁数が設定されたしきい値以下であると判定された印刷指示を、前記複数の変換ユニットのうちの1つの変換ユニットに対して割り当てる請求項1または2記載の印刷制御装置。
【請求項4】
前記割当手段は、前記判定手段により頁数が設定されたしきい値より大きいと判定された印刷指示を、前記複数の変換ユニットの全てに対して割り当てる請求項1から3のいずれか1項記載の印刷制御装置。
【請求項5】
印刷指示に基づいて描画処理を行って印刷データを生成する複数の描画処理手段を起動可能な複数の変換ユニットと、
印刷待ちの印刷指示を格納する格納手段と、
印刷指示の頁数が、設定されたしきい値より多いか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により頁数が設定されたしきい値以下であると判定された印刷指示を、前記複数の変換ユニットのうちの一部の変換ユニットに割り当てる割当手段と、
前記割当手段が、頁数がしきい値以下の印刷指示を前記複数の変換ユニットのうちの一部の変換ユニットに割り当てた場合、前記格納手段において格納されている後続の印刷指示の中から頁数がしきい値以下である印刷指示を選択する選択手段と、
前記複数の変換ユニットにより変換された印刷データに基づいて画像を出力する画像出力手段とを備え、
前記割当手段は、前記選択手段により選択された印刷指示を、既に他の印刷指示を割り当てた変換ユニット以外の他の変換ユニットに割り当てる印刷システム。
【請求項6】
印刷待ちの印刷指示の頁数が、設定されたしきい値より多いか否かを判定するステップと、
頁数が設定されたしきい値以下であると判定された印刷指示を、印刷指示に基づいて描画処理を行って印刷データを生成する複数の描画処理手段を起動可能な複数の変換ユニットのうちの一部の変換ユニットに割り当てるステップと、
頁数がしきい値以下の印刷指示を前記複数の変換ユニットのうちの一部の変換ユニットに割り当てた場合、格納されている後続の印刷指示の中から頁数がしきい値以下である印刷指示を選択するステップと、
選択された頁数がしきい値以下である印刷指示を、既に他の印刷指示を割り当てた変換ユニット以外の他の変換ユニットに割り当てるステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−59093(P2012−59093A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202642(P2010−202642)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】