説明

印刷装置、その制御方法及び記録媒体

【課題】印刷装置の個々の機構部品の動作回数を記憶することのできる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置に電源を供給しない状態においても記憶内容を保持可能な記憶手段と、印刷装置の動作の回数をカウントする第1の動作回数カウント手段と、印刷装置の動作と同一の動作の回数をカウントする第2の動作回数カウント手段と、第1及び第2の動作回数カウント手段によってカウントされた第1及び第2のカウント値を記憶手段に格納する格納手段と、第1のカウント値を変更可能なカウント値変更手段とを有する。これにより、印刷装置の総動作回数(印刷装置が使用され始めてからの通算回数)と、交換された部品の動作回数とを記憶することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及びその制御方法に係り、更に詳しくはPOSシステムなどの金銭を扱うシステムで使用される印刷装置に用いて好適な保守情報の取り扱い技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷装置では、適切な保守を行うことを目的とし、総稼働時間や印字文字数などに代表される印刷装置の動作履歴をカウントしてEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)やフラッシュROM等の不揮発性メモリに記憶していた。一般に印刷装置は、起動時に不揮発性メモリから揮発性メモリであるRAMにこの履歴データをロードし、データの更新はRAMで行い、定期的(一定時間間隔毎や所定値間隔毎)あるいは電源オフ時にRAMのデータを不揮発性メモリに記憶していた。
【0003】
この履歴データは、ホスト装置からのコマンドに応じて、あるいは使用者のスイッチ操作に応じて、読み出し、表示、あるいは印刷させることにより確認することができた。
【0004】
また、特開平6−3956号公報に開示されているように、部品交換を実施したときには該部品に対応する履歴データをリセットし、カウントを再開していた。
【0005】
また、特開平4−305657号公報に開示されているように、履歴データを複数のメモリに重複して記憶することにより、メモリが故障する等の原因で記憶されたデータが保証できなくなるという問題を回避していた。
【特許文献1】特開平6−3956号公報
【特許文献2】特開平4−305657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来の印刷装置では、総稼動時間からでは印刷装置の個々の機構部品がどのように使われているかを具体的に知ることはできなかった。例えば同じ総稼動時間であっても、一行の印字文字数は少ないが多くの行にわたって印字する場合と、一行の印字文字数は多いが少しの行にしか印字しない場合とでは、印字ヘッドや紙送り機構等の使われ方は異なるので、各部品の消耗度等を把握することはできなかった。また印字文字数等の履歴データは、部品寿命を検出し部品交換した後にはリセットされていたので、該交換部品を駆動するための機構部品等の総動作回数を知ることはできなかった。
【0007】
総動作回数は、市場において実際にどれだけ使用されているのかを知ることができるので、故障原因の推定や品質保証のデータとして有効である。また次期新製品開発においても該データを反映させることにより適切なスペックの製品を提供することができる。
【0008】
そこで本発明の目的は、印刷装置の個々の機構部品の総動作回数を記憶することのできる印刷装置を提供することにある。そして、使用者が交換可能な消耗部品に係る履歴データと、該部品を駆動するための機構部品等であって使用者が交換できない部品に係る履歴データとを独立して記憶することのできる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の印刷装置は、印刷装置に電源を供給しない状態においても記憶内容を保持可能な不揮発性記憶手段と、当該印刷装置の動作の回数をカウントする第1動作回数カウント手段と、当該印刷装置の動作と同一の動作の回数をカウントする第2動作回数カウント手段と、前記第1動作回数カウント手段の第1カウント値及び前記第2動作回数カウント手段の第2カウント値を、それぞれ、第1履歴データ及び第2履歴データとして前記不揮発性記憶手段に所定のタイミングで格納する動作回数格納手段と、前記ホスト装置から受信した第1コマンドに応じて、前記第1カウント値及び前記第1履歴データを初期化する動作回数変更手段と、前記ホスト装置から受信した第2コマンドに応じて、前記第1及び/又は第2カウント値を前記ホスト装置に送信する動作回数送信手段とを有することを特徴とする。また、第1及び第2の動作回数カウント手段を複数有することを特徴とする。
これにより、印刷装置の動作回数、例えば印刷文字数、記録媒体の搬送距離、オートカッタの動作回数等を計数し、履歴動作回数、すなわち印刷装置が使用され始めてからの通算の動作回数を記憶しておくことが可能となる。また当該動作に関する部材等の交換があった場合には交換後の通算の動作回数を合わせて記憶することが可能となる。また、例えば、部品交換によってリセットされる領域と、されない領域とを使い分けることによって、印刷装置の動作回数によって交換すべき部品が異なるような場合においても、正確な履歴情報を得ることが可能となる。
【0010】
この場合において、印刷装置の稼働時間を計測する稼働時間計測手段と、印刷装置が所定の処理(印字動作又はデータ処理)を行っているか否かを判断する判断手段とを有し、該判断手段は、稼働時間計測手段に対応して、所定の時間毎に判断を行い、動作回数格納手段は、判断手段の結果に応じて所定の処理(印字動作又はデータ処理)を行っていないと判断された場合に、履歴データを不揮発性記憶手段に格納するようにしてもよい。これにより、電源の切断があった場合でもこれにより失われる動作回数のカウントを低減することができるとともに、印字動作やデータ処理を行っている場合には不揮発性記憶手段への格納が行われないので、当該印刷装置の動作を妨げることがなくなる。
【0011】
また、この場合において、動作回数格納手段は、判断手段の結果に応じて所定の処理(印字動作又はデータ処理)を行っていると判断された場合には、稼働時間計測手段により所定の時間よりも大きな第2の時間が計測されたとき又は前記所定時間の経過後所定の処理を行っていないと判断されたときに、履歴データを不揮発性記憶手段に格納するようにしてもよい。これにより、印刷装置の動作が長時間に渡る場合には不揮発性記憶手段への格納を行うことによって、長時間格納が行われないことを回避することができ、電源の切断があった場合でもこれにより失われる動作回数のカウントを低減することができる。
【0012】
また、カウント値を寿命判定指標値に換算する動作回数換算手段を有し、動作回数送信手段は、ホスト装置に寿命判定指標値を送信するようにしてもよい。これにより、ホスト装置は動作回数を寿命の判断の指標の形で入手することが可能となり、例えば動作回数と動作頻度とにより寿命が決定される場合などにより大きい効果が得られる。
【0013】
この場合において、カウント値又は寿命判定指標値をコード化するデータ変換手段を有し、動作回数送信手段は、コード化データをホスト装置へ送信するようにしてもよい。これにより、例えばインターフェースの制約により特定データの送信ができない場合においても確実に当該データをホスト装置に送信することができる。
【0014】
また、カウント値及び/又は寿命判定指標値を表示する動作回数表示手段を有することが望ましい。そして、動作回数表示手段は、カウント値及び/又は寿命判定指標値を印刷表示する動作回数印刷手段を有することが望ましい。これにより、オペレータは印刷装置の側においても当該データを知り、これを用いて適切な保守作業を行うことができる。
【0015】
また、動作回数格納手段は、ホスト装置から受信した所定のコマンドに応じて、所定のタイミングにかかわらず、カウント値を履歴データとして不揮発性記憶手段に格納するようにしてもよい。これにより、適切なタイミングで履歴データの格納動作を行うことがホスト装置の管理の下で可能となり、電源の遮断によって失われる動作回数を減少させることが可能となる。
【0016】
なお、本発明は上記の印刷装置の制御方法としても把握できるものであり、それぞれ同様の作用、効果を奏するものである。
また、本発明の制御方法は、制御装置で実行可能な制御プログラムとして供給することが可能であり、その制御プログラムを記録した記録媒体を介して提供することができる。記録媒体としてコンパクト・ディスク(CD−ROM)、フレキシブル・ディスク、ハード・ディスク、光磁気ディスク、ディジタル・ビデオ・ディスク(DVD−ROM)、もしくは、磁気テープを採用することができ、これらの記録媒体を用いて、既存の印刷装置にプログラムを導入することができる。さらに、これらのプログラムをWWW(World Wide Web)ウェブ・サイトに登録し、これを使用者にダウンロードさせて、既存の印刷装置にプログラムを導入することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、印刷装置の動作回数を複数の領域あるいはメモリに記憶させることにより、消耗品の消耗度と、消耗品に関わる交換できない部品の寿命、印刷装置の品質保証に係るデータの確認を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0019】
図1は、本発明の印刷装置の構成を示すブロック図である。図において印刷装置1は、印刷装置全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)2、メインメモリとしてのRAM(Random Access Memory)3、制御データ及びプログラム等を格納したROM(Read Only Memory)4、動作状況に関するデータを格納するフラッシュROM5、印字ヘッドによる用紙への印字等を実現する機構部6及びホスト装置との接続を行うインターフェース7を備えている。
【0020】
印刷装置1はホスト装置と接続され、インターフェース7によりデータ(印字データ、制御コマンド等)を送受信する。該送受信されるデータは、RAM3によってバッファリングされる。RAM3は、一時的な記憶領域としても働く。またインターフェース7は、ホスト装置と接続されている信号線によりCPU2をリセットする機能を合わせ持つ。
【0021】
CPU2は、印刷装置1の電源投入時及びリセット時(以下単に起動時という)にROM4からプログラムを読み出して該プログラムを実行し印刷装置1を制御する。またCPU2は、インターフェース7が受信してRAM3にバッファリングされたデータを解釈し、文字を印刷する制御コマンドであった場合はROM4からフォントデータを取り出して印刷イメージをRAM3に展開する。その後CPU2は、機構部6を駆動制御し印刷イメージを印刷する。機構部6は、ロール紙に印刷するための機構、すなわちロール紙送り部61、ロール紙印字用ヘッド62、ロール紙カッタ63と、単票用紙に印刷するための機構、すなわち単票用紙送り部64、単票用紙印字用ヘッド65とを備えている。本例ではさらに、MICR(Magnetic Ink Character Reader)用の磁気インク文字読み取りヘッド66を備えている。
【0022】
CPU2は、内部にタイマーを持ち一定の間隔でタイマー割り込みを発生させる。ROM4に格納されたタイマー割り込み処理プログラムにより時間が計測され、印刷装置1の稼動時間を計測する。
【0023】
フラッシュROM5は、CPU2により読み書き可能であり、電源の供給が無い場合でもその内容を保持可能である。CPU2は、印刷装置1の起動時にフラッシュROM5に記憶されている動作回数のカウント値をRAM3にロードし、その後の動作回数のカウントはRAM3のデータを更新することにより行う。そして、所定のタイミングでフラッシュROM5に書き込み記憶する。この時、CPU2の内部タイマーによって計測された印刷装置1の稼動時間も合わせて記憶する。
【0024】
前記のタイマー割り込み処理による時間計測では、印刷装置1の稼動時間を計測すると共に、RAM3に記憶されているカウント値をフラッシュROM5に記憶させる時間の計測も実施している。本例においては、タイマー割り込み処理による時間計測が2分経過したことを検出する毎にフラッシュROM5に記憶させている。この書き込みタイミングは、フラッシュROM5の寿命(書き込み可能回数)、印刷装置1のハードウェア構成等を考慮して適当な値に設定されている。例えば、印刷装置1の電源オフ処理が、電源スイッチがオフされると直ちに電源供給が停止する構成であるか、または電源スイッチがオフされてもソフトウェア処理により必要なデータを保存する等の処理を実施した後電源供給を停止する構成であるかによって書き込みタイミングは異なる。前者の場合は電源オフされるとデータが失われてしまうので、書き込みタイミングを短く例えば2分にし、後者の場合は電源オフされてもデータは保存できるので、書き込みタイミングは長く例えば1時間にすることができる。
【0025】
動作回数がカウントされ、フラッシュROM5に記憶される動作としては次のものがあり、それぞれに対してカウンタ番号を付けている。このカウンタ番号は後述する制御コマンドで使用する。
【0026】
・単票用紙紙送り行数 カウンタ番号a=10
カウンタ番号b=138
・単票用紙印字文字数 カウンタ番号a=11
カウンタ番号b=139
・ロール紙紙送り行数 カウンタ番号a=20
カウンタ番号b=148
・ロール紙ヘッド通電回数 カウンタ番号a=21
カウンタ番号b=149
・ロール紙カッタ駆動回数 カウンタ番号a=50
カウンタ番号b=178
・磁気インク文字読み取り回数 カウンタ番号a=60
カウンタ番号b=188
・製品稼動時間 カウンタ番号a=70
カウンタ番号b=198
上記のとおり、印刷装置1は一つの動作に対して二つのカウンタを備えている。カウンタ番号aのカウンタとカウンタ番号bのカウンタとは、それぞれ独立したカウンタであり、一つの動作に対してそれぞれのカウンタが更新されていく。またカウンタ番号aのカウンタは制御コマンドにより変更可能なカウンタであり、カウンタ番号bのカウンタは制御コマンドにより変更不可能なカウンタである。
【0027】
図2は、フラッシュROMへの書き込み制御を示すフローチャートである。フローチャートでは、印刷装置1の動作中においてRAM3上で更新されたカウント値を定期的にフラッシュROM5に書き込むタイミングを説明している。
【0028】
印刷装置1が起動されると、フラッシュROM5に記憶されたカウント値がRAM3にロードされ、内部タイマーによる時間計測が開始される(201)。内部タイマーによる時間計測が開始されてから、予め定められた時間が経過すると(202)、現在印字動作とデータ処理を行っていないと判断された場合に(203;いいえ)、フラッシュROM5に対するデータの書き込みを行う(204)。そして、内部タイマーをリセットし、次の経過時間が来るのを待つ(205)。ステップ203で、印字動作とデータ処理のどちらか一方でも行われていると判断された場合(203;はい)、フラッシュROM5への書き込みは行わない。このように、印字動作とデータ処理の両方が行われていない場合にのみフラッシュROM5への書き込みを行い、どちらか一方でも行われていた場合には書き込みを行わないので、該書き込みによる印字のスループットの低下を回避することができる。
【0029】
図3は、第2の実施形態に係るフラッシュROMへの書き込み制御を示すフローチャートである。本実施形態における制御が、先の実施形態における制御と異なる点は、印字動作とデータ処理のどちらか一方でも行われていた場合に時間計測を継続し、第2の時間以内に印字動作とデータ処理が行われていない状態とならないときに、印字動作とデータ処理の実行状態に拘わらず、フラッシュROM5への書き込みを行う点である。
【0030】
印刷装置1が起動され又はリセットされると、フラッシュROM5に記憶された各種データがRAM3上にロードされ、前記内部タイマーによる時間計測が開始される(301)。内部タイマーによる時間計測が開始されてから、予め定められた第1の時間(例えば、1時間)が経過すると(302)、現在印字動作とデータ処理を行っていないかが判断される(303)。印字動作とデータ処理の両方が行われていないと判断された場合に(303;いいえ)、フラッシュROM5に対するデータの書き込みを行う(304)。そして、内部タイマーをリセットし次の経過時間まで待機する(305)。
【0031】
ステップ303で、印字動作とデータ処理のどちらか一方でも行われていると判断された場合(303;はい)、直ぐにはフラッシュROM5への書き込みは行わず、内部タイマーによる時間計測を継続する(306)。
【0032】
内部タイマーが該一定時間より長い第2の時間(例えば、1時間10分)になるまでの間(306)、印字動作とデータ処理が行われていないか否か判断し(303)、どちらも行われていないと判断した場合には、フラッシュROM5への書き込みを行う(304)。内部タイマーが第2の時間を計測しても、印字動作とデータ処理のどちらか一方でも行われ続けていた場合には、印字動作とデータ処理の動作状態に拘わらずフラッシュROM5への書き込みを行う(304)。
【0033】
先の実施形態においては、印字動作とデータ処理のどちらか一方でも行われている場合、フラッシュROM5への書き込みが保留され続ける。その結果、データの書き込み間隔が空いてしまい、その間に印刷装置の電源がオフされたり、ホスト装置がインターフェース7を通して信号線によるCPU2のリセット等を行うとカウンタに誤差が生じたり、失われる制御情報があるという欠点がある。例えば、POS用印刷装置では、デイリーリポート(売上等に関する1日の集計データ)といったものは、数分間印字が継続される場合があり、書き込みが保留にされる時間が長い。また、印字を継続することによりカウント値や制御情報も変化するため、書き込みが行われないまま電源オフ等されたときに発生するカウンタの誤差は大きくなり、失われる制御情報が多くなる。
【0034】
本実施形態においては、このような欠点を解決するために印字動作とデータ処理のどちらか一方でも行われていると判断された場合にも、第2の時間までにフラッシュROM5への書き込みを行う。
【0035】
次に、ホスト装置からカウント値を読み書きする制御コマンドについて説明する。ただし、前記のとおりカウンタ番号bのカウント値を変更することはできない。
【0036】
図4に、カウンタ番号aのカウント値を変更する制御コマンドの例を示す。カウンタ変更コマンド40は、コマンドコード部41とパラメータ部42とで構成される。さらにコマンドコード部41は、拡張子43と機能コード44により構成され、パラメータ部42は、機能拡張用パラメータ45とカウンタ番号指定部46により構成される。拡張子43は文字コード<1DH>のASCII表記である。機能コード44は、カウンタ変更機能を指定するコード列であり、ふたつの文字コードを組み合わせて変更機能を指定している。機能拡張用パラメータ45は、カウンタ変更時のキーを指定する。カウンタ番号指定部46は、変更するカウンタ番号を指定する。
【0037】
CPU2は、カウンタ変更コマンド40により以下の処理を実行する。
【0038】
(1)機能拡張用パラメータ45により指定されたキーと所定のキーとを比較し、キーが一致した場合はカウント値の変更を実行する。キーが一致しない場合は、カウント値の変更を禁止する。
【0039】
(2)カウンタ番号指定部46により指定されたカウンタ番号が、変更可能なカウンタ番号aに該当するか比較し、指定されたカウンタ番号がカウンタ番号aに該当する場合は、指定されたカウンタのカウント値を変更する。本例においては、カウント値を0に初期化する。カウンタ番号指定部46により指定されたカウンタ番号がカウンタ番号aに該当しない場合は、カウント値の変更は行わない。よって、カウンタ番号bに該当するカウンタ番号のカウント値は変更されることがない。
【0040】
(3)ホスト装置から送信される印刷データを展開して1行単位の印刷バッファへ格納した後に印刷命令により印刷を実行する印刷モードが選択されており、かつ印刷バッファに未印刷のデータがある場合、カウンタの変更処理を実行しない。これによりカウンタ変更処理時にメモリエラーが発生してプリンタ装置の動作が停止することによる未印刷データの消滅を防止することができ、印刷終了していない印刷データの保護が可能となる。
【0041】
(4)ホスト装置から送信される印刷データを展開して複数行に対応する印刷バッファへ格納した後に印刷命令により印刷を実行する印刷モードが選択されており、かつ印刷領域が設定されている場合、カウンタの変更処理を実行しない。これによりカウンタ変更処理時にメモリエラーが発生してプリンタ装置の動作が停止することによる未印刷データの消滅を防止することができ、印刷終了していない印刷データの保護が可能となる。
【0042】
(5)書き込み時に「書き込みエラー」が発生した場合、エラー発生をLEDやブザー等で表示、またはエラーステータス送信や信号線の変化等によりホスト装置にその旨通知する。これによりオペレータまたはホスト装置は、印刷装置内で発生したエラーによりカウント値の変更が正常終了していないことを確認できる。
【0043】
(6)RAM3に記憶されているカウント値を、前記内部タイマー割り込み処理による時間計測でフラッシュROM5への書き込みタイミングでないときであっても、フラッシュROM5への書き込みを実施する。カウンタ変更コマンド40によりカウント値が変更されフラッシュROM5への書き込み前にインターフェース7を通してホスト装置が信号線によりCPU2をリセットすると変更されたカウント値が失われてしまうため、カウンタ変更コマンド処理時にフラッシュROM5への書き込みを合わせて行う。なお、フラッシュROM5への書き込み専用コマンドを設けて、カウント値を変更するコマンドとペアで用いることによっても同様の効果を有する。
【0044】
図5に、カウント値を読み出す制御コマンドの例を示す。カウンタ送信コマンド50は、コマンドコード部51とパラメータ部52とで構成される。さらにコマンドコード部51は、拡張子53と機能コード54により構成され、パラメータ部52は、機能拡張用パラメータ55と、カウンタ番号指定部56により構成される。拡張子53は文字コード<1DH>のASCII表記である。機能コード54は、カウンタ送信機能を指定するコード列であり、ふたつの文字コードを組み合わせて送信機能を指定している。機能拡張用パラメータ55は、カウンタ送信時のキーを指定する。カウンタ番号指定部56は、送信するカウンタ番号を指定する。
【0045】
CPU2は、カウンタ送信コマンド50により以下の処理を実行する。
【0046】
(1)機能拡張用パラメータ55により指定されたキーと所定のキーとを比較し、キーが一致した場合は、カウント値の送信を実行する。キーが一致しない場合は、カウント値の送信を禁止する。
【0047】
(2)カウンタ番号指定部56により指定されたカウンタ番号が、カウントされている番号であった場合は、RAM3に記憶されているカウント値を読み出し送信する。カウンタ番号指定部56により指定されたカウンタ番号がカウントされていない番号であった場合は、送信コマンドは無視する。
【0048】
(3)送信時に「読み出しエラー」が発生した場合、エラー発生をLEDやブザー等で表示、またはエラーステータス送信や信号線の変化等によりホスト装置にその旨通知する。これによりオペレータまたはホスト装置は、印刷装置内で発生したエラーによりカウント値が送信されないことが確認できる。
【0049】
(4)送信データには[ヘッダコード]または[ターミネートコード]を付加することができる。これによりホスト装置は送信データの開始と終了が簡単に認識できる。
【0050】
またCPU2は、ホスト装置へカウント値を送信する前に次の処理を実行する。
【0051】
(5)第1ステップとしてカウント値の換算を行う。
【0052】
カウント値は寿命等を判断する数値として、カウントしたそのものの数値で分かり易いものと、カウントした数値そのものでは分かり難いものがある。分かり易いものはそのままのデータを送信し、分かり難いものは寿命等の判断をし易いデータに換算してから送信する。
【0053】
一例として、単票用紙の紙送り行数について説明する。単票用紙送り部64の駆動源は、ステッピングモータ(図示せず)である。CPU2は、このステッピングモータのステップ数をカウントしカウント値として記憶している。使用者は、このステップ数ではどの程度の紙送りが実施されたのかが非常に分かり難い。本例の印刷装置1の1行分の紙送りは1/6インチであり、単票用紙送り部64はステッピングモータを24ステップ駆動すると1/6インチ単票用紙を送る構成になっている。そこでカウント値を24で割り印字行数に換算した値を用意する。
【0054】
(6)第2ステップとしてカウント値及びカウント値の換算値を送信用のデータに変換する。
【0055】
カウント値やカウント値の換算値をそのままホスト装置へ送信すると、数値によっては他の制御コードと一致してしまい正常な動作が行えなくなる、また7ビット長のデータは送信できない等の問題が発生する場合がある。そこで、カウント値または換算値を10進数の文字コードに変換してから送信する。
【0056】
一例として、単票用紙の紙送り行数の換算値が「00001100H」である場合について説明する。この場合、送信データは「00H、00H、11H、00H」の4バイトになるが、ここで「11H」はXONコードと一緒でありハンドシェイク不良が発生してしまう可能性がある。そこで、「00001100H」を10進数「4352D」に変換し、ホスト装置へは「34H、33H、35H、32H」という4バイトを送信する。
【0057】
本発明の印刷装置1は、ホスト装置からのデータを印刷する以外にテスト印字を行うモード(以下テスト印字モードという)を有している。本例では、図示しない紙送りスイッチを押しながら電源を投入することによりテスト印字モードへ移行する。
【0058】
このテスト印字モードにおいて印刷装置1は、カウンタ送信コマンド50を受けてホスト装置に送信するカウント値と同じ内容を印刷する。図6にその印刷結果を示す。動作回数をカウントしている項目60、カウント項目60に対応したカウンタ番号aのカウント値60a及びカウンタ番号bのカウント値60bを印刷する。
【0059】
本構成によれば、印刷装置1がホスト装置に接続されていない単体の状態であってもカウント値を確認することができる。
【0060】
また、このテスト印字モードの印字動作によってもカウントは進行する。しかし、テスト印字モードは、本例の書き込み間隔である2分間は継続しないためRAM3の内容をフラッシュROM5に書き込むタイミングが来る前に電源を落されてしまう場合がある。この場合においてもカウント値が失われないように、前記内部タイマー割り込み処理による時間計測でフラッシュROM5への書き込みタイミングでない場合であっても、テスト印字モードが終了したならばフラッシュROM5への書き込みを実施する。
【0061】
以上、本発明の一実施形態を図面に沿って説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用を行うことができる範囲が含まれる。
【0062】
前記実施形態においては、リセット可能なカウンタとリセット不可能なカウンタとを有するプリンタ装置を示したが、部品交換時におけるカウント値を不揮発性メモリに記憶しておくことにより、いずれか一方のカウンタのみでも同様の効果を有する。例えば、リセット可能なカウンタのみを有する場合は、現在のカウント値と過去のカウント値の和から総動作回数を知ることができる。また、リセット不可能なカウンタのみを有する場合は、現在のカウント値と前回の部品交換時のカウント値との差から部品寿命を知ることができる。
【0063】
前記実施形態においては、印刷装置の動作履歴データを記憶する不揮発性メモリとしてフラッシュROMを示したがEEPROMを用いても良い。また、不揮発性メモリに記憶するデータは、前記実施形態に示したものに限らず、各種の印刷装置の動作状況に関するデータを対象とすることができるし、また前記実施形態に示したものの一部を対象としても良い。不揮発性メモリはまた、動作状況に関するデータ以外のデータ、例えばフォントデータやプログラム等を共に格納するように構成しても良い。
【0064】
また、総稼働時間や書き込み時間の計時装置として、CPU内蔵タイマーを示したが、リアルタイムクロック等のデバイスを用いても良い。
【0065】
更に、前記実施形態においては一定時間経過毎に所定の処理の実行状態を判断するように構成したが、印刷装置の動作に伴って変化する値、例えば印字枚数や印字行数に基づく所定間隔毎にこの判断を行うように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1の印刷装置におけるフラッシュROMへの書き込み制御を示すフローチャート。
【図3】図1の印刷装置における他のフラッシュROMへの書き込み制御を示すフローチャート。
【図4】図1の印刷装置におけるカウンタ変更コマンドを説明するための図。
【図5】図1の印刷装置におけるカウンタ送信コマンドを説明するための図。
【図6】図1の印刷装置におけるテスト印字モードでの印字例を示す図。
【符号の説明】
【0067】
1・・・印刷装置
2・・・CPU
3・・・RAM
4・・・ROM
5・・・フラッシュROM
6・・・機構部
7・・・インターフェース
40・・・カウンタ変更コマンド
50・・・カウンタ送信コマンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト装置に接続され、該ホスト装置からのコマンド及びデータに基づいて印刷を行う印刷装置において、
当該印刷装置に電源を供給しない状態においても記憶内容を保持可能な不揮発性記憶手段と、
当該印刷装置の動作の回数をカウントする第1動作回数カウント手段と、
当該印刷装置の動作と同一の動作の回数をカウントする第2動作回数カウント手段と、
前記第1動作回数カウント手段の第1カウント値及び前記第2動作回数カウント手段の第2カウント値を、それぞれ、第1履歴データ及び第2履歴データとして前記不揮発性記憶手段に所定のタイミングで格納する動作回数格納手段と、
前記ホスト装置から受信した第1コマンドに応じて、前記第1カウント値及び前記第1履歴データを初期化する動作回数変更手段と、
前記ホスト装置から受信した第2コマンドに応じて、前記第1及び/又は第2カウント値を前記ホスト装置に送信する動作回数送信手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置において、
前記第1及び第2動作回数カウント手段を複数有することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1〜2の何れかに記載の印刷装置において、
当該印刷装置の稼働時間を計測する稼働時間計測手段と、
前記稼働時間計測手段が計測する所定時間毎に、当該印刷装置が所定の処理を行っているか否かを判断する判断手段とを有し、
前記動作回数格納手段は、前記判断手段により所定の処理を行っていないと判断された場合にのみ、前記履歴データを前記不揮発性記憶手段に格納することを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1〜2の何れかに記載の印刷装置において、
当該印刷装置の稼働時間を計測する稼働時間計測手段と、
前記稼働時間計測手段が計測する所定時間毎に、当該印刷装置が所定の処理を行っているか否かを判断する判断手段とを有し、
前記動作回数格納手段は、前記判断手段により所定の処理を行っていないと判断された場合、前記履歴データを前記記憶手段に格納し、前記判断手段により所定の処理を行っていると判断された場合、前記稼働時間計測手段により前記所定時間よりも大きな第2の時間が計測されたとき、又は前記所定時間の経過後所定の処理を行っていないと判断されたときに、前記履歴データを前記不揮発性記憶手段に格納することを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の印刷装置において、
前記カウント値を寿命判定指標値に換算する動作回数換算手段を有し、
前記動作回数送信手段は、前記寿命判定指標値を送信することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載の印刷装置において、
前記カウント値を寿命判定指標値に換算する動作回数換算手段と、
前記カウント値及び/又は前記寿命判定指標値をコード化するデータ変換手段とを有し、
前記動作回数送信手段は、前記コード化データを送信することを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1〜4の何れかに記載の印刷装置において、
前記カウント値を寿命判定指標値に換算する動作回数換算手段と、
前記カウント値及び/又は前記寿命判定指標値を表示する動作回数表示手段とを有することを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項7記載の印刷装置において、
前記動作回数表示手段は、前記カウント値及び/又は前記寿命判定指標値を印刷表示する動作回数印刷手段を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
ホスト装置に接続され、該ホスト装置からのコマンド及びデータに基づいて印刷を行う印刷装置を制御する方法において、
当該印刷装置の動作の回数をカウントする第1動作回数カウント工程と、
当該印刷装置の動作と同一の動作の回数をカウントする第2動作回数カウント工程と、
前記第1動作回数カウント工程の第1カウント値及び前記第2動作回数カウント工程の第2カウント値を、それぞれ、第1履歴データ及び第2履歴データとして不揮発性記憶手段に所定のタイミングで格納する動作回数格納工程と、
前記ホスト装置から受信した第1コマンドに応じて、前記第1カウント値及び前記第1履歴データを初期化する動作回数変更工程と、
前記ホスト装置から受信した第2コマンドに応じて、前記第1及び/又は第2カウント値を前記ホスト装置に送信する動作回数送信工程と、
を有することを特徴とする印刷装置の制御方法。
【請求項10】
請求項9記載の印刷装置の制御方法において、
前記第1及び第2カウント工程では、当該印刷装置の複数の動作の回数をカウントすることを特徴とする印刷装置の制御方法。
【請求項11】
請求項9〜10の何れかに記載の印刷装置の制御方法において、
当該印刷装置の稼働時間を計測する稼働時間計測工程と、
前記稼働時間計測工程が計測する所定時間毎に、当該印刷装置が所定の処理を行っているか否かを判断する判断工程とを有し、
前記判断工程により所定の処理を行っていないと判断された場合にのみ、前記履歴データを前記不揮発性記憶手段に格納することを特徴とする制御方法。
【請求項12】
請求項9〜10の何れかに記載の印刷装置の制御方法において、
当該印刷装置の稼働時間を計測する稼働時間計測工程と、
前記稼働時間計測工程が計測する所定時間毎に、当該印刷装置が所定の処理を行っているか否かを判断する判断工程とを有し、
前記判断工程により所定の処理を行っていないと判断された場合、前記履歴データを前記不揮発性記憶手段に格納し、前記判断工程により所定の処理を行っていると判断された場合、前記稼働時間計測工程により前記所定時間よりも大きな第2の時間が計測されたとき、又は前記所定時間の経過後所定の処理を行っていないと判断されたときに、前記履歴データを前記不揮発性記憶手段に格納することを特徴とする制御方法。
【請求項13】
請求項9〜12の何れかに記載の印刷装置の制御方法において、
前記カウント値を寿命判定指標値に換算する動作回数換算工程を有し、
前記動作回数送信工程においては、前記寿命判定指標値を送信することを特徴とする制御方法。
【請求項14】
請求項9〜12の何れかに記載の印刷装置の制御方法において、
前記カウント値を寿命判定指標値に換算する動作回数換算工程と、
前記カウント値及び/又は前記寿命判定指標値をコード化するデータ変換工程とを有し、
前記動作回数送信工程においては、前記コード化データを送信することを特徴とする制御方法。
【請求項15】
請求項9〜12の何れかに記載の印刷装置の制御方法において、
前記カウント値を寿命判定指標値に換算する動作回数換算工程と、
前記カウント値及び/又は前記寿命判定指標値を表示する動作回数表示工程とを有することを特徴とする制御方法。
【請求項16】
請求項15記載の印刷装置の制御方法において、
前記動作回数表示工程は、前記記憶手段に格納された前記カウント値及び/又は前記寿命判定指標値を印刷表示する動作回数印刷工程を有することを特徴とする制御方法。
【請求項17】
請求項9〜16の何れかに記載の印刷装置の制御方法の各工程をコンピュータに実現させるためのプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−192910(P2006−192910A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106234(P2006−106234)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【分割の表示】特願平10−344684の分割
【原出願日】平成10年12月3日(1998.12.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】