説明

印刷装置

【課題】安全性の向上を図る。
【解決手段】筐体と、前記筐体に設けられ、内部空間を開放可能なカバーと、前記筐体の内部に設けられた発熱体と、前記発熱体によって発生した熱を放熱する放熱体であって、前記内部空間に少なくとも一部が露出して設けられた放熱体と、を備え、前記カバーを閉状態から開状態にする動作と連動して、前記発熱体と前記放熱体とを離間させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の一例として、駆動信号を用いて駆動素子を駆動させてインクを噴射するインクジェットプリンターが知られている。このようなプリンターには、駆動時に発熱する発熱体が用いられている。例えば、駆動信号を生成する駆動信号生成回路は、トランジスター対からなる電流増幅回路を有しており、これらのトランジスターは、駆動信号を生成する際に発熱する。また、プリンターには様々なモーターが使用されており、これらを駆動するモータードライバーにおいても同様に発熱する。そこで、トランジスター対等の発熱体による発熱を放熱する放熱体を備えるようにしたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−197461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スペースの都合上、放熱体がユーザーの触れる可能性のある場所に配置される可能性がある。例えば、プリンターのカバーを開けることによって開放される内部空間に、放熱体が露出して設けられていることがある。この場合、発熱体が異常発熱していると、ユーザーが高温の放熱体に触れてしまうおそれがあるという問題があった。
そこで、本発明は、安全性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための主たる発明は、筐体と、前記筐体に設けられ、内部空間を開放可能なカバーと、前記筐体の内部に設けられた発熱体と、前記発熱体によって発生した熱を放熱する放熱体であって、前記内部空間に少なくとも一部が露出して設けられた放熱体と、を備え、前記カバーを閉状態から開状態にする動作と連動して、前記発熱体と前記放熱体とを離間させることを特徴とする印刷装置。である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンター1の全体構成を示すブロック図である。
【図2】プリンター1の外観図である。
【図3】図3A及び図3Bは、本実施形態のプリンター1の内部構成を表した図である。
【図4】ヘッド41の構造を示した断面図である。
【図5】放熱の様子を説明するための図である。
【図6】図6A及び図6Bは第1実施形態の説明図である。
【図7】図7A及び図7Bは第2実施形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
筐体と、前記筐体に設けられ、内部空間を開放可能なカバーと、前記筐体の内部に設けられた発熱体と、前記発熱体によって発生した熱を放熱する放熱体であって、前記内部空間に少なくとも一部が露出して設けられた放熱体と、を備え、前記カバーを閉状態から開状態にする動作と連動して、前記発熱体と前記放熱体とを離間させることを特徴とする印刷装置が明らかとなる。
このような印刷装置によれば、カバーを開状態にしたとき、つまりユーザーが放熱体に触れる可能性があるときに、自動的に放熱体の温度を低下させることができるので、安全性の向上を図ることができる。
【0008】
かかる印刷装置であって、前記カバーを閉状態から開状態にする動作と連動して、機械的に前記発熱体と前記放熱体とを離間させてもよい。
このような印刷装置によれば、カバーを開状態にするときに、放熱体と発熱体とが必ず離間するので、確実に放熱体の温度を低下させることができる。
【0009】
かかる印刷装置であって、前記カバーの開閉状態を検出する検出部と、前記カバーが開状態になったことを示す前記検出部の検出結果に基づいて、前記発熱体と前記放熱体とを離間させる移動部とを有していてもよい。
このような印刷装置によれば、カバーを開状態にするときに、放熱体と発熱体とが必ず離間するので、確実に放熱体の温度を低下させることができる。
【0010】
かかる印刷装置であって、前記検出部は、前記発熱体の温度をさらに検出し、前記移動部は、前記カバーが開状態であり、且つ、前記発熱体の温度が所定値よりも高いことを示す前記検出部の検出結果に基づいて、前記発熱体と前記放熱体とを離間させてもよい。
このような印刷装置によれば、放熱体と発熱体とを離間させる回数を抑えつつ、安全性の向上を図ることができる。よって、より効率的である。
【0011】
かかる印刷装置であって、前記発熱体を移動させることによって、前記発熱体と前記放熱体とを離間させてもよい。また、前記放熱体を移動させることによって、前記発熱体と前記放熱体とを離間させてもよい。さらに、前記発熱体の発熱を前記放熱体に伝達する熱伝導体を、前記前記発熱体と前記放熱体の間に有し、前記熱伝導体を移動させることによって、前記放熱体と前記発熱体を離間させてもよい。
【0012】
以下の実施形態では、印刷装置としてインクジェットプリンターを用いて説明を行う。
【0013】
===印刷装置の基本的構成===
<プリンターの構成>
図1は、プリンター1の全体構成を示すブロック図である。図2はプリンター1の外観図である。また、図3A及び図3Bは、本実施形態のプリンター1の内部構成を表した図である。
【0014】
プリンター1は、紙・布・フィルム等の媒体にインクを噴射することで文字や画像を記録(印刷)するインクジェットプリンターであり、外部装置であるコンピューター110と通信可能に接続されている。
コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンタードライバーは、表示装置(不図示)にユーザーインターフェースを表示させ、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラムである。このプリンタードライバーは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されている。また、プリンタードライバーはインターネットを介してコンピューター110にダウンロードすることも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードから構成されている。
コンピューター110はプリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンター1に出力する。
【0015】
プリンター1は、図2に示すように筐体10と、カバー11とを有している。
筐体10は、プリンター1の各ユニット(後述する)を内部に収容するためのものである。
カバー11は、筐体10に開閉可能に設けられており、当該カバー11を開ける(開状態にする)ことによって、プリンター1の内部空間(図3A参照)を開放できるようになっている。
【0016】
以下、プリンター1に設けられた各ユニットの詳細について説明する。
プリンター1は、搬送ユニット20と、キャリッジユニット30と、ヘッドユニット40と、検出器群50と、コントローラー60と、放熱ユニット80と、を有する。コントローラー60は、外部装置であるコンピューター110から受信した印刷データに基づいて各ユニットを制御し、媒体に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は検出器群50から出力された検出結果に基づいて各ユニットを制御する。
【0017】
<搬送ユニット20>
搬送ユニット20は、媒体(例えば紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。ここで、搬送方向はキャリッジの移動方向と交差する方向である。搬送ユニット20は、給紙ローラー21と、搬送モーター22と、搬送ローラー23と、プラテン24と、排紙ローラー25とを有する(図3A及び図3B参照)。
給紙ローラー21は、紙挿入口に挿入された紙をプリンター内に給紙するためのローラーである。搬送ローラー23は、給紙ローラー21によって給紙された紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラーであり、搬送モーター22によって駆動される。搬送モーター22の動作はプリンター側のコントローラー60により制御される。プラテン24は、印刷中の紙Sを、紙Sの裏側から支持する部材である。排紙ローラー25は、紙Sをプリンターの外部に排出するローラーであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。
なお、搬送モーター22は媒体を搬送する際に駆動(回転)することによって発熱する。また、搬送モーター22の駆動力を搬送ローラー23に伝達するために設けられるギア輪列(不図示)も回転時の摩擦により発熱する。つまり、搬送モーター22及びギア輪列はプリンター1の発熱体であると言える。
【0018】
<キャリッジユニット30>
キャリッジユニット30は、ヘッドユニット40が取り付けられたキャリッジ31を所定の方向(以下、移動方向という)に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのものである。キャリッジユニット30は、キャリッジ31と、キャリッジモーター32(CRモーターとも言う)と、を有する(図3A及び図3B参照)。
キャリッジ31は、移動方向に往復移動可能であり、キャリッジモーター32によって駆動される。キャリッジモーター32の動作はプリンター側のコントローラー60により制御される。また、キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。
なお、キャリッジモーター32や、キャリッジモーター32の駆動力を用いてキャリッジ31を移動させるためのギア輪列(不図示)は、キャリッジ31の移動動作時に発熱する。つまり、キャリッジモーター32及びギア輪列はプリンター1の発熱体であると言える。
【0019】
<ヘッドユニット40>
ヘッドユニット40は、紙Sにインクを噴射するためのものである。ヘッドユニット40は、複数のノズルを有するヘッド41を備える。このヘッド41はキャリッジ31に設けられ、キャリッジ31が移動方向に移動すると、ヘッド41も移動方向に移動する。そして、ヘッド41が移動方向に移動中にインクを断続的に噴射することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成される。
【0020】
図4は、ヘッド41の構造の一例を示した断面図である。ヘッド41は、ケース411と、流路ユニット412と、ピエゾ素子群PZTとを有する。ケース411はピエゾ素子群PZTを収納し、ケース411の下面に流路ユニット412が接合されている。流路ユニット412は、流路形成板412aと、弾性板412bと、ノズルプレート412cとを有する。流路形成板412aには、圧力室412dとなる溝部、ノズル連通口412eとなる貫通口、共通インク室412fとなる貫通口、インク供給路412gとなる溝部が形成されている。弾性板412bはピエゾ素子PZTの先端が接合されるアイランド部412hを有する。そして、アイランド部412hの周囲には弾性膜412iによる弾性領域が形成されている。インクカートリッジに貯留されたインクが、共通インク室412fを介して、各ノズルNzに対応した圧力室412dに供給される。ノズルプレート412cはノズルNzが形成されたプレートである。ノズル面では、イエローインクを吐出するイエローノズル列Yと、マゼンタインクを吐出するマゼンタノズル列Mと、シアンインクを吐出するシアンノズル列Cと、ブラックインクを吐出するブラックノズル列Kと、が形成されている。各ノズル列では、ノズルNzが搬送方向に所定間隔Dにて並ぶことによって構成されている。
【0021】
ピエゾ素子群PZTは、櫛歯状の複数のピエゾ素子(駆動素子)を有し、ノズルNzに対応する数分だけ設けられている。ヘッド制御部HCなどが実装された配線基板(不図示)を介してピエゾ素子に駆動信号COMが印加され、駆動信号COMの電位に応じてピエゾ素子は上下方向に伸縮する。ピエゾ素子PZTが伸縮すると、アイランド部412hは圧力室412d側に押されたり、反対方向に引かれたりする。このとき、アイランド部412h周辺の弾性膜412iが変形し、圧力室412d内の圧力が上昇・下降することにより、ノズルからインク滴が吐出される。
【0022】
<検出器群50>
検出器群50は、プリンター1の状況を監視するためのものである。検出器群50には、リニア式エンコーダー51、ロータリー式エンコーダー52、紙検出センサー53、及び光学センサー54等が含まれる(図3A及び図3B参照)。
【0023】
リニア式エンコーダー51は、キャリッジ31の移動方向の位置を検出する。ロータリー式エンコーダー52は、搬送ローラー23の回転量を検出する。紙検出センサー53は、給紙中の紙Sの先端の位置を検出する。光学センサー54は、キャリッジ31に取付けられている発光部と受光部により、対向する位置の紙Sの有無を検出し、例えば、移動しながら紙の端部の位置を検出し、紙の幅を検出することができる。また、光学センサー54は、状況に応じて、紙Sの先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
【0024】
<コントローラー60>
コントローラー60は、プリンターの制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60は、インターフェイス部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64と、ヘッド駆動回路65と、モータードライバー66と、を有する。
【0025】
インターフェイス部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター1の全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子によって構成される。そして、CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して搬送ユニット20等の各ユニットを制御する。
【0026】
ヘッド駆動回路65は、CPU62とヘッドユニット40との間で印刷用データの転送や印刷タイミングの制御等、ヘッド駆動関係の情報のやりとりを行なう。また、ヘッド駆動回路65は、ピエゾ素子PZTを駆動する駆動信号COM(駆動波形)の生成も行なう。駆動信号COMを生成する際には、NPNトランジスター及びPNPトランジスター(共に不図示)をプッシュプルで構成した増幅器を使用して電流波形を増幅し、所望の形状の台形波を生成する。この台形波をヘッドユニット40に印加してピエゾ素子PZTへの充放電を行なう。ピエゾ素子PZTの充放電時において、該トランジスター対は非常に高い熱を発生することから、ヘッド駆動回路65はプリンター1の発熱体であると言うことができる。なお、ヘッド駆動回路65はプリント基板67上に設けられている。
【0027】
モータードライバー66は、搬送モーター22やキャリッジモーター32の回転方向、回転速度等を制御する。モータードライバー66にはトランジスターやFET(不図示)が組み込まれており、各種モーターの駆動時には該トランジスター等によって構成されるブリッジ回路を用いて電流を増幅する。その際、該トランジスターは非常に高い熱を発生することから、モータードライバー66もプリンター1の発熱体であると言うことができる。
【0028】
<放熱ユニット80>
放熱ユニット80は、前述のヘッド駆動回路65やモータードライバー66等の発熱体で発生した熱を、周囲の大気中に放出させる放熱装置である。以下、前述した複数の発熱体のうち、印刷動作において最も高温となるヘッド駆動回路65に放熱ユニット80が設けられる場合について説明を行なう。なお、放熱ユニット80は前述した複数の発熱体のそれぞれについて設けられていてもよいし、発熱体同士がなるべく近くに配置されるように設計し、各発熱体に共通の放熱ユニット80を1つだけ設けてもよい。放熱ユニット80は、放熱体81を有する。
放熱体81は、アルミニウムや鉄製の金属板であり、発熱体で発生した熱を放熱体81の表面から周囲の大気中に放射させることで熱を逃がし、発熱体の冷却を行なう。放熱体81は大気との接触面積が大きいほど熱の放射が起こりやすくなる。つまり、表面積が大きい程、冷却性能が高くなる。図3A及び図3Bに示されるように、本実施形態において放熱体81はキャリッジ移動方向に沿った長方形の板状とすることで、表面積がなるべく広くなるようにしてある。さらに冷却性能を上げるために、放熱体81の表面にフィンを設けて表面積を大きくしてもよい。
【0029】
<プリンターの印刷動作>
プリンター1の印刷動作について簡単に説明する。コントローラー60は、コンピューター110からインターフェイス部61を介して印刷命令を受信し、各ユニットを制御することにより、給紙処理・ドット形成処理・搬送処理等を行う。
給紙処理は、印刷すべき紙をプリンター内に供給し、印刷開始位置(頭出し位置とも言う)に紙を位置決めする処理である。コントローラー60は、給紙ローラー21を回転させ、印刷すべき紙を搬送ローラー23まで送る。続いて、搬送ローラー23を回転させ、給紙ローラー21から送られてきた紙を印刷開始位置に位置決めする。
ドット形成処理は、移動方向(走査方向)に沿って移動するヘッドからインクを断続的に噴射させ、紙上にドットを形成する処理である。コントローラー60は、キャリッジ31を移動方向に移動させ、キャリッジ31が移動している間に、印刷データに基づいてヘッド41からインクを噴射させる。噴射されたインク滴が紙上に着弾すると、紙上にドットが形成され、紙上には移動方向に沿った複数のドットからなるドットラインが形成される。
【0030】
搬送処理は、紙をヘッドに対して搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。コントローラー60は、搬送ローラー23を回転させて紙を搬送方向に搬送する。この搬送処理により、ヘッド41は、先ほどのドット形成処理によって形成されたドットの位置とは異なる位置に、ドットを形成することが可能になる。
コントローラー60は、印刷すべきデータがなくなるまで、ドット形成処理と搬送処理とを交互に繰り返し、ドットラインにより構成される画像を徐々に紙に印刷する。そして、印刷すべきデータがなくなると、排紙ローラーを回転させてその紙を排紙する。なお、排紙を行うか否かの判断は、印刷データに含まれる排紙コマンドに基づいても良い。
次の紙に印刷を行う場合は同処理を繰り返し、行わない場合は、印刷動作を終了する。
【0031】
===放熱について===
図5は、放熱体81による放熱の様子を説明する図である。図ではプリント基板67上にヘッド駆動回路65(発熱体)が設けられ、ヘッド駆動回路65に接して放熱体81が設けられている。図中の矢印は放熱時における熱の流れを表している。
発熱体(この場合、ヘッド駆動回路65)で発生した熱は図の斜線部で表される熱源(トランジスタ等)を中心として四方へと発散する。ヘッド駆動回路65はプリント基板67及び放熱体81と接しているが、プリント基板67は熱伝導性が悪いため、発生した熱は主に放熱体81の方へ移動する。放熱体81はヘッド駆動回路65よりも温度が低く、また、熱伝導性が高いので、ヘッド駆動回路65で発生した熱は、ヘッド駆動回路65と放熱体81とが接触している領域から放熱体81内部へと伝導し、さらに放熱体81内を伝導して反対側の表面から大気へと放出される。これにより、ヘッド駆動回路65が冷却される。
【0032】
このような放熱時において、ヘッド駆動回路65による発熱が大きい場合、放熱体81が非常に高温になることがある。このため、放熱体81をユーザーが触れることができない位置に配置することが望ましいが、装置設計の都合上、ユーザーが触れる可能性がある位置に放熱体81を配置せざるを得ない場合もある。本実施形態では、放熱体81がプリンター1(筐体10)の内部空間に露出して設けられている。この場合、カバー11を開けた状態(開状態)において、ユーザーが高温の放熱体81に触れてしまうおそれがある。
そこで、以下の実施形態では、カバー11を開いたときの安全性の向上を図るようにしている。
【0033】
===第1実施形態===
図6A及び図6Bは第1実施形態の説明図である。なお、図6Aはカバー11を閉じた状態(閉状態)を示す図であり、図6Bはカバー11を開けた状態(開状態)を示す図である。なお、図において、上を上側とし、下を下側とする。
【0034】
本実施形態のプリンター1は、歯車12a、歯車12b、板状部材68を備えている。
歯車12aは、カバー11の開閉の軸C1の周囲に設けられており、カバー11の開閉の動作と連動して、軸C1を中心として時計回り方向または反時計回り方向に回動する。具体的には、歯車12aは、カバー11を開けるときは軸C1を中心として時計回り方向に回動し、カバー11を閉じるときには軸C1を中心として反時計回り方向に回動する。
歯車12bは、歯車12aと噛み合うように設けられており、軸C2を中心として、歯車12aの回動の方向と逆方向に回動する。つまり、歯車C2は、カバー11を開けるときは軸C2を中心として反時計回り方向に回動し、カバー11を閉じるときには軸C2を中心として時計回り方向に回動する。
【0035】
また、板状部材68は、プリント基板67の上端に設けられており、この板状部材68の上面には搬送方向に沿って直線状に歯が配置された直線歯車68aが形成されている。この直線歯車68aは、歯車12bと噛み合うように設けられており、板状部材68は、歯車12bの回動の方向に応じて、不図示のガイドに沿って搬送方向に移動する。具体的には、歯車12bが時計回り方向に回動すると、板状部材68(及びプリント基板67)は、搬送方向の下流側に移動する。逆に、歯車12bが反時計回り方向に回動すると、板状部材68(及びプリント基板67)は、搬送方向の上流側に移動する。
【0036】

次に、図6A及び図6Bを参照しつつ、本実施形態のプリンター1においてカバー11を開けるときの動作について説明する。
【0037】
カバー11が閉じた状態(閉状態)では図6Aに示すように、ヘッド駆動回路65と放熱体81が接触している。このため、ヘッド駆動回路65が高温になっているときには放熱体81も高温(例えば70度)になっている。
この状態から、図6Bに示すように、カバー11を上に持ち上げる(すなわちカバー11を開ける)と、それと連動して、歯車12aが軸C1を中心として時計回り方向に回動する。これにより、歯車12bが軸C2を中心として反時計回り方向に回動する。さらに、歯車12bが反時計回り方向に回動することによって、板状部材68は、搬送方向の上流側に移動する。すなわち、カバー11を開ける動作と連動して、プリント基板67(及びヘッド駆動回路65)が搬送方向の上流側に移動する。
【0038】
これにより、放熱体81とヘッド駆動回路65とが離間されるので、ヘッド駆動回路65の発熱が放熱体81に伝導されなくなる。また、放熱体81が外気に触れることによって、放熱体81は急速に冷却される。
なお、カバー11を閉じる際には、カバー11を開けるときの動作と逆方向に各歯車が動き、プリント基板67が搬送方向下流側に移動する。そして、カバー11を閉じた状態では、放熱体81とヘッド駆動回路65が再び接触する(図6A)。
【0039】
以上説明したように、本実施形態では、カバー11を開ける動作と連動して、ヘッド駆動回路65(発熱体)を機械的に搬送方向の上流側に移動させている。これにより、放熱体81とヘッド駆動回路65とを離間させ、放熱体81を冷却している。このように、本実施形態によると、放熱体81が高温になっていても、カバー11を開けるときには、放熱体81の温度が低下するので、安全性の向上を図ることができる。
【0040】
なお、放熱体81とヘッド駆動回路65を離間させる構成は上述したものに限られない。例えば、プリント基板67の下端を回動可能に軸支しておき、カバー11を開けることによって、プリント基板67の上端が図の右側(搬送方向上流側)に移動するようにしてもよい(すなわち、カバー11を開けると、ヘッド駆動回路65が放熱体81から離れる側に斜めに傾くようにしてもよい)。
【0041】
<第1実施形態の変形例>
前述した実施形態では、ヘッド駆動回路65(発熱体)を搬送方向の上流側に移動させていたが、これには限られない。例えば、カバー11を開ける動作と連動して、放熱体81を搬送方向の下流側に移動させるようにしてもよい。この場合も、カバー11を開ける際に、放熱体81とヘッド駆動回路65とが離間されるので、放熱体81の温度を低下させることができる。
また、前述した実施形態では、カバー11を閉じた状態において、放熱体81とヘッド駆動回路65が直接接触していたが、放熱体81とヘッド駆動回路65の間に、ヘッド駆動回路65で発生した熱を放熱体81に伝導する熱伝導体(不図示)を設けてもよい。そして、カバー11を開ける動作と連動して、熱伝導体を上側又は下側にスライドさせるようにしてもよい。この場合、熱伝導体をヘッド駆動回路65と放熱体81の間から抜くことで、ヘッド駆動回路65の熱が放熱体81に伝わりにくくなるので放熱体81の温度を低下させることができる。
【0042】
===第2実施形態===
第1実施形態では、カバー11を開ける動作と連動して、機械的に放熱体81とヘッド駆動回路65(発熱体)とを離間させていたが、第2実施形態ではカバー11を開けた状態となるのを電気的に検出している。そして、その検出結果に基づいて、放熱体81とヘッド駆動回路65(発熱体)とを離間させるようにしている。
【0043】
図7A及び図7Bは、第2実施形態の説明図である。なお、図7Aはカバー11を閉じた状態を示す図であり、図7Bはカバー11を開けた状態を示す図である。なお、これらの図において、第1実施形態(図6A、図6B)と同一構成の部分には同一の符号を付し説明を省略する。なお、第2実施形態では歯車12Bの回動の動作は、コントローラー60によって制御されている。
第2実施形態のプリンター1では、図7A、図7Bに示すように、検出器群50(検出部に相当する)として、カバー11と筐体10との当接部分にセンサー55を備えている。
センサー55は押釦式のセンサーであり、押下の有無に応じて、カバー11が閉状態であるか開状態であるかを示す信号をコントローラー60に出力する。
【0044】
例えば、図7Aに示すように、カバー11が閉じられていると、センサー55はカバー11によって押下されている。このときセンサー55は、コントローラー60にカバー11が閉状態であることを示す信号を出力する。
一方、図7Bに示すように、ユーザーによってカバー11が開けられると、カバー11によるセンサー55の押下が解除される。このときセンサー55は、コントローラー60に、カバー11が開状態であることを示す信号を出力する。コントローラー60は、カバー11が開状態であることを示す信号を受信すると、歯車12bを、軸c2を中心として反時計回り方向に回転させる。これにより、プリント基板67及びヘッド駆動回路65は搬送方向の上流側に移動し、放熱体81とヘッド駆動回路65とが離間する。
【0045】
なお、カバー11を閉じる場合には、コントローラー60はカバー11を開ける場合と逆の動作を行う。つまり、センサー55からカバー11が閉状態であることを示す信号を受信すると、コントローラー60は、歯車12bを、軸c2を中心として時計回り方向に回転させる。これにより、プリント基板67及びヘッド駆動回路65は搬送方向の下流側に移動し、放熱体81とヘッド駆動回路65は接触する(図7A)。
この第2実施形態においても、カバー11を開ける動作と連動して、放熱体81と発熱体(ヘッド駆動回路65)とを離間させている。よって、安全性の向上を図ることができる。
【0046】
<第2実施形態の変形例>
第2実施形態においても、第1実施形態の変形例と同様に、ヘッド駆動回路65ではなく、放熱体81を移動させてもよい。また、ヘッド駆動回路65と放熱体81の間に熱伝導体を設け、カバー11を開ける動作と連動して熱伝導体を移動させてもよい。
【0047】
また、検出器群50として、放熱体81の温度を検出するセンサー(例えばサーミスター)を設けてもよい。そして、カバー11が開状態であり、且つ、センサーの検出温度が所定温度よりも高い場合に、放熱体81とヘッド駆動回路65とを離間させるようにしてもよい。前述の実施形態では、ヘッド駆動回路65や放熱体81の温度にかかわらず、カバー11を開ける動作を行う毎に放熱体81とヘッド駆動回路65とを離間させている。つまり、放熱体81に触れても安全な温度であっても、カバー11を開ける動作によって放熱体81とヘッド駆動回路65とが離間されることになる。これに対し、この場合、カバー11が開けられ、且つ、実際に放熱体81の温度が異常の場合だけ、放熱体81とヘッド駆動回路65(発熱体)とを離間させるようにできる。よって、放熱体81とヘッド駆動回路65とを離間させる回数を減らすことができ、より効率的に放熱を行うことができる。
【0048】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0049】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、媒体を搬送方向に搬送する搬送動作と、ヘッドを移動方向に移動させながらノズルからインクを噴射することによって媒体にドットを形成するドット形成動作を繰り返し行なうプリンター(シリアルプリンター)であったが、これには限られない。例えば、媒体幅方向に媒体幅以上の長さのノズル列を備え、媒体を搬送方向に搬送させながらノズル列の各ノズルからインクを噴射させることで媒体に画像を印刷するラインプリンターでも良い。
【0050】
<ピエゾ素子について>
前述の実施形態では、ピエゾ素子を用いてインクを噴射していた。しかし、液体を噴射する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 プリンター、10 筐体、11 カバー、
20 搬送ユニット、21 給紙ローラー、22 搬送モーター、
23 搬送ローラー、24 プラテン、25 排紙ローラー、
30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、32 キャリッジモーター、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、411 ケース、412 流路ユニット、
412a 流路形成板、412b 弾性板、412c ノズルプレート、
412d 圧力室、412e ノズル連通口、412f 共通インク室、
412g インク供給路、412h アイランド部、412i 弾性膜、
50 検出器群、51 リニア式エンコーダー、52 ロータリー式エンコーダー、
53 紙検出センサー、54 光学センサー、
60 コントローラー、61 インターフェイス部、62 CPU、63 メモリー、
64 ユニット制御回路、65 ヘッド駆動回路、66 モータードライバー、
67 プリント基板
80 放熱ユニット、81 放熱体、
110 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に設けられ、内部空間を開放可能なカバーと、
前記筐体の内部に設けられた発熱体と、
前記発熱体によって発生した熱を放熱する放熱体であって、前記内部空間に少なくとも一部が露出して設けられた放熱体と、
を備え、
前記カバーを閉状態から開状態にする動作と連動して、前記発熱体と前記放熱体とを離間させる、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記カバーを閉状態から開状態にする動作と連動して、機械的に前記発熱体と前記放熱体とを離間させる
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記カバーの開閉状態を検出する検出部と、
前記カバーが開状態になったことを示す前記検出部の検出結果に基づいて、前記発熱体と前記放熱体とを離間させる移動部と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷装置であって、
前記検出部は、前記放熱体の温度をさらに検出し、
前記移動部は、前記カバーが開状態であり、且つ、前記放熱体の温度が所定値よりも高いことを示す前記検出部の検出結果に基づいて、前記発熱体と前記放熱体とを離間させることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の印刷装置であって、
前記発熱体を移動させることによって、前記発熱体と前記放熱体とを離間させる、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載の印刷装置であって、
前記放熱体を移動させることによって、前記発熱体と前記放熱体とを離間させる、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1〜4の何れかに記載の印刷装置であって、
前記発熱体の発熱を前記放熱体に伝達する熱伝導体を、前記前記発熱体と前記放熱体の間に有し、
前記熱伝導体を移動させることによって、前記放熱体と前記発熱体を離間させる、
ことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−106426(P2012−106426A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257560(P2010−257560)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】