印刷装置及び印刷方法
【課題】転写フィルムとカードとの位置合わせ後にヒートローラが移動してきても転写フィルムの位置が大きく変動せず、転写ずれを引き起こすことなく精度良く転写できる印刷装置を提供する。
【解決手段】記録媒体搬送手段にて形成される媒体搬送パスと、フィルム搬送手段にて形成されるフィルムパスとが非転写時には並行しており、転写の際には、フィルム搬送手段を構成する剥離コロ34bが媒体搬送パスに向けて移動し、フィルムパスが媒体搬送パスと接触するようにする。剥離コロ34bの移動にて、両方のパスが接触した状態で、カード71の先端と転写フィルム46の画像情報記録部とをそれぞれ転写開始位置に搬送する位置合せ処理を行い、転写プラテン31とヒートローラ33とのニップにてカード71に画像を転写する。
【解決手段】記録媒体搬送手段にて形成される媒体搬送パスと、フィルム搬送手段にて形成されるフィルムパスとが非転写時には並行しており、転写の際には、フィルム搬送手段を構成する剥離コロ34bが媒体搬送パスに向けて移動し、フィルムパスが媒体搬送パスと接触するようにする。剥離コロ34bの移動にて、両方のパスが接触した状態で、カード71の先端と転写フィルム46の画像情報記録部とをそれぞれ転写開始位置に搬送する位置合せ処理を行い、転写プラテン31とヒートローラ33とのニップにてカード71に画像を転写する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカードなどの記録媒体に転写フィルム上に形成された画像を転写する印刷装置に係わり、転写ずれを引き起こすことなく精度良く転写できる印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の印刷装置は、プラスチックカードなどの媒体上に顔写真、文字情報などの画像を形成する装置として広く知られているが、転写フィルムに形成した画像をプラテン部で記録媒体に転写する場合に、プラテン部まで搬送されてくる転写フィルムと記録媒体との位置合わせを正確に行う必要がある。
【0003】
そうしたことから、転写フィルムにおける画像の前端が再転写位置の直前まで搬送して、転写フィルム上の画像の前端とカードの前端との位置合わせを行った後、ヒートローラを移動させて転写フィルム面上に押し当てて転写を行う構成が知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記の構成は、転写前にカードと転写フィルムの頭出しを行って位置合わせをしても、その後、転写のためにヒートローラが移動して転写フィルムを圧し付けることでフィルムパスが変化したとき、余分に転写フィルムが引き出されて転写フィルムの位置が変動してしまう不具合がある。
【0005】
このとき、常に一定量が引き出されるのであれば、それを見越した位置合わせを行うことで印刷開始位置のずれは防止できる。しかしながら、引き出される際の慣性によるオーバーランや、供給側及び巻取り側に巻回しているフィルム量のバランスにより使用済みの転写フィルムが巻き取られたスプール側から引き出される場合もあり、パスの変化によって移動する転写フィルム量は一定しておらず、カードに対する印刷開始位置は安定していなかった。
【0006】
そのため、ヒートローラを転写位置に移動させた後にカードとフィルムの位置合せを行う構成も知られていた。すなわち、図20に示すようにヒートローラ90を移動させて転写フィルム97をプラテンローラ91に押し当てた状態で、フィルム頭出しセンサ93にてフィルム頭出しマーク94を検知し、カード頭出しセンサ95にてカードの先端を検知することで互いの位置合わせを行って転写フィルムの転写部分92とカード96との同期を取って、ヒートローラと転写部分とをニップ部に送り込み転写しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−198963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図20の従来技術では、ヒートローラがフィルムの転写領域以外の部分に長時間触れることでフィルムを損傷させてしまう欠点があった。
【0009】
従って、本発明は、転写フィルムとカードとの位置合わせ後にヒートローラが移動してきても転写フィルムの位置が大きく変動せず、転写ずれを引き起こすことなく精度良く転写できる印刷装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するため本発明による印刷装置は、フィルム状媒体から記録媒体に画像を転写する印刷装置において、前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段と、前記記録媒体搬送手段にて形成される媒体搬送パスと、前記フィルム状媒体を前記媒体搬送パスと並行して搬送するフィルム搬送手段と、前記フィルム搬送手段にて形成されるフィルムパスと、前記転写の際に前記フィルムパスが前記媒体搬送パスと接触するよう前記フィルムパスを移動させるフィルムパス移動手段と、前記フィルムパス移動手段が前記フィルムパスを移動させた後に、前記記録媒体と前記フィルム状媒体の画像情報記録部とをそれぞれ転写開始位置に搬送する位置合せ処理を行う位置合わせ処理手段と、前記位置合わせ処理後に前記フィルム状媒体を前記媒体搬送パスに圧し付けて前記記録媒体に画像を転写する転写手段と、
を備えたことを特徴としている。
【0011】
そして、前記フィルムパス移動手段は、前記フィルム搬送手段を構成するコロであることを特徴としている。
【0012】
また、前記コロは、前記転写手段よりも前記記録媒体の搬送方向の下流側にあって前記媒体搬送パスと直交する方向に移動することを特徴としている。
【0013】
また、前記コロは、前記転写手段が転写終了により前記フィルム状媒体の前記記録媒体への圧し付けを解除した後に前記フィルムパスと前記媒体搬送パスとの接触を解除するよう移動することを特徴としている。
【0014】
上記課題を達成するため本発明による印刷方法は、同一方向に移動するフィルム状媒体と記録媒体とを接触させることにより前記フィルム媒体から前記記録媒体に画像を転写する印刷方法であって、前記フィルム状媒体が搬送されるフィルムパスを移動させて前記記録媒体が搬送される媒体搬送パスと接触させるフィルムパス移動ステップと、前記フィルムパスの移動後、前記記録媒体と前記フィルム状媒体とをそれぞれ転写開始位置に搬送する位置合せ処理を行う位置合わせ処理ステップと、前記位置合わせ処理後に前記フィルム状媒体を前記媒体搬送パスに圧し付けて前記記録媒体に画像を転写する転写ステップと、を含むものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、転写の際におけるヒートローラの熱転写動作の前に転写フィルムの搬送パスをカードの搬送パスと接触するよう移動させることで、パス通路の変動による転写フィルムの位置の変化が確定した段階で転写フィルムとカードとの位置合わせを行うために、両者を正確に同期させて熱転写動作を行うことができる。従って、転写ずれを引き起こすことなく印刷精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係わる印刷装置の全体構成を示す。
【図2】図1の装置に於けるフィルムカセットの斜視図を示す。
【図3】画像転写で記録媒体が搬入する状態の説明図を示す。
【図4】画像転写でヒートローラが作動位置にある状態の説明図を示す。
【図5】画像転写で退避位置にある状態の説明図を示す。
【図6】図1の装置に於ける転写ユニットと、フィルムカセットの斜視構成図を示す。
【図7】図6の装置に於ける転写ユニットの組み立て分解図を示す。
【図8】ヒートローラの昇降機構を示す全体斜視図を示す。
【図9】図8に於ける剥離コロの昇降機構の構成図を示す。
【図10】図1の装置における画像転写に係わる部分の構成図を示す。
【図11】本発明に係わる印刷装置においてカードが接近してきた状態の動作説明図を示す。
【図12】本発明に係わる印刷装置において剥離コロが剥離位置に移動した状態の動作説明図を示す。
【図13】本発明に係わる印刷装置において位置合わせの状態の動作説明図示す。
【図14】本発明に係わる印刷装置においてヒートローラが作動位置に移動した状態の動作説明図を示す。
【図15】本発明に係わる印刷装置においてカード後端がヒートローラを通過して転写が終了した状態の動作説明図を示す。
【図16】本発明に係わる印刷装置においてヒートローラが作動位置から待機位置に復帰した状態の動作説明図を示す。
【図17】本発明に係わる印刷装置において剥離コロが剥離位置から退避位置に移動した状態の動作説明図を示す。
【図18】本発明に係わる印刷装置の制御構成をブロック図にて示す。
【図19】従来の剥離動作の動作説明図を示す。
【図20】従来の画像転写の説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、フィルム状媒体を通して記録媒体に画像を転写する印刷装置に関するもので、好適な実施の形態として、カードに転写フィルムを通して画像情報を記録する印刷装置を示し本発明を説明する。
【0018】
図1は本発明に係わる印刷装置の全体構成の説明図である。この装置は、各種証明用のIDカード、商取引用のクレジットカード等に転写フィルムを通して画像情報を転写し印刷するものである。このため情報記録部Aと画像記録部(画像形成部;以下同様)Bと、これらにカードを供給するカード供給部Cが備えられている。
【0019】
[カード供給部]
装置ハウジング1にはカード供給部Cが設けられ、複数枚のカードを収納するカードカセットで構成されている。図1に示すカードカセット3は複数のカードを立位姿勢で整列して収納し、同図左端から右端にカードを繰り出す。そしてカードカセット3の先端には分離開口7が設けられ、ピックアップローラ19で最前列のカードから装置内に供給する。
【0020】
[情報記録部の構成]
上述のカードカセット3から送られたカード(記録媒体;以下同様)は搬入ローラ22から反転ユニットFに送られる。反転ユニットFは装置フレーム(不図示)に旋回動可能に軸受け支持されたユニットフレームと、このフレームに支持された一対、或いは複数のローラ対で構成される。
【0021】
図示のものは距離を隔てて前後に配置された2つのローラ対20、21をユニットフレームに回転自在に軸支持されている。そしてユニットフレームは旋回モータ(パルスモータなど)で所定角度方向に旋回動し、これに取付けられているローラ対は搬送モータで正逆転方向に回転するように構成されている。この駆動機構は図示しないが、1つのパルスモータでユニットフレームの旋回動と、ローラ対の回転をクラッチで切り換えるように構成しても、ユニットフレームの旋回動とローラ対の回転を別駆動に構成してもよい。
【0022】
従ってカードカセット3に準備されたカードはピックアップローラ19と分離ローラ(アイドルコロ)9で1枚ずつ分離され下流側の反転ユニットFに送られる。そして反転ユニットFはカードをローラ対20、21でユニット内に搬入し、ローラ対でニップした状態で所定角度方向に姿勢偏向することとなる。
【0023】
上記反転ユニットFの旋回方向外周には、磁気記録ユニット24と、非接触式IC記録ユニット23及び接触式IC記録ユニット27と、リジェクトスタッカ25が配置されている。尚、図示28はバーコードリーダであり、例えば後述する画像形成部Bで印刷したバーコードを読み取って正誤判別(エラー判別)するためのユニットである。以下これらの記録ユニットをデータ記録ユニットという。
【0024】
そこで反転ユニットFで所定の角度方向に姿勢偏向されたカードをローラ対20、21で記録ユニットに移送すると、カードに磁気的若しくは電気的にデータ入力することが可能となる。またこれらのデータ入力ユニットで記録ミスが生じた場合にはリジェクトスタッカ25に搬出する。
【0025】
上記反転ユニットFの下流側には画像形成部Bが設けられ、この画像形成部Bにカードカセット3からカードを移送する搬送経路P1が設けられ、この経路P1に前述の反転ユニットFが配置されている。また、搬送経路P1にはカードを搬送する搬送ローラ(ベルトでも良い)29、30が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。この搬送ローラ29、30は正逆転切り換え可能に構成され、反転ユニットFから画像形成部Bにカードを搬送するのと同様に画像形成部Bからカードを反転ユニットFに搬送するようになっている。
【0026】
上記画像形成部Bの下流側には収容スタッカ55にカードを移送する搬出経路P2が設けられている。搬出経路P2にはカードを搬送する搬送ローラ(ベルトでも良い)37、38が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0027】
尚、搬送ローラ37と搬送ローラ38の間にはディカール機構36が配置され、搬送ローラ37、38間に保持されたカード中央部を押圧することによってカール矯正する。このためディカール機構36は図示しない昇降機構(カムなど)で図1上下方向に位置移動可能に構成されている。
【0028】
[画像形成部]
画像形成部Bは、印刷のための記録媒体であるカードの表裏面に顔写真、文字データなど画像を形成する。この画像形成部Bには転写手段としての転写プラテン31とヒートローラ33とが設けられ、このプラテンでカード上に画像形成する。図示の装置は、転写フィルム46(中間転写のフィルム状媒体)上に先ず画像形成(一次転写)し、更にこのフィルムの画像を転写プラテン31でカード上に転写(二次転写)する。このため装置ハウジング1には、インクリボンカセット42と転写フィルムカセット50が装備される。
【0029】
図示のインクリボンカセット42は、昇華型インクリボンその他の熱転写インクリボン41を操出ロール43と巻取ロール44間に巻装し、装置ハウジング1に着脱可能に装着される。この巻取ロール44には図示しないワインドモータMr1が連結されている。また、装置側にはサーマルヘッド40と画像形成プラテン45がインクリボン41を挟んで対向配置されている。
【0030】
上記サーマルヘッド40にはヘッドコントロール用IC74a(図18参照)が連結され、サーマルヘッド40を熱制御するようになっている。このヘッドコントロール用IC74aは画像データに従ってサーマルヘッド40を加熱制御することによってインクリボン41を後述する転写フィルム46に画像形成する。これにより転写フィルム46には画像情報記録部d(図11参照)が形成されて、後にカードに転写されることになる。このため、サーマルヘッド40の熱制御と同期して巻取ロール44が回転し、インクリボン41を所定速度で巻き取るように構成されている。図示f1はサーマルヘッド40を冷やす為の冷却ファンである。
【0031】
一方、転写フィルムカセット50(以下「フィルムカセット」という)も装置ハウジング1に着脱可能に装着される。このフィルムカセット50に装填された転写フィルム46がプラテンローラ(画像形成プラテン)45とインクリボン41の間を走行して転写フィルム上に画像を形成する。このため転写フィルム46は供給スプール47と巻取スプール48に巻回され、この転写フィルム46は画像形成プラテン45で形成された画像を転写プラテン31と後述するヒートローラ33の間に移送する。
【0032】
移送ローラ49は図示しない駆動モータに連結されて、転写フィルム46への画像形成時(一次転写)にのみ転写フィルム46を搬送する主の搬送ローラとなる。移送ローラ49の周面にはピンチローラ32aと32bが配置されており、ピンチローラ32aと32bは一次転写状態では、図1に示すように移送ローラ49の周面を圧接して転写フィルム46を移送ローラ49に密接させる。
【0033】
また、ガイドコロ34aは転写プラテン31に転写フィルム46を案内するものであり、剥離コロ34bは転写プラテン31を記録媒体のカードから剥離する剥離部材である。このガイドコロ34aと剥離コロ34bは転写プラテン31を挟んでガイドコロ34aが上流側に、剥離コロ34bが下流側に、それぞれフィルムカセット50に取付けられている。また、ガイドコロ34aと剥離コロ34bとの間隔L1は記録媒体Kの画像形成方向(搬送方向)長さLcより短く(L1<Lc)設定されている(図3参照)。
【0034】
ヒートローラ33は、転写フィルム46を挟んで転写プラテン31と対向して配置されている。このヒートローラ33は転写フィルム46上に形成された画像情報記録部上の画像をカードに加熱圧接して転写(二次転写)する。そして、ヒートローラ33は、後述するヒートローラ昇降手段61によりフィルムカセット50の内側から転写プラテン31に圧接・離間するよう構成されている。尚、センサSe1はインクリボン41の位置を検出するもので、センサSe2は転写フィルム46の有無を検出する。そして、画像形成部Bには装置内に発生した熱を外に出す為のファンf2が設けられている。
【0035】
[フィルムカセットの構成]
上述の転写フィルム46を装填するフィルムカセット50について説明する。このフィルムカセット50は図2に示すように装置ハウジング1とは分離したユニットで構成され、装置ハウジング1に着脱可能に取付けられている。図示しないが図1の前面側にフロントカバーが開閉自在に配置され、このフロントカバーを開けた状態で装置フレームにフィルムカセット50を図2の矢印方向に装着するようになっている。
【0036】
このフィルムカセット50には、供給スプール47と巻取スプール48が着脱可能に装着される。軸受部52はスプールの一端を支持し、カップリング部材56はスプールの他端側を支持する。そして供給スプール47から剥離コロ34b、を経てガイドコロ34a、35b、35a、次いで巻取スプール48に転写フィルム46が架け渡される。
【0037】
なお、上記ガイドコロ35a、35b、34a及び剥離コロ34bは、図示のものはフィルムカセット50に取付けたピン部材(従動コロ)で構成しているが、固定ピン(不回転)であっても良い。本装置では、カードに転写フィルム46上の画像を転写する際は供給スプール47で転写フィルム46を巻き取りながら転写を行う。よって、剥離コロ34bは転写フィルム46の転写時におけるフィルム搬送方向下流側(ヒートローラ33よりも供給スプール47側)に設けられている。
【0038】
このように架け渡された転写フィルム46には装置側に配置された搬送ローラ29、30に連結される駆動回転軸(不図示)と、上記移送ローラ49は同一速度でフィルムを走行するように駆動回転する。
【0039】
[カードへの熱転写動作]
上記した画像形成部及びフィルムカセットにおいて熱転写動作に係わる部分の構成について図3乃至図5にて説明すると、転写フィルム46はガイドコロ34aと剥離部材としての剥離コロ34bで支持されている。剥離コロ34bは、転写フィルム46に形成された画像をカードに転写した後、カードからフィルムを剥離させるためのものである。
【0040】
剥離コロ34bは図5に示すように作動位置(実線)と退避位置(破線)に移動可能であり、作動位置においては剥離コロ34bが搬送経路P1に沿って搬送されるカードの表面に対して転写フィルム46を介して接するように設定されている。
【0041】
よって、カードに転写された転写フィルム46は、ヒートローラ33から剥離コロ34bまではカードに接着しており、カードが剥離コロ34bに到達したときに転写フィルム46がカード表面から剥離される。このとき、剥離された転写フィルム46はカードと直交する方向(図の下方向)に巻き取られるため、カードと剥離後の転写フィルム46は剥離コロ34bを介して略90度の関係が保たれる(剥離角度βが略90度)。
【0042】
例えば、図19で示すように剥離コロ34bが搬送経路P1から離れた位置に設けられていた場合、転写されたフィルム46が剥離コロ34bに到達する前にカードから剥離してしまう。このような構成では転写フィルム46がカードから剥離する位置と剥離角度(β2)が不確定となり、転写斑が発生するおそれがある。さらに転写されてから剥離するまでの時間が短くなってしまうため、良好な剥離を行えない場合がある。よって、剥離コロ34bを本実施形態の作動位置に設定することで、剥離角度と、剥離するまでの時間(ヒートローラ33から剥離位置までの距離)が一定となるため、転写斑の発生を抑えることができる。
【0043】
一方、転写プラテン31に対してヒートローラ33は圧接又は離反し、後述する制御手段70は、カード上に画像転写するときにはヒートローラ33を作動位置(Pn1)に移動して圧接(図4)し、画像形成後(カード後端がヒートローラ33を通過した後)は待機位置(Pn2)に移動して離反させる(図5)。これにより、カード後端がヒートローラ33を通過した後にヒートローラ33に転写フィルム46が接触して、転写フィルム46が変形するのを防止する。
【0044】
また、制御手段70は、カード後端が剥離コロ34bを通過するタイミングで、この剥離コロ34bを作動位置(Pn3)から待機位置(Pn4)に移動させる。ここで、剥離コロ34bを待機位置に移動させているため、両面印刷を行う際に搬送パス上流側の反転ユニットFに向けてカードをスイッチバック搬送させる際にカードが剥離コロ34bに衝突することを防止している。このような制御によって転写フィルム46に過剰の熱が作用して変形する恐れも、また転写フィルム46を剥離する際に画像斑が発生することがない。
【0045】
本発明は、このようなヒートローラ33及び剥離コロ34bを昇降させるタイミングを適切に制御することで転写ずれを引き起こすことなく精度良く転写フィルムによるカードへの転写を実現するものであるが、その動作については後に明らかとなる。
【0046】
[ヒートローラ及び剥離コロの昇降]
ヒートローラ33と剥離コロ34を昇降させるために、ヒートローラ昇降手段61と剥離コロ昇降手段62を設けている。図6は前述のフィルムカセット50、ヒートローラ昇降手段61、及び剥離コロ昇降手段62の全体構成を示す説明図である。これら昇降手段61、62とヒートローラ33はフィルムユニット60に内蔵され、装置フレームに取り付けられている。一方、剥離コロ34bはフィルムカセット50側に取付けられている。
【0047】
図6において、フィルムカセット50は装置フレームに矢印方向に着脱可能に装着される。そして装置フレームに設けられるフィルムユニット60と、フィルムカセット50の転写フィルム46が組み合わせられる。図7は、フィルムユニット60の組み立て分解図であり、転写ユニット60にはヒートローラ33を備えた昇降フレーム63が図示矢印方向に昇降可能に支持されている。また、剥離コロ34bはフィルムカセット50側に嵌合溝34Sで昇降可能に支持されている。
【0048】
上記ヒートローラ33を備えた昇降フレーム63の構成を図6に示す。ヒートローラ33は転写プラテン(図示のものはローラ)31と対向する位置に昇降フレーム63と共に図6矢印方向に昇降するようにユニットフレーム64に取り付けられている。そしてユニットフレーム64にシフトモータMSが取付けられ、このモータの回転軸にシフトカム64c(例えば偏心カム)が設けられている。このシフトカム64cの回転でこのカムと長溝(カムフォロアー;不図示)で嵌合している昇降フレーム63は図8において上下方向に昇降する。
【0049】
また、ヒートローラ33には、転写プラテン31と対向する位置に開閉カバー65が支軸65pを中心に図示矢印方向に回転(開閉)するように設けてある。この開閉カバー65は高熱のヒートローラ33に使用者の手指が触れないようにガードする。このためヒートローラ33が待機位置(Pn2;図3)のときには開閉カバー65はローラ表面を覆い、カードがジャムを起こして使用者がジャム解除作業を行う際にはローラ表面に触れるのをガードし、ヒートローラ33が作動位置(Pn1;図4)のときにはローラ表面から退避して転写フィルム46をプラテン31に圧接する。また、ヒートローラ33にカバーをすることによって、転写時以外に転写フィルム46に熱が加えられることがないので、転写フィルム46の保護にもなっている。
【0050】
その開閉機構は、ユニットフレーム64にラック63rが一体に設けてあり、昇降フレーム63にこのラックと噛合するピニオン63pが設けてある。このピニオン63pは開閉カバー65の支軸65pと歯車結合されている。従ってシフトモータMSでシフトカム64cを回転して昇降フレーム63を図8で矢印方向に上昇させると、ピニオン63pが同図反時計方向に回転し、これと歯車連結されている開閉カバー65が図示矢印(時計方向)方向に回転する。
【0051】
このように、ヒートローラ33をカードに圧接した作動位置(Pn1)と離間した退避位置(Pn2)との間を昇降するヒートローラ昇降手段61は、シフトモータMSとシフトカム64cで構成されることとなる。またこのヒートローラ昇降手段61でヒートローラ33の開閉カバー65を図4で示す開位置と図3で示す閉位置との間で開閉している。
【0052】
次に、カードに画像転写した転写フィルム46を剥離する作動位置(Pn3)と記録媒体Kから離間した退避位置(Pn4)との間で剥離コロ34bを昇降する剥離コロ昇降手段62について説明する。
【0053】
図9は図7の機構から剥離コロ昇降手段62の構成のみを抽出した説明図であり、この図9に示すようにシフトモータMSに歯車連結された駆動回転軸64dにはドライブカム66cが連結されている。このドライブカム66cと係合するカムフォロア66fを備えたレバー66rが図9で上下方向に昇降するようにスリットとピンでユニットフレーム64に昇降可能に支持されている。このレバー66rには復帰スプリング66Sがユニットフレーム64との間に架け渡してある。
【0054】
従ってシフトモータMSの回転でドライブカム66cが回転すると、カムフォロア66fを有するレバー66rが上下動することとなる。尚、ドライブカム66cは後述するようにシフトモータMSの角度制御で、剥離コロ34bを退避位置(Pn4)に待機させ、この状態から作動位置(Pn3)に移動する。
【0055】
そこでドライブカム66cを回転させてレバー66rを矢印方向に上昇させる。このレバー66rには揺動レバー67が連結され、この揺動レバー67は支軸67pを中心に図9で矢印方向に回転(揺動)する。するとこの揺動レバー67にピン−スリット連結された昇降レバー68aが矢印方向に下降する。この昇降レバー68aと一体の作動レバー68bが、剥離ピンブラケット69a、69bと係合している。なお、上記昇降レバー68aはユニットフレーム64に上下動方向にピンースリット結合によって運動規制されている。
【0056】
従ってレバー66rがドライブカム66cで上昇し、復帰スプリング66Sで下降する上下動運動で揺動レバー67が揺動し、昇降レバー68aと作動レバー68bが上下動し、この作動レバー68bと係合する剥離ピンブラケット69a、69bが上下動する。この剥離ピンブラケット69a、69bは剥離コロ34bの両端部に一体的に取り付けられている。
【0057】
このように剥離コロ昇降手段62は、シフトモータMSとドライブカム66cとレバー66r、揺動レバー67、昇降レバー68a、作動レバー68bで構成されている。図示の装置は剥離部材(剥離コロ)34bを、その両端部を作動レバー68bで偏ることなく同一量ずつ均等に昇降する。
【0058】
以上の説明から明らかなように、ヒートローラ昇降手段61のシフトカム64cと剥離コロ昇降手段62のドライブカム66cのカム形状は、駆動回転軸64dの駆動によりヒートローラ33と剥離コロ34bとが図6乃至図9で説明したタイミングで昇降するよう設定されている。
【0059】
[制御構成]
図18で制御構成について説明する。制御部Hは、制御CPU70で構成され、CPU70にはROM71とRAM72が備えられている。そして制御CPU70には、データ入力制御部73と、画像形成制御部74と、カード搬送制御部75が構成されている。
【0060】
カード搬送制御部75は、搬送経路P1と搬出経路P2に配置されている記録媒体搬送手段(図1に示す搬送ローラ対)を制御するように図示しない駆動モータのドライブ回路にコマンド信号を送信する。このカード搬送制御部75は反転ユニットFの旋回モータのドライブ回路にコマンド信号を送信する。これと共にカード搬送制御部75はデータ入力制御部73からジョブ信号を受信するように接続されており、ジョブ信号が入力されると、装置内に配置している各カードの検知センサからの検知信号に基づきカードの搬送状態を監視するように構成されている。
【0061】
上記データ入力制御部73は、磁気記録ユニット24に内蔵されているデータR/W用のIC73xに入力データの送受信を制御するコマンド信号を送信し、同様に非接触式IC記録ユニット23及び接触式ICのデータR/W用のIC73yにコマンド信号を送信するように構成されている。画像形成制御部74は、画像形成部Bでカードの表裏面への画像形成を制御する。
【0062】
この画像形成制御部74は、カード搬送制御部75でコントロールされるカードの搬送に応じてこのカード表面に転写プラテン31とヒートローラ33とで画像転写する。このため、画像形成制御部74は一次転写時にサーマルヘッド40を制御して転写フィルム45に画像形成するヘッドコントローラIC74a、インクリボンワインドモータ制御部74bと、転写フィルムワインドモータ制御部74cと、シフトモータMS制御部74dを備えている。
【0063】
そして上記RAM72には、データ入力部(磁気・IC記録部)でカード上にデータ入力する処理時間が、例えばデータテーブルに記憶されている。
【0064】
上記構成の本発明の実施形態による印刷装置において、転写フィルムからカードへ熱転写する動作について説明する。
【0065】
図10はインクリボン41にて転写フィルム46に画像形成する一次転写が終わった状態を示している。図10において、搬送ローラ29、30が転写フィルムに印刷が行われる記録媒体であるカードの搬送手段(記録媒体搬送手段)であり、供給スプール47と巻取スプール48との間で転写フィルムが架け渡される剥離コロ34b、ガイドコロ34a、35b、35a等はフィルム搬送手段となっている。
【0066】
そして、図10に示す状態では、ヒートローラ33と転写プラテン31がある転写位置付近において、前記フィルム搬送手段にて形成されるフィルムパスは剥離コロ34bが退避位置にあるために、前カード搬送手段にて形成される媒体搬送パス(搬送経路P1)とは搬送方向は同一であるが接触していない。このとき、転写フィルム46に設けた頭出しマークはフィルムセンサSe2よりも上流側で待機しており、カードに転写する画像情報の記録部は頭出しマークの更に上流側に位置している。一方、カードはカードセンサSe4よりも上流側にて待機している。
【0067】
この状態から転写動作が開始されるが、以下、要部のみを示す図11から図17までにて熱転写動作を説明する。
【0068】
画像形成するカードの転写プラテン31への接近をセンサSe4にて検知すると(図11)、制御CPU70の画像形成制御部74はシフトモータドライブ回路74dを制御してシフトモータMSを所定角度回転させる。そして、ドライブカム66cの回転により剥離コロ34bは剥離位置に移動して図12の状態となる。
【0069】
この図12の状態では、剥離コロ34bを退避位置から剥離動作のための作動位置に移動しており、剥離コロ34bのこの移動により、転写フィルム46も剥離コロ34bと共に移動するために供給スプール47又は巻取りスプール48からフィルムが引き出されてフィルムパスが変わる。このときのフィルムパスは転写時の記録媒体搬送パス(搬送経路P1)と接触することになって転写フィルムの位置が確定する。
【0070】
次に、制御CPU70はカード搬送制御部75にてカードの搬送を制御すると同時に、画像形成制御部74にて転写フィルムワインドモータ制御部74cを制御して、図13で示すようにカードと転写フィルム46との位置合わせを行う位置合わせ処理手段としての動作を行う。
【0071】
まず、転写フィルムワインドモータ制御部74cが供給スプール47の駆動モータを制御して、転写フィルム46の画像情報記録部を転写プラテン31で位置合わせするために転写フィルム46を搬送する。この場合、画像形成制御部74は、センサSe2にて転写フィルム46の画像情報記録部の先頭に設定しているフィルム頭出しマークを検知してから画像情報記録部が転写プラテン31に達するまでの時間の経過後に転写フィルムワインドモータ制御部74cを制御して搬送を停止する。
【0072】
転写フィルムの位置合わせの終了後、カード搬送制御部75が、搬送ローラ30を駆動するモータを制御して、カードを転写プラテン31で位置合わせするためにカードを搬送する。そして、カードの先端がセンサSe4にて検知してから転写プラテンに達するまでの時間の経過後に搬送を停止する。
【0073】
上記で述べた位置合わせ処理は、転写フィルム46を先ず位置合わせで搬送し、その後、カードを位置合わせで搬送しているが、両方同時に行っても或いはカードが先で転写フィルム46が後にしても良い。但し、カードを先にして転写フィルム46を後にすると、カードが転写位置に待機している状態で転写フィルム46の画像情報記録部が通過すると保持してある画像がカードと擦れて破損する恐れがある。
【0074】
次に、制御CPU70の画像形成制御部74が更にシフトモータドライブ回路74dを制御してシフトモータMSを所定角度回転させると、シフトカム64cの回転によりヒートローラ33は作動位置に移動して図14の状態となる。そして、制御CPU70は転写フィルムワインドモータ制御部74cとカード搬送制御部75とを制御して転写フィルム46とカードを同時に搬送させて、転写フィルム46画像形成部とカードとが転写プラテン31とヒートローラ33にニップされて画像情報記録部に保持されている画像がカードに転写され印刷が行われる。
【0075】
このように、転写フィルムの位置が確定した時点で、センサSe2及びセンサSe4によるカードと転写フィルム46の頭出しにて位置合わせを行えば、転写時にカードと転写フィルム46とがずれることはない。
【0076】
そして、制御CPU70の画像形成制御部74はカード後端が転写プラテン31とヒートローラ33とを通過する図15の状態を見込した時間(予め設定されたタイマー時間)が経過すると、シフトモータドライブ回路74dを制御してシフトモータMSを更に所定角度回転させて、シフトカム64cの回転によりヒートローラ33を作動位置から待機位置に復帰させる。この状態が図16であり、このとき剥離コロ34は転写フィルム46をカードから剥離させる作動状態に保持されている。
【0077】
その後、制御CPU70は、カード後端が剥離コロ34bを通過する見込み時間(タイマー時間)の終了後に、再びシフトモータMSを所定角度回転させて、ドライブカム66cの回転により剥離コロ34bを剥離位置から退避位置に移動する。この状態が図17であり、フィルムパスは媒体搬送パス(搬送経路P1)から外れる。このときヒートローラ33は待機位置に保持されている。かかる一連の動作の終了により、シフトカム64cとドライブカム66cはホームポジションに復帰することになる。
【0078】
上記した如く、剥離コロ34bはヒートローラ33より先に作動位置に移動させることで転写フィルム46位置を確定させた後に位置合わせを行うことで、転写ずれを引き起こすことなく精度の高い印刷が行える。
【0079】
また、転写後は剥離コロ34bが剥離動作を行う前にヒートローラ33を待機位置に退避させることで、カード後端がヒートローラ33を通過した後にヒートローラ33に転写フィルム46が接触して転写フィルム46が変形するのが防止される。
【符号の説明】
【0080】
29 搬送ローラ(記録媒体搬送手段)
30 搬送ローラ(記録媒体搬送手段)
31 転写プラテン(転写手段)
33 ヒートローラ(転写手段)
34b 剥離コロ(フィルムパス移動手段)
46 転写フィルム(中間転写フィルム状媒体)
47 供給スプール(フィルム搬送手段)
48 巻取スプール(フィルム搬送手段)
70 制御CPU(位置合わせ処理手段)
P1 媒体搬送パス(搬送経路)
【技術分野】
【0001】
本発明はカードなどの記録媒体に転写フィルム上に形成された画像を転写する印刷装置に係わり、転写ずれを引き起こすことなく精度良く転写できる印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種の印刷装置は、プラスチックカードなどの媒体上に顔写真、文字情報などの画像を形成する装置として広く知られているが、転写フィルムに形成した画像をプラテン部で記録媒体に転写する場合に、プラテン部まで搬送されてくる転写フィルムと記録媒体との位置合わせを正確に行う必要がある。
【0003】
そうしたことから、転写フィルムにおける画像の前端が再転写位置の直前まで搬送して、転写フィルム上の画像の前端とカードの前端との位置合わせを行った後、ヒートローラを移動させて転写フィルム面上に押し当てて転写を行う構成が知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記の構成は、転写前にカードと転写フィルムの頭出しを行って位置合わせをしても、その後、転写のためにヒートローラが移動して転写フィルムを圧し付けることでフィルムパスが変化したとき、余分に転写フィルムが引き出されて転写フィルムの位置が変動してしまう不具合がある。
【0005】
このとき、常に一定量が引き出されるのであれば、それを見越した位置合わせを行うことで印刷開始位置のずれは防止できる。しかしながら、引き出される際の慣性によるオーバーランや、供給側及び巻取り側に巻回しているフィルム量のバランスにより使用済みの転写フィルムが巻き取られたスプール側から引き出される場合もあり、パスの変化によって移動する転写フィルム量は一定しておらず、カードに対する印刷開始位置は安定していなかった。
【0006】
そのため、ヒートローラを転写位置に移動させた後にカードとフィルムの位置合せを行う構成も知られていた。すなわち、図20に示すようにヒートローラ90を移動させて転写フィルム97をプラテンローラ91に押し当てた状態で、フィルム頭出しセンサ93にてフィルム頭出しマーク94を検知し、カード頭出しセンサ95にてカードの先端を検知することで互いの位置合わせを行って転写フィルムの転写部分92とカード96との同期を取って、ヒートローラと転写部分とをニップ部に送り込み転写しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−198963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図20の従来技術では、ヒートローラがフィルムの転写領域以外の部分に長時間触れることでフィルムを損傷させてしまう欠点があった。
【0009】
従って、本発明は、転写フィルムとカードとの位置合わせ後にヒートローラが移動してきても転写フィルムの位置が大きく変動せず、転写ずれを引き起こすことなく精度良く転写できる印刷装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するため本発明による印刷装置は、フィルム状媒体から記録媒体に画像を転写する印刷装置において、前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段と、前記記録媒体搬送手段にて形成される媒体搬送パスと、前記フィルム状媒体を前記媒体搬送パスと並行して搬送するフィルム搬送手段と、前記フィルム搬送手段にて形成されるフィルムパスと、前記転写の際に前記フィルムパスが前記媒体搬送パスと接触するよう前記フィルムパスを移動させるフィルムパス移動手段と、前記フィルムパス移動手段が前記フィルムパスを移動させた後に、前記記録媒体と前記フィルム状媒体の画像情報記録部とをそれぞれ転写開始位置に搬送する位置合せ処理を行う位置合わせ処理手段と、前記位置合わせ処理後に前記フィルム状媒体を前記媒体搬送パスに圧し付けて前記記録媒体に画像を転写する転写手段と、
を備えたことを特徴としている。
【0011】
そして、前記フィルムパス移動手段は、前記フィルム搬送手段を構成するコロであることを特徴としている。
【0012】
また、前記コロは、前記転写手段よりも前記記録媒体の搬送方向の下流側にあって前記媒体搬送パスと直交する方向に移動することを特徴としている。
【0013】
また、前記コロは、前記転写手段が転写終了により前記フィルム状媒体の前記記録媒体への圧し付けを解除した後に前記フィルムパスと前記媒体搬送パスとの接触を解除するよう移動することを特徴としている。
【0014】
上記課題を達成するため本発明による印刷方法は、同一方向に移動するフィルム状媒体と記録媒体とを接触させることにより前記フィルム媒体から前記記録媒体に画像を転写する印刷方法であって、前記フィルム状媒体が搬送されるフィルムパスを移動させて前記記録媒体が搬送される媒体搬送パスと接触させるフィルムパス移動ステップと、前記フィルムパスの移動後、前記記録媒体と前記フィルム状媒体とをそれぞれ転写開始位置に搬送する位置合せ処理を行う位置合わせ処理ステップと、前記位置合わせ処理後に前記フィルム状媒体を前記媒体搬送パスに圧し付けて前記記録媒体に画像を転写する転写ステップと、を含むものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、転写の際におけるヒートローラの熱転写動作の前に転写フィルムの搬送パスをカードの搬送パスと接触するよう移動させることで、パス通路の変動による転写フィルムの位置の変化が確定した段階で転写フィルムとカードとの位置合わせを行うために、両者を正確に同期させて熱転写動作を行うことができる。従って、転写ずれを引き起こすことなく印刷精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係わる印刷装置の全体構成を示す。
【図2】図1の装置に於けるフィルムカセットの斜視図を示す。
【図3】画像転写で記録媒体が搬入する状態の説明図を示す。
【図4】画像転写でヒートローラが作動位置にある状態の説明図を示す。
【図5】画像転写で退避位置にある状態の説明図を示す。
【図6】図1の装置に於ける転写ユニットと、フィルムカセットの斜視構成図を示す。
【図7】図6の装置に於ける転写ユニットの組み立て分解図を示す。
【図8】ヒートローラの昇降機構を示す全体斜視図を示す。
【図9】図8に於ける剥離コロの昇降機構の構成図を示す。
【図10】図1の装置における画像転写に係わる部分の構成図を示す。
【図11】本発明に係わる印刷装置においてカードが接近してきた状態の動作説明図を示す。
【図12】本発明に係わる印刷装置において剥離コロが剥離位置に移動した状態の動作説明図を示す。
【図13】本発明に係わる印刷装置において位置合わせの状態の動作説明図示す。
【図14】本発明に係わる印刷装置においてヒートローラが作動位置に移動した状態の動作説明図を示す。
【図15】本発明に係わる印刷装置においてカード後端がヒートローラを通過して転写が終了した状態の動作説明図を示す。
【図16】本発明に係わる印刷装置においてヒートローラが作動位置から待機位置に復帰した状態の動作説明図を示す。
【図17】本発明に係わる印刷装置において剥離コロが剥離位置から退避位置に移動した状態の動作説明図を示す。
【図18】本発明に係わる印刷装置の制御構成をブロック図にて示す。
【図19】従来の剥離動作の動作説明図を示す。
【図20】従来の画像転写の説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、フィルム状媒体を通して記録媒体に画像を転写する印刷装置に関するもので、好適な実施の形態として、カードに転写フィルムを通して画像情報を記録する印刷装置を示し本発明を説明する。
【0018】
図1は本発明に係わる印刷装置の全体構成の説明図である。この装置は、各種証明用のIDカード、商取引用のクレジットカード等に転写フィルムを通して画像情報を転写し印刷するものである。このため情報記録部Aと画像記録部(画像形成部;以下同様)Bと、これらにカードを供給するカード供給部Cが備えられている。
【0019】
[カード供給部]
装置ハウジング1にはカード供給部Cが設けられ、複数枚のカードを収納するカードカセットで構成されている。図1に示すカードカセット3は複数のカードを立位姿勢で整列して収納し、同図左端から右端にカードを繰り出す。そしてカードカセット3の先端には分離開口7が設けられ、ピックアップローラ19で最前列のカードから装置内に供給する。
【0020】
[情報記録部の構成]
上述のカードカセット3から送られたカード(記録媒体;以下同様)は搬入ローラ22から反転ユニットFに送られる。反転ユニットFは装置フレーム(不図示)に旋回動可能に軸受け支持されたユニットフレームと、このフレームに支持された一対、或いは複数のローラ対で構成される。
【0021】
図示のものは距離を隔てて前後に配置された2つのローラ対20、21をユニットフレームに回転自在に軸支持されている。そしてユニットフレームは旋回モータ(パルスモータなど)で所定角度方向に旋回動し、これに取付けられているローラ対は搬送モータで正逆転方向に回転するように構成されている。この駆動機構は図示しないが、1つのパルスモータでユニットフレームの旋回動と、ローラ対の回転をクラッチで切り換えるように構成しても、ユニットフレームの旋回動とローラ対の回転を別駆動に構成してもよい。
【0022】
従ってカードカセット3に準備されたカードはピックアップローラ19と分離ローラ(アイドルコロ)9で1枚ずつ分離され下流側の反転ユニットFに送られる。そして反転ユニットFはカードをローラ対20、21でユニット内に搬入し、ローラ対でニップした状態で所定角度方向に姿勢偏向することとなる。
【0023】
上記反転ユニットFの旋回方向外周には、磁気記録ユニット24と、非接触式IC記録ユニット23及び接触式IC記録ユニット27と、リジェクトスタッカ25が配置されている。尚、図示28はバーコードリーダであり、例えば後述する画像形成部Bで印刷したバーコードを読み取って正誤判別(エラー判別)するためのユニットである。以下これらの記録ユニットをデータ記録ユニットという。
【0024】
そこで反転ユニットFで所定の角度方向に姿勢偏向されたカードをローラ対20、21で記録ユニットに移送すると、カードに磁気的若しくは電気的にデータ入力することが可能となる。またこれらのデータ入力ユニットで記録ミスが生じた場合にはリジェクトスタッカ25に搬出する。
【0025】
上記反転ユニットFの下流側には画像形成部Bが設けられ、この画像形成部Bにカードカセット3からカードを移送する搬送経路P1が設けられ、この経路P1に前述の反転ユニットFが配置されている。また、搬送経路P1にはカードを搬送する搬送ローラ(ベルトでも良い)29、30が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。この搬送ローラ29、30は正逆転切り換え可能に構成され、反転ユニットFから画像形成部Bにカードを搬送するのと同様に画像形成部Bからカードを反転ユニットFに搬送するようになっている。
【0026】
上記画像形成部Bの下流側には収容スタッカ55にカードを移送する搬出経路P2が設けられている。搬出経路P2にはカードを搬送する搬送ローラ(ベルトでも良い)37、38が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0027】
尚、搬送ローラ37と搬送ローラ38の間にはディカール機構36が配置され、搬送ローラ37、38間に保持されたカード中央部を押圧することによってカール矯正する。このためディカール機構36は図示しない昇降機構(カムなど)で図1上下方向に位置移動可能に構成されている。
【0028】
[画像形成部]
画像形成部Bは、印刷のための記録媒体であるカードの表裏面に顔写真、文字データなど画像を形成する。この画像形成部Bには転写手段としての転写プラテン31とヒートローラ33とが設けられ、このプラテンでカード上に画像形成する。図示の装置は、転写フィルム46(中間転写のフィルム状媒体)上に先ず画像形成(一次転写)し、更にこのフィルムの画像を転写プラテン31でカード上に転写(二次転写)する。このため装置ハウジング1には、インクリボンカセット42と転写フィルムカセット50が装備される。
【0029】
図示のインクリボンカセット42は、昇華型インクリボンその他の熱転写インクリボン41を操出ロール43と巻取ロール44間に巻装し、装置ハウジング1に着脱可能に装着される。この巻取ロール44には図示しないワインドモータMr1が連結されている。また、装置側にはサーマルヘッド40と画像形成プラテン45がインクリボン41を挟んで対向配置されている。
【0030】
上記サーマルヘッド40にはヘッドコントロール用IC74a(図18参照)が連結され、サーマルヘッド40を熱制御するようになっている。このヘッドコントロール用IC74aは画像データに従ってサーマルヘッド40を加熱制御することによってインクリボン41を後述する転写フィルム46に画像形成する。これにより転写フィルム46には画像情報記録部d(図11参照)が形成されて、後にカードに転写されることになる。このため、サーマルヘッド40の熱制御と同期して巻取ロール44が回転し、インクリボン41を所定速度で巻き取るように構成されている。図示f1はサーマルヘッド40を冷やす為の冷却ファンである。
【0031】
一方、転写フィルムカセット50(以下「フィルムカセット」という)も装置ハウジング1に着脱可能に装着される。このフィルムカセット50に装填された転写フィルム46がプラテンローラ(画像形成プラテン)45とインクリボン41の間を走行して転写フィルム上に画像を形成する。このため転写フィルム46は供給スプール47と巻取スプール48に巻回され、この転写フィルム46は画像形成プラテン45で形成された画像を転写プラテン31と後述するヒートローラ33の間に移送する。
【0032】
移送ローラ49は図示しない駆動モータに連結されて、転写フィルム46への画像形成時(一次転写)にのみ転写フィルム46を搬送する主の搬送ローラとなる。移送ローラ49の周面にはピンチローラ32aと32bが配置されており、ピンチローラ32aと32bは一次転写状態では、図1に示すように移送ローラ49の周面を圧接して転写フィルム46を移送ローラ49に密接させる。
【0033】
また、ガイドコロ34aは転写プラテン31に転写フィルム46を案内するものであり、剥離コロ34bは転写プラテン31を記録媒体のカードから剥離する剥離部材である。このガイドコロ34aと剥離コロ34bは転写プラテン31を挟んでガイドコロ34aが上流側に、剥離コロ34bが下流側に、それぞれフィルムカセット50に取付けられている。また、ガイドコロ34aと剥離コロ34bとの間隔L1は記録媒体Kの画像形成方向(搬送方向)長さLcより短く(L1<Lc)設定されている(図3参照)。
【0034】
ヒートローラ33は、転写フィルム46を挟んで転写プラテン31と対向して配置されている。このヒートローラ33は転写フィルム46上に形成された画像情報記録部上の画像をカードに加熱圧接して転写(二次転写)する。そして、ヒートローラ33は、後述するヒートローラ昇降手段61によりフィルムカセット50の内側から転写プラテン31に圧接・離間するよう構成されている。尚、センサSe1はインクリボン41の位置を検出するもので、センサSe2は転写フィルム46の有無を検出する。そして、画像形成部Bには装置内に発生した熱を外に出す為のファンf2が設けられている。
【0035】
[フィルムカセットの構成]
上述の転写フィルム46を装填するフィルムカセット50について説明する。このフィルムカセット50は図2に示すように装置ハウジング1とは分離したユニットで構成され、装置ハウジング1に着脱可能に取付けられている。図示しないが図1の前面側にフロントカバーが開閉自在に配置され、このフロントカバーを開けた状態で装置フレームにフィルムカセット50を図2の矢印方向に装着するようになっている。
【0036】
このフィルムカセット50には、供給スプール47と巻取スプール48が着脱可能に装着される。軸受部52はスプールの一端を支持し、カップリング部材56はスプールの他端側を支持する。そして供給スプール47から剥離コロ34b、を経てガイドコロ34a、35b、35a、次いで巻取スプール48に転写フィルム46が架け渡される。
【0037】
なお、上記ガイドコロ35a、35b、34a及び剥離コロ34bは、図示のものはフィルムカセット50に取付けたピン部材(従動コロ)で構成しているが、固定ピン(不回転)であっても良い。本装置では、カードに転写フィルム46上の画像を転写する際は供給スプール47で転写フィルム46を巻き取りながら転写を行う。よって、剥離コロ34bは転写フィルム46の転写時におけるフィルム搬送方向下流側(ヒートローラ33よりも供給スプール47側)に設けられている。
【0038】
このように架け渡された転写フィルム46には装置側に配置された搬送ローラ29、30に連結される駆動回転軸(不図示)と、上記移送ローラ49は同一速度でフィルムを走行するように駆動回転する。
【0039】
[カードへの熱転写動作]
上記した画像形成部及びフィルムカセットにおいて熱転写動作に係わる部分の構成について図3乃至図5にて説明すると、転写フィルム46はガイドコロ34aと剥離部材としての剥離コロ34bで支持されている。剥離コロ34bは、転写フィルム46に形成された画像をカードに転写した後、カードからフィルムを剥離させるためのものである。
【0040】
剥離コロ34bは図5に示すように作動位置(実線)と退避位置(破線)に移動可能であり、作動位置においては剥離コロ34bが搬送経路P1に沿って搬送されるカードの表面に対して転写フィルム46を介して接するように設定されている。
【0041】
よって、カードに転写された転写フィルム46は、ヒートローラ33から剥離コロ34bまではカードに接着しており、カードが剥離コロ34bに到達したときに転写フィルム46がカード表面から剥離される。このとき、剥離された転写フィルム46はカードと直交する方向(図の下方向)に巻き取られるため、カードと剥離後の転写フィルム46は剥離コロ34bを介して略90度の関係が保たれる(剥離角度βが略90度)。
【0042】
例えば、図19で示すように剥離コロ34bが搬送経路P1から離れた位置に設けられていた場合、転写されたフィルム46が剥離コロ34bに到達する前にカードから剥離してしまう。このような構成では転写フィルム46がカードから剥離する位置と剥離角度(β2)が不確定となり、転写斑が発生するおそれがある。さらに転写されてから剥離するまでの時間が短くなってしまうため、良好な剥離を行えない場合がある。よって、剥離コロ34bを本実施形態の作動位置に設定することで、剥離角度と、剥離するまでの時間(ヒートローラ33から剥離位置までの距離)が一定となるため、転写斑の発生を抑えることができる。
【0043】
一方、転写プラテン31に対してヒートローラ33は圧接又は離反し、後述する制御手段70は、カード上に画像転写するときにはヒートローラ33を作動位置(Pn1)に移動して圧接(図4)し、画像形成後(カード後端がヒートローラ33を通過した後)は待機位置(Pn2)に移動して離反させる(図5)。これにより、カード後端がヒートローラ33を通過した後にヒートローラ33に転写フィルム46が接触して、転写フィルム46が変形するのを防止する。
【0044】
また、制御手段70は、カード後端が剥離コロ34bを通過するタイミングで、この剥離コロ34bを作動位置(Pn3)から待機位置(Pn4)に移動させる。ここで、剥離コロ34bを待機位置に移動させているため、両面印刷を行う際に搬送パス上流側の反転ユニットFに向けてカードをスイッチバック搬送させる際にカードが剥離コロ34bに衝突することを防止している。このような制御によって転写フィルム46に過剰の熱が作用して変形する恐れも、また転写フィルム46を剥離する際に画像斑が発生することがない。
【0045】
本発明は、このようなヒートローラ33及び剥離コロ34bを昇降させるタイミングを適切に制御することで転写ずれを引き起こすことなく精度良く転写フィルムによるカードへの転写を実現するものであるが、その動作については後に明らかとなる。
【0046】
[ヒートローラ及び剥離コロの昇降]
ヒートローラ33と剥離コロ34を昇降させるために、ヒートローラ昇降手段61と剥離コロ昇降手段62を設けている。図6は前述のフィルムカセット50、ヒートローラ昇降手段61、及び剥離コロ昇降手段62の全体構成を示す説明図である。これら昇降手段61、62とヒートローラ33はフィルムユニット60に内蔵され、装置フレームに取り付けられている。一方、剥離コロ34bはフィルムカセット50側に取付けられている。
【0047】
図6において、フィルムカセット50は装置フレームに矢印方向に着脱可能に装着される。そして装置フレームに設けられるフィルムユニット60と、フィルムカセット50の転写フィルム46が組み合わせられる。図7は、フィルムユニット60の組み立て分解図であり、転写ユニット60にはヒートローラ33を備えた昇降フレーム63が図示矢印方向に昇降可能に支持されている。また、剥離コロ34bはフィルムカセット50側に嵌合溝34Sで昇降可能に支持されている。
【0048】
上記ヒートローラ33を備えた昇降フレーム63の構成を図6に示す。ヒートローラ33は転写プラテン(図示のものはローラ)31と対向する位置に昇降フレーム63と共に図6矢印方向に昇降するようにユニットフレーム64に取り付けられている。そしてユニットフレーム64にシフトモータMSが取付けられ、このモータの回転軸にシフトカム64c(例えば偏心カム)が設けられている。このシフトカム64cの回転でこのカムと長溝(カムフォロアー;不図示)で嵌合している昇降フレーム63は図8において上下方向に昇降する。
【0049】
また、ヒートローラ33には、転写プラテン31と対向する位置に開閉カバー65が支軸65pを中心に図示矢印方向に回転(開閉)するように設けてある。この開閉カバー65は高熱のヒートローラ33に使用者の手指が触れないようにガードする。このためヒートローラ33が待機位置(Pn2;図3)のときには開閉カバー65はローラ表面を覆い、カードがジャムを起こして使用者がジャム解除作業を行う際にはローラ表面に触れるのをガードし、ヒートローラ33が作動位置(Pn1;図4)のときにはローラ表面から退避して転写フィルム46をプラテン31に圧接する。また、ヒートローラ33にカバーをすることによって、転写時以外に転写フィルム46に熱が加えられることがないので、転写フィルム46の保護にもなっている。
【0050】
その開閉機構は、ユニットフレーム64にラック63rが一体に設けてあり、昇降フレーム63にこのラックと噛合するピニオン63pが設けてある。このピニオン63pは開閉カバー65の支軸65pと歯車結合されている。従ってシフトモータMSでシフトカム64cを回転して昇降フレーム63を図8で矢印方向に上昇させると、ピニオン63pが同図反時計方向に回転し、これと歯車連結されている開閉カバー65が図示矢印(時計方向)方向に回転する。
【0051】
このように、ヒートローラ33をカードに圧接した作動位置(Pn1)と離間した退避位置(Pn2)との間を昇降するヒートローラ昇降手段61は、シフトモータMSとシフトカム64cで構成されることとなる。またこのヒートローラ昇降手段61でヒートローラ33の開閉カバー65を図4で示す開位置と図3で示す閉位置との間で開閉している。
【0052】
次に、カードに画像転写した転写フィルム46を剥離する作動位置(Pn3)と記録媒体Kから離間した退避位置(Pn4)との間で剥離コロ34bを昇降する剥離コロ昇降手段62について説明する。
【0053】
図9は図7の機構から剥離コロ昇降手段62の構成のみを抽出した説明図であり、この図9に示すようにシフトモータMSに歯車連結された駆動回転軸64dにはドライブカム66cが連結されている。このドライブカム66cと係合するカムフォロア66fを備えたレバー66rが図9で上下方向に昇降するようにスリットとピンでユニットフレーム64に昇降可能に支持されている。このレバー66rには復帰スプリング66Sがユニットフレーム64との間に架け渡してある。
【0054】
従ってシフトモータMSの回転でドライブカム66cが回転すると、カムフォロア66fを有するレバー66rが上下動することとなる。尚、ドライブカム66cは後述するようにシフトモータMSの角度制御で、剥離コロ34bを退避位置(Pn4)に待機させ、この状態から作動位置(Pn3)に移動する。
【0055】
そこでドライブカム66cを回転させてレバー66rを矢印方向に上昇させる。このレバー66rには揺動レバー67が連結され、この揺動レバー67は支軸67pを中心に図9で矢印方向に回転(揺動)する。するとこの揺動レバー67にピン−スリット連結された昇降レバー68aが矢印方向に下降する。この昇降レバー68aと一体の作動レバー68bが、剥離ピンブラケット69a、69bと係合している。なお、上記昇降レバー68aはユニットフレーム64に上下動方向にピンースリット結合によって運動規制されている。
【0056】
従ってレバー66rがドライブカム66cで上昇し、復帰スプリング66Sで下降する上下動運動で揺動レバー67が揺動し、昇降レバー68aと作動レバー68bが上下動し、この作動レバー68bと係合する剥離ピンブラケット69a、69bが上下動する。この剥離ピンブラケット69a、69bは剥離コロ34bの両端部に一体的に取り付けられている。
【0057】
このように剥離コロ昇降手段62は、シフトモータMSとドライブカム66cとレバー66r、揺動レバー67、昇降レバー68a、作動レバー68bで構成されている。図示の装置は剥離部材(剥離コロ)34bを、その両端部を作動レバー68bで偏ることなく同一量ずつ均等に昇降する。
【0058】
以上の説明から明らかなように、ヒートローラ昇降手段61のシフトカム64cと剥離コロ昇降手段62のドライブカム66cのカム形状は、駆動回転軸64dの駆動によりヒートローラ33と剥離コロ34bとが図6乃至図9で説明したタイミングで昇降するよう設定されている。
【0059】
[制御構成]
図18で制御構成について説明する。制御部Hは、制御CPU70で構成され、CPU70にはROM71とRAM72が備えられている。そして制御CPU70には、データ入力制御部73と、画像形成制御部74と、カード搬送制御部75が構成されている。
【0060】
カード搬送制御部75は、搬送経路P1と搬出経路P2に配置されている記録媒体搬送手段(図1に示す搬送ローラ対)を制御するように図示しない駆動モータのドライブ回路にコマンド信号を送信する。このカード搬送制御部75は反転ユニットFの旋回モータのドライブ回路にコマンド信号を送信する。これと共にカード搬送制御部75はデータ入力制御部73からジョブ信号を受信するように接続されており、ジョブ信号が入力されると、装置内に配置している各カードの検知センサからの検知信号に基づきカードの搬送状態を監視するように構成されている。
【0061】
上記データ入力制御部73は、磁気記録ユニット24に内蔵されているデータR/W用のIC73xに入力データの送受信を制御するコマンド信号を送信し、同様に非接触式IC記録ユニット23及び接触式ICのデータR/W用のIC73yにコマンド信号を送信するように構成されている。画像形成制御部74は、画像形成部Bでカードの表裏面への画像形成を制御する。
【0062】
この画像形成制御部74は、カード搬送制御部75でコントロールされるカードの搬送に応じてこのカード表面に転写プラテン31とヒートローラ33とで画像転写する。このため、画像形成制御部74は一次転写時にサーマルヘッド40を制御して転写フィルム45に画像形成するヘッドコントローラIC74a、インクリボンワインドモータ制御部74bと、転写フィルムワインドモータ制御部74cと、シフトモータMS制御部74dを備えている。
【0063】
そして上記RAM72には、データ入力部(磁気・IC記録部)でカード上にデータ入力する処理時間が、例えばデータテーブルに記憶されている。
【0064】
上記構成の本発明の実施形態による印刷装置において、転写フィルムからカードへ熱転写する動作について説明する。
【0065】
図10はインクリボン41にて転写フィルム46に画像形成する一次転写が終わった状態を示している。図10において、搬送ローラ29、30が転写フィルムに印刷が行われる記録媒体であるカードの搬送手段(記録媒体搬送手段)であり、供給スプール47と巻取スプール48との間で転写フィルムが架け渡される剥離コロ34b、ガイドコロ34a、35b、35a等はフィルム搬送手段となっている。
【0066】
そして、図10に示す状態では、ヒートローラ33と転写プラテン31がある転写位置付近において、前記フィルム搬送手段にて形成されるフィルムパスは剥離コロ34bが退避位置にあるために、前カード搬送手段にて形成される媒体搬送パス(搬送経路P1)とは搬送方向は同一であるが接触していない。このとき、転写フィルム46に設けた頭出しマークはフィルムセンサSe2よりも上流側で待機しており、カードに転写する画像情報の記録部は頭出しマークの更に上流側に位置している。一方、カードはカードセンサSe4よりも上流側にて待機している。
【0067】
この状態から転写動作が開始されるが、以下、要部のみを示す図11から図17までにて熱転写動作を説明する。
【0068】
画像形成するカードの転写プラテン31への接近をセンサSe4にて検知すると(図11)、制御CPU70の画像形成制御部74はシフトモータドライブ回路74dを制御してシフトモータMSを所定角度回転させる。そして、ドライブカム66cの回転により剥離コロ34bは剥離位置に移動して図12の状態となる。
【0069】
この図12の状態では、剥離コロ34bを退避位置から剥離動作のための作動位置に移動しており、剥離コロ34bのこの移動により、転写フィルム46も剥離コロ34bと共に移動するために供給スプール47又は巻取りスプール48からフィルムが引き出されてフィルムパスが変わる。このときのフィルムパスは転写時の記録媒体搬送パス(搬送経路P1)と接触することになって転写フィルムの位置が確定する。
【0070】
次に、制御CPU70はカード搬送制御部75にてカードの搬送を制御すると同時に、画像形成制御部74にて転写フィルムワインドモータ制御部74cを制御して、図13で示すようにカードと転写フィルム46との位置合わせを行う位置合わせ処理手段としての動作を行う。
【0071】
まず、転写フィルムワインドモータ制御部74cが供給スプール47の駆動モータを制御して、転写フィルム46の画像情報記録部を転写プラテン31で位置合わせするために転写フィルム46を搬送する。この場合、画像形成制御部74は、センサSe2にて転写フィルム46の画像情報記録部の先頭に設定しているフィルム頭出しマークを検知してから画像情報記録部が転写プラテン31に達するまでの時間の経過後に転写フィルムワインドモータ制御部74cを制御して搬送を停止する。
【0072】
転写フィルムの位置合わせの終了後、カード搬送制御部75が、搬送ローラ30を駆動するモータを制御して、カードを転写プラテン31で位置合わせするためにカードを搬送する。そして、カードの先端がセンサSe4にて検知してから転写プラテンに達するまでの時間の経過後に搬送を停止する。
【0073】
上記で述べた位置合わせ処理は、転写フィルム46を先ず位置合わせで搬送し、その後、カードを位置合わせで搬送しているが、両方同時に行っても或いはカードが先で転写フィルム46が後にしても良い。但し、カードを先にして転写フィルム46を後にすると、カードが転写位置に待機している状態で転写フィルム46の画像情報記録部が通過すると保持してある画像がカードと擦れて破損する恐れがある。
【0074】
次に、制御CPU70の画像形成制御部74が更にシフトモータドライブ回路74dを制御してシフトモータMSを所定角度回転させると、シフトカム64cの回転によりヒートローラ33は作動位置に移動して図14の状態となる。そして、制御CPU70は転写フィルムワインドモータ制御部74cとカード搬送制御部75とを制御して転写フィルム46とカードを同時に搬送させて、転写フィルム46画像形成部とカードとが転写プラテン31とヒートローラ33にニップされて画像情報記録部に保持されている画像がカードに転写され印刷が行われる。
【0075】
このように、転写フィルムの位置が確定した時点で、センサSe2及びセンサSe4によるカードと転写フィルム46の頭出しにて位置合わせを行えば、転写時にカードと転写フィルム46とがずれることはない。
【0076】
そして、制御CPU70の画像形成制御部74はカード後端が転写プラテン31とヒートローラ33とを通過する図15の状態を見込した時間(予め設定されたタイマー時間)が経過すると、シフトモータドライブ回路74dを制御してシフトモータMSを更に所定角度回転させて、シフトカム64cの回転によりヒートローラ33を作動位置から待機位置に復帰させる。この状態が図16であり、このとき剥離コロ34は転写フィルム46をカードから剥離させる作動状態に保持されている。
【0077】
その後、制御CPU70は、カード後端が剥離コロ34bを通過する見込み時間(タイマー時間)の終了後に、再びシフトモータMSを所定角度回転させて、ドライブカム66cの回転により剥離コロ34bを剥離位置から退避位置に移動する。この状態が図17であり、フィルムパスは媒体搬送パス(搬送経路P1)から外れる。このときヒートローラ33は待機位置に保持されている。かかる一連の動作の終了により、シフトカム64cとドライブカム66cはホームポジションに復帰することになる。
【0078】
上記した如く、剥離コロ34bはヒートローラ33より先に作動位置に移動させることで転写フィルム46位置を確定させた後に位置合わせを行うことで、転写ずれを引き起こすことなく精度の高い印刷が行える。
【0079】
また、転写後は剥離コロ34bが剥離動作を行う前にヒートローラ33を待機位置に退避させることで、カード後端がヒートローラ33を通過した後にヒートローラ33に転写フィルム46が接触して転写フィルム46が変形するのが防止される。
【符号の説明】
【0080】
29 搬送ローラ(記録媒体搬送手段)
30 搬送ローラ(記録媒体搬送手段)
31 転写プラテン(転写手段)
33 ヒートローラ(転写手段)
34b 剥離コロ(フィルムパス移動手段)
46 転写フィルム(中間転写フィルム状媒体)
47 供給スプール(フィルム搬送手段)
48 巻取スプール(フィルム搬送手段)
70 制御CPU(位置合わせ処理手段)
P1 媒体搬送パス(搬送経路)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状媒体から記録媒体に画像を転写する印刷装置であって、
前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段と、
前記記録媒体搬送手段にて形成される媒体搬送パスと、
前記フィルム状媒体を搬送するフィルム搬送手段と、
前記フィルム搬送手段にて形成されるフィルムパスと、
前記転写の際に前記フィルムパスが前記媒体搬送パスと接触するよう前記フィルムパスを移動させるフィルムパス移動手段と、
前記フィルムパス移動手段が前記フィルムパスを移動させた後に、前記記録媒体と前記フィルム状媒体の画像情報記録部とをそれぞれ転写開始位置に搬送する位置合せ処理を行う位置合わせ処理手段と、
前記位置合わせ処理後に前記フィルム状媒体を前記記録媒体に圧し付けて前記記録媒体に画像を転写する転写手段と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記フィルムパス移動手段は、前記フィルム搬送手段を構成するコロであることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記コロは、前記転写手段よりも前記記録媒体の搬送方向の下流側にあって前記媒体搬送パスと直交する方向に移動することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記コロは、前記転写手段が転写終了により前記フィルム状媒体の前記記録媒体への圧し付けを解除した後に前記フィルムパスと前記媒体搬送パスとの接触を解除するよう移動することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
同一方向に移動するフィルム状媒体と記録媒体とを接触させることにより前記フィルム媒体から前記記録媒体に画像を転写する印刷方法であって、
前記フィルム状媒体が搬送されるフィルムパスを移動させて前記記録媒体が搬送される媒体搬送パスと接触させるフィルムパス移動ステップと、
前記フィルムパスの移動後、前記記録媒体と前記フィルム状媒体とをそれぞれ転写開始位置に搬送する位置合せ処理を行う位置合わせ処理ステップと、
前記位置合わせ処理後に前記フィルム状媒体を前記媒体搬送パスに圧し付けて前記記録媒体に画像を転写する転写ステップと、
を含む印刷方法。
【請求項1】
フィルム状媒体から記録媒体に画像を転写する印刷装置であって、
前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段と、
前記記録媒体搬送手段にて形成される媒体搬送パスと、
前記フィルム状媒体を搬送するフィルム搬送手段と、
前記フィルム搬送手段にて形成されるフィルムパスと、
前記転写の際に前記フィルムパスが前記媒体搬送パスと接触するよう前記フィルムパスを移動させるフィルムパス移動手段と、
前記フィルムパス移動手段が前記フィルムパスを移動させた後に、前記記録媒体と前記フィルム状媒体の画像情報記録部とをそれぞれ転写開始位置に搬送する位置合せ処理を行う位置合わせ処理手段と、
前記位置合わせ処理後に前記フィルム状媒体を前記記録媒体に圧し付けて前記記録媒体に画像を転写する転写手段と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記フィルムパス移動手段は、前記フィルム搬送手段を構成するコロであることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記コロは、前記転写手段よりも前記記録媒体の搬送方向の下流側にあって前記媒体搬送パスと直交する方向に移動することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記コロは、前記転写手段が転写終了により前記フィルム状媒体の前記記録媒体への圧し付けを解除した後に前記フィルムパスと前記媒体搬送パスとの接触を解除するよう移動することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
同一方向に移動するフィルム状媒体と記録媒体とを接触させることにより前記フィルム媒体から前記記録媒体に画像を転写する印刷方法であって、
前記フィルム状媒体が搬送されるフィルムパスを移動させて前記記録媒体が搬送される媒体搬送パスと接触させるフィルムパス移動ステップと、
前記フィルムパスの移動後、前記記録媒体と前記フィルム状媒体とをそれぞれ転写開始位置に搬送する位置合せ処理を行う位置合わせ処理ステップと、
前記位置合わせ処理後に前記フィルム状媒体を前記媒体搬送パスに圧し付けて前記記録媒体に画像を転写する転写ステップと、
を含む印刷方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−232474(P2012−232474A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102455(P2011−102455)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】
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