説明

印刷版取り付け装置及び印刷版取り付け方法

【課題】 印刷版の形成時と印刷時における印刷版の取り付け位置の精度を向上させることにより、印刷版の取付作業の効率を高めるとともに、印刷画像の品質を向上させることが可能な印刷版取り付け装置及び印刷版取り付け方法を提供する。
【解決手段】 露光装置100及び印刷装置200の取り付けマーク情報が印刷版取り付け装置10に入力される(ステップS10)。被印刷物212に印刷される印刷デザインが作成される(ステップS12)。色ごとの画像に基づいて印刷版302のサイズが計算される。印刷版302の形成時における露光ドラム102上での印刷版302の配置と、印刷版302を用いて画像を印刷するときにおける印刷ドラム202上での印刷版302の配置が計算され(ステップS14)、製版用位置合わせマークM30及び印刷用位置合わせマークM40が支持体304に出力される(ステップS18)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷版取り付け装置及び印刷版取り付け方法に係り、特にフレキソ印刷用の印刷版を製版装置及び印刷装置に取り付けるときの取り付け位置の精度を高めるための印刷版取り付け装置及び印刷版取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フレキソ印刷用積層体において、印刷用版材又は印刷用版材と弾性支持体の貼り合わせ物を、画像を形成した後に印刷が必要な部分にのみ配置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−19323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フレキソ印刷は、被印刷物(例えば、ダンボール)の特定部位のみに印刷することが多い。また、印刷の色ごとに印字位置が異なることが多い。
【0005】
フレキソ印刷版(刷版)は厚みのある樹脂版であり、面積当たりのコストが高い。また、フレキソ印刷版の画像が形成されない非画像領域の樹脂を厚く(一例で500μm)削除しなければならない。このため、フレキソ印刷版の形成には処理時間、処理エネルギーが必要となる。また、非画像領域が大きいと廃棄物が大量に発生し、対環境面でも良くない。このため、印刷ドラム(版胴)上の画像が形成されている領域にのみフレキソ印刷版を配置して印刷を行うことが提案されている。
【0006】
また、画像が形成されている領域にのみフレキソ印刷版を配置して印刷を行う場合、フレキソ印刷版を印刷ドラム上に取り付けるときの位置精度が要求される。また、複数の色に対応するフレキソ印刷版を用いて画像を重ねて印刷する場合には、各色に対応するフレキソ印刷版の相対位置についても高い位置精度が要求される。
【0007】
しかしながら、フレキソ印刷版の位置合わせを機械的に行うことは困難である。従来は、フレキソ印刷版を印刷ドラムに接着剤等で固定して、フレキソ印刷版の取り付け位置を調整しながら位置合わせを行っていたため、フレキソ印刷版の取り付け作業に時間を要するという問題がある。また、位置合わせのときの見当精度が悪く、画像品質に悪影響を与えるという問題がある。
【0008】
また、フレキソ印刷版は、フレキシブルであり容易に伸び縮みするため、版の形成時(製版装置(露光装置)の露光ドラムにフレキソ印刷版を取り付けたとき)と印刷時(印刷装置の印刷ドラムにフレキソ印刷版を取り付けたとき)で版の伸縮具合を同等にすることが求められている。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、印刷版の形成時と印刷時における印刷版の取り付け位置の精度を向上させることにより、印刷版の取り付け作業の効率を高めるとともに、印刷画像の品質を向上させることが可能な印刷版取り付け装置及び印刷版取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る印刷版取り付け装置は、印刷版を形成する製版装置に設けられた製版ドラムと、前記印刷版を用いて被印刷物に画像を印刷する印刷装置に設けられた印刷ドラムに形成された取り付けマークの情報を取得する取り付けマーク情報取得手段と、前記被印刷物に印刷する画像から色ごとの画像を作成する画像作成手段と、前記色ごとの画像にそれぞれ対応する印刷版のサイズと、前記印刷版の前記製版ドラム及び前記印刷ドラムにおける取り付け位置とをそれぞれ計算する第1の計算手段と、前記印刷版の前記製版ドラムにおける取り付け位置に基づいて前記製版ドラムに形成された取り付けマークに合わせて位置合わせを行うための製版用位置合わせマークの位置を計算するとともに、前記印刷版の前記印刷ドラムにおける取り付け位置に基づいて前記印刷ドラムに形成された取り付けマークに合わせて位置合わせを行うための印刷用位置合わせマークの位置を計算する第2の計算手段と、前記製版用位置合わせマーク及び前記印刷用位置合わせマークを、前記印刷版が取り付けられる支持体に印刷する印刷手段とを備える。
【0011】
上記第1の態様によれば、製版装置の製版ドラムに形成された取り付けマークに合わせて位置合わせを行うための製版用位置合わせマーク及び印刷装置の印刷ドラムに形成された取り付けマークに合わせて位置合わせを行うための印刷用位置合わせマークの位置を、色ごとの画像に対応して計算された印刷版が取り付けられる支持体に印刷することにより、製版時及び印刷時の両方において位置合わせを容易かつ精確に行うことが可能になる。
【0012】
本発明の第2の態様に係る印刷版取り付け装置は、上記第1の態様において、前記第2の計算手段が、前記印刷版が複数枚ある場合に、前記製版ドラム上における前記複数枚の印刷版の配置密度が高くなるように、前記製版用位置合わせマークを設定するようにしたものである。
【0013】
本発明の第3の態様に係る印刷版取り付け装置は、上記第1又は第2の態様において、前記第2の計算手段が、前記印刷版が複数枚ある場合に、前記複数枚の印刷版が前記製版ドラムの回転方向に並ぶように前記製版用位置合わせマークを設定するようにしたものである。
【0014】
上記第2及び第3の態様によれば、上記のように印刷版を配置することにより、印刷版の表面に画像を形成するヘッドの走査距離を短縮することができるので、印刷版を作成するときの作業効率を高めることが可能になる。
【0015】
本発明の第4の態様に係る印刷版取り付け装置は、上記第1から第3の態様において、前記印刷手段が、前記印刷版を取り付ける位置を示すマークを前記支持体に印刷するようにしたものである。
【0016】
上記第4の態様によれば、印刷版を支持体に取り付けるときの位置合わせを容易に行うことができる。
【0017】
本発明の第5の態様に係る印刷版取り付け装置は、上記第1から第4の態様において、前記印刷版のサイズに基づいて、前記印刷版に取り付けるクッション材のサイズを設定するサイズ設定手段を更に備え、前記印刷手段が、前記クッション材を取り付ける位置を示すマークを前記支持体に印刷するようにしたものである。
【0018】
上記第5の態様によれば、クッション材を支持体に取り付けるときの位置合わせを容易に行うことができる。
【0019】
本発明の第6の態様に係る印刷版取り付け装置は、上記第1から第5の態様において、前記画像の種類と、前記画像と前記印刷版の面積の比である面積率とに基づいて、前記印刷版の材質と、前記支持体に取り付けるクッション材の材質とを設定する材質設定手段を更に備え、前記印刷手段が、前記印刷版の材質及び前記クッション材の材質を前記支持体に印刷するようにしたものである。
【0020】
上記第6の態様によれば、クッション材のサイズ及び材質の選択を自動化することができる。
【0021】
本発明の第7の態様に係る印刷版取り付け方法は、印刷版を形成する製版装置に設けられた製版ドラムと、前記印刷版を用いて被印刷物に画像を印刷する印刷装置に設けられた印刷ドラムに形成された取り付けマークの情報を取得する取り付けマーク情報取得工程と、前記被印刷物に印刷する画像から色ごとの画像を作成する画像作成工程と、前記色ごとの画像にそれぞれ対応する印刷版のサイズと、前記印刷版の前記製版ドラム及び前記印刷ドラムにおける取り付け位置とをそれぞれ計算する第1の計算工程と、前記印刷版の前記製版ドラムにおける取り付け位置に基づいて前記製版ドラムに形成された取り付けマークに合わせて位置合わせを行うための製版用位置合わせマークの位置を計算するとともに、前記印刷版の前記印刷ドラムにおける取り付け位置に基づいて前記印刷ドラムに形成された取り付けマークに合わせて位置合わせを行うための印刷用位置合わせマークの位置を計算する第2の計算工程と、前記製版用位置合わせマーク及び前記印刷用位置合わせマークを、前記印刷版が取り付けられる支持体に印刷する印刷工程とを備える。
【0022】
本発明の第8の態様に係る印刷版取り付け方法は、上記第7の態様の前記第2の計算工程において、前記印刷版が複数枚ある場合に、前記製版ドラム上における前記複数枚の印刷版の配置密度が高くなるように、前記製版用位置合わせマークを設定するようにしたものである。
【0023】
本発明の第9の態様に係る印刷版取り付け方法は、上記第7又は第8の態様の前記第2の計算工程において、前記印刷版が複数枚ある場合に、前記複数枚の印刷版が前記製版ドラムの回転方向に並ぶように前記製版用位置合わせマークを設定するようにしたものである。
【0024】
本発明の第10の態様に係る印刷版取り付け方法は、上記第7から第9の態様の前記印刷工程において、前記印刷版を取り付ける位置を示すマークを前記支持体に印刷するようにしたものである。
【0025】
本発明の第11の態様に係る印刷版取り付け方法は、上記第7から第10の態様において、前記印刷版のサイズに基づいて、前記印刷版に取り付けるクッション材のサイズを設定するサイズ設定工程を更に備え、前記印刷工程において、前記クッション材を取り付ける位置を示すマークを前記支持体に印刷するようにしたものである。
【0026】
本発明の第12の態様に係る印刷版取り付け方法は、上記第7から第11の態様において、前記画像の種類と、前記画像と前記印刷版の面積の比である面積率とに基づいて、前記印刷版の材質と、前記支持体に取り付けるクッション材の材質とを設定する材質設定工程を更に備え、前記印刷工程において、前記印刷版の材質及び前記クッション材の材質を前記支持体に印刷するようにしたものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、製版装置の製版ドラムに形成された取り付けマークに合わせて位置合わせを行うための製版用位置合わせマーク及び印刷装置の印刷ドラムに形成された取り付けマークに合わせて位置合わせを行うための印刷用位置合わせマークの位置を、色ごとの画像に対応して計算された印刷版が取り付けられる支持体に印刷することにより、製版時及び印刷時の両方において位置合わせを容易かつ精確に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷版取り付け装置を示すブロック図
【図2】本発明の一実施形態に係る製版装置(露光装置)を示す斜視図
【図3】本発明の一実施形態に係る印刷装置を示す図
【図4】本発明の一実施形態に係る印刷装置の印刷ドラムの斜視図
【図5】本発明の一実施形態に係る印刷版構造体300を示す側面図
【図6】本発明の一実施形態に係る印刷版構造体300を示す平面図
【図7】露光ドラム102に印刷版構造体300を取り付けた状態を示す平面図
【図8】印刷ドラム202に印刷版構造体300を取り付けた状態を示す平面図
【図9】本発明の一実施形態に係る印刷版取り付け方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面に従って本発明に係る印刷版取り付け装置及び印刷版取り付け方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0030】
[印刷版取り付け装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷版取り付け装置を示すブロック図である。
【0031】
図1に示すように、本実施形態に係る印刷版取り付け装置10は、制御部12、操作入力部14、印刷デザイン作成部16、演算部18、プリンタ20、マーク情報記憶部22、印刷版データベース(印刷版DB)24、クッション材データベース(クッション材DB)26及び接続インターフェース(接続I/F)28を備える。
【0032】
制御部12は、印刷版取り付け装置10の各部に信号を出力して各部の動作を制御するCPUと、制御プログラムの格納領域及び上記CPUが演算を行うときの作業領域を含むメモリとを備える。
【0033】
操作入力部14は、ユーザからの操作入力を受け付けるスイッチである。制御部12は、オペレータによる操作入力部14への操作内容を解釈して印刷版取り付け装置10の各部を制御する。
【0034】
印刷デザイン作成部16は、操作入力部14からの入力に基づいて、被印刷物(例えば、紙、ダンボール等のパッケージ、箱の表面)に印刷する画像のデザインを作成する。そして、印刷デザイン作成部16は、作成した画像のデザインに基づいて印刷に用いるインク色(例えば、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y))ごとの画像に分解する。なお、印刷版取り付け装置10とは別に印刷デザイン作成用の専用端末を設けてもよい。
【0035】
マーク情報記憶部22には、印刷版の製造(露光)に使用する製版装置(露光装置)100の露光ドラム102と、印刷装置200の印刷ドラム202の表面に形成された取り付けマークに関するマーク情報が記憶される。取り付けマークは、例えば、基準線と、該基準線から所定の間隔(例えば、300mm)ごとに格子状に形成された基準補助線とを含んでおり、マーク情報は、例えば、基準線の形成位置、基準線と基準補助線の相対位置(例えば、間隔及び方向)を示す情報を含んでいる。印刷装置200に対するマーク情報は、上記基準線と印刷時の被印刷物の基準位置(例えば、被印刷物の端辺等)との関係を示す情報を、露光装置100に対するマーク情報は、上記基準線と露光装置100の画像形成位置の原点(レーザ記録の場合は基準アドレス位置)との関係を示す情報を含む。
【0036】
なお、露光装置100のマーク情報と印刷装置200のマーク情報とはそれぞれ別々のファイルに格納されており、印刷版302の作成に用いる露光装置100と印刷版302を用いた印刷に用いる印刷装置200はそれぞれ独立に選択することが可能となっている。露光装置100のマーク情報と印刷装置200のマーク情報とは、それぞれ露光装置100及び印刷装置200の機種情報ごとに記憶される。
【0037】
印刷版DB24には、印刷版302の特性データ(例えば、材質、硬度に関する情報)が格納される。
【0038】
クッション材DB26には、クッション材306の特性データ(例えば、材質、硬度に関する情報)が格納される。ここで、クッション材306は、印刷版302が貼り付けられた支持体304の裏面に、印刷版302によって被印刷物212の表面に加えられる印圧を最適化するために貼り付けられる弾力性がある部材である。
【0039】
演算部18は、上記印刷デザイン作成部16によって作成された色ごとの画像の大きさに基づいて、該画像に対応する印刷版302のサイズを設定するとともに、印刷版302が貼り付けられる支持体304及びクッション材306のサイズを設定する。支持体304のサイズは、印刷版302と同じか、又は印刷版302よりも大きいサイズに設定される。クッション材306のサイズは、例えば、印刷版302と略同じサイズか又は印刷版302よりも大きいサイズに設定される。また、クッション材306は、支持体304の反対側の面に貼り付けられる印刷版302と略重なるように配置される。
【0040】
また、演算部18は、上記色ごとの画像の種類に基づいて、印刷版302、支持体304及びクッション材306の種類(例えば、材質、弾性率、硬度)を設定する。具体的には、演算部18は、色ごとの画像データに基づいて、画像と印刷版302の面積の比(面積率)を計算し、上記面積率、クッション材306のサイズに基づいて、印刷版302の各画素領域にかかる圧力を計算する。また、演算部18は、色ごとの画像の解析から各印刷版302に形成される画像の特徴を特定し、例えば、線画、ベタ中心の画像、階調再現重視の画像等の分類を行う。そして、演算部18は、印刷版DB24内の印刷版302の特性データ及びクッション材DB26内のクッション材306の特性データに基づいて、上記画像の分類結果に基づいて最適な印刷版302及びクッション材306の種類を決定する。
【0041】
例えば、印刷版302に形成される画像中の細かい絵柄(例えば、文字、線画)の面積率が所定値以上の場合には、絵柄の太りを低減するために、比較的高硬度(一例でショアA硬度35〜80度)の印刷版302と、比較的低硬度(一例でショアA硬度3〜50度)のクッション材306が採用される。また、ベタの領域の面積率が所定値以上の場合には、ベタの領域におけるインクのかすれを低減するために、比較的低硬度(一例でショアA硬度20〜50度)の印刷版302と、比較的高硬度(一例でショアA硬度20〜60度)のクッション材306が採用される。
【0042】
従来、クッション材306等の材質は、画像の特徴(文字をしっかり出す、ベタ部のインキの濃度を高める、階調性のある画像を再現する等)及びインキをのせる比率(面積率)から印刷オペレータが経験により判断していた。印刷を試行して結果が悪ければ再度調整する必要があるため、生産性劣化の原因であった。本実施形態によれば、クッション材306の選択とサイズの決定とを自動化することができる。
【0043】
印刷デザイン作成部16によって作成された色ごとの画像は、印刷版302作成用の露光データ(例えば、色の濃淡がドットの集合によって表された網点データ)に変換されて、接続I/F28を介して製版装置(露光装置)100に出力される。なお、露光データは、印刷版302のサイズに対応する領域についてのみ生成され、画像が形成される必要最小限の領域にのみ露光が行われる。これにより、印刷版302の生成の生産性、印刷版302を彫刻する時に生じる廃材・露光のエネルギー等を最小限に押さえて環境影響を最小化できる。
【0044】
また、演算部18は、印刷版302の露光ドラム102における取り付け位置と、印刷版302の印刷ドラム202における取り付け位置をそれぞれ計算する演算部18は、印刷版302の作成に用いる製版装置(露光装置)100と印刷装置200の機種情報に基づいて、それぞれのマーク情報を取得する。そして、演算部18は、上記取得したマーク情報に基づいて、印刷版302の露光ドラム102における取り付け位置に基づいて露光ドラム102に形成された取り付けマークM10に合わせて位置合わせを行うための製版用位置合わせマークM30の位置を計算するとともに、印刷版302の印刷ドラム202における取り付け位置に基づいて印刷ドラム202に形成された取り付けマークM20に合わせて位置合わせを行うための印刷用位置合わせマークM32の位置を計算する。
【0045】
プリンタ20は、例えば、インクジェットプリンタであり、製版用位置合わせマークM30及び印刷用位置合わせマークM32を、印刷版302が取り付けられる支持体304に印刷する。また、プリンタ20は、印刷版302及びクッション材306の貼り付ける貼り付け位置を示すマーク(例えば、輪郭線)と、印刷版302及びクッション材306の種類を指定する情報を支持体304に印刷する。支持体304に印刷される内容は、具体的には、印刷版302及びクッション材306の取り付け位置及びサイズ(例えば、輪郭線、向き)、種類(例えば、印刷版:タイプA、クッション材:タイプ5)、製版用位置合わせマークM30及び印刷用位置合わせマークM32(例えば、トンボマーク)、製版用位置合わせマークM30及び印刷用位置合わせマークM32と位置合わせをする取り付けマーク(後述の基準線又は基準補助線)を示す位置指定コード(例えば、位置合わせマークM30又はM32を基準線に合わせる場合“0−0”、基準線から数えてX,Y方向にそれぞれ1番目の基準補助線に合わせる場合“1−1”)である。
【0046】
[製版装置(露光装置)100の構成]
図2は、本発明の一実施形態に係る製版装置(露光装置)を示す斜視図である。
【0047】
図2に示すように、本実施形態に係る製版装置(露光装置)100は、露光ドラム102と、レーザー光を照射するレーザーヘッド104と、レーザーヘッド104を副走査方向(図中のX方向)に移動させる駆動部106とを備える。
【0048】
露光ドラム102の表面には、印刷版302を取り付けるときの位置合わせの基準となる取り付けマークM10が形成されている。取り付けマークM10は、レーザーヘッド104の露光位置の原点を基準に定められる基準線と、この基準線から所定の間隔で形成された基準補助線とを含んでいる。基準線及び基準補助線は、例えば、露光ドラム102の円周方向(回転方向)及び円周方向に直交する方向に形成される。
【0049】
なお、製版装置(露光装置)100としては、例えば、レーザー光により印刷版の材料(例えば、ゴム版)の一部をアブレーションにより除去して、画像に対応する凹凸を形成するレーザー彫刻型の装置や、感光層(例えば、紫外線硬化性の樹脂版)の表面にマスクを作成し、赤外線レーザーを照射して上記マスクを一部除去し、このマスクを除去した部分を通して紫外線を照射して感光層の一部を硬化させ、感光層の硬化された部分以外を除去して画像に対応する凹凸を形成するブラックレイヤー型の装置を適用することができる。
【0050】
[印刷装置200の構成]
図3は、本発明の一実施形態に係る印刷装置を示す図であり、図4は、本発明の一実施形態に係る印刷装置の印刷ドラムの斜視図である。
【0051】
図3に示すように、本実施形態に係る印刷装置200は、印刷ドラム(版胴)202と、印刷ドラム202に被印刷物212を押しつけて印刷ドラム202ととともに回転して被印刷物212を移動させる圧胴204と、インクを貯蔵するインクタンク206と、インクタンク206に貯蔵されたインクをアニロックスロール210に供給するドクターチャンバー208と、供給されたインクを印刷ドラム202に取り付けられた印刷版302に塗布するアニロックスロール210とを備える。
【0052】
印刷ドラム202の表面には、印刷版302を取り付けるときの位置合わせの基準となる取り付けマークM20が形成されている。取り付けマークM20は、被印刷物212の端辺に対応する位置又は端辺から所定の間隔の位置に形成された基準線と、この基準線から所定の間隔で形成された基準補助線とを含んでいる。基準線及び基準補助線は、例えば、印刷ドラム202の円周方向(回転方向)及び円周方向に直交する方向に形成される。
【0053】
[印刷版構造体300の構成]
図5は、本発明の一実施形態に係る印刷版構造体300を示す側面図であり、図6は平面図である。
【0054】
図5に示すように、本実施形態に係る印刷版構造体300は、支持体304の両面にそれぞれ印刷版302と、クッション材306とを貼り付けることにより構成される。図5に示すように、印刷版302のサイズは支持体304よりも小さい。また、クッション材306は、印刷版302と略同じサイズか又は印刷版302よりも大きいサイズに設定され、印刷版302と略重なるように配置される。
【0055】
印刷版302、支持体304及びクッション材306を貼り合わせる方法としては、接着剤や両面テープで貼り付けた後、ローラー圧着する等の方法を用いることができる。
【0056】
印刷版302を貼り付けた支持体304は、露光後、現像処理、印刷に使用されるのでこれらの工程で剥離・変形しない材質の支持体、貼り付け剤を使用する。
【0057】
印刷版302としては、例えば、ポリアミド、ポリビニルアルコール(部分けん化酢酸ビニルを含む)、ポリウレタン、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム等を感光層に含有する感光性樹脂版材、ゴム版材等、又はこれらの組み合わせを用いることができる。
【0058】
支持体304としては、例えば、アルミニウム、ポリエステル樹脂を用いることができる。
【0059】
クッション材306としては、例えば、弾力性(弾性回復力)のある部材、例えば、発泡合成ゴム、発泡天然ゴム、発泡ポリウレタン、紫外線露光により硬化させた感光性樹脂等、又はこれらの組み合わせを用いることができる。
【0060】
図6(a)及び図6(b)に示すように、支持体304の表面には、露光ドラム102に形成された取り付けマークM10に合わせて位置合わせを行うための製版用位置合わせマークM30と、印刷版302の印刷ドラム202における取り付け位置に基づいて印刷ドラム202に形成された取り付けマークM20に合わせて位置合わせを行うための印刷用位置合わせマークM32とが別々に印刷される。なお、マークM30とM32とを兼用するようにしてもよい。
【0061】
[印刷版の取り付け]
図7は、露光ドラム102に印刷版構造体300を取り付けた状態を示す平面図であり、図8は、印刷ドラム202に印刷版構造体300を取り付けた状態を示す平面図である。
【0062】
図7及び図8は、被印刷物212上の離れた位置にそれぞれシアンとマゼンタのインクで「富士」と印刷する場合の印刷版302、支持体304、露光ドラム102及び印刷ドラム202の取り付けマーク、支持体304の位置合わせマークの位置関係を示している。
【0063】
図7に示すように、露光ドラム102の表面には、取り付けマークM10として、基準線M12と、基準線M12から所定の間隔(W1,W2)で格子状に配置された複数の基準補助線M14が形成されている。また、図8に示すように、印刷ドラム202の表面には、取り付けマークM20として、基準線M22と、基準線M22から所定の間隔(W3,W4)で格子状に配置された複数の基準補助線M24が形成されている。
【0064】
印刷版構造体300を印刷ドラム202に取り付けるときには、上記支持体304に印刷された印刷用位置合わせマークM32と、上記支持体304に印刷された位置指定コードにより指定される基準線M22又は基準補助線M24とを合わせることにより、印刷版構造体300を精確に取り付けることができる。図8に示す例では、シアンの画像を形成するための印刷版302Cが貼り付けられた支持体304Cが基準線M22に、マジェンダの画像を形成するための印刷版302Mが貼り付けられた支持体304Mが基準線M22から数えてX,Y方向にそれぞれ1番目(”1−1”)の基準補助線M22に位置合わせされる。
【0065】
一方、印刷版構造体300を露光ドラム102に取り付けるときには、上記支持体304に印刷された製版用位置合わせマークM30と、上記支持体304に印刷された位置指定コードにより指定される基準線M12又は基準補助線M14とを合わせることにより、印刷版構造体300を精確に取り付けることができる。
【0066】
図7に示すように、印刷版構造体300を露光ドラム102に取り付けるときには、露光ドラム102表面において印刷版構造体300の配置密度が高くなるように貼り付けられる。例えば、印刷版構造体300は、露光ドラム102の回転方向に並ぶように、即ち、レーザーヘッド104の副走査方向の動き量を最小にするように配置される。
【0067】
上記のように、印刷ドラム202上では最終印刷物に対応した配置を実現するとともに、露光ドラム102上では生産性の観点で最適な配置を実現するため、製版用位置合わせマークM30と印刷用位置合わせマークM32とは別々に設定することが望ましい。
【0068】
なお、印刷版構造体300を露光ドラム102及び印刷ドラム202に貼り付ける方法としては、例えば、各種接着剤、粘着剤を使用する方法のほか、露光ドラム102及び印刷ドラム202に印刷版構造体300を吸引する吸引機構、印刷版構造体300を挟み込んで固定する固定機構等を設ける方法を適用することができる。また、印刷版構造体300に位置決め用のピン穴を予め空けておき、露光ドラム102及び印刷ドラム202にそれぞれ固定用のピンを設けることで取り付けの精度と操作性向上を図るようにしてもよい。
【0069】
[印刷版取り付け方法]
図9は、本発明の一実施形態に係る印刷版取り付け方法を示すフローチャートである。
【0070】
まず、露光装置100及び印刷装置200の取り付けマーク情報が印刷版取り付け装置10に入力される(ステップS10)。
【0071】
次に、印刷デザイン作成部16において、被印刷物212に印刷される印刷デザインが作成される(ステップS12)。ステップS12では、被印刷物を組み立てたときの立体形状に対応する印刷デザインが作成される。この印刷デザインの画像データは、インク色(例えば、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y))ごとの画像データに変換される。
【0072】
次に、被印刷物212の展開図が計算され、該展開図における画像形成領域の位置及びサイズがインク色ごとに計算され、この画像形成領域の位置及びサイズに基づいて、各画像形成領域の画像を形成するための印刷版302のサイズが計算される。なお、印刷版302の位置は、被印刷物を組み立てたときの折り目の位置を考慮して計算される。そして、印刷版302の形成時における露光ドラム102上での印刷版302の配置と、印刷版302を用いて画像を印刷するときにおける印刷ドラム202上での印刷版302の配置が計算される(ステップS14)。
【0073】
次に、印刷版302の種類と、クッション材306のサイズ及び種類が設定される(ステップS16)。
【0074】
次に、印刷版302及びクッション材306の貼り付け位置、サイズ及び種類を示す設定情報と、製版用位置合わせマークM30及び印刷用位置合わせマークM32が支持体304に出力(プリント)される(ステップS18)。
【0075】
次に、印刷デザイン作成部16の画像作成アプリケーション上において、印刷版302の位置、サイズのデータに基づいて、色ごとの画像が切り出されて、露光装置100の取り付けマークを基準とした位置に貼り付けられて、各印刷版302に対応する画像に基づいて露光データ(網点データ)が生成され、接続I/F28を介して露光装置100に出力される(ステップS20)。
【0076】
次に、上記露光データに基づいて露光ドラム102に貼り付けられた印刷版302の表面に画像が露光された後現像処理が行われる(ステップS22)。ステップS22では、まず、支持体304の位置指定コードによって指定された位置に指定サイズの未露光の印刷版302が貼り付けられる。次に、印刷版構造体300の支持体304が製版用位置合わせマークM30を使用して位置合わせされて、露光ドラム102の表面に取り付けられる。そして、露光ドラム102及びレーザーヘッド104が駆動されて、印刷版302の表面に画像が露光され、現像処理が行われる。
【0077】
次に、印刷装置200の印刷ドラム202に印刷版302が取り付けられて画像の印刷が行われる(ステップS24)。ステップS24では、まず、支持体304の裏面に、支持体304に印刷された設定情報によって指定されたクッション材306が貼り付けられる。次に、印刷版302、支持体304及びクッション材306からなる印刷版構造体300が印刷用位置合わせマークM32を使用して位置合わせされ、印刷ドラム202の表面に貼り付けられる。そして、印刷装置200が駆動されて、画像の印刷が行われる。なお、必要に応じて、オペレータが印刷結果に基づいて、印刷位置を微調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10…印刷版取り付け装置、12…制御部、14…操作入力部、16…印刷デザイン作成部、18…演算部、20…プリンタ、22…マーク情報記憶部、24…印刷版データベース(印刷版DB)、26…クッション材データベース(クッション材DB)、28…接続インターフェース(接続I/F)、100…製版装置(露光装置)、102…露光ドラム、200…印刷装置、202…印刷ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷版を形成する製版装置に設けられた製版ドラムと、前記印刷版を用いて被印刷物に画像を印刷する印刷装置に設けられた印刷ドラムに形成された取り付けマークの情報を取得する取り付けマーク情報取得手段と、
前記被印刷物に印刷する画像から色ごとの画像を作成する画像作成手段と、
前記色ごとの画像にそれぞれ対応する印刷版のサイズと、前記印刷版の前記製版ドラム及び前記印刷ドラムにおける取り付け位置とをそれぞれ計算する第1の計算手段と、
前記印刷版の前記製版ドラムにおける取り付け位置に基づいて前記製版ドラムに形成された取り付けマークに合わせて位置合わせを行うための製版用位置合わせマークの位置を計算するとともに、前記印刷版の前記印刷ドラムにおける取り付け位置に基づいて前記印刷ドラムに形成された取り付けマークに合わせて位置合わせを行うための印刷用位置合わせマークの位置を計算する第2の計算手段と、
前記製版用位置合わせマーク及び前記印刷用位置合わせマークを、前記印刷版が取り付けられる支持体に印刷する印刷手段と、
を備える印刷版取り付け装置。
【請求項2】
前記第2の計算手段は、前記印刷版が複数枚ある場合に、前記製版ドラム上における前記複数枚の印刷版の配置密度が高くなるように、前記製版用位置合わせマークを設定する請求項1記載の印刷版取り付け装置。
【請求項3】
前記第2の計算手段は、前記印刷版が複数枚ある場合に、前記複数枚の印刷版が前記製版ドラムの回転方向に並ぶように前記製版用位置合わせマークを設定する請求項1又は2記載の印刷版取り付け装置。
【請求項4】
前記印刷手段は、前記印刷版を取り付ける位置を示すマークを前記支持体に印刷する請求項1から3のいずれか1項記載の印刷版取り付け装置。
【請求項5】
前記印刷版のサイズに基づいて、前記印刷版に取り付けるクッション材のサイズを設定するサイズ設定手段を更に備え、
前記印刷手段は、前記クッション材を取り付ける位置を示すマークを前記支持体に印刷する請求項1から4のいずれか1項記載の印刷版取り付け装置。
【請求項6】
前記画像の種類と、前記画像と前記印刷版の面積の比である面積率とに基づいて、前記印刷版の材質と、前記支持体に取り付けるクッション材の材質とを設定する材質設定手段を更に備え、
前記印刷手段は、前記印刷版の材質及び前記クッション材の材質を前記支持体に印刷する請求項1から5のいずれか1項記載の印刷版取り付け装置。
【請求項7】
印刷版を形成する製版装置に設けられた製版ドラムと、前記印刷版を用いて被印刷物に画像を印刷する印刷装置に設けられた印刷ドラムに形成された取り付けマークの情報を取得する取り付けマーク情報取得工程と、
前記被印刷物に印刷する画像から色ごとの画像を作成する画像作成工程と、
前記色ごとの画像にそれぞれ対応する印刷版のサイズと、前記印刷版の前記製版ドラム及び前記印刷ドラムにおける取り付け位置とをそれぞれ計算する第1の計算工程と、
前記印刷版の前記製版ドラムにおける取り付け位置に基づいて前記製版ドラムに形成された取り付けマークに合わせて位置合わせを行うための製版用位置合わせマークの位置を計算するとともに、前記印刷版の前記印刷ドラムにおける取り付け位置に基づいて前記印刷ドラムに形成された取り付けマークに合わせて位置合わせを行うための印刷用位置合わせマークの位置を計算する第2の計算工程と、
前記製版用位置合わせマーク及び前記印刷用位置合わせマークを、前記印刷版が取り付けられる支持体に印刷する印刷工程と、
を備える印刷版取り付け方法。
【請求項8】
前記第2の計算工程において、前記印刷版が複数枚ある場合に、前記製版ドラム上における前記複数枚の印刷版の配置密度が高くなるように、前記製版用位置合わせマークを設定する請求項7記載の印刷版取り付け方法。
【請求項9】
前記第2の計算工程において、前記印刷版が複数枚ある場合に、前記複数枚の印刷版が前記製版ドラムの回転方向に並ぶように前記製版用位置合わせマークを設定する請求項7又は8記載の印刷版取り付け方法。
【請求項10】
前記印刷工程において、前記印刷版を取り付ける位置を示すマークを前記支持体に印刷する請求項7から9のいずれか1項記載の印刷版取り付け方法。
【請求項11】
前記印刷版のサイズに基づいて、前記印刷版に取り付けるクッション材のサイズを設定するサイズ設定工程を更に備え、
前記印刷工程において、前記クッション材を取り付ける位置を示すマークを前記支持体に印刷する請求項7から10のいずれか1項記載の印刷版取り付け方法。
【請求項12】
前記画像の種類と、前記画像と前記印刷版の面積の比である面積率とに基づいて、前記印刷版の材質と、前記支持体に取り付けるクッション材の材質とを設定する材質設定工程を更に備え、
前記印刷工程において、前記印刷版の材質及び前記クッション材の材質を前記支持体に印刷する請求項7から11のいずれか1項記載の印刷版取り付け方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate