説明

印刷制御装置および印刷システム

【課題】処理中のデータを印刷するために先行して印刷装置に出力する場合、印刷装置でのデータの処理が無駄にならないようにして、印刷時間を短縮する。
【解決手段】情報処理装置2において、印刷制御装置は、アプリケーションソフトが処理しているデータが変更可能か否かを判別する。変更不可能なデータであるとき、印刷制御装置は、印刷の指示を行う前に、データを印刷装置1に出力する。印刷可能なデータであるとき、印刷制御装置は、印刷要求があるまで、データを印刷装置1に出力しない。印刷装置1は、受け取ったデータに対して印刷処理を行う。ユーザが印刷要求の操作を行うと、印刷制御装置は、印刷開始を印刷装置に指示する。印刷装置1は、印刷処理されたデータを画像として印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザからの印刷要求を受けて、印刷装置にデータを出力して印刷を要求する印刷制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン等の情報処理装置に搭載される印刷制御装置はプリンタドライバによって動作する。プリンタドライバは、ユーザが使用しているアプリケーションソフトにおいて印刷の指示がされることにより呼び出される。そして、印刷制御装置は、アプリケーションソフトが処理したデータをPDLによる印刷データに変換し、プリンタ等の印刷装置に出力する。
【0003】
印刷装置は、印刷データを受け取ると、印刷データにレンダリング処理を行って、ラスタイメージデータに変換し、印刷情報にしたがって印刷を開始する。
【0004】
上記のように、ユーザが印刷の要求を行ってから、レンダリング処理等の印刷のための印刷処理が開始される。データの容量が大きいといったような場合、印刷処理に時間がかかる。そのため、印刷開始の指示が行われてから記録シートに印刷して出力するまでの時間が長くなる。
【0005】
そこで、特許文献1では、アプリケーションソフトの文書操作中に操作情報を取得して、操作情報に基づいて予め印刷データを作成する。これによって、印刷指示が行われる前に、データのレンダリング処理を終えることができ、印刷に要する時間を短縮できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−100356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、印刷開始の指示は、アプリケーションソフトによるデータの処理が完了した後に行われる。しかし、印刷開始の指示前にデータが変更された場合、すでに印刷処理されたデータは、印刷したいデータとは異なる。印刷処理後のデータはラスタイメージデータであるので、一部のみを修正することは困難である。したがって、変更されたデータに対しては、印刷装置は、再度印刷処理を行わなければならず、予め行われた印刷処理が無駄なものとなる。そのため、もう一度印刷処理を行うことにより、印刷に要する時間が長くなってしまうとともに、予め印刷処理されたデータを記憶しておくため、印刷装置のメモリ等の資源が無駄に占有され、処理効率の低下や消費電力の増大を招くという悪影響を及ぼす。
【0008】
本発明は、上記に鑑み、無駄な処理をなくしながら、印刷を効率よく行えるようにする印刷制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、入力されたデータを印刷する印刷装置に印刷を要求する印刷制御装置であって、印刷装置にデータを出力して、印刷の指示を行う出力部と、処理中のデータが変更可能か否かを判別する判別部とを備えたものである。
【0010】
出力部は、処理中のデータが変更不可能なデータであるとき、印刷を指示する前に、処理中のデータを印刷装置に出力する。また、出力部は、処理中のデータが変更可能なデータであるとき、印刷開始を印刷装置に指示して、データを印刷装置に出力する。
【0011】
変更不可能なデータの場合、処理中のデータと印刷したいデータとは同じものである。印刷要求がある前に、データを印刷装置に出力しても、データは変更されることはないので、予め印刷処理を行っても差し支えない。そして、印刷装置がデータを出力した後に、印刷要求があると、印刷制御装置の出力部は、印刷装置に印刷開始を指示する。印刷装置は、予め入力されていたデータに対する印刷を行う。したがって、印刷指示が行われてから印刷が完了するまでの時間が短くなる。
【0012】
変更可能なデータの場合、処理中のデータと印刷したいデータとが異なることがある。データに対する処理が終了すると、印刷したいデータが完成し、印刷が要求される。そこで、出力部は、印刷要求があってからデータを印刷装置に出力して、印刷開始を指示する。印刷装置は、受け取ったデータに印刷処理を施してから、印刷を行う。
【0013】
判別部は、データのファイル属性、データのファイル形式、データを処理するアプリケーションソフトの種別に基づいて判別する。これらの判断条件のうち、いずれか1つの判断条件から変更不可能なデータであると判断されると、データは印刷に先立って印刷装置に出力される。
【0014】
上記の印刷制御装置と、入力されたデータを印刷する印刷装置とによって印刷システムが形成される。なお、印刷制御装置はプリンタドライバによって動作するものである。
【0015】
印刷制御装置の出力部は、処理中のデータが変更不可能なデータであるとき、印刷を指示する前に、処理中のデータを印刷装置に出力し、印刷装置は、入力されたデータに対する印刷処理を行い、印刷制御装置の出力部は、印刷の要求を受けると、印刷装置に印刷開始を指示し、印刷装置は、印刷処理したデータの印刷を行う。そして、印刷装置は、印刷制御装置から印刷開始の指示がないとき、印刷処理したデータを削除する。
【0016】
印刷制御装置の出力部は、処理中のデータが変更可能なデータであるとき、印刷開始を印刷装置に指示して、データを印刷装置に出力し、印刷装置は、印刷開始の指示を受けると、入力されたデータに対する印刷処理を行い、印刷処理したデータの印刷を行う。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、処理中のデータが変更不可能なデータである場合、バックグラウンドで印刷装置へのデータ送信およびデータに対する印刷処理が行われる。したがって、印刷開始を指示してから印刷が完了するまでの見かけ上の印刷に要する時間を短くすることができる。また、変更可能なデータに対しては、印刷開始の指示に先立ってデータを印刷装置に出力することはしないので、印刷処理をやり直すといったような無駄な処理が行われることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の印刷システムの概略構成を示す図
【図2】印刷制御装置を備えた情報処理装置および印刷装置の概略構成を示すブロック図
【図3】通常処理の場合における印刷完了までの印刷システムの動作を示す図
【図4】処理中のデータを印刷するときのフローチャート
【図5】事前にデータを送信する場合における印刷完了までの印刷システムの動作を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態の印刷システムを図1に示す。印刷システムは、印刷を行う印刷装置1と印刷装置1に印刷を要求する情報処理装置2とを通信可能に接続して形成される。印刷装置1と複数の情報処理装置2とがLAN等のネットワークによって接続される。ネットワークは、インターネットに接続され、情報処理装置2は、外部の情報処理装置とも通信を行える。なお、印刷装置1が情報処理装置2にローカル接続されていてもよい。このとき、印刷装置1を共有する設定にしておけば、複数の情報処理装置2が印刷装置1を利用できる。
【0020】
印刷装置1は、例えば複合機とされ、図2に示すように、記録シートに画像を印刷する印刷部10、印刷するために入力されたデータに対する印刷処理を行う処理部11、データを記憶する記憶部12、情報処理装置2と通信を行う通信部13、装置全体の動作を制御する制御部14を有する。なお、印刷装置1は、情報処理装置2から出力されたデータを印刷するだけでなく、コピー、ファクシミリ通信、データ通信も行う。
【0021】
情報処理装置2は、キーボード、マウス等の入力部20、ディスプレイを有する表示部21、HDD、SSD、メモリ等の記憶部23、ネットワークを通じてデータの送受信を行う通信部24、CPU、ROM、RAMを有する制御部25を備えた一般的なパソコンやサーバとされる。情報処理装置2には、アプリケーションソフトがインストールされており、制御部25は、アプリケーションソフトにしたがって各種処理を実行する。例えば文書作成ソフトは、文書データを作成し、画像処理ソフトは、画像データを作成する。閲覧ソフトは、インターネットを通じて画像データを取得して表示したり、記憶部23から読み出した画像データを表示する。
【0022】
これらのデータが印刷装置1に出力されると、印刷装置1は、データを印刷して出力する。そこで、情報処理装置2は、図2に示すように、印刷装置1を制御するための印刷制御装置26を備えている。印刷制御装置26は、印刷装置1に印刷を実行させるプリンタドライバによって動作する。プリンタドライバは、制御部25の命令によって起動し、印刷制御装置26を動作させる。
【0023】
印刷制御装置26は、印刷装置1にデータを出力して、印刷の指示を行う出力部27を有している。出力部27は、印刷対象のデータを印刷データに変換して、ユーザにより入力された印刷情報とともに印刷データを印刷装置1に出力する。
【0024】
ユーザの操作により、制御部25は、アプリケーションソフトを立ち上げ、アプリケーションソフトはデータを処理する。ここで、図3に示すように、ユーザが印刷要求の操作を行うと、アプリケーションソフトを通じた制御部25の命令により印刷制御装置26が動作を開始する。出力部27は、アプリケーションソフトによって処理されたデータを印刷データに変換して印刷装置1に通信部24を通じて送信するとともに、2in1、給紙トレイなどの印刷情報をPJLコマンドを用いて印刷装置1に送信して、印刷開始を指示する。このように通常、印刷データを送信することと印刷開始の指示とは、同時に行われる。
【0025】
印刷装置1は、受け取った印刷データおよび印刷情報にしたがって印刷を開始する。制御部14は、情報処理装置2からの印刷データの受信を完了すると、処理部11を動作させる。処理部11が、印刷データをラスタイメージデータに変換するレンダリング処理(RIP処理)等の印刷処理を行う。制御部14は、印刷処理によって作成された画像データを記憶部12に一時的に保存する。印刷処理が完了すると、制御部14は、印刷情報に基づいて印刷条件を設定して、印刷部10を動作させる。印刷部10は、画像データを画像として記録シートに印刷する。
【0026】
本情報処理装置2では、印刷に要する時間を短縮するために、アプリケーションソフトが処理しているデータを予め印刷装置1に出力する。印刷装置1は、受け取ったデータに対して印刷処理を行う。このとき、印刷装置1が無駄な印刷処理を行わないようにするために、印刷制御装置26は、アプリケーションソフトによる処理中のデータが変更可能か否かを判別する判別部28を有する。
【0027】
判別部28は、処理中のデータが変更不可能なデータであると判断したとき、処理中のデータを先行して印刷装置1に出力することを許可する。処理中のデータが変更可能なデータであるとき、処理中のデータを先行して印刷装置1に出力することを禁止する。変更不可能なデータは、データに対する処理が終了しても、処理の前後においてデータは変わらない。そのため、印刷制御装置26がデータを先行して出力しても、印刷装置1は、印刷処理を済ましておくことができる。一方、変更可能なデータは、データに対する処理が終了すると、処理の前後においてデータは変わる。印刷制御装置26がデータを先行して出力したとき、印刷装置1が印刷処理を行うと、その後変更されたデータに対する印刷指示が送信されると、先に行った印刷処理が無駄になってしまう。そのため、処理中のデータが変更可能なデータであるとき、処理中のデータを先行して印刷装置1に出力することが禁止される。
【0028】
判別部28は、データのファイル属性、データのファイル形式およびアプリケーションソフトの種別といった判断条件に基づいて、データの変更の可否を判別する。データのファイル属性において、ファイルのプロパティの属性がread onlyあるいは変更禁止であれば、データは変更不可能と判断され、これ以外であれば、データは変更可能と判断される。データのファイル形式において、ファイルの拡張子に基づいて変更の可否が判断される。例えばPDFファイルであれば、データは変更不可能と判断され、これ以外であれば、データは変更可能と判断される。アプリケーションの種別において、データを表示しているアプリケーションソフトがブラウザ、ビュワーのような閲覧ソフトであれば、データは変更不可能と判断され、これ以外であれば、データは変更可能と判断される。
【0029】
図4、5に示すように、ユーザの操作に応じて、アプリケーションソフトがデータの処理を開始すると、印刷制御装置26の判別部28は、制御部25からの命令によって動作を開始する。判別部28は、アプリケーションソフトによって開かれたファイルの変更の可否を判別する(S1)。
【0030】
判別部28が、ファイルのデータを変更できると判断したとき、出力部27は、印刷装置へのデータの出力を中止し、制御部25は、通常の処理を行う(S2)。すなわち、ユーザが印刷要求の操作を行ったとき、図3に示すように、印刷制御装置26は、印刷データを印刷装置1に出力する。印刷装置1は、受け取った印刷データの印刷処理を行って、情報処理装置2において印刷要求の操作が行われた時点のデータに基づく画像を印刷する。
【0031】
判別部28が、ファイルのデータを変更できないと判断したとき、出力部27は、表示中のデータを印刷データに変換して、印刷データを通信部24を通じて印刷装置1に事前に送信する(S3)。
【0032】
印刷装置1は、印刷データの受信を完了すると、処理部11が受信したデータに印刷処理を施して画像データを作成し、画像データを記憶部12に一時的に保存する。印刷装置1は、印刷制御装置26からの印刷開始の指示を待ち受ける(S4)。
【0033】
その後、ユーザが印刷情報を設定して、印刷を要求すると、印刷制御装置26は、印刷装置1に印刷情報を通信部24を通じて送信し、印刷開始を指示する。
【0034】
印刷装置1は、印刷情報を受け取ると、制御部14は、印刷条件を設定して、印刷部10に印刷開始を命令する。印刷部10は、印刷条件にしたがって画像データを画像として印刷して出力する(S5)。
【0035】
ところで、データが印刷装置1に先行して出力されたが、ユーザが印刷要求をしない場合がある。すなわち、制御部25は、ファイルが閉じられたことを検知する(S6)と、印刷の中止を印刷制御装置26に指示する。出力部27は、印刷中止を印刷装置1に通知する。印刷装置1の制御部14は、記憶部12に保存している画像データ削除する(S7)。
【0036】
このように、アプリケーションソフトによって処理中のデータが変更不可能なデータである場合、ユーザの印刷要求を待たずに、データを事前に印刷装置1に出力して、データに対する印刷処理を予め行うことにより、ユーザが印刷要求を行ってから印刷が終了するまでの時間を通常の印刷に比べて、大幅に短縮することができる。すなわち、データの送信および印刷装置1での処理がバックグラウンドで実行されるため、送信時間や処理時間が隠蔽されることになり、見かけ上の印刷に要する時間を短縮できる。
【0037】
しかも、データを先行して送信するとき、変更される可能性のあるデータを送信しないので、データが変更されたときに発生する無駄な印刷処理をなくすことができ、処理効率の低下を防ぎ、印刷装置1のメモリ等の資源を必要以上に使用しなくてすむ。
【0038】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。上記では、印刷装置がデータに印刷処理を行っているが、印刷制御装置が、データを印刷データに変換して、さらに印刷処理を行って、画像データを作成してもよい。出力部は、処理中のデータが変更できないデータであるとき、画像データを印刷装置に出力する。印刷装置は、受け取った画像データを記憶部に保存する。そして、印刷制御装置から印刷開始の指示があると、印刷装置は、画像データに対する印刷を行う。
【符号の説明】
【0039】
1 印刷装置
2 情報処理装置
10 印刷部
11 処理部
12 記憶部
14 制御部
25 制御部
26 印刷制御装置
27 出力部
28 判別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたデータを印刷する印刷装置に印刷を要求する印刷制御装置であって、印刷装置にデータを出力して、印刷の指示を行う出力部と、処理中のデータが変更可能か否かを判別する判別部とを備え、出力部は、処理中のデータが変更不可能なデータであるとき、印刷を指示する前に、処理中のデータを印刷装置に出力することを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
出力部は、処理中のデータが変更可能なデータであるとき、印刷開始を印刷装置に指示して、データを印刷装置に出力することを特徴とする請求項1記載の印刷制御装置。
【請求項3】
判別部は、データのファイル属性に基づいて判別することを特徴とする請求項1記載の印刷制御装置。
【請求項4】
判別部は、データのファイル形式に基づいて判別することを特徴とする請求項1記載の印刷制御装置。
【請求項5】
判別部は、データを処理するアプリケーションソフトの種別に基づいて判別することを特徴とする請求項1記載の印刷制御装置。
【請求項6】
入力されたデータを印刷する印刷装置と、印刷装置にデータを出力して印刷を要求する印刷制御装置とを備えた印刷システムであって、印刷制御装置は、印刷装置にデータを出力して、印刷の指示を行う出力部と、処理中のデータが変更可能か否かを判別する判別部とを備え、出力部は、処理中のデータが変更不可能なデータであるとき、印刷を指示する前に、処理中のデータを印刷装置に出力し、印刷装置は、入力されたデータに対する印刷処理を行い、印刷制御装置の出力部は、印刷の要求を受けると、印刷装置に印刷開始を指示し、印刷装置は、印刷処理したデータの印刷を行うことを特徴とする印刷システム。
【請求項7】
印刷制御装置の出力部は、処理中のデータが変更可能なデータであるとき、印刷開始を印刷装置に指示して、データを印刷装置に出力し、印刷装置は、印刷開始の指示を受けると、入力されたデータに対する印刷処理を行い、印刷処理したデータの印刷を行うことを特徴とする請求項6記載の印刷システム。
【請求項8】
印刷装置は、印刷制御装置から印刷開始の指示がないとき、印刷処理したデータを削除することを特徴とする請求項6または7記載の印刷システム。
【請求項9】
印刷制御装置はプリンタドライバによって動作することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−218325(P2010−218325A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65376(P2009−65376)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】