説明

印刷装置

【課題】インクカートリッジの取り外しを検出することによって印刷を停止するか継続するかを制御する場合、インクカートリッジの交換時にカバーを開閉する印刷装置では、印刷停止又は継続の制御が適正に行えない可能性がある。
【解決手段】印刷データを取得する印刷データ取得部31と、取得した印刷データに基づいて印刷を行う印刷部20と、インクカートリッジの交換時に開閉する専用カバーの開閉状態を検出する開閉検出部33と、印刷条件に基づいて設定された、専用カバーが開状態のときに継続して印刷することが可能な領域を示す印刷継続可能領域を取得する領域取得部32と、専用カバーの開状態が検出されたときに、印刷継続可能領域外を印刷中であった場合、印刷動作を即時停止させて印刷ヘッド21に洗浄液を充填する制御を実行する制御部34とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを噴射して画像を印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクを噴射して画像を印刷するインクジェット式印刷装置では、インクが収容された着脱可能なインクカートリッジを備えている。そして、インクカートリッジの交換時には、印刷動作をできるだけ効率的に停止して印刷物の無駄な出力を抑える必要がある。例えば、特許文献1では、インクカートリッジの着脱を検出し、インクカートリッジが取り外された状態になったときに、出力画像の印刷を停止するか、又は印刷中ページを印刷して停止するかを切り替える手段を備えている。これにより、印刷装置の停止だけは極力避け出力可能な状態を継続し、印刷物の無駄な出力や出力データの損失を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−41025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているような印刷装置では、インクカートリッジの取り外しを検出することによって印刷を停止するか継続するかを制御している。このため、インクカートリッジの交換時にカバーを開閉する印刷装置の場合、インクカートリッジの取り外しの検出のタイミングでは、印刷停止又は継続の制御が適正に行えない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]印刷装置であって、印刷データを取得する印刷データ取得部と、前記取得した印刷データに基づいて印刷を行う印刷部と、インクカートリッジの交換時に開閉するインクカートリッジ交換専用カバーの開閉状態を検出する開閉検出部と、印刷条件に基づいて設定された、前記インクカートリッジ交換専用カバーが開状態のときに継続して印刷することが可能な領域を示す印刷継続可能領域を取得する領域取得部と、前記開閉検出部により前記インクカートリッジ交換専用カバーの開状態が検出されたときに、前記印刷部が前記印刷継続可能領域外を印刷中であった場合、前記印刷部の印刷動作を即時停止させて、前記印刷部の印刷ヘッドに洗浄液を充填する制御を実行する制御部と、を備える印刷装置。
【0007】
上記した印刷装置によれば、領域取得部が、インクカートリッジ交換専用カバーが開状態のときに継続して印刷することが可能な印刷継続可能領域を取得する。また、開閉検出部が、インクカートリッジ交換専用カバーの開閉状態を検出する。そして、インクカートリッジ交換専用カバーの開状態が検出されたときに、印刷継続可能領域外を印刷中であった場合、制御部が、印刷動作を即時停止させて、印刷ヘッドに洗浄液を充填するように制御する。
インクカートリッジ交換専用カバーの開状態が検出されたときに、印刷継続可能領域外を印刷中であった場合、印刷動作を停止させて洗浄液を充填することから、インクカートリッジの交換時にカバーを開閉する印刷装置において、印刷停止及び洗浄液の充填を適正に行うことができる。これにより、印刷物の無駄を抑制して効率的に出力することができ、ランニングコストを削減することができる。
【0008】
[適用例2]前記制御部は、前記開閉検出部により前記インクカートリッジ交換専用カバーの開状態が検出されたときに、前記印刷部が前記印刷継続可能領域内を印刷中であった場合、前記印刷部に印刷動作をそのまま継続させることを特徴とする上記印刷装置。
【0009】
上記した印刷装置によれば、インクカートリッジ交換専用カバーの開状態が検出されたときに、印刷継続可能領域内を印刷中であった場合、印刷動作をそのまま継続させることから、インクカートリッジの交換時にカバーを開閉する印刷装置において、印刷を適正に継続することができる。これにより、印刷物の無駄を抑制して効率的に出力することができ、ランニングコストを削減することができる。
【0010】
[適用例3]前記印刷継続可能領域は、印刷停止可能領域までの印刷に必要なインク量から決定する領域であることを特徴とする上記印刷装置。
【0011】
上記した印刷装置によれば、印刷停止可能領域までの印刷に必要なインク量から印刷継続可能領域を適正に決定することができる。
【0012】
[適用例4]前記インクカートリッジ交換専用カバーの開状態が検出されてから所定の時間が経過したときに、前記制御部は、前記印刷部の印刷動作を印刷停止可能領域で停止させることを特徴とする上記印刷装置。
【0013】
上記した印刷装置によれば、インクカートリッジ交換専用カバーの開状態が検出されてから所定の時間が経過したときに、印刷動作を印刷停止可能領域で停止させる。これにより、印刷継続可能領域内を印刷中であった場合に、印刷継続可能領域内の印刷を全て終了した後に適正な位置で印刷動作を停止させることができる。
【0014】
[適用例5]前記印刷停止可能領域は、複数の印刷領域を連続印刷する場合は各印刷領域の間の位置であり、1つの印刷領域を印刷する場合は印刷終了位置であることを特徴とする上記印刷装置。
【0015】
上記した印刷装置によれば、印刷停止可能領域を印刷領域外に設定することができる。
【0016】
[適用例6]前記印刷部に印刷動作をそのまま継続させるときに、印刷対象となる印刷媒体の余白に識別を印刷することを特徴とする上記印刷装置。
【0017】
上記した印刷装置によれば、印刷媒体の余白に印刷した識別により、インクカートリッジ交換専用カバーの開状態が検出されたときに、印刷動作をそのまま継続させた箇所を確認することできる。
【0018】
[適用例7]前記印刷条件は、インクカートリッジから前記印刷ヘッドの流路に充填されたインク量、平均的なインク使用量、及び印刷される画像内容のうち、少なくとも1つに応じた条件であることを特徴とする上記印刷装置。
【0019】
上記した印刷装置によれば、印刷ヘッドの流路に充填されたインク量、平均的なインク使用量、及び印刷される画像内容のうち少なくとも1つを印刷条件にすることにより、印刷継続可能領域を適正に設定することができる。
【0020】
[適用例8]前記印刷継続可能領域の主走査方向における領域開始位置は、印刷領域の主走査方向における端部以外の位置も対象とすることを特徴とする上記印刷装置。
【0021】
上記した印刷装置によれば、印刷領域の主走査方向における端部以外の位置についても、印刷継続可能領域の領域開始位置の対象とすることから、印刷継続可能領域を木目細かく設定することができ、更にランニングコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】プリンターの概略構成を示す図。
【図2】プリンター及びホストコンピューターの構成を示すブロック図。
【図3】用紙に印刷した画像の印刷継続可能領域の例を示す図。
【図4】プリンター及びホストコンピューターの動作を示すフローチャート。
【図5】端部以外の位置を印刷継続可能領域の開始位置として設定した例を示す図。
【図6】用紙の余白に識別を印刷する例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本実施形態に係る印刷装置について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係るプリンター1の概略構成を示す図である。同図に示すように、プリンター1は、USBケーブル等によってホストコンピューター7と接続されている。ホストコンピューター7は、プリンター1に印刷データを供給すると共に、プリンター1における印刷動作を制御する印刷制御装置として機能する。
【0025】
プリンター1は、インクを噴射して印刷媒体上にインクドットを形成することにより画像を印刷するインクジェット式カラープリンターである。本実施形態では、印刷媒体として用紙Sが用いられる。また、プリンター1の前面には、左右にインクカートリッジ交換専用カバー(以下、専用カバーと略称する。)40が開閉可能に設けられている。この専用カバー40内には各色のインクが収容されたインクカートリッジが装着されている。ユーザーは、インクカートリッジの交換時に、専用カバー40を開状態にしてインクカートリッジを取り出し、インクカートリッジの交換作業が終わると、専用カバー40を再び閉状態にする。
【0026】
図2は、プリンター1及びホストコンピューター7の構成を示すブロック図である。同図に示すように、ホストコンピューター7は、CPU(Central Processing Unit)71、ROM(Read Only Memory)72、RAM(Random Access Memory)73、表示部74、操作部75、アプリケーション76、プリンタードライバー77、通信インターフェイス78等を備えている。
【0027】
CPU71は、ホストコンピューター7における制御中枢であり、ホストコンピューター7内の各部及び各機構を制御する。ROM72は、CPU71が各種処理を実行するための制御プログラムや制御データを記憶する。RAM73は、CPU71が各種処理を実行する際の作業領域として利用される。表示部74は、CRTや液晶ディスプレイ等で構成されてユーザーへの情報を表示する。操作部75は、キーボードやマウス等で構成されてユーザーからの入力を受け付ける。
【0028】
アプリケーション76は、印刷対象となる画像データをプリンタードライバー77に出力して印刷指示を行う。プリンタードライバー77は、アプリケーション76から受け取った印刷対象となる画像データを、プリンター1にて処理可能な印刷データとして生成する。更に、プリンタードライバー77は、プリンター1の専用カバー40が印刷動作中に開かれたときに、現在の印刷位置がそのまま印刷動作を継続できる領域にあるか否かを判定するための印刷継続可能領域を設定する。そして、印刷継続可能領域の設定データを印刷データに付加する。なお、印刷継続可能領域の詳細については後述する。通信インターフェイス78は、有線又は無線によって接続されるプリンター1へ印刷データを送信する。
【0029】
プリンター1は、CPU11、ROM12、RAM13、計時部14、通信インターフェイス15、操作パネル16、印刷部20、印刷データ取得部31、領域取得部32、開閉検出部33、制御部34等を備えている。また、前述したように、プリンター1には、各色のインクが収容されたインクカートリッジ41a〜41jが装着されている。各インクカートリッジ41a,41b,41c,41d,41e,41f,41g,41h,41i,41jには、それぞれシアン(C),マゼンタ(M),ホワイト(W),クリアーインク(CL),オレンジ(OR),グリーン(GR),ブラック(K),イエロー(Y),ライトシアン(LC),ライトマゼンタ(LM)の計10色のインクが収容されている。
【0030】
CPU11は、プリンター1における制御中枢であり、プリンター1内の各部及び各機構を制御する。ROM12は、CPU11が各種処理を実行するための制御プログラムや制御データを記憶する。RAM13は、CPU11が各種処理を実行する際の作業領域として利用される。計時部14は、プリンター1に内蔵されたRTC(Real Time Clock)であり、日時をカウントする。通信インターフェイス15は、ホストコンピューター7から送信される印刷データを受信する。操作パネル16は、例えば液晶ディスプレイ、ボタンやタッチパネルにより構成されて、ユーザーへの情報の表示及びユーザーからの入力の受け付けを行う。
【0031】
印刷部20は、印刷ヘッド21、ヘッド駆動部22、キャリッジ機構23、紙送り機構24等により構成される。印刷ヘッド21は、各インク種類に対応して設けられた複数のノズル列からなり、インクカートリッジ41a〜41jに収容されたインクをノズル列からインク滴として吐出することで用紙Sに画像を形成する。ヘッド駆動部22は、印刷ヘッド21の各ノズル列に内蔵されたピエゾ素子への印加電圧パターンを生成して出力し、印刷ヘッド21にインク種類毎のインク滴を吐出させる。キャリッジ機構23は、プリンター1が備える図示しないガイドレールに沿って、印刷ヘッド21を搭載した図示しないキャリッジを往復動させる駆動機構である。紙送り機構24は、図示しない紙送りローラーにより、用紙Sをキャリッジの往復動方向(主走査方向)と略直交する一方の向きとなる用紙搬送方向(副走査方向)に所定の速度で搬送する。
【0032】
印刷データ取得部31は、ホストコンピューター7から送信された印刷データを、通信インターフェイス15を介して取得する。領域取得部32は、印刷データ取得部31が取得した印刷データに付加された印刷継続可能領域の設定データを取得する。開閉検出部33は、専用カバー40に備えた図示しない位置センサーにより、専用カバー40が開状態にあるか、又は閉状態にあるかを検出する。制御部34は、上記した各部及び各機構を制御する。また、制御部34は、開閉検出部33が検出した専用カバー40の開閉状態と、領域取得部32が取得した印刷継続可能領域の設定データとに基づいて、専用カバー40が開状態になったときに印刷動作を停止させるか否かを制御する。
【0033】
次に、ホストコンピューター7のプリンタードライバー77において設定する印刷継続可能領域について説明する。図3は、用紙Sに印刷した画像の印刷継続可能領域の例を示す図である。同図では、用紙S上に画像G1及び画像G2を印刷する例を示している。用紙Sは副走査方向に搬送されて、用紙S上に画像G1から画像G2の順、即ち図中上から下へと画像G1及び画像G2が順次印刷される。図3に示す画像G1の全体領域が印刷領域T1であり、印刷領域T1内の最後に印刷される領域の近傍が印刷継続可能領域T2となる。また、画像G1と画像G2との間の領域が印刷停止可能領域T3となる。
【0034】
印刷継続可能領域T2は、画像G1を印刷中にプリンター1の専用カバー40が開状態になった場合に、現在の印刷位置がそのまま印刷動作を継続できるか否かを判定するための領域である。専用カバー40が開状態になったときに、現在の印刷位置が印刷継続可能領域T2内にある場合は、制御部34は、そのまま印刷動作を継続できると判定する。他方、現在の印刷位置が印刷継続可能領域T2外にある場合は、制御部34は、印刷動作を継続できないと判定する。
【0035】
印刷停止可能領域T3は、用紙S上の印刷対象外の領域であって、専用カバー40が開状態になったときに印刷動作を停止できる領域、つまり用紙Sの搬送動作を停止できる領域である。また、印刷停止可能領域T3は、複数の印刷領域T1を連続印刷する場合は各印刷領域T1の間の位置となり、1つの印刷領域T1を印刷する場合は印刷終了位置となる。
【0036】
ここで、印刷領域T1における印刷継続可能領域T2は、プリンター1の各インクカートリッジ41a〜41jから印刷ヘッド21の流路に充填されたインク量、これまでの印刷状況の実績に基づいた平均的なインク使用量、印刷される画像内容等に応じて設定を行う。具体的には、印刷ヘッド21の流路に充填されたインク量が多いプリンター、平均的なインク使用量が少ないプリンター、及びインクの消費が少ない画像では、印刷継続可能領域T2の領域が大きくなる。逆に、印刷ヘッド21の流路に充填されたインク量が少ないプリンター、平均的なインク使用量が多いプリンター、及びインクの消費が多い画像では、印刷継続可能領域T2の領域が小さくなる。なお、印刷する画像についてインクの消費量を取得する方法は、例えば、印刷対象の画像データを解析して各色のインクの消費量を算出する方法(特開平10−166622号公報、特開2005−35103号公報参照)等の公知の算出方法を用いる。
【0037】
次に、本実施形態に係るプリンター1及びホストコンピューター7の動作について説明する。
図4は、本実施形態に係るプリンター1及びホストコンピューター7の動作を示すフローチャートである。同図に示すフローチャートは、ホストコンピューター7のアプリケーション76から印刷が指示されたときに動作を開始する。なお、ここでは、プリンター1が図3に示す画像G1及び画像G2を印刷する例について説明する。
【0038】
まず、ホストコンピューター7は、プリンタードライバー77により、アプリケーション76から出力された画像データを取得する(ステップS10)。そして、ホストコンピューター7は、プリンタードライバー77により、ステップS10において取得した画像データに対して、解像度変換処理、色変換処理及びハーフトーン処理を順次行う(ステップS20)。これらの解像度変換処理、色変換処理及びハーフトーン処理を行った画像データは、ドットによって構成される印刷画像を示している。
【0039】
次に、ホストコンピューター7は、プリンタードライバー77により、ステップS20においてハーフトーン処理を行った後の画像データに基づいて、印刷継続可能領域T2の設定を行う(ステップS30)。そして、ホストコンピューター7は、プリンタードライバー77により、ステップS20においてハーフトーン処理を行った後の画像データ、及びステップS30において設定した印刷継続可能領域T2の設定データにコマンドデータを付加して印刷データを生成する。そして、生成した印刷データを、通信インターフェイス78を介してプリンター1に送信する(ステップS40)。
【0040】
次に、プリンター1は、印刷データ取得部31により、ホストコンピューター7から送信された印刷データを、通信インターフェイス15を介して取得する(ステップS50)。ここで取得した印刷データには、印刷継続可能領域T2の設定データが含まれている。そして、プリンター1は、印刷部20により、ステップS50において取得した印刷データに基づいて印刷を開始する(ステップS60)。このとき、プリンター1の専用カバー40は閉じた状態にある。
【0041】
次に、プリンター1は、開閉検出部33により専用カバー40の開閉状態を検出し、専用カバー40が開いているか否かを判定する(ステップS70)。専用カバー40が開いている場合(ステップS70:Yes)は、次のステップS80へ進む。他方、専用カバー40が開いていない、即ち閉じている場合(ステップS70:No)は、そのまま印刷動作を継続する。つまり、印刷動作中にユーザーによって専用カバー40が開けられた場合にステップS80へ進み、そうでない場合はそのまま印刷動作を継続する。
【0042】
ステップS80では、プリンター1は、計時部14により、計時を開始する(ステップS80)。これにより、専用カバー40が開いてからの経過時間が計時される。そして、プリンター1は、印刷中の現在位置が、用紙S上において印刷継続可能領域T2内を印刷中であるか否かを判定する(ステップS90)。印刷継続可能領域T2内を印刷中の場合(ステップS90:Yes)は、そのまま印刷を継続してステップS110へ進む。他方、印刷継続可能領域T2内を印刷中でない場合(ステップS90:No)は、印刷動作を即時停止し、印刷ヘッド21のノズルに洗浄液を充填する(ステップS100)。ここでは、インクカートリッジ41dに収容されているクリアーインクを洗浄液として用いる。
【0043】
ステップS110では、プリンター1は、計時部14によって計時された経過時間を参照して、専用カバー40が開けられてから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS110)。この所定時間は、プリンター1の各インクカートリッジ41a〜41jから印刷ヘッド21の流路に充填されたインク量に基づいて予め設定されている。所定時間が経過した場合(ステップS110:Yes)は、印刷停止可能領域T3になるまでは印刷動作を継続して、印刷停止可能領域T3で印刷動作を停止する(ステップS120)。他方、所定時間が経過していない場合(ステップS110:No)は、所定時間が経過するまで、そのまま印刷動作を継続する。
【0044】
上記のフローチャートでは、印刷対象の画像データを全て印刷した時点で印刷動作が終了する。また、印刷動作を停止した場合は、ホストコンピューター7から印刷再開の指示を受信した時点で印刷動作を再開する。
【0045】
上述した実施形態では、プリンター1の専用カバー40が開いた場合、印刷継続可能領域内を印刷中であるか否かを判定する。印刷継続可能領域内を印刷中でない場合、即ち、継続してインクを供給することができない領域を印刷中の場合は、印刷動作を即時停止する。これにより、インクが供給されないためにインクの色成分が不足した不正な画像が印刷されてしまうのを防止することができる。
【0046】
また、印刷継続可能領域内を印刷中の場合は、そのまま印刷動作を継続し、専用カバー40が開いてから所定時間が経過したら印刷停止可能領域で印刷動作を停止する。これにより、印刷領域内の最後に印刷される領域の近傍であってインクの供給が可能な領域では、印刷領域の最後まで印刷を終えることができ、プリンター1を効率的に利用することになりユーザーの利便性が向上する。
【0047】
(変形例1)
上記した実施形態では、図3の印刷継続可能領域T2に示すように、主走査方向における領域開始位置が、印刷領域T1の主走査方向における端部の位置となっている。しかし、これに限られず、印刷領域T1の端部以外の位置を領域開始位置の対象としても良い。図5は、端部以外の位置を印刷継続可能領域の開始位置として設定した例を示す図である。同図では、印刷継続可能領域T2の開始位置が、端部でない位置C1に設定されている。これにより、印刷ヘッド21の流路に充填されたインク量、平均的なインク使用量、印刷される画像内容等に応じて、木目細かく印刷継続可能領域を設定することができ、プリンター1を更に効率的に利用することができる。
【0048】
(変形例2)
上記した実施形態では、図4のフローチャートに示すように、専用カバー40が開いていて(ステップS70:Yes)、印刷継続可能領域T2内を印刷中の場合(ステップS90:Yes)は、そのまま印刷を継続している。ここで、ステップS90において印刷継続可能領域T2内を印刷中と判定された時点で、用紙Sの余白に識別を印刷するようにしても良い。図6は、用紙Sの余白に識別を印刷する例を示す図である。同図では、専用カバー40が開いた状態にあって、印刷継続可能領域T2内を印刷した時点で用紙Sの余白に識別M1を印刷している。なお、識別の内容及び余白上の位置は適宜設定することができる。ユーザーは、用紙Sの余白に印刷された識別M1により、専用カバー40が開いてそのまま印刷動作を継続した位置を確認して検証することができる。
【0049】
(変形例3)
上記した実施形態では、ホストコンピューター7のプリンタードライバー77において、印刷継続可能領域を設定して設定データを印刷データに付加している。しかし、印刷継続可能領域の設定は、プリンタードライバー77において設定するのではなく、プリンター1において設定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0050】
1…プリンター、7…ホストコンピューター、11…プリンターのCPU、12…プリンターのROM、13…プリンターのRAM、14…計時部、15…プリンターの通信インターフェイス、16…操作パネル、20…印刷部、21…印刷ヘッド、22…ヘッド駆動部、23…キャリッジ機構、24…紙送り機構、31…印刷データ取得部、32…領域取得部、33…開閉検出部、34…制御部、40…専用カバー、41a〜41j…インクカートリッジ、71…ホストコンピューターのCPU、72…ホストコンピューターのROM、73…ホストコンピューターのRAM、74…表示部、75…操作部、76…アプリケーション、77…プリンタードライバー、78…ホストコンピューターの通信インターフェイス、G1,G2…画像、S…用紙、T1…印刷領域、T2…印刷継続可能領域、T3…印刷停止可能領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置であって、
印刷データを取得する印刷データ取得部と、
前記取得した印刷データに基づいて印刷を行う印刷部と、
インクカートリッジの交換時に開閉するインクカートリッジ交換専用カバーの開閉状態を検出する開閉検出部と、
印刷条件に基づいて設定された、前記インクカートリッジ交換専用カバーが開状態のときに継続して印刷することが可能な領域を示す印刷継続可能領域を取得する領域取得部と、
前記開閉検出部により前記インクカートリッジ交換専用カバーの開状態が検出されたときに、前記印刷部が前記印刷継続可能領域外を印刷中であった場合、前記印刷部の印刷動作を即時停止させて、前記印刷部の印刷ヘッドに洗浄液を充填する制御を実行する制御部と、を備える印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記開閉検出部により前記インクカートリッジ交換専用カバーの開状態が検出されたときに、前記印刷部が前記印刷継続可能領域内を印刷中であった場合、前記印刷部に印刷動作をそのまま継続させることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷継続可能領域は、印刷停止可能領域までの印刷に必要なインク量から決定する領域であることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記インクカートリッジ交換専用カバーの開状態が検出されてから所定の時間が経過したときに、前記制御部は、前記印刷部の印刷動作を印刷停止可能領域で停止させることを特徴とする請求項2又は3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷停止可能領域は、複数の印刷領域を連続印刷する場合は各印刷領域の間の位置であり、1つの印刷領域を印刷する場合は印刷終了位置であることを特徴とする請求項3又は4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷部に印刷動作をそのまま継続させるときに、印刷対象となる印刷媒体の余白に識別を印刷することを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷条件は、インクカートリッジから前記印刷ヘッドの流路に充填されたインク量、平均的なインク使用量、及び印刷される画像内容のうち、少なくとも1つに応じた条件であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記印刷継続可能領域の主走査方向における領域開始位置は、印刷領域の主走査方向における端部以外の位置も対象とすることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−131520(P2011−131520A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294062(P2009−294062)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】