説明

印刷装置

【課題】簡易な構成で、搬送ローラのスリップを防止する。
【解決手段】搬送路上下方向から駆動ローラ137aと従動ローラ137bとが第1ニップ圧で圧接して回転することにより、第1搬送速度で用紙を搬送する搬送ローラ137と、搬送路上における搬送ローラ137より下流側であり、用紙の搬送方向に湾曲した搬送路上に設けられ、駆動ローラ141aと従動ローラ141bとが第1ニップ圧以下である第2ニップ圧で圧接して回転することにより、用紙を第1搬送速度で搬送する搬送ローラ141と、搬送路上における搬送ローラ141より下流側に設けられ、搬送路上下方向から駆動ローラ143aと従動ローラ143bとが第3ニップ圧で圧接して回転することにより、用紙を第2搬送速度で搬送する搬送ローラ143とを備え、従動ローラ141bは、搬送路の湾曲内側方向に伸縮自在なコイルスプリング141fにより搬送路の湾曲内側で支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送方向に湾曲する搬送路上で、印刷された印刷用紙を搬送する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、用紙反転経路を含む循環搬送路を有し、両面印刷が選択された場合に、印刷用紙の一方の面に印刷すると共に、この一方の面に印刷された印刷用紙を、循環搬送路を搬送して用紙反転経路で表裏反転し、他方の面に印刷を行う両面印刷装置がよく知られている。
【0003】
このような両面印刷装置の循環搬送経路は、印刷用紙を循環させるために搬送方向に湾曲している場合が多く、この湾曲した循環搬送経路上に搬送ローラが設けられ、印刷用紙は、搬送ローラにより圧接されて循環搬送経路上を搬送される。
【0004】
この循環搬送経路上における上流側と下流側とにそれぞれ搬送ローラが設けられた湾曲部分において、上流側の搬送ローラの搬送速度に比べて、下流側の搬送ローラの搬送速度が速い場合、下流側の搬送ローラがスリップする場合があった。このように、下流側の搬送ローラがスリップすると、搬送ローラが摩耗したり、印刷用紙を汚してしまう恐れがある。
【0005】
特許文献1には、高濃度パターンや高印字率パターンで印刷された印刷用紙を通紙する場合、圧接ローラのニップ圧が低くなるように制御する画像形成装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−63906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置では、高濃度パターンや高印字率パターンで印刷された印刷用紙を通紙する場合、圧接ローラのニップ圧を低くなるように制御するが、搬送経路上において印刷用紙の搬送速度が上昇する場合、即ち加速される場合に圧接ローラのニップ圧を調整することがないので、搬送ローラのスリップを防止することが困難であった。また、ニップ圧を調整する制御が必要であるので、装置の機能構成が複雑になるという課題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、搬送ローラのスリップを防止する印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置の第1の特徴は、印刷部により印刷された用紙が搬送される搬送路上に設けられ、回転駆動する第1駆動ローラと、前記第1駆動ローラに第1ニップ圧で圧接して回転する第1従動ローラとにより前記用紙を第1の搬送速度で搬送する第1搬送手段と、前記搬送路上における前記第1搬送手段より下流側であり、用紙の搬送方向に湾曲した前記搬送路上に設けられ、回転駆動する第2駆動ローラと、前記第2駆動ローラに前記第1ニップ圧以下である第2ニップ圧で圧接して回転する第2従動ローラとにより、前記第1搬送手段により搬送された用紙を前記第1搬送速度で搬送する第2搬送手段と、前記搬送路上における前記第2搬送手段より下流側に設けられ、回転駆動する第3駆動ローラと、前記第3駆動ローラに前記第1ニップ圧より大きい第3ニップ圧で圧接して回転する第3従動ローラとにより前記第2搬送手段により搬送された用紙を前記第1搬送速度より速い第2搬送速度で搬送する第3搬送手段と、を備え、前記第2従動ローラは、前記搬送路の湾曲内側方向に伸縮自在な伸縮手段により前記搬送路の湾曲内側で支持されていることにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る印刷装置の第1の特徴によれば、第2従動ローラは、搬送路の湾曲内側方向に伸縮自在な伸縮手段により搬送路の湾曲内側で支持されているので、バックテンションが生じた際には、第2駆動ローラと第2従動ローラとの圧接が開放され、用紙は、より大きいニップ圧で圧接されている第3搬送手段により引っ張られ、第2搬送速度で搬送路を搬送されるので、簡易な構成で、第3搬送手段のスリップを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置が備える循環搬送路上に配置された搬送ローラ及び用紙検出センサの詳細図である。
【図3】本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置が備える搬送ローラの構成を示した図である。
【図4】(a)は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置が備える循環搬送路の第1搬送循環搬送路上を印刷用紙が搬送されている状態を示した図であり、(b)は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1が備える循環搬送路の第1搬送循環搬送路上を搬送された印刷用紙が搬送ローラに到達して、搬送ローラにより第2搬送循環搬送路へ搬送される状態を示した図である。
【図5】従来技術による用紙検出センサにおける印刷用紙の搬送方向における長さにより決定される搬送スケジュールからの時間的なズレを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
本発明の一実施形態では、多数のノズルが形成されたインクジェットヘッドを複数本備え、それぞれのインクジェットヘッドから黒またはカラーのインクを吐出してライン単位で印刷用紙に印刷を行うライン型のインクジェット印刷装置を例に挙げて説明する。
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
<インクジェット印刷装置の全体構成>
本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1の構成について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1の構成を示す構成図である。
【0017】
図1に示すように、インクジェット印刷装置1は、サイド給紙部10と、内部給紙部20と、印刷部30と、排紙部40と、反転部50とを備えている。
【0018】
サイド給紙部10は、印刷用紙Wが積層される給紙台11と、この給紙台11から最上位置の印刷用紙Wのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部12と、この1次給紙部12によって搬送された印刷用紙Wを循環搬送路CR上へ搬送する2次給紙部14とを備えている。
【0019】
内部給紙部20は、印刷用紙Wが積層される給紙台21aと、この給紙台21aから最上位置の印刷用紙Wのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22aと、印刷用紙Wが積層される給紙台21bと、この給紙台21bから最上位置の印刷用紙Wのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22bと、印刷用紙Wが積層される給紙台21cと、この給紙台21cから最上位置の印刷用紙Wのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22cと、印刷用紙Wが積層される給紙台21dと、この給紙台21dから最上位置の印刷用紙Wのみを給紙搬送路FR上へ搬送させる1次給紙部22dとを備えている。
【0020】
このように、2次給紙部14には、サイド給紙部10及び内部給紙部20から印刷用紙Wが搬送され、さらに、後述する反転部50からも印刷用紙Wが搬送される。
【0021】
そのため、搬送方向における2次給紙部14の手前には、給紙された印刷用紙Wの搬送経路と、一方の面が印刷された用紙が循環して搬送されてくる経路とが合流する合流地点が存在する。この合流地点を基準に、給紙機構側の経路を給紙搬送路FRと称し、それ以外の経路を循環搬送路CRと称している。また、循環搬送路CRは、一方の面が印刷された印刷用紙Wを循環して搬送するので、印刷用紙Wの搬送方向に対して湾曲する部分を有する。
【0022】
印刷部30は、循環搬送路CR上で印刷用紙Wを搬送する用紙搬送ユニット133と、この用紙搬送ユニット133の上部に設けられ、複数のインクジェットヘッドが組み込まれたインクジェットヘッドユニット31とを備える。
【0023】
用紙搬送ユニット133は、環状のプラテンベルト132を備えており、2次給紙部14により給紙された印刷用紙Wは、プラテンベルト132内に設置された後述するサクションファン131によってプラテンベルト132上に吸引され、搬送路上を所定の搬送速度で搬送されながら、インクジェットヘッドユニット31から吐出されたインクにより印刷用紙Wに印刷される。
【0024】
印刷部30により印刷された印刷用紙Wは、循環搬送路CR上に配置された搬送ローラ135,137,141,143等によって筐体内を循環搬送路CR上で搬送され、それぞれの搬送ローラで搬送された印刷用紙Wは、循環搬送路CR上に配置された用紙検出センサ136,144,145により検出される。
【0025】
また、循環搬送路CR上には、循環搬送路CR上を搬送された印刷用紙Wを排紙部40へ誘導するか、又は循環搬送路CR上を再循環させるかを切り替える切り替え機構43が備えられている。
【0026】
切り替え機構43は、印刷用紙Wを、後述する排紙部40又は反転部50のいずれか1方へ誘導するために、切り替える。
【0027】
排紙部40は、インクジェット印刷装置1の筐体から突出したトレイ形状をした排紙台41と、排紙台41に印刷用紙Wを誘導する一対の排紙ローラ42とを有している。そして、切り替え機構43により排紙部40に誘導された印刷用紙Wは、排紙ローラ42により排紙台41に搬送され、排紙台41に印刷面を下にして積載される。
【0028】
反転部50は、印刷用紙Wを反転させる反転台51と、循環搬送路CRから反転台51へ印刷用紙Wを搬送し、又は反転台51から循環搬送路CR上へ印刷用紙Wを搬送する反転ローラ52とを備えている。
【0029】
切り替え機構43により反転部50に誘導された印刷用紙Wは、反転ローラ52により循環搬送路CRから反転台51に搬送され、所定時間経過後、反転台51から循環搬送路CRへ搬送されることにより、循環搬送路CRに対して表裏が反転する。そして、表裏が反転された印刷用紙Wは、循環搬送路CR上に設けられた搬送ローラ53等の複数のローラにより循環搬送路CR上を印刷部30へ向かって搬送される。
【0030】
このように、印刷用紙Wは循環搬送路CRを循環されるが、印刷速度を高めるためには、循環搬送路CRを循環される印刷用紙Wをできるだけ早いタイミングで反転部50へ搬送して、2次給紙部14から印刷部30へ給紙させる必要がある。一方、循環搬送路CR上におけるインクジェットヘッドユニット31の下部では、適切に印刷可能な搬送速度で印刷用紙Wを搬送する必要がある。
【0031】
そこで、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1では、循環搬送路CRを搬送速度によって2つの領域に分けて搬送している。即ち、循環搬送路CRは、印刷部30が適切に印刷可能な搬送速度である第1の搬送速度で印刷用紙Wを搬送する第1搬送循環搬送路CR1と、第1の搬送速度より速い速度である第2の搬送速度で印刷用紙Wを搬送する第2搬送循環搬送路CR2とを有している。そのため、循環搬送路CR上において、第1搬送循環搬送路CR1と第2搬送循環搬送路CR2との接続部分である搬送ローラ143に印刷用紙Wが到達したとき、印刷用紙Wは搬送ローラ143によって加速されることになる。
【0032】
<循環搬送路周辺の構成>
図2は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1が備える循環搬送路CR上に配置された搬送ローラ137,141,143及び、用紙検出センサ136,144の詳細図である。
【0033】
図2に示すように、循環搬送路CRは、印刷用紙Wの搬送方向に対して湾曲しており、その湾曲した循環搬送路CR上に、上流側から用紙検出センサ136、搬送ローラ137、搬送ローラ141、搬送ローラ143、用紙検出センサ144の順に設けられている。
【0034】
用紙検出センサ136は、循環搬送路CR上を搬送されて、搬送ローラ137に到達する印刷用紙Wを検出する。
【0035】
搬送ローラ137は、駆動源となる駆動モータ(図示しない)と機械的に接続され、駆動モータの駆動により回転駆動する駆動ローラ137aと、駆動ローラ137aと圧接することにより回転する従動ローラ137bとを備えており、駆動ローラ137aと従動ローラ137bとが第1のニップ圧で圧接して回転することにより、印刷用紙Wが循環搬送路CR上を第1の搬送速度で搬送される。
【0036】
搬送ローラ137の駆動ローラ137aは、ゴム又は樹脂製の円柱形状を有し、外周面に滑り止め用のセラミック製の粒子が微小な凹凸を形成するように固着されている。駆動ローラ137aは、搬送方向と直交する方向(紙面に対して垂直方向)を回転軸Pとして、この回転軸Pを中心に回転自在となるように軸支されている。
【0037】
また、回転軸Pの片端部には駆動モータの回転力を回転軸Pに伝達する動力伝達部材であるギア(図示しない)が設けられており、このギアと駆動モータの駆動軸に固定された駆動ギヤとが噛合し、駆動ギヤの回転力が回転軸Pに伝達されることで駆動ローラ137aが回転する。
【0038】
搬送ローラ137の従動ローラ137bは、ゴム又は樹脂製の円柱形状を有し、外周面に滑り止め用のセラミック製の粒子が微小な凹凸を形成するように固着されている。
【0039】
従動ローラ137bは、駆動ローラ137aと同様に、搬送方向と直交する方向(紙面に対して垂直方向)を回転軸Qとして、この回転軸Qを中心に回転自在となるように軸支されている。また、従動ローラ137bは、バネなどの付勢手段を有し、この付勢手段により駆動ローラ137a側へ付勢されることにより、従動ローラ137bは駆動ローラ137aに圧接されて従動回転する。
【0040】
搬送ローラ141は、循環搬送路CR上における搬送ローラ137より下流側であり、印刷用紙Wの搬送方向に湾曲した循環搬送路CR上に設けられている。そして、搬送ローラ141は、搬送ローラ137と同様に、駆動ローラ141aと、従動ローラ141bとを備えており、駆動ローラ141aと従動ローラ141bとが上下方向から第1ニップ圧以下である第2ニップ圧で圧接して回転することにより、搬送ローラ137により搬送された印刷用紙Wが循環搬送路CR上を第1の搬送速度で搬送される。
【0041】
搬送ローラ143は、循環搬送路CR上における搬送ローラ141より下流側に設けられている。そして、搬送ローラ143は、搬送ローラ137と同様に、駆動ローラ143aと、従動ローラ143bとを備えており、駆動ローラ143aと従動ローラ143bとが上下方向から第1ニップ圧より大きい第3ニップ圧で圧接して回転することにより、搬送ローラ141により搬送された印刷用紙Wが循環搬送路CR上を第1の搬送速度より速い第2搬送速度で搬送される。
【0042】
用紙検出センサ144は、搬送ローラ143により第2搬送速度で循環搬送路CR上を搬送される印刷用紙Wを検出する。
【0043】
図3は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1が備える搬送ローラ141の構成を示した図である。
【0044】
図3に示すように、搬送ローラ141は、モータ141cと、ウォーム141dと、アーム141eと、コイルスプリング141fとを備えている。なお、図示しないが、モータ141cと、ウォーム141dと、アーム141eと、コイルスプリング141fは、搬送ローラ141の回転軸方向の両側にそれぞれ設けられている。
【0045】
モータ141cは、回転駆動力を生じさせる。ウォーム141dは、モータ141cの出力軸に接続されており、モータ141cの回転駆動力によりアーム141eを図示上下方向(F1,F2方向)に移動させる。
【0046】
アーム141eの一端部には、ウォームホイールと同様のギア歯147gが形成され、ギア歯147gは、ウォーム141dに歯合されている。これにより、ウォーム141dが中心軸回りに回転すると、アーム141eが上下方向に移動する。
【0047】
コイルスプリング141fの一端は、従動ローラ141bの軸受141hに接続され、コイルスプリング141fの他端は、アーム141eの他端部に接続されている。そして、後述するように、搬送ローラ137,141の搬送速度と、搬送ローラ143の搬送速度との速度差によってバックテンションが生じると、コイルスプリング141fが収縮し、搬送ローラ141の従動ローラ141bがF2方向、即ち循環搬送路CRの湾曲内側に向かって移動する。
【0048】
なお、本発明の一実施形態では、モータ141cの回転駆動力によりF1及びF2方向に移動するアーム141eを備える構成としたが、これに限らず、コイルスプリング141fの他端は、F1及びF2方向に移動しない固定式のアーム141eに接続されるようにしてもよい。即ち、従動ローラ141bは、搬送ローラ137,141の搬送速度と、搬送ローラ143の搬送速度との速度差によって生じるバックテンションによってコイルスプリング141fが収縮することにより、循環搬送路CRの湾曲内側に向かって移動するように軸支されていればよい。
【0049】
<インクジェット印刷装置の動作>
図4は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1が備える搬送ローラ141の構成を示した図である。
【0050】
図4(a)は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1が備える循環搬送路CRの第1搬送循環搬送路CR1上を印刷用紙Wが搬送されている状態を示した図であり、図4(b)は、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1が備える循環搬送路CRの第1搬送循環搬送路CR1上を搬送された印刷用紙Wが搬送ローラ143に到達して、搬送ローラ143により第2搬送循環搬送路CR2へ搬送される状態を示した図である。
【0051】
図4(a)に示すように、印刷用紙Wは、駆動ローラ137aと従動ローラ137bとが第1のニップ圧で圧接して回転することにより、第1搬送循環搬送路CR1上を第1の搬送速度で搬送され、さらに、駆動ローラ141aと従動ローラ141bとが上下方向から第2ニップ圧で圧接して回転することにより、第1搬送循環搬送路CR1上を第1の搬送速度で搬送される。
【0052】
そして、図4(b)に示すように、第1搬送循環搬送路CR1上を搬送された印刷用紙Wが搬送ローラ143に到達すると、印刷用紙Wは、駆動ローラ143aと従動ローラ143bとが上下方向から第3ニップ圧で圧接して回転することにより、第2搬送循環搬送路CR2上を第2搬送速度で搬送される。
【0053】
このように、第1搬送循環搬送路CR1上における搬送ローラ137,141による第1搬送速度と、第2搬送循環搬送路CR2上における搬送ローラ143による第2搬送速度との間に速度差が生じることになる。
【0054】
また、第1搬送循環搬送路CR1上では、搬送ローラ137と搬送ローラ141とが上下方向から印刷用紙Wを圧接して第1の搬送速度で搬送しているのに対し、第2搬送循環搬送路CR2上では、搬送ローラ143のみが上下方向から印刷用紙Wを圧接して第2の搬送速度で搬送しているので、搬送ローラ137,141によるニップ圧の方が大きく、バックテンションが生じる。
【0055】
このように、バックテンションが生じると、循環搬送路CRの湾曲内側に設けられた従動ローラ141bは、コイルスプリング141fが収縮することにより、F2方向に向かって移動する。これにより、駆動ローラ141aと従動ローラ141bとの圧接が開放され、印刷用紙Wは、搬送ローラ137と搬送ローラ143とで圧接される。
【0056】
搬送ローラ137は、駆動ローラ137aと従動ローラ137bとが第1のニップ圧で圧接して回転しており、搬送ローラ143は、駆動ローラ143aと従動ローラ143bとが第1ニップ圧より大きい第3ニップ圧で圧接して回転しているので、印刷用紙Wは、より大きいニップ圧で圧接されている搬送ローラ143により引っ張られ、第2搬送速度で第2搬送循環搬送路CR2上を搬送される。
【0057】
以上のように、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1によれば、搬送ローラ141の第従動ローラ141bは、循環搬送路CRの湾曲内側方向に伸縮自在なコイルスプリング141fより循環搬送路CRの湾曲内側で支持されているので、バックテンションが生じた際には、駆動ローラ141aと従動ローラ141bとの圧接が開放され、印刷用紙Wは、より大きいニップ圧で圧接されている搬送ローラ143により引っ張られ、第2搬送速度で第2搬送循環搬送路CR2上を搬送されるので、簡易な構成で、搬送ローラ143のスリップを防止することができる。
【0058】
なお、本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1では、搬送ローラ137,141,143により搬送される印刷用紙Wの搬送スケジュールが遅延閾値を超える程度に、搬送ローラ141,143により発生するバックテンションが大きい場合に、より搬送ローラ143によるスリップの防止効果が顕著になる。
【0059】
図5は、従来技術による用紙検出センサ136,144,145における理論値からのズレ、即ち、印刷用紙Wの搬送方向における長さにより決定される搬送スケジュールからの時間的なズレを示した図である。ここでは、用紙サイズがA4,B4,A3である印刷用紙Wを通紙した場合における搬送スケジュールからの時間的なズレを示している。なお、A4は、横方向、即ち、短辺が搬送方向と平行になるように通紙した場合を示している。
【0060】
図5に示すように、用紙サイズがA4である印刷用紙Wを通紙した場合における理論値からのズレ102、及び用紙サイズがB4である印刷用紙Wを通紙した場合における理論値からのズレ103は、用紙検出センサ136,144,145のいずれのセンサ位置においても、小さい結果となっている。
【0061】
一方、用紙サイズがA3である印刷用紙Wを通紙した場合における理論値からのズレ101は、循環搬送路CRの下流側である程、顕著に大きくなっており、用紙検出センサ145における理論値からのズレ101の値は、遅延閾値110を超えている。ここで、遅延閾値110は、インクジェット印刷装置1に備えられた制御部(図示しない)により、紙詰まりが発生したと判定される搬送スケジュールからの遅延時間である。
【0062】
このように、用紙サイズがA3である印刷用紙Wを通紙した場合における理論値からのズレ101が、遅延閾値110を超えるのは、搬送ローラ141,143により発生するバックテンションが大きいことが起因している。
【0063】
バックテンションは、第1のニップ圧及び第2のニップ圧の加算値が大きい程、循環搬送路CRの曲率が大きい程、印刷用紙Wの搬送方向における長さが長い程大きくなる。これらのうち、用紙サイズによって異なるのは、印刷用紙Wの搬送方向における長さであるので、ここでは、印刷用紙Wの搬送方向における長さが最も長い用紙サイズがA3である印刷用紙Wを通紙した場合における理論値からのズレ101が、遅延閾値110を超える程に大きくなる。
【0064】
本発明の一実施形態であるインクジェット印刷装置1によれば、搬送ローラ141の従動ローラ141bは、循環搬送路CRの湾曲内側方向に伸縮自在なコイルスプリング141fより循環搬送路CRの湾曲内側で支持されているので、バックテンションが生じた際には、駆動ローラ141aと従動ローラ141bとの圧接が開放され、印刷用紙Wは、より大きいニップ圧で圧接されている搬送ローラ143により引っ張られ、バックテンションが小さくなるので、用紙サイズがA3である印刷用紙Wを通紙した場合においても、理論値からのズレを、用紙サイズがA4,B4である印刷用紙Wを通紙した場合における理論値からのズレ102、103程度まで下げることができる。
【0065】
また、本発明の一実施形態では、ライン単位で印刷を行なうインクジェット方式のインクジェット印刷装置1を例に挙げて説明したが、これに限らず、シリアルインクジェット方式、レーザ方式、又は孔版印刷方式等の印刷装置であってもよく、両面印刷装置、又は片面印刷装置を問わず、搬送方向に対して湾曲する搬送路を有する印刷装置であればよい。
【符号の説明】
【0066】
1…インクジェット印刷装置
10…サイド給紙部
11…給紙台
12…1次給紙部
14…2次給紙部
20…内部給紙部
30…印刷部
31…インクジェットヘッドユニット
40…排紙部
50…反転部
135…搬送ローラ
137…搬送ローラ(第1搬送手段)
141…搬送ローラ(第2搬送手段)
143…搬送ローラ(第3搬送手段)
136,144,145…用紙検出センサ
137a,141a,143a…駆動ローラ
137b,141b,143b…従動ローラ
141f…コイルスプリング(伸縮手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷部により印刷された用紙が搬送される搬送路上に設けられ、回転駆動する第1駆動ローラと、前記第1駆動ローラに第1ニップ圧で圧接して回転する第1従動ローラとにより前記用紙を第1の搬送速度で搬送する第1搬送手段と、
前記搬送路上における前記第1搬送手段より下流側であり、用紙の搬送方向に湾曲した前記搬送路上に設けられ、回転駆動する第2駆動ローラと、前記第2駆動ローラに前記第1ニップ圧以下である第2ニップ圧で圧接して回転する第2従動ローラとにより、前記第1搬送手段により搬送された用紙を前記第1搬送速度で搬送する第2搬送手段と、
前記搬送路上における前記第2搬送手段より下流側に設けられ、回転駆動する第3駆動ローラと、前記第3駆動ローラに前記第1ニップ圧より大きい第3ニップ圧で圧接して回転する第3従動ローラとにより前記第2搬送手段により搬送された用紙を前記第1搬送速度より速い第2搬送速度で搬送する第3搬送手段と、を備え、
前記第2従動ローラは、
前記搬送路の湾曲内側方向に伸縮自在な伸縮手段により前記搬送路の湾曲内側で支持されている
ことを特徴とする印刷装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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