説明

印刷装置、及び自動券売機

【課題】ロール紙の切揃えに要する時間の長期化を解消した印刷装置の提供。
【解決手段】2本のロール紙P1、P2から繰り出された用紙p1、p2のうちの何れか一方の用紙に対して印刷、切断の各処理を順次実施する印刷・切断ユニット3と、一方のロール紙が費消された後に連続して他方のロール紙から繰り出された用紙を印刷・切断させるように制御する制御手段50と、を備え、制御手段は、カッタ30により用紙を切断して発券した後に搬送機構10によって切断後の残留用紙先端を印刷部20による印刷位置まで後退させるための制御を行い、更に制御手段は、先行して印刷・切断ユニットにセットされた用紙を優先して発券処理に使用する一方で、後から印刷・切断ユニットにセットされた用紙に対する先端切揃え処理を該セット直後に実施するために、先行してセットされた用紙の先端部を一旦印刷部の上流側に退避させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷用紙としてロール紙を使用した印刷装置に関し、特にロール紙から繰り出された用紙に印刷部にて印刷を行ってから下流側に位置するカッタにて所要長に切断して機外に排出してから、更に切断後の用紙先端を印刷位置まで戻すように制御する印刷装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動券売機に装備される印刷装置のように、ロール紙から引き出した用紙に対して印刷部において所要事項を印刷してから所要長に切断して発券するように構成された機器にあっては、印刷部の下流側に切断用のカッタが配置されている。印刷部にて印刷を受けた用紙先端からの所要長部分をカッタにて切断して機外に発券した際には、装置内に残った印刷されていない用紙先端はカッタにまで達しており、カッタよりも上流側に位置する印刷部は用紙先端よりも所定距離後方(上流方向)に位置しているため、装置内に残った用紙面に対してそのまま印刷部によって次の印刷を行い、所要長送出した後にカッタにより切断して発券した場合には、発券された券の印刷領域の前部に不要な余白部分が広い範囲に亘って形成されることとなりレイアウト上見苦しいばかりか、券が不必要に大面積化するという問題を惹起する。
また、未使用のロール紙の用紙先端は、ばらけることがないように接着テープ等によってロール紙本体に接着して保持されているが、この未使用ロール紙を印刷装置に装着する場合には接着テープを剥がして用紙先端を引出し、印刷部内に導入してセットしておく必要がある。しかし、接着テープを剥がした形跡が用紙先端に残ったり、或いは当該形跡を除去するために鋏等を用いた手作業によって先端部を切除した場合の切断跡が不揃いであったり非直線的であることが多いので(客に出す券としては適さない状態にある)、未使用ロール紙の使用開始に際しては、用紙先端から所定幅に亘る範囲をカッタによって切断除去する先端切揃え処理が必要とされている。
更に、印刷装置内に2本以上のロール紙を常備しておくことにより、一方のロール紙が費消された場合に、発券動作を中断することなく、他方のロール紙に切り替えて、当該他方のロール紙を用いた発券動作を連続して継続できるようにした印刷装置も提案されている(特許文献1等)。
【0003】
図4は、2本のロール紙を装備する従来の券売機の概略構成図であり、2本のロール紙P1、P2を回転自在に支持するロール紙支持手段100aを備えた給紙部100と、各ロール紙P1、P2から下方へ繰り出された用紙p1、又はp2を受入れて印字、切断、及び放出を順次実施する印刷・切断ユニット101と、を備えている。印刷・切断ユニット101は、各用紙p1、p2を夫々専用的に搬送する専用経路102a、102bと、各専用経路102a、102bが合流する合流位置103から下方へ延びる共通経路104と、を備えている。印刷・切断ユニット101の各専用経路102a、102b上には、搬送ローラ対111(111a、111b)が夫々配置されている。共通経路104上には、用紙p1、p2に印刷する印刷部112と、印刷部112によって印刷を受けてから下流側に進行した用紙先端部分を所定長に切断するカッタ113と、カッタ113によって切断された被切断部分p1−1、p2−1を機外に排出(発券)する放出ローラ対114が順次配置されている。印刷部112、カッタ113、及び放出ローラ対114は、2本のロール紙P1、P2に対して一組設けられているに過ぎず、両ロール紙に対して共通して使用されるため、両ロール紙のうちの何れか一方からの用紙が印刷部112以降の共通経路104内に入り込んでいる場合には、他のロール紙からの用紙は引き込みローラ対111によって挟まれた状態で、その先端を各専用経路102a、102b内に退避させた状態で待機することとなる。
この券売機においては、印刷部112よりもカッタ113が下流側に位置しているため、用紙p1、又はp2の先端から所要長の範囲内に印刷し、印刷した範囲の上流側適所を切断して発券した後で、残留した用紙先端を印刷部112の適所まで戻す作業を実施する必要がある。このような用紙先端の逆送を実施することにより、発券された券の印刷領域の前部に不要な余白部分が広い範囲に亘って形成されることがなくなる。
ここで、用紙を逆送させる手法としては、ロール紙P1、又はP2を巻き取り方向に回転させて用紙p1、又はp2を後方へ戻すことも考えられるが、そうした場合、ロール紙自体を動かす駆動力及び駆動機構が必要となるばかりでなく、短時間の作業動作で行うようにするためには、その制御部も高度となってしまう。そこで、用紙p1、又はp2を印刷・切断ユニット101内に配置された印刷部112のローラによって所定距離逆送させる。
【0004】
ところで、各ロール紙支持手段100aにロール紙P1、P2が装着され、且つ各ロール紙から延びる用紙p1、p2の先端が印刷・切断ユニット101内に進入している状態においても、印刷部112以降の共通経路104内に進入して印刷、切断処理を受けるのは一方の用紙(例えばp1)のみである。そして、先行して印刷、切断処理を受けていた用紙p1に係るロール紙P1が費消されてペーパーエンドになった場合には、発券に供されない残余の用紙p1は裁断処理され、その後、既装着状態にあった他のロール紙P2に係る用紙p2を印刷部112以降の共通経路104内に引き入れるための制御が実施されるが、この際に用紙p2の先端から所定幅に亘る範囲を切除するための上記先端切揃え処理が一律に実施されていた。
しかし、従来は新たに使用開始されるロール紙P2の用紙p2に対する先端切揃え処理を、当該用紙p2の先端を印刷部112以降の共通経路104内に引き込む際に実施していたため、先端切揃え処理が終了するまでの間は発券のための稼動が停止して新たな発券までに時間を要することとなり、利用客を待たせる不具合を生じていた。即ち、従来は、ロール紙P1を利用した発券が行われている期間中は、ロール紙P2から繰り出した用紙p2の先端を印刷・切断ユニット101内の専用経路102b内で待機させておく一方で、他のロール紙P1が費消されたことによってロール紙P2に切換え使用される段階で初めて先端切揃え処理を実施していたため、ロール紙P2への切換えに際して先端切揃え処理のための時間を要することとなり、その間発券ができない状態となり、稼働率の低下、待機時間の長時間化という不具合が生じていた。
【特許文献1】特開2005−088305公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、印刷用紙としてロール紙を使用した印刷装置であって、複数のロール紙から夫々繰り出された各用紙の内の一方を発券用に供すると共に、他方の未使用ロール紙から繰り出された用紙は印刷部の手前で待機させておくことによって、一方のロール紙が費消された場合に、発券を中断することなく、連続して他方の未使用ロール紙からの用紙を用いた発券が可能となるように構成した印刷装置であって、ロール紙から繰り出された用紙に印刷部にて印刷を行ってから下流側に位置するカッタにて所要長に切断してから、更に切断後の残留側用紙先端を印刷位置まで戻すように制御するものにおいて、費消されたロール紙に代えて新たなロール紙をセットした際に、当該新たなロール紙の用紙先端に対する先端切揃え処理を、前記他方の未使用ロール紙からの給紙、発券動作を開始する前に実施することにより、後刻、前記他方の未利用ロール紙が費消されて前記新たなロール紙からの給紙が開始される場合におけるロール紙の切換えに要する時間の長期化を解消した印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、少なくとも2つのロール紙支持手段によって夫々回転自在に支持された2本のロール紙と、前記各ロール紙から繰り出された用紙のうちの何れか一方の用紙に対して印刷、切断の各処理を順次実施する印刷・切断ユニットと、各用紙を搬送する搬送機構と、前記一方のロール紙が費消された後に連続して他方のロール紙から繰り出された用紙を前記印刷・切断ユニットによって印刷、切断させるように制御する制御手段と、を備え、前記印刷・切断ユニットは、各ロール紙から繰り出された用紙の範囲内に印刷を行う印刷部と、該印刷部による印刷後に用紙先端から所定長の位置を切断するために印刷部の下流側に配置されたカッタと、を備え、前記制御手段は、前記カッタにより用紙を切断して発券した後に前記搬送機構によって切断後の残留用紙先端を印刷部による印刷位置まで後退させるための制御を行う、印刷装置において、前記制御手段は、先行して前記印刷・切断ユニットにセットされた用紙を優先して発券処理に使用する一方で、後から前記印刷・切断ユニットにセットされた用紙に対する先端切揃え処理を該セット直後に実施するために、先行してセットされた用紙の先端部を一旦前記印刷部の上流側に退避させることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、少なくとも2つのロール紙支持手段によって夫々回転自在に支持された2本のロール紙と、前記各ロール紙から繰り出された用紙のうちの何れか一方の用紙に対して印刷、切断の各処理を順次実施する印刷・切断ユニットと、各用紙を搬送する搬送機構と、前記一方のロール紙が費消された後に連続して他方のロール紙から繰り出された用紙を前記印刷・切断ユニットによって印刷・切断させるように制御する制御手段と、を備え、前記印刷・切断ユニットは、各ロール紙から繰り出された用紙の範囲内に印刷を行う印刷部と、該印刷部による印刷後に用紙先端から所定長の位置を切断するために印刷部の下流側に配置されたカッタと、を備え、前記制御手段は、前記カッタにより用紙を切断して発券した後に前記搬送機構によって切断後の用紙先端を印刷部による印刷位置まで後退させるための制御を行う、印刷装置において、前記制御手段は、先行して印刷・切断処理を受けたロール紙が費消されたことによって新たに交換補充されたロール紙の用紙先端が前記印刷・切断ユニットにセットされた時点で、前記搬送機構、及びカッタを制御して当該新たなロール紙の用紙先端に対する先端切揃え処理を実施することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1、又は2において、前記制御手段は、前記新たなロール紙に対する先端切揃え処理に際して、前記印刷・切断ユニット内に先に進入していた他のロール紙の用紙先端を前記印刷部よりも上流側に一旦退避させることにより、前記新たなロール紙の先端を前記カッタに進入させて先端切揃え処理を実施し、該先端切揃え処理後に該新たなロール紙の用紙先端を前記印刷部よりも上流側の待機位置に退避させた状態としてから、前記他のロール紙の用紙先端を前記印刷部内に進入させることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1、2、又は3に記載の印刷装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
2本のロール紙から夫々供給された各用紙先端を印刷・切断ユニット内に受け入れておき、先に挿入された用紙(先の用紙)を優先的に印刷部以降に送り込んで発券処理を行うと共に、後から挿入された用紙(後の用紙)については上流側の待機位置に停止させておき、先の用紙が費消された場合に中断することなく後の用紙を印刷部以降に送り込んで切換え使用できるようにした印刷装置において、後の用紙に対する先端切揃え処理を従来は後の用紙への切換時に実施していた。そのため、先の用紙から後の用紙への切換に要する時間が長期化し、利用客を待たせることとなっていた。
これに対して本発明では、ロール紙を印刷装置にセットして用紙先端を印刷・切断ユニット内にセットした時点で一律に用紙先端切揃え処理を実施するので、使用するロール紙を切り替える際には先端切揃え処理は実施されることがない。従って、先の用紙から後の用紙への切換に要する時間が短時間で済む。
即ち、2つのロール紙を新たにセットする場合には、先に印刷・切断ユニット内に先端をセットされた用紙を優先して発券処理に使用し、後からセットされた用紙先端は待機位置にて停止させておき、先の用紙が費消された場合に連続して切換え使用される。
一方、各用紙に対する先端切揃え処理については、各用紙が印刷・切断ユニットにセットされた時点で夫々実施する。後からセットされた用紙に対して先端切揃え処理を行うためには、先に印刷待機位置に入り込んでいる先の用紙が邪魔になるため、先の用紙を一旦上流側へ退避させてから後の用紙を前進させて先端切揃え処理を施し、後の用紙を上流側へ退避させてから先の用紙を再び印刷待機位置に前進させる。
このため、発券処理に使用する用紙を切り替える際には先端切揃え処理が行われないこととなり、利用客を待たせる時間が短くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る印刷装置の概略構成図、図2はその要部構成図であり、図3(a)(b)及び(c)は本発明特有の構成、動作を説明するための図である。
この印刷装置2は例えば券売機1に適用され、利用者が券売機前面のメニュースイッチを操作して所定金額、所定内容の取引を選択したときに、選択された取引内容に見合う金額、項目を用紙面に印刷してから、当該用紙を所要寸法に切断して機外に発券するように構成されている。
図1に示す券売機1は、印刷装置2を内蔵している。この印刷装置2は、2本のロール紙P1、P2を回転自在に支持するロール紙支持手段(支持軸)5aを備えた給紙部5と、第1のロール紙P1から用紙p1を繰り出して下方へ搬送する搬送機構10と、搬送機構10によってロール紙P1、P2から繰り出された用紙p1、p2の先端から所定の範囲(印刷範囲)に印刷を行う印刷部20と、印刷部20による印刷後に用紙先端から所定長の位置(切断位置)を切断するために印刷部20の下流側に配置されたカッタ30と、カッタ30により切断された用紙片(券)を機外に排出(発券)する放出ローラ対40と、これらを制御する制御手段50と、を備えている。また、搬送機構10、印刷部20、及びカッタ30は、印刷・切断ユニット3を構成している。
給紙部5では、各ロール紙支持手段5aによって各ロール紙P1、P2の中心部(或いは外周)を回転自在に支持している。各ロール紙P1、P2は、発券される券用の用紙p1、p2をロール状に巻き回したものであり、工場出荷時の状態においては、用紙先端部をロール紙本体表面に接着テープ等によって固定しているため、ロール紙を印刷装置に装着する場合には、予め人手により接着テープを用紙先端及びロール紙本体から剥離してから、用紙先端を手作業により印刷・切断ユニット3の各入口3a、3bに差込む。
ロール紙Pは、感熱紙でもよいし、普通紙でもよい。感熱紙の場合には、印刷部20ではサーマルヘッドからなる印字手段を用い、普通紙の場合にはインクジェットヘッド等の普通紙用の印字手段を用いる。
【0010】
印刷・切断ユニット3は、各構成要素を収容するケーシングCと、各入口3a、3bと連通し且つ各用紙p1、p2を夫々専用的に搬送する専用経路4a、4bと、各専用経路4a、4bが合流する合流位置Aから下方へ延びる共通経路6と、を備えている。印刷・切断ユニット3の各専用経路4a、4b上には、搬送機構10を構成する搬送ローラ対11(11a、11b)が夫々配置されている。共通経路6上には、用紙p1、p2に印刷する印刷部20と、印刷部20によって印刷を受けてから下流側に進行した用紙先端部分を所定長に切断するカッタ30と、カッタ30によって切断された被切断部分p1−1、p2−1を機外に排出(発券)する放出ローラ対40が順次配置されている。
共通経路6に配置された印刷部20、カッタ30、及び放出ローラ対40は、2本のロール紙P1、P2に対して一組設けられているに過ぎず、両ロール紙に対して共通して使用されるため、両ロール紙のうちの何れか一方からの用紙が印刷部20以降の共通経路6内に入り込んでいる場合には、他のロール紙からの用紙は搬送ローラ対11a、又は11bによってニップされた状態で、その先端を各専用経路4a、又は4b内に退避させて待機することとなる。
更に、入口3a、3bの直後には、夫々モータ起動、及び紙無し検出のためのセンサS1、S2が配置される。センサS1、S2は、各入口3a、3bからの用紙の進入、或いは排出を検出するために使用され、これらのセンサS1、S2からの各検出信号はモータM1、M2等を起動するために利用される。更に、センサS1、S2は、ペーパーエンドが近くなったロール紙から繰り出された用紙の最終部分を利用して最後の印刷、切断、発券を行った後で、残留した用紙部分を各入口3a、3bへ逆送して所定長はみ出させることによって指によってつまんで除去できるようにするためにも使用される。
【0011】
搬送ローラ対11a、11bの直後の専用経路4a、4b内には夫々待機位置検出用のセンサS3、S4が配置されている。待機位置検出用のセンサS3、S4は、各用紙p1、p2の先端を各専用経路内に位置(待機)させるために用紙先端を検知する。即ち、用紙を、入口3a、3bからユニット内に入り込んでから印刷部20を通過してカッタ30にて先端切揃え処理を受けてから逆送されて、センサS3、S4の直上流の待機位置にて停止させる際に、用紙先端の通過を検知する手段である。或いは、センサS3、S4は、搬送ローラ対11a、11bが下流側へ搬送する用紙先端の通過タイミングを検出したり、ジャム発生の有無を検知するためにも利用される。
搬送ローラ対11a、11bは、駆動ローラ11a’、11b’と、各駆動ローラに従動するとともに各駆動ローラに対して接離するピンチローラ11a”、11b”とから構成されている。各駆動ローラ11a’、11b’はモータM1、M2によって駆動され、各ピンチローラ11a”、11b”はソレノイドSOL1、2によって夫々各駆動ローラに対して接離する。本例では、常時においてはソレノイドSOL1、2がOFFとなっているためピンチローラは駆動ローラ周面に当接した状態にあり、この状態で駆動ローラを回転させることによって用紙の搬送が可能となるが、ソレノイドがONした場合には各ピンチローラは駆動ローラから離間するため用紙搬送ができなくなる。
印刷部20は、例えばプラテン21と、プラテン21に対して接離するヘッド22とを備え、ヘッド22の印字部がプラテン21の周面と対面する位置(印字位置)の直後には印字待機位置が設定される。ヘッド22は、実線で示した印字位置と、破線で示した退避位置との間を進退する。更に、印字待機位置の下流側にはプラテン紙位置検出用のセンサS5が配置される。センサS5は、用紙先端位置を検出することにより、制御手段が用紙面における印字開始位置を設定するために用いられる。
印刷部20の近傍には、ヘッド開閉検出用のセンサS6が配置される。ヘッド22として例えば感熱ヘッド、インクジェットヘッド等を用いる場合、紙詰まり等が発生したときにこれを解消するためにヘッド22を開閉自在に構成しておく必要がある。センサS6は実線位置と破線位置との間を進退するヘッド22の可動部の一部を検出することにより、ヘッドが何れの位置にあるかを検知する。ヘッドが開放された状態にある時には印刷は実施できないので、搬送機構、カッタを含めた駆動対象部は停止状態となる。
カッタ30は、切断刃31と切断刃の駆動源(モータ、ソレノイド)を備えており、切断刃31は制御手段50からの制御によって用紙の先端縁から所定長後方位置を切断する。切断分離された用紙は印刷済みの券として機外に発券される。
【0012】
各ロール紙P1、P2から繰り出され、印刷・切断ユニット3内に先端部を挿入された用紙p1、p2は、いずれか一方(先に挿入された方)を優先して使用し、このロール紙を費消し終わった際に、他方のロール紙から用紙を搬送開始して印刷、切断に供する。
各ロール紙P1、P2から繰り出された用紙p1、p2の先端を印刷・切断ユニット3の入口3a、3bに差し込むと、各センサS1、S2が用紙先端の進入を検知し、この検知信号に基づいて制御手段50がモータM1、M2を駆動して駆動ローラ11a’、11b’を回転させ、用紙を前進方向へ搬送する。なお、本実施形態では、先に入口に差し込まれた方の用紙を優先して発券用に使用し、後から差し込まれた用紙は先の用紙が費消された後に自動的に切換え使用される。
各用紙p1、p2の先端を共通経路6の手前にて待機させる場合には、各センサS3、S4にて各用紙先端を検知したタイミングでモータM1、M2の駆動を停止させて各用紙を当該位置で停止させる。
何れか一方の用紙p1、p2を各専用経路4a、4bから共通経路6内に前進させる場合には、前進させる方の搬送ローラ対11a、又は11bを駆動させて、印字位置の直下流位置にある印字待機位置にて用紙先端を停止させるための制御を行う。この制御による用紙先端の停止位置の確定は、モータM1、M2がステッピングモータの場合には各センサS3、S4からのパルス数に基づいて行われる。或いは、モータM1、M2がDCモータの場合には、センサS5が検出するまで送り込んだ後、印字部のプラテン21により挟持し、パルス制御して先端位置を決めればよい。用紙先端が印字待機位置にあるときにヘッド22を作動させて用紙面に対して所要事項の印刷を行いつつ用紙を下流側に所定速度にて搬送する。
【0013】
用紙先端から所定の印刷範囲に対して券一枚分の印刷が完了した時点では、当該用紙先端から所定の印刷範囲に対する切断箇所(券の搬送方向長に相当する)は依然としてカッタ刃31に達していないため、センサS5が用紙先端を検知したタイミングに基づいて用紙先端の送り出し距離をカウントしつつ用紙をさらに前進させる。そして、用紙先端を切断する箇所がカッタ刃31の位置に達したタイミングでカッタ刃を作動させて用紙を切断する。切断によって用紙本体から切り離された用紙先端部分は放出ローラ対40によって機外に発券される。この時点で、カッタ刃31よりも上流側に残留している用紙は次の印刷に備えて逆送開始され、用紙先端がセンサS5を通過してから所定のタイミングにて印字待機位置に停止させる。このように一枚発券する度に、残留している用紙先端を印字待機位置に戻すための動作を実施するため、印刷、切断を受けて発券された券の印刷範囲の前方に不要な余白が形成されることがなくなる。
なお、先端切揃え処理を実施する場合には、入口3a、又は3bから共通経路4a、又は4bを経て共通経路6に進入した用紙先端をカッタ刃31の位置を所要長越える位置まで前進させてからカッタ刃31にて切断して切除部を排出し、その後、残留用紙を逆送させて何れかの専用経路内のセンサS3、又はS4によって検知される待機位置に戻し、そこで待機(停止)させる。切断された用紙先端部は放出ローラ対40により機外に排出される。
なお、発券に供されているロール紙の用紙残量がエンドに近づいた場合、用紙の終端部がセンサS1、又はS2を通過した時点で、用紙エンドが判定される。その後、当該用紙の後端が搬送ローラ対11a、又は11bから離脱しないタイミングで、当該ロール紙を使用した発券(印刷、切断)を終了し、搬送ローラ対を逆転させて当該用紙の後端部を入口3a、又は3bから所定のはみ出し量だけ突出させて停止させる。はみ出した用紙後端を指に摘んで入口から取り出して除去することにより、新たなロール紙の用紙を同入口から印刷・切断ユニット3内にセットすることが可能となる。
【0014】
本発明の特徴的な構成は、少なくとも2つのロール紙支持手段5aによって夫々回転自在に支持された2本のロール紙P1、P2と、各ロール紙から繰り出された用紙p1、p2のうちの何れか一方の用紙に対して印刷、切断の各処理を順次実施する印刷・切断ユニット3と、各用紙を搬送する搬送機構10と、一方のロール紙が費消された後に連続して他方のロール紙から繰り出された用紙を印刷・切断ユニット3によって印刷・切断させるように制御する制御手段50と、を備えた印刷装置にあり、更に具体的には印刷・切断ユニット3は、各ロール紙から繰り出された用紙の先端から所定の範囲内に印刷を行う印刷部20と、印刷部20による印刷後に用紙先端から所定長の位置を切断するために印刷部の下流側に配置されたカッタ30と、を備え、制御手段50は、カッタ30により用紙を切断して発券した後に搬送機構10によって切断後の残留用紙先端を印刷部20による印字待機位置まで後退させるための制御を行う。更に、制御手段50は、先行して印刷・切断ユニット3にセットされた用紙を優先して発券処理に使用する一方で、後から印刷・切断ユニット3にセットされた用紙に対する先端切揃え処理を該セット直後に実施するために、先行してセットされた用紙の先端部を一旦印刷部20の上流側にある専用経路内に退避させる。この状態で、後からセットされた用紙を共通経路6内に進行させて切揃え処理を実施し、切揃え処理完了後に専用経路内の待機位置に戻すと共に、先にセットされた用紙については印字待機位置に前進させる。
また、制御手段50は、先行して印刷・切断処理(発券処理)を受けたロール紙が費消されたことによって、新たなロール紙をロール紙支持手段に対して交換補充してその用紙先端を印刷・切断ユニット3内にセットした時点で、搬送機構、及びカッタを制御して当該新たなロール紙の用紙先端に対する先端切揃え処理を実施する。先端切揃え処理を受けた新たなロール紙は、直ちに逆送されて印刷部20の上流側の待機位置まで後退させられ、それと入れ替わりに優先して発券処理に使用される他方のロール紙の用紙先端を印刷部20の印字待機位置まで前進させる。
【0015】
これを図3に基づいて更に具体的に説明すると、本発明の基本構成としては、印刷装置に装着された2本のロール紙P1、P2から繰り出された用紙p1、p2のうち、先に印刷・切断ユニット3の入口3a、又は3bにセットされた(挿入された)用紙先端をセンサS1、またはS2が検知し、この用紙を優先して発券処理に使用する。後から入口にセットされた用紙は印刷部20の手前の待機位置にて停止させておき、先の用紙が費消された場合に切換えて使用されるように構成する。なお、各用紙p1、p2に対する先端切揃え処理は印刷・切断ユニット3に対して各用紙をセットした時点で夫々実施される。即ち、用紙p1に対する用紙先端切揃え処理は、用紙p1を入口3aに挿入した時に、これを検知したセンサS1からの検知信号に基づいて制御手段50が用紙p1を前進させてカッタ30による先端の切断、搬送機構10による逆送(印字待機位置まで)を行うことにより完了する。また、用紙p2に対する用紙先端切揃え処理は、用紙p2を入口3bに挿入した時に、これを検知したセンサS2からの検知信号に基づいて制御手段50が印字待機位置にあった用紙p1を専用経路4a内の待機位置まで退避させた上で、用紙p2を前進させてカッタ30による先端の切断、搬送機構10による逆送(専用経路4b内の待機位置まで)を行うことにより完了する。
更に、本発明では、少なくとも2本のロール紙P1、P2を装備可能な印刷装置2において、2本のロール紙P1、P2のうちの一方(例えば、P1)から繰り出された用紙p1に印刷、切断処理を施して発券する期間は、他方のロール紙P2からの用紙p2は印刷部20手前のセンサS2の位置にて待機するように制御し(図3(a))、先に発券に供されていた一方のロール紙P1が費消された場合にそれに代えて新たなロール紙P1’をセットして用紙p1’を入口3aから印刷・切断ユニット3内に進入させてから、当該新たなロール紙P1’の用紙p1’の先端に対する先端切揃え処理を、他方の未使用ロール紙P2からの給紙、発券動作を開始する前に実施する(図3(b))。
その後、他方のロール紙P2を利用した発券が開始され、最終的にロール紙P2の用紙が費消されると、新たなロール紙P1’からの給紙が開始されるが、その時点での用紙p1’に対する切揃え処理が不要となり、ロール紙の切換えに要する時間の長期化を解消することができる。
【0016】
なお、本発明においては、ロール紙P1がペーパーエンドになっているにも拘わらず新たなロール紙の補充が行われずに、ロール紙P2からの給紙、発券が開始された後で、新たなロール紙P1’が補充される場合にも、新たなロール紙に対する先端切揃え処理は実施される。即ち、他方のロール紙P2からの発券が開始された後で、管理者がロール紙P1のペーパーエンドに気づいて新たなロール紙P1’をセットした場合には、制御手段50は搬送機構10を制御して既に発券に利用されている他方のロール紙P2の用紙を逆送させてその先端を専用経路4b内の待機位置に戻した上で、新たなロール紙P1’に対する先端切揃え処理を実施する。即ち、この場合、新たなロール紙P1’の用紙p1’の先端に対する先端切揃え処理を先行させるために、それまで印刷部20以降の共通経路6内に進入していたロール紙P2からの用紙p2を一旦専用経路4b内に逆送させてセンサS2の上流側位置にて待機させておくことになる。用紙p1’に対する先端切揃え処理の終了後は、用紙p1’の先端を専用経路4a内の待機位置に戻した状態で、ロール紙P2からの給紙、発券を再開する(図3(c))。
ペーパーエンドを管理者に報知するためのアラームの鳴動を、2本のロール紙が全て費消された場合にのみ実施させるように構成した場合には、一方のロール紙がペーパーエンドになっていることを管理者が気づかないことがあるため、上記のような制御を行う。
個々のロール紙のペーパーエンドを個別に検知して報知するように構成した場合には、一方のロール紙のペーパーエンドも報知されるので、速やかに補充することが可能となる。
なお、本発明の印刷装置は、自動券売機のみならず、ロール紙から用紙に印刷した上で切断して発行する装置一般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置の概略構成図。
【図2】図1の印刷装置の要部構成図。
【図3】(a)(b)及び(c)は本発明特有の構成、動作を説明するための図。
【図4】従来の印刷装置の構成説明図。
【符号の説明】
【0018】
1 券売機、2 印刷装置、3 印刷・切断ユニット、3a、3b 入口、4a、4b 専用経路、5 給紙部、5a ロール紙支持手段、6 共通経路、P1、P2、P1’、P2’ ロール紙、p1、p2、p1’、p2’ 用紙、10 搬送機構、20 印刷部、30 カッタ、40 放出ローラ対、50 制御手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのロール紙支持手段によって夫々回転自在に支持された2本のロール紙と、前記各ロール紙から繰り出された用紙のうちの何れか一方の用紙に対して印刷、切断の各処理を順次実施する印刷・切断ユニットと、各用紙を搬送する搬送機構と、前記一方のロール紙が費消された後に連続して他方のロール紙から繰り出された用紙を前記印刷・切断ユニットによって印刷、切断させるように制御する制御手段と、を備え、
前記印刷・切断ユニットは、各ロール紙から繰り出された用紙の範囲内に印刷を行う印刷部と、該印刷部による印刷後に用紙先端から所定長の位置を切断するために印刷部の下流側に配置されたカッタと、を備え、
前記制御手段は、前記カッタにより用紙を切断して発券した後に前記搬送機構によって切断後の残留用紙先端を印刷部による印刷位置まで後退させるための制御を行う、印刷装置において、
前記制御手段は、先行して前記印刷・切断ユニットにセットされた用紙を優先して発券処理に使用する一方で、後から前記印刷・切断ユニットにセットされた用紙に対する先端切揃え処理を該セット直後に実施するために、先行してセットされた用紙の先端部を一旦前記印刷部の上流側に退避させることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
少なくとも2つのロール紙支持手段によって夫々回転自在に支持された2本のロール紙と、前記各ロール紙から繰り出された用紙のうちの何れか一方の用紙に対して印刷、切断の各処理を順次実施する印刷・切断ユニットと、各用紙を搬送する搬送機構と、前記一方のロール紙が費消された後に連続して他方のロール紙から繰り出された用紙を前記印刷・切断ユニットによって印刷・切断させるように制御する制御手段と、を備え、
前記印刷・切断ユニットは、各ロール紙から繰り出された用紙の範囲内に印刷を行う印刷部と、該印刷部による印刷後に用紙先端から所定長の位置を切断するために印刷部の下流側に配置されたカッタと、を備え、
前記制御手段は、前記カッタにより用紙を切断して発券した後に前記搬送機構によって切断後の用紙先端を印刷部による印刷位置まで後退させるための制御を行う、印刷装置において、
前記制御手段は、先行して印刷・切断処理を受けたロール紙が費消されたことによって新たに交換補充されたロール紙の用紙先端が前記印刷・切断ユニットにセットされた時点で、前記搬送機構、及びカッタを制御して当該新たなロール紙の用紙先端に対する先端切揃え処理を実施することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記新たなロール紙に対する先端切揃え処理に際して、前記印刷・切断ユニット内に先に進入していた他のロール紙の用紙先端を前記印刷部よりも上流側に一旦退避させることにより、前記新たなロール紙の先端を前記カッタに進入させて先端切揃え処理を実施し、該先端切揃え処理後に該新たなロール紙の用紙先端を前記印刷部よりも上流側の待機位置に退避させた状態としてから、前記他のロール紙の用紙先端を前記印刷部内に進入させることを特徴とする請求項1、又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
請求項1、2、又は3に記載の印刷装置を備えたことを特徴とする自動券売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−341989(P2006−341989A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171701(P2005−171701)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(305027456)東洋ネットワークシステムズ株式会社 (200)
【Fターム(参考)】