説明

印刷物表面加工方法および装置

【課題】印刷物の表面加工を簡単に低コストで行う。
【解決手段】溶融して透明フィルム化する樹脂を主体とする転写層(11c)を有するサーマルリボン11とバックアップベルト18との間に印刷物1を挟んで搬送する間に、加熱バー12をプラテンローラ19に圧接させて、転写層の樹脂の溶融温度以上に加熱して印刷物の印刷面に熱転写させる。印刷物の幅より幅広のサーマルリボンを用い、印刷物の前端が熱転写地点に到達する直前から後端が該熱転写地点を越えた直後まで熱転写を継続して行うことにより、再固化した樹脂による透明保護フィルム(11c’)が印刷物の印刷面の全面に被覆形成される。印刷物は剥離ローラ15により冷時剥離され、このとき印刷物の印刷面の周囲の転写層の樹脂はバックアップ手段に転写されることなくサーマルリボン側に残されるので、バックアップベルトは汚れることなく繰り返し使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の方式で印刷された印刷物の光沢・表面強度・耐水性・耐光性などを向上させる目的で表面加工を行うための方法および装置に関する。
【0002】
なお、ここに印刷とは紙などの媒体上に文字や記号、画像などを記録することを広く意味し、その方式を問わず、電子写真方式(レーザ方式・LED方式など)・インクジェット方式・熱転写方式(溶融型・昇華型)などの小型プリンタによる印刷、オフセット印刷・フレキソ印刷・グラビア印刷などによる印刷、銀塩方式などによる写真画像形成を含む。また、印刷物とはこれら各種方式によって媒体に文字などを記録したシート状の有体物を広く意味し、電子写真方式・インクジェット方式・昇華熱転写方式などのプリンタによる印刷物、オフセット印刷・フレキソ印刷・グラビア印刷などによる印刷物、さらには銀塩写真などをも含む。
【背景技術】
【0003】
オフセット印刷などによる印刷物の光沢・表面強度・耐水性・耐光性などを向上させるための表面加工法として、従来より、印刷物の表面に液体の薬剤を均一に塗布した後に乾燥させる手法(通称「ニス引き」)が採用されている。
【0004】
一方、近年では、電子写真方式・インクジェット方式・熱転写方式などの小型プリンタ技術が進歩し、オフセットなどの大型プリンタによる印刷物に近い品質の印刷物が小規模オフィスや店舗あるいは家庭などにおいても手軽に得られるようになってきている。
【0005】
このような印刷物においても光沢・表面強度・耐水性・耐光性などを向上させるための表面加工が要求される場合があるが、ニス引き加工では液体を均一に塗布し乾燥させるために大型の機械が必要となり、液体の取り扱いや、乾燥時の有機溶剤の発生など、プリンタを使用する環境では許容しがたい問題が多く、現実的ではない。
【0006】
そこで、小規模オフィスや店舗あるいは家庭などで印刷物などに表面加工するに適した方式として、フィルムラミネートが提案されるに至っている。フィルムラミネートは、印刷物の表面に透明フィルムをラミネートする方式であり、熱でラミネートする方式と、フィルムに粘着加工を施して裏面セパレータを設けておき、ラミネート時に裏面セパレータを剥離して印刷物の表面に貼り合わせる方式とがある。これらの従来技術を開示する先行技術文献として特許文献1を提示する。前者の熱ラミネート方式は特許文献1の段落0057に、後者のコールドラミネート方式は特許文献1の段落0058に記載されている。
【0007】
特許文献2には、サーマルヘッドを用いた熱転写プリンタを利用して、熱転写印刷直後の印刷物に対して透明インクを用いてオーバーコートを形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−353829号公報
【特許文献2】特開平11−263033号公報
【特許文献3】特開2004−175001号公報
【特許文献4】特開2005−280157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
フィルムラミネートによる印刷物の表面加工ないし表面保護として各種の提案がなされているが、印刷物の印刷面を全面的に保護するためには印刷物よりも大きなサイズのフィルムを使用して、ラミネート後に印刷物からはみ出した余白部分を裁断しなければならず、後工程を必要とすると共に、ラミネートフィルムに無駄が生ずる。また、裁断に刃物を使うことになるため、家庭内などでの使用に適していない。特許文献1では主としてカード状の基材を四周まで含めて両面ラミネート(パウチ)することが想定されている(図1参照)が、印刷物などに表面加工を行う場合は余白部分が不要となるので裁断が必要となる。
【0010】
特許文献2に記載されるようにサーマルヘッドを用いた熱転写プリンタで印刷物にオーバーコートを形成する場合、熱転写プリンタでは印刷物の幅方向両側縁から外側にはみ出した領域でインクリボンの溶融した転写樹脂がプラテンロールに転写されることを防ぐために、サーマルヘッドの加熱幅を印刷物の幅よりも若干狭くコントロールしている。このため、印刷物の全幅に亘るオーバーコートを形成することができず、印刷物の両端に表面加工されていない部分が残ってしまう。サーマルヘッドの加熱幅を印刷物よりも幅広にすれば印刷物の全幅に亘ってオーバーコートを形成することができるが、このようにすると、印刷物両側縁の外側部分でインクリボンの溶融した転写樹脂の糸引き状態が発生する。また、プラテンローラに付着した樹脂が徐々に固化・堆積していき、やがてサーマルヘッドが印刷物に所定の圧力で圧接できなくなり、以後の転写に対して障害となる。
【0011】
なお、サーマルヘッドをインクリボンを挟んでプラテンロールに圧接させることにより熱転写を行う熱転写プリンタを用いて、印刷物の全長以上にオーバーコートのための熱転写を連続して行うと、印刷物の前端が熱転写地点に到達する前と印刷物の後端が該熱転写地点を通過した後の各々わずかな時間ではあるが、インクリボンが印刷物を介さずにプラテンローラに直接圧接される状態となる。これによってプラテンローラの表面にインクリボンの溶融した転写樹脂が転写され、樹脂の印刷物への裏写りや、プラテンローラ上に樹脂が横段状に固化することによってインクリボンの印刷物への押圧が送り方向で変動して以降の熱転写において転写不良の原因となる。このことは特許文献3でも指摘されており(段落0005)、同特許文献記載の発明ではラミネートフィルム(オーバーコート用透明インクリボン)に特定の樹脂配合を持たせることでこの問題を解決しようとしているが、プラテンロールの昇温や印刷物の表面状態などが様々に変化する実際の熱転写条件において汎用的な効果を発揮することは困難である。
【0012】
特許文献4では、印刷物より大きいサイズのラミネート材を用いて印刷物の記録面上にオーバーコートを転写形成し、転写後のラミネート材を印刷物から離間させることによって、印刷部の記録面からはみ出した余白部分のオーバーコート層をアンダーフィルム側に転写させるようにしている。この方式によれば印刷物の記録面をフルカバーするようにオーバーコートを形成することができ、余白部分を裁断する後工程も不要となるが、余白部分のオーバーコート層がアンダーフィルムに転写されるため、巻き取られたアンダーフィルムをそのままでは再使用することができない。再使用のためにはクリーニングが必要となり、コスト増を招く。
【0013】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、電子写真方式・インクジェット方式・熱転写方式などの小型プリンタによる印刷物を含む各種印刷物についてその光沢・表面強度・耐水性・耐光性などを向上させる目的で表面加工を行うに際し、小規模オフィスや店舗あるいは家庭などでも手軽に低コストで使用することができる新規な方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題を解決するため、本発明による印刷物表面加工方法は、溶融して透明フィルム化する樹脂を主体とする転写層を有するサーマルリボンと少なくとも片面に印刷面を有する印刷物とを、サーマルリボンの転写層と印刷物の印刷面とを重ね合わせた状態にして、サーマルリボンおよび印刷物を挟んで対向して設けられた加熱手段とバックアップ手段との間に通過させ、加熱手段によりサーマルリボンの転写層の樹脂を溶融または軟化させる温度以上に加熱して該樹脂を印刷物の印刷面に熱転写し、該溶融または軟化した樹脂を再固化させて印刷物の印刷面に透明保護フィルムを被覆形成する方法であって、印刷物より幅広のサーマルリボンおよびバックアップ手段を用いると共に、印刷物の前端が熱転写地点に到達する直前から印刷物の後端が熱転写地点を越えるまで熱転写を継続して行うことにより、印刷物の印刷面の全面をカバーするように前記透明保護フィルムを形成し、且つ、熱転写地点からサーマルリボンおよび印刷物の走行方向下流側に離れた所定地点でサーマルリボンを印刷物から冷時剥離し、このとき印刷物の印刷面の周囲の転写層の樹脂をバックアップ手段に転写させることなくサーマルリボン側に残すようにしたことを特徴とする印刷物表面加工方法である。
【0015】
この方法において、バックアップ手段を少なくとも熱転写地点から冷時剥離地点までの走行領域においてサーマルリボンおよび印刷物と同期的に走行させることができる。この場合、バックアップ手段をエンドレスに周回させても良いし、供給ボビンから送り出して巻取ボビンに巻き取るようにしても良い。また、バックアップ手段をローラ状にして熱転写地点においてサーマルリボンおよび印刷物を挟んで加熱手段に対置しても良い。
【0016】
さらに、この方法の好適な一実施形態によれば、熱転写直後に強い圧力をかけずに再度サーマルリボンを転写層の樹脂の溶融または軟化温度以上の温度に加熱する。
【0017】
また、本発明による印刷物表面加工装置は、印刷物の印刷面を保護する透明保護フィルムを該印刷面の全面をカバーするように形成するための装置であって、少なくとも片面に印刷面を有する印刷物を供給する給紙手段と、溶融して透明フィルム化する樹脂を主体とする転写層を有するサーマルリボンを印刷物の印刷面の上に重ね合わせた状態で走行させるリボン供給手段と、サーマルリボンの転写層の樹脂を溶融または軟化させるための加熱手段と、サーマルリボンおよび印刷物を挟んで加熱手段に対向して設けられてサーマルリボンと同期した方向および速度で駆動されるバックアップ手段と、加熱手段をバックアップ手段に向けて移動させてサーマルリボンを印刷物に圧接させるための移動手段と、移動手段により移動した加熱手段によって熱転写が行われる地点より走行方向下流側に離れた地点に設けられてサーマルリボンを印刷物から冷時剥離する剥離手段と、印刷物の前端が熱転写地点に到達する直前に加熱手段を移動させてサーマルリボンを印刷物に圧接させると共に印刷物の後端が熱転写地点を通過した直後に該圧接状態を解除させるように移動手段を制御する制御手段とを備え、前記サーマルリボン、前記加熱手段および前記バックアップ手段はいずれも印刷物より幅広に形成され、剥離手段によりサーマルリボンが印刷物から剥離されたときに印刷物の印刷面の周囲の転写層の樹脂をバックアップ手段に転写させることなくサーマルリボン側に残すようにするためにバックアップ手段の表面は剥離特性に優れた材料で形成されることを特徴とする。
【0018】
この装置において、バックアップ手段は、少なくとも熱転写地点から冷時剥離地点までの領域においてサーマルリボンおよび印刷物と同期的に周回するエンドレスのバックアップベルトであっても良いし、少なくとも熱転写地点から冷時剥離地点までの領域においてサーマルリボンおよび印刷物と同期的に走行するバックアップフィルムであって、供給ボビンから送り出されて巻取ボビンに巻き取られるものであっても良い。あるいは、熱転写地点においてサーマルリボンおよび印刷物を挟んで加熱手段に対置されたバックアップローラであっても良い。
【0019】
さらに、この装置の好適な一実施形態によれば、熱転写地点からサーマルリボンおよび印刷物の走行方向下流側に近接して後加熱手段が設けられ、強い圧力をかけずに再度サーマルリボンを転写層の樹脂の溶融または軟化温度以上の温度に加熱する。後加熱手段は、加熱手段と同じタイミングで移動するよう制御手段によって制御される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、小規模オフィスや店舗あるいは家庭などであっても、電子写真方式・インクジェット方式・熱転写方式などの各種小型プリンタによる印刷物についてその光沢・表面強度・耐水性・耐光性などを向上させる目的で、手軽に且つ低コストで表面加工を行うことができる。サーマルリボンの転写層は、溶融または軟化した樹脂を印刷物の印刷面に熱転写させた後、冷時剥離により印刷物の用紙縁で自動的にきれいにカットされるので、表面加工後の印刷物についてはみ出した部分の再固化樹脂をカットする後工程を必要としない。
【0021】
また、印刷物の印刷面からはみ出した余白部分の転写層は一旦溶融または軟化した後に再固化してサーマルリボン側に残るので、バックアップ手段の表面には熱転写後もサーマルリボンの転写層の樹脂が付着することがない。したがって、クリーニングや交換の必要なく半永久的に使用し続けることができ、資源の無駄をなくすと共にコストダウンを実現することができる。
【0022】
加熱手段により熱転写が行われる地点より搬送方向下流側に近接して後加熱手段が設けられた装置構成によれば、サーマルリボンの転写層を印刷物に熱転写させた直後に該後加熱手段がサーマルリボンを加熱するので、加熱手段の熱量不足などの場合でも印刷物に転写した樹脂を十分に溶融させて、再固化により形成される透明保護フィルムに十分な光沢を与えることができる。また、ゴムローラなど弾力性を有する加熱手段を用いて加熱圧接すると、印刷物の用紙の細かな凹凸がサーマルリボンに移り、剥離後も細かな凹凸として透明保護フィルムに残ってしまうことがあるが、このような場合であっても、後加熱バーで強い圧力をかけずに加熱することにより、サーマルリボンの凹凸を無くし、剥離後に印刷面に形成される透明保護フィルムを平滑面として強い光沢を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態による印刷物表面加工装置の機構図である。
【図2】同装置の熱転写部における加熱バー、サーマルリボン、印刷物およびバックアップベルトの位置関係および寸法関係を示す説明図である。
【図3】同装置による熱転写動作を時系列的に説明する平面図である。
【図4】同装置による熱転写動作を時系列的に説明する断面図である。
【図5】同装置に用いられるサーマルリボンの構成例を示す断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態による印刷物表面加工装置の機構図である。
【図7】本発明のさらに他の実施形態による印刷物表面加工装置の機構図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態による印刷物表面加工装置の機構図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は本発明の一実施形態による印刷物表面加工装置の機構を概略的に示す。この印刷物表面加工装置10は、印刷物1の少なくとも片面に形成された印刷面の光沢・表面強度・耐水性・耐光性などを向上させるために、サーマルリボン11の転写層を加熱バー12で溶融または軟化させて該印刷面に熱転写させて印刷物1の印刷面に透明保護フィルムを被覆させるものである。この実施形態では、印刷物1の上面に形成された印刷面に透明保護フィルムを被覆形成するための装置10として示されている。
【0025】
装置10は、印刷物1を矢印方向に給紙するためのフィードローラ13を備えている。フィードローラ13は、印刷物1の表裏面に圧接するよう印刷物1を挟んで両側に対向配置された一対または複数対のローラからなる。
【0026】
サーマルリボン11は、供給ボビン(図示せず)から送り出され、熱転写部において印刷物1の上面に沿って平行に且つ同速度で移動する間に、ヒータ14で加熱された加熱手段(この実施形態では加熱バー12)によって転写層の樹脂を溶融ないし軟化させるに十分な温度に加熱され、該転写層の樹脂を印刷物1の印刷面に転写させた後、残余部分が剥離ローラ15によって印刷物1から剥離されて、巻取ボビン(図示せず)に巻き取られる。
【0027】
サーマルリボン11は、従来公知の溶融型熱転写プリンタに使用されるサーマルリボンと略同様にPETなどのベース上に熱転写剥離される転写層が積層形成された構成を有するが、このサーマルリボン11における転写層11cはインクではなく、溶融して透明フィルム化する樹脂を主成分として形成されている。また、転写層11cの樹脂には、印刷物1の印刷面の光沢・表面強度・耐水性・耐光性などを向上させるための表面保護機能と、印刷物1に対する転写性(接着性)とが要求される。これらの要求性能を満たすものとして、転写層11cの樹脂としてはアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系またはこれらの混合樹脂などを用いることが好ましい。これらの樹脂のTg(ガラス転移温度)は一般に20〜110℃程度である。
【0028】
好適な一例として、サーマルリボン11は、PETなどのベース11a上に剥離層11bを介して転写層11cが積層された構成を有する(図5)。剥離層11bには、転写層11cと同様に溶融後の透明性および表面保護機能が求められるので、転写層11cと同様の樹脂(アクリル系、ポリエステル系、エポキシ系またはこれらの混合樹脂など)を主成分とすることができるが、これにワックス類を添加して、熱転写後の冷時剥離の際に転写層11cをベース11aから剥離させるための剥離補助機能を付与することが好ましい。剥離層11bに添加するワックス類としては、カルナバワックスなどの天然ワックス、パラフィン・マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス、エステル・ポリオレフィンワックスなどの合成ワックスなどが挙げられる。各層の厚みは、一例として、ベース11aが4〜6μm、剥離層11bが0.05〜2.0μm、転写層11cが1.5〜4.0μmである。
【0029】
符号21は断熱材料からなる断熱ガイドであり、その外側面はサーマルリボン11の走行路を規定すると共に、サーマルリボン11が加熱バー12と接触するまで熱の影響を受けないようにして転写層11cの事前溶融を防止する。
【0030】
加熱バー12は昇降機構17によって昇降可能であり、その昇降のタイミングは制御装置22によって制御される。すなわち、制御装置22は、フィードローラ13により給紙された印刷物1の前端が装置10の熱転写地点の直前(言い換えれば印刷物1が加熱バー12の直下に到達する直前の位置=図1,図3(a))に到達したことを前端センサ(図示せず)で検知したときに、加熱バー12を下降させてプラテンローラ19に圧接させ、印刷物1の後端が熱転写地点を通過した(図3(b))ことを後端センサ(図示せず)で検知したときに、加熱バー12を上昇させて圧接状態を解除する。
【0031】
符号16は後加熱手段を構成する後加熱バーであり、装置10の熱転写部において印刷物1と共に走行するサーマルリボン11の直上であって且つ加熱バー12の下流側に配置されている。後加熱バー16は制御装置22による制御の下で昇降機構17によって加熱バー12と同じ昇降タイミングで昇降する。すなわち、前記前端センサ検知時に下降して、装置10の熱転写部において走行するサーマルリボン11の上面に近接(図1)またはわずかに接触する高さ位置となり、前記後端センサ検知時に上昇してサーマルリボン11から離れた位置に退避する。
【0032】
装置10の熱転写部において印刷物1の搬送面の直下を平行に移動するバックアップ手段(この実施形態ではバックアップベルト18)が設けられる。バックアップベルト18はプラテンローラ19によって印刷物1の搬送方向と同方向に搬送され、ガイドローラ20,20,20によって規定される搬送路に沿って周回する。印刷物1はバックアップベルト18に載置された状態で矢印方向に搬送されていく。バックアップベルト18の材質は特に限定的ではなく、芯材入のベルトだけでなく、薄いフィルム状のものであっても良いが、少なくともその表面にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの低摩擦性ないし易剥離性材料がコーティングされ、あるいはバックアップベルト18自体を低摩擦性ないし易剥離性材料で形成する。
【0033】
図2から明らかなように、サーマルリボン11、加熱バー12およびバックアップベルト18はいずれも印刷物1より幅広である。また、図示されていないが、後加熱バー16も同様に印刷物1より幅広である。
【0034】
以上のように構成された装置10による熱転写動作について図3をも併せて参照して説明する。サーマルリボン11が所定速度で走行している状態でこれに同期した速度で印刷物1をフィードローラ13により矢印方向に給紙し、前述の前端センサによりその前端が装置10の熱転写直前位置に到達したことを検知すると、前述の制御装置は、昇降機構17により加熱バー12を下降させてプラテンローラ19に圧接させる(図3(a))。このときバックアップベルト18もサーマルリボン11および印刷物1と同期した速度で周回している。
【0035】
これにより、圧接状態とされた加熱バー12とプラテンローラ19との間(=サーマルリボン11とバックアップベルト18との間)に印刷物1が入り込んでいき、ヒータ14により加熱された加熱バー12の熱を受けてサーマルリボン11の転写層11cが溶融または軟化し、印刷物1の上面(印刷面)を覆うように融着される。
【0036】
その後、前述の後端センサにより印刷物1の後端が熱転写地点(圧接位置)を通過したことを検知すると、前述の制御装置は、昇降機構17により加熱バー12を上昇させて圧接状態を解除する(図3(b))。
【0037】
上記熱転写動作についてさらに図4を参照して説明する。図4(a)は熱転写開始前の状態であり、印刷物1の前端が前端センサによる検知位置(熱転写直前位置)にまだ到達していない段階(図3(a))である。このとき、サーマルリボン11は未加熱状態にあり、ベース11aに転写層11cが全面的に積層された初期状態(図5)を維持している(剥離層11bは図示省略)。
【0038】
図4(b)は熱転写が行われているときの状態を示し、圧接状態とされている加熱バー12とプラテンローラ19との間(=サーマルリボン11とバックアップベルト18との間)に印刷物1が入り込んでおり、印刷物1の上面(印刷面)にサーマルリボン11の転写層11cが圧接している。これにより、加熱バー12の熱を受けてサーマルリボン11の転写層11cの樹脂が溶融または軟化し、印刷物1の上面に融着される。
【0039】
サーマルリボン11は印刷物1より幅広であるので、印刷物1の印刷面の幅一杯に転写層11cの樹脂が融着される。また、この状態は圧接地点(熱転写地点)に印刷物1の前端が到達する前から後端が通過した後まで維持されるので、印刷物1の印刷面の全長に亘って転写層11cが熱転写される。すなわち、印刷物1の印刷面をフルカバーするように転写層11cの樹脂が融着される。
【0040】
図4(c)はサーマルリボン11が剥離ローラ15によって印刷物1から剥離された後の状態を示す。サーマルリボン11が剥離されるときまでに、転写層11cは樹脂の溶融/軟化温度を十分に下回る温度に低下している。したがって、冷時剥離によって印刷物1の用紙縁でサーマルリボン転写層11cがきれいに切断され、溶融/軟化した転写層11cの樹脂は印刷物1をフルカバーするように印刷面に転写され、該樹脂の再固化により透明保護フィルム11c’が形成される。一方、印刷面の周囲の転写層11cは剥離ローラ15によってベース11aと共に巻取ボビンに向けて巻き取られていく。
【0041】
バックアップベルト18の表面にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの低摩擦性ないし易剥離性材料がコーティングされ、あるいはバックアップベルト18自体が低摩擦性ないし易剥離性材料で形成されているので、サーマルリボン11の転写層11cはベース11aへの接着力よりもバックアップベルト18への接着力が弱く設定されている。したがって、剥離ローラ15による冷時剥離の際に、印刷物1の印刷面の周囲の転写層11cはバックアップベルト18側に帯同することなく剥離ローラ15で巻き取られていき、バックアップベルト18の表面には転写層11cの樹脂が付着することがないため、バックアップベルト18はクリーニングや交換の必要なく半永久的に使用し続けることができる。
【0042】
以上で一枚の印刷物1の印刷面に透明保護フィルム11c’を全面にきれいに被覆形成して表面加工する処理が終了する。前述の後端センサによる印刷物後端通過検知後の所定時間インターバルの間に前述の前端センサによる印刷物前端進入検知がなければ、装置運転を停止する。該所定時間インターバルの間に前端センサによる検知があれば、装置10を連続的に運転して複数枚の印刷物1に対して順次に表面加工処理を行う。
【0043】
なお、後加熱バー16は、既述したように、加熱バー12と同じタイミングで昇降して、その下降時にはサーマルリボン11に接触する(強い圧力はかけずにわずかに接触する程度)ので、加熱バー12との圧接により溶融または軟化したサーマルリボン11の転写層11cを印刷物1に転写させた直後に、サーマルリボン11に接触して、印刷物1に転写した樹脂を十分に溶融させ、再固化により形成される透明保護フィルム11c’に十分な光沢を与えるために有用である。
【0044】
図1に示す装置10を用いて、カラーレーザプリンタで印刷済みの印刷物1の印刷面を表面加工した。サーマルリボン11には、5μm厚のPETベース11a上に、溶融して透明フィルム化するアクリル系樹脂(Tg80℃)にワックス類を添加した樹脂塗料を塗布して1.5μm厚の剥離層11bを形成し、さらにその上に剥離層11bと同一系樹脂を塗布して3.0μm厚の転写層11cを形成した合計厚10μmのものを用いた。バックアップベルト18には、ガラス繊維製のベルトの表面にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をコーティング加工したものを用いた。加熱バー12はヒータ14で180℃に加熱し、後加熱バー16は150℃に加熱して用いた。熱転写によるラミネート速度を25mm/秒とし、後加熱バー16による加熱終了後2秒で剥離ローラ15による冷時剥離が行われるようにして装置10を運転した。
【0045】
比較例として、実施例と同じ印刷物1に同じサーマルリボン11を用い、装置運転条件も実質的に同一にして、冷時剥離方式ではなく熱時剥離方式を採用して表面加工を行った。すなわち、一般の熱転写プリンタに使用されると同様のサーマルヘッドを熱源とし、該サーマルヘッドの発熱幅を印刷物1の幅より若干広くコントロールし、さらに印刷物1がサーマルヘッドを通過する前後もサーマルヘッドをプラテンロールに圧接して、印刷物1の全面に熱転写を行うと共に、サーマルヘッド通過直後にサーマルリボンを剥離した。
【0046】
これら実施例および比較例について、印刷物1表面に形成された透明保護フィルム11c’の光沢、耐水性、表面強度および印刷物1表面への密着性を評価した。また、透明保護フィルム11c’の端面が印刷物1の用紙縁に沿ってきれいに割れているか否か(「端面切断性」)を目視評価した。これらの結果を次の表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
特に評価が分かれたのは「端面切断性」の評価項目であり、本発明実施例による表面加工ではサーマルリボン11の転写層11cが印刷物1の用紙縁に沿ってきれいに剥離して透明保護フィルム11c’が形成されたのに対し、比較例による表面加工では転写層11cが印刷物1の用紙縁に沿ってきれいに剥離することができずに透明保護フィルム11c’の端面から再固化した樹脂が糸状になって多数はみ出した状態になっていた。このことから、本発明においては冷時剥離が必須条件であることが確認された。
【0049】
既述した実施形態では、バックアップ手段としてエンドレスのバックアップベルト18を用いてこれを周回走行させるものとしたが、バックアップ手段はこのようなバックアップベルト18に限定されるものではなく、加熱転写の際にサーマルリボン11の転写層11cの溶融樹脂をバックアップ手段に移行させることなくサーマルリボン11側に接着されたままの状態として剥離ローラ15で巻き取られる作用を果たすものであれば良い。たとえば、バックアップベルト18に代えて、印刷物1の搬送面の下方において供給ボビンから送り出されて巻取ボビンに巻き取られるように走行するフィルムないしシート状のもの(バックアップフィルム)を用いても良い。あるいは、サーマルリボン11および印刷物1を挟んで加熱手段に対置させたローラ(バックアップローラ)を用いることも可能である。
【0050】
また、既述した実施形態では、サーマルリボン11の転写層11cの樹脂を加熱溶融または軟化させるための加熱手段として加熱バー12を用いているが、同様の作用を果たすものであれば任意の加熱手段を用いることができ、たとえばローラ状に形成された金属ローラやゴムローラなどの加熱ローラを用いることができ、また、熱転写プリンタに使用されているサーマルヘッドを使用しても良い。
【0051】
上述のバックアップ手段および加熱手段の組み合せは任意であり、その一例として、図6は、バックアップ手段としてバックアップフィルム23を用いると共に加熱手段としてサーマルヘッド24を用いた装置構成を概略的に示す。この図において、図1の装置10における手段・部材・部分ないし要素と実質的に同一のものには同一の符号が付されている。バックアップフィルム23は、印刷物1の搬送面の下方において供給ボビン25から送り出され、プラテンローラ19からガイドローラ20までの間は印刷物1の直下を走行して印刷物1に対する走行面を与え、剥離ローラ15を通過した後に印刷物1から離れて巻取ボビン26に巻き取られる。バックアップフィルム23は、サーマルリボン11および印刷物1と同期した速度で走行する。この実施形態においても熱転写および冷時剥離のメカニズムは既述実施形態と同様であり、熱転写直前位置に印刷物(同図右側の印刷物1A)が搬送されてきたときにサーマルヘッド24をプラテンローラ19に圧接させて熱転写を開始し、この状態を印刷物1Aの後端が通過した直後まで継続して行うことによってサーマルリボン11の転写層11cの樹脂を溶融または軟化させて印刷物の表面全面に融着した後、剥離ローラ15でサーマルリボン11を印刷物から剥離することによって印刷物の印刷面をフルカバーする透明保護フィルム11c’を形成する(同図左側の印刷物1B)。この実施形態においても、印刷面の周囲の転写層11cはバックアップフィルム23に移行することなく剥離ローラ15でサーマルリボン11に残された状態で巻き取られていくので、バックアップフィルム23の表面には転写層11cの樹脂が付着せず、巻取ボビン26に巻き取られたバックアップフィルム23はクリーニングや交換の必要なく再利用することができる。
【0052】
この実施形態において、サーマルヘッド24に近接して設けられた断熱ガイドローラ29は、サーマルリボン11の走行路を規定すると共に、サーマルリボン11がサーマルヘッド24と接触するまでサーマルヘッド24の熱の影響を受けないようにして転写層11cの事前溶融を防止するものであり、既述実施形態における断熱ガイド21と略同様の作用を果たす。
【0053】
図7は、バックアップ手段としてバックアップフィルム23を用いると共に、加熱手段として金属製やゴム製などの加熱ローラ30を用いてプラテンローラ19に対置させた装置構成を概略的に示す。加熱手段としてサーマルヘッド24に代えて加熱ローラ30を用いてサーマルリボン11および印刷物1と同期的に回転させるようにした点以外は図6の装置構成と同様であるので、以下説明を省略する。
【0054】
図8は、バックアップ手段としてバックアップローラ31を用いると共に、加熱手段として用いた金属製やゴム製などの加熱ローラ30に対置させた装置構成を概略的に示す。この構成においても、加熱ローラ30を下降させてバックアップローラ31に圧接させることによりサーマルリボン11の転写層11cの樹脂を溶融させて印刷物1の上面(印刷面)に転写させ、該樹脂が十分に冷却した後に剥離ローラ15で印刷物1からサーマルリボン11を剥離させて印刷面に透明保護フィルム11c’を形成する熱転写および冷時剥離のメカニズムは、バックアップ手段としてバックアップベルト18(図1)やバックアップフィルム23(図6,図7)と同じであるが、バックアップベルト18やバックアップフィルム23の場合は熱転写地点(加熱手段の直下位置)から冷時剥離地点(剥離ローラ15の直下位置)まで印刷物1の下方を同期して走行するバックアップ作用が継続的に行われるため、印刷物1からはみ出した周囲部分の溶融樹脂はバックアップベルト18/バックアップフィルム23に密着した後に剥離ローラ15に到達するまでの間に冷却固化され、剥離ローラ15でバックアップベルト18/バックアップフィルム23から離れてサーマルリボン11側に残されるのに対して、図8の実施形態のようにバックアップ手段にバックアップローラ31を用いた場合は、熱転写地点での瞬間的なバックアップ作用しか発揮できないので、この熱転写位置において印刷物1からはみ出した周囲部分の溶融樹脂をバックアップローラ31に移行させることなくサーマルリボン11側に残さなければならない。このような作用を果たすため、バックアップローラ31の表面にはきわめて剥離特性に優れた材料(たとえばポリ4フッ化エチレン樹脂)が用いられる。
【0055】
なお、図6ないし図8では図示省略されているが、既述実施形態と同様に、加熱手段(サーマルヘッド24,加熱ローラ30)によって熱転写が行われる地点より搬送方向下流側に近接して後加熱手段(たとえば後加熱バー16)を設けることが好ましい。サーマルリボンの転写層を印刷物に熱転写させた直後に後加熱手段によってサーマルリボンを加熱することにより、加熱手段の熱量不足などの場合でも印刷物に転写した樹脂を十分に溶融させて、再固化により形成される透明保護フィルムに十分な光沢を与えることができる。特に、図7の実施形態において加熱ローラ30にゴムローラを用いた場合などのように、弾力性を有する加熱手段を用いた実施形態を採用する場合は、印刷物の用紙の細かな凹凸がサーマルリボンに移り、剥離後も細かな凹凸として透明保護フィルムに残ってしまうことがあるので、後加熱バーで強い圧力をかけずに加熱して、サーマルリボンの凹凸を無くし、剥離後に印刷面に形成される透明保護フィルムを平滑面として強い光沢を与えるようにすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、電子写真方式・インクジェット方式・熱転写方式などによる各種小型プリンタによる印刷物、オフセット印刷・フレキソ印刷・グラビア印刷などによる各種印刷物、さらには銀塩写真などの写真画像形成物などに対して光沢付与などを目的とする表面加工を行う装置として、特に小規模オフィスや店舗などでの使用に好適であり、産業上の利用可能性が大きいものである。
【符号の説明】
【0057】
1 印刷物
10 印刷物表面加工装置
11 サーマルリボン
11a ベース
11b 剥離層
11c 転写層
11c’ 透明保護フィルム
12 加熱バー(加熱手段)
13 フィードローラ(給紙手段)
14 ヒータ
15 剥離ローラ(剥離手段)
16 後加熱バー(後加熱手段)
17 昇降機構(移動手段)
18 バックアップベルト(バックアップ手段)
19 プラテンローラ
20 ガイドローラ
21 断熱ガイド
22 制御装置(制御手段)
23 バックアップフィルム(バックアップ手段)
24 サーマルヘッド(加熱手段)
25 バックアップフィルムの供給ボビン
26 バックアップフィルムの巻取ボビン
27 サーマルリボンの供給ボビン
28 サーマルリボンの巻取ボビン
29 断熱ガイドローラ
30 加熱ローラ(加熱手段)
31 バックアップローラ(バックアップ手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融して透明フィルム化する樹脂を主体とする転写層を有するサーマルリボンと少なくとも片面に印刷面を有する印刷物とを、サーマルリボンの転写層と印刷物の印刷面とを重ね合わせた状態にして、サーマルリボンおよび印刷物を挟んで対向して設けられた加熱手段とバックアップ手段との間に通過させ、加熱手段によりサーマルリボンの転写層の樹脂を溶融または軟化させる温度以上に加熱して該樹脂を印刷物の印刷面に熱転写し、該溶融または軟化した樹脂を再固化させて印刷物の印刷面に透明保護フィルムを被覆形成する方法であって、印刷物より幅広のサーマルリボンおよびバックアップ手段を用いると共に、印刷物の前端が熱転写地点に到達する直前から印刷物の後端が熱転写地点を越えるまで熱転写を継続して行うことにより、印刷物の印刷面の全面をカバーするように前記透明保護フィルムを形成し、且つ、熱転写地点からサーマルリボンおよび印刷物の走行方向下流側に離れた所定地点でサーマルリボンを印刷物から冷時剥離し、このとき印刷物の印刷面の周囲の転写層の樹脂をバックアップ手段に転写させることなくサーマルリボン側に残すようにしたことを特徴とする印刷物表面加工方法。
【請求項2】
バックアップ手段を少なくとも熱転写地点から冷時剥離地点までの走行領域においてサーマルリボンおよび印刷物と同期的に走行させることを特徴とする請求項1記載の印刷物表面加工方法。
【請求項3】
バックアップ手段をエンドレスに周回させることを特徴とする請求項2記載の印刷物表面加工方法。
【請求項4】
バックアップ手段を供給ボビンから送り出して巻取ボビンに巻き取ることを特徴とする請求項2記載の印刷物表面加工方法。
【請求項5】
バックアップ手段をローラ状にして熱転写地点においてサーマルリボンおよび印刷物を挟んで加熱手段に対置することを特徴とする請求項1記載の印刷物表面加工方法。
【請求項6】
熱転写直後に強い圧力をかけずに再度サーマルリボンを転写層の樹脂の溶融または軟化温度以上の温度に加熱することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか記載の印刷物表面加工方法。
【請求項7】
印刷物の印刷面を保護する透明保護フィルムを該印刷面の全面をカバーするように形成するための装置であって、少なくとも片面に印刷面を有する印刷物を供給する給紙手段と、溶融して透明フィルム化する樹脂を主体とする転写層を有するサーマルリボンを印刷物の印刷面の上に重ね合わせた状態で走行させるリボン供給手段と、サーマルリボンの転写層の樹脂を溶融または軟化させるための加熱手段と、サーマルリボンおよび印刷物を挟んで加熱手段に対向して設けられてサーマルリボンと同期した方向および速度で駆動されるバックアップ手段と、加熱手段をバックアップ手段に向けて移動させてサーマルリボンを印刷物に圧接させるための移動手段と、移動手段により移動した加熱手段によって熱転写が行われる地点より走行方向下流側に離れた地点に設けられてサーマルリボンを印刷物から冷時剥離する剥離手段と、印刷物の前端が熱転写地点に到達する直前に加熱手段を移動させてサーマルリボンを印刷物に圧接させると共に印刷物の後端が熱転写地点を通過した直後に該圧接状態を解除させるように移動手段を制御する制御手段とを備え、前記サーマルリボン、前記加熱手段および前記バックアップ手段はいずれも印刷物より幅広に形成され、剥離手段によりサーマルリボンが印刷物から剥離されたときに印刷物の印刷面の周囲の転写層の樹脂をバックアップ手段に転写させることなくサーマルリボン側に残すようにするためにバックアップ手段の表面は剥離特性に優れた材料で形成されることを特徴とする印刷物表面加工装置。
【請求項8】
前記バックアップ手段が、少なくとも熱転写地点から冷時剥離地点までの領域においてサーマルリボンおよび印刷物と同期的に周回するエンドレスのバックアップベルトであることを特徴とする請求項7記載の印刷物表面加工装置。
【請求項9】
前記バックアップ手段が、少なくとも熱転写地点から冷時剥離地点までの領域においてサーマルリボンおよび印刷物と同期的に走行するバックアップフィルムであって、供給ボビンから送り出されて巻取ボビンに巻き取られることを特徴とする請求項7記載の印刷物表面加工装置。
【請求項10】
前記バックアップ手段が、熱転写地点においてサーマルリボンおよび印刷物を挟んで加熱手段に対置されたバックアップローラであることを特徴とする請求項7記載の印刷物表面加工装置。
【請求項11】
前記熱転写地点からサーマルリボンおよび印刷物の走行方向下流側に近接して後加熱手段が設けられ、強い圧力をかけずに再度サーマルリボンを転写層の樹脂の溶融または軟化温度以上の温度に加熱することを特徴とする請求項7ないし10のいずれか記載の印刷物表面加工装置。
【請求項12】
前記後加熱手段は、前記加熱手段と同じタイミングで移動するよう前記制御手段により制御されることを特徴とする請求項11記載の印刷物表面加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−228436(P2010−228436A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249219(P2009−249219)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000109037)ダイニック株式会社 (55)
【Fターム(参考)】