説明

印刷方法

【課題】ミスプリントによる用紙の無駄を無くす印刷方法に関し、特に判断が曖昧な場合にはプレビュー表示を行い、曖昧な箇所を表示し、積極的にユーザに注意を喚起し、ミスプリントによる用紙の無駄を無くす印刷方法を提案するものである。
【解決手段】ホスト機器のプリンタドライバによって、印刷データに基づく減法混色の描画データを生成して印刷装置に転送し、印刷出力を行う印刷方法において、上記描画データを生成する際、印刷領域からはみ出す印刷が行われる描画オブジェクトを検出する処理と、該検出処理に基づいて、上記描画オブジェクトが印刷領域からはみ出す可能性があると判断するとき、上記描画オブジェクトが印刷領域からはみ出す可能性のある位置を表示する表示処理と、該表示処理に基づく印刷指示に従った上記描画データの印刷処理、又は上記表示処理に基づく印刷非指示によって行う描画データの修正処理とを行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地球環境を考慮し、ミスプリントによる用紙の無駄を無くす印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、地球環境の保持が世界的に叫ばれ、地球温暖化防止会議を中心としてCO2(二酸化炭素)などの温室効果ガスの排出規制が実現化に向かっている。このような状況において、印刷装置においても、使用するトナー量の削減、用紙の削減技術の提案が行われており、特にミスプリントによる用紙の無駄は、トナーの浪費にも結びつき重要な問題である。
【0003】
従来、ミスプリントの回避技術としては、プレビュー表示による事前確認や、同色の印刷オブジェクトの重なり検出などがある。
【0004】
また、特許文献1はエラー印刷を未然に回避するための情報をユーザに提示する印刷制御装置の発明であり、例えばプリンタドライバが文書データについて印刷指示を受け付けると、同様の文書データに関する印刷失敗の履歴情報を抽出し、履歴がある場合にはユーザに履歴情報を提示して中止判断を委ね、エラー印刷を未然に回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−241609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ミスプリントにより用紙が無駄となる例は、文字のごく一部が印刷領域外にはみだしたり、逆にごく一部の印字が次の用紙にまたがっている場合もある。このような場合、プレビュー表示による事前確認では見つけることが困難である。また、プレビュー表示による事前確認や、同色の印刷オブジェクトの重なり検出では、判断が曖昧な場合には印刷出力してしまい、用紙の無駄を確実に防止することができない。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、判断が曖昧な場合、プレビュー表示を行い、曖昧な箇所を表示し、積極的にユーザに注意を喚起し、ミスプリントによる用紙の無駄を無くす印刷方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は第1の発明によれば、ホスト機器のプリンタドライバによって、印刷データに基づく描画データを生成して印刷装置に転送し、印刷出力を行う印刷方法において、前記描画データを生成する際、印刷領域からはみ出す印刷が行われる描画オブジェクトを検出する処理と、該検出処理に基づいて、前記描画オブジェクトが前記印刷領域からはみ出す可能性があると判断するとき、前記描画オブジェクトが前記印刷領域からはみ出す可能性のある位置を表示する表示処理と、該表示処理に基づく印刷指示に従った前記描画データの印刷処理、又は前記表示処理に基づく印刷非指示によって行う描画データの修正処理とを行う印刷方法を提供することによって達成できる。
【0009】
また、上記課題は第2の発明によれば、ホスト機器のプリンタドライバによって、印刷データに基づく描画データを生成して印刷装置に転送し、印刷出力を行う印刷方法において、印字領域の上下左右の端部にのみ印刷が行われる描画オブジェクトを検出する処理と、該検出処理に基づいて、前記描画オブジェクトが前記印刷領域からはみ出す可能性があると判断するとき、前記描画オブジェクトが前記印刷領域からはみ出す可能性のある位置を表示する表示処理と、該表示処理に基づく印刷指示に従った前記描画データの印刷処理、又は前記表示処理に基づく印刷非指示によって行う描画データの修正処理とを行う印刷方法を提供することによって達成できる。
【0010】
また、上記課題は第3の発明によれば、ホスト機器のプリンタドライバによって、印刷データに基づく描画データを生成して印刷装置に転送し、印刷出力を行う印刷方法において、1ページの印字ドット数が、所定の閾値よりも低いページを検出する処理と、該検出処理に基づいて、前記所定の閾値よりも低いページとなる可能性のあるページを表示する表示処理と、該表示処理に基づく印刷指示に従った前記描画データの印刷処理、又は前記表示処理に基づく印刷非指示によって行う描画データの修正処理とを行う印刷方法を提供することによって達成できる。
【0011】
また、上記課題は第4の発明によれば、前記描画オブジェクトが前記印刷領域からはみ出す可能性のある位置を表示する際、該位置を囲うマークの表示を行う印刷方法を提供することによって達成できる。
【0012】
また、上記課題は第5の発明によれば、前記マーク部分を拡大表示する印刷方法を提供することによって達成できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ごく一部の印字の欠け、1ページのごく一部のみの印字を確実に検知し、ミスプリントによる用紙の無駄、トナーの無駄を無くすことができる。また、ごく一部の印字の欠け、1ページのごく一部のみの印字の可能性のある場合、積極的にユーザに注意を喚起し、ミスプリントの発生を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】プリンタドライバの構成を示す図である。
【図2】本実施形態の印刷方法を説明する印刷システムの構成図である。
【図3】実施形態の処理動作を説明するフローチャートである。
【図4】(a)は、表示部に表示された描画データの一例を示す図であり、(b)は、同図(a)のa部を拡大表示した図であり、(c)は、同図(a)のb部を拡大表示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図2は、本実施形態の印刷方法を説明する印刷システムの構成図である。同図において、印刷装置1は、例えばLAN(local area network)を介してパーソナルコンピュータ(PC)に接続されている。また、パーソナルコンピュータ(PC)はアプリケーション2、プリンタドライバ3を有し、アプリケーション2によって印刷データを生成し、プリンタドライバ3に出力する。
【0016】
プリンタドライバ3には上記印刷データと共に、描画命令が入力し、描画命令に従ってRGBデータ(加法混色)をビットマップ形式の描画データに変換する。また、プリンタドライバ3は描画データに変換されたRGBデータを、所定の変換定数に従ってCMYKデータ(減法混色)の描画データに変換し、印刷装置1に出力する。
【0017】
図1は上記プリンタドライバ3の構成を示す図であり、アプリケーション2から転送された印刷データは、描画命令に従って先ずRGBの描画データとしてメモリ4に展開される。さらに、所定の変換定数に従ってCMYKデータ(減法混色)の描画データに変換され、メモリ5に展開される。その後、メモリ5に展開された描画データは印刷命令と共に印刷装置1に出力され、印刷装置1によって記録媒体に印刷出力される。
【0018】
尚、印刷装置1は不図示のコントローラ部、エンジン制御部等で構成され、パーソナルコンピュータ(PC)から送信されたCMYKの描画データに従って記録媒体への印刷出力を行う。
また、図2に示す表示部6はパーソナルコンピュータ(PC)のディスプレイであり、後述するプレビュー表示を行う。また、入力部7はキーボードであり、ユーザによる操作信号が入力し、例えば後述する拡大表示の指示や、描画データの修正指示が行われる。
【0019】
以上の構成において、以下に本例の処理動作を説明する。
図3は、本例の処理動作を説明するフローチャートである。先ず、アプリケーション2によって印刷データが作成され、描画命令が入力したか判断する(ステップ(以下、Sで示す)1)。ここで、印刷データが生成され、プリンタドライバ3に描画命令が入力すると(S1がYES)、プリンタドライバ3はRGBデータの描画処理を行い、描画データをメモリ4に展開する(S2)。
【0020】
次に、所定の変換定数を使用してRGBデータをCMYKデータに変換する(S3)。このとき、RGBの描画データを展開するメモリ4の描画領域と、CMYKの描画データを展開するメモリ5の描画領域は必ずしも一致しない。このため、CMYKデータに変換する際、描画データが描画領域から外れる可能性があるか判断する(S4)。
【0021】
この判断は、(1)描画オブジェクト(文字、グラフィック、イメージ)をCMYKの描画データに展開する際、描画領域をはみ出して、描画されない描画オブジェクトの発生、(2)描画オブジェクトが、上端、下端、左端、右端の印字禁止領域に密着(印字禁止領域に隣接する印刷領域のドットが描画対象になっている場合)の発生、(3)1ページの印字ドット数が、所定の閾値以下である(例えば 閾値:0.02%(100%をベタ印字とした場合))印字の発生、を確認する。
【0022】
そして、上記(1)〜(3)のいずも発生する可能性がない場合(S4がNO)、前述のメモリ5にCMYKの描画データを展開し、印刷装置1に対して描画データを転送し、印刷出力を行う(S5)。一方、(1)〜(3)のいずれか一つ、または複数発生する可能性がある場合(S4がYES)、表示部6にミスプリントの可能性がある旨の表示を行う(S6)。このような表示として、例えば「もしかしてミスプリント?」の表示を行う。
【0023】
次に、ミスプリントの可能性のある描画データを表示部6に表示する(S7)。図4(a)は、表示部6に表示された描画データの例を示す。この例は、文字データとグラフィック、及びイメージを含むものであり、文字データの一部(図4のa部)、及びグラフィックデータの一部(図4のb部)が描画領域Aから外れる可能性がある場合を示す。また、上記a部、b部は認識し易いように、□マークで囲んで表示する。
【0024】
次に、ユーザが拡大表示を望む場合(S8がYES)、入力部7を操作してマークで囲われた箇所を拡大表示する(S9)。例えば、図4(b)は同図(a)のa部を拡大表示した例であり、ユーザはこの表示を見て文書データのa部が描画領域Aから外れているか否かを正確に確認することができる。また、図4(c)は同図(a)のb部を拡大表示したものであり、ユーザはこの表示を見てグラッフィクデータのb部が描画領域Aから外れているか否かを正確に確認することができる。
【0025】
その後、描画オブジェクトが描画領域Aから外れていないと判断する場合、上記描画データを印刷装置1に転送し、印刷装置1に印刷処理を行わせる(S10がYES、S11)。一方、描画データが描画領域Aから外れていると判断する場合、印刷指示を行わない(S10がNO、S12)。
【0026】
以上のように処理することによって、プリンタドライバ3が自動的に微妙な文字欠けなどを検出し、問題があると判断するとき、その位置と問題の内容を提示することにより、ユーザはその位置を確認することができ、文字欠けがある印刷データの印刷出力を中止し、用紙やトナーの無駄を無くすことができる。
例えば、上記の場合、実際に印刷出力することなく、問題内容を提示し、修正作業に移行することができる。
【0027】
以上のように、本実施形態によればごく一部の印字の欠け、1ページに対するごく一部のみの印字を検知し、積極的にユーザに注意を喚起し、ミスプリントの発生を無くし、用紙の無駄、トナーの無駄を無くすことができる。
【0028】
また、ミスプリントの可能性がある場合、事前にプレビュー表示が行われるので、従来行っていた不用なプレビュー表示を行う必要がなく、快適に印刷処理を行うことができる。
【0029】
さらに、ミスプリントの原因となる箇所が、マークによって囲われて表示されるため、ミスプリントの原因となる箇所の識別が容易であり、更に拡大表示により印刷指示、又は印刷非指示の判断が容易である。また、文書等の訂正作業も容易となる。
尚、上記実施形態の説明では、文字欠け等の可能性のある位置を□マークで囲う表示としたが、□マークに限らず、○や△のマークで囲う表示としてもよく、更に□マーク等に色を付して表示する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1・・・プリンタ装置
2・・・アプリケーション
3・・・プリンタドライバ
4・・・メモリ
5・・・メモリ
6・・・表示部
7・・・入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト機器のプリンタドライバによって、印刷データに基づく描画データを生成して印刷装置に転送し、印刷出力を行う印刷方法において、
前記描画データを生成する際、印刷領域からはみ出す印刷が行われる描画オブジェクトを検出する処理と、
該検出処理に基づいて、前記描画オブジェクトが前記印刷領域からはみ出す可能性があると判断するとき、前記描画オブジェクトが前記印刷領域からはみ出す可能性のある位置を表示する表示処理と、
該表示処理に基づく印刷指示に従った前記描画データの印刷処理、又は前記表示処理に基づく印刷非指示によって行う描画データの修正処理と、
を行うことを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
ホスト機器のプリンタドライバによって、印刷データに基づく描画データを生成して印刷装置に転送し、印刷出力を行う印刷方法において、
印字領域の上下左右の端部にのみ印刷が行われる描画オブジェクトを検出する処理と、
該検出処理に基づいて、前記描画オブジェクトが前記印刷領域からはみ出す可能性があると判断するとき、前記描画オブジェクトが前記印刷領域からはみ出す可能性のある位置を表示する表示処理と、
該表示処理に基づく印刷指示に従った前記描画データの印刷処理、又は前記表示処理に基づく印刷非指示によって行う描画データの修正処理と、
を行うことを特徴とする印刷方法。
【請求項3】
ホスト機器のプリンタドライバによって、印刷データに基づく描画データを生成して印刷装置に転送し、印刷出力を行う印刷方法において、
1ページの印字ドット数が、所定の閾値よりも低いページを検出する処理と、
該検出処理に基づいて、前記所定の閾値よりも低いページとなる可能性のあるページを表示する表示処理と、
該表示処理に基づく印刷指示に従った前記描画データの印刷処理、又は前記表示処理に基づく印刷非指示によって行う描画データの修正処理と、
を行うことを特徴とする印刷方法。
【請求項4】
前記描画オブジェクトが前記印刷領域からはみ出す可能性のある位置を表示する際、該位置を囲うマークの表示を行うことを特徴とする請求項1、又は2に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記マーク部分を拡大表示することを特徴とする請求項4に記載の印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−198283(P2010−198283A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42024(P2009−42024)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】