説明

印刷装置及び印刷方法

【課題】ロール状に巻き取られた媒体の印刷画像の確認作業を容易にする。
【解決手段】本発明は、透明な媒体を搬送するとともに、印刷済みの媒体をロール状に巻き取る搬送ユニットと、カラー画像を形成するためのインクを吐出する複数のノズルが並ぶ第1ノズル列と、背景画像を形成するためのインクを吐出する複数のノズルが並ぶ第2ノズル列と、を備え、前記カラー画像と前記背景画像とを重ねて形成される印刷画像が複数連続して前記媒体に印刷される場合であって、前記媒体が前記ロール状に巻き取られたときに前記印刷画像の前記背景画像が前記カラー画像の外側に位置する場合、前記ロール状に巻き取られる前記媒体の端部に、前記カラー画像の少なくとも一部が前記背景画像の外側に位置するように前記カラー画像と前記背景画像とを重ねた確認用画像を印刷することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な媒体に、白色等の背景色による背景画像と、カラー画像とを印刷することが知られている(特許文献1参照)。媒体の印刷面の側からカラー画像を見る場合には、まず背景画像を媒体に印刷し、その背景画像の上にカラー画像を印刷する。この印刷方法は「表刷り印刷」と呼ばれている。逆に、透明な媒体の背面の側からカラー画像を見る場合には、まずカラー画像を媒体に印刷し、そのカラー画像の上に背景画像を印刷する。この印刷方法は「裏刷り印刷」と呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−285427号公報
【特許文献2】特開2009−113284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表刷り印刷した場合、媒体の表側から見たときには、カラー画像が背景画像の上に印刷されているため、カラー画像が見易い。但し、媒体の裏側から見たときには、背景画像の下にカラー画像が隠れているため、カラー画像が見難い状態になる。
一方、裏刷り印刷した場合、媒体の裏側か見たときには、カラー画像が背景画像の上に印刷されているため、カラー画像が見易い。但し、媒体の表側から見たときには、背景画像の下にカラー画像が隠れているため、カラー画像が見難い状態になる。
【0005】
カラー画像と背景画像とを重ねた印刷画像が印刷された媒体をロール状に巻き取った場合、カラー画像を媒体の外側から確認することが困難な場合がある。このような場合、印刷画像を確認するためにはロール状に巻き取られた媒体を一旦広げる必要が生じ、不便であった。
【0006】
本発明は、ロール状に巻き取られた媒体の印刷画像の確認作業を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、透明な媒体を搬送するとともに、印刷済みの媒体をロール状に巻き取る搬送ユニットと、カラー画像を形成するためのインクを吐出する複数のノズルが並ぶ第1ノズル列と、背景画像を形成するためのインクを吐出する複数のノズルが並ぶ第2ノズル列と、を備え、前記カラー画像と前記背景画像とを重ねて形成される印刷画像が複数連続して前記媒体に印刷される場合であって、前記媒体が前記ロール状に巻き取られたときに前記印刷画像の前記背景画像が前記カラー画像の外側に位置する場合、前記ロール状に巻き取られる前記媒体の端部に、前記カラー画像の少なくとも一部が前記背景画像の外側に位置するように前記カラー画像と前記背景画像とを重ねた確認用画像を印刷することを特徴とする印刷装置である。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、プリンター1の全体構成ブロック図である。
【図2】図2Aは、プリンター1の概略断面図である。図2Bは、プリンター1の概略上面図である。
【図3】図3は、キャリッジの下面の説明図である。
【図4】図4は、インターレース印刷の説明図である。
【図5】図5A及び図5Bは、オーバーラップ印刷の説明図である。図5Aは、パス1〜パス4におけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示し、図5Bは、パス1〜パス8におけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示している。
【図6】図6Aは、表刷り印刷の説明図である。図6Bは、裏刷り印刷の説明図である。
【図7】図7Aは、表刷り印刷により形成される画像の説明図である。図7Bは、裏刷り印刷により形成される画像の説明図である。
【図8】図8は、インターレース印刷による表刷り印刷の説明図である。
【図9】図9A及び図9Bは、比較例の説明図である。
【図10】図10は、第1実施形態の印刷処理のフロー図である。
【図11】図11A及び図11Bは、第1実施形態の印刷済みの媒体Sの説明図である。
【図12】図12は、第2実施形態のプリンター1の概略断面図である。
【図13】図13は、第2実施形態の印刷処理のフロー図である。
【図14】図14は、第3実施形態により形成される画像の説明図である。
【図15】図15は、第3実施形態の印刷処理のフロー図である。
【図16】図16は、第3実施形態のS202で行う印刷方法の説明図である。
【図17】図17A及び図17Bは、双方向印刷時のカラードットと白ドットの先後関係の説明図である。
【図18】図18A及び図18Bは、図16の領域Aにおける8個のラスタラインのドットの様子の説明図である。
【図19】図19Aは、画像データ上のカラー画像の説明図である。図19Bは、媒体に印刷されたカラー画像を見たときの様子の説明図である。
【図20】図20は、S202の変形例の印刷方法の説明図である。
【図21】図21A及び図21Bは、図20の領域Aにおける8個のラスタラインのドットの様子の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0011】
透明な媒体を搬送するとともに、印刷済みの媒体をロール状に巻き取る搬送ユニットと、カラー画像を形成するためのインクを吐出する複数のノズルが並ぶ第1ノズル列と、背景画像を形成するためのインクを吐出する複数のノズルが並ぶ第2ノズル列と、を備え、前記カラー画像と前記背景画像とを重ねて形成される印刷画像が複数連続して前記媒体に印刷される場合であって、前記媒体が前記ロール状に巻き取られたときに前記印刷画像の前記背景画像が前記カラー画像の外側に位置する場合、前記ロール状に巻き取られる前記媒体の端部に、前記カラー画像の少なくとも一部が前記背景画像の外側に位置するように前記カラー画像と前記背景画像とを重ねた確認用画像を印刷することを特徴とする印刷装置が明らかとなる。
このような印刷装置によれば、ロール状に巻き取られた媒体の印刷画像の確認作業が容易になる。
【0012】
前記搬送ユニットは、前記媒体の印刷面が外側を向くように前記印刷済みの媒体をロール状に巻き取るものであり、前記カラー画像の上に前記背景画像を重ねた前記印刷画像が複数連続して前記媒体に印刷される場合、前記ロール状に巻き取られる前記媒体の端部に、前記背景画像の上に前記カラー画像を重ねた前記確認用画像が印刷されることが望ましい。これにより、ロール状に巻き取られた媒体の印刷画像の確認作業が容易になる。
【0013】
前記搬送ユニットは、前記媒体の印刷面が内側を向くように前記印刷済みの媒体をロール状に巻き取るものであり、前記背景画像の上に前記カラー画像を重ねた前記印刷画像が複数連続して前記媒体に印刷される場合、前記ロール状に巻き取られる前記媒体の端部に、前記カラー画像の上に前記背景画像を重ねた前記確認用画像が印刷されることが望ましい。これにより、ロール状に巻き取られた媒体の印刷画像の確認作業が容易になる。
【0014】
前記カラー画像を構成するカラードットの上に前記背景画像を構成する背景用ドットが形成された画素と、前記背景用ドットの上に前記カラードットが形成された画素とを混在させて、前記確認用画像を印刷することが望ましい。これにより、確認用画像を両側から確認可能になる。
【0015】
移動方向に移動しながら前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列から前記インクを吐出して前記媒体に前記カラードット及び前記背景用ドットを形成するドット形成動作と、前記媒体を搬送方向に搬送する搬送動作とを繰り返すことによって、前記媒体に前記カラー画像と前記背景画像を形成するとともに、前記確認用画像を印刷する際に、前記ドット形成動作において、前記第1ノズル列の前記インクを吐出する前記ノズルの前記搬送方向の位置と、前記第2ノズル列の前記インクを吐出する前記ノズルの前記搬送方向の位置とを重複させ、且つ、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列が前記移動方向の往路に移動する前記ドット形成動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列が前記移動方向の復路に移動する前記ドット形成動作とを繰り返し行うことによって、前記カラー画像と前記背景画像とが重複する領域に、前記カラードットの上に前記背景用ドットが形成された画素と、前記背景用ドットの上に前記カラードットが形成された画素とを混在させることが望ましい。これにより、確認用画像を両側から確認可能になる。
【0016】
透明な媒体を搬送するとともに、印刷済みの媒体をロール状に巻き取る搬送ユニットと、カラー画像を形成するためのインクを吐出する複数のノズルが並ぶ第1ノズル列と、背景画像を形成するためのインクを吐出する複数のノズルが並ぶ第2ノズル列と、を備えた印刷装置を用いた印刷方法であって、前記カラー画像と前記背景画像とを重ねて形成される印刷画像が複数連続して前記媒体に印刷される場合であって、前記媒体が前記ロール状に巻き取られたときに前記印刷画像の前記背景画像が前記カラー画像の外側に位置する場合、前記ロール状に巻き取られる前記媒体の端部に、前記カラー画像の少なくとも一部が前記背景画像の外側に位置するように前記カラー画像と前記背景画像とを重ねた確認用画像を印刷することを特徴とする印刷方法が明らかとなる。
このような印刷方法によれば、ロール状に巻き取られた媒体の印刷画像の確認作業が容易になる。
【0017】
===装置の構成===
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図であり、図2Aは、プリンター1の概略断面図であり、図2Bは、プリンター1の概略上面図である。以下、印刷装置をインクジェットプリンター(プリンター1)とし、プリンター1とコンピューター90が接続された印刷システムを例に挙げて実施形態を説明する。
【0018】
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター90とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0019】
搬送ユニット20は、ロール状の媒体S(ロール紙など)の連続する方向(搬送方向)に、媒体Sを上流側から下流側に搬送するものである。モーターによって駆動する搬送ローラー21によって印刷前のロール状の媒体Sを印刷領域に供給し、その後、印刷済みの媒体Sを巻取機構によりロール状に巻き取る。なお、印刷中に印刷領域に位置する媒体を下からバキューム吸着することで、媒体Sを所定の位置に保持することができる。
【0020】
キャリッジユニット30は、ヘッドを紙幅方向に往復移動させるものである。キャリッジユニット30は、ヘッドを搭載するキャリッジ31と、キャリッジを往復移動させるためのキャリッジ移動機構32とを有する。
【0021】
ヘッドユニット40は、キャリッジ31に設けられたヘッドを有する。ヘッドの下面には、インク吐出部であるノズルが複数設けられている。本実施形態では、ノズルからUVインクが吐出される。UVインクは、紫外光が照射されると硬化する性質を有するインクである。
【0022】
照射ユニット60は、媒体に吐出されたUVインクに紫外光を照射するためのものである。本実施形態の照射ユニット60は、仮硬化用照射部61と、本硬化用照射部62とを有する。
仮硬化用照射部61は、キャリッジ31に設けられており、ヘッドとともに移動可能である。仮硬化用照射部61は、媒体に着弾したUVインク同士が滲まないようにUVインクの表面を硬化(仮硬化)させる程度の強度の紫外光を照射する。例えば、仮硬化用照射部61として、LED(発光ダイオード)などが採用される。コントローラー10は、キャリッジ31を移動させながら仮硬化用照射部61から紫外光を照射させて、印刷領域上のUVインクを仮硬化させる。
本硬化用照射部62は、印刷領域のX方向下流側に設けられており、媒体の幅にわたって紫外光を照射できる。本硬化用照射部62は、媒体上のUVインクを本硬化(完全に固化)させることが可能な強度の紫外光を照射する。例えば、本硬化用照射部62として、UVランプなどが採用される。コントローラー10は、媒体を搬送しながら本硬化用照射部62から紫外光を照射させて、UVインクで形成された画像を硬化させる。
【0023】
カッターユニット70は、ロール状の媒体Sを切断するものである。カッターユニット70は、印刷領域の下流側に位置する搬送ローラー21よりも搬送方向の下流側に設けられている。
【0024】
印刷を行うとき、プリンター1は、キャリッジ31を移動方向に移動させる動作(パス)と、搬送動作とを交互に繰り返す。各パスにおいて、プリンター1は、ヘッドからインクを吐出して媒体に画像を形成するとともに、仮硬化用照射部61から紫外光を照射して画像を仮硬化させる。パスと搬送動作が繰り返されることによって、印刷領域で形成された画像が徐々に本硬化用照射部62に向かって搬送される。そして、画像が本硬化用照射部62に対向する位置まで搬送されると、本硬化用照射部62から紫外光が照射されて、画像が本硬化する。
【0025】
必要な数の印刷画像が媒体Sに連続して印刷された後、搬送ユニット20は最後の印刷画像をカッターユニット70よりも搬送方向の下流側まで搬送し、その最後の印刷画像の搬送方向の上流側の位置をカッターユニット70が切断する。カッターユニット70に切断された印刷済みの媒体Sは、巻き取り機構によりロール状に巻き取られる。最後の印刷画像は、ロール状に巻き取られた印刷済みの媒体Sの端部に位置することになる。
図2Aに示す構成では、印刷済みの媒体Sを巻き取った後、印刷面が外側を向くことになる。
【0026】
<キャリッジの下面の構成>
図3は、キャリッジの下面の説明図である。
【0027】
キャリッジ31の下面には、ヘッド41が設けられている。ヘッド41は、5個のノズル列を備えている。5個のノズル列は、ブラックインクを吐出するためのブラックノズル列(K)と、シアンインクを吐出するためのシアンノズル列(C)と、マゼンタインクを吐出するためのマゼンタノズル列(M)と、イエローインクを吐出するためのイエローノズル列(Y)と、白インクを吐出するための白ノズル列(W)である。ブラックノズル列、シアンノズル列、マゼンタノズル列及びイエローノズル列は、カラー画像を形成するためのカラーインクを吐出するノズル列(カラーノズル列)である。白ノズル列は、背景画像を形成するための白インク(背景用インク)を吐出するノズル列である。
【0028】
なお、白インクは、透明な媒体にカラー画像を形成する際に用いられる特殊なインクである。透明な媒体にカラー画像を単独で形成するとカラー画像の視認性が良くないため、カラー画像と共に白インクで背景画像を形成することによって、カラー画像のコントラストを向上させて、若しくはカラー画像の遮蔽性を向上させて、カラー画像の視認性を高めている。このため、白インクは、カラーインクとは使用方法が全く異なるインクである。
【0029】
各ノズル列は、それぞれ180個のノズルから構成されている。各ノズル列の180個のノズルは、所定のノズルピッチで搬送方向に沿って並んでおり、本実施形態では1/180インチの間隔で並んでいる(つまり、図中のLは1インチである)。このため、各ノズル列からインクを断続的に吐出することによって、キャリッジ31が移動方向に1回移動する毎に(1回のパス毎に)、搬送方向に沿って1/180インチの間隔でドット列が形成されることになる。
【0030】
2個の仮硬化用照射部61は、搬送方向に沿って1インチの幅(Lに相当)の照射範囲に紫外光を照射することができる。仮硬化用照射部61の照射範囲と各ノズル列のインクの吐出範囲が移動方向に並んでいるため、あるパスにおいてノズル列から媒体にインクが吐出された直後に、一方の仮硬化用照射部が媒体に着弾したインク(ドット)に紫外光を照射できる。
【0031】
===参考説明===
<インターレース印刷>
図4は、インターレース印刷の説明図である。図には、パス1〜パス4におけるヘッド(ノズル列)の位置とドットの形成の様子が示されている。
【0032】
説明の都合上、複数あるノズル列のうちの一つのノズル列のみを示し、ノズル数も少なくしている(ここでは12個)。図中の黒丸で示されるノズルは、インクを吐出可能なノズルである。一方、白丸で示されるノズルは、インクを吐出不可のノズルである。また、説明の便宜上、ヘッド(ノズル列)が媒体に対して移動しているように描かれているが、同図はヘッドと媒体との相対的な位置を示すものであって、実際には媒体が搬送方向に搬送される。また、説明の都合上、各ノズルが数ドット(図中の丸印)しか形成していないように示されているが、実際には、移動方向に移動するノズルから間欠的にインク滴が吐出されるので、移動方向に多数のドットが並ぶことになる。このドットの列をラスタラインともいう。黒丸で示されるドットは、最後のパスで形成されるドットであり、白丸で示されるドットは、それ以前のパスで形成されたドットである。
【0033】
「インターレース印刷」とは、kが2以上であって、1回のパスで記録されるラスタラインの間に記録されないラスタラインが挟まれるような印刷方法を意味する。例えば、図に示した印刷方法では、1回のパスで形成されるラスタラインの間に、3本のラスタラインが挟まれている。
【0034】
インターレース印刷では、媒体が搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで記録されたラスタラインのすぐ上のラスタラインを記録する。このように搬送量を一定にして記録を行うためには、(1)インクを吐出可能なノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあること、(2)搬送量FはN・Dに設定されること、が条件となる。
【0035】
同図では、ノズル列は搬送方向に並ぶ12個のノズルを有する。ノズル列のノズルピッチkは4なので、インターレース印刷を行うための条件である「Nとkが互いに素の関係」を満たすため、全てのノズルは用いずに、11個のノズル(ノズル♯1〜ノズル♯11)を用いる。また、11個のノズルが用いられるため、媒体は搬送量11・Dにて搬送される。その結果、180dpi(4・D)のノズルピッチのノズル列を用いて、720dpi(=D)のドット間隔にて媒体にドットが形成される。なお、180個のノズルを備えたノズル列によってインターレース印刷を行う場合、179個のノズルを用いたパスと、179・Dの搬送量の搬送動作とが交互に繰り返されることになる。
【0036】
インターレース印刷の場合、ノズルピッチ幅の連続するラスタラインが完成するためには、k回のパスが必要となる。例えば、180dpiのノズルピッチのノズル列を用いて720dpiのドット間隔にて連続する4つのラスタラインが完成するためには、4回のパスが必要となる。同図によれば、パス3のノズル♯3が形成したラスタライン(図中の矢印で示されるラスタライン)よりも搬送方向上流側に、連続的なラスタラインがドット間隔Dにて形成されることが示されている。
【0037】
なお、背景画像を形成せずにカラー画像をインターレース印刷する場合には、各色のカラーノズル列(シアンノズル列、マゼンタノズル列、イエローノズル列及びブラックノズル列)が、図4に示したようにそれぞれ動作する。つまり、各色のカラーノズル列は、それぞれのノズル♯1〜11(各ノズル列が180個のノズルをそれぞれ備える場合にはノズル♯1〜179)からインクを吐出する。この場合、各色のカラーノズル列において、インクを吐出するノズルの搬送方向の位置は重複している。例えば、シアンインクを吐出するノズルの搬送方向の位置と、マゼンタインクを吐出するノズルの搬送方向の位置は、重複することになる。
【0038】
但し、背景画像を形成しつつカラー画像を形成するような場合には、カラーインクを吐出するカラーノズルの搬送方向の位置と、白インクを吐出する白ノズルの搬送方向の位置が重複することは、これまでの技術では想定されていない。これまでの技術では、背景画像を形成しつつカラー画像を形成するような場合には、後述する表刷り印刷や裏刷り印刷で説明するように、カラーインクを吐出するカラーノズルの搬送方向の位置と、白インクを吐出する白ノズルの搬送方向の位置とが重複しないようにしている。この点については、後述する。
【0039】
<オーバーラップ印刷>
図5A及び図5Bは、オーバーラップ印刷の説明図である。図5Aは、パス1〜パス4におけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示し、図5Bは、パス1〜パス8におけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示している。
【0040】
「オーバーラップ印刷」とは、ラスタラインを複数のノズルで形成する印刷方法を意味する。例えば、図5A及び図5Bにおける印刷方法では、各ラスタラインは、2つのノズルで形成されている。
【0041】
オーバーラップ印刷では、媒体が搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、数ドットおきに間隔を空けてドットを形成する。そして、他のパスにおいて、間隔を空けて形成されたドットの間に他のノズルが補完するように(ドットの間を埋めるように)ドットを形成することにより、1つラスタラインが複数のノズルにより形成される。このようにM回のパスにて1つのラスタラインが形成される場合、「オーバーラップ数M」と定義する。
【0042】
図5A及び図5Bでは、各ノズルは1ドットおきに間隔を空けてドットを形成するので、パス毎に奇数番目の画素又は偶数番目の画素にドットが形成される。そして、1つのラスタラインが2つのノズルにより形成されているので、オーバーラップ数M=2になる。
【0043】
オーバーラップ印刷において、搬送量を一定にして記録を行うためには、(1)N/Mが整数であること、(2)N/Mはkと互いに素の関係にあること、(3)搬送量Fが(N/M)・Dに設定されること、が条件となる。
【0044】
図5A及び図5Bでは、ノズル列は搬送方向に並ぶ12個のノズルを有する。但し、ノズル列のノズルピッチkは4なので、オーバーラップ印刷を行うための条件である「N/Mとkが互いに素の関係」を満たすために、全てのノズルを用いることはできない。そこで、12個のノズルのうち、10個のノズルを用いてオーバーラップ印刷が行われる。また、10個のノズルが用いられるため、媒体は搬送量5・Dにて搬送される。その結果、例えば、180dpi(4・D)のノズルピッチのノズル列を用いて、720dpi(=D)のドット間隔にて媒体にドットが形成される。
【0045】
1つのラスタラインがM個のノズルにより形成される場合、ノズルピッチ分のラスタラインが完成するためには、k×M回のパスが必要となる。例えば、図5A及び図5Bでは、1つのラスタラインが2つのノズルにより形成されているので、4つのラスタラインが完成するためには、8回のパスが必要となる。同図によれば、パス1のノズル♯9及びパス5のノズル♯4が形成したラスタラインよりも搬送方向上流側に、連続的なラスタラインがドット間隔Dにて形成されることが示されている。
【0046】
図5A及び図5Bでは、パス1では各ノズルが奇数画素にドットを形成し、パス2では各ノズルが偶数画素にドットを形成し、パス3では各ノズルが奇数画素にドットを形成し、パス4では各ノズルが偶数画素にドットを形成する。つまり、前半の4回のパスでは、奇数画素−偶数画素−奇数画素−偶数画素の順にドットが形成される。そして、後半の4回のパス(パス5〜パス8)では、前半の4回のパスと逆の順にドットが形成され、偶数画素−奇数画素−偶数画素−奇数画素の順にドットが形成される。なお、パス9以降のドットの形成順は、パス1からのドット形成順と同様である。
【0047】
<表刷り印刷、裏刷り印刷>
図6Aは、表刷り印刷の説明図である。図7Aは、表刷り印刷により形成される印刷画像の説明図である。「表刷り印刷」とは、背景画像を媒体に形成した後に、その背景画像の上にカラー画像を形成する印刷である。
【0048】
表刷り印刷を行う場合、カラーノズル列(例えばシアンノズル列)では搬送方向下流側の半分のノズル(ノズル♯1〜90)が用いられ、白ノズル列では搬送方向上流側の半分のノズル(ノズル♯91〜180)が用いられる。このようにノズルを用いたパスと搬送動作とを交互に繰り返すことによって、白インクによって形成された背景画像の上に、カラー画像が形成される。例えば、図中の領域Aでは、パス1において背景画像が形成され、その後のパス2においてカラー画像が形成されることによって、背景画像の上にカラー画像が形成される。
【0049】
図6Bは、裏刷り印刷の説明図である。図7Bは、裏刷り印刷により形成される印刷画像の説明図である。「裏刷り印刷」とは、カラー画像を媒体に形成した後に、そのカラー画像の上に背景画像を形成する印刷である。裏刷り印刷は主に透明な媒体に対して行われ、裏刷り印刷による印刷物のカラー画像は、透明な媒体越しに見ることになる。
【0050】
裏刷り印刷を行う場合、カラーノズル列では搬送方向上流側の半分のノズル(ノズル♯91〜180)が用いられ、白ノズル列では搬送方向下流側の半分のノズル(ノズル♯1〜90)が用いられる。このようにノズルを用いたパスと搬送動作とを交互に繰り返すことによって、カラー画像の上に背景画像が形成される。例えば、図中の領域Aでは、パス1においてカラー画像が形成され、その後のパス2において背景画像が形成されることによって、カラー画像の上に背景画像が形成される。
【0051】
図8は、インターレース印刷による表刷り印刷の説明図である。図中では、カラーノズル列のノズルを丸印で示し、白ノズル列のノズルを三角印で示している。ここでは表刷り印刷について説明し、裏刷り印刷については説明を省略する。
【0052】
インターレース印刷による表刷り印刷の場合においても、カラーノズル群のカラーノズル列では搬送方向下流側の半分のノズル(ノズル♯1〜6)が用いられ、白ノズル列では搬送方向上流側の半分のノズル(ノズル♯7〜12)が用いられる。既に説明したインターレース印刷の条件((1)インクを吐出可能なノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあること、(2)搬送量FはN・Dに設定されること)を満たすようにするため、6個のノズルでインターレース印刷を行う場合には、5個のノズルからインクが吐出されると共に、媒体は搬送量5・Dにて搬送される。
【0053】
いずれのラスタラインの位置においても、白ノズル列のノズル(白ノズル)によって白ドットが形成されてから、カラーノズル列のノズル(カラーノズル)によってカラードットが形成されている。例えば、図中の点線の位置のラスタラインでは、パス1において白ドットが形成された後、パス5においてカラードットが形成される。このため、背景画像の上にカラー画像を形成することができる。
【0054】
なお、ここでは説明を省略するが、前述のオーバーラップ印刷により表刷り印刷や裏刷り印刷を行うことも可能である。
【0055】
===比較例===
図9A及び図9Bは、比較例の説明図である。図9Aは、ロール状に巻き取られた印刷済みの媒体Sの説明図である。図9Bは、図9の媒体Sの一部を広げた様子の説明図である。
【0056】
既に説明した通り、プリンター1は、必要な数の印刷画像を媒体Sに連続して印刷し、最後の印刷画像の搬送方向の上流側の位置をカッターユニット70で切断する。そして、カッターユニット70に切断された印刷済みの媒体Sは、巻き取り機構によりロール状に巻き取られ、図9Aに示す状態になる。
【0057】
表刷り印刷や裏刷り印刷が行われた媒体Sがロール状に巻き取られると、背景画像によってカラー画像が隠れてしまうことがある。例えば、図7Aの表刷り印刷された印刷画像がロール状に巻き取られることによって背景画像がカラー画像の外側に位置する場合や、図7Bの裏刷り印刷された印刷画像がロール状に巻き取られることによって背景画像がカラー画像の外側に位置する場合、図9Aに示すように背景画像によってカラー画像が隠れてしまうことになる。
【0058】
図9Aのような状態では、作業者は、印刷済みの媒体Sにどのような画像が印刷されているのかを確認することが困難になる。このため、作業者は、印刷画像を確認するため、図9Bに示すように、ロール状に巻き取られた媒体Sを一旦広げる必要が生じてしまう。
【0059】
===第1実施形態===
図10は、第1実施形態の印刷処理のフロー図である。透明な媒体Sに背景画像とカラー画像とを重ねて印刷する場合に、図中の印刷処理が行われる。第1実施形態では、図2Aに示すように、巻き取った後の媒体Sの印刷面が外側を向くことを前提としている。
【0060】
まず、コントローラー10は、印刷モードが表刷り印刷なのか裏刷り印刷なのかを判別する(S001)。表刷り印刷の場合には、印刷済みの媒体Sを巻き取っても背景画像によってカラー画像が隠れてしまうという問題(図9A参照)は生じない。このため、印刷モードが表刷り印刷の場合、コントローラー10は、各ユニットを制御して指定数の画像を連続して表刷り印刷させ(S002)、最後の印刷画像の搬送方向上流側においてカッターユニット70に媒体Sを切断させ(S005)、印刷済みの媒体Sをロール状に巻き取らせる(S006)。
【0061】
印刷モードが裏刷り印刷の場合、単に指定数の画像を裏刷り印刷しただけでは、印刷済みの媒体Sを巻き取ったときに、背景画像によってカラー画像が隠れてしまう(図9A参照)。このため、印刷モードが裏刷り印刷の場合、コントローラー10は、各ユニットを制御して指定数の画像を裏刷り印刷させた後(S003)、S003で形成したカラー画像と同じカラー画像を表刷り印刷する(S004)。つまり、確認用画像となる最後の印刷画像は、裏刷り印刷ではなく、表刷り印刷される。この後は、表刷り印刷の場合と同様に、コントローラー10は、最後の印刷画像の搬送方向上流側においてカッターユニット70に媒体Sを切断させ(S005)、印刷済みの媒体Sをロール状に巻き取らせる(S006)。
【0062】
図11A及び図11Bは、第1実施形態の印刷済みの媒体Sの説明図である。それぞれ3つの印刷画像を図示するために媒体Sの一部が若干広げられているが、言うまでもなく広げられていなくても良い。
【0063】
第1実施形態では、巻き取った後の媒体Sの印刷面は外側を向くため、裏刷り印刷された印刷画像(確認用画像以外の印刷画像)では、背景画像がカラー画像の外側に位置し、背景画像によってカラー画像が隠れてしまう。但し、第1実施形態では、確認用画像となる最後の印刷画像が表刷り印刷されるので、媒体Sが巻き取られた状態のときに、確認用画像では背景画像の外側にカラー画像が位置する。このため、作業者は、印刷済みの媒体Sが巻き取られた状態であっても(媒体Sが広げられていない状態であっても)、印刷済みの媒体Sにどのような画像が印刷されているのかを容易に確認できる。例えば、作業者は、図11Aの媒体を見れば背景画像に隠れているカラー画像が「ABC」という文字であることを認識でき、図11Bの媒体を見れば背景画像に隠れているカラー画像が「XYZ」という文字であることを認識できる。
【0064】
===第2実施形態===
図12は、第2実施形態のプリンター1の概略断面図である。図2Aに示す第1実施形態と比較すると、第2実施形態では、巻き取った後の媒体Sの印刷面は、外側ではなく、内側を向く点で異なる。
【0065】
図13は、第2実施形態の印刷処理のフロー図である。透明な媒体Sに背景画像とカラー画像とを重ねて印刷する場合に、図中の印刷処理が行われる。
【0066】
まず、コントローラー10は、印刷モードが表刷り印刷なのか裏刷り印刷なのかを判別する(S101)。第2実施形態では、巻き取った後の媒体Sの印刷面が内側を向くため、表刷り印刷が行われるときに、カラー画像が背景画像に隠れるという問題が生じる。このため、印刷モードが表刷り印刷の場合に、コントローラー10は、各ユニットを制御して指定数の画像を表刷り印刷させた後(S102)、S102で形成したカラー画像と同じカラー画像を裏刷り印刷する(S103)。つまり、確認用画像となる最後の印刷画像は、表刷り印刷ではなく、裏刷り印刷される。そして、コントローラー10は、最後の印刷画像の搬送方向上流側においてカッターユニット70に媒体Sを切断させ(S105)、印刷済みの媒体Sをロール状に巻き取らせる(S106)。
【0067】
一方、裏刷り印刷の場合には、印刷済みの媒体Sを巻き取っても背景画像によってカラー画像が隠れてしまうという問題(図9A参照)は生じない。このため、印刷モードが裏刷り印刷の場合、コントローラー10は、各ユニットを制御して指定数の画像を裏刷り印刷させ(S104)、最後の印刷画像の搬送方向上流側においてカッターユニット70に媒体Sを切断させ(S105)、印刷済みの媒体Sをロール状に巻き取らせる(S106)。
【0068】
第2実施形態では、巻き取った後の媒体Sの印刷面が内側を向くため、表刷り印刷された印刷画像では、背景画像がカラー画像の外側に位置し、背景画像によってカラー画像が隠れてしまう。但し、第2実施形態では、確認用画像となる最後の印刷画像が裏刷り印刷されるので(S103)、媒体Sが巻き取られた状態のときに、確認用画像では背景画像の外側にカラー画像が位置する。このため、作業者は、印刷済みの媒体Sが巻き取られた状態であっても、印刷済みの媒体Sにどのような画像が印刷されているのかを容易に確認できる。
【0069】
===第3実施形態===
前述の第1実施形態及び第2実施形態の確認用画像によれば、カラー画像の全てが背景画像の外側に位置していた。但し、ロール状に巻き取られた媒体の外側から確認用画像のカラー画像を認識できるのであれば、確認用画像のカラー画像の一部が背景画像の外側に位置していても良い。
【0070】
図14は、第3実施形態により形成される画像の説明図である。図7Aの表刷り印刷により形成された印刷画像や図7Bの裏刷り印刷により形成された印刷画像と比較すると、第3実施形態により形成された印刷画像は、カラー画像と背景画像とが重複する領域において、カラードットの上に白ドットが形成される画素と、白ドットの上にカラードットが形成される画素とが混在する点で異なる。これにより、背景画像が印刷されているにも関わらず、媒体の両面からカラー画像が見易くなる。
【0071】
図15は、第3実施形態の印刷処理のフロー図である。ここでは、第1実施形態と同様に、巻き取った後の媒体Sの印刷面が外側を向くことを前提とする(図2A参照)。第1実施形態の印刷処理と共通する処理については、図中に同じ番号を付けており、説明を省略する。第1実施形態の印刷処理(図10参照)と比較すると、第3実施形態の印刷処理では、S201及びS202の処理が挿入されている点で異なる。
【0072】
第3実施形態では、印刷モードが裏刷り印刷の場合、コントローラー10は、各ユニットを制御して指定数の画像を裏刷り印刷させた後(S003)、印刷画像が左右対称画像であるか否かを判断する(S201)。印刷画像が左右対称画像ではない場合(S201でNO)、第1実施形態と同様に、コントローラー10は、S003で形成したカラー画像と同じカラー画像を表刷り印刷する(S004)。
【0073】
印刷画像が左右対称画像の場合(S201でYES)、コントローラー10は、以下に説明する印刷方法を実行する。
【0074】
図16は、第3実施形態のS202で行う印刷方法の説明図である。カラーノズル列と白ノズル列のそれぞれの動作に着目すると、いずれも図4のインターレース印刷を行っている。
【0075】
前述の表刷り印刷や裏刷り印刷では、カラーインクを吐出するカラーノズルの搬送方向の位置と、白インクを吐出する白ノズルの搬送方向の位置とが重複しないようになっていた(図6A、図6B、図8参照)。これに対し、図16に示す印刷方法では、カラーインクを吐出するカラーノズル(ノズル♯1〜11)の搬送方向の位置と、白インクを吐出する白ノズル(ノズル♯1〜11)の搬送方向の位置とが重複している。このため、インクを吐出するノズルが多くなり、この結果、搬送量も多くなっている。
【0076】
また、本実施形態では、双方向印刷が行われている。図に示すように、奇数パス(パス1、パス3、・・・)ではキャリッジが往路を移動し、偶数パス(パス2、パス4、・・・)ではキャリッジが復路を移動する。
【0077】
図17A及び図17Bは、双方向印刷時のカラードットと白ドットの先後関係の説明図である。図17Aに示すように、キャリッジが往路を移動するパス(奇数パス)では、白ノズルがカラーノズルに対してキャリッジの移動方向下流側に位置しているため、白ドットの上にカラードットが形成される。一方、図17Bに示すように、キャリッジが復路を移動するパス(偶数パス)では、カラーノズルが白ノズルに対してキャリッジの移動方向下流側に位置しているため、カラードットの上に白ドットが形成される。
【0078】
図18A及び図18Bは、図16の領域Aにおける8個のラスタラインのドットの様子の説明図である。図18Aは、表側から見たドットの様子の説明図である。図18Bは、裏側から見たドットの様子の説明図である。図中では、カラードットを黒丸印で示し、白ドットを白三角印で示し、カラードットと白ドットの上下関係を黒丸印と白三角印の上下関係で示している。ここでは説明の簡略化のため、全ての画素にカラードット及び白ドットを形成している。
【0079】
領域Aの上から偶数番目のラスタラインは、キャリッジが往路に移動するときに形成されるため、白ドットの上にカラードットが形成される。例えば、領域Aの上から2番目のラスタラインは、キャリッジが往路を移動するパス3のときにノズル♯4によって形成されるため(図16参照)、白ドットの上にカラードットが形成される。このため、領域Aの上から偶数番目のラスタラインでは、表側から見たときには、カラードットが視認されやすく、白ドットはカラードットに隠れるため視認されにくい。但し、裏側から見たときには、白ドットが視認されやすく、カラードットは白ドットに隠れるため視認されにくい。
【0080】
一方、領域Aの上から奇数番目のラスタラインは、キャリッジが復路に移動するときに形成されるため、カラードットの上に白ドットが形成される。例えば、領域Aの上から1番目のラスタラインは、キャリッジが復路を移動するパス4のときにノズル♯1によって形成されるため(図16参照)、カラードットの上に白ドットが形成される。このため、領域Aの裏から奇数番目のラスタラインでは、表側から見たときには、白ドットが視認されやすく、カラードットは白ドットに隠れるため視認されにくい。但し、裏側から見たときには、カラードットが視認されやすく、白ドットはカラードットに隠れるため視認されにくい。
【0081】
つまり、図16に示す印刷方法によれば、媒体の表裏のどちら側から見ても、カラードットを視認しやすいラスタラインと、カラードットを視認しにくいラスタラインとが交互に並ぶことになる。但し、媒体の表側から見たカラー画像と比べて、裏側から見たカラー画像は左右反転して視認される。このため、S202の印刷方法は、印刷画像が左右対称画像の場合に実行されるのである。なお、印刷画像が左右反転していても許容されるのであれば、図10のS004の代わりに図16のS202の処理を行うようにしても良い(S003の処理の後、S201の判断は行わずにS202の処理が行われるようにしても良い。)。
【0082】
ところで、上記の説明では、全ての画素にカラードットが形成されている。但し、実際には、印刷すべきカラー画像に応じて、カラードットが形成される画素と、カラードットが形成されない画素とがある。そこで、次に、このような場合のカラー画像の視認性について説明する。
【0083】
図19Aは、画像データ上のカラー画像の説明図である。ここでは、塗り潰し画像である背景画像とともに、カラー画像として文字「A」が媒体に印刷されるものとする。
画像データ上では、カラー画像である文字「A」は塗り潰し画像になっている。このため、塗り潰すべき領域の各画素に対して、カラードットが形成されることになる。言い換えると、文字「A」の領域が、カラー画像と背景画像とが重複する領域となる。なお、文字「A」の領域外では、カラードットは形成されず、白ドットのみが形成される。
【0084】
図19Bは、媒体に印刷されたカラー画像を見たときの様子の説明図である。
塗り潰すべき領域内の連続するラスタラインには、カラードットが形成されることになる。そして、既に説明した通り、図16に示す印刷方法によれば、媒体の表裏のどちら側から見ても、カラードットを視認しやすいラスタラインと、カラードットを視認しにくいラスタラインとが交互に並ぶことになる。ラスタラインの幅は非常に狭いため、印刷されたカラー画像を巨視的に見れば、ほぼ画像データの通りのカラー画像を視認することができる。これにより、図19Bに示すように、媒体の表裏のどちら側から見ても、ほぼ画像データの通りのカラー画像(文字「A」)を視認することができる。
【0085】
なお、カラー画像が文字「A」の例を説明したが、カラー画像は文字(テキスト)に限られるものではない。特に、カラー画像は、塗り潰し画像になるものに限られるものではない。例えば、カラー画像が自然画であっても良い。自然画を媒体に印刷する場合、カラードットが分散して形成されることになるが、図16に示す印刷方法によれば、媒体の表裏のどちら側から見ても、カラードットを視認しやすいラスタラインと、カラードットを視認しにくいラスタラインとが交互に並ぶことになり、ほぼ画像データの通りのカラー画像を視認することができる。
【0086】
<S202の変形例>
図20は、S202の変形例の印刷方法の説明図である。カラーノズル列と白ノズル列のそれぞれの動作に着目すると、いずれもオーバーラップ印刷を行っている。変形例の印刷方法においても、図16に示す印刷方法と同様に、カラーインクを吐出するカラーノズル(ノズル♯1〜10)の搬送方向の位置と、白インクを吐出する白ノズル(ノズル♯1〜10)の搬送方向の位置とが重複している。また、変形例においても、双方向印刷が行われている。図に示すように、パス1、3、6、8ではキャリッジが往路を移動し、パス2、4、5、7ではキャリッジが復路を移動する。
【0087】
図21A及び図21Bは、図20の領域Aにおける8個のラスタラインのドットの様子の説明図である。図21Aは、表側から見たドットの様子の説明図である。図21Bは、裏側から見たドットの様子の説明図である。ここでは説明の簡略化のため、全ての画素にカラードット及び白ドットを形成している。
【0088】
領域Aのいずれのラスタラインにおいても、キャリッジが往路に移動するときにドットが形成される画素と、キャリッジが復路に移動するときにドットが形成される画素とが、移動方向に交互に並んでいる。言い換えると、領域Aのいずれのラスタラインにおいても、キャリッジが往路に移動するパスにおいて間隔を形成されたカラードット及び白ドットの間に、キャリッジが復路に移動するパスにおいて形成されたカラードット及び白ドットが位置する。このため、いずれのラスタラインにおいても、カラードットの上に白ドットが形成された画素と、白ドットの上にカラードットが形成された画素とが、移動方向に交互に並ぶことになる。この結果、媒体の表裏のどちら側から見ても、いずれのラスタラインにおいても、カラードットを視認しやすい画素と、カラードットを視認しにくい画素とが移動方向に交互に並ぶことになる。
【0089】
前述の図16に示す印刷方法では、カラードットを視認しやすいラスタラインと、カラードットを視認しにくいラスタラインとが交互に並ぶため、移動方向に沿った筋が視認されるおそれがある(図17B参照)。これに対し、この変形例では、いずれのラスタラインにおいても、カラードットを視認しやすい画素と、カラードットを視認しにくい画素とが移動方向に交互に並ぶため、移動方向に沿った筋は視認されにくい。
【0090】
===その他===
上記の実施形態は、主としてプリンターについて記載されているが、その中には、印刷装置、印刷方法、プログラム、プログラムを記憶した記憶媒体等の開示が含まれていることは言うまでもない。
【0091】
また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0092】
<ノズルについて>
前述の実施形態では、圧電素子を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【0093】
<インクについて>
前述の実施形態では、紫外線が照射されると硬化する性質を有するUVインクが用いられていた。但し、必ずしもUVインクが用いられなくても良い。UVインクを用いない場合には、前述の照射ユニット60も不要である。
【符号の説明】
【0094】
1 プリンター、10 コントローラー、
11 インターフェース部、12 CPU、
13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、21 搬送ローラー、
30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、32 キャリッジ移動機構、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、
50 検出器群、60 照射ユニット、61 仮硬化用照射部、62 本硬化用照射部、
70 カッターユニット、90 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な媒体を搬送するとともに、印刷済みの媒体をロール状に巻き取る搬送ユニットと、
カラー画像を形成するためのインクを吐出する複数のノズルが並ぶ第1ノズル列と、
背景画像を形成するためのインクを吐出する複数のノズルが並ぶ第2ノズル列と、
を備え、
前記カラー画像と前記背景画像とを重ねて形成される印刷画像が複数連続して前記媒体に印刷される場合であって、前記媒体が前記ロール状に巻き取られたときに前記印刷画像の前記背景画像が前記カラー画像の外側に位置する場合、
前記ロール状に巻き取られる前記媒体の端部に、前記カラー画像の少なくとも一部が前記背景画像の外側に位置するように前記カラー画像と前記背景画像とを重ねた確認用画像を印刷する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記搬送ユニットは、前記媒体の印刷面が外側を向くように前記印刷済みの媒体をロール状に巻き取るものであり、
前記カラー画像の上に前記背景画像を重ねた前記印刷画像が複数連続して前記媒体に印刷される場合、前記ロール状に巻き取られる前記媒体の端部に、前記背景画像の上に前記カラー画像を重ねた前記確認用画像が印刷される
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記搬送ユニットは、前記媒体の印刷面が内側を向くように前記印刷済みの媒体をロール状に巻き取るものであり、
前記背景画像の上に前記カラー画像を重ねた前記印刷画像が複数連続して前記媒体に印刷される場合、前記ロール状に巻き取られる前記媒体の端部に、前記カラー画像の上に前記背景画像を重ねた前記確認用画像が印刷される
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記カラー画像を構成するカラードットの上に前記背景画像を構成する背景用ドットが形成された画素と、前記背景用ドットの上に前記カラードットが形成された画素とを混在させて、前記確認用画像を印刷する
ことが望ましい。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷装置であって、
移動方向に移動しながら前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列から前記インクを吐出して前記媒体に前記カラードット及び前記背景用ドットを形成するドット形成動作と、前記媒体を搬送方向に搬送する搬送動作とを繰り返すことによって、前記媒体に前記カラー画像と前記背景画像を形成するとともに、
前記確認用画像を印刷する際に、
前記ドット形成動作において、前記第1ノズル列の前記インクを吐出する前記ノズルの前記搬送方向の位置と、前記第2ノズル列の前記インクを吐出する前記ノズルの前記搬送方向の位置とを重複させ、且つ
前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列が前記移動方向の往路に移動する前記ドット形成動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列が前記移動方向の復路に移動する前記ドット形成動作とを繰り返し行うことによって、
前記カラー画像と前記背景画像とが重複する領域に、前記カラードットの上に前記背景用ドットが形成された画素と、前記背景用ドットの上に前記カラードットが形成された画素とを混在させる
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
透明な媒体を搬送するとともに、印刷済みの媒体をロール状に巻き取る搬送ユニットと、
カラー画像を形成するためのインクを吐出する複数のノズルが並ぶ第1ノズル列と、
背景画像を形成するためのインクを吐出する複数のノズルが並ぶ第2ノズル列と、
を備えた印刷装置を用いた印刷方法であって、
前記カラー画像と前記背景画像とを重ねて形成される印刷画像が複数連続して前記媒体に印刷される場合であって、前記媒体が前記ロール状に巻き取られたときに前記印刷画像の前記背景画像が前記カラー画像の外側に位置する場合、
前記ロール状に巻き取られる前記媒体の端部に、前記カラー画像の少なくとも一部が前記背景画像の外側に位置するように前記カラー画像と前記背景画像とを重ねた確認用画像を印刷する
ことを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−152946(P2012−152946A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12089(P2011−12089)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】