説明

印刷装置

【課題】通帳の印字が終了するのを待つことなく、ステートメント用紙を排出できるようにする。
【解決手段】サーマル用搬送手段5によって搬送されるサーマル用紙4に印字するサーマルヘッド17,18と、このラインヘッド17,18によって印字されたサーマル用紙4を所定寸法に切断してステイトメント用紙Sとする切断部8と、排出口部に接続される搬送路6bに沿って通帳Tを搬送する通帳用搬送手段10と、この通帳用搬送手段10によって搬送される通帳Tに印字するドットヘッド9aとを具備し、サーマル用紙4の搬送路6aの搬出側を通帳の搬送路6bの中途部に合流させ、この合流部位31をドットヘッド9aよりも排出口側に近づけ、切断部8から合流部位31までの距離K1をドットヘッド9aから合流部位31までの距離K2よりも短くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通帳やステイトメント用紙に印字する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置には、その前面部側にステイトメント用紙を出入させる用紙出入口と、通帳を出入させる通帳出入口とを上下に配置し、用紙出入口から挿入されるステイトメント用紙をステイトメント用搬送手段によって印字部に搬送し、或いは、通帳出入口から挿入される通帳を通帳用搬送手段によって印字部に搬送してドットヘッドによりそれぞれ印字するものがある。印字されたステイトメント用紙、及び通帳は逆送されて用紙出入口及び通帳出入口からそれぞれ送り出されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−176065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来においては、ステイトメント用紙と通帳のいずれをも解像度の低いドットヘッドによって印字していたため、ステイトメント用紙の印字が汚くなるという問題があった。
【0004】
そこで、近時においては、例えば、サーマル用紙を搬送するサーマル用搬送路が上流側、通帳用搬送路が下流側になるように一系統の搬送系を構成し、サーマル用搬送路に解像度の高いサーマルヘッド、通帳用搬送路にドットヘッドを設け、サーマルヘッドによって印字したサーマル用紙を通帳用搬送路に送り込むとともに、カッタで所定長さに切断してステイトメント用紙とし、このステイトメント用紙を通帳用搬送路を介して排出することが考えられている。
【0005】
しかしながら、この方法では、印字を終えたステートメント用紙を通帳用搬送路を介して排出しようとしても、通帳用搬送路でドットヘッドが通帳に印字を行なっていた場合には、通帳の印字が終了するまで、ステートメント用紙の排出を待たなければならず、利便性が悪いという不都合があった。
【0006】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、シリアルヘッドによって通帳に印字が行なわれている場合でも、通帳の印字終了を待つことなく、ステートメント用紙の排出を可能とし、利便性を向上できるようにした印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、通帳、或いはステイトメント用紙を排出する排出口部と、ロール用紙を第1の搬送路に沿って搬送する第1の搬送手段と、この第1の搬送手段によって搬送される前記ロール用紙に印字するラインヘッドと、このラインヘッドによって印字された前記ロール用紙を所定寸法に切断してステイトメント用紙とする切断手段と、前記排出口部に接続される第2の搬送路に沿って前記通帳を搬送する第2の搬送手段と、この第2の搬送手段によって搬送される前記通帳に印字するシリアルヘッドとを具備し、前記第1の搬送路の搬出側を前記第2の搬送路の中途部に合流させ、この合流部位を前記シリアルヘッドよりも前記排出口側に近づけ、前記切断手段から前記合流部位までの距離を前記シリアルヘッドから前記合流部位までの距離よりも短くしたことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、通帳、或いはステイトメント用紙を排出する排出口部と、ロール用紙を第1の搬送路に沿って第1の搬送速度で搬送する第1の搬送手段と、この第1の搬送手段によって搬送される前記ロール用紙に印字するラインヘッドと、このラインヘッドによって印字された前記ロール用紙を所定寸法に切断してステイトメント用紙とする切断手段と、前記排出口部に接続される第2の搬送路に沿って前記通帳を前記第1の搬送速度とは異なる第2の搬送速度で搬送する第2の搬送手段と、この第2の搬送手段によって搬送される前記通帳に印字するシリアルヘッドとを具備し、前記第1の搬送速度は前記第2の搬送速度よりも高速化されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シリアルヘッドによって通帳に印字が行なわれている場合でも、通帳の印字終了を待つことなく、ステートメント用紙の排出を可能とし、利便性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である印刷装置を示す構成図である。
【0011】
図中1は装置本体で、この装置本体1の前面部側には通帳の出入口とステイトメント用紙の出口を兼用する排出口部としてのフェイシア部2が設けられている。
【0012】
装置本体1内の後部側には用紙装填部3が設けられ、この用紙装填部3にはロール状のサーマル用紙(ロール用紙)4が装填されている。サーマル用紙4の先端部は用紙装填部3から引き出されて第1の搬送手段としてのサーマル用搬送手段5によって搬送路(第1の搬送路)6aに沿って搬送される。搬送路6a中にはサーマル用紙4の搬送方向に沿って順次、サーマル印字部7、切断手段としての切断部8が配設されている。また、装置本体1内には、通帳を搬送路(第2の搬送路)6bに沿って搬送する第2の搬送手段としての通帳用搬送手段10が設けられている。
【0013】
通帳用搬送手段10は搬送路6bに所定間隔を存して配設される複数個の搬送ローラ対11、及び出入用ローラ対12によって構成されている。通帳の搬送路6bにはシリアルヘッドとしてのドットヘッド9aを有するドット印字部9が配置され、搬送路6bはフェイシア部2に接続されている。また、搬送路6bには該搬送路6bに後述するように導入されるサーマル用紙4の先端部を検出するための検知サンサ28が設けられ、出入用ローラ対12の近傍には通帳の挿入を検知する通帳挿入検知センサ29が設けられている。
【0014】
上記したサーマル印字部7は、図2に拡大して示すように、サーマル用紙4の搬送方向に沿って所定間隔を存して配置されるラインヘッドとしての第1及び第2のサーマルヘッド17,18を備え、これら第1及び第2のサーマルヘッド17,18にはサーマル用搬送手段5を構成する第1及び第2のプラテンローラ20,21が転接されている。サーマル用紙4は、第1及び第2のサーマルヘッド17,18と第1及び第2のプラテンローラ20,21とにより挟持搬送されて第1及び第2のサーマルヘッド17,18によりその表裏に情報が印字されるようになっている。
【0015】
切断部8は、ロータリーカッタ23を備え、サーマル用紙4が切断部8から所定距離送り出されるのに基づいて、即ち、サーマル用紙4の先端部が検知センサ28によって検知されるのに基づいてロータリーカッタ23を回転させるようになっている。
【0016】
サーマル用搬送手段5を構成する第1及び第2のプラテンローラ20,21、ロータリーカッタ23、及びサーマル側フィードローラ対14は、第1の駆動モータ(図1に示す)25によってサーマル用紙4を送出方向に回転駆動され、また、通帳用搬送手段10を構成する搬送ローラ対11、出入用ローラ対12は、第2の駆動モータ(図1に示す)26によって正逆方向に回転駆動されるようになっている。
【0017】
ところで、上記したサーマル用紙4の搬送路6aの排出側は、通帳の搬送路6bの中途部に接続合流されている。この搬送路6aと搬送路6bとの合流部位31は、ドットヘッド9aよりもフェイシア部2側に近づけられ、切断部8から合流部位31までの距離K1がドットヘッド9aから合流部位31までの距離K2よりも短くされている。
【0018】
従って、サーマルヘッド17,18とドットヘッド9aでステイトメント用紙と通帳を同時に印字した場合でも、ステイトメント用紙を通帳よりも先に合流部位31を通過させてフェイシア部2から排出することができるようになっている。
【0019】
図3は印刷装置の駆動制御系を示すブロック図である。
【0020】
上記したサーマル用紙検知センサ28、通帳挿入検知センサ29、さらに、ステイトメント発行ボタン27は送信回路を介して制御手段としての制御部24に接続され、制御部24には制御回路を介して上記した第1及び第2の駆動モータ25,26が接続されている。
【0021】
制御部24は、通帳挿入検知センサ29が通帳の挿入を検知するのに基づいて第2の駆動モータ26を動作させて搬送ローラ対11、出入用ローラ対12を正方向に回転駆動させ、ドット印字終了後、逆方向に回転駆動させるようになっている。
【0022】
また、制御部24は、ステイトメント発行ボタン27がオンされるのに基づいて第1の駆動モータ25を動作させ、第1及び第2のプラテンローラ20,21さらにサーマル側フィードローラ対14を回転駆動させるようになっている。
【0023】
また、制御部24は、サーマル用紙検知センサ28の検知に基づいてロータリーカッタ23を回転駆動させるとともに、第2の駆動モータ26を動作させて搬送ローラ対11、出入用ローラ対12を回転駆動させるようになっている。
【0024】
次に、上記したように構成される印刷装置の印字動作について説明する。
【0025】
まず、通帳Tに印字する場合について説明する。
【0026】
通帳Tが図4に示すようにフェイシア部2から挿入されて通帳挿入検知センサ29によって検知されると、第2の駆動モータ26が動作して出入用ローラ対12、搬送ローラ対11が正方向に回転駆動される。この回転により、通帳Tが搬送されて図5に示すようにドット印字位置に到達すると、ドットヘッド9aが動作されて印字が行なわれる。印字が終了すると、第2の駆動モータ26により出入用ローラ対12、及び搬送ローラ対11が逆方向に回転駆動される。この逆回転により、通帳Tが逆送りされてフェイシア部2から送り出される。
【0027】
つぎに、ステイトメント用紙を印字発行する場合について説明する。
【0028】
サーマル用紙4の先端部側は、図6に示すように第1及び第2のプラテンローラ20,21と第1及び第2のサーマルヘッド17,18との間に挟持された状態にあり、ステイトメント発行ボタン27がオンされると、第1の駆動モータ25が動作してプラテンローラ20,21が回転駆動される。この回転により、サーマル用紙4が搬送されるとともに、第1及び第2のプラテンローラ20,21の発熱によりサーマル用紙4の表裏面に情報が印字される。この印字後、サーマル用紙4は切断部8を通過してフィードローラ対14によって挟持搬送され、その先端部が図7に示すようにサーマル用紙検知センサ28により検知されると、ロータリーカッタ23が回転してサーマル用紙4が所定寸法に切断されてステイトメント用紙Sが形成される。このステイトメント用紙Sは、図8に示すように搬送ローラ対11、及び出入用ローラ対12の逆回転によって搬送路6bに沿って搬送されてフェイシア部2から排出される。
【0029】
ところで、上記した印刷装置においては、通帳Tとステイトメント用紙Sとを同時に印字する場合があるが、この実施の形態では、サーマル用紙4の搬送路6aと通帳Tの搬送路6bとの合流部位31をドットヘッド9aよりもフェイシア部2側に近づけ、切断部8から合流部位31までの距離K1をドットヘッド9aから合流部位31までの距離K2よりも短くしている。
【0030】
従って、ドットヘッド9aで印字された通帳Tが合流部位31に到達する前にサーマルヘッド17,18で印字されたステイトメント用紙Sを合流部位31を通過させてフェイシア部2から排出することができる。
【0031】
よって、従来のように、ドットヘッド9aにおける通帳Tの印字終了を待つことなく、
ステイトメント用紙Sを排出することができ、利用者が、ステイトメント用紙を受け取る待ち時間を少なくして利便性を向上できる利点がある。
【0032】
なお、本発明は上記した一実施の形態に限られるものではなく、以下に示すようなものであってもよい。
【0033】
即ち、第1の搬送手段としてのサーマル用搬送手段5の搬送速度を第1の搬送速度とし、第2の搬送手段としての通帳用搬送手段10の搬送速度を前記第1の搬送速度と異なる第2の搬送速度とし、第1の搬送速度を第2の搬送速度よりも高速化する。
【0034】
これによれば、ドットヘッド9aから合流部位31までの距離K2を切断部8から合流部位31までの距離K1と同じくなるように短くした場合でも、合流部位31でステイトメント用紙Sを通帳Tに衝突させることなく排出できる。従って、距離K2を短くした分だけ、ドットヘッド9aを合流部位31側に近づけることができ、小型化が可能になる。
【0035】
また、第1の搬送速度を第2の搬送速度よりも大きく高速化した場合には、切断部8から合流部位31までの距離K1をドットヘッド9aから合流部位31までの距離K2よりも長くした場合でも、合流部位31でステイトメント用紙Sを通帳Tに衝突させることなく排出することが可能となる。
【0036】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態である印刷装置を概略的に示す構成図。
【図2】図1のサーマル印字部及びドット印字部を拡大して図。
【図3】図1の印刷装置の駆動制御系を示すブロック図。
【図4】図1の印刷装置による通帳の印字動作を示す図。
【図5】図1の印刷装置による通帳の印字動作を示す図。
【図6】図1の印刷装置によるサーマル用紙の印字動作を示す図。
【図7】図1の印刷装置によるサーマル用紙の印字動作を示す図。
【図8】図8のサーマル用紙が所定寸法に切断されてステートメント用紙として搬送される状態を示す図。
【符号の説明】
【0038】
T…通帳、S…ステイトメント用紙、2…フェイシア部2(排出口部)、4…ロール用紙、5…サーマル用搬送手段(第1の搬送手段)、6a…搬送路(第1の搬送路)、6b…搬送路(第2の搬送路)、8…切断部(切断手段)、9a…ドットヘッド(シリアルヘッド)、10…通帳用搬送手段(第2の搬送手段)、17,18…サーマルヘッド(ラインヘッド)、31…合流部位、K1…切断手段から合流部位までの距離、K2…シリアルヘッドから合流部位までの距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通帳、或いはステイトメント用紙を排出する排出口部と、
ロール用紙を第1の搬送路に沿って搬送する第1の搬送手段と、
この第1の搬送手段によって搬送される前記ロール用紙に印字するラインヘッドと、
このラインヘッドによって印字された前記ロール用紙を所定寸法に切断してステイトメント用紙とする切断手段と、
前記排出口部に接続される第2の搬送路に沿って前記通帳を搬送する第2の搬送手段と、
この第2の搬送手段によって搬送される前記通帳に印字するシリアルヘッドとを具備し、
前記第1の搬送路の搬出側を前記第2の搬送路の中途部に合流させ、この合流部位を前記シリアルヘッドよりも前記排出口側に近づけ、前記切断手段から前記合流部位までの距離を前記シリアルヘッドから前記合流部位までの距離よりも短くしたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ラインヘッドは、サーマルヘッドで、前記シリアルヘッドはドットヘッドであることを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
通帳、或いはステイトメント用紙を排出する排出口部と、
ロール用紙を第1の搬送路に沿って第1の搬送速度で搬送する第1の搬送手段と、
この第1の搬送手段によって搬送される前記ロール用紙に印字するラインヘッドと、
このラインヘッドによって印字された前記ロール用紙を所定寸法に切断してステイトメント用紙とする切断手段と、
前記排出口部に接続される第2の搬送路に沿って前記通帳を前記第1の搬送速度とは異なる第2の搬送速度で搬送する第2の搬送手段と、
この第2の搬送手段によって搬送される前記通帳に印字するシリアルヘッドとを具備し、
前記第1の搬送速度は前記第2の搬送速度よりも高速化されたことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−214736(P2010−214736A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63404(P2009−63404)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】