説明

印刷装置および紙送り装置

【課題】ロール紙の巻き癖を修正できるコンパクトなプリンタを提供する。
【解決手段】本例のプリンタ1においては、印刷機構10のフィードローラであるプラテンローラ16の出口側に近くに巻き癖を伸ばすように傾斜したガイド面30を設け、このガイド面30にロール紙3の腰の強さを利用してロール紙3を押し付けて巻き癖を伸ばすようにしている。ロール紙を引張って巻き癖を修正する機構に比べて、効率的にロール紙のカールを除去でき、紙送り用のモータの負荷を減らしてモータを小さくでき、カットシートに印刷するのと同様のアウトプットが得られる使い勝手の良い印刷装置であって、さらにコンパクトで、消費電力の小さな印刷装置を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙のカールを修正可能な印刷装置および紙送り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロール紙に印刷するタイプのプリンタやファクシミリなどの印刷装置が知られている。このような印刷装置は、カットシートに印刷する装置に比べて、印刷用紙を収納するスペースが少なくて済み、全体としてコンパクトなサイズに纏めることができる。しかしながら、ロール紙に印刷するために、そのロール紙の巻癖が問題になる。例えば、装置から出力された印刷済みのロール紙は巻き癖が残っているのでカールする。したがって、印刷済みの用紙をプリンタから出力する際にA4などの所定のサイズにカットしても、それらをストッカなどに重ねて保持することができない。また、出力された用紙がカールしているので、複数枚の束をまとめてファイリングするなどの作業が煩わしくなる。したがって、現在では、プリンタやファクシミリのサイズは大きくなるが、シート状の印刷用紙、またはカットシートに印刷するものが好まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、PDAや携帯電話などの携帯端末の普及に伴い、これらの携帯端末と共に外出先で使用できるコンパクトなプリンタが強く要望されている。このためには、ロール紙を印刷用紙としたプリンタが適していることは上述したとおりであるが、使い勝手の良いプリンタにするためにはロール紙の巻き癖、すなわち、カールをコンパクトな機構で修正、除去または矯正できることが重要である。特に、PDAなどの携帯端末用の印刷装置には直径が10mm程度のロール紙が使用されることが予想され、外部に出力されてくるプリントされた物(プリントアウト)は、カールして直径が10mm程度あるいはそれ以下に丸まった印刷物になる。このような小さな径で丸まった印刷物は大きな径で丸まった印刷物に比べて非常に取り扱い難く、巻き癖の修正は極めて重要なものになる。
【0004】
ロール紙のカールを除去するための機構としては、先端が鋭角とされた紙ガイドにばねなどの力によりロール紙を押し付ける機構が考えられる。しかしながら、先端が鋭角となった紙ガイドを紙経路に設置して紙経路を変えたり、ロール紙を紙ガイドに押し付けるばねを収納するスペースを確保したりする必要があるので、カールを修正するための機構が占めるスペースが大きくなってしまう。したがって、コンパクトなプリンタは実現できない。さらに、このような機構ではカールがそれほど効率良く除去できないという問題もある。
【0005】
また、紙経路の途中でロール紙が紙ガイドとばねで挟まれた状態となるので、紙送りするための抵抗が増大し、その負荷に対応できる出力のモータが必要になる。したがって、モータサイズが大きくなり、消費電力も増大するのでコンパクトなプリンタを実現するには適していない。
【0006】
さらに、紙経路の途中でロール紙が、先端が鋭角となった紙ガイドとばねで挟まれた状態となるので、プリンタがスタンバイとなってロール紙が挟まれた状態が続くとロール紙の挟まれた部分は逆方向にカールした癖がついてしまう。したがって、先端だけが逆方向にカールして、全体はロール紙が巻かれていた方向にカールしているという非常に取り扱いにくく、また、見栄えも良くないプリントアウトが得られることになる。プリンタがスタンバイのときは、ばねを外すなりの方法で逆方向のカールを防止することも可能であるが、そのための機構を収納することによりプリンタが大きくなり、また、コストアップになる。
【0007】
そこで、本発明においては、ロール紙の巻き癖を修正できると共に、モータの負荷が増大するのも抑制でき、さらに、逆方向に癖をつけることもない紙送り装置およびそれを備えた印刷装置を提供することを目的としている。そして、ロール紙を印刷用紙とした使い勝手の良い印刷装置であって、携帯電話などの携帯端末と共に持ち運びするのに最適な非常にコンパクトな印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明においては、フィードローラと、サブローラやプレートなどの紙押え部材が協働して出力したロール紙が押付けられ、ロール紙が湾曲した方向と逆方向に傾斜した面を設け、この傾斜した面にロール紙を当ててロール紙自身の腰の強さと紙送り力を利用して巻き癖を除去するようにしている。すなわち、本発明の紙送り装置は、ロール紙を挟んで紙送可能なフィードローラおよび紙押え部材と、フィードローラから出力されたロール紙が押付けられ、ロール紙を湾曲方向と逆方向に導くように傾斜した第1のガイド面を形成する第1の紙ガイドと、ロール紙の外側の面をガイドし、ロール紙を第1のガイド面の近傍に導く第2のガイド面を備えた第2の紙ガイドとを有し、第1のガイド面は、ロール紙が当たる方向に対して少なくとも45度で傾き、第2のガイド面の出力側の端を第1のガイド面の近傍に配置することによりロール紙が少なくとも45度で曲がる条件を維持して前記ロール紙のカールを除去する。
【0009】
この紙送り装置であれば、紙経路の途中でロール紙を挟んで伸ばしたり、あるいは紙送り方向と逆方向に引っ張って紙を伸ばしたりしていないので、紙送りする際の負荷が殆ど増加しない。ロール紙をフィードローラの出口で第1のガイド面に当てるので若干の負荷が発生するが、挟んだり、引っぱり伸ばしたりすることはなく、第1のガイド面に沿ってほぼフリーな状態で紙送りできるので、挟み込んでカールを除去する方式に比べれば、カールを除去するために必要なモータの負荷の増加は半分あるいはそれ以下にできる。
【0010】
そして、本発明の紙送り装置は、ロール紙の巻き癖を非常に効率良く除去できることが発明者らの実験により確認されている。すなわち、本発明の紙送り装置においては、巻き癖がついたロール紙が、フィードローラの出口で、第1のガイド面に当ってロール紙がカールまたは湾曲した方向とは逆の方向、すなわち、巻き癖の湾曲と反対側に湾曲するように紙送りされる。その際、第1のガイド面をフィードローラの近傍に配置したり、フィードローラと第1のガイド面の間にロール紙の両面をガイドしてロール紙が大きく撓まないように第1のガイド面に導く紙ガイドを設けることにより、ロール紙自身の腰をいかし、ロール紙を強い力で第1のガイド面に押付けられる。したがって、フィードローラにより紙送りされたロール紙は、第1のガイド面に当ったところで急激に巻き癖と逆方向に曲げられる。また、ロール紙自身の腰の強さがあるので、ロール紙を第1のガイド面に押し付けて急激に曲げるのに十分な力が、フィードローラからロール紙を介して、そのロール紙が第1のガイド面に当たる部分に伝達される。その結果、第1のガイド面でロール紙は巻き癖と逆方向に曲がって伸び、巻き癖によるカールが効率良く除去されると考えられる。
【0011】
このため、フィードローラによりロール紙が紙送りされていない状態、すなわち、プリンタがスタンバイ状態であると、ロール紙は第1のガイド面に強く押し付けられていない。このため、ロール紙が逆方向にカールすることも避けられている。
【0012】
このように、本発明の紙送り装置は、紙送り用のモータの負荷は小さく、効率良く巻き癖を除去でき、さらに、逆方向に湾曲する癖がつくのも防止できる。さらに、第1のガイド面を有する第1の紙ガイド、フィードローラおよび紙押え部材という極めて簡易な構成であり、ロール紙の巻き癖を効率良く除去可能なコンパクトな紙送り装置を提供できる。このため、本発明の紙送り装置をプリンタなどの印刷装置に搭載することにより、ロール紙を用いたコンパクトな印刷装置であって、ロール紙の巻き癖が除去された印刷物を出力できる使い勝手が良く、さらに、コンパクトで携帯電話などの携帯端末と共に持ち運びするのに最適な印刷装置を提供できる。
【0013】
本発明の紙送り装置においては、フィードローラの近傍、特に、フィードローラと第1のガイド面との距離が10mm以下となるように、第1の紙ガイドを配置することが望ましい。このように第1の紙ガイドを配置すると、ロール紙が第1のガイド面とフィードローラとの間で撓むことを防止でき、ロール紙の腰をいかして第1のガイド面に確実に押付けられる。これにより、巻き癖を確実に除去することができる。また、第1の紙ガイドをフィードローラに接近させたレイアウトになるので、紙送り装置をコンパクトに纏めることができる。
【0014】
第1のガイド面は、この第1のガイド面にロール紙が当たる方向に対し45度以上傾けることにより、カールを除去するのに十分な傾きを得ることができる。しかしながら、ロール紙の巻き癖の強さはロール紙の巻き径やロール紙の紙質などに左右される。したがって、巻き癖の強弱は、ロール紙の巻き始め部分と巻き終わり部分とで異なったり、使用するロール紙に応じて異なるので、第1のガイド面の傾斜および/または第1のガイド面とフィードローラとの距離を変更可能な手段を設けることにより、ロール紙を曲げる角度を変化させて強さの異なる巻き癖をフレキシブルに修正できるようにすることが望ましい。
【0015】
また、フィードローラから出力されたロール紙を第1の紙ガイドの近傍に導く第2のガイド面を備えた第2のガイドを設けることも有効である。この第2のガイド面によってフィードローラから出力されたロール紙が第1のガイド面に当たる位置および角度を、第2のガイド面により調整でき、また、その条件を維持できる。したがって、ロール紙の第1のガイド面に当る部分が紙送りに伴って第1のガイド面上を動いてロール紙を逆方向に曲げる角度が緩くなり、巻き癖を除去する能力が不安定になることを防止できる。
【0016】
この第2の紙ガイドは、紙押え部材がロール紙をフィードローラに押付ける平坦なガイド面を備えた第3の紙ガイドであれば、それと一体にして第3の紙ガイドの出力端を第2の紙ガイドにすることができる。一方、第1の紙ガイドがフィードローラから離れており、フィードローラの出力側からロール紙を第1のガイド面に導くように、互いに対峙しているガイド面を備えた第4の紙ガイドを設ける場合は、それと一体にして、第4の紙ガイドの出力端の部分を第2の紙ガイドと機能させることも可能である。
【0017】
第2のガイド面と第1のガイド面との距離はロール紙の腰の強さをいかして押せる距離であることが重要である。したがって、第2のガイド面の出力端と第1のガイド面との距離を5mm以下としておくことが望ましい。また、第2の紙ガイドの出力端のコーナーを直角または鋭角としておくことにより、巻き癖を除去できる角度でロール紙を第1のガイド面に安定して押付けることが可能になる。さらに、本発明の紙送り装置においては、第2のガイド面の傾斜および/または第2のガイド面と第1のガイド面との距離を変更可能にすることによってもロール紙の巻き癖を除去する能力を調整できる。
【0018】
本発明の印刷装置として、上記の紙送り装置を印刷機構とは別に設けても良いが、紙押え部材としてラインサーマルヘッドを用い、フィードローラとしてラインサーマルヘッドとロール紙を挟んで紙送りするプラテンローラを用いることによりロール紙の巻き癖を除去する紙送り装置と印刷機構とを一体化できる。したがって、さらにコンパクトで低コストな印刷装置を提供できる。
【0019】
また、第1の紙ガイドを平プラテンとし、第1のガイド面に支持されたロール紙に印刷する印刷ヘッドを有する印刷機構を採用することにより、印刷機構の一部で本発明の紙送り装置を構成でき、これによってもさらにコンパクトで低コストの印刷装置を提供できる。印刷ヘッドはラインタイプでも良いが、第1のガイド面に沿って動くシリアルプリンタであっても良く、そのような印刷ヘッドとしてインクジェットタイプを採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかるプリンタの概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示すプリンタの紙送り装置を構成する部分を拡大して示す図である。
【図3】フィードローラと第1の紙ガイドの間に独立した第2の紙ガイドがあるプリンタの例を示す図である。
【図4】図3に示すプリンタの変形例を示す図である。
【図5】本発明の異なるプリンタの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を参照して本発明をさらに詳しく説明する。図1に本発明に係るプリンタ(印刷装置)の概略を側方からの断面図を用いて示してある。本例のプリンタ1は、ラインサーマルヘッド15とプラテンローラ16で感熱性のロール紙3を挟んで紙送りしながら印刷するサーマルプリンタである。このプリンタ1は、厚さが15mm程度の箱型のハウジング2を有しており、ハウジング2の一方の側(前方)Fにロール紙3の用紙収納部11が設けられている。用紙収納部11の前壁2bとなるハウジング2の前方Fの壁は、ヒンジ13を介して前方側に開くことができ、幅105mm、直径12mm程度のロール紙3をセットできる。
【0022】
ハウジング2の後方Bは、ロール紙3に印刷を行う部分12であり、ラインサーマルヘッド15およびプラテンローラ16を備えた印刷機構10と、プラテンローラ16の駆動用のモータ18、制御パネル23などの印刷関連の機構が収納されている。用紙収納部11から供給されたロール紙3は印刷機構10で印刷された後に、ハウジング2の上部または上壁2aに設けられた排紙口4から外部に出力される。排紙口4には手切カッター5が設けられており、出力されたロール紙3をカットすることにより、A6(105mm×148mm)の用紙サイズの単票状のプリントアウトを得ることができる。また、本例のプリンタ1は、図示されていないがUSBインターフェースや赤外線インターフェースなどの適当なインターフェースを介してホストとなる携帯電話あるいはPDAなどのモバイルコンピュータや卓上型のパーソナルコンピュータから印刷用のデータや制御用のデータを受信できるようになっている。
【0023】
本例のプリンタ1では、排紙口4を上方としたときに、ラインサーマルヘッド15とプラテンローラ16が上下に配置され、プラテンローラ16はゴムなどの摩擦力の大きな面となり、ヘッド15およびプラテンローラ16でロール紙3を挟んで確実に紙送りできるようになっている。また、プラテンローラ16の下方および後方には、前方Fの用紙収納部11から供給されたロール紙3をプラテンローラ16の下方に導き、その進行方向をプラテンローラ16に沿ってほぼ180度変え、上方のサーマルヘッド15に導く給紙ガイド17が設けられている。
【0024】
一方、排紙口4には、プラテンローラ16の出力側の近傍から斜め上方に延びたガイド面(第1のガイド面)30を有する紙ガイド25が配置されている。また、本例のラインサーマルヘッド15は、発熱してロール紙3に印刷を行なうヘッド部22がプラテンローラ16と接触する位置に配置され、それからロール紙3の出力側にプレート部分21が延びており、その先端部21aがガイド面30の近傍に達している。
【0025】
図2に、ラインサーマルヘッド15、プラテンローラ16および紙ガイド25が関連するプラテンローラ16の出力側の構成を拡大して示してある。ラインサーマルヘッド15およびプラテンローラ16によりロール紙3は、サーマルヘッド15の下面(第2のガイド面)19にほぼ沿った前方Fの第1の方向φ1に送り出される。そして、紙ガイド25のガイド面30に当り、その傾斜に沿って上方に曲げられ、排紙口4に導かれる。第1のガイド面30の傾斜Sはロール紙3を、その巻き癖によりカールした方向とは反対方向に曲げるように傾いており、本例では、用紙3が送り出される第1の方向φ1に対して時計方向に約50度傾いている。したがって、ロール紙3は、第1のガイド面30に当った部分3Pでカールしている方向と逆方向に曲げられて伸ばされることにより巻き癖によるカールが除去され、平坦な連続用紙として排紙口4から出力される。このため、カッター5によりA6サイズなどの所望のサイズにカットすることにより、ロール紙3でありながら、所望のサイズに予めカットされたカットシートに印刷したのと同様のプリントアウトを得ることができる。
【0026】
したがって、本例のプリンタ1では、印刷機構10のプラテンローラ16と、サーマルヘッド15と紙ガイド25により本発明の紙送り装置40が構成されており、プラテンローラ16がフィードローラ、サーマルヘッド15が紙押え部材、紙ガイド25が第1のガイド面を備えた第1の紙ガイドに対応している。また、サーマルヘッド15はロール紙をフィードローラに対して押付ける平坦なガイド面を備えた第3の紙ガイドに対応しており、このサーマルヘッド15の出力端、すなわち、第1のガイド面30に延びたプレート部分21の先端部21aが第2の紙ガイドに対応している。
【0027】
第1のガイド面30の傾斜Sがロール紙3をその湾曲方向と逆方向に曲げるように傾いていればロール紙3の巻き癖を取ることが可能であり、本願の発明者の実験によると、第1のガイド面30の傾斜Sをロール紙3が第1のガイド面30に当たる第1の方向φ1に対して45度以上傾けることにより、ロール紙3のカールを確実に除去して略平坦にすることが可能である。したがって、通常のカットシートと同様にハンドリングできるプリントアウトを得るためには、第1のガイド面30の傾斜Sの角度θは、第1の方向φ1に対して45度以上にすることが望ましい。
【0028】
また、この紙送り装置40においては、第1のガイド面30はフィードローラであるプラテンローラ16の近傍に配置することが望ましく、プラテンローラ16と第1のガイド面30との距離Rが10mm以下となるように配置することが望ましい。この紙送り装置40においては、ロール紙3が自己の巻き癖によって多少湾曲するとはいうものの、ロール紙自身の腰の強さにより第1のガイド面30にロール紙3が略直線的に導かれ、第1のガイド面30に当ったところ3Pで急激に巻き癖と逆方向に曲げ伸ばされることにより巻き癖のカールが除去されると考えられる。そして、第1のガイド面30に当った部分3Pで急にロール紙3の角度を変えるためには十分な力でロール紙3を第1のガイド面30に押し付けることが望ましく、ロール紙自身の腰の強さを利用してプラテンローラ16の動力がその部分3Pに伝達されるようにするためには、プラテンローラ16と第1のガイド面30との間でロール紙3が曲がったり撓んだりしないことが重要である。したがって、本例のプリンタ1では、レイアウトや組立てを考慮して許される範囲で、第1のガイド面30をプラテンローラ16のできる限り近傍に配置している。
【0029】
本例の紙送り装置40では、ロール紙3が下側にカールしており、ロール紙3が第1のガイド面30に当たる位置3Pではロール紙3を若干下方に押す力が働く。この力が第1のガイド面30が斜め上方にロール紙3を導くのに対抗し、第1のガイド面30に当たる位置3Pは上方にずれにくく、当たる位置3Pの周りの状況は安定するので巻き癖を安定して除去することができる。
【0030】
しかしながら、ロール紙3の腰の強さによっては、ロール紙3が第1のガイド30に当たる位置3Pが第1のガイド面30に沿って上方に移動し、その位置の周りではロール紙3が第1のガイド面30に当たる方向とガイド面30との角度、すなわち、実効的な角度θが小さくなってしまい、巻き癖が除去しにくくなる。そこで、本例のプリンタ1では、第2の紙ガイドとなるサーマルヘッド15のプレート部分21の先端部21aを第1のガイド面30の近傍まで延ばしてこれらをさらに接近させ、ロール紙3の腰の強さを確実にいかせる構成にしている。このため、第2の紙ガイドの出力端と第1のガイド面30との距離Lが5mmとなるように、プレート部分21の先端部21aを第2の紙ガイドとし、その下面15aを第2のガイド面としている。また、先端部21aのコーナー24を直角または鋭角にすることによって、ロール紙3が第1のガイド面30と当る位置3Pが上方に移動し難い環境を作っている。これにより、ロール紙3が第1のガイド面30に当る方向を第1の方向φ1を維持することができ、ガイド面30の傾斜Sとの角度θを維持することができる。さらには、ロール紙3がカールにより若干下方に傾くので、ロール紙3がガイド面30に当たる方向とガイド面30が成す実効的な角度θは大きくなり、よりロール紙3の巻き癖を除去しやすい状況となる。
【0031】
また、紙送り方向である第1の方向φ1は、プラテンローラ16にサーマルヘッド15が接した点の接線方向になるが、第2の紙ガイドであるプレート部分21の先端部21aの角度を制御することにより、第1の方向φ1を制御することが可能になる。したがって、第1のガイド面30にロール紙3が当たる角度θを変えて、巻き癖がさらに除去し易い環境を作れる。同様に、第1のガイド面30の傾斜を変更することによっても巻き癖を除去する条件を変えることができる。
【0032】
また、ロール紙3の腰の強さをいかすには、フィードローラであるプラテンローラ16と第1のガイド面30との距離R、あるいは先端部21aーと第1のガイド面30との距離Lを短くすることが望ましい。一方、第1の方向φ1に対し第1のガイド面30の傾斜Sが大きくなりすぎたり、距離RあるいはLが小さくなりすぎるとロール紙3の変形量が大きくなりすぎて逆にカールしたり、ロール紙3に皺がよったりするなどのプリントアウトの質が低下する可能性がある。
【0033】
したがって、本例のプリンタ1では、第1の紙ガイド25にプラテンローラ16の軸方向に延びるシャフト31が設けられており、このシャフト31を中心に第1の紙ガイド25を旋回できると共に、第1の紙ガイド25を前後方向にスライドできるようになっている。このため、第1の紙ガイド25をもって動かしたり、シャフト31を外部から操作することにより、第1のガイド面30の傾斜Sと、第1のガイド面30と先端部21aとの距離Lを調整できる。したがって、ロール紙3が消費されて巻き径が変わることによりロール紙3の巻き癖の強弱が変わったり、ロール紙3の紙質が変わったときでも、その巻き癖を除去するのに適した状態にすることができる。第1の紙ガイド25の代わりにサーマルヘッド15の先端部21aの角度や位置を制御できるようにしても良い。
【0034】
このように、本例の紙送り装置40を有するプリンタ1では、プラテンローラ16の出口側で第1のガイド面30にロール紙3を当てて巻き癖を除去することができる。したがって、巻き癖を除去するためにロール紙をローラやばねなどで挟み込む必要がなくなり、ロール紙を紙送りする際の抵抗を大幅に小さくすることができる。このため、モータに加わる負荷は少なくなり、出力の小さなモータ18を採用できるので、プリンタ1のハウジング2をコンパクトにすることが可能となる。さらに、モータ18の消費電力も小さくなるので、電池の寿命を延ばすことも可能となる。
【0035】
また、ローラやばねなどで挟み込んでカールを除去する場合は、その機構に対してロール紙を引っ張る必要があり、ロール紙とプラテンローラとの間に巻き癖を除去する装置を設置する必要があった。これに対し、本例の方法であれば、第1のガイド面30にロール紙3を当てて巻き癖を除去しているので、プラテンローラの出口、すなわち、排紙口4の近傍に巻き癖を除去する機構を組み込むことができる。特に、本例のプリンタ1では、出口の紙ガイド25と、プラテンローラ16と、サーマルヘッド15というサーマルプリンタ1の排紙口4の近傍を構成する部材のアレンジを変えることによって巻き癖を除去する機構を構成しており、非常にコンパクトに、そして低コストでロール紙の巻き癖を除去することができる。
【0036】
巻き癖は、カールしている内側を伸ばすことによって除去できると考えられているが、ロール紙を引っ張りながら巻き癖を除去する方法では、内側と外側の両方に力が加わるので、その差を効率良く大きくすることは難しい。これに対し、本例のプリンタ1のように、ロール紙3を押し出しながら巻き癖を除去する機構であれば、カールの外側の面には力を与えずに、内側の面だけを伸ばすことができ、さらには、外側の面には圧縮する方向の力を発生させることもできる。したがって、本例のプリンタ1の紙送り機構40あるいは印刷機構10は、この点でも非常に効率の良いカール取りとなっている。
【0037】
さらに、本例のプリンタ1では、プラテンローラ16の近傍の出力側で、紙の腰を用いてカールを除去しており、その範囲では紙送りが確実に行われるので紙詰まりが発生し難いというメリットもある。そして、万一、紙詰まりが発生したとしても、排紙口4の近傍であるので、紙詰まりの解消は極めて容易である。
【0038】
また、プラテンローラ16を駆動して紙送りしないと、第1のガイド面30に当った個所3Pには力が加わらない。したがって、プリンタ1が印刷を中断してプラテンローラ16が回転していないときは、ガイド面30に当たった個所3Pが巻き癖と逆方向に曲がっていてもその部分3Pには殆ど力が作用せず、その部分に、逆方向の癖がついてしまうことはない。したがって、プラテンローラ16を逆回転するような特別な制御も不要である。
【0039】
なお、本発明に係る紙送り装置40およびそれを採用したプリンタは上記に限定されるものではない。プラテンローラに対し、ロール紙とサーマルヘッドを反対側に配置し、プラテンローラでロール紙を反転しない紙経路のプリンタであっても良い。また、用紙の排出方向はハウジングの上面に限定されることはなく、側面でも下面でも自由に選択することができ、本発明にしたがって第1のガイド面を配置することができる。
【0040】
また、図3に示すプリンタ1aのように、印刷機構10とは別の排紙用の紙送り装置40aとして本発明を組み込むことができる。このプリンタ1aは、ハウジング2の後方Bの側にロール紙3がセットされ、ロール紙3から前方Fに向けて、プラテンローラ16およびラインサーマルヘッド15を備えた印刷機構10および排紙用の紙送り装置40aがこの順序で配置されている。紙送り装置40aは、排紙ローラ41と、サブローラ42と、ロール紙3を排紙口4に導く紙ガイド25と、排紙ローラ41から出力されたロール紙3を紙ガイド25の近傍に導く紙ガイド45を備えており、排紙ローラ41がフィードローラに対応し、サブローラ42が紙押え部材に対応し、紙ガイド25が第1のガイド面30を有する第1の紙ガイドに対応する。そして、紙ガイド45が第2のガイド面19を有する第2の紙ガイドに対応する。
【0041】
また、この紙送り装置40aでは、第1の紙ガイド25をシャフト31を用いて旋回および/またはスライドさせると共に、第2の紙ガイド45をシャフト46で前後方向にスライドさせたり、旋回させることによってもロール紙3が第1のガイド面30に当たる方向を変化させることができ、強さの異なる巻き癖をフレキシブルに修正することが可能である。
【0042】
図4に、さらに異なるプリンタ1bを示してあり、このプリンタ1bの紙送り装置40bは、プラテンローラ16の出力側からロール紙3を第1のガイド面30に導くように、互いに対峙しているガイド面56aおよび57aを備えた第4の紙ガイド58を備えている。さらに、紙送り装置40bでは、第4の紙ガイド58である上下に配置された2つの部材57および56のうち、上方側の部材57の出力側の部分59が第2のガイド面19を備えた第2の紙ガイドとして機能を持たせるために、第1のガイド面30に対して接近した位置になるようにしている。
【0043】
この紙送り装置40bでは、排紙ローラ41から出力されたロール紙3は、ガイド面56aおよび57aで挟まれた微小なスペース内で直線的に第1のガイド面30に導かれる。したがって、プラテンローラ16の第1のガイド面30との距離が長くなっても、ロール紙3を撓ませることなく、ロール紙3の腰の強さをいかしてロール紙3を第1のガイド面30に押付けることができる。したがって、上記と同様に、ロール紙3の巻き癖を安定に除去できる。このため、第1のガイド面30をプラテンローラ16の近傍に配置できないプリンタや既存のプリンタに本発明の巻き癖を除去する機能を追加するための構成として適している。たとえば、2つの部材56および57でロール紙3を既存のハウジングや外部まで導いて、そこに第1のガイド面30を設けて巻き癖を除去することも可能である。
【0044】
また、本例の紙送り装置40bでは、第1の紙ガイド25と第4の紙ガイド58の下方の部材56を一体化することも可能である。さらに、シャフト46を用いて第4の紙ガイド58の上方の部材57を旋回および/またはスライドさせることにより、ガイド面56aおよび57aでロール紙3の姿勢を直線的に維持できる範囲において、第2の紙ガイドとして機能する部分59の角度や位置を制御することが可能であり、ロール紙3が第1のガイド面30に当たる方向を変化させて強さの異なる巻き癖をフレキシブルに修正することが可能である。
【0045】
一方、図5に示すプリンタ1cのように、印刷機構10の上流に本発明の紙送り装置40cを組み込むことも可能である。このプリンタ1cは、このロール紙3を紙送り装置40bによって平プラテン36に導き、平プラテン36に対峙して走査方向に動く印刷ヘッド、たとえば、インクジェットヘッド35によりロール紙3に印刷している。もちろん、ヘッド35はワイヤドットタイプでも良く、さらには印刷ヘッドが走査方向に移動するシリアルプリンタの代わりにラインを一括で印刷するラインプリンタや、レーザプリンタのようなページプリンタであっても良い。そして、印刷されたロール紙3は、排紙ローラ52および51によって排紙口4に導かれる。
【0046】
本例の紙送り装置40cは、フィードローラ43と、紙押え部材であると共に第3の紙ガイドでもある紙ガイド44と、平プラテン36とを備えており、平プラテン36が第1の紙ガイドに対応する。そして、紙ガイド44の出力側の部分45が第2のガイド面19を備えた第2の紙ガイドに対応している。このため、フィードローラ43およびプレート44によって紙送りされたロール紙3は平プラテン36の上で巻き癖が除去された状態となり、平坦な紙の上にインクジェット方式などにより印刷される。したがって、ロール紙であっても画質の良い印刷を行うことができる。また、インクジェット方式の場合は、印刷後のインクが乾かない状態で用紙を挟み込んで紙送りすることは難しいのに対し、本例の配置であれば、そのような心配もない。さらに、印字品質を高めることができる。また、紙送り装置40cがインクジェットヘッド35の給紙側Bにのみ構成されているので、紙送り装置40cによって印刷済みのロール紙3の表面を汚すなどの印刷品質を劣化させる不具合もない。
【0047】
また、本例の紙送り装置40cは、プレート44を斜め方向にスライドさせることによりプレート44と平プラテン36との距離を変化させたり、プレート44を旋回させることにより、平プラテン36の表面(第1のガイド面)30でロール紙3を曲げる角度を調整でき、異なる強さの巻き癖をフレキシブルに除去することができる。
【0048】
なお、上記では、本発明の紙送り装置をサーマルプリンタやインクジェットプリンタに組み込んだ例を説明したが、ロール紙を使用する印刷装置であればプリンタに限らず、ファクシミリやプロッターなど他の印刷装置に適用することも可能である。
【0049】
以上説明したように、本発明の印刷装置および紙送り装置においては、フィードローラの出口側の近くに巻き癖を伸ばすように傾斜したガイド面を設け、このガイド面にロール紙自身の腰の強さを利用してロール紙を押し付けて巻き癖を伸ばしている。したがって、ロール紙を引張って巻き癖を修正する機構に比べて、効率的にロール紙のカールを除去でき、紙送り用のモータの負荷を減らしてモータを小さくすることができる。したがって、ロール紙のカールを修正する機能を備え、カットシートに印刷するのと同様のアウトプットが得られる使い勝手の良い印刷装置であって、携帯端末などと共に携帯に適した、さらにコンパクトで、消費電力の小さな印刷装置を提供できる。
【0050】
このように、この明細書には、ロール紙を挟んで紙送可能なフィードローラおよび紙押え部材と、前記フィードローラから出力されたロール紙が押付けられ、前記ロール紙を湾曲方向と逆方向に導くように傾斜した第1のガイド面を形成する第1の紙ガイドとを有する紙送り装置が記載されている。前記第1の紙ガイドは前記フィードローラの近傍に配置されていることが望ましい。また、前記フィードローラと前記第1のガイド面との距離が10mm以下であることが望ましい。さらに、前記第1のガイド面は、この第1のガイド面にロール紙が当たる方向に対し約45度以上傾いていることが望ましい。
【0051】
また、紙送り装置は、前記第1のガイド面の傾斜および/または前記第1のガイド面と前記フィードローラとの距離を変更可能な手段を有していてもよい。また、紙送り装置は、前記ロール紙を前記第1のガイド面の近傍に導く第2のガイド面を備えた第2の紙ガイドを有していてもよい。前記紙押え部材は、前記ロール紙をフィードローラに押付ける平坦なガイド面を備えた第3の紙ガイドであり、その出力端が前記第2の紙ガイドになっていてもよい。前記フィードローラの出力側からロール紙を前記第1のガイド面に導くように、互いに対峙しているガイド面を備えた第4の紙ガイドを有し、この第4の紙ガイドの出力端が前記第2の紙ガイドになっていてもよい。前記第2のガイド面の出力端と前記第1のガイド面との距離が5mm以下であることが有効である。紙送り装置は、さらに、前記第2のガイド面の傾斜および/または前記第2のガイド面の出力端と前記第1のガイド面との距離を変更可能な手段を有していてもよい。前記第2の紙ガイドの出力端のコーナーは直角または鋭角であってもよい。
【0052】
また、この明細書にはこれらの紙送り装置を有する印刷装置も記載されている。前記紙押え部材はラインサーマルヘッドであり、前記フィードローラは前記ラインサーマルヘッドとロール紙を挟んで紙送りするプラテンローラであってもよい。前記第1の紙ガイドは平プラテンであり、前記第1のガイド面に支持されたロール紙に印刷する印刷ヘッドを有していてもよい。前記印刷ヘッドが前記第1のガイド面に沿って動いていてもよく、前記印刷ヘッドはインクジェットタイプであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1、1a、1b、1c プリンタ
3 ロール紙 10 印刷機構
15 ラインサーマルヘッド(紙押え部材、第3の紙ガイド)
16 プラテンローラ
19 第2のガイド面
21a、45、59、第2の紙ガイド
24 コーナー
25 第1の紙ガイド 30 第1のガイド面
31、46 シャフト
35 インクジェットヘッド
36 平プラテン(第1の紙ガイド)
40、40a、40b、40c 紙送り装置
41、43 排紙ローラ(フィードローラ)
42 サブローラ(紙押え部材)
44 プレート(紙押え部材、第2の紙ガイド)
58 第4の紙ガイド
56a、57a 第4のガイドのガイド面
φ1 第1のガイドにロール紙が当たる方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙を挟んで紙送可能なフィードローラおよび紙押え部材と、
前記フィードローラから出力されたロール紙が押付けられ、前記ロール紙を湾曲方向と逆方向に導くように傾斜した第1のガイド面を形成する第1の紙ガイドと、
前記ロール紙の外側の面をガイドし、前記ロール紙を前記第1のガイド面の近傍に導く第2のガイド面を備えた第2の紙ガイドとを有し、
前記第1のガイド面は、前記ロール紙が当たる方向に対して少なくとも45度で傾き、前記第2のガイド面の出力側の端を前記第1のガイド面の近傍に配置することにより前記ロール紙が少なくとも45度で曲がる条件を維持して前記ロール紙のカールを除去する紙送り装置。
【請求項2】
請求項1に記載の紙送り装置を有する印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−260726(P2010−260726A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157805(P2010−157805)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2001−88184(P2001−88184)の分割
【原出願日】平成13年3月26日(2001.3.26)
【出願人】(597103067)有限会社エフ・アンド・エフ (18)
【Fターム(参考)】