説明

印刷装置、ノズル検査装置、ノズル検査方法およびコンピュータープログラム

【課題】ドット抜け検出だけでなく、インク滴の噴射状態を検査する。
【解決手段】インク滴を噴射するノズルが設けられた印刷ヘッド13と、ノズルからのインク滴の噴射を検査する検査手段とを備え、検査手段は、印刷ヘッド13が所定の検査位置に移動した状態でノズルに対向する検出用電極413と、ノズルと検出用電極413との間に電圧を印可する電源51と、ノズルからのインクの噴射により検出用電極413に生じる電位変化を検出する検出部(52〜57)とを有し、検出部は、ノズルと検出用電極413との間隔を第1の所定値とする第1のモードにおいて、インク滴の噴射の有無に相当する電位変化を検出し、ノズルと検出用電極との間隔を第1の所定値より大きい第2の所定値とする第2のモードにおいて、インク滴の噴射状態に相当する電位変化の波形を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、ノズル検査装置、ノズル検査方法およびコンピュータープログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷ヘッドのノズルを検査する技術として、特許文献1には、印刷ヘッドに設けられた複数のノズルからの記録液(インク)の噴射の有無を、帯電した記録液の噴射に伴って発生する測定端子(ノズルと検出用電極)間の電圧の変化を利用して検査するノズル検査装置が開示されている。このノズル検査装置は、測定端子間に所定の印加方向の電圧を印加して、記録液を所定の電位側に帯電させる電圧印加部と、電圧の変化を、測定端子間の電圧値の増減として取得する電圧値増減取得部と、取得された電圧値の増減から、複数のノズルからの記録液の噴射の有無を判定する噴射有無判定部とを備える。
【0003】
また、特許文献2、3にはそれぞれ、特許文献1に示されるようなノズル検査おいて、ノイズの発生により、噴射不良を発生する不良ノズル(ドット抜けノズル)を正確に検出することができない課題を解決する技術が開示されている。特許文献2に開示の技術では、検出した検出用電極の電位変化に基づき、検出用電極を通じて生じた電流の漏れの有無を判定している。特許文献3に開示の技術では、全てのノズルから液体を噴射させない非噴射期間における電位変化に基づいて、ノズルからの液体噴射の有無の検査が正常に行われたか否かを判定している。
【0004】
特許文献4には、印刷媒体の種類に応じてプラテンに対する印刷ヘッドの高さ(プラテンギャップ)を調整した場合に、その印刷ヘッドの高さに応じて、検出用電極が設けられているフラッシュボックスの高さを調整することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−238866号公報
【特許文献2】特開2010−64309号公報
【特許文献3】特開2010−58449号公報
【特許文献4】特開2010−194795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1−4記載の技術において、ノズルと検出用電極との間隔は、印刷ヘッドのノズルから帯電したインク滴を検出用電極に噴射することによって発生する信号を検出する検出回路(特許文献1における電圧値増減取得部)の動作電圧に対応して設定される。特許文献1−4の記載によれば、ノズルと検出用電気極との間隔は、検出用電極に発生している信号の波形全体が検出回路で検出できるように最適化されている。
【0007】
しかし、印刷ヘッドの特性バラつき、ノズルの組み立て公差や温度変化があると、製造工程時に調整はしていても変動要素があり、検出用電極に発生する信号の波形が変化してしまうことがある。そのため現実には、信号の波形そのものではなく、信号の波形のピーク値が検出回路のダイナミックレンジを超えるように増幅して、信号の有無により、ドット抜けノズルを検出している。
【0008】
一方、印刷ヘッドのノズルは、使用中に、経年変化や材質の劣化が生じることがある。そのような劣化は、たとえばソルベントインクのような非水溶性の有機溶剤を含むインクを使用している場合に生じる傾向がある。このため、その印刷ヘッドが搭載された印刷装置の稼動中の適切なタイミングで、ドット抜け検出だけでなく、インク滴の噴射状態を検査することが望ましい。
【0009】
本発明は、ドット抜け検出だけでなく、インク滴の噴射状態を検査することのできる印刷装置、ノズル検査装置、ノズル検査方法およびコンピュータープログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点によると、インク滴を噴射するノズルが設けられた印刷ヘッドと、ノズルからのインク滴の噴射を検査する検査手段とを備え、検査手段は、印刷ヘッドが所定の検査位置に移動した状態でノズルに対向する検出用電極と、ノズルと検出用電極との間に電圧を印可する電源と、ノズルからのインクの噴射により検出用電極に生じる電位変化を検出する検出部とを有し、検出部は、ノズルと検出用電極との間隔を第1の所定値とする第1のモードにおいて、インク滴の噴射の有無に相当する電位変化を検出し、ノズルと検出用電極との間隔を第1の所定値より大きい第2の所定値とする第2のモードにおいて、インク滴の噴射状態に相当する電位変化の波形を検出することを特徴とする印刷装置が提供される。
【0011】
この構成によれば、ノズルと検出用電極との間隔を変更することで、ドット抜け検出だけでなく、インク滴の噴射状態を検査することができ、たとえばノズルの劣化具合、印刷ヘッドの特性バラつき、ノズル等の組み立て公差、温度変化等といったことを検出することが可能となる。
【0012】
第1の所定値は、検出部の電位検出範囲を超えるピーク値の電位変化が検出用電極に発生する値に設定され、第2の所定値は、検出部の電位検出範囲で検出用電極に電位変化が発生する値に設定される。
【0013】
第1の所定値を、検出部の電位検出範囲を超えるピーク値の電位変化が検出用電極に発生する値に設定することで、ドット抜け検出を確実に行うことができる。一方、第2の所定値を、検出部の電位検出範囲で検出用電極に電位変化が発生する値に設定することで、経時変化等によるノズルの劣化具合を知ることができる。
【0014】
ノズルと検出用電極との間隔は、印刷ヘッドと検出用電極が設けられるインク受け領域との少なくとも一方を動かすことにより行われる。具体的には、印刷ヘッドの高さ方向、液体上領域の高さ方向、あるいはその双方を変更することができる。
【0015】
検査手段は、ノズル検査装置として、印刷装置以外でも利用することができる。すなわち、本発明の第2の観点によると、ノズルからの液滴の噴射を検査するノズル検査装置において、ノズルに対向して配置される検出用電極と、ノズルと検出用電極との間に電圧を印可する電源と、ノズルからの液滴の噴射により検出用電極に生じる電位変化を検出する検出部とを有し、検出部は、ノズルと検出用電極との間隔を第1の所定値とする第1のモードにおいて、液滴の噴射の有無に相当する電位変化を検出し、ノズルと検出用電極との間隔を第1の所定値より大きい第2の所定値とする第2のモードにおいて、液滴の噴射状態に相当する電位変化の波形を検出することを特徴とするノズル検査装置が提供される。
【0016】
本発明の第3の観点によると、印刷ヘッドのノズルからのインクの噴射を検査する方法であり、ノズルを検出用電極に対向させ、検出用電極とノズルとの間に電圧を印加し、ノズルからのインクの噴射により検出用電極に生じる電位変化を検出するノズル検査方法において、第1のモードでは、ノズルと検出用電極との間隔を第1の所定値として、インクの噴射の有無に相当する電位変化を検出し、第2のモードでは、ノズルと検出用電極との間隔を第1の所定値より大きい第2の所定値として、インクの噴射状態に相当する電位変化の波形を検出することを特徴とするノズル検査方法が提供される。
【0017】
第1のモードの検査と記第2のモードの検査とを、印刷ヘッドが取り付けられた印刷装置の稼働中の所定のタイミングで行い、第2のモードの検査を、第1のモードの検査より少ない頻度で実行することができる。
【0018】
第1のモードの検査は、ドット抜け検出のためのものであり、印刷装置が稼動中にも、しばしば実行する必要がある。これに対して第2のモードの検査は、ノズルの劣化具合を調べるものなので、それほど頻繁に行う必要はない。
【0019】
本発明の第4の観点によると、印刷装置の制御コンピューターにインストールされ、その制御コンピューターに、印制装置の印刷ヘッドに設けられるノズルからのインクの噴射を検査するステップを実行させるコンピュータープログラムにおいて、検査するステップとして、印刷装置の印刷ヘッドを所定の検査位置に移動させて印刷ヘッドのノズルを検査位置に設けられている検出用電極に対向させる第1のステップと、ノズルと検出用電極との間に電源から電圧を印可させるステップ第2のステップと、ノズルと検出用電極との間隔を第1の所定値に制御し、ノズルからのインクの噴射により検出用電極に生じる電位変化を検出する検出部に、インクの噴射の有無に相当する電位変化を検出させる第3のステップと、ノズルと検出用電極との間隔を第1の所定値より大きい第2の所定値に制御し、検出部に、インクの噴射状態に相当する電位変化の波形を検出させる第4のステップとを制御コンピューターに実行させることを特徴とするコンピュータープログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の全体構成を示す図である。
【図2】図1に示す印刷装置を機能ブロックにより示す図である。
【図3】印刷ヘッドのノズル配置例を示す図である。
【図4】キャップ機構を説明する図である。
【図5】キャップ機構の一部を構成するキャップの平面図である。
【図6】キャップ機構の動作を説明する図である。
【図7】キャップ機構の動作を説明する図である。
【図8】キャップ機構の動作を説明する図である。
【図9】ノズル検査部の構成を説明する図である。
【図10】検出制御部の構成例を示す図である。
【図11】ノズルNzの検査時に用いる駆動信号COMの一例を示す図である。
【図12】駆動信号COMでインクを噴射させたときの電圧信号SGを説明する図である。
【図13】センサーギャップの変更を説明する図である。
【図14】出力信号のセンサーギャップ特性を説明する図である。
【図15】ノズル検査におけるインクの影響を説明する図である。
【図16】ノズル検査のフローチャートである。
【図17】第1のモードのノズル検査のフローチャートである。
【図18】第2のモードのノズル検査のフローチャートである。
【図19】図9に示す検出回路の変形例を示す図である。
【図20】図9に示す検出回路の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
[全体構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る印刷装置10の全体構成を示す図である。この印刷装置10は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色インクが収納されたインクカートリッジ11を備える。このインクカートリッジ11は、キャリッジ12に装着されている。キャリッジ12には、印刷ヘッド13が設けられる。印刷ヘッド13には、各インク色ごとに、インク滴を噴射する複数のノズルNz(図3参照)が設けられている。キャリッジ12が図面左右方向(主走査方向)に移動し、その一方で印刷媒体14が図面の縦方向(副走査方向)に移動するとき、印刷ヘッド13のノズルNzからインク滴を噴射することで、印刷媒体14に所定の画像等を印刷することができる。
【0023】
キャリッジ12は、キャリッジベルト15に固定され、キャリッジベルト15がキャリッジモータ16によって駆動されるのに伴って、フレーム17に固定されたガイド(案内軸)18に沿って移動する。また印刷媒体14は、フレーム17に固定された駆動モータ19により駆動される。一方、印刷媒体14は、図示しない紙送りローラーなどによって、図面の縦方向(副走査方向)に搬送される。このとき、印刷ヘッド13のノズルNzから画像データに相応した所定のインク滴が噴射されることによって、印刷媒体14に印刷画像が正しく形成される。逆に、インク滴が噴射されないと、印刷画像が正しく形成されないことになる。
【0024】
印刷ヘッド13のノズルNzからインク滴が噴射されるか否かを検査するため、印刷装置10には、検査ボックス20が設けられる。ノズル検査時には、キャリッジ12を検査ボックス20の位置に移動させ、所定のノズル検査処理を行って、各ノズルNzからのインク滴の噴射の有無を検査する。そして、検査の結果、不噴射のノズルNzがあった場合には、検査ボックス20内または検査ボックス20とは別に設けられたクリーニングボックス内にて、所定のクリーニング処置を行ってノズルNzをクリーニングする。
【0025】
これらの動作についての主な制御は、フレーム17に取り付けられたメインコントロール基板21と、キャリッジ12の端面に取り付けられたサブコントロール基板22とによって行われる。これらの基板21、22は、フレキシブル基板23によって接続され、それぞれの基板間でデータがやり取りできるように構成されている。
【0026】
[機能ブロック構成]
図2は、図1に示す印刷装置10を機能ブロックにより示す図である。印刷装置10は、用紙搬送機構31、キャリッジ移動機構32、駆動信号生成回路33、ヘッド制御部34、ノズル検査部35、キャップ機構36、検出器群37、および印刷制御部38を有する。印刷制御部38は、インタフェース部38a、CPU(中央処理装置)38bおよびメモリー38cを有する。ヘッド制御部34は、サブコントロール基板22上に設けられる。印刷制御部38および駆動信号生成回路33は、メインコントロール基板21上に設けられる。
【0027】
用紙搬送機構31は、駆動モータ19を含み、印刷媒体14を搬送方向に搬送させる。キャリッジ移動機構32は、キャリッジベルト15、キャリッジモータ16およびガイド18を含み、ヘッド制御部34および印刷ヘッド13が取り付けられたキャリッジ12を、所定の移動方向(たとえば印刷媒体14の幅方向)に移動させる。
【0028】
駆動信号生成回路33は、駆動信号COM(図11を参照)を生成する。この駆動信号COMは、印刷媒体14への印刷時に、ヘッド制御部34を介して、印刷ヘッド13へ印加される。また、駆動信号COMは、ノズルNzの動作を検査するノズル検査時や、ノズルNzの噴射能力を回復させるフラッシング動作時にも、印刷ヘッド13に印加される。駆動信号COMの波形は、印刷時、ノズル検査時、およびフラッシング動作時のそれぞれにおいて、適宜定められる。すなわち、各動作に適した波形の駆動信号COMが生成される。駆動信号COMには、噴射パルスPSが含まれる。噴射パルスPSとは、ノズルNzから滴状のインクを噴射させるためのピエゾ素子に、所定の動作を行わせる波形(電位の変化パターン)をいう。
【0029】
ヘッド制御部34は、印刷制御部38からのヘッド制御信号に基づき、印刷ヘッド13を制御する。たとえば、駆動信号COMの印刷ヘッド13への印加を制御する。ノズル検査部35は、印刷ヘッド13の各ノズルNzの検査を行う。キャップ機構36は、ノズルNzからのインク溶媒の蒸発を抑制したり、ノズルNzの噴射能力を回復させるため、各ノズルNzからインクを吸引する吸引動作を行ったりする。検出器群37は、印刷装置10の状況を監視する複数の検出器によって構成される。これらの検出器による検出結果は、印刷制御部38に出力される。
【0030】
印刷制御部38は、印刷装置10における全体的な制御を行う。すなわち、コンピューターなどから受け取った印刷データや検出器群37からの検出結果に基づいて制御対象部を制御し、印刷媒体14に画像を印刷させる。また、印刷制御部18は、電源オンに伴う初期動作に伴って、あるいは印刷動作の実行に関連して、ノズル検査動作を行わせる。
【0031】
印刷制御部38の各部の動作を説明する。インタフェース部38aは、コンピューターなど外部の装置との間でデータの受け渡しを行う。CPU38bは、印刷装置10の全体的な制御を行う。メモリー38cは、コンピュータープログラムを格納する領域や作業領域等を確保する。CPU38bは、メモリー38cに記憶されているコンピュータープログラムに従い、各制御対象部を制御する。たとえば、CPU38bは、用紙搬送機構31やキャリッジ移動機構32、キャップ機構36が有する吸引ポンプを制御する。また、印刷ヘッド13の動作を制御するためのヘッド制御信号をヘッド制御部34に送信したり、駆動信号COMを生成させるための制御信号を駆動信号生成回路33に送信したりする。さらに、ノズル検査部35と通信をし、必要な情報の送受信をする
【0032】
[ノズル配置]
図3は、印刷ヘッド13のノズル配置例を示す図である。この例では、ノズル群として、ノズルNzが1/180インチピッチで設けられたノズル列を複数有する。各ノズル列は、それぞれ噴射するインクの種類を定めることができる。この印刷ヘッド13には4つのノズル列が設けられている。具体的には、図3の左側から順に、ブラックインクノズル列Nk、イエローインクノズル列Ny、シアンインクノズル列Nc、およびマゼンタインクノズル列Nmである。各ノズル列は、そのノズル列に付した名前と同じ色のインクを噴射する。各ノズル列は同じ数のノズルNzで構成される。図3の印刷ヘッド13では、たとえば、1つのノズル列が180個のノズルNzで構成されているものが示されている。
【0033】
[キャップ機構36の詳細]
図4は、キャップ機構36を説明する図である。図5は、キャップ機構36の一部を構成するキャップ41の平面図である。キャップ機構36は、ノズル群が臨む空間を形成するキャップ41と、キャップ41を支持するとともに斜め上下方向に移動可能なスライダ部材42とを有する。
【0034】
キャップ41は、長方形状の底部(図示せず)と、底部の周縁から起立する側壁部411とを有し、ノズル群が設けられているノズルプレート131と対向する上面が開放された薄手の箱状をしている。そして、底部と側壁部411で囲まれた空間には、キャッピング時にノズル群が収容される。
【0035】
この空間には、フェルトやスポンジ等の多孔質材で作製されたシート状の保湿部材412が配置される。この保湿部材412にはインクが着弾するため飛散を抑制でき、キャッピング時において保湿部材412から蒸発したインク溶媒が空間に留まる。これにより、ノズルNzからのインク溶媒の蒸発を抑制できる。
【0036】
また、保湿部材412の表面には、ノズル検査部35の一部である検出用電極413が配設されている。この検出用電極413は、後述するノズル検査動作で用いられ、この動作時には600V〜1kV程度の高電位になる。例示した検出用電極413は、二重の矩形状に設けられた枠部413aと、枠部413aの対角同士を結ぶ対角線部413bと、枠部413aの各辺における中点同士を結ぶ十字部413cとを有している。この構造によって、広い範囲に亘って一様に帯電されるようにしている。
【0037】
キャップ41の空間には、廃液チューブ414が接続されている。また、廃液チューブ414の途中には、図示しない吸引ポンプが接続されている。この吸引ポンプとしては、たとえば、ローラーでチューブを挟んでチューブ内の流体(空気や液体等)を下流側に押し流すチューブポンプが用いられる。この吸引ポンプは、印刷制御部38によって動作が制御される。吸引ポンプを動作させると、キャップ41の空間が負圧化される。これにより、キャップ41側からインクや空気を吸引することができる。なお、吸引されたインクは、廃液貯留部(図示せず)に貯められる。
【0038】
また、キャップ41には、ワイパー43が取り付けられている。ワイパー43は、ノズル面を摺動し、そのノズル面に付着しているインクを掻き取ることを可能としている。
【0039】
図6は、キャップ機構36の退避状態を説明する図である。図7は、フラッシング動作やノイズ検査動作を行う場合におけるキャップ機構36の状態を説明する図である。図8は、キャップ41がノズル面に密着した状態を説明する図である。
【0040】
スライダ部材42は、キャリッジ12がホームポジションから外れた状態において、図示しないスプリングに引っ張られて、図6において左側(アーム部424が倒れたときの位置)に位置している。これを「退避状態」という。この退避状態では、キャップ41は、ノズルプレート131の表面(以下、ノズル面ともいう)よりも十分に低い位置に位置付けられる。キャリッジ12がホームポジション側へ移動すると、スライダ部材42はスプリングの引っ張り力に抗して移動する。これは、スライダ部材42に設けた当接部421にキャリッジ12が当接し、この当接部421をホームポジション側へ移動させるからである。
【0041】
ここで、スライダ部材42はアーム部424によって持ち上げ可能に設けられているが、そのアーム部424は、スライダ部材42の移動とは連動しない固定部材423によって軸支されている。そのため、スライダ部材42の移動に伴って、スライダ部材42に設けた支持軸422側の部分は、固定部材423の案内用の長孔423aに沿って上昇する。また、キャップ41側の部分は、アーム部424の回動によって持ち上げられた状態となる。
【0042】
キャリッジ12のホームポジション側への移動に伴い、キャップ41は、ノズル面と対向した状態を維持しつつ、ノズル面側に移動する。すなわち、斜め上方へ移動する。図7に示すように、ホームポジションよりも少し手前の位置までキャリッジ12が到達すると、キャップ41の開口縁(側壁部411の上端)は、ノズル面には触れないがノズル面のすぐ近くまで移動する。また、図8に示すように、キャリッジ12がホームポジションに到達すると、キャップ41の開口縁はノズル面に当接する。このとき、キャップ41の空間には、ノズル群を構成する各ノズルNzが収容される。
【0043】
このキャップ機構36は、印刷装置10の動作や状態に応じて位置を変える。たとえば、通常の印刷動作時では、図6に示すように、キャップ41は退避した状態になっている。電源オフ時や長期休止時には、図8に示すように、キャップ41の上端をノズル面に密着させて、ノズルNzからのインク溶媒の蒸発を抑制する。そして、ノズルNzの噴射能力を回復させるため、各ノズルNzからインクを吸引する吸引動作(吸引回復動作に相当する)を行う場合にも、キャップ41の上端をノズル面に密着させて、空間の気密性を高める。すなわち、この密着状態で吸引ポンプを動作させると、キャップ41の空間を負圧化できる。この負圧はノズルNzに作用する。このため、ノズルNzを通じて印刷ヘッド13内のインクをキャップ41の空間内に吸い出すことができる。また、ノズルNzの噴射能力を回復させるため、各ノズルNzから連続的にインク滴を噴射させるフラッシング動作(噴射回復動作に相当する)を行う場合には、図7に示すように、ノズル面とキャップ41との間に僅かな隙間を空ける。
【0044】
ノズルNzの噴射能力を回復させるための回復動作に関し、前述した吸引動作およびフラッシング動作の他に、微振動動作がある。微振動動作は、インク滴が噴射されない程度の圧力変化を印刷ヘッド13内のインクに与えることで、メニスカス(ノズルNzで露出しているインクの自由表面)を噴射側と引き込み側とに移動させ、攪拌によってノズル付近の増粘インクを分散させる動作である。これらの吸引動作、フラッシング動作および微振動動作に関し、ノズルNzの噴射能力を回復させる度合いは、吸引動作が最も高く、微振動動作が最も低い。また、各動作におけるインクの消費量は、吸引動作が最も多く、微振動動作が最も少ない。各回復動作にはこのような特性の違いがあるため、印刷装置10では、状態の違いに応じて各回復動作を使い分けている。
【0045】
[ノズル検査部35の詳細]
図9は、ノズル検査部35の構成を説明する図である。なお、ノズル検査部35は、請求項でいうノズル検査装置、検査手段の一例に対応する。また、検出用コンデンサ54、増幅器55、および検出制御部57等は、請求項でいう検出部の一例に対応する。ノズル検査部35は、検出用電極413に加え、検出回路50を有する。検出回路50は、ノズルNzと検出用電極413との間に電圧を印可する電源として、高圧電源ユニット51を有する。また、検出回路50は、ノズルNzからのインクの噴射により検出用電極413に生じる電位変化を検出する検出部として、制限抵抗52、検出抵抗53、検出用コンデンサ54、増幅器55、平滑コンデンサ56、および検出制御部57を有する。
【0046】
高圧電源ユニット51は、請求項でいう電源の一例に対応し、検出用電極413を所定の電位に設定する。本実施の形態の高圧電源ユニット51は、600V〜1kV程度の直流電源によって構成され、検出制御部57からの制御信号によって動作が制御される。制限抵抗52および検出抵抗53は、高圧電源ユニット51の出力端子と検出用電極413との間に配置される。制限抵抗52の一端は、高圧電源ユニット51の出力端子と接続され、その他端は、検出抵抗53の一端と接続されている。また、検出抵抗53の他端は、検出用電極413に接続されている。
【0047】
検出用コンデンサ54は、検出用電極413の電位変化成分を抽出するための素子であり、一方の導体が検出用電極413に接続され、他方の導体が増幅器55に接続されている。この検出用コンデンサ54を介在させることで、検出用電極413のバイアス成分(直流成分)を除くことができ、信号の扱いを容易にすることができる。増幅器55は、検出用コンデンサ54の他端に現れる信号(電位変化)を増幅して出力する。この増幅器55はたとえば3.3Vで動作している。平滑コンデンサ56は、電位の急激な変化を抑制する。本実施の形態の平滑コンデンサ56は、一端が制限抵抗52と検出抵抗53とを接続する信号線に接続され、他端がグランドに接続されている。
【0048】
図10は、検出制御部57の構成例を示す図である。この検出制御部57は、AD(アナログディジタル)変換部61、データ処理部62、レジスター群63および制御信号出力部64を有する。AD変換部61は、増幅器55から出力された増幅後の電圧信号(アナログ値)をディジタル値に変換する。データ処理部62は、AD変換部61からのディジタル値をデータ処理する。レジスター群63は、複数のレジスターによって構成されている。各レジスターには、ノズルNz毎の判定結果や判定用の電圧閾値などが記憶される。制御信号出力部64は、高圧電源ユニット51の動作を制御するための制御信号を出力する。
【0049】
[ノズル検査部35によるノズル検査]
次に、ノズル検査部35によるノズル検査について説明する。
【0050】
前述したように、この印刷装置10では、ノズルプレート131をグランドに接続し、キャップ41に配置された検出用電極413を600V〜1kV程度の高い電位にしている。これらのノズルプレート131と検出用電極413との間隔(これを以下「センサーギャップ」という)を、第1の所定値または第2の所定値とした状態で配置し、検出対象のノズルNzからインク滴を噴射させる。そして、インク滴の噴射に起因して検出用電極413側に生じた電気的な変化を検出する。すなわち、検出用電極413に生じた電位の周期的な変化を、検出用コンデンサ54および増幅器55を介して取得する。
【0051】
検出用電極413に生じる電位変化の検出原理について説明する。ノズルプレート131と検出用電極413とが対向して配置されることにより、コンデンサが形成される。図7に示すように、グランドに接続されたノズルプレート131に接することで、ノズルNzから柱状に延びたインクも、グランド電位になる。このようなインクの存在は、コンデンサの電極間隔を局部的に縮めることと同意であり、静電容量を増加させる。静電容量が大きくなると、ノズルプレート131と検出用電極413との間で蓄えることのできる電荷の量が増加する。このように静電容量が増えたり、あるいは、減少した静電容量が戻ったりすると、電荷が高圧電源ユニット51から制限抵抗52等を通って検出用電極413側へ移動する。すなわち、検出用電極413へ向けて電流が流れる。このような電流(便宜上、噴射検査用電流Ifともいう)が流れると、検出抵抗53によって検出用電極413の電位が変化する。検出用電極413の電位の変化は、検出用コンデンサ54における他方の導体(増幅器55側の導体)の電位変化としても現れる。したがって、他方の導体の電位変化を監視することで、インク滴が噴射されたか否かを判定できる。
【0052】
図11は、ノズルNzの検査時に用いる駆動信号COMの一例を示す図である。図12は、図11の駆動信号COMでインクを噴射させた場合に、増幅器55から出力される電圧信号SGを説明する図である。この検査では、複数の噴射パルスPSを有する駆動信号COMを用いる。すなわち、駆動信号生成回路33は、図11に示す駆動信号COMを繰り返し期間T毎に繰り返し生成する。この繰り返し期間Tは、1つのノズルNzの検査に要する時間に定められる。この実施の形態の繰り返し期間Tは、1kHz相当の期間に定められている。例示した駆動信号COMは、前半期間TAに生成される前半部分と後半期間TBに生成される後半部分とを有する。そして、前半部分では、複数の噴射パルスPSが所定間隔で生成される。この例では、20〜30個の噴射パルスPSが50kHz相当の間隔で生成される。後半部分では、中間電位で一定の定電位部分が生成される。
【0053】
このような駆動信号COMを、ノズルNzから滴状のインクを噴射させるためのピエゾ素子に印加する。そのとき、そのピエゾ素子に対応するノズルNzからは、50kHzの周期で20〜30回、インク滴が連続的に噴射される。これにより、増幅器55からは、電圧信号SGが出力される。検出制御部57は、この電圧信号SGに基づく判断を行う。電圧信号SGは、インク滴ごとに得られるのではなく、1個のインク滴により生じる信号が時定数の関係で消滅する前に次のインク滴により信号が生じ、その積分値として得られる。
【0054】
図13は、ノズルNzと検出用電極413との間隔(センサーギャップ)の変更を説明する図である。図12に示す電圧信号SGの振幅は、センサーギャップを変化させると、それに伴って変化する。センサーギャップを大きくすると、容量が小さくなるため、流れる電流が減少し、電圧信号SGの振幅は小さくなる。そこで、第1のモードとして、センサーギャップを、増幅器55の出力が図12のVdetectに相当する値で飽和するような値(電位検出範囲を超えるピーク値の電位変化が検出用電極413に発生する値)、すなわち第1の所定値d1に設定する。このとき、インク滴の噴射の有無に相当する電位変化の検出が容易になる。一方、第2のモードとして、センサーギャップを、第1の所定値d1より大きい第2の所定値d2とし、増幅器55の出力範囲が最高電圧VHと最低電圧VLとを含むようにする。このとき、第2の所定値d2は、検出制御部57での電位検出範囲で前記検出用電極に電位変化が発生する値に設定される状態となる。これにより、インク滴の噴射状態に相当する電位変化の波形を検出することができる。
【0055】
なお、図13から明らかなように、第1の所定値d1よりも第2の所定値d2の方が大きいものとなっている。
【0056】
図14は、出力信号のセンサーギャップ特性を説明する図である。この例では、センサーギャップがたとえば2mmのとき、電圧信号SGの最大振幅Vmax(最高電圧VHと最低電圧VLとの差)が、仮想的に12Vとなる。ただし、増幅器55は上述のように3.3Vで動作しているため、それを超える電圧は飽和してしまう。一方、センサーギャップがたとえば5.5mm以上であれば、電圧信号SGの最大振幅Vmaxは3.3V以下となり、波形そのものを検出することができる。
【0057】
[インクの粘性の影響]
電圧信号SGに対する増幅器55の出力波形の変化は、高圧電源ユニット51から印加される電圧の変化によっても生じさせることもできる。しかし、近年、種々の種類のインクが流通しており、ノズル検査の上で、その粘性の不確定性を除去できないことから、センサーギャップにより、出力波形を変化させることが望ましい。これについて、以下に説明する。
【0058】
図15は、ノズル検査におけるインクの影響を説明する図である。ノズルNzから噴射されるインク滴は、その粘性により、ノズルプレート131から検出用電極413に向かって、尾を引いて柱状に延びていく。そして、尾が切れることによって分離したインク滴が検出用電極413に到達する。ノズルプレート131と検出用電極413との間に印加する電圧を変えた場合、インク滴に加わる電圧が変化し、インクによっては、どのような挙動をするか予測できない部分がある。センサーギャップを大きくする分には、その挙動の不確定性はないと考えられる。
【0059】
[ノズル検査フロー]
上述のように印刷制御部38はCPU38bを備えている。また、メモリー38cには、印刷装置10の印刷ヘッド13を所定の検査位置に移動させて印刷ヘッド13のノズルNzを検査位置に設けられている検出用電極413に対向させる第1のステップと、ノズルNzと検出用電極413との間に高圧電源ユニット51から電圧を印可させる第2のステップと、ノズルNzと検出用電極413との間隔を第1の所定値d1に制御し、ノズルNzからのインクの噴射により検出用電極413に生じる電位変化を検出する検出回路50に、インクの噴射の有無に相当する電位変化を検出させる第3のステップと、ノズルNzと検出用電極413との間隔を第1の所定値d1より大きい第2の所定値d2に制御し、検出回路50に、インクの噴射状態に相当する電位変化の波形を検出させる第4のステップとを実行させるコンピュータープログラムがインストールされている。そして、このコンピュータープログラムがCPU38bで実行されることで、ノズル検査の各処理が実現される。
【0060】
図16は、ノズル検査のフローチャートを示す。このノズル検査は、印刷制御部38の制御により行われる。印刷制御部38は、印刷装置10の起動時、あるいは印刷装置10の稼動時間が所定値となったときなどに、ノズル検査部35に、第1のモードのノズル検査を指示する。ノズル検査部35は、第1のモードのノズル検査を実行する(ステップS1)。この検査でドット抜けがある場合(ステップS2でYes)には、印刷制御部38は、ヘッド制御部34に、クリーニングを実行させる(ステップS3)。ドット抜けがない場合(ステップS2でNo)またはクリーニング(ステップS3)が終了すると、印刷制御部38は、第2モードのノズル検査を実行するかどうかを判断する(ステップS4)。この判断では、たとえば、第1のモードのノズル検査を所定回行うごと、あるいは印刷装置10の稼動時間が所定の期間を経過するごとに、第2モードのノズル検査を実行するものと判断する。
【0061】
第2のモードのノズル検査を実行するものと判断された場合(ステップS4でYes)には、印刷制御部38は、ノズル検査部35に、第2モードの検査を指示する。ノズル検査部35は、第2のモードのノズル検査を実行する(S5)。ここで、ノズル検査部35がノズルNzの劣化を検出した場合(ステップS6でYes)には、印刷制御部38は、メンテナンスのための警告を、図示していない表示部に表示させる(ステップS7)。
【0062】
なお、第2モードのノズル検査を実行しないと判断された場合(ステップS4でNo)、ステップS6でノズルNzの劣化を検出しない場合、およびステップS7の警告を表示させた後に、図16に示す一連の処理フローは終了となる。
【0063】
図17は、第1のモード(図16のステップS1)のノズル検査のフローチャートを示す。印刷制御部38は、キャリッジ移動機構32を制御し、印刷ヘッド13を検査位置に移動させ、ノズルNzを検出用電極413に対向させる(S11)。次に、印刷制御部38は、ノズル検査部35あるいはキャップ機構36を制御して、センサーギャップを第1の所定値d1に設定する(S12)。続いて印刷制御部38は、ノズル検査部35を制御して、高圧電源ユニット51からノズルNzと検出用電極413との間に電圧を印可させる(S13)。さらに、印刷制御部38は、ノズル検査部35を制御して、検出回路50に、インクの噴射の有無に相当する電位変化を検出させる(S14)。
【0064】
図18は、第2のモード(図16のステップS5)のノズル検査のフローチャートである。この第2のモードにおいては、図16のノズル検査のフローより、ノズルNzは検出用電極413に対向している。この状態で、印刷制御部38は、ノズル検査部35あるいはキャップ機構36を制御して、センサーギャップを第1の所定値d1より大きい第2の所定値d2に設定する(S21)。続いて印刷制御部38は、ノズル検査部35を制御して、高圧電源ユニット51からノズルNzと検出用電極413との間に電圧を印可させる(S22)。さらに、印刷制御部38は、ノズル検査部35を制御して、検出回路50に、インクの噴射状態に相当する電位変化の波形を検出させる(S23)。
【0065】
この図18のノズル検査により、増幅器55からは、電圧信号SGが出力されるが、このときの電圧信号SGは、1個のインク滴により生じる信号が時定数の関係で消滅する前に次のインク滴により信号が生じ、その積分値として得られる。そして、この電圧信号SGに基づいて、ノズルNzの劣化があるか否かが判定される。
【0066】
[効果]
以上のように、本実施の形態では、ノズルNzと検出用電極413との間隔を変更することで、ノズルNzのドット抜け検出だけでなく、たとえばノズルNzの劣化具合、印刷ヘッド13の特性バラつき、ノズルNz等の組み立て公差、温度変化等といったことを検出することが可能となる。
【0067】
また、上述の第1の所定値d1を、増幅器55で飽和するピーク値の電位変化が検出用電極413に発生する値に設定することで、ドット抜け検出を確実に行うことができる。一方、第2の所定値d2を、増幅器55で飽和しない電位変化が発生する値に設定し、その電位変化を検出制御部57で検出することで、検出制御部57では経時変化等によるノズルの劣化具合を知ることができる。
【0068】
また、第1のモードの検査と記第2のモードの検査とを、印刷ヘッド13が取り付けられた印刷装置の稼働中の所定のタイミングで行い、第2のモードの検査を、第1のモードの検査より少ない頻度で実行することができる。この場合、第1のモードの検査は、ドット抜け検出のためのものであり、印刷装置10が稼動中にも、しばしば実行する必要がある。これに対して第2のモードの検査は、ノズルの劣化具合を調べるものなので、それほど頻繁に行う必要はない。このようにすれば、第2のモードでの検査頻度が不必要に多くなって、ユーザーを待たせる等によって不快となるのを防ぐことができる。
【0069】
[変形例]
図19および図20はそれぞれ、図9に示す検出回路50の変形例の検出回路71、72を示す。検出回路71は、ノズルプレート131に高圧電源ユニット51を接続し、検出用電極413をグランドに接続している。また、検出回路72は、インク滴の噴射に起因するノズルプレート131での電荷の移動(噴射検査用電流Ifの一種)に起因する、電気的な状態の変化を検出している。これらの構成であっても、インク滴の噴射を検出できる。
【0070】
ノズルNzと検出用電極413との間隔は、印刷ヘッド13と検出用電極413が設けられるインク受け領域との少なくとも一方を動かすことにより行われる。具体的には、印刷ヘッド13におけるオートプラテンギャップ機構や、キャップ機構36、あるいは特許文献4に示された機構を利用して、間隔を設定することができる。
【0071】
図1および図3にはインク色が4色の場合を示したが、それ以上の色数でもよい。
【符号の説明】
【0072】
10…印刷装置、12…キャリッジ、13…印刷ヘッド、14…印刷媒体、18…印刷制御部、20…検査ボックス、31…用紙搬送機構、32…キャリッジ移動機構、33…駆動信号生成回路、34…ヘッド制御部、35…ノズル検査部(ノズル検査装置、検査手段の一例に対応)、36…キャップ機構、37…検出器群、38b…CPU、38c…メモリー、38…印刷制御部、41…キャップ、42…スライダ部材、50…検出回路、51…高圧電源ユニット(電源の一例に対応)、52…制限抵抗、53…検出抵抗、54…検出用コンデンサ(検出部の一部に対応)、55…増幅器(検出部の一部に対応)、56…平滑コンデンサ、57…検出制御部(検出部の一部に対応)、61…AD変換部、62…データ処理部、63…レジスター群、64…制御信号出力部、71,72…検出回路、131…ノズルプレート、413…検出用電極、422…支持軸、423…固定部材、423a…長孔、424…アーム部、Nz…ノズル、SG…電圧信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴を噴射するノズルが設けられた印刷ヘッドと、
前記ノズルからのインク滴の噴射を検査する検査手段と
を備え、
前記検査手段は、
前記印刷ヘッドが所定の検査位置に移動した状態で前記ノズルに対向する検出用電極と、
前記ノズルと前記検出用電極との間に電圧を印可する電源と、
前記ノズルからのインクの噴射により前記検出用電極に生じる電位変化を検出する検出部と
を有し、
前記検出部は、前記ノズルと前記検出用電極との間隔を第1の所定値とする第1のモードにおいて、インク滴の噴射の有無に相当する電位変化を検出し、前記ノズルと前記検出用電極との間隔を第1の所定値より大きい第2の所定値とする第2のモードにおいて、インク滴の噴射状態に相当する電位変化の波形を検出する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置において、
前記第1の所定値は、前記検出部の電位検出範囲を超えるピーク値の電位変化が前記検出用電極に発生する値に設定され、
前記第2の所定値は、前記検出部の電位検出範囲で前記検出用電極に電位変化が発生する値に設定される
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の印刷装置において、
前記ノズルと前記検出用電極との間隔は、前記印刷ヘッドと前記検出用電極が設けられるインク受け領域との少なくとも一方を動かすことにより行われる
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
ノズルからの液滴の噴射を検査するノズル検査装置において、
前記ノズルに対向して配置される検出用電極と、
前記ノズルと前記検出用電極との間に電圧を印可する電源と、
前記ノズルからの液滴の噴射により前記検出用電極に生じる電位変化を検出する検出部と
を有し、
前記検出部は、前記ノズルと前記検出用電極との間隔を第1の所定値とする第1のモードにおいて、液滴の噴射の有無に相当する電位変化を検出し、前記ノズルと前記検出用電極との間隔を第1の所定値より大きい第2の所定値とする第2のモードにおいて、液滴の噴射状態に相当する電位変化の波形を検出する
ことを特徴とするノズル検査装置。
【請求項5】
印刷ヘッドのノズルからのインクの噴射を検査する方法であり
前記ノズルを検出用電極に対向させ、
前記検出用電極と前記ノズルとの間に電圧を印加し、
前記ノズルからのインクの噴射により前記検出用電極に生じる電位変化を検出する
ノズル検査方法において、
第1のモードでは、前記ノズルと前記検出用電極との間隔を第1の所定値として、インクの噴射の有無に相当する電位変化を検出し、
第2のモードでは、前記ノズルと前記検出用電極との間隔を第1の所定値より大きい第2の所定値として、インクの噴射状態に相当する電位変化の波形を検出する
ことを特徴とするノズル検査方法。
【請求項6】
請求項5記載のノズル検査方法において、
前記第1のモードの検査と前記第2のモードの検査とを、前記印刷ヘッドが取り付けられた印刷装置の稼働中の所定のタイミングで行い、
前記第2のモードの検査を、前記第1のモードの検査より少ない頻度で実行する
ことを特徴とするノズル検査方法。
【請求項7】
印刷装置の制御コンピューターにインストールされ、該制御コンピューターに、
該印制装置の印刷ヘッドに設けられるノズルからのインクの噴射を検査するステップを実行させるコンピュータープログラムにおいて、
前記検査するステップとして、
前記印刷装置の前記印刷ヘッドを所定の検査位置に移動させて該印刷ヘッドのノズルを該検査位置に設けられている検出用電極に対向させる第1のステップと、
前記ノズルと前記検出用電極との間に電源から電圧を印可させる第2のステップと、
前記ノズルと前記検出用電極との間隔を第1の所定値に制御し、前記ノズルからのインクの噴射により前記検出用電極に生じる電位変化を検出する検出部に、インクの噴射の有無に相当する電位変化を検出させる第3のステップと、
前前記ノズルと前記検出用電極との間隔を第1の所定値より大きい第2の所定値に制御し、前記検出部に、インクの噴射状態に相当する電位変化の波形を検出させる第4のステップと
を前記制御コンピューターに実行させる
ことを特徴とするコンピュータープログラム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate