説明

印刷装置およびバー幅補正方法

【課題】バーコード補正を行う場合の適正な補正量を求める。
【解決手段】隣接する線分の間隔を順次異ならせた複数の線分パターン91〜95を含むテストパターン90を印刷して、センサで走査する。その読取波形を閾値判定した結果に基づき、隣接するバーを識別できなくなる識別限界のバー間隔を決定する。この決定された識別限界のバー間隔に応じてバーコードのバー幅を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーコードを印刷する印刷装置およびそのバー幅補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコード印刷は、熱転写あるいは感熱記録方式を用いた印刷装置で印刷されていることが多い。最近では、インクジェット記録技術を用いた印刷装置で印刷されることも増えてきた。バーコードには、1次元バーコード、2次元バーコードがあり、そのフォーマットは複数存在する。
【0003】
インクジェット方式の印刷装置においては、画像を形成するためのメインドロップが吐出されるのと同時にサテライトと呼ばれる余分な微小滴も同時にノズルから飛翔し、このサテライトにより、やはりバーコードのバーが所定の幅よりも太くなる場合がある。
【0004】
また、インクジェット方式の印刷装置で記録媒体にバーコード印刷をした場合、インクが記録媒体の繊維を伝わって広がる滲みによっても、バーコードを構成するバーが所定の幅よりも太くなる場合がある。
【0005】
感熱方式や熱転写方式などの場合には、プリントヘッドの余分な熱、あるいは熱分布のムラ等により尾引きが発生し太くなる場合がある。
【0006】
図6(a)がバーの理想的な印刷結果であるが、上記のような要因により、図6(b)に示すようにバーの幅が太くなる。この例では、サテライトの影響によりヘッド相対移動方向の下流側にバーの境界が拡大している例を示している。滲みの影響としてはバー幅はその両側に拡大しうる。このように印刷されたときのバーコードのバー幅が太くなることを防止するために、予めバーコードのバー幅の指示値を低減し、印刷したときに所望の太さになるような補正が取られることがある。
【0007】
例えば、特許文献1に記載の「サーマルプリンタによるバーコードの印刷方法」では、尾引き発色などによる増加分があるために、元画像を一律に細くするような補正が行われている。
【特許文献1】特開2003−011433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の技術によれば、図7(a)に示すような補正した元データに対して、その補正データを印刷した時の印刷結果は図7(b)に示したようになる。
【0009】
インクジェット方式の印刷装置においても、サテライト、紙によるにじみ、ヘッドの温度分布によるドロップ量の違い等の影響で、バーコードのバー幅が太くなる。したがって、上記特許文献1の技術の適用が考えられる。
【0010】
しかしながら、その増加分を一律に定めたのでは、ヘッド・環境・経年変化などに対応することは困難である。
【0011】
すなわち、バーコードの太さをある一定量細くしたのでは、実際の印刷環境条件(記録媒体の種類、ヘッドのばらつきなど)に適正に対応できない場合がある。また、太くなる量も図8に示すようにばらつくこともあるので、補正量を決めるのは容易ではない。
【0012】
また、近年インクジェットヘッドにおいても、感熱・熱転写のサーマルヘッドにおいても、ヘッドの長尺化が図られている。長尺ヘッドにおいては、熱分布などの特性が場所において異なることもあるので、ノズル列の中での太り量も図8に示すように一定でない場合がありうる。
【0013】
本発明は、このような背景においてなされたものであり、バーコード補正を行う場合の、適正な補正量を決定することができる印刷装置およびバー幅補正方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による印刷装置は、バーコードを印刷することができる印刷装置において、実際の印刷環境における識別限界のバー間隔を決定するバー間隔識別限界決定手段と、求められた識別限界のバー間隔に応じてバー幅の補正値を決定する補正手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
識別限界のバー間隔は、実際の印刷環境においてどの程度のバー間隔(の大きさ)で隣接するバーが識別できなくなるかの指標となる。したがって、このような識別限界のバー間隔を決定することにより、実際のバー幅の太りの程度を認識することができる。よって、決定された識別限界のバー間隔に応じてバー幅の適正な補正値を得ることができる。
【0016】
より具体的には、隣接する線分の間隔を順次異ならせた複数の線分パターンをテストパターンとして印刷する手段と、前記印刷されたテストパターンの線分に直交する方向にセンサを走査してセンサ出力を得る検出手段とを備え、前記バー間隔識別限界決定手段は、前記センサ出力に基づいて識別限界のバー間隔を決定することができる。このようなテストパターンを用いることにより、個々のバーの幅やバー間隔を実際に測定する必要はなく、センサ出力の閾値判定で識別限界のバー間隔を確認することが可能となる。
【0017】
前記補正手段は、例えば、前記テストパターンに基づいて決定された識別限界のバー間隔値毎に、記録するバーコードのバー幅に対する補正値を予め定めた補正値テーブルを有し、この補正値テーブルを参照して前記補正値を決定することができる。このような補正値テーブルを用いることにより、個別の印刷環境の個別の条件に対応した適正な補正を選定することができる。
【0018】
前記バー幅の補正は、印刷対象のバーコードの元データの補正およびヒートパルス幅の補正の少なくとも一方により行うことができる。
【0019】
前記センサはノズル列を有するプリントヘッドに対して固定的に配置することができる。これにより、印刷したテストパターンを、当該印刷のためのプリントヘッドの記録媒体に対する相対移動と同じ相対移動の動作によりセンサでのテストパターンの読取が可能となる。ここに「固定的」とはセンサとプリントヘッドとの相対的な位置関係が変化しないことを意味し、物理的に両者が一体になっているか否かは問わない。
【0020】
また、この場合、前記センサは、記録媒体に対する前記プリントヘッドの相対移動方向において前記ノズル列の下流側に配置することが好ましい。これにより、テストパターンの印刷のためのプリントヘッドの記録媒体に対する相対移動において、印刷直後のテストパターンをセンサで読み取ることが可能となる。その結果、補正値を迅速に決定することができる。
【0021】
前記センサを複数個設け、それぞれ、前記ノズル列の長手方向における複数の位置に配置するようにしてもよい。これにより、ノズル列の異なる部分でバーの太りの程度が異なる場合でも当該部分毎に個別に補正を行うことができる。
【0022】
前記バーコードの向きは、各バーが記録媒体に対する前記プリントヘッドの相対移動方向に直交する方向に延びる向きである場合に、本発明はより有用である。
【0023】
前記センサを単一個設け、順次、前記ノズル列の長手方向における複数の位置に移動配置して前記テストパターンの読取を行うようにすることも可能である。この場合、センサの個数を増加させることなく、ノズル列の異なる部分毎に個別に補正を行うことができる。
【0024】
前記センサは、記録媒体上に光を照射するための発光素子と、この発光素子から照射され前記記録媒体から反射した光を受ける受光素子とを備え、前記印刷したテストパターンにおける反射光を前記受光素子で検出し、その検出信号に基づいて前記識別限界のバー間隔を決定することができる。
【0025】
本発明によるバー幅補正方法は、印刷装置で印刷されるバーコードのバー幅を補正するバー幅補正方法であって、隣接する線分の間隔を順次異ならせた複数の線分パターンをテストパターンとして印刷するステップと、前記印刷されたテストパターンの線分に直交する方向にセンサを走査してセンサ出力を得るステップと、前記センサ出力に基づいて、識別限界のバー間隔を決定するステップと、求められた識別限界のバー間隔に応じてバー幅を補正するステップとを備えたことを特徴とする。
【0026】
本発明の他の構成および作用効果については以下に記載のとおりである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、バーコードの印刷に際して、実際の印刷環境に対応して適正なバーコードのバー幅の補正を行うことができる。また、識別限界のバー間隔を決定することにより、実際のバーの幅の太りの程度を認識することができるので、実際のバーの太さやバー間隔の大きさを測定する必要がなく、テストパターンと簡単なセンサ構成との組み合わせで実現可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、本発明の印刷装置としてバーコードを印刷するインクジェット方式のバーコードプリンタを例として説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態に係るバーコードプリンタ1の主要部の概略構成を示した図である。
【0030】
記録媒体としての用紙20は、搬送モータ(副走査モータ)8により搬送ローラが回転し、一方向に搬送される。また、キャリッジモード(主走査モータ)7により駆動されるベルトの回転により、用紙搬送方向と直交する方向に、キャリッジ2が往復移動する。キャリッジ2にはプリントヘッド3が搭載されている。プリントヘッド3には複数のノズルが列状に形成されている。画像データに従ってノズルからインク滴が吐出され、用紙20上に画像が形成される。この際、用紙20を間欠的に搬送し、キャリッジの左右の動きと同期させることで、用紙上に画像を形成する。ノズルは複数列の場合も、単列だけの場合もある。
【0031】
プリントヘッド3は、ケーブルを介して制御基板(図示せず)に接続され、制御基板からヘッドを制御するための信号、電源などが供給される。制御基板から転送CLKに同期して画像データと印刷タイミングの信号等が転送される。印刷タイミング信号に合わせて、ノズルからインク滴が吐出される。
【0032】
一例としてキャリッジ2の走査方向に沿ってリニアスケール6を設置し、キャリッジ2に搭載されたエンコーダセンサ5によりリニアスケール6のスリットを光学的に検出し、エンコーダ信号が出力される構成とする。エンコーダセンサ5からのエンコーダ信号に基づき、キャリッジモータ7の制御を行い、キャリッジ2を左右に走査させる。印刷タイミングを生成する信号も、このエンコーダ信号を基準に作られている。
【0033】
図2は、バーコードプリンタ1の概略のハードウェア構成を示したブロック図である。
【0034】
制御部であるコントローラ10、キャリッジ2、キャリッジモータ7、搬送モータ8、エンコーダセンサ8aを有する。エンコーダセンサ8aは後述するロータリエンコーダを構成する要素である。
【0035】
キャリッジ2には、上述のとおり、プリントヘッド3、光学式センサ4およびエンコーダセンサ5を搭載している。光学式センサ4およびエンコーダセンサ5はノズル列を有するプリントヘッド3に対して固定的に配置されている。
【0036】
コントローラ10は、他の部位と接続され、バーコードプリンタ1の全体の制御を行う。コントローラ10は、CPU11、ROM12、RAM13、EEPROM14、I/Oポート15、ASIC16、キャリッジモータ制御部17、搬送モータ制御部18、接続部20を有する。
【0037】
CPU11は、ROM12に格納されたプログラムを読み出して実行することによりバーコードプリンタ1の全体の制御および所定の処理を実行するプロセッサである。
【0038】
ROM12は、このバーコードプリンタ1の動作を定める各種制御プログラムおよび必要な処理を実行するプログラムならびに必要な固定データを格納している読み出し専用のメモリである。
【0039】
RAM13は、CPU11によりワークエリアや一時記憶エリアとして利用される揮発性のメモリである。
【0040】
EEPROM14は、追加的なプログラムや不揮発的に保存しておく必要のある各種データを保存する再書き込み可能な不揮発性メモリである。このようなメモリとしてフラッシュメモリを用いることもできる。
【0041】
I/Oポート15は、光学式センサ4の検出信号をCPU11につなぐポートである。
【0042】
ASIC16は、プリントヘッド3を制御するための制御回路を構成する特定用途向け集積回路である。
【0043】
キャリッジモータ制御部17は、エンコーダセンサ5の出力に基づいてキャリッジモータ7を制御する制御回路を含む。
【0044】
搬送モータ制御部18は、エンコーダセンサ8aの出力に基づいて搬送モータ8を制御する制御回路を含む。
【0045】
接続部20は、コントローラ10の外部の要素をコントローラ10の内部で接続するための部位である。その他、図示しないが、CPU11に接続されるLCDなどの表示部や操作キーなどの入力部を有する操作パネルを備えてもよい。
【0046】
本発明の「バー間隔識別限界決定手段」は光学式センサ4のセンサ出力に基づいてCPU11が所定の処理を実行することにより実現される。また、「補正手段」もCPU11が後述の補正値テーブルを用いて所定の処理を実行することにより実現される。
【0047】
図3は光学式センサ4の構成例を示している。光学式センサ4は、発光素子41と受光素子42との組み合わせにより構成される。発光素子41としては例えば赤外LED(発光ダイオード)を用い、受光素子42としては例えばフォトトランジスタを用いることができる。発光素子41は用紙20の表面上に光を照射し、照射された光の反射光が受光素子42で検出される。この検出信号に基づいて、実際の印刷環境における識別限界のバー間隔が求められる。ここに印刷環境には、使用する印刷装置、プリントヘッド、インク、記録媒体の種別、プリントヘッドやインクの経時変化、等を含む。受光素子42の出力電圧は、図示しないコンパレータの入力端子に接続され、もう一方のコンパレータ(比較器)の入力端子には、基準電圧が設定される。基準電圧は、一例としてD/Aコンバータ(図示せず)で設定することができる。
【0048】
図4は本実施の形態による他の構成のバーコードプリンタ30を示している。用紙20が搬送機構(図示せず)によって、連続的に搬送される。プリントヘッド31は、用紙20の幅方向に亘って延びる長尺のノズル列32を有するライン型のプリントヘッドである。このプリントヘッド31は印刷中、装置内に静止されており、そのノズル列32は用紙搬送方向と直交する方向に並んでいる。用紙20の搬送に合わせて、画像データに従いプリントヘッド31からインク滴が吐出され、用紙20上に画像が形成される。ノズル列32は複数列の場合も、単列だけの場合もありうる。
【0049】
この構成においても、プリントヘッド31は、ケーブルを介して制御基板に接続され、制御基板からヘッドを制御するための信号、電源などが供給される。制御基板から転送CLKに同期して画像データと印刷タイミングの信号等が転送される。印刷タイミング信号に合わせて、ノズルからインク滴が吐出される。
【0050】
図5は、図4のプリンタ30における用紙搬送の構成を説明するための概略図である。用紙搬送方向における印刷位置を把握するための位置検出手段として例えばロータリエンコーダを用いることができる。ロータリエンコーダとしては、搬送ローラ52の軸に設置されたコードホイール51の円周部分に印刷されているスリットをエンコーダセンサ8aが検出し、エンコーダ信号を出力する構成とすることができる。このエンコーダセンサ8aからのエンコーダ信号に同期して、搬送モータを駆動し、搬送ローラ52が回転することにより、ロール紙54から用紙が給送される。印刷タイミングを定める信号も、このエンコーダ信号を基準に生成される。
【0051】
以下、本発明におけるテストパターンの構成およびこれを用いたバーコード補正について具体的に説明する。本発明では、用紙等の記録媒体上に、バーコード幅補正のためのテストパターンとして、隣接する線分の間隔を順次異ならせた複数の線分パターンを印刷する。さらに、印刷した線分パターンを光学式センサで読み取り、読み取った結果を元に印刷データを補正する。
【0052】
図9は本実施の形態におけるテストパターンの構成例を示している。このテストパターンのデータは、バーコードプリンタ1内の上述したROM12またはEEPROM14に記憶されていることを想定している。
【0053】
図9(a)は本実施の形態におけるテストパターンの構成例を示している。テストパターン90は、線分パターン91〜95を含んでいる。線分パターン91〜95の各々は3本の平行な線分から構成されている。隣接する線分の間隔は線分パターン91〜95によって異ならせてある。この例では線分パターン91〜95の線分間隔はそれぞれ、d、2d、3d、4d、5dとしてある。線分間隔として、この例では自然数倍の例を示したが、必ずしも自然数倍である必要はない。
【0054】
バーコードが理想的に印刷されたときには、このテストパターン90に対して各線分に直交する方向に光学式センサ4を走査したとき、図9(b)に示すような波形の出力信号が得られる。しかしながら、実際には図10(a)のように、太くなった分が線分間隔の白地(用紙の地色)を埋めてしまうので、線分間隔が既定値より狭くなる。結果として、光学式センサ4の出力は図10(b)に示すような波形となる。波形の白地部分のピーク値に相当する出力電圧値を、所定の閾値としての基準電圧vと比較し、出力電圧値が基準電圧v以下となったかどうかによりバー間隔識別限界に達しているかどうかが分かる。記録媒体の色が白以外の場合やインクの色が黒以外の場合などに対応するために、波形の最低レベルから、バー間の白地部分のピーク値までの振幅値または最大振幅に対する比率を、予め定めた閾値と比較するようにしてもよい。
【0055】
出力電圧値が基準電圧v以下となったとき、その線分パターンについてバー間隔識別限界に達したと判断し、そのバー間隔を確認する。振幅値が閾値v以下となるバー間隔が複数存在する場合にはそれらのうち最大のバー間隔を、求めるバー間隔とする。
【0056】
図11は、本実施の形態において用いる補正値テーブル110の内容例を示している。この補正値テーブル110は、上記のようにテストパターンに基づいて決定された識別限界のバー間隔値毎に、記録するバーコードの線幅(印刷する黒バーの幅)に対する補正値を予め定めたデータテーブルである。この例では、補正値として、印刷されるバー幅の指示値毎に補正後のバー幅を定めている。例えばバー間隔の識別限界値が0.4mmであった場合、指示値1.2mm幅のハーコードのバー幅を1.18mmに補正し、指示値1.4mm幅のバーコードのバー幅を1.38mmに補正している。このような補正値テーブル110の個々の条件での補正値は実験的に求めることができる。同じバー間隔識別限界値であっても、バー幅の指示値の違いによって補正値が変わっているのは、一般に、バー幅が大きいほどバー幅の太り量も大きいことに起因していると考えられる。すなわち、バー幅が大きい方がサテライトやにじみの影響も大きいことが推測される。
【0057】
なお、使用する記録媒体の種類によって補正値も変わりうる。この問題に対しては、予め定めた基準の記録媒体にテストパターンを印刷して、バーコード間隔識別限界を求め、使用する記録媒体に応じて予め定められた修正値の加算または修正係数の乗算を行うことで対応することができる。そのために、記録媒体の種類毎に修正値または修正係数を定めたデータテーブルを用意しておく。
【0058】
勿論、実際にバーコード印刷に使用する記録媒体にテストパターンを印刷して用い、記録媒体の種類毎に補正値テーブルを設けておいてもよい。
【0059】
また、バーコードの向き(ヘッド相対移動方向に対するバーの向き)によってもバー幅が変わりうる。(上述したサテライトの影響はバーの向きがヘッド相対移動方向に対して直交する向きの場合に顕著に現れる。)本実施の形態では、少なくともサテライトの影響が顕著となる向きのバーコードについてのみ適用するようにしてもよい。あるいは、バーコードの向き毎に別々のテストパターンおよび補正値テーブルを設けるようにしてもよい。
【0060】
図12は、本実施の形態においてバーコードの補正値を決定するための処理の手順例を示したフローチャートである。この処理は、CPU11(図2)がROM12内のプログラムを読み出して実行することにより実現される。この処理の実行時期としては、例えば、バーコードの印刷を行う前に行うことができる。のみならず、所定枚数のバーコードの印刷後、または所定時間経過後等に行うことにより、経時的な印刷条件の変化などにも対応することができる。また、任意の時点でユーザの指示に応じて行うようにしてもよい。
【0061】
まず、テストパターンのデータを読み出して、テストパターンの印刷を開始する(S11)。ついで、印刷されたテストパターンを光学式センサ4で読み取る(S12)。この際、必要に応じて、エンコーダ信号により検出したテストパターンの各バーの位置を管理することができる。すなわち、光学式センサ4を用紙先端部が通過した時からエンコーダパルスをカウントして各線分パターンの検出する位置を把握することができる。
【0062】
テストパターンの読取結果すなわちセンサ出力から、識別限界となるバー間隔を決定する(S13)。そのようなバー間隔が存在しなければ(S14,No)、補正不要と決定して(S16)、この処理を終了する。
【0063】
識別限界となるバー間隔が存在すれば(S14,Yes)、補正値テーブル110を参照して、バー幅の補正値を決定する(S15)。この求められた補正値は必要に応じて一時的に記憶しておく。その後、バーコードの印刷時には当該補正値にしたがってバーコードの補正が行われる。
【0064】
なお、バーコードの補正すなわちバー幅の補正は、本実施の形態においては、印刷対象のバーコードの元データの補正すなわち元データにおいてバー幅を補正値に合わせるようにデータを修正する。この代わりに、補正対象のバーの印刷時にプリントヘッドに与えるヒートパルス幅を補正値に応じて修正(パルス幅を低減)するようにしてもよい。
【0065】
上記のように本実施の形態では、テストパターンとして線分間隔の異なる線分パターンを複数用意しておき、各線分パターンについてバー間隔識別ができるか否か(すなわちバーとバーの間の隙間が検出できるか否か)に基づいて、バー間隔識別ができなくなる線分間隔を求める。これにより、実際のバー幅やバー間隔を測定する必要がなくなる。
【0066】
本実施の形態の変形例として、図13に示すように複数個の光学式センサ4a,4b,4cを設けてもよい。特に、図4に示したようなライン型のプリントヘッド31を用いる場合、ノズル列の部分によってバー幅が異なることがありうる。このような場合に、複数の光学式センサを用いれば、プリントヘッドのノズル列32をいくつかのブロックに分けて同時にテストパターンの走査を行うことができる。その結果、よりきめ細かな補正を行うことができる。図の例では、中央と両端部の3つの部分に分けている。
【0067】
プリントヘッド31のノズル列32の長手方向の大部分を利用してバーコードを印刷する場合、図14に示すように、3つの光学式センサ4a,4b,4cでテストパターン90のそれぞれの部分(バーの中央部と両端部)を読み取る。例えば、図15(b)に示したように印刷後のバーの中央部が一番太くなり、端部に行くほどその太り量が減るような場合、光学式センサ4a,4b,4cでの出力電圧(検出波形)は図15(b)のようになる。したがって、中央部での識別限界のバー間隔は端部での識別限界のバー間隔より大きくなる。これは、プリントヘッド31の長手方向での温度変化などにより、中央部の方がバーの太りの程度が大きく、より大きいバー間隔で識別限界に達することを意味する。よって、中央部の方が大きくなり、端部よりも中央部をより細くする補正を行うことになる。
【0068】
結果として図16に示すように、同図(a)のような幅のバーを印刷する際に、同図(b)に示すように両端側のバーの幅を小さくするだけでなく、バーの中央部については両端側の幅よりさらに小さくする。これにより、印刷後には同図(c)に示すように、バーの中央部と端部でのバー幅のばらつきが小さくなる。また、副次的に、バーコードの品位だけでなく、ノズル列の位置に応じて吐出条件を調整することにより、その他の画像を印刷する場合においても、その品質を向上させることができる。
【0069】
バー幅の補正の補正の方法の変形例として、図16の構成において、印刷対象のバーコードのバー全体に対して元データの修正を行うとともに、バーの中央部を印刷するプリントヘッドのノズル群に対してのみプリントヘッドに与えるヒートパルス幅を補正値に応じて修正(パルス幅を低減)するようにしてもよい。
【0070】
なお、シリアル型のプリンタにおいて、図17に示すようにプリントヘッド3aのスキャン方向(ヘッド相対移動方向)に直交する方向に並んだノズル列32aを有するキャリッジ2aが主走査方向に移動しているときに、図9(a)に示したようなテストパターン90(各バーがヘッド相対移動方向と直交する方向)を印刷するとともに、キャリッジ2上に設けられた光学式センサ4により、印刷された線分パターンを検出することができる。この印刷と検出は同じ走査(スキャン)で行うことが可能である。ただし、本発明は印刷と検出を別のスキャンで行う場合を排除するものではない。
【0071】
図18に示すように、ノズル列32bが長いシリアル型のプリントヘッド3bを用いる場合、ノズル位置により補正量を変えたい場合もありうる。このような場合には、印刷したテストパターンに対してノズル列方向の複数箇所でキャリッジ2bを順次走査して線分パターンの検出を行うことにより、それぞれの位置に応じた補正を行うことができる。そこで、テストパターン90を印刷したあと、そのまま、バーの一端部について1回目の検出を行い、その後、光学式センサ4がノズル列の中央部に位置するようにテストパターン用紙を所定量搬送して、2回目のテストパターンの走査を行う。さらに、光学式センサ4がノズル列の下側端部に位置するように用紙を所定量搬送して、バーの他端部について3回目のテストパターンの走査を行う。このように、テストパターンの検出位置を異ならせて順次の別走査によりテストパターンを読み取ることにより、光学式センサ4の個数は単一個で済む。
【0072】
ライン型のプリントヘッドを用いる場合にも、光学式センサ4をノズル列方向に移動配置させることができる機構を設ければ、単一個の光学式センサ4を用いてノズル列方向の複数箇所で順次走査を行うことも可能である。
【0073】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。
【0074】
例えば、バーコードの補正値テーブルはプリンタが保持し、プリンタにおいて補正値を決定する処理を実行するものとしたが、バーコードの印刷を指示する外部装置、例えばホストPCなどの外部装置に補正値テーブルを保持し、テストパターンの検出結果のデータをプリンタから取得し(または、ユーザによるデータの入力を受けて)、当該外部装置で補正値の決定するようにしてもよい。
【0075】
さらには、テストパターンデータについてもホストPC内の記憶装置に保持しておき、必要時にそのデータをプリンタへ送出して印刷させるようにしてもよい。
【0076】
インクジェットヘッドを用いるプリンタについて説明したが、本発明はサーマルヘッドを用いるプリンタにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態に係るバーコードプリンタの主要部の概略構成を示した図である。
【図2】図1に示したバーコードプリンタの概略のハードウェア構成を示したブロック図である。
【図3】図1内に示した光学式センサの構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態による他の構成のバーコードプリンタを示した図である。
【図5】図4のプリンタにおける用紙搬送の構成を説明するための概略図である。
【図6】従来のバーコードの印刷に係る問題点の説明図である。
【図7】従来のバーコードの補正方法の説明図である。
【図8】従来のバーコードの印刷に係るさらなる問題点の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態におけるテストパターンの構成例およびその読み取り波形の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態におけるテストパターンの構成例およびその読み取り波形の他の例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態において用いる補正値テーブルの内容例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態においてバーコードの補正値を決定するための処理の手順例を示したフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態の変形例の説明図である。
【図14】図13の変形例における複数の光学式センサとテストパターンとの関係を示す図である。
【図15】図14の構成における複数の光学式センサの出力波形の例を示す図である。
【図16】図15の複数の光学式センサの出力波形の検出結果に基づく、図13の構成におけるバーの補正の状態を示す図である。
【図17】シリアル型のプリンタにおける本実施の形態の動作の説明図である。
【図18】図17の構成および動作の変形例の説明図である。
【符号の説明】
【0078】
2,2a,2b…キャリッジ
3,3a,3b…プリントヘッド
4,4a,4b,4c…光学式センサ
5…エンコーダセンサ
6…リニアスケール
7…キャリッジモータ
8…搬送モータ
8a…エンコーダセンサ
10…制御部
20…用紙(記録媒体)
30…バーコードプリンタ
31…プリントヘッド
32,32a,32b…ノズル列
51…コードホイール
52…搬送ローラ
90…テストパターン
110…補正値テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーコードを印刷することができる印刷装置において、
実際の印刷環境における識別限界のバー間隔を決定するバー間隔識別限界決定手段と、
前記識別限界のバー間隔に応じてバー幅の補正値を決定する補正手段と
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
隣接する線分の間隔を順次異ならせた複数の線分パターンをテストパターンとして印刷する手段と、
前記印刷されたテストパターンの線分に直交する方向にセンサを走査してセンサ出力を得る検出手段とを備え、
前記バー間隔識別限界決定手段は、前記センサ出力に基づいて識別限界のバー間隔を決定する
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記テストパターンに基づいて決定された識別限界のバー間隔値毎に、記録するバーコードのバー幅に対する補正値を予め定めた補正値テーブルを有し、この補正値テーブルを参照して前記補正値を決定する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記バー幅の補正は、印刷対象のバーコードの元データの補正およびヒートパルス幅の補正の少なくとも一方により行う請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記センサは、ノズル列を有するプリントヘッドに対して固定的に配置された請求項2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記センサは、記録媒体に対する前記プリントヘッドの相対移動方向において前記ノズル列の下流側に配置された請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記センサを複数個設け、それぞれ、前記ノズル列の長手方向における複数の位置に配置したことを特徴とする請求項2、5または6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記バーコードの向きは、各バーが記録媒体に対する前記プリントヘッドの相対移動方向に直交する方向に延びる向きである請求項1〜7のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項9】
前記センサを単一個設け、順次、前記ノズル列の長手方向における複数の位置に移動配置して前記テストパターンの読取を行うことを特徴とする請求項2、5または6に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記センサは、記録媒体上に光を照射するための発光素子と、この発光素子から照射され、前記記録媒体から反射した光を受ける受光素子とを備え、前記印刷したテストパターンにおける反射光を前記受光素子で検出し、その検出信号に基づいて前記識別限界のバー間隔を決定する請求項2、5〜7、9のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項11】
印刷装置で印刷されるバーコードのバー幅を補正するバー幅補正方法であって、
隣接する線分の間隔を順次異ならせた複数の線分パターンをテストパターンとして印刷するステップと、
前記印刷されたテストパターンの線分に直交する方向にセンサを走査してセンサ出力を得るステップと、
前記センサ出力に基づいて識別限界のバー間隔を決定するステップと、
求められた識別限界のバー間隔に応じてバー幅を補正するステップと
を備えたバー幅補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−12741(P2010−12741A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176715(P2008−176715)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】