説明

印刷装置、および印刷装置の制御方法

【課題】ノズルの吐出不良に対応可能な印刷装置を提供する。
【解決手段】制御装置20に接続可能な印刷装置10であって、少なくとも第1インクおよび第2インクを含む複数色のインクを前記制御装置から受信した印刷データに基づいて、個々に吐出するノズル40からなるノズル40群を有するインクジェットヘッド12と、前記インクジェットヘッド12の前記ノズル40のインク吐出状態を検知する吐出検知手段14と、前記印刷データ中のシンボル画像データを特定するシンボル画像特定手段35と、これらを統括的に制御する制御部30と、を備え、前記制御部30は、前記シンボル画像特定手段35が特定した前記シンボル画像を記録媒体に印刷する前記第1インクを吐出する前記ノズル40が吐出不良ノズルであると前記吐出検知手段が検知した場合、吐出良好ノズルから前記第2インクを吐出して前記シンボル画像を印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、および印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
文字や画像パターンを印刷する印刷装置としてのインクジェットプリンターは、微細なノズル群が規則的に形成されているインクジェットヘッドを備えている。そして、記録媒体に対してインクジェットヘッドからインクを選択的に吐出して文字や画像パターンを印刷する。インクを吐出するノズルの直径は30〜60μm程度と非常に微細であるため、例えば異物が付着したりインクが増粘したりする外的要因や使用条件等の理由により、吐出不良のノズルが発生することがある。著しい場合はインクを吐出することができなくなる。
【0003】
このような吐出不良のノズルが発生すると、記録媒体上の所定の位置にインクを着弾させることができないため、所望の印刷品質を確保することができなくなる。特に、バーコードや2次元コード等のシンボル画像を印刷する場合は、情報が欠損して読み取り不良が発生し、上記の問題はより顕著となる。そのため、吐出不良のノズルを特定し、バーコード等印刷情報の印刷位置を横方向もしくは回転方向にずらしたりしてバーコードの読み取り不良を防止する印刷装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−145734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の印刷装置は、吐出不良のノズルおよびそのノズルが受け持つ印刷データ部位を特定し、印刷位置をずらすという煩雑な作業を行う必要がある。また、バーコードより複雑な2次元コード等のシンボル画像に対しては十分な効果が期待できない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
(適用例1)制御装置に接続可能な印刷装置であって、少なくとも第1インクおよび第2インクを含む複数色のインクを前記制御装置から受信した印刷データに基づいて、個々に吐出するノズルからなるノズル群を有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの前記ノズルのインク吐出状態を検知する吐出検知手段と、前記印刷データ中のシンボル画像データを特定するシンボル画像特定手段と、これらを統括的に制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記シンボル画像特定手段が特定した前記シンボル画像を記録媒体に印刷する前記第1インクを吐出する前記ノズルが吐出不良ノズルであると前記吐出検知手段が検知した場合、吐出良好ノズルから前記第2インクを吐出して前記シンボル画像を印刷することを特徴とする印刷装置。
【0008】
この構成によれば、第1インクを吐出するノズルが吐出不良を起こした場合でも第2インクを吐出する健全なノズルを代用することによって、読み取り率の高いシンボル画像を印刷することができる。従って、ノズルの吐出不良に容易に対応することができる信頼性の高い印刷装置を提供することができる。
【0009】
(適用例2)前記制御部は、前記シンボル画像を印刷する前記第1インクを吐出する前記ノズル群に吐出不良ノズルが含まれる場合、前記第2インクを吐出する前記ノズル群を用いて前記シンボル画像を印刷することを特徴とする上記の印刷装置。
【0010】
(適用例3)前記制御部は、前記シンボル画像を印刷する前記第1インクを吐出する前記ノズルが吐出不良ノズルである場合、前記吐出不良ノズルが吐出すべきドット形成位置に前記第2インクを吐出して前記シンボル画像を印刷することを特徴とする上記の印刷装置。
【0011】
これらの構成によれば、シンボル画像を印刷する第1インクを吐出するノズルが吐出不良ノズルであったとしても、シンボル画像を確実に印刷することができる。
【0012】
(適用例4)前記第1インクおよび前記第2インクの吸収スペクトルは、所定の波長帯域の光に対して吸収する特性を有し、かつ、前記所定の波長帯域の光に対する前記記録媒体表面の吸収スペクトルとは区別可能であることを特徴とする上記の印刷装置。
【0013】
(適用例5)前記第1インクは、ブラックインクであり、前記第2インクは、シアンインクであることを特徴とする上記の印刷装置。
【0014】
(適用例6)前記所定の波長帯域の光は、赤色光から近赤外光までの波長帯に含まれる光であることを特徴とする上記の印刷装置。
【0015】
(適用例7)前記所定の波長帯域は、600nmから700nmに含まれることを特徴とする上記の印刷装置。
【0016】
これらの構成によれば、通常バーコードや2次元コード等のシンボル画像が印刷される第1インク、すなわちブラックインクを吐出するノズルが吐出不良を起こした場合、ブラックインクと、所定の波長帯域の光に対して同一な吸収スペクトルを有するシアンインクでシンボル画像を印刷することができる。そのため、シンボル画像を読み取るスキャナーの光源から照射される読み取り用の光に対してほぼ同一な吸収スペクトルを有することになり、スキャナーとして見た場合、これら2色は実質的に同色となる。その結果、ブラックインクを吐出するノズルが吐出不良を起こした場合でもシアンインクを吐出する健全なノズルを代用することによって、読み取り率の高いシンボル画像を印刷することができる。従って、ノズルの吐出不良に容易に対応することができる信頼性の高い印刷装置を提供することができる。
【0017】
(適用例8)少なくとも第1インクおよび第2インクを含む複数色のインクを印刷データに基づいて個々に吐出するノズルからなるノズル群を有するインクジェットヘッドを有する印刷装置の制御方法であって、前記インクジェットヘッドの前記ノズルのインク吐出状態を検知する吐出検知工程と、前記印刷データ中のシンボル画像データを特定するシンボル画像特定工程と、前記シンボル画像を記録媒体に印刷する前記第1インクを吐出する前記ノズルが吐出不良ノズルである場合、前記第2インクを吐出して前記シンボル画像を印刷する印刷工程と、を含むことを特徴とする印刷装置の制御方法。
【0018】
この方法によれば、通常バーコードや2次元コード等のシンボル画像が印刷される第1インク、例えばブラックインクを吐出するノズルが吐出不良を起こした場合、ブラックインクと、所定の波長帯域の光に対して同一な吸収スペクトルを有する例えばシアンインクでシンボル画像を印刷することができる。そのため、シンボル画像を読み取るスキャナーの光源から照射される読み取り用の光に対してほぼ同一な吸収スペクトルを有することになり、スキャナーとして見た場合、これら2色は実質的に同色となる。その結果、ブラックインクを吐出するノズルが吐出不良を起こした場合でもシアンインクを吐出する健全なノズルを代用することによって、読み取り率の高いシンボル画像を印刷することができる。従って、ノズルの吐出不良に容易に対応することができる信頼性の高い印刷装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンターの構成を示す模式図。
【図2】プリンターにおけるヘッドのノズル面を示す模式図。
【図3】プリンターが実行する印刷処理を示すフローチャート。
【図4】所定の波長の光に対する各色のインクの反射率を示す図。
【図5】各色の読み取り可能な波長とスキャナーの光源との関係を示す図。
【図6】第1実施形態に係る不良ノズル補完処理を示すフローチャート。
【図7】第2実施形態に係る不良ノズル補完処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で参照する図面では、説明および図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。本実施形態では、印刷装置の一例としてインクジェットプリンター(以下プリンターという)について説明する。
【0021】
(プリンターの構成について)
まず、プリンターの構成について図1および図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係るプリンターの構成を示す模式図である。図2は、プリンターにおけるヘッドのノズル面を示す模式図である。
【0022】
プリンター10は、インクを紙、布、ディスク状記憶媒体のレーベル面、フィルムシート等の記録媒体に吐出する事により、該記録媒体上に画像を形成(印刷)する装置である。ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローの4色のインクを用いる事により、記録媒体上にフルカラー画像を印刷することが可能である。図1に示すように、プリンター10は、印刷部11、搬送機構13、吐出検知手段14、制御部30、インクカートリッジ15を備える。
【0023】
印刷部11は、後述する多数のノズル40が列状に形成されたノズル面42を有するインクジェットヘッド(以下ヘッド12という)と、不図示のプラテンを備えている。プラテン上を搬送される記録媒体に対してインクカートリッジ15から供給されたインクをノズル40から吐出するよう構成されている。なお、本実施形態では、プリンター10は、ライン型と称され、記録媒体の搬送方向に直交する向きに延伸する長尺のヘッド12がプリンター10の図示しない筐体に対して不動に配置されている。ノズル40はヘッド12の延伸方向に配列されてノズル列44を形成している。シリアル型と称されるプリンターのようにヘッドを移動させる機構が必要ないので、装置の小型化および印刷速度の向上が可能である。
【0024】
図2に示すように、ヘッド12は、長尺状に形成され、矢印Tで示す記録媒体の搬送方向に直交する向きに延伸するように設けられている。上述のプリンター10は、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローの4色のインクを使用する。そのため、長尺のヘッド12は、色インク毎に設けられ、記録媒体の搬送方向に並ぶように不動に配置されている。なお、各色用のヘッド12は別体として構成されていても一体として構成されていてもよい。
【0025】
ノズル40群は、ブラックインク吐出用のノズル40K群、シアンインク吐出用のノズル40C群、マゼンタインク吐出用のノズル40M群およびイエローインク吐出用のノズル40Y群を含んでいる。各色インク吐出用ノズル40K,40C,40M,40Yは、記録媒体の搬送方向(矢印T方向)と直交する向きに一定の間隔(本実施形態では1/720インチ)で配列され、ノズル列44K,44C,44M,44Yを形成している。
【0026】
各色インク吐出用のノズル列44K,44C,44M,44Yは、各々同じ数だけのノズル40K,40C,40M,40Yを含んでいる。各ノズル列44K,44C,44M,44Yにおける任意のn番目のノズル40nは、記録媒体の搬送方向Tに沿ってほぼ同一位置に配置されている。
【0027】
各ノズル40には不図示のインク室および圧電素子が設けられ、当該圧電素子の駆動によりインク室が収縮、膨張される事により、ノズル40から液滴状のインクが吐出される。吐出された液滴状のインクは記録媒体に着弾してドットを形成する。圧電素子の駆動を適宜変化させる事によって同じノズル40から吐出されるインク滴の量を変化させる事が可能であり、記録媒体上に形成されるドットの大きさもこれに応じて変化する。なお、ヘッド12は、発熱体を用いてノズル40内に気泡を発生させ、その気泡によってインクを吐出させる構成としてもよい。その場合、インク滴の大きさは発熱体の駆動時間を調節することにより制御する。
【0028】
図1に示す搬送機構13は、記録媒体を印刷部11へ搬送すると共に、印刷部11を通過した記録媒体をプリンター10の外部に排出する機能を有する。
【0029】
制御部30は、メモリー33に格納されているプログラムに従ってCPU32により印刷部11や搬送機構13を制御する。制御部30はインターフェイス31を介してコンピューター20と通信可能であり、コンピューター20から印刷データを受信すると、印刷部11や搬送機構13を制御して当該印刷データに対応する画像を記録媒体上に印刷する。
【0030】
制御部30は、インク吐出状態を検知する不良ノズル検出部34を備えている。不良ノズル検出部34は、プリンター10のヘッド12に対向可能な位置に配置される吐出検知手段14に接続されている。吐出検知手段14は、例えば、インク吸収材と電気的に導通する導電材を備え、導電材を流れた電気信号が、不良ノズル検出部34にて検出可能に構成される。不良ノズル検出部34は、ヘッド12の各ノズル40から帯電されたインク滴を吐出させ、帯電されたインク滴が吸収材に着弾する際に生じる電流変化の信号を検出することができる。そして、この信号値が所定の閾値以下の場合、そのノズル40のインク吐出が、規定の吐出量に達していない、もしくは吐出されないこと、すなわち吐出不良であることを検出することができる。
【0031】
なお、上記の不良ノズル検出部34は例示であり、印刷部11および搬送機構13を制御してヘッド12にテストパターンを印刷させ、次いでCCDもしくはフォトセンサーを制御して印刷されたテストパターンを走査し、何れのノズル40が吐出不良を呈しているのかを検出する構成としてもよい。
【0032】
本実施形態では、不良ノズル検出部34は、まずブラックインクの吐出状態を検出する。そして、吐出不良が発生している場合は、何番目のブラックインク吐出用のノズル40Kが吐出不良を呈しているのかを特定し、その結果を不良ノズルデータDとしてメモリー33に記憶する。
【0033】
インクの吐出が完全に不可能なノズル40を不良ノズルと判定するのは勿論であるが、インクの吐出が実行可能でも、正常に(設計値通りに)ドットが形成できないようなノズル40は不良ノズルと判定される。設計値からどの程度逸脱した場合に不良ノズルと判定するかは、不良許容度と印刷品質を鑑みながら任意に設定することができる。
【0034】
また、制御部30は、シンボル画像特定手段35を備える。シンボル画像特定手段35は、印刷データの中にバーコードや二次元コード等のシンボル画像があるか否かを判定する。そして、本来、シンボル画像を構成するドットに割り当てられるブラックインク吐出用のノズル40Kを特定する。
【0035】
(プリンターの印刷動作について)
次いで、プリンター10が実行する印刷処理について図3を参照して説明する。図3は、プリンターが実行する印刷処理を示すフローチャートである。
【0036】
図3に示すように、ステップS1の印刷データ受信工程では、図1に示す制御部30がコンピューター20からインターフェイス31を介して印刷命令を含む印刷データを受信する事により印刷処理が開始される。制御部30は、受信した印刷データ中の各種コマンドの内容を解析する。
次に、ステップS2の給紙動作工程では、制御部30は、搬送機構13を制御して記録媒体を印刷部11における印刷開始位置に位置決めする。
【0037】
次いで、ステップS3のドット形成動作工程では、制御部30は、ヘッド12を制御してノズル40群からインクを吐出させ、記録媒体上にドットを形成する。記録媒体上に仮想的に定められた方形状の領域(以下、吐出領域と称する)にインク滴が着弾する事によりドットが形成される。なお吐出領域は印刷解像度に応じて大きさや形が定められ、理想的にインク滴が吐出された場合は吐出領域の中央にインク滴が着弾する。その後インクが広がってドットの形成に至る。各色インクを吐出するノズル列44K,44C,44M,44Yは、記録媒体の幅方向全域に亘って設けられているため、最大4色のインク吐出が実行される事により、1行分のドット群形成が一挙に終了する。ここで「1行分」とはシリアル型のプリンター10におけるキャリッジの一度の走査により形成可能な量、すなわち1ラスターライン分に相当する概念である。
【0038】
次いで、ステップS4の搬送動作工程では、制御部30は、搬送機構13を制御して記録媒体をヘッド12に対して相対的に移動させる。この搬送動作により、先のドット形成動作で形成した1行分の位置とは異なる位置に、次の1行分のドット群形成を行なう事が可能となる。印刷データが残存している限り制御部30がドット形成動作と搬送動作を繰り返す事により、記録媒体の搬送方向に沿って複数行のドット群の形成(印刷)が行なわれる。
【0039】
ステップS5では、次に印刷する印刷データがあるかないかを確認し、記録媒体の排紙が必要か否かを判定する。次に印刷する印刷データがない場合は、制御部30は排紙が必要との判断を下す。
ステップS6の排紙動作工程では、ステップS5で排紙が必要との判断が下されると、制御部30は搬送機構13を制御し、記録媒体をプリンター10の外部に排出する。
ステップS7では、画像が印刷された記録媒体がプリンター10の外部に排出されると、制御部30は印刷を終了するか否かの判断を行なう。終了しないと判断されると、前述の給紙動作工程S2に戻って印刷が続行され、終了と判断されると、印刷処理を終了する。
【0040】
次にプリンター10に接続されたコンピューター20について図1を参照して説明する。コンピューター20は、印刷データの他、プリンター10において実行される各種動作(例えばクリーニング動作)の実行命令をプリンター10に向けて出力する。コンピューター20にはプリンタードライバー22やアプリケーションプログラム21といったプログラムがインストールされている。
【0041】
プリンタードライバー22は、アプリケーションプログラム21から画像データを受取り、この画像データを印刷データに変換してプリンター10に向けて出力する。印刷データは、文字情報や画像情報を含む。近年、物流や商流の分野に用いられるプリンター10は、情報伝達の効率化を目的としてシンボル画像としてのバーコードや2次元コード等を印刷する場合が多い。
【0042】
(シンボル画像の読み取りについて)
上述のバーコードや2次元コード(以下シンボル画像という)の読み取りについて図4および図5を参照して説明する。図4は、所定の波長の光に対する各色のインクの反射率を示す図であり、詳しくは吸収スペクトル分布を示す図である。図5は、各色の読み取り可能な波長とスキャナーの光源との関係を示す図である。
【0043】
シンボル画像は、スキャナーで読み取られる。この種のスキャナーは、可視光半導体レーザーや可視光LED等を光源に持ち、CCDセンサーやCMOSイメージセンサー等を読み取りセンサーとして有する。スキャナーは、印刷されているシンボル画像上に光源から光を照射して光スポットを形成し、シンボル画像からの反射光に基づいて、シンボル画像を読み取る。スキャナーによってシンボル画像を確実に読み取るためには、光スポットがシンボル画像上のいずれの箇所に形成された場合であっても、シンボル画像のパターンが反映された反射光が得られるように、シンボル画像を構成しているドットが連続となっていることが必要である。
【0044】
例えば、吐出不良のノズル40が発生すると、記録媒体上の所定の位置にインクを着弾させることができなくなる。そのため、ドットが不連続になる等所望の印刷品質を確保することができなくなる。ドットが連続していない場合は、光スポットがドット間に位置すると、そのスポットの大部分が記録媒体表面に当たることになる。このような状態になると、シンボル画像のパターンを正確に検出できなくなる。
【0045】
一般にシンボル画像は、ブラックインクで印刷される。ところが、図4(a)および図5に示すように、青色、緑色および紫色は、約600nm〜700nmの範囲の波長の光に対する反射率が低い。すなわち、これらの色は、この波長帯域に含まれる光に対する吸収率が高く、記録用紙表面の吸収率と区別することができる。このため、この波長帯域に含まれる光を用いると、記録媒体表面(白地部分)と上記の色によって印刷された部分とを識別できる。また、これらの色は、上記の波長帯域においてほぼ同一の吸収率となっているので、これらの色で印刷された部分からの反射光を検出すると、これらの色を同色として取り扱うことができる。すなわち、上記の3色からシンボル画像が印刷されていたとしても、そのシンボル画像を通常のシンボル画像として確実に読み取ることができる。
【0046】
なお、上記の光を出射するレーザー光としては、約632.8nmの光を出射するHe・Neレーザー、約660nmの光を出射する赤色LED、約670nmの光を出射する可視光半導体レーザーがある。
【0047】
これに対して、図4(b)および図5に示すように、赤色は、波長が約600nm以下の光に対する反射率が低いので、このような波長の光でなければ、記録媒体表面との識別はできない。同様に、橙色は、波長が約550nm以下の光、黄色は波長が約500nm以下の光でなければ記録媒体表面の識別はできない。このような波長の光を出射する光源はないので、これらの色でシンボル画像を印刷すると、シンボル画像を読み取ることができない。
【0048】
上述のプリンター10は、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローの4色のインクを使用する。ここで、シアンは、青色と緑色を混合することにより構成される色のため、青色、緑色および紫色と同様に、波長が600nm〜700nmの範囲に含まれる光で読み取り可能である。また、図4(a)から分かるように、ブラックは、波長が670nm付近の光に対する反射率が青色、緑色および紫色とほぼ同一となる。プリンター10を用いてブラックインクもしくはシアンインクで印刷されたシンボル画像は、可視光半導体レーザーや可視光(赤色)LEDを光源に備えたスキャナーで読み取り可能である。
【0049】
そのため、ブラックインク吐出用のノズル40Kが吐出不良を起こした場合、シアンインク吐出用のノズル40Cでシアンインクを吐出してシンボル画像を印刷してもスキャナーで十分読み取り可能となる。
【0050】
(不良ノズル補完処理について)
(第1実施形態)
ここで、第1実施形態に係る印刷装置の制御方法としての不良ノズル補完処理について図6を参照して説明する。図6は、第1実施形態に係る不良ノズル補完処理を示すフローチャートである。
【0051】
ステップS11では、図1に示すシンボル画像特定手段35が、プリンター10で印刷すべき印刷データ中にシンボル画像があるか否かを判定する。印刷データ中にシンボル画像がない(No)場合は、不良ノズル補完処理を行わない。印刷データ中にシンボル画像がある(Yes)場合は、ステップS12に進む。
【0052】
ステップS12では、図1に示すプリンタードライバー22は、プリンター10に対して不良ノズルデータDの送信要求を発行する。プリンター10の制御部30がインターフェイス31を介して当該要求を受信すると、メモリー33に記憶されている不良ノズルデータDをインターフェイス31を介してコンピューター20へ向けて送信する。プリンタードライバー22はこれを取得する。
ステップS13では、プリンタードライバー22は、シンボル画像を構成するドットデータと不良ノズルデータDを比較する。
【0053】
ステップS14では、プリンタードライバー22は、不良ノズルと特定されたブラックインク吐出用のノズル40Kが吐出対象とするシンボル画像の画素にブラックドットデータ(以降、Kドットデータという)が割り当てられているか否かを判定する。換言するとシンボル画像の印刷に際して、何らかの理由によりブラックインクの吐出が不良なノズル40Kに対してインクの吐出が指示されているかを判定する。判定結果がNoであれば、不良ノズル補完処理は不要であるとして処理を終了する。
【0054】
判定結果がYesであれば、所望の画像形成が不可能であるため、ブラックインクの不足(すなわちドット抜け)を補完する必要が生ずる。そのため、ステップS15に進む。
ステップS15では、プリンタードライバー22は、ブラックインクの吐出が不良なノズル40Kが割り当てられているKドットデータをシアンインクで印刷されるシアンドットデータ(以降、Cドットデータという)に変換する。
ステップS16では、Cドットデータに変換されたKドットデータを削除または非吐出データに変換して処理を終了する。
【0055】
プリンタードライバー22は、この不良ノズル補完処理が行なわれたドットデータを、プリンター10に転送すべき順番に並べ直して印刷データの一部とする。生成された印刷データは、コンピューター20からインターフェイス31を介してプリンター10の制御部30へ送信される。制御部30は、印刷部11や搬送機構13を制御して当該印刷データに対応する画像を記録媒体上に印刷する。すなわち、シンボル画像を形成するブラックインク吐出用のノズル40Kに吐出不良があった場合、シアンインクをもって本来のブラックインクが形成すべき黒色ドットの不足を補う。
【0056】
以下、第1実施形態の効果を記載する。
上述のプリンター10は、通常バーコードや2次元コード等のシンボル画像が印刷されるブラックインクを吐出するノズル40が吐出不良を起こした場合、ブラックインクと、所定の波長帯域の光に対して同一な吸収スペクトルを有するシアンインクを吐出良好なノズル40でシンボル画像を印刷することができる。そのため、シンボル画像を読み取るスキャナーの光源から照射される読み取り用の光に対してほぼ同一な吸収スペクトルを有することになり、スキャナーとして見た場合、これら2色は実質的に同色となる。その結果、ブラックインクを吐出するノズル40が吐出不良を起こした場合でもシアンインクを吐出する健全なノズル40を代用することによって、読み取り率の高いシンボル画像を印刷することができる。従って、ノズルの吐出不良に容易に対応することができる信頼性の高い印刷装置を提供することができる。
【0057】
(不良ノズル補完処理について)
(第2実施形態)
ここで、第2実施形態に係る印刷装置の制御方法としての不良ノズル補完処理について図7を参照して説明する。図7は、第2実施形態に係る不良ノズル補完処理を示すフローチャートである。なお、第1実施形態と同様な構成および内容については、符号を等しくして説明を省略する。
【0058】
第2実施形態に係る不良ノズル補完処理は、ステップS11のシンボル画像の特定からステップS14の不良ノズルと特定されたブラックインク吐出用のノズル40Kが吐出対象とするシンボル画像の画素にKドットデータというが割り当てられているか否かの判定まで第1実施形態と同様である。
【0059】
ステップS25では、プリンタードライバー22は、ブラックインクの吐出が不良なノズル40Kがシンボル画像を構成するKドットデータに含まれている場合は、シンボル画像を構成するKドットデータ全てをシアンインクで印刷されるCドットデータに変換する。すなわち、シンボル画像全体をシアンインクで印刷する処理を行う。
ステップS26では、Cドットデータに変換されたシンボル画像のKドットデータを削除または非吐出データに変換して処理を終了する。
【0060】
プリンタードライバー22は、この不良ノズル補完処理が行なわれたドットデータを、プリンター10に転送すべき順番に並べ直して印刷データの一部とする。生成された印刷データは、コンピューター20からインターフェイス31を介してプリンター10の制御部30へ送信される。制御部30は、印刷部11や搬送機構13を制御して当該印刷データに対応する画像を記録媒体上に印刷する。すなわち、シンボル画像を形成するブラックインク吐出用のノズル40Kに吐出不良があった場合、シアンインクをもってシンボル画像を印刷する。
【0061】
以下、第2実施形態の効果を記載する。
上述の印刷装置の不良ノズル補完処理では、ブラックインクの吐出が不良なノズル40Kがシンボル画像を構成するKドットデータに含まれている場合は、シンボル画像を構成するKドットデータ全てをシアンインクで印刷されるCドットデータに一括変換して印刷する。そのため、ドット毎にKドットデータからCドットデータに変換する場合と比較してデータ処理に係る負荷を低減することができる。
【0062】
以上、本発明の実施例について説明したが、上記実施例に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施例以外の変形例は、以下の通りである。
【0063】
(変形例1)上記実施形態では図6または図7に示す不良ノズル補完処理をプリンター10に接続されたコンピューター20にインストールされたプリンタードライバー22が実行している。しかしながらプリンター10の制御部30にインストールされたファームウェアがこの不良ノズル補完処理を実行するように構成する事も可能である。何れの場合も、プリンタードライバー22がインストールされたコンピューター20と、コンピューター20に接続されたプリンター10が印刷装置として機能する。
【0064】
(変形例2)上記実施形態においてプリンタードライバー22が行なっている全ての処理を、プリンター10の制御部30にインストールされたファームウェアに実行させる構成としてもよい。この場合、プリンター10に設けられたインターフェイス31としてのスロットにメモリーカード等の記憶媒体を挿入し、当該記録媒体から直接原画像データを取得する。プリンター10がスキャナーなどの画像取り込み手段を備える複合機器の場合は、当該画像取り込み手段から直接原画像データを取得する。取得した原画像データに対して図4および図6または図7に示す処理をファームウェアが実行する事により、所謂ダイレクトプリントに対して本発明の方法を適用する事が可能である。この場合、プリンター10単体が印刷装置として機能する。
【0065】
(変形例3)上記実施形態では、記録媒体の搬送方向に直交する向きに延伸する長尺のヘッド12がプリンター10の筐体に対して不動に設置された、所謂ライン型のプリンターについて説明したがこの限りではない。所謂シリアル型のプリンターに対しても本発明を適用可能である。
【0066】
シリアル型プリンターのヘッドにおいては、記録媒体の搬送方向にノズル40群が所定の長さで配列されてノズル列44を形成する。ヘッド12はキャリッジと称される移動体に搭載され、前記記録媒体の搬送方向と直交する向きに移動されながら、ノズル列44の長さに対応する1ライン分の印刷を行なう。1ライン分の印刷が終了すると、記録媒体が1ライン分の長さだけ搬送され、ヘッド12が走査方向に移動されながら同様にして次の1ライン分の印刷を行なう。
【0067】
フルカラー印刷が可能なプリンターの場合、少なくとも4色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)のインク毎に上記の構成を有するヘッド12が設けられ、前記走査方向に並ぶように配置される。キャリッジが走査方向に移動しながら各ヘッド12から各色インクが吐出される。各色用のヘッド12は別体として構成されていても一体として構成されていてもよい。
【0068】
(変形例4)上記実施形態では、印刷装置の一例としてインクを吐出して画像を形成するプリンター10について説明したがこの限りではない。例えば布地に模様をつけるための捺染装置といった工業用装置にも本発明の方法を適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
10…プリンター、11…印刷部、12…ヘッド、13…搬送機構、14…吐出検知手段、15…インクカートリッジ、20…制御装置としてのコンピューター、22…プリンタードライバー、30…制御部、32…CPU、33…メモリー、34…不良ノズル検出部、35…シンボル画像特定手段、40…ノズル、42…ノズル面、44…ノズル列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置に接続可能な印刷装置であって、
少なくとも第1インクおよび第2インクを含む複数色のインクを前記制御装置から受信した印刷データに基づいて、個々に吐出するノズルからなるノズル群を有するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドの前記ノズルのインク吐出状態を検知する吐出検知手段と、
前記印刷データ中のシンボル画像データを特定するシンボル画像特定手段と、
これらを統括的に制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記シンボル画像特定手段が特定した前記シンボル画像を記録媒体に印刷する前記第1インクを吐出する前記ノズルが吐出不良ノズルであると前記吐出検知手段が検知した場合、吐出良好ノズルから前記第2インクを吐出して前記シンボル画像を印刷することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記シンボル画像を印刷する前記第1インクを吐出する前記ノズル群に吐出不良ノズルが含まれる場合、前記第2インクを吐出する前記ノズル群を用いて前記シンボル画像を印刷することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記シンボル画像を印刷する前記第1インクを吐出する前記ノズルが吐出不良ノズルである場合、前記吐出不良ノズルが吐出すべきドット形成位置に前記第2インクを吐出して前記シンボル画像を印刷することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第1インクおよび前記第2インクの吸収スペクトルは、所定の波長帯域の光に対して吸収する特性を有し、かつ、前記所定の波長帯域の光に対する前記記録媒体表面の吸収スペクトルとは区別可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第1インクは、ブラックインクであり、前記第2インクは、シアンインクであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記所定の波長帯域の光は、赤色光から近赤外光までの波長帯に含まれる光であることを特徴とする請求項4または5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記所定の波長帯域は、600nmから700nmに含まれることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項8】
少なくとも第1インクおよび第2インクを含む複数色のインクを印刷データに基づいて個々に吐出するノズルからなるノズル群を有するインクジェットヘッドを有する印刷装置の制御方法であって、
前記インクジェットヘッドの前記ノズルのインク吐出状態を検知する吐出検知工程と、
前記印刷データ中のシンボル画像データを特定するシンボル画像特定工程と、
前記シンボル画像を記録媒体に印刷する前記第1インクを吐出する前記ノズルが吐出不良ノズルである場合、前記第2インクを吐出して前記シンボル画像を印刷する印刷工程と、を含むことを特徴とする印刷装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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