説明

印刷用塗工紙

【課題】本発明の目的は、基紙被覆性に優れ、且つインキ着肉ムラが発生し難く、印刷表面強度の低下が生じない印刷用塗工紙を提供することである。
【解決手段】本発明の課題は、基紙上に、少なくとも顔料と接着剤を含有する塗工層を1層以上有する印刷用塗工紙において、最表層の塗工層に、顔料として少なくともカオリンを含有し、且つ最表層の塗工層中の全顔料100質量部に対し接着剤として、酵素変性デキストリンを1質量部以上15質量部以下およびラテックスを3質量部以上6質量部以下の範囲で含有する印刷用塗工紙によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用塗工紙に関するものである。詳しくは、オフセット印刷用塗工紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷物の高精細化、多色印刷化、高速化に伴い、特に印刷用塗工紙の塗工面の白紙光沢および印刷光沢、平滑性、インキセット性、基紙被覆性の改良が要望されている。塗工面の白紙光沢および印刷光沢、平滑性、基紙被覆性の改良を目的とし、カオリンを含有する高濃度化した塗工液を塗工して形成される印刷用塗工紙が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、塗工液を高濃度化すると、操業上問題がある。すなわち、高濃度化した塗工液の粘度が増大するために、送液時に配管内で滞留したり、塗工ヘッド部でストリークが発生することがある。
【0003】
高濃度化した塗工液の粘度が増大することを抑制する方法として、塗工液が含有する顔料に微粒のカオリンを用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、微粒のカオリンを含有する高濃度化した塗工液を塗工して形成される印刷用塗工紙では、白紙光沢に優れても印刷領域の光沢すなわち印刷光沢が低下する場合がある。
【0004】
また、接着剤として低粘度化した澱粉を用い、塗工液の高濃度化を図ると共に、高濃度化した塗工液の粘度が増大することなく、基紙被覆性を向上させた印刷用塗工紙がある(例えば、特許文献3、4、5参照)。しかしながら、これらの方法では、塗工後の乾燥工程で接着剤がマイグレーションし易いために、得られた印刷用塗工紙を印刷するとインキ着肉ムラが発生し易く、さらに塗工層の印刷表面強度が低下するという問題がある。
【0005】
従って、基紙被覆性および印刷光沢に優れ、且つインキ着肉ムラが発生し難く、印刷表面強度の低下が生じない印刷用塗工紙の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−229093号公報
【特許文献2】特開昭59−30992号公報
【特許文献3】特許第1604822号公報
【特許文献4】特開昭53−14818号公報
【特許文献5】特開平7−189179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、基紙被覆性に優れ、且つインキ着肉ムラが発生し難く、印刷表面強度の低下が生じない印刷用塗工紙を提供することである。特に、高濃度化した塗工液を塗工して形成される印刷用塗工紙に好適である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、基紙上に、少なくとも顔料と接着剤を含有する塗工層を1層以上有する印刷用塗工紙において、最表層の塗工層に顔料として少なくともカオリンを含有し、且つ最表層の塗工層中の全顔料100質量部に対し接着剤として、酵素変性デキストリンを1質量部以上15質量部以下およびラテックスを3質量部以上6質量部以下の範囲で含有する印刷用塗工紙によって解決することができる。
【0009】
また、最表層の塗工層が、最表層の塗工層中の全顔料100質量部に対し10質量部以上30質量部以下の範囲でカオリンを含有することが好ましい。
【0010】
本発明の別の態様として、基紙上に少なくとも顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工してなる印刷用塗工紙の製造方法において、基紙上に塗工液を塗工して塗工層を1層以上形成し、最表層の塗工層の顔料としてカオリンを最表層の塗工層中の全顔料100質量部に対し10質量部以上30質量部以下の範囲で含有し、最表層の塗工層の接着剤として酵素変性デキストリンおよびラテックスを含有し、最表層の塗工層中の全顔料100質量部に対し酵素変性デキストリンを1質量部以上15質量部以下およびラテックスを3質量部以上6質量部以下の範囲で含有する最表層の塗工層を、固形分濃度が65質量%以上である塗工液を塗工して形成する印刷用塗工紙の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、基紙被覆性に優れ、且つインキ着肉ムラが発生し難く、印刷表面強度の低下が生じない印刷用塗工紙を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について説明する。
本発明において、印刷用塗工紙は、基紙上に少なくとも顔料と接着剤を含有する塗工層を1層以上有し、最表層の塗工層は顔料として少なくともカオリンを含有する。なお、最表層の塗工層とは、基紙から見て最も外側に位置する塗工層である。塗工層が1層の場合は、該1層が最表層の塗工層となる。
【0013】
本発明において、最表層の塗工層が含有するカオリンは、含水珪酸アルミニウム鉱物を主成分とする粘土鉱物である。このようなカオリンとして、市販の各等級カオリン、構造性カオリン、デラミネーテッドカオリン等、従来公知のカオリンを挙げることができる。
【0014】
本発明において、最表層の塗工層には、接着剤として酵素変性デキストリンおよびラテックスを含有する。カオリンは平板状を有し、粒子間に接着剤を挟み込みサンドイッチ構造を形成し易いと考えられ、カオリンと接着剤を併用した塗工液は粘度が比較的増大し易い。接着剤として酵素変性デキストリンのみを使用した場合では、カオリンと併用しても高濃度化した塗工液の粘度増大を抑制できるものの、インキ着肉ムラや印刷表面強度の点で品質が不十分である。印刷表面強度を補うために酵素変性デキストリンの含有量を増加すると、高濃度化した場合の塗工液の粘度増大を抑制することができない。また、接着剤としてラテックスのみを使用した場合では、カオリンとラテックスを併用した塗工液を高濃度化すると粘度が増大することがあり、粘度が増大しなくとも得られた印刷用塗工紙はインキ着肉ムラや印刷表面強度の点で品質が不十分である。
【0015】
本発明において、最表層の塗工層が含有する酵素変性デキストリンは、製造方法を特に限定しないが、例えば、澱粉スラリーを所定の濃度とpHに調整した後、α−アミラーゼや必要に応じて他の酵素を用いて液化反応を行い、次いで加熱処理(例えば、110℃〜150℃)または酸処理により酵素を不活性化し、これを乾燥して得ることができる。このような酵素変性デキストリンは三和澱粉工業社等から市販されており、入手することもできる。
【0016】
本発明において、最表層の塗工層が含有するラテックスとしては、例えば、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合ラテックス等の共役ジエン系共重合ラテックス、アクリル酸メチル・スチレン共重合ラテックス、メタクリル酸メチル・酢酸ビニル共重合ラテックス等のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのビニル系共重合ラテックス、あるいはこれらの各種共重合ラテックスのカルボキシル基等の官能基含有単量体を共重合させて得られる変性ラテックス等、従来公知のラテックスを挙げることができる。印刷表面強度の点で、好ましくはスチレン・ブタジエン共重合ラテックスである。
【0017】
本発明において、最表層の塗工層の酵素変性デキストリンおよびラテックスの含有量は、最表層の塗工層中の全顔料100質量部に対し、それぞれ1質量部以上15質量部以下および3質量部以上6質量部以下の範囲である。
【0018】
カオリンは、平板状であるために基紙被覆性および平滑性並びに白紙光沢に優れるものの、カオリンと接着剤とを含有する塗工液においては増粘し易い。酵素変性デキストリンは水溶性に富むことにより、酵素変性デキストリンのマイグレーションが発生し印刷用塗工紙のインキ着肉ムラの発生や印刷表面強度の低下を招き易い。一方、ラテックスはカオリンに吸着し乾燥工程を経て成膜するが、ラテックスの被膜は保水性が低いためにオフセット印刷では水被膜を作りインキ着肉ムラを発生し易い。また乾燥工程の乾燥温度やラテックスの粒子径にもよるが、均一に成膜しない場合があり印刷表面強度が低下する。
【0019】
本発明において、顔料としてカオリンを、且つ接着剤として酵素変性デキストリンおよびラテックスを前記含有量の範囲で最表層の塗工層に含有することにより、高濃度化した塗工液の粘度増大を抑制でき、高濃度化した塗工液を用いることによって、基紙被覆性に優れ、且つインキ着肉ムラが発生し難く、印刷表面強度に優れた印刷用塗工紙を得ることができる。
【0020】
この理由は定かではないが、以下の理由であると推察される。
カオリンとラテックスとがサンドイッチ構造を形成する中で、酵素変性デキストリンは、その親水性とマイグレーションし易さによって塗工液の増粘を抑制し、最表層の塗工層の保水性を補完する。一方ラテックスは、カオリンとの吸着により印刷表面強度を補完すると共に、その疎水性とカオリン粒子間における成膜により最表層の塗工層中における過度の酵素変性デキストリンのマイグレーションを抑制すると考えられる。
【0021】
本発明の上記のような複合的な作用は、酵素変性デキストリンおよびラテックスの含有量が、最表層の塗工層中の全顔料100質量部に対し、それぞれ1質量部以上15質量部以下および3質量部以上6質量部以下の範囲であるとき得ることができる。この範囲からいずれか一方でも外れた場合には、本発明の効果において少なくとも1つを満足することができない。
【0022】
本発明においては、最表層の塗工層におけるカオリンの含有量は、特に限定はしないが、好ましくは最表層の塗工層中の全顔料100質量部に対し10質量部以上30質量部以下の範囲である。最表層の塗工層のカオリン含有量を上記範囲にすることにより、優れた印刷光沢を得ることができる。特に、白紙光沢を得るために2μm未満の粒子径を有する割合が95体積%以上を占める微粒のカオリンを用いるとき、最表層の塗工層のカオリン含有量が上記範囲であることでいっそう顕著となる。本発明において、粒子径2μm未満の粒子が占める割合とは、レーザ回折・散乱式粒度分布計(商品名:マイクロトラックMT−3000IIシリーズ、日機装社製)で粒度分布を測定し、粒子径2μm未満の粒子の体積積算を求めたものである。
【0023】
本発明において、最表層の塗工層には、カオリン以外に他の顔料を併用して含有することが好ましい。例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、アルミナ水和物、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ホワイトカーボン、サチンホワイト、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の無機顔料、ポリスチレン樹脂、スチレン・アクリル共重合樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機顔料、その他塗工紙に用いられる従来公知の顔料を挙げることができる。また、これらの微小中空粒子型や貫通孔型等の各種形状の顔料も用いることができる。これらの中から複数を組み合わせて選択してもよい。
【0024】
本発明において、最表層の塗工層のカオリンと併用する顔料は、印刷表面強度の低下を抑制する点で、最表層の塗工層のカオリンに比べて比表面積が小さい顔料を含有することが好ましい。
【0025】
本発明に好適な態様において、最表層の塗工層を形成するための塗工液の濃度は高濃度であることが好ましい。最表層の塗工層の塗工液が低濃度または中濃度であることを妨げないが、高濃度化した塗工液を塗工して最表層の塗工層を形成する印刷用塗工紙において、本発明の効果が顕著となる。本発明において、高濃度とは塗工液の固形分濃度が65質量%以上であり、塗工液の固形分濃度が65質量%以上の場合に本発明の効果が顕著となる。最表層の塗工液の濃度は高濃度であるほど好ましいが、塗工液の調製や設備内における結晶析出を生じることから70質量%以下がより好ましい。
【0026】
本発明において、別の態様としては、基紙上に少なくとも顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工してなる印刷用塗工紙の製造方法であって、基紙上に塗工層を1層以上形成し、最表層の塗工層の顔料としてカオリンを最表層の塗工層中の全顔料100質量部に対し10質量部以上30質量部以下の範囲で含有し、最表層の塗工層の接着剤として酵素変性デキストリンおよびラテックスを含有し、最表層の塗工層中の全顔料100質量部に対し酵素変性デキストリンを1質量部以上15質量部以下およびラテックスを3質量部以上6質量部以下の範囲で含有する最表層の塗工層を、固形分濃度が65質量%以上である塗工液を塗工して形成する印刷用塗工紙の製造方法である。
【0027】
上記の製造方法で得られる印刷用塗工紙は、基紙被覆性および印刷光沢に優れ、高濃度化した塗工液の粘度の増大を抑えながら、且つインキ着肉ムラが発生し難く、印刷表面強度に優れる。
【0028】
本発明において、最表層の塗工層には、カオリン、酵素変性デキストリン、ラテックス並びに前記顔料および前記接着剤以外に、塗工紙を製造する上で使用されている従来公知の助剤等を適宜含有することができる。例えば、分散剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤、pH調整剤等を挙げることができる。
【0029】
本発明において、最表層の塗工層を塗工する方式は特に限定はしないが、例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ショートドゥエルコーター、シムサイザー、ゲートロールコーター等、従来公知の各種塗工方式を用いることができる。
【0030】
本発明において、最表層の塗工層の塗工量は特に限定はしないが、固形分量で片面あたり6〜25g/mが好ましく、8〜20g/mがより好ましい。塗工量が片面あたり6〜25g/mの時は、基紙または後述する中間塗工層を比較的均一に被覆することができ、結果として白紙光沢に優れ、インキ着肉ムラもより発生し難いために好ましい。片面あたり8〜20g/mの時はより均一に被覆することができ好ましい。
【0031】
本発明において、最表層の塗工層と基紙の間に塗工層(以下、「中間塗工層」と記載する。)を設けることができる。中間塗工層には、印刷用塗工紙に使用されている従来公知の顔料、接着剤および各種助剤を適宜選択して含有することができる。
【0032】
本発明において、中間塗工層が含有する顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ホワイトカーボン、サチンホワイト、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の無機顔料や、ポリスチレン樹脂、スチレン・アクリル共重合樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機顔料、その他塗工紙に用いられる従来公知の顔料を挙げることができる。また、これらの微小中空粒子型や貫通孔型等の各種形状の顔料も用いることができる。これらの中から少なくとも1種を適宜選択して用いることができる。
【0033】
本発明において、中間塗工層が含有する接着剤としては、最表層の塗工層が含有する酵素変性デキストリンまたはラテックス、並びに従来公知の例えば、カチオン化澱粉、酸化澱粉、エチル化澱粉、アセチル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、グアーガム、ローカストビーンガム等のガム類等を挙げることができる。また、これらの中から少なくとも1種を適宜選択して用いることができる。
【0034】
本発明において、中間塗工層は、必要に応じて分散剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤、pH調整剤等の塗工紙を製造する上で使用されている従来公知の各種助剤を適宜含有することができる。
【0035】
本発明において、中間塗工層を塗工する方式は特に限定はしないが、例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ショートドゥエルコーター、シムサイザー、ゲートロールコーター等、従来公知の各種塗工方式を用いることができる。
【0036】
本発明において、中間塗工層の塗工量は特に限定はしないが、固形分量で片面あたり6〜25g/mが好ましい。特に、基紙と接する塗工層は、塗工量が片面あたり6〜25g/mの場合、基紙を比較的均一に被覆することができ、結果として中間塗工層上に設ける最表層の塗工層の白紙光沢がより優れ、インキ着肉ムラもより発生し難いために好ましい。
【0037】
本発明において、基紙は特に限定はしないが、例えば、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CGP等の機械パルプ、および古紙パルプ等、従来公知の各種パルプの少なくとも1種を含有し、必要に応じて軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン等、従来公知の各種填料およびサイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤等、従来公知の各種添加剤を配合した紙料を抄造して得ることができ、酸性、中性、アルカリ性のいずれの抄造法でも構わない。
【0038】
本発明において、基紙は、澱粉、ポリビニルアルコール等を含有するサイズプレス液でサイズプレス処理を施すことができる。また、必要とする基紙の密度、平滑度、厚さを得るためにカレンダー処理を施すことができる。
【0039】
本発明において、印刷用塗工紙は、最表層の塗工層または中間塗工層を設けた各段階においてスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー処理を施すことができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。特に断りのない場合は、「部」は質量部であり「%」は質量%である。また固形分の「部」または「%」を示す。
【0041】
<基紙の調製>
以下のような配合で紙料を調成し、坪量70g/mの基紙を抄造した。
(配合)
LBKP(濾水度440mlcsf) 70部
NBKP(濾水度490mlcsf) 30部
軽質炭酸カルシウム 6部
カチオン化澱粉 1部
硫酸バンド 1部
アルキルケテンダイマー系内添サイズ剤(AKD) 0.2部
カチオン性ポリアクリルアミド系歩留り向上剤 0.03部
【0042】
この基紙に対して、両面あたりサイズプレスで0.30g/mの酸化澱粉を付着させ、塗工用の基紙を得た。
【0043】
印刷用塗工紙の製造は以下のようにして行った。
塗工用の基紙に対して、ブレードコーターを用いて塗工速度1300m/分で、各実施例または各比較例に相当する配合の塗工液を、片面あたり14g/mで両面に塗工し、乾燥した。得られた塗工紙をスーパーカレンダー仕上げ装置(剛性ロール:チルドロール、弾性ロール:コットンロール、線圧:2.2kN/cm)を用いてカレンダー処理を施し、印刷用塗工紙を製造した。
【0044】
各実施例または各比較例に相当する配合の塗工液の塗工適性、および各実施例または各比較例により得られた印刷用塗工紙の評価は、以下の方法で行った。
【0045】
<塗工液の塗工適性>
固形分濃度を65%以上に調製した各塗工液のB型粘度およびキャピラリー粘度を測定した。B型粘度は、市販のB型粘度計を使用し、温度25℃、回転数60rpmの条件で測定した。キャピラリー粘度は、ACA Systems Oy社製「ACAV」を使用し、温度25℃、圧力20MPa、キャピラリー内径0.5mmの条件で測定した。測定値から以下の基準に従い塗工液の塗工適性を判断した。本発明において、評価が○であれば塗工液の塗工適性があるといえる。
○:B型粘度値3000mPa・s以下且つキャピラリー粘度値150mPa・s以下
△:B型粘度値またはキャピラリー粘度値のいずれか一方が上記を満たさない
×:B型粘度値3000mPa・s超且つキャピラリー粘度値150mPa・s超
【0046】
<基紙被覆性>
得られた印刷用塗工紙をA4サイズに切り、質量比で脱イオン水/エタノール/塩化アンモニウム=50/45/5の溶液に1時間浸した。その後、印刷用塗工紙を溶液から取り出し、濾紙で挟み余分な溶液を拭き取った。さらに150℃の乾燥機に3時間入れた後、取り出した。これによって、有機物で構成されている基紙部分が茶色く焦げ、塗工層に被覆されている部分は白いまま残る。白い部分が多いほど、基紙が良好に塗工層によって被覆されていることになる。白い部分の程度を目視で判断し、4段階で評価した。3以上であれば実用上問題はない。
4:茶色い部分はほとんどなく、ほぼ全てが白い部分である。
3:茶色い部分は存在するがうっすら見える程度で、白い部分の方が圧倒的に多い。
2:茶色い部分は見えるが、白い部分と同程度か、若干白い部分が多い。
1:茶色い部分の方が多い。
【0047】
<印刷光沢>
RI印刷適性試験機を用い、藍色、紅色、黄色の重色ベタ印刷を施した後、一昼夜室温にて静置し、村上式光沢度計を用い60°−60°反射率で光沢度を測定した。光沢度の値から以下の基準に沿って評価した。本発明において印刷光沢に優れるとは3以上の評価である。
4:印刷光沢が70%以上
3:印刷光沢が65%以上70%未満
2:印刷光沢が60%以上65%未満
1:印刷光沢が60%未満
【0048】
<インキ着肉ムラ>
三菱重工製ダイヤ4色印刷機を用い、大日本インキ社製スペースカラーフュージョン−Gの4色重ね刷りハーフトーンを印刷し、インキ着肉ムラを目視判断により下記の5段階で評価した。3以上であれば実用上問題はない。
5:最も良好
4:良好
3:許容レベル
2:悪い
1:極めて悪い
【0049】
<印刷表面強度>
RI印刷適性試験機を用い、IGT試験用強タックインキの単色ベタ刷りを行い、紙剥け状態を印刷表面強度として、目視判断により下記の4段階で評価した。3以上であれば実用上問題はない。
4:紙剥けがなく良好
3:紙剥けが僅かに認められるが、問題ないレベル
2:紙剥けが認められる
1:紙剥けが多い
【0050】
<印刷用塗工紙の調製>
(実施例1)
重質炭酸カルシウム(商品名:FMT−90/ファイマテック社)75部および1級カオリン(商品名:KAOFINE90/白石カルシウム社、粒子径2μm未満の割合が95〜100体積%)25部と、ポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンT−40/東亜合成社)0.1部とを添加して分散機で分散した分散液に、酵素変性デキストリン(商品名:ハイコースターPC−11/三和澱粉工業社)7部を添加した。これにスチレン・ブタジエン共重合ラテックスを5部、ステアリン酸カルシウムを0.3部添加し、水酸化ナトリウムでpH9.8に調整し、さらに調整水によって固形分濃度68%の塗工液を得た。塗工用の基紙に上記の方法で塗工し、実施例1の印刷用塗工紙を得た。
【0051】
(実施例2〜10、比較例1〜7)
実施例1において、表1に記載する塗工液の配合に変更する以外は実施例1と同様に行い各実施例または各比較例とした。調整水または濃縮によりそれぞれ濃度を調製した。各塗工液の濃度は表1に記載した。なお、比較例5および比較例6に相当する塗工液は増粘し高濃度化して塗工することができなかったため、65%未満の濃度で塗工し、比較例5および比較例6の印刷用塗工紙を得た。
【0052】
表1に記載するアルファベットで示される材料は、以下の通りである。
A:重質炭酸カルシウム(商品名:FMT−90/ファイマテック社)
B:軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−123/奥多摩工業社)
C:尿素リン酸エステル化澱粉(商品名:MS4600/日本食品化工社)
D:低粘度のリン酸エステル化澱粉(商品名:HSSコート300/王子コーンスターチ社)
【0053】
各実施例および各比較例の配合並びに評価結果を、表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1から明らかなように、本発明にかかる実施例1〜10は、塗工液を高濃度化しても粘度の増大が抑えられ塗工適性があることが分かる。得られた印刷用塗工紙は、基紙被覆性に優れ、且つインキ着肉ムラの発生が少なく、印刷表面強度の低下が生じていないことが分かる。特に実施例1〜5、実施例7、実施例9および実施例10のように最表層の塗工層における全顔料100部に対するカオリンの含有量が10部以上30部以下であると、印刷光沢により優れることが分かる。一方、比較例では、このような効果は得られていない。本発明によらない配合にて得られた印刷用塗工紙はいずれかの効果を満足しないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙上に、少なくとも顔料と接着剤を含有する塗工層を1層以上有する印刷用塗工紙において、最表層の塗工層に、顔料として少なくともカオリンを含有し、且つ最表層の塗工層中の全顔料100質量部に対し接着剤として、酵素変性デキストリンを1質量部以上15質量部以下およびラテックスを3質量部以上6質量部以下の範囲で含有することを特徴とする印刷用塗工紙。
【請求項2】
最表層の塗工層が、最表層の塗工層中の全顔料100質量部に対し、10質量部以上30質量部以下の範囲でカオリンを含有する請求項1に記載の印刷用塗工紙。

【公開番号】特開2012−167384(P2012−167384A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26660(P2011−26660)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】