説明

印刷物

【課題】紙やプラスチックシートを主たる材料とした印刷物に関する。詳しくは、化粧品、医薬品、菓子類などの高級紙器あるいは容器などに用いる美粧性、高級感、装飾性に富み、付加価値の向上が可能なマット調の部分とグロス調の部分の絵柄が表現できる印刷物に関する。
【解決手段】
基材上に撥液性を有するニス層で絵柄を設け、少なくともその絵柄のニス層を含む範囲上にマット剤を添加した紫外線硬化型マットニス層を設けたことを特徴とする印刷物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙やプラスチックシートを主たる材料とした印刷物に関する。詳しくは、化粧品、医薬品、菓子類などの高級紙器あるいは容器などに用いる美粧性、高級感、装飾性に富み、付加価値の向上が可能な、質感に富んだマット調の絵柄が表現できる印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品、医薬品、菓子類などの高級紙器などに用いる美粧性、高級感に富んだグロス調印刷物が中心として用いられてきた。
【0003】
そして、最近、より高級感、装飾性に富み、付加価値の有る質感に富んだマット調の印刷物の要望が多くなってきている。
【0004】
また、古くから高級紙器に用いられてきたグロス調の印刷物は、板紙などの紙基材の表面に印刷層、グロス層、保護層などを設けていた。
【0005】
そして、このグロス層を設ける方法としては、転写箔(ホットスタンプ箔)を用いて箔押しする箔押し方法、あるいは印刷インキによるグロス印刷方法、またはプレスコートやフィルム貼りなどの表面加工方法が一般的に用いられていた。
【0006】
また、転写箔(ホットスタンプ箔)の箔押し方法は、通常ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)に剥離層、箔層、接着層を順次積層した転写箔を箔押し機により、板紙などの紙基材の表面に加熱・加圧して転写させる方法である。
【0007】
この方法は、高グロス感、金属感に富んだ高グロス印刷物が得られるが、転写箔が高価であること、またグラデーションなどの濃度差のある表現を行なうことができない。
【0008】
また、印刷インキによるグロス印刷方法は、アルミペーストインキ、パールインキなどをオフセット印刷などにより行ないグロス印刷物が得られる。
【0009】
しかし、上述の転写箔(ホットスタンプ箔)の箔押し方法に比較すると、コストは安くなるが、印刷した表面の平滑性が落ちるため、高グロス感、金属感に富んだ高グロス印刷物は得られない。
【0010】
次に、プレスコートやフィルム貼りなどの表面加工方法は、板紙など紙基材の表面に印刷層を設け、さらに該印刷層上にプレスコート用ニスをコートしたり、ポリプロピレンフィルムなどを貼り合わせる。
【0011】
そして、該ニスやフィルム面上に、表面が平滑なステンレス製の熱板を重ねて押し付ける平圧プレス方式がある。
【0012】
さらに、該印刷層上にプレスコート用ニスを施し、熱ロールの間を通過させて行なうシリンダープレス方式などがある。そして、平滑性をだし、高グロス感を持たせる。
【0013】
しかし、上述した方法は、専用の機械が必要であること、また原紙全体に熱、圧をかけてしまうため、紙の劣化を招き、打ち抜き時の罫線割れの原因になっている。
【0014】
そして、さらに圧がそれほど高くないため、その圧で平滑面ができる専用のニスやフィルムが必要である。
【0015】
このような、高グロス印刷物およびその製造方法などが多く知られ、また、提案されている。
【0016】
前記高グロス印刷物は図5に示すように紙基材101上に、少なくとも金属グロスインキからなる印刷層102が形成され、該印刷層102の全部(図には示していない)または任意部分に高グロス部103が形成されている。
【0017】
そして、この高グロス部103は図6に示すように常盤105に任意部分を加熱された空押し版105を用いて、印刷物に押し付け、空押し版を引き離すことにより図5に示すような任意部分に高グロス部103が形成される。
【0018】
このように、より高グロスの印刷物が求められてきた中で、差別化等が図れなくなり、グロス部とマット部の光沢の差を設けた印刷物による高級紙器、あるいはより質感に富んだ印刷物による高級紙器が求められ、また、多く提案されてきている。
【0019】
例えば、マット調の部分とグロス調の部分の絵柄などを表現した印刷物とそれを用いた包装材料も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0020】
この印刷物は図7に示すように基材111上に撥液性を有するニス層112で絵柄を設け、少なくともその絵柄のニスを含む範囲上に紫外線硬化型グロスニス層113を設けている。そして、該ニス層112上に該紫外線硬化型グロスニスが弾かれて斑点状に凝集している部分を備えている。
【0021】
以下に先行技術文献を示す
【特許文献1】特開2004−114654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、該ニス層112上で斑点状に凝集している部分は薄くマット感に劣る。そして、品質的にも問題点が多く実用的でないというのが現実である。
【0023】
さらに、安定したマット感が得難く、且つ、質感のあるマット部を全体的に形成することが難しい。
【0024】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、紙を主たる材料とした高級紙器の外面に耐摩耗性が優れ、流通工程や使用時において、マット調を維持することができる。また、全体的に質感があり、差別化が図れ、印刷表現に優れたマット調の印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記問題点を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、
基材上に撥液性を有するニス層で絵柄を設け、少なくともその絵柄のニス層を含む範囲上にマット剤を添加した紫外線硬化型マットニス層を設けたことを特徴とする印刷物である。
【0026】
次に、本発明の請求項2に係る発明は、
印刷層を有する基材上に撥液性を有するニス層で絵柄を設け、少なくてもその絵柄のニス層を含む範囲上にマット剤を添加した紫外線硬化型マットニス層を設けたことを特徴とする印刷物である。
【0027】
さらに、本発明の請求項3に係る発明は、
撥液性を有するニス層の有無によって、マット剤を添加した紫外線硬化型マットニス層が均一に塗布された部分と、撥液性を有するニス層上に紫外線硬化型ハイグロスニスが斑点状に点在している部分があることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷物である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の印刷物は以上の構成からなるので、マット剤が添加された紫外線硬化型マットニス層は非常に硬い。そして、従来のマットニスを塗布した場合に比較し耐摩擦性が向上する。
【0029】
また、紫外線硬化型グロスニスにマット剤が添加されているため、均一で安定した品質の、マット感に優れたマット層が形成できる。そして、マット剤が剥がれることなく、強固に固化される。
【0030】
また、全体的に従来にない質感に富んだマット調のある印刷物を得ることができる。そして、撥液性を有するニス層上にエンボスを施したような凹凸部を形成することができる。そして、触った際に、凹凸の感触も得られる。
【0031】
また、マット剤を添加した紫外線硬化型マットニスは、作業性がよく、効率も良く、且つ、平滑に塗布することができる。
【0032】
そして、塗布された部分は、質感に富んだマット部が形成されるだけでなく、密着性が非常に優れている。さらに、滑り性も非常に良い。
【0033】
さらに、撥液性を有するニス層の有無よらず、よりマット感のある部分を作ることができる。そして、印刷の表現方法が一層広がる。
【0034】
また、紫外線硬化型ハイグロスニスにマット剤が添加されているため、マット感が白さをさらに強調する。そして、ダーク色に対する効果が向上する。
【0035】
さらに、印刷工程のみで製造できるので印刷見当が非常に良く品質が優れている。また、1工程で製造できるので生産コストが安くなる。そして、品質性、デザイン性に優れた高付加価値のある印刷物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の印刷物を実施の形態に沿って以下に図面を参照にしながら詳細に説明する。図1は本発明の印刷物の一実施例の断面を示す概略断面図である。また、図2は図1の印刷物の平面を示す概略平面図である。
【0037】
図1に示すように、本発明の印刷物は基材1上に撥液性を有するニス層2で絵柄を設け、少なくともその絵柄のニス層2を含む範囲上にマット剤を添加した紫外線硬化型マットニス層3を設けた印刷物である。
【0038】
前記印刷物に使用する基材1は、印刷物を提供可能なものであれば任意の材料が使用できる。
【0039】
例えば、紙、プラスチックシート、紙とプラスチックフィルムをラミネーとした複合材料、金属箔、金属板、木材などが挙げられる。
【0040】
また、印刷物が紙器に使用される紙は、主に板紙が多く、例えば、マニラボール、コートボール、ノーコートボール、クラフトボール、色ボールなどが使用される。
【0041】
さらに、板紙は使用される条件、例えば、保存方法、保存期間、内容物、流通条件、店頭販売条件などによって、耐水性、耐油性、耐薬品性などが付与される。
【0042】
上記、板紙に耐水性あるいは耐油性、耐薬品性を附与する方法としては板紙を抄造加工するときに行う方法と抄造加工された板紙に含浸あるいは塗工する方法でなされる。
【0043】
また、板紙に耐水性を抄造加工時に付与する場合、例えば、添加される耐水剤は、通常、抄紙前のパルプ縣濁液に内添する内添耐水剤である。
【0044】
そして、湿潤紙力増強剤として、尿素―ホルムアルデヒド樹脂、メラミンーホルムアルデヒド樹脂、エポキシ化ポリアミド樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ジアルデヒドでんぷん、グリオキザール化ポリアクリルアミド樹脂等がある。
【0045】
また、この耐水剤の添加量は、使用するパルプの種類、薬剤の種類や目的とする耐水性により異なる。
【0046】
さらに、抄造加工された板紙に耐水性を附与す二次加工用薬剤としては、価格あるいは性能等のバランスが優れているカルナバワックス、パラフィン系ワックス、ポリエチレンワックス等のワックスが多く使用されている。
【0047】
また、水に不溶なポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレンー酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデンー酢酸ビニル共重合体などの高分子溶液あるいはエマルジョンが用いられる。
【0048】
また、上記抄造加工された板紙に耐水剤あるいは耐薬品剤等の加工に際しては、ロールコーター、エアナイフコーター、メタリングバーコーター、ファウンテンブレードコーター、ベベルブレードコーター、ショート・ドゥエルコーターあるいはカーテンコーター等が使用できる。
【0049】
そして、特に限定されないがいずれかの適宜の塗工機を用いて板紙の表側面あるいは裏側面または両側面に耐水剤あるいは耐薬品剤等が塗工される。
【0050】
また、板紙に耐油性を付与するためには、通常、加工処理面の臨海表面張力を油性物質の表面張力より小さくすることが必要である。
【0051】
このような機能を有する薬品を耐油剤と称し、主に過フッ素化水素のアクリルレートまたはリン酸エステル等のフッ素化合物を用いたものが耐油紙として知られているように一般的にフッ素系耐油剤で処理されている。
【0052】
また、上記抄造加工された板紙に耐油剤の塗工に際しては、ロールコーター、エアナイフコーター、メタリングバーコーター、ファウンテンブレードコーター、ベベルブレードコーター、ショート・ドゥエルコーターあるいはカーテンコーター等、特に限定されないがいずれかの適宜の塗工機を用いて板紙の表側面あるいは裏側面または両側面に施される

【0053】
また、耐水性あるいは耐油性が付与されている板紙の内側面に樹脂層を形成することにより、耐水性あるいは耐油性等の機能性がより一層向上される。
【0054】
前記樹脂層の形成は、例えば、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化エチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリカーボネート(PC)、ナイロン6(NY)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリル(AN)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリアクリロニトリル(PAN)などの樹脂を用いることができる。
【0055】
また、上記板紙の内側面に施される樹脂層は熱可塑性樹脂等を熱溶融して塗布する押し出しコーティング加工か、あるいはフイルムになったものを貼り合わせるラミネート加工のいずれかによって施される。
【0056】
前記ラミネート加工はウエットラミネート、ドライラミネート、ノンソルベントラミネートまたはニーラムラミネートあるいは押し出しラミネートなどがある。そして、適宜のラミネート加工方法が選択される。
【0057】
また、贈答用紙器の場合は、マイクロフルート、Eフルートなどを使用した化粧段ボールが使用される。
【0058】
さらに、プラスチックシートとしては、ポリエステルシート、塩化ビニルシート、アクリルシートなどが使用できる。
【0059】
紙とプラスチックフィルムをラミネーとした複合材料としては、板紙と熱可塑性樹脂シートないしフィルムと接着剤を介してラミネートした複合材料を使用することもできる。
【0060】
前記熱可塑性樹脂シートないしフイルムとして、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、アクリル酸樹脂、メタクリル酸樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂等の単体ないし複合体のシ−トないしフィルムが挙げられる。
【0061】
このように基材1は、被包装体に適した包装に必要な物性、外観に合せて適宜選択することが可能である。
【0062】
次に、基材1上に撥液性を有するニス層2で絵柄を設け、少なくともその絵柄のニス層2を含む範囲上にマット剤が添加された紫外線硬化型マットニス層3を設ける。
【0063】
前記撥液性を有するニス層2に使用するニスは、特に限定されないが、例えば、セルローズ系、ポリアミド系、塩酢ビ系、変性ポリオレフィン系、ゴム系、アクリル系、ウレタン系などの樹脂成分にワックスやシリコンを添加したものが使用できる。そして、好ましくは紫外線硬化型の撥液性を有するニスを使用することが望ましい。
【0064】
さらに、前記紫外線硬化型の撥液性を有するニスの場合は、アクリル系や不飽和ポリエステル系のプレポリマーに、アクリルやスチレンなどのモノマー成分、および光重合開始
剤の混合物にワックスやシリコンを添加したものが使用される。
【0065】
次に、該撥液性を有するニス層2を含む範囲上に設けるマット剤が添加された紫外線硬化型マットニス層3に使用する紫外線硬化型マットニスは、特に限定されないが、例えばアクリル系や不飽和ポリエステル系のプレポリマーに、アクリルやスチレンなどのモノマー成分、光重合開始剤およびその他添加剤を組成成分とするグロスニスが挙げられる。
【0066】
前記紫外線硬化型マットニスに添加されるマット剤としては、特に限定されないが、例えばオレフィン系、あるいはアルキッド系合成樹脂などの合成樹脂系やシリカ系、カオリン系などの無機材料系のマット剤が挙げられる。そして、適宜の量が前記紫外線硬化型マットニスに添加される。
【0067】
次に、基材1上に撥液性を有するニス層2で絵柄を設け、少なくともその絵柄のニス層2を含む範囲上に添加剤が添加された紫外線硬化型マットニス層3を設ける方法は、特に限定されることはない。
【0068】
例えば、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、ロールコーティング方式、リバースコーティング方式などを使用することができる。
【0069】
オフセット印刷機は、UVオフセット印刷機を使用し、基材1上に撥液性を有するニスとマット剤が添加された紫外線硬化型マットニスをインラインで印刷することにより、印刷の見当精度が非常に高くなる。そして、高付加価値の印刷物が生産できる。
【0070】
以上のように、基材1上に撥液性を有するニス層2で絵柄を設け、少なくともその絵柄のニス層2を含む範囲上にマット剤が添加された紫外線硬化型マットニス層3を設ける。
【0071】
そして、図2に示すように、該撥液性を有するニス層2上に設けられたマット剤が添加された紫外線硬化型マットニスの部分は、該撥液性を有するニス層2に弾かれる。そして、該ニス層2上に斑点状に凝集し、光を乱反射してマット調になる。
【0072】
また、当然ながら、撥液性を有するニス層2が塗布されていない基材1上に設けられたマット剤が添加された紫外線硬化型マットニスの部分は、平滑に塗布され、且つ、質感のあるマット調になる。
【0073】
また、撥液性を有するニス層2上にマット調になったマット剤が添加された紫外線硬化型マットニスの部分は、非常に硬く、従来のマットニスを塗布した場合に比較して耐摩擦性が良い。
【0074】
そして、紙器で包装した商品の流通工程や使用時に発生する紙器の外面に発生する擦れを防止することができる。さらに、物性面からも優れた加飾方法である。
【0075】
このように1つの基材1上に全体的にマット調の多少異なる部分を作り出すことができる。そして、インキでの絵柄表現がなくても、撥液性を有するニスと紫外線硬化型マットニスの組合せで絵柄を表現することができる。
【0076】
また、撥液性を有するニスに着色すると、さらに絵柄表現の選択が増加する。
【0077】
次に、図3は本発明の印刷物の他の一実施例の断面を示す概略断面図である。また、図4は図1の印刷物の平面を示す概略平面図である。
【0078】
図3に示すように、基材1上に予め、イエロー、マゼンタ、シアン、スミの4色のプロセスインキを使用して、調子物印刷やベタ印刷した印刷層4上に撥液性を有するニス層2で絵柄を設ける。
【0079】
そして、少なくともその絵柄のニス層2を含む範囲上にマット剤が添加された紫外線硬化型マットニス層3を設けることも可能である。
【0080】
そして、より一層、全体的に異なる強調されたマット調の部分が作り出され、独特なデザイン性を有する印刷物が得られる。
【0081】
また、前記調子物印刷やベタ印刷した印刷層4はオフセット印刷方式やグラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、板グラビア方式、ロールコーティング方式、リバースコーティング方式、ナイフコーティング方式、ブレードコーティング方式などの各種コーティング方式も適宜使用することができる。
【0082】
例えば、オフセット印刷方式で、インキが油性インキタイプ(酸化重合型の乾性油などを主体としたインキをいう)の場合は、ビヒクルとして、合成樹脂、乾性油(植物油)、溶剤、助剤などが必要である。
【0083】
通常、合成樹脂は、ロジン変性フェノール、石油系樹脂、アルキド樹脂などを用いる。また、乾性油は、あまに油、きり油、大豆油、合成乾性油などを使用する。さらに溶剤は高沸点石油系溶剤などが用いられる。
【0084】
また、助剤には、粘度調整剤としてコンパンドなど、また乾燥調整剤としては、乾燥剤(ドライヤー)、乾燥抑制剤などを用いる。
【0085】
さらに、紫外線を照射することにより、瞬間的に硬化乾燥する光重合性樹脂、光重合開始剤などをビヒクルとして使用した無溶剤型インキである紫外線硬化型インキ(UVインキ)にして用いることもできる。
【0086】
また、グラビア印刷方式の場合には、有機溶剤型インキタイプが用いられるが、前記光沢材料を分散する樹脂に、例えばポリ塩化ビニル系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系、ポリメチルメタクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ニトロセルロース系、セルロース誘導体系などの熱可塑性高分子樹脂、またはメラミン系、尿素系などの熱硬化性高分子樹脂を使用することができる。そして、これらから適宜選択される。
【0087】
さらに、前記樹脂を溶解する有機溶剤としては、樹脂を溶解、あるいは分散することが可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類のうち単独または任意に配合したものを使用することができる。
【0088】
次に、印刷物の好ましい物性としては、先ず、図3または図4に示すように、基材1上の該撥液性を有するニス層2の無い部分に塗布されたマット剤を添加した紫外線硬化型マットニスの平滑な面と、該撥液性を有するニス層2上に該紫外線硬化型マットニスが斑点状に凝集している部分でこの凝集の斑点の長径が30〜1000μmであることが好ましい。
【0089】
また、該撥液性を有するニス層2上にマット剤を添加した紫外線硬化型マットニスが斑点状に凝集している部分で、この凝集の斑点の高さが5〜70μmであることが好ましい。
【0090】
また、該撥液性を有するニス層2上にマット剤を添加した紫外線硬化型マットニスが斑点状に凝集している部分で、この凝集の斑点の数が102〜104個/cm2であることが好ましい。
【0091】
また、マット剤を添加した紫外線硬化型マットニスが平滑に塗布された部分のマット剤を添加した紫外線硬化型マットニスの硬化膜の厚さが2〜7μmの範囲であることが好ましい。
【0092】
さらに、撥液性を有するニス層2が、紫外線硬化型タイプのニスからなることが好ましい。
【0093】
以上のように本発明の印刷物は、基材1上に直接、或いは予め印刷層4を有する基材1上に撥液性を有するニス層2で絵柄を設け、少なくともその絵柄のニス層2を含む範囲上にマット剤を添加した紫外線硬化型マットニス層3を設ける。
【0094】
そして、マット剤を添加した紫外線硬化型マットニス層3を設けたことにより、その撥液性を有するニス層2上の部分は、該マットニスが斑点状に凝集する。そして、光を散乱させマット調になり。
【0095】
また該ニス層2のない部分も当然ながら質感の高いマット調となって独特なデザイン性を有する印刷物が得られる。
【0096】
そして、その硬化した該マットニスは非常に硬いため、耐摩擦性が向上する。さらに、オフセット印刷工程のみで製造ができるので印刷見当が非常に良く品質が優れ、且つ1工程で製造できる。
【0097】
このため、生産コストが安くなり、その印刷物は、品質性、デザイン性の優れた高付加価値のあるものとなる。
【0098】
上記した本発明の印刷物は、包装材料、ポスターやチラシなどの商業印刷物、書籍やそのカバー、テーブルクロス、壁紙、またはコピーなどによる偽造防止用途に用いることができる。
【実施例】
【0099】
以下に、本発明の具体的実施例を挙げて、さらに詳しく説明するが、それに限定されるものではない。
【0100】
<実施例1>
本発明の印刷物は、図1に示すように、基材1である板紙(王子製紙(株)のOKボール)上にアクリル系プレポリマーにアクリルモノマーを希釈剤として用い、これにワックス及びシリコンを添加した紫外線硬化型の撥液性を有するニスの絵柄を、UVオフセット印刷機の1ユニット目のPS版で印刷し、該絵柄部分に紫外線を照射して該撥液性を有するニスを硬化させた。
【0101】
次に、連続してアクリル系プレポリマーにアクリルモノマーを希釈剤として用いた、紫外線硬化型マットニスにマット剤としてシリカ微粉末を添加して紫外線硬化型マットニス
を作製した。
【0102】
そして、作製した紫外線硬化型マットニスでベタ柄を2ユニット目のゴム版で印刷し、同様に紫外線を照射して該マットニスを硬化させて印刷物を作製した。
【0103】
該撥液性を有するニスのある絵柄部は、マット調になり、該ニスのない部分は質感の高いマット調の印刷物が作製できた。
【0104】
<比較例1>
また、比較として、シリカ微粉末を添加した紫外線硬化型マットニスに変えて、従来から使用しているマット剤入りマットニスで、ベタ柄を2ユニット目のゴム版で印刷し、同様に紫外線を照射して該マットニスを硬化させて印刷物を作製したところ、質感の高いマット調が得られなかった。
【0105】
<実施例2>
本発明の印刷物は、図2に示すように、基材1である板紙(王子製紙(株)のOKボール)上に紫外線硬化型インキにより、墨ベタ印刷をUVオフセット印刷機の1ユニット目のPS版で印刷し、該墨ベタ印刷部に紫外線を照射して該インキを硬化させた。
【0106】
次に、実施例1で使用したものと同じ紫外線硬化型の撥液性を有するニスの絵柄を、UVオフセット印刷機の2ユニット目のPS版で印刷し、該絵柄部分に紫外線を照射して該撥液性を有するニスを硬化させた。
【0107】
さらに、連続して実施例1で使用したものと同じマット剤を添加した紫外線硬化型マットニスのベタ柄を3ユニット目のゴム版で印刷し、同様に紫外線を照射して該マットニスを硬化させて印刷物を作製した。
【0108】
該撥液性を有するニスのある絵柄部は、マット調になり、該ニスのない部分は一層質感の高いマット調の印刷物が作製できた。
【0109】
該印刷物を学振式耐摩擦試験機でクラフト紙を用いて荷重500gで200回の摩擦試験を行なった。そして、目視で印刷面を観察したが外観上の変化は見られなかった。
【0110】
更に、該印刷物のマット部の凝集したマット剤を添加した紫外線硬化型マットニスの斑点の高さを形状測定器<(株)ミツトヨ製の商品名コントレーサCBH−411>で測定したところ、5〜70μmであり、特に、斑点の25%以上は15μm以上あった。
【0111】
<比較例2>
また、比較として、シリカ微粉末を添加した紫外線硬化型マットニスに変えて、従来から使用しているマット剤入りマットニスで、ベタ柄を2ユニット目のゴム版で印刷し、同様に紫外線を照射して該マットニスを硬化させて印刷物を作製した。
【0112】
そして、該マットニスを硬化させた印刷物の凹凸を形状測定器<(株)ミツトヨ製の商品名コントレーサCBH−411>で測定したところ、およそ2μm程度であった。
【0113】
以上のように本発明の印刷物は、基材1上に印刷層4を設け、該印刷層4上に撥液性を有するニス層2で絵柄を設け、少なくともその絵柄のニス層2を含む範囲上にマット剤を添加した紫外線硬化型マットニス層3を設ける。
【0114】
そして、マット剤を添加した紫外線硬化型マットニス層3を設けることにより、その撥
液性を有するニス層2上の部分は、該マットニスが斑点状に凝集して光を散乱させマット調になる。
【0115】
また、該ニス層2のない部分は当然ながら質感の高いマット調となって独特なデザイン性を有する印刷物が得られた。
【0116】
さらに、その硬化した該マットニスは非常に硬いため、耐摩擦性が向上し、さらに、オフセット印刷工程のみで製造できるので印刷見当が非常に良く品質が優れ、且つ1工程で製造できるので生産コストが安くなった。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の印刷物は包装材料等に使用できる印刷物として優れていることはもとより、建築分野の壁紙やテーブルクロス、あるいは精密加工分野の偽造防止等にも使用できる素晴らしい発明である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の印刷物の一実施例の断面を示す概略断面図である。
【図2】図1の印刷物の平面を示す概略平面図である。
【図3】本発明の印刷物の他の一実施例の断面を示す概略断面図である。
【図4】図3の印刷物の平面を示す概略平面図である。
【図5】従来の印刷物の概略を説明するための概略図である。
【図6】従来の印刷物の製造方法を説明するための概略図である。
【図7】従来の印刷物の概略を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0119】
1・・・基材
2・・・撥液性を有するニス層
3・・・マット剤を添加した紫外線硬化型マットニス層
4・・・印刷層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に撥液性を有するニス層で絵柄を設け、少なくともその絵柄のニス層を含む範囲上にマット剤を添加した紫外線硬化型マットニス層を設けたことを特徴とする印刷物。
【請求項2】
印刷層を有する基材上に撥液性を有するニス層で絵柄を設け、少なくてもその絵柄のニス層を含む範囲上にマット剤を添加した紫外線硬化型マットニス層を設けたことを特徴とする印刷物。
【請求項3】
撥液性を有するニス層の有無によって、マット剤を添加した紫外線硬化型マットニス層が均一に塗布された部分と、撥液性を有するニス層上に紫外線硬化型ハイグロスニスが斑点状に点在している部分があることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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