説明

印刷物製造方法

【課題】本発明の目的は、基紙の風合いを損ねることなく金属箔を貼着し、さらにオフセット枚葉印刷機を用いて印刷絵柄層を設けたことを特徴とする印刷物の製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、顔料として平均粒子径30nm以下のコロイダルシリカを全顔料固形分100質量部中90質量部以上含む塗工層を基紙上に片面当たり固形分質量2.0g/m2以上設けた被記録媒体を用い、該被記録媒体の一方あるいは両方の面の一部あるいは全面に、オフセット枚葉印刷機によって設けた接着剤層を介して、コールドスタンプ式フォイル転写方法を用いて金属箔を貼着し、それに続いて該金属箔の表面あるいは該金属箔の非貼着部に該オフセット枚葉印刷機を用いて印刷絵柄層を設けることで、基紙の風合いを損ねることなく金属箔を貼着し、さらにオフセット枚葉印刷機を用いて印刷絵柄層を設けたことを特徴とする印刷物の製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の製造方法に関するものである。詳しくは、基紙の風合いを損ねることなく金属箔を貼着し、さらにオフセット枚葉印刷機を用いて印刷絵柄層を設けたことを特徴とする印刷物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷物は、人の目を引きつけることが商品としての重要な要素となる。この人の目を引きつける手段の一つとして印刷絵柄に金属の光沢感を付与するという方法がある。幾つかの方法が既に開示されているが、例えば印刷用パールインキを使用する方法が挙げられる(例えば特許文献1参照)。しかしこの方法は、使用する色数の制限や、印刷絵柄において光沢感を付与できる場所に制限が多く、最も有効な方法とは言い難い。
【0003】
これまで紹介された有効な方法として、フォイル転写方法を用いて印刷枚葉紙上に金属箔を形成し得る印刷装置が挙げられる(例えば特許文献2参照)。このような枚葉紙加工機は給紙機および排紙機を有しており、これら2つの機構群の間には複数の印刷装置とコーティングモジュールが設けられている。少なくとも一つの印刷装置内で、接着剤層が画線部提供絵柄の状態で設けられる。圧胴およびプレスローラを有する、印刷装置に続くコーティングモジュール内にはフォイル案内部が設けられている。このフォイル案内部は、フォイル格納ロールから出るフォイルストライプまたは転写フォイルが、圧胴およびプレスローラ間でコーティングモジュールの転写間隙を通過する様に設計されている。フォイルストライプは、コーティングモジュールを出た後で排紙側において再び巻き取られる。転写フォイルは担持体層を有しており、この担持体層上には例えばアルミニウムからなる金属箔等の画線部提供層を設けることが出来る。金属箔および担持体フォイル間には分離層が設けられている。この分離層は、金属箔を担持体層から引き剥がし可能にするために機能する。
【0004】
印刷装置を通過させて印刷枚葉紙を搬送する際に、各印刷枚葉紙に接着剤層が設けられる。その後、印刷枚葉紙がコーティングモジュールを通過して案内される。ここで、プレスローラによって、圧胴上に載置されている印刷枚葉紙がフォイル材料に結びつく。その際に下方を向いている金属箔は、接着剤層が設けられた領域において、印刷枚葉紙と緊密に結びつく。印刷枚葉紙をさらに搬送した後で、金属箔は、接着剤層が設けられた領域においてのみ貼着する。従って、担持体フォイルから、接着剤層の設けられた領域のみ、金属箔が除去される。このようにして消費された転写フォイルを再び巻き取る。金属箔が貼着された印刷枚葉紙は、それに続いて金属箔の表面あるいは金属箔の非貼着部に印刷絵柄層を設けられた状態で排紙される。
【0005】
さらに上記の技術を改良し、より高い自由度、高い品質で印刷物が提供される印刷装置も紹介されている(例えば特許文献3参照)。
【0006】
上記のような手法で、金属箔を製造者の意図する部分にのみ貼着出来、且つ、金属箔貼着部あるいは非貼着部のいずれにも印刷絵柄を設けることが可能で、さまざまな色のメタリック表現が容易に再現できるようになり、ラベル、ポスター、雑誌等の分野において多く採用されている。
【0007】
このような金属箔を貼着させる手法で印刷物を製造するための被記録媒体としては、アート紙、コート紙といった一般的な印刷用塗工紙が好適である。金属箔を貼着するための接着剤層を設けるには、高平滑性で、且つ接着剤受理性が高い方が好適である。また金属箔が転写される際も高平滑なものが好適である。しかし、アート紙、コート紙といった一般的な印刷用塗工紙は、基紙の表面に、炭酸カルシウムやカオリン、二酸化チタン、タルクといった鉱物顔料、あるいは有機合成顔料などを主体とした塗工層が設けられることがほとんどで、このことにより、基紙の風合いが損なわれている。ここで言う基紙の風合いとは、基紙の微妙な凹凸やパルプ繊維が与える自然な感覚、また基紙の持つ独自の色合いのことを指す。
【0008】
基紙の風合いと、金属箔を貼着するための接着剤層の受理性、金属箔貼着性は相反する物性であることが一般的である。基紙の風合いを損なわずに金属箔を貼着するための接着剤層の受理性、金属箔貼着性を付与するためには、基紙上に設ける塗工層の塗工量を少なく抑える方法が一般的であるが、この時の金属箔を貼着するための接着剤層の受理性、金属箔貼着性は十分とは言えない。
【0009】
基紙の風合いを損なわずに高平滑性を付与する方法として、基紙上に水溶性樹脂、例えば完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールおよびこれらポリビニルアルコール類と他樹脂との共重合体、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルピロリドンなどを塗工して被記録媒体を得る手法が挙げられる。しかしこの方法では金属箔を貼着するための接着剤層の受理性が不十分であり、また被記録媒体同士が粘着し易くブロッキングなどの障害を起こし易い。
【0010】
金属箔貼着性を向上させるために、エンボス加工等で強制的に加圧して箔を貼着させる方法もあるが、この方法では最終的に出来上がる印刷物に、本来、製造者が意図していない凹凸が生じてしまうことになる。
【0011】
よって、該被記録媒体の一方あるいは両方の面の一部あるいは全面に金属箔を貼着し、その金属箔の表面あるいは金属箔非貼着部に印刷絵柄層を設けたことを特徴とする印刷物製造方法は、十分満足なものが未だ得られていないのが現状である。
【特許文献1】特開2001−240786号公報
【特許文献2】特表平6−505209号公報
【特許文献3】特開2008−162283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、基紙の風合いを損ねることなく金属箔を貼着し、さらにオフセット枚葉印刷機を用いて印刷絵柄層を設けたことを特徴とする印刷物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記に鑑み鋭意研究した結果、顔料として平均粒子径30nm以下のコロイダルシリカを全顔料固形分100質量部中90質量部以上含む塗工層を基紙上に片面当たり固形分質量2.0g/m2以上設けた被記録媒体を用い、該被記録媒体の一方あるいは両方の面の一部あるいは全面に、オフセット枚葉印刷機によって設けた接着剤層を介して、コールドスタンプ式フォイル転写方法を用いて金属箔を貼着し、それに続いて該金属箔の表面あるいは該金属箔の非貼着部に該オフセット枚葉印刷機を用いて印刷絵柄層を設けたことを特徴とする印刷物の製造方法を発明するに至った。
【0014】
本発明においては、該基紙が、JIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)6.0μm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、顔料として平均粒子径30nm以下のコロイダルシリカを全顔料固形分100質量部中90質量部以上含む塗工層を基紙上に片面当たり固形分質量2.0g/m2以上設けた被記録媒体を用い、該被記録媒体の一方あるいは両方の面の一部あるいは全面に、オフセット枚葉印刷機によって設けた接着剤層を介して、コールドスタンプ式フォイル転写方法を用いて金属箔を貼着し、それに続いて該金属箔の表面あるいは該金属箔の非貼着部に該オフセット枚葉印刷機を用いて印刷絵柄層を設けることで、基紙の風合いを損ねることなく金属箔を貼着し、さらにオフセット枚葉印刷機を用いて印刷絵柄層を設ける印刷物の製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の印刷物の製造方法について、詳細に説明する。
【0017】
本発明は金属箔を貼着させる被記録媒体に、コロイダルシリカを全顔料固形分100質量部中90質量部以上含む塗工層を設ける。本発明に用いるコロイダルシリカは、SiO2・xH2Oで表せられ、その製造方法は、アルカリ金属珪酸塩を純水で希釈した後、強酸型陽イオン交換樹脂に接触させて脱アルカリし、さらに酸を加えて強酸性とした後、限外濾過膜を用いて不純物を除去して得られたオリゴ珪酸溶液を徐々に滴下しシリカゾルを得る方法、上記同様に酸処理したアルカリ金属珪酸塩水溶液を、H型強酸性陽イオン交換樹脂、OH型強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させ、これにアルカリ金属水酸化物水溶液を加え60〜150℃に加熱することにより安定な水性ゾルを生成させ、さらに限外濾過膜を介して水を除き、次いでH型強酸性陽イオン交換樹脂、OH型強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させ、最後にアンモニアを加えてシリカ以外の多価金属酸化物を実質的に含まない安定な水性シリカゾルを生成する方法、高純度珪酸エステルを水酸化第四アンモニウムおよび分散剤の存在下にて加水分解することにより得られる安定性に優れたコロイダルシリカの製造方法等が知られている。
【0018】
球状または球状に近い一次粒子が連結せずに独立して存在している一般的なコロイダルシリカのみならず、小さいシリカ粒子が細長く連結した鎖状粒子、またそれらが三次元網目構造を有しているもの、球状の一次粒子が複数個連結し、真珠のネックレスに似た形状を示すパールネックレス状の粒子等の形状で存在する非球状コロイダルシリカを使用することも出来る。これらの鎖状シリカ粒子やパールネックレス状シリカ粒子からなる被膜は機械的強度にも優れている。
【0019】
細長い形状の鎖状粒子とは三次元方向には伸長を有さず、同一平面内に伸長したものを言う。細長い形状の鎖状粒子には、ほぼ真っ直ぐなもの、屈曲しているもの、分枝を有するもの、環を有するもの等が含まれる。これに対し、三次元網目構造を有する粒子とは、これらの細長い形状の鎖状粒子が文字通り三次元的に絡まった網目状構造を有するもの等である。
【0020】
パールネックレス状粒子や鎖状粒子はいずれもシリカの一次粒子が連結した、分岐を有する細長い形状であるが、両者の違いは球状一次粒子の占める割合にある。ここでパールネックレス状粒子とは電子顕微鏡による二次元像において、球状一次粒子に起因する円状図形が真円度70%以上を有し、且つ各円状図形の内接円の合計面積がパールネックレス状粒子全投影面積の70%以上を占め、且つ各円状図形の内接円が互いに重ならないもの等である。ここで真円度とは、対象の図形輪郭の外接円の半径に対する内接円の半径の比率で表され、真円では100%になる。
【0021】
本発明は、平均粒子径30nm以下のコロイダルシリカを全顔料固形分100質量部中90質量部以上含む塗工層を基紙上に設けた被記録媒体を用いる。なお本発明における平均粒子径とはコロイダルシリカスラリーを風乾させ電子顕微鏡観察により測定した一次粒子の平均粒子径を示す。パールネックレス状粒子や鎖状粒子の連結した状態の長さ、あるいは二次粒子の状態での平均粒子径のことではない。コロイダルシリカは通常無色透明スラリーとして提供され、塗工層として基紙上に多く設けても基紙の風合いを損ねることがない。コロイダルシリカを全顔料固形分100質量部中90質量部以上含むことで、この基紙の風合いを損ねないという特性が維持され、且つコロイダルシリカの非常に大きな比表面積に起因して金属箔を貼着するための接着剤層の受理性、金属箔貼着性が高められる。
【0022】
本発明におけるコロイダルシリカは平均粒子径30nm以下のものを用いる。一般的にコロイダルシリカの粒子径は数nm〜1μm程度で製造されるが、コロイダルシリカの平均粒子径が30nmより大きいと、金属箔を貼着するための接着剤層の受理性が不十分である。
【0023】
本発明に用いるコロイダルシリカは、例えば日産化学工業株式会社からスノーテックスST−20、ST−30、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−S、ST−XS等が市販されているほか、株式会社ADEKAからアデライトとして、GRACE−DavisonからLudoxシリーズ等が市販されている。
【0024】
本発明において、被記録媒体の塗工層に含まれる顔料としては、平均粒子径30nm以下のコロイダルシリカを全顔料固形分100質量部中90質量部以上含む、という条件を満たす限り、他に如何なるものを併用しても構わない。例えば、カオリン、焼成カオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、プラスチックピグメント、湿式合成シリカ、アルミナ水和物等を挙げることが出来る。これらの顔料は、その1種をコロイダルシリカと併用してもよく、または複数種をコロイダルシリカと併用しても構わない。
【0025】
本発明に用いられる基紙としては、LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CGPなどの機械パルプ、および故紙パルプなどの各種木材パルプ、綿、麻、竹、サトウキビ、トウモロコシ、ケナフなどの植物繊維、羊毛、絹などの動物繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセルなどのセルロース再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリウレタン系繊維などの化学繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維などの無機繊維をシート状にしたものが使用される。ただし、表面に顔料を主体とする塗工層や樹脂フィルム層を設けたものは含まれない。
【0026】
基紙の製法としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、丸網抄紙機、ヤンキー抄紙機など製紙業界で公知の抄紙機を用いた一般的な抄紙工程、湿式法、乾式法、ケミカルボンド、サーマルボンド、スパンボンド、スパンレース、ウォータージェット、メルトブロー、ニードルパンチ、ステッチブロー、フラッシュ紡糸、トウ開繊などの各工程から一つ以上が適宜選ばれる。
【0027】
またこれら基紙を製造するに当たり、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、水酸化アルミニウムなどの各種填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり剤、紙力増強剤などの各種配合剤を各工程、各素材に合わせて配合しても構わない。酸性、中性、アルカリ性のいずれかでも抄造できる。
【0028】
基紙としては、上質紙、中質紙、色上質紙、書籍用紙、インディア紙、トレーシングペーパー、PPC用紙等の紙も含まれる。ただし、微塗工紙、軽量コート紙、コート紙、アート紙、コートポスト、アートポスト等、表面に顔料を主体とする塗工層を設けたものは含まれない。
【0029】
本発明における基紙は、表面粗さに関して何ら制限されるものではなく、必要に応じて、各種表面処理やカレンダー処理を施しても構わない。ただし、基紙のJIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)が6.0μm以上であることがより好ましい。基紙のJIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)が6.0μm以上であることで、より基紙の風合いに優れる印刷物が提供される。
【0030】
本発明において、被記録媒体を製造する上で、基紙上に設けられる塗工層には、一般的に塗工紙を製造する上で用いられるものは全て配合して構わない。例えば、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などが挙げられる。その他、必要に応じて、分散剤、pH調整剤、潤滑剤、消泡剤、耐水化剤、界面活性剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤などの各種助剤、およびこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。必要に応じて他の成分を配合して構わない。
【0031】
本発明において、被記録媒体を製造する上で、基紙上に設けられる塗工層には、接着剤として如何なるものを用いても構わない。例えば、通常のデンプン、酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、酵素変性デンプンやそれらをフレッシュドライして得られる冷水可溶性デンプンなどのデンプン類、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、酢酸ビニル系などの各種共重合ラテックス、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物、ワックス、カゼイン、大豆蛋白などの天然物およびこれらをカチオン化したものなどが挙げられる。単独で用いても構わないし、これらのうち複数種を併用することは何ら制限されるものではない。
【0032】
本発明の被記録媒体において、塗工層の乾燥後の質量は、片面当たり固形分質量2.0g/m2以上とする。それ以下では、平滑性や接着剤受理性が十分でなく、金属箔の貼着性において十分に要求を満たした印刷物が提供されない。
【0033】
本発明における被記録媒体は、塗工層を設けて乾燥させた後、必要に応じて、各種表面処理や、ソフトカレンダー、スーパーカレンダーなどのカレンダー処理を施しても構わない。
【0034】
本発明において、基紙上に塗工層を設ける方法は何ら限定されるものではない。ディップコート法、エアナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ドクターコート法、ワイヤーバーコート法、スライドコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等、如何なる方法を用いても構わない。
【0035】
本発明は、被記録媒体の一方あるいは両方の面の一部あるいは全面に、オフセット枚葉印刷機によって設けた接着剤層を介して、コールドスタンプ式フォイル転写方法を用いて金属箔を貼着する印刷物の製造方法を対象とする。フォイル転写方法には大きく分けてホットスタンプ法とコールドスタンプ法がある。ホットスタンプ法は、金属刻印を用いて熱と圧力を用いて被記録媒体に金属箔を転写させるため、被記録媒体の平滑性や接着剤受理性は比較的問われない。これに対して、熱を用いない方法がコールドスタンプ法で、熱によって変形し易い素材を適用できる。さらにオフセット枚葉印刷機によって接着剤層、印刷絵柄層を設ける方式では、金属刻印等による加圧も行わない。よって通常の印刷スピードと同じスピードでフォイル転写が可能で、且つ同時に金属箔の表面あるいは該金属箔の非貼着部にオフセット枚葉印刷機を用いて印刷絵柄層を設けることが可能である。しかも金属刻印等により強制的に加圧して箔を貼着させることがないので、製造者が意図していない凹凸が生じてしまうことがない。その反面、金属箔の貼着性に関して、被記録媒体の平滑性や接着剤受理性が影響し易い。本発明によって、平滑性や接着剤受理性が十分で、且つ紙の風合いが損なわれていない被記録媒体が提供されるため、オフセット枚葉印刷機によって設けた接着剤層を介して、コールドスタンプ式フォイル転写方法を用いて金属箔を貼着する方法の利点を最大限に活用した印刷物製造方法が提供される。またフレキソ印刷方式などにより接着剤層あるいは印刷絵柄層を設けるタイプのものもあるが、画像の高精細性においてオフセット印刷方式が圧倒的に有利である。
【0036】
本発明において、被記録媒体の一方あるいは両方の面の一部あるいは全面にオフセット枚葉印刷機によって設けられる接着剤層、あるいはフォイル転写方法を用いて貼着された金属箔の表面あるいは金属箔の非貼着部にオフセット枚葉印刷機を用いて設けられる印刷絵柄層に関しては、如何なるものを用いても構わない。
【0037】
接着剤層に関しては、常温乾燥型法と紫外線硬化型法が一般的であり、どちらも本発明において適用される。紫外線硬化型法は、被記録媒体に接着剤を設け、その上に金属箔が接した後、金属箔表面に紫外線照射され、接着剤層が硬化し貼着する。この方法により、より高速で印刷物が製造可能になる。紫外線硬化型法の場合、用いられる金属箔は薄いものが用いられる場合が多い。これは金属箔表面から紫外線照射された時に、金属箔下部の接着剤が硬化し易いようにであり、薄い金属箔を用いることで製造速度が速くなる利点がある。薄い金属箔を用いることになると、被記録媒体として平滑性の低いものを用いると、金属箔表面にヒビ割れが生じるなどの金属箔貼着性不良などが見られるが、本発明における被記録媒体を用いた場合、そのようなことは見られず、且つ基紙の風合いは損なわれていない。また常温乾燥型法は、接着剤自体のタックを利用した方法であり、金属箔の貼着性は、金属箔貼着用接着剤の受理性に大きく影響を受けるが、本発明によって平滑性や接着剤受理性が十分で、且つ紙の風合いが損なわれていない被記録媒体が提供されるため、十分に要求を満たした印刷物が提供される。
【0038】
本発明における金属箔に関しては、オフセット枚葉印刷機によって設けた接着剤層を介して、コールドスタンプ式フォイル転写方法を用いて貼着できるものであれば、如何なるものを用いても構わない。一般に市販の枚葉オフセット印刷用コールドスタンプ箔が用いられる。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
各実施例、比較例における印刷用多層塗工紙の物性評価は以下の方法で行った。
<評価方法>
1)基紙の風合いの維持
被記録媒体における基紙の風合いの維持は、目視で判断し、◎、○、△、×で評価した。ただし本発明においては、◎と○を発明の対象とした。
◎:被記録媒体に基紙の風合いが完全に維持されている。
○:被記録媒体に若干の塗工紙感があるが、基紙の風合いがかなり残っている。
△:被記録媒体に塗工紙感が目立ち、基紙の風合いがかなり損なわれている。
×:被記録媒体に基紙の風合いを感じることが出来ない。
【0041】
2)金属箔貼着性
被記録媒体への金属箔の貼着性は、オフセット枚葉印刷機を用いてコールドスタンプ用紫外線硬化型接着剤層をベタ印刷して設け、コールドスタンプ式フォイル転写方法を用いて、市販コールドスタンプ用アルミ箔を全面貼着させ、金属箔の貼着性を目視で判断し、1〜5点の範囲で評価した。ただし本発明においては、4点と5点を発明の対象とした。
5点:金属箔が全面に貼着し、貼着しなかった部分が目視で確認されない。
4点:金属箔がほぼ全面に貼着し、貼着しなかった部分は極僅かである。
3点:金属箔が貼着している部分と、貼着しなかった部分が同程度。
2点:金属箔が貼着している部分の方が、貼着しなかった部分より少ない。
1点:金属箔が全く貼着していない。
【0042】
3)印刷適性
印刷適性は、オフセット枚葉印刷機を用いてコールドスタンプ用紫外線硬化型接着剤層をベタ印刷して設け、コールドスタンプ式フォイル転写方法を用いて、市販コールドスタンプ用アルミ箔を全面貼着させ、さらにその上にT&KUVベストキュアP FG紅(株式会社ティーアンドケイ東華製)を用いてベタ印刷し、インキの受理性を目視で判断し、1〜5点の範囲で評価した。ただし本発明においては、4点と5点を発明の対象とした。
5点:金属箔上に全面印刷され、印刷されなかった部分が目視で確認されない。
4点:金属箔上にほぼ全面印刷され、印刷されなかった部分は極僅かである。
3点:金属箔上に印刷されている部分と、印刷されなかった部分が同程度。
2点:金属箔上に印刷されている部分の方が、印刷されなかった部分より少ない。
1点:金属箔上に全く印刷されていない。
【0043】
<基紙A>
以下のような配合で調製し、坪量89.0g/m2の塗工用基紙を抄造した。ここでの質量部は、全パルプ固形分100質量部に対する各材料の固形分質量比率である。抄造後、マシンカレンダー処理し、基紙のJIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)は7.19μmになった。これを基紙Aとした。
<基紙配合>
ECF漂白されたLBKP(濾水度440mlcsf) 85質量部
ECF漂白されたNBKP(濾水度490mlcsf) 15質量部
<内添薬品>
軽質炭酸カルシウム(原紙中灰分で表示) 6.0質量部
市販カチオン化デンプン 1.0質量部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.030質量部
【0044】
<基紙B>
基紙Aと同様の方法で抄造し、基紙Aの時よりも弱い加圧条件下でマシンカレンダー処理した。この時の基紙のJIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)は8.49μmであった。これを基紙Bとした。
【0045】
<基紙C>
基紙Aと同様の方法で抄造し、基紙Aの時よりも強い加圧条件下でマシンカレンダー処理した。この時の基紙のJIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)は5.81μmであった。これを基紙Cとした。
【0046】
(実施例1)
基紙に塗工層を設けるための塗工液は以下のようにして調製した。ここでの質量部は、塗工液中全顔料固形分100質量部に対する各材料の固形分質量比率である。市販コロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製スノーテックスST−40、平均粒子径16nm)100質量部に対し、市販ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製NM−11)10質量%水溶液を2.0質量部添加し、水で希釈し塗工液の固形分濃度を28質量%として塗工液を得た。なおコロイダルシリカの平均粒子径は電子顕微鏡観察により測定した一次粒子の大きさである。この塗工液をエアナイフコート法の塗工装置を用いて、操業速度300m/分で、片面当たりの塗工固形分質量2.5g/m2、両面で5.0g/m2の条件で、基紙Aの両面に塗工層を設け、乾燥し、被記録媒体とした。得られた被記録媒体を、manroland AG社製ローランド700インランフォイラー・プリンドアシステムを用いて、紫外線硬化型接着剤層をベタ印刷して設け、アルミ箔を全面貼着させ、アルミ箔の上からT&KUVベストキュアP FG紅(株式会社ティーアンドケイ東華製)を用いてベタ印刷により印刷絵柄層が設けられ印刷物を得た。なおローランド700インランフォイラー・プリンドアシステムは、7色機オフセット枚葉印刷機タイプのコールドスタンプ式フォイル転写装置である。第1ユニットで接着剤層が被記録媒体に乗り、第2ユニットでロール上の金属箔が被記録媒体に貼着され、第3〜7ユニットで印刷絵柄層が設けられる。得られた印刷物の評価結果を表1に示す。
【0047】
(実施例2)
実施例1において、基紙に塗工層を設けるための塗工液の顔料固形分質量比を、コロイダルシリカ=100から、コロイダルシリカ:市販重質炭酸カルシウム(株式会社ファイマテック製FMT97)=95:5に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷物の評価結果を表1に示す。
【0048】
(実施例3)
実施例1において、市販コロイダルシリカを、スノーテックスST−40からスノーテックスST−S(日産化学工業株式会社製、平均粒子径10nm)に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷物の評価結果を表1に示す。
【0049】
(実施例4)
実施例1において、基紙に設けた塗工層の塗工固形分質量を、片面当たり4.0g/m2、両面で8.0g/m2にした以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷物の評価結果を表1に示す。
【0050】
(実施例5)
実施例1において、基紙Aを基紙Bに変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷物の評価結果を表1に示す。
【0051】
(実施例6)
実施例1において、基紙Aを基紙Cに変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷物の評価結果を表1に示す。
【0052】
(実施例7)
実施例1において、基紙Aを金菱81.4g/m2(三菱製紙株式会社製上質紙)に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。なお、金菱81.4g/m2のJIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)は7.48μmであった。得られた印刷物の評価結果を表1に示す。
【0053】
(比較例1)
実施例1において、基紙に塗工層を設けるための塗工液の顔料固形分質量比を、コロイダルシリカ=100から、コロイダルシリカ:市販重質炭酸カルシウム(株式会社ファイマテック製FMT97)=80:20に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷物の評価結果を表1に示す。
【0054】
(比較例2)
実施例1において、基紙に塗工層を設けるための塗工液の顔料固形分質量比を、コロイダルシリカ=100から、市販高白1級カオリン(ヒューバー社製ハイドラファイン90):市販重質炭酸カルシウム(株式会社ファイマテック製FMT97)=50:50に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。なおカオリンは、市販ポリアクリル酸系分散剤をカオリン固形分100質量部に対して0.50質量部添加して、分散機で固形分濃度70質量%で分散したものを用いた。得られた印刷物の評価結果を表1に示す。
【0055】
(比較例3)
実施例1において、市販コロイダルシリカを、スノーテックスST−40からスノーテックスST−XL(日産化学工業株式会社製、平均粒子径55nm)に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷物の評価結果を表1に示す。
【0056】
(比較例4)
実施例1において、市販コロイダルシリカを、スノーテックスST−40からスノーテックスST−ZL(日産化学工業株式会社製、平均粒子径90nm)に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷物の評価結果を表1に示す。
【0057】
(比較例5)
実施例1において、基紙に設けた塗工層の塗工固形分質量を、片面当たり1.2g/m2、両面で2.4g/m2にした以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷物の評価結果を表1に示す。
【0058】
(比較例6)
実施例1において、基紙Aをスイングマット81.4g/m2(三菱製紙株式会社製軽塗工マットグレードコート紙)に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。なお、スイングマット81.4g/m2のJIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)は4.53μmであった。得られた印刷物の評価結果を表1に示す。
【0059】
(比較例7)
実施例1において、ローランド700インランフォイラー・プリンドアシステムを用いる代わりに、実施例1と同様の被記録媒体に、実施例1で用いたアルミ箔と同じ厚みのものを、日本エキュマテック株式会社製ホットスタンプ法箔押装置 箔エースを用いて転写させ、得られたものに実施例1と同様の印刷絵柄層を設けた。得られた印刷物の評価結果を表1に示す。
【0060】
実施例1〜7、比較例1〜7の条件、評価結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1の結果から明らかな様に、顔料として平均粒子径30nm以下のコロイダルシリカを全顔料固形分100質量部中90質量部以上含む塗工層を基紙上に片面当たり固形分質量2.0g/m2以上設けた被記録媒体を用い、該被記録媒体の一方あるいは両方の面の一部あるいは全面に、オフセット枚葉印刷機によって設けた接着剤層を介して、コールドスタンプ式フォイル転写方法を用いて金属箔を貼着し、それに続いて該金属箔の表面あるいは該金属箔の非貼着部に該オフセット枚葉印刷機を用いて印刷絵柄層を設けることで、基紙の風合いを損ねることなく金属箔を貼着し、さらにオフセット枚葉印刷機を用いて印刷絵柄層を設ける印刷物の製造方法が提供される。好ましくは該基紙が、JIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)6.0μm以上であることを特徴とすることで、より基紙の風合いに優れ、金属箔を貼着し、さらにオフセット枚葉印刷機を用いて印刷絵柄層を設けたことを特徴とする印刷物の製造方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料として平均粒子径30nm以下のコロイダルシリカを全顔料固形分100質量部中90質量部以上含む塗工層を基紙上に片面当たり固形分質量2.0g/m2以上設けた被記録媒体を用い、該被記録媒体の一方あるいは両方の面の一部あるいは全面に、オフセット枚葉印刷機によって設けた接着剤層を介して、コールドスタンプ式フォイル転写方法を用いて金属箔を貼着し、それに続いて該金属箔の表面あるいは該金属箔の非貼着部に該オフセット枚葉印刷機を用いて印刷絵柄層を設けたことを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項2】
請求項1における該基紙が、JIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)6.0μm以上である請求項1記載の印刷物の製造方法。