説明

印刷機制御方法

【課題】印刷機に良好な乾燥が達成できる装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、ジェット硬化印刷インキおよび/またはジェット硬化ニスの印刷基体上の重合度を適切な測定装置で決定することをともなう品質管理方法であって、印刷工程中の測定が印刷機内で「インライン」または印刷機外部で「オフライン」で枚葉全体または枚葉部分上で行われ、印刷機がジェット硬化層の貫徹硬化用の少なくとも1つの紫外線光源または電子ビーム光源を有する方法において、得られた測定データから、印刷機内での印刷機制御および/または光源の放射器制御および/またはマーキング装置の制御用のデータおよび所定値が得られることを特徴とする品質管理方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機の制御方法、特にジェット硬化印刷インキ使用時における制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジェット硬化オフセット印刷インキによる印刷は今日の印刷産業で広く普及し、大変よく知られているものである。ジェット硬化印刷インキによる印刷の利点は、紫外線光源により照射した後、速やかに、かつ自発的に架橋し、印刷インキが溶媒に依存せず、非吸収性の基体を良好に印刷できることである。
【0003】
従来の印刷インキは油系または溶媒含有のものである。油系の印刷インキは油系展色剤の酸化により乾燥するか、または、印刷インキ内に存在する強揮発性油の蒸発(ヒートセット方法)により乾燥する。それに対し、ジェット硬化印刷インキおよびニスは、架橋とも呼ばれる光化学プロセスにより硬化する。液状または無架橋の印刷インキフィルムが紫外光の作用のもとでの重合により固体状態に移行する。
【0004】
しかし、無架橋印刷インキ成分が枚葉印刷機の排紙装置スタック内で転着する、または印刷後のローラー内で転着することにより、その上にある基体の裏側に転写される不具合事例が知られるようになった。印刷インキ成分もまた基体を通過して移動する可能性がある。印刷インキ成分の移動または印刷インキの転着は、梱包時に充填物に知覚的影響を与えかねない。特定の移動限度を超えると、食品梱包の場合、消費者の健康を害しかねない。特定の移動限度を超えると、梱包材はいずれにしても流通停止にせざるを得ない。これは経済的な結果に加え、たいていの場合市場でのブランドメーカの不評を招くことにもつながる。健康上問題がないことを固守することが優先的である。食品法30条によれば必需品を、規定通りの使用時に、物質的組成、とりわけ毒性物質または汚染により健康を害するように製造することは禁じられている。更にドイツ法、欧州法、また米国でも同様に「ノーミグレーション(無移動)原則」が適用されている。これは、物質が梱包済み食品に移行することを回避するというものである。従って、いずれにしても印刷基体上でのジェット硬化印刷インキの架橋を確保することが特に重要である。
【0005】
他の問題性は印刷機の操作の結果生ずるものである。印刷基体上のジェット硬化印刷インキまたはニス層が十分に貫徹硬化されず、機械オペレータが例えばプリント品質の検査のためにサンプルを抜粋した場合、ジェット硬化印刷インキの移動可能な成分が皮膚から摂取される可能性がある。健康上の危険性以外にも皮膚の軽炎症、アレルギー反応が発生しかねない。
【0006】
印刷機の稼動時におけるもう1つ別の問題性は、無架橋印刷インキまたは無架橋ニス成分の印刷枚葉が通常特殊廃棄物扱いされることにより発生する。物流管理作業が増えるばかりか、通常廃棄物処理費用も嵩むことになる。
【0007】
印刷機はすでに今日では、反故紙の量を回避する装置と方法を有す。従って、すでに今日では有名メーカの機械の紫外線乾燥装置は印刷機制御と結びついている。オペレータが選んだ紫外線乾燥装置が印刷機制御へ実行可能状態を応答してはじめて印刷が開始できる。これにより印刷枚葉が無架橋印刷インキまたは無架橋ニスで作られることが回避される。何らかの理由でジェット装置がない場合は、機械の紙差し部、つまり枚葉供給部が遮断され印刷が中断される。
【0008】
しかしながら、これらの解決策はジェット装置が完全に欠落している場合のみを考察している。従って、ジェット装置の能力と強度は、最適な結果に達するためには、各印刷ジョブ毎に個別に適応、設定されなければならない。常に最大のジェット装置能力で生産することにより印刷インキまたはニスフィルムの確実な架橋を確保するという手近な解決策は、有効ジェットのみでなく熱輻射も印刷基体に転写されるため、たいてい不可能である。これはまさに熱に敏感な印刷基体、例えば薄いホイルにおいて、印刷基体の寸法の変化と排斥につながりかねない。その結果、たいてい印刷の見当合わせの問題が発生する。紫外線印刷の品質はジェット装置の作動時間、リフレクタの汚染、ジェット分配のスペクトル特性の変化に依存する。ジェット能力もまた、使用される印刷基体、使用される印刷インキとニスおよび印刷速度に適応されなければならない。フィルム硬化のパフォーマンスは印刷インキ、とりわけ主に着色によっても決まる。例えば黒などの暗色印刷インキは、暗い色素がジェットインされた紫外線成分を多く吸収し、結果としてジェットの該部分がもはや硬化プロセス用に使えないために、明るい印刷インキより高いエネルギー照射を要する。
【0009】
通常Watt/cmで表示される紫外線放射器の能力データは、放射器の実際に有効な紫外線能力とスペクトル特性について何ら述べるものではない。印刷機は近代的な紫外線コントロールシステムにより、プロセスを硬化パフォーマンスに直接従って調整できるべきである。
【0010】
紫外線放射器の出力するジェット能力とジェット分配をインラインでモニタリングすることがしばしば提案されてきた。インラインプロセスコントロール用システムは、例えば生産開始時に最適硬化結果に必要である可能性のあるランプ出力を読み込むことを例えば提供する。近代的なモニタリングシステムでは強度と出力のモニタリングを分光計を利用して行うことができる。すると、スペクトルやランプ出力の変位は閉制御ループにより随時再生できる。
【0011】
この種の代表的な制御方法としては米国特許第4,032,817号が知られている。処理装置の実際の使用条件に適応する可能性としては、ランプ出力の適応、しかしまた生産装置の処理速度の適応に言及されている。
【0012】
このような品質測定システムの短所は、ランプ出力から間接に硬化結果が推論される点にある。しかし、例えば応用された膜厚の臨時変動、膜厚と生産速度の変化といった生産条件の変化は、ランプ出力がスペクトル特性またはその能力において変化することなしに硬化結果に影響しかねない。更に印刷物の購入者の多数が、印刷された製品に関する統計または100%品質表示を入手することを望んでいる。かような要望のバックグランドは、製品メーカが最もショックを受けるのがイメージダウンならびにそれと切り離せない売り上げ損であるから、充分よく理解できることである。しかし、ランプ出力のスペクトル測定を介した間接的な検出は、印刷インキまたはニス層の完全重合の目安でしかなく、その保証はしない。
【0013】
それよりずっと良いのは、印刷品上でインラインまたはオフラインで印刷インキまたはニス層の硬化を決定することであろう。ニス層と着色された印刷インキ層の動的硬化は例えばリアルタイム方法FTIR(Fourier Transform infrared = フーリエ・赤外線トランスフォーム)により決定できる。この応用領域はとりわけBo Jang著研究報告「Studies of Pigmented UV Curable Systems by real time FTIR」、Sartomer Company、Exton、PA(www.sartomer.com/wpapers/5035.pdf)に見られる。
【0014】
これに関しては同様に、適切な赤外線測定技術が知られている。第一の応用では、赤外線スペクトルを有するパルス源からサンプルが特定かつ可変のパルス幅とパルス率で照射され、減少された光線をセンサーで検出し、積分時間と読み出し時間の判定により評価する。それにより光子パルスの高度に動的な測定が可能である。
【特許文献1】米国特許第4,032,817号明細書
【非特許文献1】「Studies of Pigmented UV Curable Systems by real time FTIR」、Sartomer Company、Exton、PA(www.sartomer.com/wpapers/5035.pdf)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって本発明の目的は、印刷機に良好な乾燥が達成できる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は請求項1に記載の諸特徴により解決される。
【0017】
本発明は、印刷機の制御方法、なかんずくオフセット印刷機の制御方法に関し、その際、印刷されたインキまたはニス層の重合度が直接印刷基体上で測定され、該測定値または固有値により印刷機と印刷機に結合した連結機械の制御および調整が行われる。それによりジェット硬化印刷インキによる生産の高品質および多大な安全性が達成される。
【0018】
印刷基体における、印刷された印刷インキまたはニス層による測定は印刷機内で「インライン」で行うことが可能であり、その際、適切なセンサーが圧力シリンダーを介して、あるいは、枚葉印刷機の排紙装置部分、またはロール印刷機のレールを介した任意の位置に設けられる。センサーは印刷基体の全幅に渡り測定するか、または、幾つかのクリティカルな印刷主要構成部分上にのみ配置してもよい。測定はしばしば、例えば膜厚の大きい層または暗色印刷インキ層からなるクリティカルな印刷主要構成部分においてのみ行えば十分である。印刷主要のこのようなクリティカルな領域を十分に硬化しきると、より容易な領域も充分な重合を有すると前提して間違いないからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
インライン測定装置は印刷機の1つまたは複数の圧胴を介して設置できる。少なくとも1つの測定装置を印刷装置の圧胴、好適には最後部の印刷装置に後続して設け、更に測定システムをニス引き装置に後続して設置するのが有意義と思われる。ニスはしばしば平面的に塗布され、印刷インキ層の測定は、ニス引き装置に後続して測定システムが1つしか設置されないとすれば、もはや簡単にはいかないであろう。
【0020】
本発明の更なる実施形態では測定は「オフライン」で行われ、その際、例えばプリント枚葉または印刷枚葉の一部といった測定サンプルが例えば分析器械内に取り付けられる。しかしこの解決策はいまだに機械オペレータの作業を必要とするため、「インライン」測定に対し不利である。結果、重合プロセスのコントロールの緻密さは機械オペレータにかかっている。インライン測定のような100%のコントロールは不可能である。
【0021】
しかし本発明によれば「インライン」であれ「オフライン」であれ、組み合わせてまたは択一的に適用できる両測定方法が機械制御および/または紫外線放射器または紫外線レーザ用コントロールと直接結びついている。
【0022】
したがって印刷インキまたはニス層の不充分な貫徹硬化の場合は、例えば紫外線放射器へのエネルギー供給をアップする、および/または他の紫外線放射器をも接続することで即座にランプ出力が閉制御ループに適応され得る。
【0023】
しかし照射強度を高める可能性が常にあるというわけではない。というのは、例えばもはや出力の余裕がない、あるいは基体が、少なくとも従来の水銀中圧放射器を使用するときの出力上昇と結びついた付加的熱損にこれ以上耐えられないといった理由からである。この場合印刷機の継続印刷能力は、測定機構により得られた重合の特性値または測定値が再び充分な重合を反映するまで減少される。特別な実施形態では、印刷機の最大回転数が、印刷インキおよびニス層のぎりぎり充分な重合を保証する印刷速度に制限される。そうすることにより、機械オペレータが故意に、または意図せずに不充分にしか貫徹重合されていない印刷枚葉を製造することが回避され得る。
【0024】
本発明の簡単な実施形態では、機械オペレータに対して、1つまたは複数の規準値または1つまたは複数の特性値が、印刷機セントラルコントロールコンソール上で表示され、これは重合度を表示する。これは最も簡単なケースでは3個の表示フィールドを有するある種の信号(赤:重合不充分、黄色:クリティカル、境界、緑:重合が完璧)とすることができる。機械オペレータはこの場合自発的に反応し、機械のパフォーマンスを下げるかプリント枚葉上の照射エネルギーを高めなければならない。
【0025】
本発明の更なる形態では測定機構から硬化不充分と思われるプリント枚葉は全て、枚葉の縁上または枚葉の面中の1つまたは複数のマーキング、または切り抜き部と関連づけられたマーキングによりマークされる。切り抜き部と関連づけられたマーキングは、マークされた切り抜き部を後に続く加工でくっきり浮き上がらせるためのものである。校了枚葉を全てマーキングするという逆のケースも当然考えられる。マーキングは周知の方法ではインクジェット印刷機、レーザ印刷機、レーザ、霧吹きヘッド、または見えないマーキングまたは見えるマーキングペンで行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェット硬化印刷インキおよび/またはジェット硬化ニスの印刷基体上の重合度を適切な測定装置で決定することをともなう品質管理方法であって、
印刷工程中の測定が印刷機内で「インライン」または印刷機外部で「オフライン」で枚葉全体または枚葉部分上で行われ、印刷機がジェット硬化層の貫徹硬化用の少なくとも1つの紫外線光源または電子ビーム光源を有する方法において、
得られた測定データから、印刷機内での印刷機制御および/または光源の放射器制御および/またはマーキング装置の制御用のデータおよび所定値が得られることを特徴とする品質管理方法。
【請求項2】
前記データが、閉制御ループ中で、個々の光源または複数の光源の放射能力が要求に適合され、かつ/または他の光源が付加的に接続されるか、または遮断されることにより、光源の放射出力を適合するために利用されることを特徴とする請求項1に記載の品質管理方法。
【請求項3】
前記データが、閉制御ループ中で、印刷機の能力が、印刷インキまたはニス層の重合が不充分であると、充分な重合になるまで低下されることにより、機械生産能力を適合するために利用されることを特徴とする請求項1に記載の品質管理。
【請求項4】
前記放射器能力および機械能力の適合が補足的に行われることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の品質管理システム。
【請求項5】
前記放射能力および/または機械能力の適合が機械オペレータの何らかの操作なしに自動的に行われることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の品質管理システム。
【請求項6】
前記放射能力および/または機械能力の適合が、印刷機の機械セントラルコントロールコンソールの所にいる機械オペレータに提案され、該機械オペレータが該動作の実行を明白に是認しなければならないことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の品質管理システム。
【請求項7】
最大機械能力が、印刷インキおよびニス層の辛うじて充分な重合を保証することを特徴とする請求項1に記載の品質管理システム。
【請求項8】
印刷機の機械セントラルコントロールコンソールに、印刷インキおよび/またはニス層の重合度を示唆する特性値および/またはシンボルが表示されることを特徴とする請求項1に記載の品質管理システム。
【請求項9】
測定装置により測定された値と、場合によってはそれにより導出された特性量が印刷物の品質管理用ベースとして役立つことを特徴とする請求項1に記載の品質管理システム。
【請求項10】
印刷インキまたはニス層の重合が不充分な印刷インキまたはニス層を有する印刷枚葉に、1つまたは複数の噴射ヘッド、1つまたは複数のインクジェットヘッド、1つまたは複数のレーザ印刷機、1つまたは複数のレーザマーキングシステム、またはカラーペンなどの適切なマーキング手段で、エラーを有することをマークするまたはレッテル貼りすることを特徴とする請求項1に記載の品質管理システム。
【請求項11】
印刷インキまたはニス層の重合が充分な印刷インキまたはニス層を有する印刷枚葉に、1つまたは複数の噴射ヘッド、1つまたは複数のインクジェットヘッド、1つまたは複数のレーザ印刷機、1つまたは複数のレーザマーキングシステム、またはカラーペンなどの適切なマーキング手段で、校了枚葉としてマークするまたはレッテル貼りすることを特徴とする請求項1に記載の品質管理システム。
【請求項12】
印刷インキまたはニス層の重合が不充分な印刷インキまたはニス層を有する印刷枚葉上の個々の切り抜き部に1つまたは複数の噴射ヘッド、1つまたは複数のインクジェットヘッド、1つまたは複数のレーザ印刷機、1つまたは複数のレーザマーキングシステム、またはカラーペンなどの適切なマーキング手段で、エラーを有することをマークするまたはレッテル貼りすることを特徴とする請求項1に記載の品質管理システム。
【請求項13】
印刷インキまたはニス層の重合が充分な印刷インキまたはニス層を有する印刷枚葉上の個々の切り抜き部に1つまたは複数の噴射ヘッド、1つまたは複数のインクジェットヘッド、1つまたは複数のレーザ印刷機、1つまたは複数のレーザマーキングシステム、またはカラーペンなどの適切なマーキング手段で、校了切り抜き部としてマークするまたはレッテル貼りすることを特徴とする請求項1に記載の品質管理システム。
【請求項14】
前記方法が、場合によっては1つまたは複数のニス引き装置を有する少なくとも1つのオフセット装置を有する枚葉オフセット機との関連で適用されることを特徴とする、請求項1と請求項2から請求項13のいずれか1項と、に記載の品質管理システム。
【請求項15】
前記方法が、場合によっては1つまたは複数のニス引き装置またはフレキソ装置を有する枚葉ニス引き機または枚葉フレキソ印刷機との関連で適用されることを特徴とする請求項1と、請求項2から請求項13のいずれか1項と、に記載の品質管理システム。
【請求項16】
前記方法が、場合によっては1つまたは複数のニス引き装置またはフレキソ装置を有するロール紙オフセット印刷機との関連で適用されることを特徴とする請求項1と、請求項2から請求項13のいずれか1項と、に記載の品質管理システム。
【請求項17】
前記方法が、場合によっては1つまたは複数のフレキソ装置を有するロール紙フレキソ印刷機との関連で適用されることを特徴とする請求項1と、請求項2から請求項13のいずれか1項と、に記載の品質管理システム。