説明

印刷機の印刷部に設けられた装置

本発明は、印刷機の印刷部(101)に設けられた装置に関し、少なくとも、印刷部(101)のインキ装置(105)または湿し装置(106)の少なくとも1つのローラ(12)と、ローラ(129)の軸方向の往復運動を形成するための少なくとも1つの往復運動駆動装置と、ローラ(129)の回転運動を形成するための少なくとも1つの駆動手段(302)とを備えており、ローラ(129)と駆動手段(302)との間に、内側ロータ(301)と外側ロータ(300)とを備えた磁気継手が配置されているものにおいて、ローラ(129)の、往復運動駆動装置によって形成される往復運動を補整するために、内側ロータ(301)および外側ロータ(300)が、ローラ(129)の回転軸線方向に相対運動可能に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載された印刷機の印刷装置に設けられた装置に関する。
【0002】
国際公開第2007/135155号パンフレットにおいて、輪転印刷機の印刷部に設けられたアセンブリが公知であり、このアセンブリは、それぞれ1本の版胴と3本のインキ着けローラと2本の摩擦胴と1本のインキ流分岐ローラとを備えており、両方の摩擦ローラは、それぞれインキ流分岐ローラに直接に当接しており、3本のうちの1本のインキ着けローラは、1本の摩擦胴にも版胴にも当接されており、残りの2本のインキ着けローラは、摩擦胴にも版胴にも当接されており、版胴に複数の印刷版が取り付けられている。印刷部の湿し装置は、均しローラを備えており、均しローラは、ローラの軸方向に延在する往復運動を行う。往復運動は、独立した駆動装置によって形成することができ、または、往復運動は、均しローラの回転運動用の駆動装置と連結することができるので、往復運動は、伝動装置によって回転運動から導出される。
【0003】
国際公開第2005/007410号パンフレットにおいて、インキまたは湿し装置のローラが公知であり、このローラは、駆動モータとして形成されたモータ式の単独駆動装置と往復運動駆動装置とを備えている。ローラは、異なる角度で伝達を行う角度伝動装置または直角伝動装置と角度補償式の継手と軸とを介して駆動モータのモータ軸と結合された、回転モーメントを伝達するボールブシュ上に、回転運動が伝達されるように支承されていて、しかも軸に対するローラの軸方向の往復運動が実現される。ボールブシュのボールは、軸および支承体の長手方向溝内を走行する。これによって回転モーメントが伝達され、支承体は、軸に対して軸方向可動に保持されている。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10161889号明細書において、インキ摩擦ローラを備えた印刷機のインキ装置が記載されており、インキ摩擦ローラは、永久磁石を備えた磁気継手を介在して、駆動モータと結合されている。磁気継手の両方の継手半部は、回転軸線の方向に相対運動不能である。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3917074号明細書およびドイツ連邦共和国特許第1233416号明細書において、インキ装置に設けられた電磁式の切換継手が開示されている。継手の内側の往復運動の補償は、開示されていない。
【0006】
本発明の課題は、ローラの往復運動の補償が非磨耗式に行われ、保守の必要が僅かである、印刷機の印刷部に設けられた装置を提供することである。
【0007】
この課題は、請求項1の特徴部に記載された構成によって解決される。
【0008】
本発明によって得られる格別な利点によれば、ローラの往復運動の補償が、磁気軸受または磁気継手の存在に基づいて非接触式に行われる。したがって装置は、磨耗なく保守が僅かで済む。
【0009】
別の利点は、装置の簡単な取付けもしくは製造にある。なぜならば比較的煩雑で、場合によっては故障しやすい構成要素を省略することができるからである。磁気軸受もしくは磁気継手は、最も簡単な構成では、2つの構成要素、つまり外側ロータと内側ロータとから成っており、これによって装置の比較的簡単な製造および取付けが実現される。
【0010】
本発明の実施の形態を図示して、以下に詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】印刷ユニットを示す概略側面図である。
【図2】複数の印刷ユニットを備えた、印刷機の印刷タワーを示す図である。
【図3】分離された状態の内側ロータと外側ロータとを備えた磁気継手を示す斜視図である。
【図4】印刷部のローラと、トルク伝達および往復運動を吸収するための磁気継手とを備えた、印刷機の印刷部に設けられた装置を示す断面図である。
【図5】磁気継手の外側ローラを備えた、印刷部のローラを回転駆動するための単独の駆動装置を示す斜視図である。
【図6】印刷部のローラの往復運動を形成するための往復運動駆動装置を示す斜視図である。
【図7】分離された状態で印刷部のローラと共に、図6による単独の駆動装置を示す斜視図である。
【0012】
図1は、印刷機の印刷ユニット100を概略図で示す。この印刷機は、図1に示す、少なくとも1つ、好適には少なくとも4つまたは5つの印刷ユニット100を備えている。繰出しロールから、印刷しようとする被印刷材料B;B’、好適には材料ウェブB;B’、特にペーパーウェブB;B’(略してウェブB;B’)が、引込装置を介して印刷ユニット100に供給されるまえに、繰出される。印刷ユニット100は、好適には相並んで配置されており、印刷ユニット100を、図1に示すウェブB;B’が水平に通走する。多色印刷用に設けられた標準型の複数の印刷ユニット100に対して、追加的な印刷ユニット100を設けてもよく、追加的な印刷ユニット100は、スムーズな判型変更のために、たとえば単数または複数の残りの印刷ユニット100に対して代替的に使用可能である。
【0013】
印刷ユニット100は、好適には、オフセット印刷用の印刷ユニット100として、特に2つの印刷部101、たとえばいわゆるB−B型運転方式(Gummi-gegen-Gummi-Betrieb)の両面印刷用の2つのオフセット印刷部101を備えた両側印刷部(両面同時印刷部)100もしくはI型印刷部100として形成されている。
【0014】
少なくとも1つの印刷ユニット100の上流側および下流側で、少なくとも下側部分に、また選択的には上側部分に、ローラ102が配置されており、ローラ102によって、進入するウェブB;B’が印刷ユニット100の周りを下方または上方にガイド可能であるか、上流側に配置された印刷ユニット100の周りをガイドされたウェブB;B’が印刷ユニット100を通ってガイド可能であるか、または印刷ユニット100を通ってガイドされたウェブB;B’が下流側に配置された印刷ユニット100の周りをガイド可能である。
【0015】
印刷ユニット100は、図1に示した実施の形態では、ウェブB;B’を介して協働する2つの印刷部101を備えて構成されている。各印刷部101は、ブランケット胴103および版胴104として形成された印刷部胴103;104(略して胴103;104)とインキ装置105と湿し装置106とを備えている。図1に示した実施の形態では、印刷ユニット100は、各版胴104に、半自動式または全自動式に刷版を供給するか、もしくは刷版110を交換するための装置107を備えており、刷版110は、可撓性の印刷版110として形成されている。
【0016】
装置107は、2つの部分から形成されている。装置107は、ニップ位置の付近で版胴104とブランケット胴103との間に配置された押圧装置197(半自動交換装置197)を備えている。さらに装置107は、装置107から構造的に分離した、刷版110の供給および収容装置を備えたマガジン198を有している。
【0017】
特に印刷機がインプリント運転方式に適合させようとする場合、印刷機は、追加的に、印刷ユニット100のニップ位置の直前および直後にガイドエレメント108を備えている。印刷ユニット100が、印刷することなく、またウェブB;B’とブランケット胴103との間で接触することなく運転するよう所望されると、ガイドエレメント108を用いて、図1に破線で示すウェブガイドが選択される。その特徴によれば、ウェブB;B’は、ニップ位置を通走し、それもウェブB,B’が両方のブランケット胴103の回転軸線の接続線と、大体において80°〜100°、たとえば約90°の角度を成すようにして通走する。ガイドエレメント108は、好適にはその周りを空気がガイドされるロッドまたはローラとして形成されており、これによりその前の時点で新たに印刷されたインキの擦過リスクが低減される。
【0018】
符号109で洗浄装置を示しておおり、洗浄装置109は、各ブランケット胴103に対応して配置されている。洗浄装置109によって、ブランケット胴103の弾性的な表面をクリーニングすることができる。
【0019】
胴103;104は、それぞれ540mm〜700mm、好適には540mm〜630mmの周長さを有しており、好適には、版胴104とブランケット胴103とは同じ周長さを有している。択一的に、それぞれ異なる周長さ、たとえば546mm、578mm、590mmまたは620mmの周長さを有する胴103;104を用いることも考えられる。このことは支承エレメントの交換、または胴103;104用のサイドフレームに設けられた孔の位置変化および駆動装置の適合によって実現される。
【0020】
各ブランケット胴103は、周に沿って、少なくとも1つの、図1に示していない被覆体を備えている。この被覆体は、好適には金属ブランケットとして形成されており、金属ブランケットは、実質的に寸法安定性の支持層の上に弾性層(たとえばゴム)を備えている。支持層は、たとえば薄い金属板として形成することができる。被覆体は、好適にはウェブB;B’の有効長さにわたって、もしくは大体においてウェブB;B’の、印刷しようとする幅全体にわたって延在しており、実質的に(突き合わせ部分もしくは溝開口部分を除いて)ブランケット胴103の全周に延びている。
【0021】
ブランケット胴103上に被覆体を固定するために、ブランケット胴103は、外周面に、軸方向に延びる溝を備えており、溝は、ブランケット胴103の使用可能な幅全体にわたって延びている。溝に通じる開口は、胴103の周方向にみて、外周面に、好適には1mm〜5mm、特に3mm以下の幅を有している。被覆体の端部は、外周面に形成された開口を通って溝に導入され、そこでロック、クランプまたは緊締装置によって摩擦結合および/または形状結合(形状結合とは、嵌め合いまたは噛み合いなどの部材相互の形状的関係に基づく結合を意味する)で保持される。金属ブランケットの場合、端部が折り曲げ/縁曲げされている(先行端部では約45°、後行端部では約135°)。クランプは、好適には空気力式に操作可能であり、たとえば空気力式に操作可能な単数または複数のレバーとして形成されている。クランプは、閉じた状態では、ばね力によって、溝に達する後行端部に対して予荷重を掛けられている。操作手段として、好適には、圧力媒体で荷重を掛けることができるチューブが使用可能である。
【0022】
符号105でインキ装置を示す。インキ装置は、インキ供給部、たとえばインキ流れを調整するための調節装置112を備えたドクタビームまたはインキパン111の他に、ローラ113〜125を備えている。インキは、ローラ113〜125が相互に当接した状態で、インキパン111から、呼出しローラ113と移しローラ114と第1のインキローラ115とを介して、第1の摩擦胴116に到達する。第1の摩擦胴116から、インキは、インキ装置105の運転方式に応じて、少なくとも1つのインキローラ117〜120を介して、少なくとも1つの別の摩擦胴121;124に達する。摩擦胴121;124から、インキは、着けローラ122;123;125を介して、版胴104の表面に達する。
【0023】
好適な実施の形態では、インキは、第1の摩擦胴116から、考えられる様々な経路を介して、択一的または同時に(直列または並列で)別の第2の摩擦胴121;124を介して、着けローラ122;123;125に達し、これについては図1に示した。
【0024】
図1からさらに看取されるように、インキ装置および湿し装置105;106の好適な実施の形態では、第2の摩擦胴124は、同時にローラ128、たとえば湿し装置106の着けローラ128と協働することができる。
【0025】
インキ装置105のローラ126は、インキ経路上で、特に第1の摩擦胴116の手前で、インキを、インキ装置105から受け取ることができる。受取は、ローラ126自体に、または図1に示すように、ローラ126と協働するローラ127に、適切な取出装置133が当接可能であることによって行われる。
【0026】
湿し装置106は、ローラ128と、このローラ128と協働する別のローラ129とを備えている。ローラ129は、摩擦ローラ129、特に往復運動するクロムローラ129として形成することができる。ローラ129は、湿し媒体を、たとえばローラ130として形成することができる湿潤手段から受け取る。ローラ130は、浸しローラ130として形成することができ、浸しローラ130は、湿し媒体貯蔵部132、たとえば水容器に浸漬する。水容器の下方に、好適には水容器に形成される凝縮水を捕集するための滴板135が配置されている。滴板135は、好適な実施の形態では、たとえば加熱コイルによって加熱可能に形成されている。
【0027】
摩擦ローラ129ならびに浸しローラ130は、図示していない回転式の単独の駆動装置、特に駆動モータによってそれぞれ駆動される。この駆動装置は、角度伝動装置または直角伝動装置を介して、各ローラ129;130を、機械式に相互に独立してそれぞれ回転駆動する。駆動モータは、好適には回転数に関して(特に無段階式に)調整可能な電動モータ、特に三相交流モータとして構成されている。回転数もしくは湿し状態の調節は、好適にはガイドスタンドから、たとえばインキ調節盤から行うことができ、インキ調節盤には回転数もしくは湿し状態が表示される。好適な形態では、機械制御装置に、機械速度と湿し状態もしくは回転数との間の相互関係が格納されており、機械制御装置によって、両方のローラ129;130、特にローラ130の、調節しようとする回転数が設定可能である。
【0028】
図1から看取されるように、ローラ117;118;128は、好適な実施の形態では、実線で示した位置と破線で示した位置との間を運動可能である。運動可能とは、異なる運転位置の間の、運転方式に応じたローラの可動性と解され、調整目的のための可動性ではない。1運動位置から別の1運動位置へローラ117;118;128を変移させるために、手動で、または駆動装置によって操作可能な調節手段および/またはストッパ(たとえば調整可能である)は、1運転位置にも別の1運転位置にも設定することができる。さらに比較的大きな許容調節経路が提供され、ローラ配置構造が、相応に、両方の位置が通常の調節経路によって得られるように、選択される。
【0029】
着けローラ128の位置を変化させるために、好適な実施の形態では、クロムローラ129ならびにローラ130は、それぞれ軸線に対して直行する一方向に運動可能に、たとえばレバーに支承されている。
【0030】
インキ装置105の摩擦胴116;121;124ならびに湿し装置106のローラ129は、図示していないサイドフレームもしくはフレーム壁に、往復運動を行うことができるように軸方向可動に支承されている。摩擦胴116;121;124およびローラ129に関して、往復運動は、強制的にそれぞれたとえば回転駆動装置と連結された往復運動伝動装置によって行われる。
【0031】
ローラ128および着けローラ123にも、同様に往復運動を許容する支承部が設けられている。もちろんローラ128;123の軸方向往復運動は、往復運動伝動装置によって及ぼされるのではなく、単に協働する外周面の摩擦を介して及ぼされる。択一的に、軸方向に1自由度を有するこのような支承部は、両方の着けローラ122;125に設けてもよい。
【0032】
インキ装置105および湿し装置106の、図1に実線で示す配置構造は、「通常の」印刷運転方式に設定されたローラ113〜130の協働を表している。インキ経路と湿し媒体経路とは、版胴104の他に、第2の摩擦胴124を介して相互に接続されている。直接的な湿しの他に、間接的な湿しが行われる。ローラ128の変位によって、「3本ローラ式湿し装置」における直接的な湿しと、ローラ117の位置に応じて、「5本ローラ式の湿し装置」における間接的な湿しもしくは直接的な湿しとの間で選択が可能である。
【0033】
印刷装置胴103;104およびインキ装置105および湿し装置106のローラ113〜130は、それぞれ端面側で、図示していないフレーム壁に支承されている。
【0034】
ローラ129は、回転駆動装置とは反対側の端面に、図1には示していない往復運動駆動装置を備えており、特に回転運動から軸方向の往復振動を形成するための伝動装置を備えている。ローラ129に摩擦熱が局所的に点状に発生するのを回避するために、この伝動装置は、好適にはローラ本体の外側に配置されている。好適な実施の形態では、この伝動装置は、印刷ユニット100の駆動側、つまり図1には示していない主駆動装置および/または印刷装置胴103;104の駆動装置群と同じフレーム壁に設けられている。好適には、ローラ129;130の回転駆動装置は、反対側、つまり図1には示していない別のフレーム壁に設けられている。
【0035】
さらに印刷ユニット100は、印刷ユニット100の入口部分もしくは両方のブランケット胴103の間の楔形入口に、ファンアウトに影響を及ぼすための装置199、つまりたとえば印刷プロセス(特に湿度)に起因する、印刷箇所ごとのウェブB;B‘の横方向延伸度/幅の変化に影響を及ぼすための装置199を備えている。この装置199は、ノズルとして形成された調節部材を備えることができ、ノズルを空気が通流可能である。
【0036】
駆動は、好適には、図1に示していない駆動車によって行われ、この駆動車は、主駆動装置、たとえばフレーム固定された電動モータ、特に回動角度位置に関して調整可能な電動モータによって駆動される。電動モータは、水冷式に形成してよい。中間車を介して、両方のうちの一方の版胴104の駆動車が駆動される。この駆動車によって、版胴104に対応して配置されたブランケット胴103の駆動車が駆動される。そこから駆動が、別のブランケット胴103の駆動車に行われ、最終的に第2の版胴104の駆動車に行われる。ブランケット胴103および版胴104の駆動車は、相対回動不能に(つまり一緒に回動するように)、たとえばジャーナルを介して、各胴103;104と結合されている。両方の版胴104もしくは版胴104の駆動車と相対回動不能に結合された別の駆動車および中間車を介して、版胴104に対応して配置されたインキ装置105の単数または複数のローラ113〜127への回転駆動が行われる。
【0037】
少なくとも1つの中間車を介して、摩擦胴116;121;124の駆動車が駆動される。この中間車は、一方の版胴104の駆動車と噛合う。したがって図示の実施の形態では、版胴104から、各摩擦胴116;121;124が、形状結合式の駆動結合部を介して回転駆動される。駆動結合部は、摩擦胴116;12;124の軸方向運動が実現されるように形成することができる。
【0038】
呼出しローラ113は、独自の回転駆動装置、たとえば図示していない、機械的に独立した独自の駆動モータを備えている。
【0039】
インキ装置105の残りのローラ114;115;117〜120;122;123;125〜127は、単に、摩擦を介して、回転(および場合によっては軸方向に)駆動される。インキ装置105もしくは摩擦胴116;121;124の駆動は、印刷装置胴103;104の駆動装置を介して行われる。
【0040】
図2は、複数、たとえば4つの印刷ユニット100を備えた印刷タワーを示しており、印刷タワー100は、それぞれ2つの印刷部101から形成されている。印刷部101は、協働する2つの印刷部胴103;104とインキ装置105と湿し装置106とそれぞれを備えており、図2には、判りやすく図示するために、湿し装置106のローラ128;129;130だけに符号を付した。符号128で着けローラを示し、符号129で摩擦ローラもしくはクロムローラを示し、符号130で浸しローラを示した。浸しローラ130は、湿し媒体を湿し媒体貯蔵部132から受け取り、クロムローラ129に引き渡す。
【0041】
図2から看取されるように、印刷タワーは、2つのサイドフレームを備えており、サイドフレームには、それぞれ印刷部胴103;104とインキ装置105と湿し装置106とを備えた、複数、たとえば図2では8つの印刷部101が、鉛直に上下に配置されており、それぞれ2つの印刷部101が1つの両側印刷部(B−B型印刷部)100を形成し、このような配置構造によって、たとえば4色印刷の構成が実現される。図示していない被印刷材料B;B’、好適には材料ウェブB;B’は、相互に当接された印刷部胴103の間で、好適には下方から上方へ印刷タワーを通ってガイドされ、同時に両側で印刷することができる。図2に示す印刷タワーは、たとえば新聞印刷機の構成要素であってよい。
【0042】
図3は、分離した状態で磁気継手を斜視図で示す。磁気継手は、外側ロータ300と内側ロータ301とを備えており、外側ロータ300の内面に、かつ内側ロータ301の外面に、交互に位置する極性を有する高品質の磁石305;306、特に永久磁石305;306が装着されている。停止状態では、外側ロータ300のN極と、内側ロータ301のS極とは、相互に対向している。回動により、磁力線が変化し、これにより空隙を越えて回転モーメントを伝達することができる。回動の遊びを一定に維持して同期運転が形成される。符号305で、外側ロータ300の磁石を示し、符号306で、内側ロータ301の磁石を示しており、内側ロータ301の磁石306は、図3では図示していない。
【0043】
図4は、駆動手段302、たとえば単独の駆動装置302の回転モーメントを伝達するため、かつ往復運動を吸収するための磁気継手と共に、印刷部101のクロムローラ129を備えた、印刷機の印刷部101に設けられた装置を断面図で示す。クロムローラ129は、硬質クロムめっきされている。たとえば図1および図2に示すように、符号302で、印刷部101のクロムローラ129もしくは摩擦ローラ129の回転式の単独の駆動装置を示す。
【0044】
単独の駆動装置302は、フレーム固定式に印刷機にねじ止めされている。単独の駆動装置302によって、駆動軸303、たとえばモータ軸303が駆動され、駆動軸303自体は、磁気継手の外側ロータ300と相対回動不能に結合されている。外側ロータ300をモータ軸303に取付けるために、緊締手段304が用いられる。緊締手段304は、外側ロータ300のボスの座に導入され、次いでモータ軸303に被せ嵌められる。したがって緊締手段304の配向は、外側ロータ300のボスによって行われ、次いで緊締手段304の緊締ねじの締付が行われる。
【0045】
外側ロータ300は、内周面に、永久磁石305を備えており、周方向にみてN極とS極とが交互に位置する。
【0046】
外側ロータ300の内側で内側ロータ301が運動し、内側ロータ301も、外周面に、永久磁石306を備えており、内側ロータ301においてもN極とS極とが交互に位置する。内側ロータ301は、緊締手段307を介して、印刷部101のクロムローラ129の端部と結合されている。緊締手段307の取付けは、モータ軸303と外側ロータ300とを結合するために緊締手段304に関して記載した取付けと同様に行われる。
【0047】
ローラ129は、往復運動駆動装置によって、軸方向の往復運動を行う。形成された往復運動は、磁気継手によって吸収され、それも外側ロータ300と内側ロータ301との相対位置が固定ではなく可変であることによって、吸収される。ローラ129の第1の往復運動位置では、外側ロータ300および内側ロータ301は、第1の位置に配置されており、ローラ129の往復運動の第2の位置では、外側ロータ300および内側ロータ301は、第1の位置とは異なる第2の位置に配置されている。したがって図4において両方向矢印で示唆したローラ129の往復運動は、非接触式に、ひいては非摩擦式に磁気継手によって吸収することができる。磁気継手は、非摩擦性に基づいて保守不要である。
【0048】
図5は、クロムローラ129の単独の駆動装置302を斜視図で示す。駆動装置302と同様に磁気継手の外側ロータ300も図示しており、外側ロータ300は、図5には示していないモータ軸303と相対回動不能に結合されている。
【0049】
クロムローラ129の摩擦往復運動は、たとえば図6に示すクランク伝動装置によって導入される。たとえば電動モータ400として形成することができる駆動ユニット400を介して、偏心体401が、図示していない伝動機構を介して回動される。偏心体401は、連接棒402、たとえばクランクロッド402を駆動し、連接棒402は、偏心体401の回転運動をローラ129の直線運動に、つまりローラ129の往復運動に変換する。
【0050】
一般的に、たとえばローラの回転運動を軸方向往復運動に変換する往復運動伝動装置として別の往復運動駆動装置も考えられる。
【0051】
図7は、クロムローラ129と、クロムローラ129の回転運動を形成する駆動手段302とを備えた装置を概略図で示す。駆動手段302は、電動モータ302から形成されており、電動モータ302は、三相交流モータ302として形成することができ、電動モータ302の回転数は可変であるか、もしくは電動モータ302は、回転数調整可能に形成することができる。既に詳しく説明したように、電動モータ302は、モータ軸303を介して、磁気継手の外側ローラ300を駆動する。図7に示していない内側ロータ301(内側ロータ301はクロムローラ129と相対回動不能に結合されている)を介して、電動モータ302からクロムローラ129への回転モーメント伝達が行われる。
【0052】
図7には、クロムローラ129の往復運動駆動装置は示していない。往復運動駆動装置は、たとえばクロムローラ129の、回転式の単独の駆動装置302とは反対側に配置してよく、たとえば往復運動伝動装置として、または図6に示すクランク伝動装置として構成してよい。
【0053】
電動モータ302は、ローラ129の回転軸線に対して同軸的に配置してよい。
【0054】
内側ロータ301と外側ロータ300とは、ローラ129の回転軸線方向に相対運動可能である。
【0055】
内側ロータ301または外側ロータ300は、ローラ129の回転軸線方向に不動に配置されている。
【0056】
磁気軸受または磁気継手を備えた、印刷機の印刷部101に設けられた装置は、湿し装置106のクロムローラ129に制限されるものではなく、択一的または追加的に、別のローラ、たとえばインキ装置105のローラも考えられる。さらに印刷機の印刷部101に設けられた装置は、図1または図2に示す印刷部101の実施の形態に制限されるものではなく、変化した構成を有する印刷部101にも使用可能である。
【0057】
ローラ129の独自の駆動装置とは、好適には少なくとも別のローラから機械式に独立した駆動装置と解され、つまりローラ129と別のローラとの間を回転駆動するための形状結合式の駆動結合部(たとえば歯車)が設けられていない。
【符号の説明】
【0058】
100 印刷ユニット、両側印刷部、I型印刷部、 101 印刷部、オフセット印刷部、 102 ローラ、 103 印刷部胴、胴、ブランケット胴、 104 印刷装置胴、胴、版胴、 105 インキ装置、 106 湿し装置、 107 半自動式または全自動式に刷版供給するための装置、 108 ガイドエレメント、 109 洗浄装置、 110 刷版、印刷版、 111 インキパン、 112 調節装置、 113 ローラ、呼び出しローラ、 114 ローラ、移しローラ、 114 ローラ、インキローラ、 115 ローラ、摩擦ローラ、 117 ローラ、インキローラ、 118 ローラ、インキローラ、 119 ローラ、インキローラ、 120 ローラ、インキローラ、 121 ローラ、摩擦ローラ、 122 ローラ、着けローラ、 123 ローラ、着けローラ、 124 ローラ、摩擦胴、 125 ローラ、着けローラ、 126 ローラ、 127 ローラ、 128 ローラ、着けローラ、 129 ローラ、摩擦ローラ、クロムローラ、 130 ローラ、浸しローラ、 132 湿し媒体貯蔵部、 133 取出装置、 135 滴板、 197 押圧装置、半自動交換装置、 198 マガジン、 199 ファンアウトに影響を及ぼすための装置、 300 外側ロータ、 301 内側ロータ、 302 駆動手段、単独駆動装置、電動モータ、三相交流モータ、 303 駆動軸、モータ軸、 304 緊締手段、 305 磁石、永久磁石、 306 磁石、永久磁石、 307 緊締手段、 400 駆動ユニット、電動モータ、 401 偏心体、 402 連接棒、クランクロッド、 B 被印刷材料、材料ウェブ、ペーパーウェブ、ウェブ、 B’ 被印刷材料、材料ウェブ、ペーパーウェブ、ウェブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機の印刷部(101)に設けられた装置であって、
少なくとも、印刷部(101)のインキ装置(105)または湿し装置(106)の少なくとも1つのローラ(129)と、ローラ(129)の軸方向の往復運動を形成するための少なくとも1つの往復運動駆動装置と、ローラ(129)の回転運動を形成するための少なくとも1つの駆動手段(302)とを備えており、ローラ(129)と駆動手段(302)との間に、内側ロータ(301)と外側ロータ(300)とを備えた磁気継手が配置されているものにおいて、
ローラ(129)の、往復運動駆動装置によって形成される往復運動を補整するために、内側ロータ(301)および外側ロータ(300)が、ローラ(129)の回転軸線方向に相対運動可能に形成されていることを特徴とする、印刷機の印刷部(101)に設けられた装置。
【請求項2】
少なくとも1つの駆動手段(302)は、ローラ(129)を回転駆動するための単独の駆動装置(302)として形成されており、該単独駆動装置(302)の回転モーメントが、磁気継手によって、ローラ(129)に伝達されるようになっている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
外側ロータ(300)と内側ロータ(301)との相対位置が、ローラ(129)の回転軸線方向に可変である、請求項1記載の装置。
【請求項4】
ローラ(129)の第1の往復運動位置では、外側ロータ(300)および内側ロータ(301)は、第1の位置に配置されており、ローラ(129)の第2の往復運動位置では、外側ロータ(300)および内側ロータ(301)は、第1の位置とは別の第2の位置に配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項5】
少なくとも1つの駆動手段(302)は、電動モータ(302)として形成されているか、または電動モータ(302)を備えている、請求項1記載の装置。
【請求項6】
電動モータ(302)は、ローラ(129)の回転軸線に対して同軸的に配置されている、請求項5記載の装置。
【請求項7】
ローラ(129)は、印刷部(101)の湿し装置(106)の摩擦ローラ(129)として形成されている、請求項1または2記載の装置。
【請求項8】
ローラ(129)は、クロムローラ(129)として形成されており、該クロムローラ(129)は、湿し装置(106)の別のローラ(128;130)と協働するようになっており、該別のローラ(128;130)は、ゴム被覆された表面を備えている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
湿し装置(106)の別のローラ(128;130)は、印刷部(101)の版胴(104)に湿気を付着するための着けローラ(128)であり、ならびに、湿し媒体貯蔵部(132)から湿し媒体を受け取るための浸しローラ(130)である、請求項8記載の装置。
【請求項10】
ローラ(129)は、湿し装置(106)の単個のローラ(129)であり、該ローラ(129)は、単独の駆動装置(302)を備えている、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
駆動手段(302)は、駆動軸(303)を備えている、請求項1から10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
磁気継手の外側ロータ(300)は、駆動軸(303)と相対回動不能に結合されている、請求項1記載の装置。
【請求項13】
内側ロータ(301)または外側ロータ(300)は、ローラ(129)の回転軸線方向に定位置に配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項14】
内側ロータ(301)は、ローラ(129)と相対回動不能に結合されている、請求項1から13までのいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
外側ロータ(300)は、緊締手段(304)によって、駆動手段(302)の駆動軸(303)と相対回動不能に結合されていて、かつ/または、内側ロータ(301)は、緊締手段(307)によって、ローラ(129)と相対回動不能に結合されている、請求項1、12、13または14記載の装置。
【請求項16】
少なくとも1つの駆動手段(302)は、フレーム固定式に配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項17】
往復運動駆動装置は、クランク伝動装置として形成されている、請求項1記載の装置。
【請求項18】
クランク伝動装置は、駆動ユニット(400)ならびに偏心体(401)を備えており、該偏心体(401)は、連接棒(402)と協働しており、該連接棒(402)は、ローラ(129)に、該ローラ(129)の軸方向に作用する力を及ぼすようになっている、請求項17記載の装置。
【請求項19】
往復運動駆動装置は、往復運動伝動装置を備えており、該往復運動伝動装置は、ローラ(129)の回転運動から往復運動を導出する、請求項1から17までのいずれか1項記載の装置。
【請求項20】
湿し装置(106)は、着けローラ(128)を備えており、該着けローラ(128)は、洗浄目的で版胴(104)から離間する方向に旋回可能に形成されている、請求項1から19までのいずれか1項記載の装置。
【請求項21】
往復運動駆動装置は、ローラ(129)の、駆動手段(302)とは反対側に位置する端面に配置されている、請求項1から20までのいずれか1項記載の装置。
【請求項22】
ローラ(129)と別のローラとは、共通の回転駆動装置を備えておらず、つまり形状結合式に駆動結合されていない、請求項1記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−520656(P2011−520656A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509851(P2011−509851)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【国際出願番号】PCT/DE2009/050004
【国際公開番号】WO2009/140958
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(390014188)ケーニツヒ ウント バウエル アクチエンゲゼルシヤフト (50)
【氏名又は名称原語表記】Koenig & Bauer Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Friedrich−Koenig−Strasse 4, Wuerzburg, Germany
【Fターム(参考)】