説明

印刷物及びその製造方法

【課題】コイン等の金属片で印刷物を擦る前において隠れている文字や図形等の画像が透視される危険を回避し、低コスト且つ高生産が可能であり、環境にもやさしい印刷物の提供を課題とする。
【解決手段】賞品引き替えカードやチケット等の印刷基材上5にコイン等の金属片で擦ることによって文字や図形等の潜在画像Sが目視可能となる画像潜在領域1と、該領域上に目視可能に着色された顕在領域2とを有する印刷物10である。画像潜在領域1はコイン等の金属片よりも硬い酸化チタン等の材料を含有する白色インキを用いて印刷された層に構成されており、顕在領域2は前記画像潜在領域1が印刷された層の上に黄・赤・藍の3原色のインキを用いて印刷された層に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイン等の金属片で擦ることによって文字や図形等の画像が目視可能となる印刷物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙等の被印刷物をコイン等の金属片で擦ることにより文字や図形等の画像があらわれる印刷物としては、被印刷物の表面に文字や図形等の印刷画像を設け、その上に銀インキをシルクスクリーン印刷により塗布して、前記印刷画像を遮蔽するようにしたものが提供されている。そしてこの様な印刷物は、主としてスクラッチくじ等に利用されている。
しかし前記銀インキで文字や図形等の印刷画像を遮蔽する様なシルクスクリーン印刷物の場合、銀シルクスクリーン印刷の工程を必要とするために低コスト且つ高生産を実現することが困難であり、また削りカスが生じることから衛生面に問題があった。
一方、紙等の被印刷物をコイン等の金属片で擦ることにより文字や図形等の画像があらわれる印刷物で、銀シルクスクリーン印刷の工程を必要とせず、削りカスも生じない印刷物として、特公平6−78039号公報、特開2003−145966号公報、特開2001−18562号公報に記載の発明がある。
【特許文献1】特公平6−78039号公報
【特許文献2】特開2003−145966号公報
【特許文献3】特開2001−18562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1〜3に示す印刷物は、何れもコインの削り取られた金属が秘密画像を目視できる状態に黒く着色する構成であることから、銀シルクスクリーン印刷の工程を必要とせず、削りカスも生じない点でコスト面及び衛生面で利点があるものである。また上記特許文献2に示す印刷物は、コインで引き裂く場所が地模様の輪郭図形で囲まれた構成となっていることから、コインで引き裂く場所を容易に認識できる点に利点があるものである。
また上記特許文献3に示す印刷物は、レシートの広告媒体機能に着目し、ロール状レシート用紙の裏面を有効活用できる点に利点があるものである。
しかし上記特許文献1に示す印刷物においては、印刷基材上の画像が白色顔料のみのインキでしか印刷されていない構成上、印刷基材上の何処を削ればいいのか予めわからず、更に印刷物を見る角度によっては目視不能に隠されている画像が透視され易いという問題があった。
また上記特許文献2、3の何れにおいても、コインの削り取られた金属が目視できる状態に黒く着色する部分が秘密画像自体であり、しかもその秘密画像が印刷されたインキ層が最上位層にあることから、コインで擦る前に秘密画像が透視され易いという問題があった。
【0004】
そこで本発明は上記従来技術における問題点を解決し、コイン等の金属片で印刷物を擦る前において隠れている文字や図形等の画像が透視される危険を回避し、低コスト且つ高生産が可能であり、環境にもやさしい印刷物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するための本発明の印刷物は、賞品引き替えカードやチケット等の印刷基材上にコイン等の金属片で擦ることによって文字や図形等の潜在画像が目視可能となる画像潜在領域と、該領域上に目視可能に着色された顕在領域とを有することを第1の特徴としている。
また本発明の印刷物は、上記第1の特徴に加えて、画像潜在領域はコイン等の金属片よりも硬い酸化チタン等の材料を含有する白色インキを用いて印刷された層に構成されており、顕在領域は前記画像潜在領域が印刷された層の上に黄・赤・藍の3原色のインキを用いて印刷された層に構成されていることを第2の特徴としている。
また本発明の印刷物は、上記第1又は第2の特徴に加えて、顕在領域は黄・赤・藍の3原色のインキをそれぞれ個別に用い、黄・赤・藍の3種類の網点がランダムに印刷された層に構成されていることを第3の特徴としている。
また本発明の印刷物は、上記第1〜第3の何れかの特徴に加えて、白色インキには添加剤としてマットメジュームを加えてあることを第4の特徴としている。
また本発明の印刷物の製造方法は、賞品引き替えカードやチケット等の印刷基材上にコイン等の金属片で擦ることによって文字や図形等の潜在画像が目視可能となる画像潜在領域と、目視可能に着色された顕在領域とを印刷するようにした印刷物の製造方法であって、前記画像潜在領域の印刷にコイン等の金属片よりも硬い酸化チタン等の材料を含有する白色インキを用い、顕在領域の印刷に黄・赤・藍の3原色のインキを用い、前記印刷基材上に画像潜在領域をまず印刷し、その後に該画像潜在領域の上に前記顕在領域を重ね刷りし、前記画像潜在領域及び顕在領域を含む印刷基材上の全てのカラー印刷を黄・赤・藍・白の4色のインキを用いて行うことを第5の特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の印刷物によれば、目視可能に着色された顕在領域がコイン等の金属片で擦ることによって文字や図形等の潜在画像が目視可能となる画像潜在領域上に構成されていることから、顕在領域を目印として印刷基材上におけるコイン等の金属片で擦る場所を容易に認識することができる。
【0007】
請求項2に記載の印刷物によれば、上記請求項1に記載の構成による効果に加えて、画像潜在領域はコイン等の金属片よりも硬い酸化チタン等の材料を含有する白色インキを用いて印刷された層に構成されていることから、コイン等の金属片で前記画像潜在領域を擦ると、コイン等の金属片の金属が酸化チタン等の材料を含有する白色インキに削り取られ、これにより画像潜在領域が着色され、画像潜在領域に潜在されている文字や図形等の潜在画像が後発的に目視可能となる。
また顕在領域は画像潜在領域が印刷された層より上層に黄・赤・藍の3原色のインキを用いて印刷された層に構成されていることから、コイン等の金属片で画像潜在領域を擦る前においては、まず有色である顕在領域が無色である画像潜在領域を覆う働きを有することにより、画像潜在領域に印刷された文字や図形等の潜在画像の目視や透視を防止することができる。
またコイン等の金属片で画像潜在領域を擦った後において、潜在画像をコイン等の金属片よりも硬い酸化チタン等の材料を含有する白色インキで刷り残す構成とする場合には、着色された画像潜在領域に顕在領域における潜在画像以外の部分が埋没する状態となり、潜在画像の視認性を阻害することがなくなる。一方、潜在画像のみをコイン等の金属片よりも硬い酸化チタン等の材料を含有する白色インキで印刷する構成とする場合には、顕在領域が目視可能となった文字や図形等の潜在画像の背景色となる働きを有することにより、目視可能となった文字や図形等の潜在画像の視認性を向上させることができる。
更に黄・赤・藍の3原色のインキを用いることで顕在領域を複数色とすることが可能となり、顕在領域が1色である場合に比べてコイン等の金属片で画像潜在領域を擦る前においては、複数色からなる顕在領域の存在により画像潜在領域を見る者の視点を固定させにくくすることができ、画像潜在領域に印刷された文字や図形等の潜在画像の目視や透視をより強固に防止することができる。
【0008】
請求項3に記載の印刷物によれば、上記請求項1又は2に記載の構成による効果に加えて、顕在領域は黄・赤・藍の3原色のインキをそれぞれ個別に用い、黄・赤・藍の3種類の網点が印刷された層に構成されている。従って、まず第1に顕在領域は網点印刷されており、且つ画像潜在領域よりも上層であることから画像潜在領域はあたかも顕在領域にある多数の網目に覆われているかのような構成となる。これによりコイン等の金属片で画像潜在領域を擦る前においては、画像潜在領域に印刷された文字や図形等の潜在画像を多方向から見ても目視や透視され難いものとすることができる。
第2にその網点は黄・赤・藍の3種類の網点であることからコイン等の金属片で画像潜在領域を擦る前においては、3種類の異なる色のそれぞれの網点の存在により画像潜在領域を見る者の視点を分散させることができ、上述の画像潜在領域に印刷された文字や図形等の潜在画像の目視や透視をより強固に防止することができる。
更に黄・赤・藍の3種類の網点がランダムに印刷された構成としていることから、コイン等の金属片で画像潜在領域を擦る前においては、ランダムに配置された網点によって画像潜在領域を見る者の視点をより一層分散させることができ、上述の画像潜在領域に潜在する文字や図形等の潜在画像の目視や透視を頗る強固に防止することができる。
【0009】
請求項4に記載の印刷物によれば、上記請求項1〜3に記載の構成による効果に加えて、白色インキには添加剤としてマットメジュームを加えてある構成としていることから、白色インキを用いて印刷された画像潜在領域が存する層全体の光沢を抑える働きを有し、コイン等の金属片で画像潜在領域を擦る前において画像潜在領域に潜在する文字や図形等の潜在画像をより強固に目視や透視され難いものとすることができる。
【0010】
請求項5に記載の印刷物の製造方法によれば、印刷基材上に画像潜在領域を先にまず印刷し、その後に顕在領域を画像潜在領域の上に重ね刷りする構成としている。これにより画像潜在領域のインキがまず紙媒体である印刷基材へ十分に定着することで、その後に顕在領域のインキがその上へ塗布されても、画像潜在領域がにじんだり、ぼやけたりすることを防止できる。これにより印刷物の連続印刷に十分対応でき、低コスト且つ高生産を実現できる。
これに対して顕在領域を先にまず印刷し、その後に画像潜在領域を顕在領域の上に重ね刷りする構成とする場合には、画像潜在領域はインキ層である顕在領域の上に存在することになる。よってインキ層の上にインキ層が重なることで画像潜在領域がにじんだり、ぼやけたりする危険性がある。従って本発明の構成とすることにより、このような画像潜在領域のにじみやぼやけを確実に防止することができる。
また印刷基材上に画像潜在領域を先にまず印刷し、その後に顕在領域を画像潜在領域の上に重ね刷りする構成としていることから、コイン等の金属片で画像潜在領域を擦る前においては、色の着いた顕在領域が印刷された層が無色である画像潜在領域が印刷された層を覆う働きを有することにより、画像潜在領域に印刷された文字や図形等の潜在画像の目視や透視を防止することができる。
またコイン等の金属片で画像潜在領域を擦った後において、潜在画像をコイン等の金属片よりも硬い酸化チタン等の材料を含有する白色インキで刷り残す構成とする場合には、着色された画像潜在領域に顕在領域における潜在画像以外の部分が埋没する状態となり潜在画像の視認性を阻害することがなくなる。一方、潜在画像のみをコイン等の金属片よりも硬い酸化チタン等の材料を含有する白色インキで印刷する構成とする場合には、顕在領域が目視可能となった文字や図形等の潜在画像の背景色となる働きを有することにより、目視可能となった文字や図形等の潜在画像の視認性を向上させることができる。
また画像潜在領域の印刷に白色インキを用い、顕在領域の印刷に黄・赤・藍の3原色のインキを用い、印刷基材上の全てのカラー印刷を黄・赤・藍・白の4色のインキを用いて行う構成としていることから、インクを4色しか使用しないことにより印刷基材上の全てのカラー印刷処理を低コスト且つ高効率に行うことができ、環境にもやさしい印刷物とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下の図面を参照して、本発明の実施形態に係る印刷物及び印刷物の製造方法について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る印刷物の全体図で、コイン等の金属片で擦る前の状態を示す。図2は図1のA―A断面図である。図3は本発明の実施形態に係る印刷物の全体図で、コイン等の金属片で擦った後の状態を示す。図4は図3のB−B断面図である。図5は本発明の印刷物を製造するための印刷機の正面図である。図6は本発明の他の実施形態に係る印刷物の断面図で、図1のA−A断面に対応するものでコイン等の金属片で擦る前の状態を示す。図7は本発明の他の実施形態に係る印刷物の断面図で、図3のB−B断面に対応するものでコイン等の金属片で擦った後の状態を示す。
【0012】
図1〜図4を参照して、本発明の実施形態に係る印刷物10は画像潜在領域1、顕在領域2、任意画像3、ベタ刷り画像4、印刷基材5とからなる。
前記画像潜在領域1は、図1、図3に示すように、印刷基材5上において一定の範囲を占めるもので、文字や図形等の潜在画像がコイン等の金属片よりも硬い酸化チタン等の材料を含有する白色インキで印刷された領域である。
【0013】
このように画像潜在領域1をコイン等の金属片よりも硬い酸化チタン等の材料を含有する白色インキで印刷したことで、コイン等の金属片で前記画像潜在領域1を擦ると、コイン等の金属片の金属が酸化チタン等の材料を含有する白色インキに削り取られ、これにより画像潜在領域1が着色され、画像潜在領域1に潜在されている文字や図形等の潜在画像が後発的に目視可能となる。
またコイン等の金属片で画像潜在領域1を擦る前には文字や図形等の潜在画像を十分に目視不能状態に保持することができることから、インスタントくじ、賞品引き替えカード、チケット、切り取り用応募はがき、広告チラシ等の印刷物として幅広く利用することができる。
【0014】
本実施形態では、図3に示すように、コイン等の金属片で画像潜在領域1を擦ることにより画像潜在領域1における「特賞」で示す潜在画像Sの文字以外の全体が暗灰色に着色され、潜在画像Sである「特賞」の文字が白抜きとなって目視可能となる構成としている。このような本実施形態の構成においては、図2、図4に示すように、コイン等の金属片よりも硬い酸化チタン等の材料を含有する白色インキで印刷された画像潜在領域1が存する層において、潜在画像Sである「特賞」部分のみが刷り残された状態の非印刷部1aを形成することになる。
【0015】
勿論、前記本実施形態のような構成とせず、他の実施形態として文字や図形等の潜在画像部分自体が着色されるような構成とすることもできる。この場合は、図6、図7に示すように、文字や図形等の潜在画像部分自体のみがコイン等の金属片よりも硬い酸化チタン等の材料を含有する白色インキで印刷され、その部分のみが印刷層を構成することになる。よってその部分のみが印刷部1bを形成することになる。
【0016】
ただし図1〜図4に示す本実施形態のように、画像潜在領域1が存する層において、目視や透視されたくない文字や図形等の潜在画像を刷り残し、印刷層の一部を非印刷部1aとする構成の方が、目視や透視されたくない文字や図形等の潜在画像自体を印刷部1bとする場合に比べて、画像潜在領域1を多方向から見た場合でも文字や図形等の潜在画像Sが凹んだ状態で存在することとなり、文字や図形等の潜在画像Sの目視や透視をより強固に防止することができる。
【0017】
また画像潜在領域1における潜在画像Sである「特賞」の文字以外全体が暗灰色に着色され、潜在画像Sである「特賞」の文字が白抜きとなって目視可能となる構成としていることから、画像潜在領域1における白抜きに顕在化された潜在画像Sの文字「特賞」とその他の暗灰色に着色された部分との画像潜在領域1全体が一体となって潜在画像Sの文字「特賞」を浮かび上がらせることで、「特賞」の文字自体のみが暗灰色に着色する構成に比べて、目視可能となった潜在画像Sの文字「特賞」をより明確に認識することができる。
特に印刷基材5における画像潜在領域1を除く他の領域に文字や図形等の画像が多くある場合、或いは暗灰色の色が多く使われている場合などにおいては、印刷基材5上で一定の範囲を占める暗灰色に着色された画像潜在領域1の中で潜在画像Sの文字「特賞」が白抜きとなることで、他の領域に存する文字や図形等の画像、暗灰色の色に白抜きの潜在画像Sの文字「特賞」が埋没することなく、「特賞」の文字自体のみが暗灰色に着色される構成に比べて明確に認識することができる。
【0018】
ここで前記コイン等の金属片よりも硬い材料としては、下記の表1に示すような酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化クロムの何れか1種又は2種以上を組み合わせて利用することができる。
【0019】
【表1】

【0020】
ちなみにコインは、例えば1円玉、5円玉、10円玉、50円玉、100円玉、500円玉の日本円はもとより、外国貨幣のコインでも使用できる。これらのコインの材料として一般的に用いられている金属とそのMohs硬度は、下記の表2の通りである。
【0021】
【表2】

【0022】
また本実施形態において使用する白色インキの組成は、下記の表3の通りである。
【0023】
【表3】

【0024】
ここでコイン等の金属片よりも硬い材料を含むインキ組成物中において、コイン等の金属片よりも硬い材料の割合は10〜80%が適当である。10%以下のときはコイン等の金属片に削り取られる度合いが少なく、また着色が不十分である。一方80%以上のときはインキ化が困難となるからである。
【0025】
また本実施形態においては、白色インキには添加剤としてマットメジュームを加える構成としている。マットメジュームは白色インキを用いて印刷された画像潜在領域1が存する層全体の光沢を抑える働きを有し、これによってコイン等の金属片で擦る前の画像潜在領域1に存する文字や図形等の潜在画像Sをより目視や透視され難いものにすることができる。
【0026】
また植物油として大豆油を使用した大豆油インキ(SOYINK)を使用する構成としていることから、高沸点石油系溶剤を削減し、印刷後乾燥する際に発生する揮発性有機化合物(VOC)を1%未満に軽減でき、大気汚染の防止や作業環境の保全に優れた環境にやさしい印刷物とすることができる。また大豆油インキ(SOYINK)はインクと紙を分離させ易いため、リサイクルし易い印刷物とすることができる。なお大豆油は1〜10%含有させるのが好ましい。
【0027】
本実施形態においては、画像潜在領域1の形状を木の葉の形状としているが、当然ながらこの形状に限るものではない。またコイン等の金属片で擦ることで目視可能となる文字や図形等の潜在画像Sは、画像潜在領域1の中央のみでなく、画像潜在領域1上の如何なる場所に配置してもよい。また画像潜在領域1の範囲を顕在領域2と同じ範囲とすることも必ずしも必要ではないが、顕在領域2がコイン等の金属片で擦る目印となることを考慮すると、同じかそれより小さい範囲とすることが望ましい。また植物油として大豆油以外を用いることも当然可能であるが、石油系溶剤フリーインキ、UVインキ、易脱墨性UVインキ等のいわゆる環境対応型インキとすることが望ましい。
【0028】
次に前記顕在領域2は、図1、図3に示すように、印刷基材5上において一定の範囲を占める画像潜在領域1の上層に画像潜在領域1と同じ範囲を占めて存在し、画像潜在領域1をコイン等の金属片で擦る前においては、印刷基材5上においてコイン等の金属片で擦る部分を示す目印になると同時に、画像潜在領域1に潜在する文字や図形等の潜在画像Sを目視、透視不可能にする役割を果たすものである。また画像潜在領域1をコイン等の金属片で擦った後においては、目視可能となった潜在画像S以外の部分は暗灰色に着色された画像潜在領域1に埋没する状態となり、潜在画像Sの視認性を阻害することがなくなる。
顕在領域2はコイン等の金属片よりも軟らかい材料からなる黄・赤・藍の3原色のインキを用いて印刷された黄の網点2aと赤の網点2bと藍の網点2cとからなる。
【0029】
このように画像潜在領域1よりも上層に印刷される顕在領域2を黄・赤・藍の3色の網点とし、且つ3色の配置を規則正しくすることなくランダムに配置することで、画像潜在領域1を見る者の視点を分散させることができる。更にこのような構成とすることで、画像潜在領域1は、あたかも顕在領域2にある多数の黄の網点2a、赤の網点2b、藍の網点2cからなる網目に覆われているかのような構成となり、コイン等の金属片で画像潜在領域1を擦る前においては、画像潜在領域1に印刷された文字や図形等の潜在画像Sを多方向から見ても目視や透視され難いものとすることができる。
【0030】
また図1に示すように、本実施例においては顕在領域2の輪郭Lを太罫線で囲み、印刷基材5上の他の領域と区別する構成としている。この輪郭Lを印刷することで画像潜在領域1をコイン等の金属片で擦る前においては、印刷基材5上においてコイン等の金属片で擦る部分を示す目印となるという役割を増大させることができる。
【0031】
更に本実施形態においては、顕在領域2全体に占める黄の網点面積率を30〜60%、赤の網点面積率を20〜30%、藍の網点面積率を20〜30%とする構成とし、黄の網点に赤、藍の網点を加える構成としていることから、人間の視覚に認識され易い黄に赤、藍の色網点が相俟って、コイン等の金属片で擦る前における顕在領域2の視認性を画像潜在領域1の視認性に比べて大きく際立たせることができる。
またコイン等の金属片で画像潜在領域1を擦った後においては、白抜きとなった潜在画像Sの文字「特賞」に対する背景色となる暗灰色に前記黄の網点2a、赤の網点2b、藍の網点2cが埋没する状態となることで「特賞」の文字の視認性を阻害することがなくなる。
【0032】
また黄・赤・藍の3原色のインキとしては、植物油として大豆油を使用した大豆油インキ(SOYINK)を用いることが望ましい。大豆油インキを用いることで高沸点石油系溶剤を削減し、乾燥する際に発生する揮発性有機化合物(VOC)を1%未満とすることができ、大気汚染の防止や作業環境の保全に優れた環境にやさしい印刷物とすることができるからである。また大豆油インキ(SOYINK)はインクと紙を分離させ易いため、リサイクルし易い印刷物とすることもできるからである。なお大豆油は1〜10%含有させるのが好ましい。
勿論、コイン等の金属片よりも軟らかい材料からなるインクであれば他のインクを用いてもよいが、石油系溶剤フリーインキ、UVインキ、易脱墨性UVインキ等のいわゆる環境対応型インキとすることが望ましい。
【0033】
また本実施形態では、図1に示すように網点の形状は同一の大きさのドットからなる円形であり、その色の配置はランダムであるものの縦横の配置は規則正しく直線状となっているが、様々な大きさのドットからなる円形でもよいし、その配置もランダムなものでもよい。また実線又は点線からの平行模様や格子模様等、各種図柄模様として印刷しても良い。また網点を黄・赤・藍の3色以外の色で構成することも可能である。網点の数も顕在領域2の大きさにより様々変更してもよい。また顕在領域2の輪郭Lを囲むものは太罫線である必要はなく、点線、一点鎖線等、印刷基材5上において顕在領域2を他の領域から区別できるものであればどのような形状であってもよいし、また必ず設ける必要もないが設けることが望ましい。また本実施形態においては、顕在領域2の形状を木の葉の形状としているが、当然ながらこの形状に限るものではない。
【0034】
任意画像3は賞品の内容、チケットに関する注意書き等の様々な情報を伝えるためのもので、コイン等の金属片よりも軟らかい材料からなるインクにより印刷されたものである。この任意画像3は印刷物の用途により、字や図形、模様等様々な形状、色とすることができる。
またインキとしては、植物油として大豆油を使用した大豆油インキ(SOYINK)を用いることが望ましい。大豆油インキを用いることで高沸点石油系溶剤を削減し、乾燥する際に発生する揮発性有機化合物(VOC)を1%未満とすることができ、大気汚染の防止や作業環境の保全に優れた環境にやさしい印刷物とすることができるからである。また大豆油インキ(SOYINK)はインクと紙を分離させ易いため、リサイクルし易い印刷物とすることもできるからである。なお大豆油は1〜10%含有させるのが好ましい。
勿論、コイン等の金属片よりも軟らかい材料からなるインクであれば他のインクを用いてもよいが、石油系溶剤フリーインキ、UVインキ、易脱墨性UVインキ等のいわゆる環境対応型インキとすることが望ましい。
【0035】
ベタ刷り画像4は前記任意画像3の背景となるもので、コイン等の金属片よりも軟らかい材料からなるインクにより印刷されたものであり、印刷物の用途により様々な色とすることができる。
またインキとしては、植物油として大豆油を使用した大豆油インキ(SOYINK)を用いることが望ましい。大豆油インキを用いることで高沸点石油系溶剤を削減し、乾燥する際に発生する揮発性有機化合物(VOC)を1%未満とすることができ、大気汚染の防止や作業環境の保全に優れた環境にやさしい印刷物とすることができるからである。また大豆油インキ(SOYINK)はインクと紙を分離させ易いため、リサイクルし易い印刷物とすることもできるからである。尚、大豆油は1〜10%含有させるのが好ましい。
勿論、コイン等の金属片よりも軟らかい材料からなるインクであれば他のインクを用いてもよいが、石油系溶剤フリーインキ、UVインキ、易脱墨性UVインキ等のいわゆる環境対応型インキとすることが望ましい。
【0036】
ここでコイン等の金属片よりも軟らかい材料からなるインクとしては、下記の表4に示すような硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を利用することができる。
【0037】
【表4】

【0038】
印刷基材5は印刷物10の台紙となるもので、マット系コート紙が望ましいが、コート紙や上質紙、その他の紙、プラスチックフィルム、金属フィルムを用いることができる。
勿論、再生紙を利用することもできる。
【0039】
図5を参照して、本発明に係る印刷物の製造方法の実施形態を説明する。
本発明の印刷物は、図5に示す枚葉オフセット印刷機6を用いて印刷することができる。枚葉オフセット印刷機6は印刷ユニット6a、6b、6c、6dとからなり、順次白、黄、赤、藍の4色のインクが充填されている。この枚葉オフセット印刷機6に印刷基材5を1度通すことで本発明に係る印刷物10を完成させることができる。その際、画像潜在領域1の印刷は顕在領域2の印刷よりも必ず先に行う。このような構成とすることで、画像潜在領域1のインキがまず紙媒体である印刷基材5へ十分に染み込み、その後に顕在領域のインキがその上へ塗布されても画像潜在領域1がにじんだり、ぼやけたりすることを防止できる。これにより印刷物10の連続印刷に十分対応でき、低コスト且つ高生産を実現できる。
これに対して顕在領域2をまず印刷し、その後に画像潜在領域1を顕在領域2の上に重ね刷りする場合には、画像潜在領域1はインキ層である顕在領域2の上に存在することになる。よってインキ層の上にインキ層が重なることで、画像潜在領域1がにじんだり、ぼやけたりする危険性がある。従って本発明の構成とすることにより、このような画像潜在領域1のにじみやぼやけを確実に防止することができる。
またコイン等の金属片で画像潜在領域1を擦る前においては、有色である顕在領域2が、無色である画像潜在領域1を覆う働きを有することにより、画像潜在領域1に潜在する文字や図形等の潜在画像Sの目視や透視を防止することができる。またコイン等の金属片で画像潜在領域1を擦った後においては、有色である顕在領域2が目視可能となった文字や図形等の潜在画像Sの背景色となる働きを有することにより、目視可能となった文字や図形等の潜在画像Sの視認性を向上させることができる。
また使用するインクを黄、赤、藍の3原色と白の4色のみとし、印刷基材5上の全てのカラー印刷をこの4色のみで枚葉オフセット印刷機6を用いて印刷することで低コスト且つ高効率に行うことができる。
なお本発明に係る印刷物の印刷は枚葉オフセット印刷方式とすることが望ましいが、UVオフセット印刷方式、活版印刷方式、グラビア印刷方式、UV活版印刷方式の何れを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷物の全体図で、コイン等の金属片で擦る前の状態を示す。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る印刷物の全体図で、コイン等の金属片で擦った後の状態を示す。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る印刷物を製造するための印刷機の正面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る印刷物の断面図で、図1のA−A断面に対応するものでコイン等の金属片で擦る前の状態を示す。
【図7】本発明の他の実施形態に係る印刷物の断面図で、図3のB−B断面に対応するものでコイン等の金属片で擦った後の状態を示す。
【符号の説明】
【0041】
1 画像潜在領域
1a 非印刷部
1b 印刷部
2 顕在領域
2a 黄の網点
2b 赤の網点
2c 藍の網点
3 任意画像
4 ベタ刷り画像
5 印刷基材
6 枚葉オフセット印刷機
6a、6b、6c、6d 印刷ユニット
10 印刷物
L 輪郭
S 潜在画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
賞品引き替えカードやチケット等の印刷基材上にコイン等の金属片で擦ることによって文字や図形等の潜在画像が目視可能となる画像潜在領域と、該画像潜在領域上に目視可能に着色された顕在領域とを有することを特徴とする印刷物。
【請求項2】
画像潜在領域はコイン等の金属片よりも硬い酸化チタン等の材料を含有する白色インキを用いて印刷された層に構成されており、顕在領域は前記画像潜在領域が印刷された層の上に黄・赤・藍の3原色のインキを用いて印刷された層に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
顕在領域は黄・赤・藍の3原色のインキをそれぞれ個別に用い、黄・赤・藍の3種類の網点がランダムに印刷された層に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷物。
【請求項4】
白色インキには添加剤としてマットメジュームを加えてあることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の印刷物。
【請求項5】
賞品引き替えカードやチケット等の印刷基材上にコイン等の金属片で擦ることによって文字や図形等の潜在画像が目視可能となる画像潜在領域と、目視可能に着色された顕在領域とを印刷するようにした印刷物の製造法であって、前記画像潜在領域の印刷にコイン等の金属片よりも硬い酸化チタン等の材料を含有する白色インキを用い、顕在領域の印刷に黄・赤・藍の3原色のインキを用い、前記印刷基材上に画像潜在領域をまず印刷し、その後に該画像潜在領域の上に前記顕在領域を重ね刷りし、前記画像潜在領域及び顕在領域を含む印刷基材上の全てのカラー印刷を黄・赤・藍・白の4色のインキを用いて行うことを特徴とする印刷物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−73977(P2008−73977A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256673(P2006−256673)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(503460231)デジタルグラフィック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】