説明

印刷物への印刷方法及び印刷装置

【課題】比較的簡素な構成で2つの印刷範囲の距離が互いに異なる複数種類の印刷物に対応することが可能な印刷装置を提供する。
【解決手段】前端Fを基準として印刷開始位置Ps1が設定された第1印刷範囲A1と、後端Bを基準として印刷開始位置Ps2が設定された第2印刷範囲A2を備えたカートン7の各印刷範囲A1、A2にそれぞれ印刷を行う印刷装置10において、制御装置20は、第1検出位置P1をカートン7の前端Fが通過した時期に基づいて第1印刷開始時期Ts1を設定するとともに、第2検出位置P2をカートン7の後端Bが通過した時期に基づいて第2印刷開始時期Ts2を設定し、第1印刷開始時期Ts1に第1印刷範囲A1への印刷が開始され、第2印刷開始時期Ts2に第2印刷範囲A2への印刷が開始されるように各印刷ヘッド11、12の動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の前端を基準として印刷開始位置が設定された第1印刷範囲と印刷物の後端を基準として印刷開始位置が設定された第2印刷範囲とを備えた印刷物に印刷を行うための印刷方法及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の長さに切断される長尺状のフィルムを繰り出し、そのフィルムの所定位置に印字を行う装置に組み込まれる位置補正装置において、フィルムの所定位置に複数間隔を有して設けられた検知マークをマークセンサで検出し、そのマークセンサからのタイミング信号の入力のずれに基づいて印字機を移動制御することにより、フィルムの伸縮に起因する印字位置のずれを補正する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、印刷物の色調を計測する測色センサをリニアガイドによって計測位置と校正位置との間で移動可能とすることにより、印刷物の配置を変更することなく測色センサの校正を行うことが可能な構成装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この他、印刷シートに印刷された複数のラベルをCCDカメラで撮像し、その撮像データと基準データとを比較してラベルの印刷が良好か否か判定する印刷物検知機構が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−150674号公報
【特許文献2】特開2001−343284号公報
【特許文献3】特開2006−231537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷装置によって印刷が行われる印刷範囲は、印刷対象である印刷物の形状や用途によって種々の位置に設定される。例えば、製品が梱包された段ボールカートン(段ボール箱)の対向する2つの面にそれぞれ印刷することがある。このような段ボールカートンにおいては、これら2つの面の外観が同じになるようにこれらの面の印刷範囲を設定する。そのため、一方の面の第1印刷範囲が印刷時に搬送方向前側となる印刷物の前端から所定の距離に設定されると、他方の面の第2印刷範囲は印刷時に搬送方向後側となる印刷物の後端から所定の距離に設定されることになる。そして、このような段ボールカートンに印刷を行う印刷装置では、第1印刷範囲と第2印刷範囲との間の距離が印刷時の搬送方向において互いに異なる複数種類の段ボールカートンに対して印刷を行うことがある。このような複数種類の段ボールカートンに印刷を行う方法としては搬送経路上における印刷物の前端を基準として第1印刷範囲への印刷開始時期及び第2印刷範囲への印刷開始時期をそれぞれ設定する方法が知られている。しかしながら、この方法では第2印刷範囲の印刷開始時期を種類毎に変更する必要があるため、印刷物の種類を変更する場合に手間がかかる。
【0005】
特許文献1の装置では、フィルムの所定位置に印字を行うため印字機を移動させるので印刷開始時期を変更する必要はないが、印字機を移動させるための機構が必要となり、装置が複雑になるおそれがある。特許文献2の装置においても同様に移動機構が必要であるため、装置が複雑になるおそれがある。特許文献3の装置は、印刷物に対して行われた印刷が良好か否か判定する装置であり、印刷範囲の間の距離が異なる印刷物に対して印刷装置を対応させる方法については開示されていない。
【0006】
そこで、本発明は、比較的簡素な構成で2つの印刷範囲の距離が互いに異なる複数種類の印刷物に対応することが可能な印刷物への印刷方法及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の印刷物への印刷方法は、所定の搬送経路に沿って搬送されている印刷物(7)の所定の印刷範囲(A1、A2)に印刷手段(11、12)にて印刷を行う印刷方法において、前記印刷物には、搬送時に搬送方向前側となる前記印刷物の前端(F)から所定の第1距離に印刷開始位置(Ps1)が設定された第1印刷範囲(A1)と、搬送時に搬送方向後側となる前記印刷物の後端(B)から所定の第2距離に印刷開始位置(Ps2)が設定された第2印刷範囲(A2)とが前記所定の印刷範囲として設けられ、前記所定の搬送経路上であり、かつ前記印刷手段にて印刷が行われる印刷位置(PP)より搬送方向上流に設定された第1検出位置(P1)を前記印刷物の前端が通過した時期に基づいて第1印刷開始時期(Ts1)を設定し、設定した前記第1印刷開始時期に前記第1印刷範囲への印刷を開始する第1印刷工程と、前記所定の搬送経路上であり、かつ前記第1検出位置より搬送方向上流に設定された第2検出位置(P2)を前記印刷物の後端が通過した時期に基づいて第2印刷開始時期(Ts2)を設定し、設定した前記第2印刷開始時期に前記第2印刷範囲への印刷を開始する第2印刷工程と、を備えていることにより、上述した課題を解決する。
【0008】
本発明の印刷物への印刷方法によれば、第1印刷開始時期が第1検出位置を印刷物の前端が通過した時期に基づいて設定され、第2印刷開始時期が第2検出位置を印刷物の後端が通過した時期に基づいて設定されるので、第1印刷範囲と第2印刷範囲との間の距離が異なる複数種類の印刷物に対して印刷を行う場合でも印刷物の種類毎に各印刷範囲への印刷開始時期を変更することなくこれら複数種類の印刷物の各印刷範囲にそれぞれ適正に印刷を行うことができる。そして、本発明の印刷方法では、第1検出位置を印刷物の前端が通過したか否か検出する手段及び第2検出位置を印刷物の後端が通過したか否か検出する手段を設けることにより2つの印刷範囲の間の距離が異なる複数種類の印刷物に対応可能であり、印刷手段や印刷物を検出する手段などを移動させるための機構が不要であるため、比較的簡素な構成でこれら複数種類の印刷物に対応することが可能である。
【0009】
本発明の印刷装置(10)は、搬送コンベア(4)により所定の搬送経路に沿って搬送されている印刷物(7)に対して前記搬送コンベアの側方に設けられた印刷手段(11、12)にて前記印刷物の所定の印刷範囲(A1、A2)に印刷を行う印刷装置において、前記印刷物には、搬送時に搬送方向前側となる前記印刷物の前端(F)から所定の第1距離に印刷開始位置(Ps1)が設定された第1印刷範囲(A1)と、搬送時に搬送方向後側となる前記印刷物の後端(B)から所定の第2距離に印刷開始位置(Ps2)が設定された第2印刷範囲(A2)とが前記所定の印刷範囲として設けられ、前記所定の搬送経路上であり、かつ前記印刷手段にて印刷が行われる印刷位置(PP)より搬送方向上流に設定された第1検出位置(P1)における前記印刷物の有無に対応した信号を出力する第1検出手段(13)と、前記所定の搬送経路上であり、かつ前記第1検出位置より搬送方向上流に設定された第2検出位置(P2)における前記印刷物の有無に対応した信号を出力する第2検出手段(14)と、前記第1検出手段の出力信号が前記第1検出位置に前記印刷物が無い場合に出力される信号から前記第1検出位置に前記印刷物が有る場合に出力される信号に切り替わった時期に基づいて第1印刷開始時期(Ts1)を設定する第1印刷開始時期設定手段(20)と、前記第2検出手段の出力信号が前記第2検出位置に前記印刷物が有る場合に出力される信号から前記第2検出位置に前記印刷物が無い場合に出力される信号に切り替わった時期に基づいて第2印刷開始時期(Ts2)を設定する第2印刷開始時期設定手段(20)と、前記第1印刷開始時期に前記第1印刷範囲への印刷が開始され、前記第2印刷開始時期に前記第2印刷範囲への印刷が開始されるように前記印刷手段を制御する制御手段(20)と、を備えていることにより、上述した課題を解決する。
【0010】
本発明の印刷装置によれば、上述した印刷方法と同様に第1印刷開始時期設定手段により第1検出位置を印刷物の前端が通過した時期に基づいて第1印刷開始時期が設定され、第2印刷開始時期設定手段により第2検出位置を印刷物の後端が通過した時期に基づいて第2印刷開始時期が設定されるので、第1印刷範囲と第2印刷範囲との間の距離が異なる複数種類の印刷物の各印刷範囲にそれぞれ適正に印刷を行うことができる。また、本発明の印刷装置では、印刷手段や各検出手段を移動させる必要がないため、比較的簡素な構成でこれら複数種類の印刷物に対応することが可能である。そのため、前記搬送コンベアでは、前記印刷手段にて印刷が行われる印刷面の長さが異なる複数種類の印刷物が搬送されてもよい。
【0011】
本発明の印刷装置の一形態において、前記印刷物はカートンであり、前記カートンのうち前記所定の搬送経路の一方の側方に向く部分に前記第1印刷範囲が設けられるとともに、前記カートンのうち前記所定の搬送経路の他方の側方に向く部分に前記第2印刷範囲が設けられ、前記印刷手段として、前記搬送コンベアの一方の側方に配置された第1印刷手段(11)と、前記搬送コンベアの他方の側方に配置された第2印刷手段(12)と、を備えていてもよい。このように搬送コンベアの一方の側方と他方の側方にそれぞれ印刷手段を設けることにより、カートンのうち搬送経路の一方の側方に向く部分に設けられた印刷範囲及び搬送経路の他方の側方に向く部分に設けられた印刷範囲のそれぞれに印刷を行うことができる。
【0012】
本発明の印刷装置の一形態において、前記第1印刷開始時期設定手段は、前記第1検出手段の出力信号が前記第1検出位置に前記印刷物が無い場合に出力される信号から前記第1検出位置に前記印刷物が有る場合に出力される信号に切り替わった時期と、前記印刷位置と前記第1検出位置との間の距離(L2)と、前記搬送コンベアの搬送速度(V)とに基づいて前記第1印刷開始時期を設定してもよい。また、前記第2印刷開始時期設定手段は、前記第2検出手段の出力信号が前記第2検出位置に前記印刷物が有る場合に出力される信号から前記第2検出位置に前記印刷物が無い場合に出力される信号に切り替わった時期と、前記印刷位置と前記第2検出位置との間の距離(L3)と、前記搬送コンベアの搬送速度(V)とに基づいて前記第2印刷開始時期を設定してもよい。印刷物の各端部が各検出位置を通過してから各印刷範囲の印刷開始位置が印刷手段にて印刷が行われる位置まで到達する時間は、各検出位置と印刷位置との間の距離及び搬送コンベアの搬送速度に基づいて算出することができる。そのため、このように第1印刷開始時期及び第2印刷開始時期をそれぞれ設定することにより、各印刷範囲にそれぞれ適正に印刷を行うことができる。
【0013】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
以上に説明したように、本発明によれば、第1検出位置を印刷物の前端が通過した時期に基づいて第1印刷範囲に印刷を開始する第1印刷開始時期が設定され、第2検出位置を印刷物の後端が通過した時期に基づいて第2印刷範囲に印刷を開始する第2印刷開始時期が設定されるので、第1印刷範囲と第2印刷範囲との間の距離が異なる複数種類の印刷物の各印刷範囲にそれぞれ適正に印刷を行うことができる。また、印刷手段や各検出手段を移動させる必要がないため、比較的簡素な構成でこれら複数種類の印刷物に対応することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の一形態に係る印刷装置が組み込まれたケーサーの概略構成を示している。図1のケーサー1では、シートマガジン2から平板状の包装資材としてのシート3が一枚ずつ取り出される。シート3は段ボール又は板紙といった包装材料から構成されている。各シート3は、所定の半製品状態(組み立て途中の状態)に折り曲げられて搬送コンベアとしてのシートコンベア4に周期的に載置される。シートマガジン2からのシート3の取り出しは、例えば吸引力を利用してシート3を搬送する吸着型の装置にて行われる。シートコンベア4に載置されたシート3は、シートコンベア4によって所定のピッチで一列に一定速度で直線的に搬送される。シートコンベア4の側方には缶用コンベア5が設けられている。缶用コンベア5は、包装対象物としての飲料缶(内容物が充填された完成品である。)6を搬送するものであって、シートコンベア4と同一方向に同一速度で走行駆動される。缶用コンベア5によって搬送される飲料缶6は、缶用コンベア5とシートコンベア4との間をそれらの搬送方向と直交する方向に往復するプッシャ(不図示)により、シート3上に所定数ずつ一括して押し込まれる。シート3上に飲料缶6の群Aが押し込まれた後、シート3は不図示の成形装置により完成状態へと折り曲げられる。それにより、所定数の飲料缶6を収容した箱詰梱包品(以下、カートンと称することがある。)7が製造される。その後、カートン7には、所定の情報(例えば製造年月日、飲料缶6の中身など内部に収容されている飲料缶6に関する情報)が印刷装置10により印刷される。そのため、カートン7が本発明の印刷物に相当する。
【0016】
図2は、印刷装置10を図1の上方から見た図である。図2を参照して、まずカートン7について説明する。カートン7には、印刷装置10により所定の情報が印刷される箇所として第1印刷範囲A1及び第2印刷範囲A2が設けられている。図2に示したように第1印刷範囲A1はカートン7の外面のうち搬送経路の一方の側方を向く面(図2の上側の面)に設けられ、第2印刷範囲A2はカートン7の外面のうち搬送経路の他方の側方を向く面(図2の下側の面)に設けられている。そのため、これら搬送経路の側方を向く面が本発明の印刷面に相当する。これらの印刷範囲A1、A2は、カートン7を図2の上側から見た場合とカートン7を図2の下側からみた場合とでカートン7の外観が同じになるように設定されている。具体的には、図2に示したように第1印刷範囲A1は搬送時に搬送方向前側となるカートン7の前端Fから予め設定した所定距離L1の位置に設けられ、第2印刷範囲A2は搬送時に搬送方向後側となるカートン7の後端Bから所定距離L1の位置に設けられている。図2に矢印で示したようにカートン7は、図2の右側に搬送される。そのため、第1印刷範囲A1の印刷開始位置Ps1は、カートン7の前端Fから所定距離L1だけ図2の左側に移動した位置となる。そのため、所定距離L1が本発明の第1距離に相当する。一方、第2印刷範囲A2の印刷開始位置Ps2は、カートン7の後端Bから所定距離L1と第2印刷範囲A2の長さWとを足した分だけ図2の右側に移動した位置になる。そのため、所定距離L1と第2印刷範囲A2の長さWとを足した値が本発明の第2距離に相当する。
【0017】
次に図2を参照して印刷装置10について説明する。印刷装置10は、シートコンベア4の一方の側方に配置される第1印刷ヘッド11と、シートコンベア4の他方の側方に第1印刷ヘッド11とシートコンベア4を挟んで対向するように配置される第2印刷ヘッド12とを備えている。なお、これら印刷ヘッド11、12としては、例えば印刷対象にインクを噴射して印刷対象に印刷を行うインクジェット型のものが設けられる。以下、シートコンベア4によるカートン7の搬送経路上においてこれら印刷ヘッド11、12が側方に設けられている位置を印刷位置PPと称することがある。また、印刷装置10は、カートン7の搬送経路上であり、かつ印刷位置PPより上流に設定された第1検出位置P1にカートン7が有るか否か検出する第1検出手段としての第1検出センサ13と、カートン7の搬送経路上であり、かつ第1検出位置P1より上流に設定された第2検出位置P2にカートン7があるか否か検出する第2検出手段としての第2検出センサ14とを備えている。これら検出センサ13、14としては、例えばシートコンベア4を横切るように光線を出力し、その光線がカートン7にて遮られたか否かに基づいて各検出位置P1、P2にカートン7が有るか否か検出するセンサが設けられる。なお、図1に示した各検出センサ13、14は、各検出位置P1、P2にカートン7が無い場合にON信号を出力し、各検出位置P1、P2にカートン7が有る場合にOFF信号を出力する。
【0018】
第1印刷ヘッド11及び第2印刷ヘッド12の動作は、制御手段としての制御装置20にてそれぞれ制御される。制御装置20は、例えばマイクロプロセッサ及びその動作に必要なRAM、ROM等の周辺機器を含んだコンピュータユニットによって実現されてもよいし、ハードウェア制御回路によって実現されてもよい。制御装置20には、第1検出センサ13及び第2検出センサ14がそれぞれ接続されている。制御装置20は、これらの検出センサ13、14の出力信号を参照してカートン7の第1印刷範囲A1及び第2印刷範囲A2にそれぞれ所定の情報が印刷されるように第1印刷ヘッド11及び第2印刷ヘッド12の動作をそれぞれ制御する。
【0019】
図3を参照してカートン7の各印刷範囲A1、A2に印刷を行う印刷方法について説明する。図3は、上から順に第1検出センサ13の出力信号、第2検出センサ14の出力信号、第1印刷ヘッド11の動作信号、及び第2印刷ヘッド12の動作信号のそれぞれの時間変化の一例を示している。上述したように第2検出センサ14は、第1検出センサ13より上流に設けられている。そのため、シートコンベア4によりカートン7が搬送されてくると図3の時刻T1においてまず第2検出センサ14によりカートン7が検出される。すなわち、この時刻T1にカートン7の前端Fが第2検出位置P2を通過していることが分かる。そして、さらにカートン7が下流側に搬送されると時刻T2において第1検出センサ13によりカートン7が検出される。そのため、この時刻T2にカートン7の前端Fが第1検出位置P1を通過していることが分かる。
【0020】
制御装置20は、この時刻T2に基づいて第1印刷範囲A1に印刷を開始する第1印刷開始時期Ts1を設定する。上述したようにシートコンベア4は一定速度で動作しているため、カートン7は一定速度Vで搬送される。第1検出位置P1と印刷位置PPとの間の距離L2は予め測定可能である。そのため、これら搬送速度V及び距離L2に基づいてカートン7の前端Fが第1検出位置P1を通過してから第1印刷範囲A1の印刷開始位置Ps1が印刷位置PPに到達するまでの時間θ1を算出できる。そこで、制御装置20は、時刻T2に時間θ1を足した時期を第1印刷開始時期Ts1として設定する。これにより、制御装置20が第1印刷開始時期設定手段として機能する。そして、制御装置20は第1印刷開始時期Ts1になると第1印刷ヘッド11に動作信号を出力する。なお、制御装置20からは動作信号の他にカートン7に印刷すべき所定の情報が第1印刷ヘッド11に出力されており、第1印刷ヘッド11は制御装置20からの動作信号を受け取るとその所定の情報をカートン7に印刷し始める。その後、制御装置20は第1印刷ヘッド11が所定の情報を印刷するために十分な時間が経過すると第1印刷ヘッド11に停止信号を出力し、第1印刷ヘッド11を停止させる。このように第1印刷範囲A1に印刷することにより、これらの処理が本発明の第1印刷工程に相当する。
【0021】
このように第1印刷ヘッド11によって印刷が行われている間もカートン7は、シートコンベア4により搬送されている。そのため、図3の時刻T3になると第2検出センサ14の出力信号がOFF信号からON信号に切り替わる。すなわち、カートン7の後端Bが第2検出位置P2を通過したことが検出される。そして、制御装置20は、この時刻T3に基づいて第2印刷範囲A2に印刷を開始する第2印刷開始時期Ts2を設定する。第2検出位置P2と印刷位置PPとの間の距離L3は予め測定可能である。そのため、この距離L3及びシートコンベア4の搬送速度Vに基づいてカートン7の搬送方向下流側の端部Bが第2検出位置P2を通過してから第2印刷範囲A2の印刷開始位置Ps2が印刷位置PPに到達するまでの時間θ2を算出できる。そこで、制御装置20は、時刻T3に時間θ2を足した時期を第2印刷開始時期Ts2として設定する。これにより、制御装置20が第1印刷開始時期設定手段として機能する。その後、制御装置20は、第2印刷開始時期Ts2になると第2印刷ヘッド12に印刷を開始する動作信号を出力する。制御装置20からは第2印刷ヘッド12にも第1印刷ヘッド11と同様に動作信号の他にカートン7に印刷すべき所定の情報が出力されており、第2印刷ヘッド12は制御装置20からの動作信号を受け取るとその所定の情報をカートン7に印刷し始める。その後、制御装置20は第2印刷ヘッド12が所定の情報を印刷するために十分な時間が経過すると第2印刷ヘッド12に停止信号を出力し、第2印刷ヘッド12を停止させる。このように第2印刷範囲A2に印刷することにより、これらの処理が本発明の第2印刷工程に相当する。
【0022】
以降、制御装置20は、これらの処理を繰り返し実行し、ケーサー1で製造される各カートン7の各印刷範囲A1、A2にそれぞれ所定の情報を印刷する。
【0023】
ケーサー1では、缶用コンベア5上において飲料缶6が所定数(例えば6本)ずつ予めパック詰めされたものをカートン7に梱包する場合がある。パック詰めされた飲料缶6を梱包する場合は、飲料缶6をパックする梱包材の分カートン7内に収容すべき包装対象物が大きくなるので、飲料缶6をパックせずにそのまま梱包する場合と比較してカートン7の大きさが大きくなる。具体的には、パック詰めの飲料缶6の梱包に使用されるカートン(以下、パックカートンと称することがある。)は、飲料缶6をそのまま梱包する場合に使用されるカートン(以下、ルースカートンと称することがある。)と比較してカートン7の外面のうち搬送経路の側方を向く面の長さが長くなる。パックカートンにおいてもルースカートンと同様に各印刷範囲A1、A2は、各端部F、Bから所定距離L1の位置に設定されている。そのため、パックカートンとルースカートンとでは、第1印刷範囲A1と第2印刷範囲A2との間の距離Dが搬送方向において互いに異なる。
【0024】
本発明の印刷装置10では、第1印刷範囲A1に印刷を開始する第1印刷開始時期Ts1が第1検出センサ13の出力信号に基づいて設定され、第2印刷範囲A2に印刷を開始する第2印刷開始時期Ts2が第2検出センサ14の出力信号に基づいて設定される。そのため、パックカートン及びルースカートンのように搬送方向の側方に向く面の長さが異なり、これにより第1印刷範囲A1と第2印刷範囲A2との間の距離Dが搬送方向において互いに異なるカートン7に印刷する場合でも、ユーザが印刷に関する設定を変更することなくこれらのカートン7の各印刷範囲A1、A2にそれぞれ適正に印刷を行うことができる。そのため、カートン7の種類を変更する際の作業を簡略化できる。また、本発明の印刷装置10では、各印刷ヘッド11、12や各検出センサ13、14を移動させる必要がないため、装置の構造を簡略化できる。
【0025】
本発明は上述した形態に限定されることなく種々の形態にて実施してよい。例えば、本発明の印刷装置で印刷される印刷物はカートンに限定されない。印刷物の搬送方向上流側の端部に基づいて印刷開始位置が設定される第1印刷範囲及び印刷物の搬送方向下流側の端部に基づいて印刷開始位置が設定される第2印刷範囲を備えた種々の印刷物への印刷に本発明の印刷装置を適用してよい。また、第1印刷範囲及び第2印刷範囲は同一面上に設けられていてもよい。各印刷範囲はカートンの側面に限定されず、カートンの上面に設けられていてもよい。本発明の印刷装置に設けられる印刷手段はインクジェット型のものに限定されず、搬送されている印刷物に対して印刷を行うことが可能な種々のものを使用してよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一形態に係る印刷装置が組み込まれたケーサーの概略構成を示す図。
【図2】印刷装置を図1の上方から見た図。
【図3】第1検出センサの出力信号、第2検出センサの出力信号、第1印刷ヘッドの動作信号、及び第2印刷ヘッドの動作信号のそれぞれの時間変化の一例を示す図。
【符号の説明】
【0027】
4 シートコンベア(搬送コンベア)
7 箱詰梱包品(印刷物)
10 印刷装置
11 第1印刷ヘッド(第1印刷手段)
12 第2印刷ヘッド(第2印刷手段)
13 第1検出センサ(第1検出手段)
14 第2検出センサ(第2検出手段)
20 制御装置(制御手段、第1印刷開始時期設定手段、第2印刷開始時期設定手段)
PP 印刷位置
P1 第1検出位置
P2 第2検出位置
F 箱詰梱包品の前端
B 箱詰梱包品の後端
A1 第1印刷範囲
A2 第2印刷範囲
D 第1印刷範囲と第2印刷範囲との間の距離
Ps1 第1印刷範囲の印刷開始位置
Ps2 第2印刷範囲の印刷開始位置
Ts1 第1印刷開始時期
Ts2 第2印刷開始時期
V シートコンベアの搬送速度
L2 第1検出位置と印刷位置との間の距離
L3 第2検出位置と印刷位置との間の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送経路に沿って搬送されている印刷物の所定の印刷範囲に印刷手段にて印刷を行う印刷方法において、
前記印刷物には、搬送時に搬送方向前側となる前記印刷物の前端から所定の第1距離に印刷開始位置が設定された第1印刷範囲と、搬送時に搬送方向後側となる前記印刷物の後端から所定の第2距離に印刷開始位置が設定された第2印刷範囲とが前記所定の印刷範囲として設けられ、
前記所定の搬送経路上であり、かつ前記印刷手段にて印刷が行われる印刷位置より搬送方向上流に設定された第1検出位置を前記印刷物の前端が通過した時期に基づいて第1印刷開始時期を設定し、設定した前記第1印刷開始時期に前記第1印刷範囲への印刷を開始する第1印刷工程と、前記所定の搬送経路上であり、かつ前記第1検出位置より搬送方向上流に設定された第2検出位置を前記印刷物の後端が通過した時期に基づいて第2印刷開始時期を設定し、設定した前記第2印刷開始時期に前記第2印刷範囲への印刷を開始する第2印刷工程と、を備えていることを特徴とする印刷物への印刷方法。
【請求項2】
搬送コンベアにより所定の搬送経路に沿って搬送されている印刷物に対して前記搬送コンベアの側方に設けられた印刷手段にて前記印刷物の所定の印刷範囲に印刷を行う印刷装置において、
前記印刷物には、搬送時に搬送方向前側となる前記印刷物の前端から所定の第1距離に印刷開始位置が設定された第1印刷範囲と、搬送時に搬送方向後側となる前記印刷物の後端から所定の第2距離に印刷開始位置が設定された第2印刷範囲とが前記所定の印刷範囲として設けられ、
前記所定の搬送経路上であり、かつ前記印刷手段にて印刷が行われる印刷位置より搬送方向上流に設定された第1検出位置における前記印刷物の有無に対応した信号を出力する第1検出手段と、前記所定の搬送経路上であり、かつ前記第1検出位置より搬送方向上流に設定された第2検出位置における前記印刷物の有無に対応した信号を出力する第2検出手段と、前記第1検出手段の出力信号が前記第1検出位置に前記印刷物が無い場合に出力される信号から前記第1検出位置に前記印刷物が有る場合に出力される信号に切り替わった時期に基づいて第1印刷開始時期を設定する第1印刷開始時期設定手段と、前記第2検出手段の出力信号が前記第2検出位置に前記印刷物が有る場合に出力される信号から前記第2検出位置に前記印刷物が無い場合に出力される信号に切り替わった時期に基づいて第2印刷開始時期を設定する第2印刷開始時期設定手段と、前記第1印刷開始時期に前記第1印刷範囲への印刷が開始され、前記第2印刷開始時期に前記第2印刷範囲への印刷が開始されるように前記印刷手段を制御する制御手段と、を備えていることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
前記搬送コンベアでは、前記印刷手段にて印刷が行われる印刷面の長さが異なる複数種類の印刷物が搬送されることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷物はカートンであり、
前記カートンのうち前記所定の搬送経路の一方の側方に向く部分に前記第1印刷範囲が設けられるとともに、前記カートンのうち前記所定の搬送経路の他方の側方に向く部分に前記第2印刷範囲が設けられ、
前記印刷手段として、前記搬送コンベアの一方の側方に配置された第1印刷手段と、前記搬送コンベアの他方の側方に配置された第2印刷手段と、を備えていることを特徴とする請求項2又は3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第1印刷開始時期設定手段は、前記第1検出手段の出力信号が前記第1検出位置に前記印刷物が無い場合に出力される信号から前記第1検出位置に前記印刷物が有る場合に出力される信号に切り替わった時期と、前記印刷位置と前記第1検出位置との間の距離と、前記搬送コンベアの搬送速度とに基づいて前記第1印刷開始時期を設定することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第2印刷開始時期設定手段は、前記第2検出手段の出力信号が前記第2検出位置に前記印刷物が有る場合に出力される信号から前記第2検出位置に前記印刷物が無い場合に出力される信号に切り替わった時期と、前記印刷位置と前記第2検出位置との間の距離と、前記搬送コンベアの搬送速度とに基づいて前記第2印刷開始時期を設定することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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