説明

印刷装置

【課題】確実で安全な装着検出ができる印刷装置等を提供すること。
【解決手段】印刷装置は、第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2と、第1、第2の装着検出端子DT1、DT2とを有する印刷材収容体と、第1の装着検出端子DT1に高電圧を印加するための高電圧電源442と、第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2の少なくとも一方と、第1、第2の装着検出端子DT1、DT2の少なくとも一方との間の短絡を、検出ノードNDの電圧と参照電圧との比較に基づいて検出する短絡検出部310と、短絡検出部310が短絡を検出した場合に、高電圧電源442からの高電圧の供給を遮断する高電圧印加制御部320と、高電圧電源と第1の装着検出端子DT1との間に設けられる抵抗素子RAと、短絡検出部310の検出ノードNDと低電位側電源ノードVSSとの間に設けられる静電容量素子CAとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷材収容体(インクカートリッジ等)の種類、印刷材収容体の装着の有無等を検出する検出回路を有する印刷装置において、検出回路と、印刷装置の他の回路との短絡による印刷材収容体及び印刷装置の不具合を防止又は抑制する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
また、残量容量表示機能付き充電式二次電池パックの短絡保護回路は、例えば、特許文献2に記載されている。
【0004】
しかしながらこれらの手法では、短絡の有無を判定する判定回路の精度を上げることが難しいこと、短絡の発生が検出されてから保護回路が動作する間に、短時間であっても短絡による電流が流れて他の回路が破壊される危険性があることなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許公報第4539654号
【特許文献2】特開平5−299123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、確実で安全な装着検出ができる印刷装置等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、第1の短絡検出端子と、第2の短絡検出端子と、第1の装着検出端子と、第2の装着検出端子とを有する印刷材収容体と、前記第1の装着検出端子に高電圧を印加するための高電圧電源と、前記第1の短絡検出端子及び前記第2の短絡検出端子の少なくとも一方と、前記第1の装着検出端子及び前記第2の装着検出端子の少なくとも一方との間の短絡を、検出ノードの電圧と参照電圧との比較に基づいて検出する短絡検出部と、前記短絡検出部が短絡を検出した場合に、前記高電圧電源からの高電圧の供給を遮断する高電圧印加制御部と、前記高電圧電源と前記第1の装着検出端子との間に設けられる抵抗素子と、前記短絡検出部の前記検出ノードと低電位側電源ノードとの間に設けられる静電容量素子とを含み、前記短絡が検出される場合に、前記第1の装着検出端子に前記高電圧が印加されてから、前記短絡検出部の前記検出ノードの電圧が所定の電圧になるまでの時間が、前記抵抗素子の抵抗値と前記静電容量素子の容量値とに基づいて設定される印刷装置に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、印刷材収容体の装着を検出する際に、短絡検出部が端子間の短絡の有無を検出することができる。そして短絡を検出した場合には、高電圧印加制御部が高電圧の供給を遮断することができる。さらに抵抗素子と静電容量素子とを設けることで、検出ノードの電圧が所定の電圧になるまでの時間を長くすることができるから、例えば記憶装置など他の回路を破壊するおそれのある高電圧が印加される前に高電圧の供給を遮断することができる。その結果、確実で安全な装着検出が可能であって、信頼性の高い印刷装置を実現することなどができる。
【0009】
また本発明の一態様では、集積回路装置を含み、前記短絡検出部及び前記高電圧印加制御部は、前記集積回路装置に設けられ、前記抵抗素子は、前記高電圧電源と前記集積回路装置との間に設けられ、前記高電圧電源に対する過電流保護用抵抗素子であってもよい。
【0010】
このようにすれば、集積回路装置の内部において過剰な電流が発生した場合に、抵抗素子が高電圧電源に対する過電流保護用抵抗素子として機能することができるから、過剰電流によって高電圧電源が破壊されること、或いは不具合が生じることなどを防止できる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記抵抗素子は、前記集積回路装置に含まれる高電圧電源ノードと前記低電位側電源ノードとの短絡を検出する短絡検出用抵抗素子であってもよい。
【0012】
このようにすれば、集積回路装置において高電圧電源ノードと低電位側電源ノードとの短絡が発生した場合に、抵抗素子を流れる電流が急激に増加して電圧降下が生じる。この電圧降下を検出することで、集積回路装置の内部での短絡を検出することができる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記印刷材収容体は、前記第1の装着検出端子と前記第2の装着検出端子との間に設けられる装着検出用抵抗素子を含み、前記集積回路装置は、前記印刷材収容体の装着を検出する装着検出部を含み、前記装着検出部は、前記高電圧電源から供給される前記高電圧に基づいて生成される基準電圧と、前記装着検出用抵抗素子を流れる電流とに基づいて、前記印刷材収容体の装着を検出してもよい。
【0014】
このようにすれば、印刷材収容体の装着・非装着の2つの状態に対応して、装着検出部に流入する電流の電流値は互いに異なる値をとる。装着検出部は、この電流値の差を検出することで、装着・非装着を判別することができる。さらに高電圧電源から供給される高電圧に基づいて生成される基準電圧を用いることで、電流値の差を精度良く検出することができるから、確実な装着検出などが可能になる。
【0015】
また本発明の一態様では、複数の前記印刷材収容体を含み、前記複数の印刷材収容体の各印刷材収容体の前記第1の短絡検出端子及び前記第2の短絡検出端子は、複数のダイオード素子を介して1つの前記短絡検出部の前記検出ノードに接続されてもよい。
【0016】
このようにすれば、第1、第2の短絡検出端子から検出ノードに向かってダイオードの順方向電流が流れるから、複数の印刷材収容体を含む印刷装置において、各印刷材収容体における端子間の短絡により生じた電流を、各ダイオードを介して短絡検出部の検出ノードに集めることができる。
【0017】
また本発明の一態様では、前記印刷材収容体は、記憶装置を含み、前記参照電圧は、前記短絡が生じた場合に、前記記憶装置が破壊されない電圧値に設定されてもよい。
【0018】
このようにすれば、検出ノードの電圧が、記憶装置が破壊されるおそれのある電圧値よりも低い電圧値に到達した時に、短絡検出部により短絡が検出される。その結果、高電圧が印加されることにより記憶装置など他の回路が破壊されることなどを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】印刷装置の構成例を示す斜視図。
【図2】図2(A)、図2(B)は、印刷材収容体の外観を示す斜視図。
【図3】図3(A)、図3(B)は、基板の構成例。
【図4】印刷装置の電気的構成の基本的な構成例。
【図5】複数の印刷材収容体を含む場合の構成例。
【図6】短絡検出部及び高電圧印加制御部の詳細な構成例。
【図7】抵抗素子及び静電容量素子の効果を説明する図。
【図8】図8(A)、図8(B)は、カートリッジの装着検出の手法を説明する図。
【図9】装着検出部の詳細な構成例。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0021】
1.印刷装置
図1は、本実施形態における印刷装置の構成例を示す斜視図である。印刷装置1000は、インクカートリッジ(印刷材収容体)が装着されるカートリッジ装着部1100と、回動自在なカバー1200と、操作部1300とを有する。カートリッジ装着部1100を「カートリッジホルダー」又は単に「ホルダー」とも呼ぶ。図1に示す例では、カートリッジ装着部1100には、4つのインクカートリッジが独立に装着可能であり、例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4種類のインクカートリッジ(印刷材収容体)100が装着される。カバー1200は省略可能である。操作部1300は、ユーザーが各種の指示や設定を行うための入力装置であり、また、ユーザーに各種の通知を行うための表示部を備えている。
【0022】
図2(A)、図2(B)は、印刷材収容体(インクカートリッジ)100の外観を示す斜視図である。図2(A)、図2(B)におけるXYZ軸は、図1のXYZ軸に対応している。なお、インクカートリッジを単に「カートリッジ」とも呼ぶ。このカートリッジ100は、扁平な略直方体の外観形状を有しており、3方向の寸法L1、L2、L3のうちで、長さL1(挿入方向のサイズ)が最も大きく、幅L2が最も小さく、高さL3が長さL1と幅L2の中間である。
【0023】
カートリッジ100は、先端面(第1の面)Sfと、後端面(第2の面)Srと、天井面(第3の面)Stと、底面(第4の面)Sbと、2つの側面(第5及び第6の面)Sc、Sdとを備えている。カートリッジ100の内部には、可撓性材料で形成されたインク収容室120(「インク収容袋」とも呼ぶ)が設けられている。先端面Sfは、2つの位置決め穴131,132と、インク供給口110とを有している。天井面stには、回路基板200が設けられている。回路基板200には、インクに関する情報を格納するための不揮発性の記憶素子が搭載されている。第1の側面Scと第2の側面Sdは互いに対向しており、また、先端面Sf、天井面St、後端面Sr、及び、底面Sbと直交する。第2の側面Sdと先端面Sfが交わる位置には、凹凸嵌合部134が配置されている。
【0024】
図3(A)は、本実施形態における基板200の構成を示している。基板200の表面は、カートリッジ100に基板200が装着されたときに外側に露出している面である。図3(B)は、基板200の側面から見た図を示している。基板200の上端部には、ボス溝201が形成され、基板200の下端部には、ボス穴202が形成されている。
【0025】
図3(A)における矢印SDは、カートリッジ装着部1100へのカートリッジ100の装着方向を示している。この装着方向SDは、図2に示すカートリッジの装着方向(X方向)と一致する。基板200は、裏面に記憶装置203を有しており、表面には9つの端子からなる端子群が設けられている。記憶装置203は、カートリッジ100のインクに関する情報(例えばインク残量)を格納する。これらの端子は、略矩形状に形成され、装着方向SDと略垂直な列を2列形成するように配置されている。
【0026】
2つの列のうち、装着方向SDの手前側の例(図3(A)における上側に位置する列)を上側列A1(第1列)と呼び、装着方向SDの奥側の列(図3(A)における下側に位置する列)を下側列A2(第2列)と呼ぶ。なお、これらの列A1、A2は、複数の端子の接触部cpによって形成される列であると考えることも可能である。
【0027】
上側列A1を形成する端子CO1、RST、SCK、CO2と、下側列A2を形成する端子DT1、VDD、VSS、SDA、DT2は、それぞれ以下の機能(用途)を有する。
<上側列A1>
(1)第1の短絡検出端子CO1
(2)リセット端子RST
(3)クロック端子SCK
(4)第2の短絡検出端子CO2
<下側列A2>
(5)第1の装着検出端子DT1
(6)電源端子VDD
(7)接地端子VSS
(8)データ端子SDA
(9)第2の装着検出端子DT2
第1、第2の装着検出端子DT1、DT2は、後述するように、印刷材収容体(インクカートリッジ)100がカートリッジ装着部1100に正しく装着されているか否かを検出する際に使用される。また、第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2は、第1、第2の装着検出端子DT1、DT2との短絡を検出する際に使用されるものである。他の5つの端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAは、記憶装置203用の端子であり、「メモリー端子」とも呼ぶ。
【0028】
各端子は、その中央部に、複数の装置側端子のうちの対応する端子と接触する接触部cpを含んでいる。上側列A1を形成する端子の各接触部cpと、下側列A2を形成する端子の各接触部cpは、互い違いに配置され、いわゆる千鳥状の配置を構成している。また、上側列A1を形成する端子と、下側列A2を形成する端子も、互いの端子中心が装着方向SDに並ばないように、互い違いに配置され、千鳥状の配置を構成している。
【0029】
上側列A1の第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2の各接触部は、上側列A1の両端部、すなわち、上側列A1の最も外側にそれぞれ配置されている。また、下側列A2の第1、第2の装着検出端子DT1、DT2の各接触部は、下側列A2の両端部、すなわち、下側列A2の最も外側に配置されている。メモリー端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAの接触部は、9つの端子の全体が配置されている領域内の略中央に集合して配置されている。また、第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2及び第1、第2の装着検出端子DT1、DT2の接触部は、メモリー端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAの集合の四隅に配置されている。
【0030】
図4に、本実施形態における印刷装置の電気的構成の基本的な構成例を示す。本構成例の印刷装置1000は、印刷材収容体100、集積回路装置300、主制御部400、低電圧電源441、高電圧電源442、表示部430、抵抗素子RA及び静電容量素子CAを含む。集積回路装置300は、短絡検出部310、高電圧印加制御部320、装着検出部330、CO(カートリッジアウト)検出部340及び制御部350を含む。なお、本実施形態の印刷装置は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えば、CO検出部340を省略することができる。
【0031】
主制御部400は、CPU410と、メモリー420とを含み、集積回路装置300との間でバスBUSを介して必要な通信を行う。
【0032】
表示部430は、ユーザーに印刷装置1000の動作状態やカートリッジの装着状態などの各種の通知を行うためのものである。表示部430は、例えば、図1の操作部1300に設けられる。
【0033】
低電圧電源441は、低電圧電源電圧(第1の電源電圧)VDDを生成する。第1の電源電圧VDDは、ロジック回路に用いられる通常の電源電圧(定格3.3V)である。高電圧電源442は、第1の装着検出端子DT1に高電圧を印加するための電源であって、高電圧電源電圧(第2の電源電圧)VHVを生成する。第2の電源電圧VHVは、印刷ヘッドを駆動してインクを吐出させるために用いられる高い電圧(例えば定格42V)である。これらの電圧VDD、VHVは、集積回路装置300に供給され、また、必要に応じて他の回路にも供給される。具体的には、例えば高電圧電源電圧VHVは、高電圧電源442から抵抗素子RAを介して集積回路装置300の高電圧印加制御部320に供給され、高電圧印加制御部320から出力される高電圧出力電圧VHOが印刷材収容体100の第1の装着検出端子DT1及び装着検出部330に供給される。
【0034】
カートリッジの基板200(図3)に設けられた9つの端子のうち、リセット端子RSTと、クロック端子SCKと、電源端子VDDと、接地端子VSSと、データ端子SDAは、記憶装置203に電気的に接続されている。記憶装置203は、アドレス端子を持たず、クロック端子SCKから入力されるクロック信号のパルス数と、データ端子SDAから入力されるコマンドデータとに基づいてアクセスするメモリセルが決定され、クロック信号に同期して、データ端子SDAよりデータを受信し、もしくは、データ端子SDAからデータを送信する不揮発性メモリーである。クロック端子SCKは、制御部350から記憶装置203にクロック信号を供給するために用いられる。
【0035】
電源端子VDDと接地端子VSSには、印刷装置1000からの記憶装置を駆動するための電源電圧(例えば3.3V)と接地電圧(0V)がそれぞれ供給されている。この記憶装置203を駆動するための電源電圧は、第1の電源電圧VDDから直接与えられる電圧か、第1の電源電圧VDDから生成されるもので第1の電源電圧VDDよりも低い電圧でもよい。
【0036】
データ端子SDAは、制御部350と記憶装置203との間で、データ信号をやり取りするために用いられる。リセット端子RSTは、制御部350から記憶装置203にリセット信号を供給するために用いられる。
【0037】
第1、第2の装着検出端子DT1、DT2は、印刷材収容体(インクカートリッジ)100がカートリッジ装着部1100に正しく装着されているか否かを検出する際に使用される。第1の装着検出端子DT1と第2の装着検出端子DT2との間には、装着検出用抵抗素子RDが設けられる。装着検出部330は、高電圧電源442から供給される高電圧(具体的には高電圧出力電圧VHO)に基づいて生成される基準電圧と、装着検出用抵抗素子RDを流れる電流とに基づいて、印刷材収容体100の装着を検出する。具体的には、高電圧印加制御部320から出力される高電圧出力電圧VHOが第1の装着検出端子DT1に印加されることで、装着検出用抵抗素子RDに電圧が印加されて電流が流れ、この電流を装着検出部330が検出することで、装着を検出する。この装着検出の方法については、後で詳細に説明する。
【0038】
第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2は、印刷材収容体100(具体的には、基板200)の内部で、例えば電気的に接続されている。CO検出部340は、後述するように、CO1とCO2との間の電気的導通を検出することで、CO1及びCO2がカートリッジ装着部1100の対応する端子にそれぞれ電気的に接触しているか否か、即ち、印刷材収容体100が正しく装着されているか否かを検出することができる。もっとも、本実施形態の印刷装置では、第1、第2の装着検出端子DT1、DT2及び装着検出部330が設けられており、これらを用いることで印刷材収容体100の装着を検出することができるから、CO検出部340を省略することができる。CO検出部340を省略した場合、或いはCO検出部340を用いた装着検出(カートリッジアウト検出)を実行しない場合には、CO1とCO2とを電気的に接続しなくてもよい。
【0039】
第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2と検出ノードNDとの間にダイオードD1、D2が設けられているが、CO検出(カートリッジアウト検出)を行わない場合には、ダイオードを介さずに、CO1、CO2を検出ノードNDに直接接続してもよい。
【0040】
短絡検出部310は、第1の短絡検出端子CO1及び第2の短絡検出端子CO2の少なくとも一方と、第1の装着検出端子DT1及び第2の装着検出端子DT2の少なくとも一方との間の短絡を、検出ノードNDの電圧と参照電圧との比較に基づいて検出する。即ち、検出ノードNDの電圧が参照電圧より高くなる場合に、短絡を検出する。短絡検出部310は、短絡を検出すると、制御部350に対して短絡検出信号VSHTを出力する。
【0041】
高電圧印加制御部320は、制御部350からの制御信号VCNTに基づいて、高電圧電源442からの高電圧VHVの供給を遮断する。ここで、参照電圧は、上記の短絡が生じた場合に、記憶装置203(或いは、CO検出部340などの回路)が破壊されない電圧値に設定される。こうすることで、短絡検出部310は、検出ノードNDの電圧が記憶装置203などの回路を破壊する電圧値に到達する前に、短絡を検出することができる。
【0042】
制御部350は、記憶装置203に対するデータの書き込み又は読み出しの制御を行い、また装着検出、CO検出、短絡検出、高電圧の遮断などに必要な制御を行う。制御部350は、例えばCMOSトランジスターなどで構成されるロジック回路で実現することができる。制御部350は、短絡検出信号VSHTに基づいて、高電圧印加制御部320に対して高電圧VHVの供給を遮断するための制御信号VCNTを出力する。
【0043】
先に図3(A)に示したように、第1の短絡検出端子CO1と第1の装着検出端子DT1とは隣り合っており、第2の短絡検出端子CO2と第2の装着検出端子DT2とは隣り合っている。そのために、例えば導電性のインク等が基板200の端子側に付着することで、隣り合っている2つの端子CO1とDT1、或いはCO2とDT2が導電性のインク等によって短絡(リーク)する可能性がある。また、第1の装着検出端子DT1と電源端子VDDとが短絡したり、第2の装着検出端子DT2とデータ端子SDAとが短絡したりする可能性もある。
【0044】
上述したように、装着検出部330による装着検出時には、高電圧VHOが第1の装着検出端子DT1に印加される。従って、導電性インク等により第1、第2の装着検出端子DT1、DT2と第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2とが短絡(リーク)している場合には、装着検出時にCO検出部340に高電圧が印加されるおそれがある。また、第1、第2の装着検出端子DT1、DT2と電源端子VDD又はデータ端子SDAとが短絡している場合には、記憶装置203に高電圧が印加されるおそれがある。
【0045】
本実施形態の印刷装置によれば、短絡検出部310が端子間の短絡を検出し、短絡が検出された場合には、高電圧印加制御部320が高電圧電源442からの高電圧VHVの供給を遮断することができる。
【0046】
具体的には、例えば図4のB1に示すように、DT1とCO1とが短絡している場合には、DT1からCO1へ、そしてCO1から検出ノードNDへダイオードD1の順方向電流が流れ、その結果、検出ノードNDの電位が上昇する。また、図4のB2に示すように、DT2とCO2とが短絡している場合には、DT2からCO2へ、そしてCO2から検出ノードNDへダイオードD2の順方向電流が流れ、その結果、検出ノードNDの電位が上昇する。短絡検出部310は、この検出ノードNDの電圧と参照電圧とを比較することで、短絡を検出することができる。なお、以下の説明において、特に断りがない限り、DT1とCO1との短絡及びDT2とCO2との短絡を単に「短絡」、或いは「端子間の短絡」と呼ぶ。
【0047】
抵抗素子RAは、高電圧電源442と第1の装着検出端子DT1との間に設けられる。具体的には、例えば高電圧電源442と集積回路装置300との間に設けられる。また、静電容量素子(キャパシター)CAは、短絡検出部310の検出ノードNDと低電位側電源ノード(接地ノード)VSSとの間に設けられる。こうすることで、短絡が検出される場合に、第1の装着検出端子DT1に高電圧(高電圧出力電圧VHO)が印加されてから、短絡検出部310の検出ノードNDの電圧が所定の電圧になるまでの時間が、抵抗素子RAの抵抗値と静電容量素子CAの容量値(キャパシタンス値)とに基づいて設定される。ここで所定の電圧とは、例えば上記の参照電圧より高く、且つ、記憶装置203などが破壊されない電圧値である。
【0048】
抵抗素子RAと静電容量素子(キャパシター)CAとを設けることで、検出ノードNDの電位の上昇を緩やかにすることができる。具体的には、第1の装着検出端子DT1に高電圧(高電圧出力電圧VHO)が印加されてから、検出ノードNDの電圧(VSSを基準電位とする電圧)が所定の電圧になるまでの時間は、抵抗素子RAの抵抗値と静電容量素子CAの容量値との積が大きいほど、長くなる。後述するように、検出ノードNDの電圧の上昇を緩やかにすることで、端子に印加される電圧が記憶装置203などの回路が破壊される電圧に到達する前に、高電圧VHVの供給を遮断することができる。
【0049】
本実施形態の印刷装置によれば、短絡検出部310が端子間の短絡を検出し、短絡が検出された場合には、高電圧印加制御部320が高電圧電源442からの高電圧VHVの供給を遮断することができる。さらに抵抗素子RAと静電容量素子CAとを設けることで、電圧の上昇を緩やかにすることができる。こうすることで、CO検出部340や記憶装置203などの回路を破壊するおそれのある高電圧が印加される前に、高電圧VHVの供給を遮断することができる。その結果、確実で安全な装着検出が可能であって、信頼性の高い印刷装置を実現することができる。
【0050】
抵抗素子RAは、高電圧電源442と集積回路装置300との間に設けられてもよく、このようにすることで、高電圧電源442に対する過電流保護用抵抗素子として機能することができる。また抵抗素子RAは、集積回路装置300に含まれる高電圧電源ノードと低電位側電源ノードとの短絡を検出する短絡検出用抵抗素子としても機能することができる。即ち、集積回路装置300の内部で何らかの原因により高電圧電源ノードと低電位側電源ノードとの短絡が発生した場合に、抵抗素子RAを流れる電流が急激に増加し、これによって集積回路装置300に入力する高電圧VHVの電圧が急激に降下する。この電圧降下を検出することで、集積回路装置300内部での短絡を検出することができる。なお、この電圧降下を検出するための回路は、図示していないが、例えばコンパレーターなどを用いて構成することができる。
【0051】
図5に、本実施形態の印刷装置において複数の印刷材収容体を含む場合の構成例を示す。図5に示される印刷装置1000の構成例は、4個の印刷材収容体(インクカートリッジ)100(IC1〜IC4)を含む。なお、印刷材収容体の個数は4個に限定されるものではなく、2個、3個、或いは5個以上であってもよい。
【0052】
各印刷材収容体IC1〜IC4は、図4に示したものと同様な構成であるから、詳細な説明を省略する。また、集積回路装置300の構成も、図4に示したものと同様である。但し、図5では、説明の便宜上、CO検出部340を、CO検出部(出力側)340aとCO検出部(入力側)340bとに分けて示してある。
【0053】
印刷装置が複数の印刷材収容体を含む場合には、複数の印刷材収容体(例えばIC1〜IC4)の各印刷材収容体の第1の短絡検出端子CO1及び第2の短絡検出端子CO2は、複数のダイオード素子(例えばD1〜D5)を介して1つの短絡検出部310の検出ノードNDに接続される。具体的には、例えば図5では、IC1のCO1はダイオードD1を介して、またIC1のCO2とIC2のCO1はダイオードD2を介して、またIC2のCO2とIC3のCO1はダイオードD3を介して、それぞれ検出ノードNDに接続される。各ダイオードのカソード(負極)が検出ノードNDに接続される。このようにすることで、CO検出部340によるカートリッジアウト検出に支障を与えることなく、短絡検出部310が短絡検出を行うことができる。
【0054】
短絡検出の手法は、図4で説明したものと同様である。短絡検出部310は、検出ノードNDの電圧と参照電圧との比較に基づいて検出する。即ち、検出ノードNDの電圧が参照電圧より高くなる場合に、短絡を検出する。そして高電圧印加制御部320は、短絡検出部310が短絡を検出した場合に、高電圧電源442からの高電圧VHVの供給を遮断する。
【0055】
抵抗素子RB1〜RB4は、装着検出部330による装着検出に用いられるものであって、それぞれ互いに異なる抵抗値を有する。こうすることで、印刷材収容体IC1〜IC4のうちの、どの印刷材収容体が非装着であるかを検出することができる。この装着検出の手法については、後で詳細に説明する。
【0056】
CO検出部340(340a、340b)によるカートリッジアウト検出は、次のように行われる。4個のインクカートリッジが全て装着されている場合には、図5に示すように、IC1の第1の短絡検出端子CO1からIC4の第2の短絡検出端子CO2まで電気的に導通状態となる。従って、CO検出部(出力側)340aから出力された信号DPinsは、CO検出部(入力側)340bにより信号DPresとして検出される。一方、4個のインクカートリッジのうち、いずれか1個でも非装着の場合には、電気的に非導通であるから、CO検出部(入力側)340bは信号DPresを検出しない。このように、CO検出部(入力側)340bが信号DPresを検出するか否かによって、カートリッジアウトを検出することができる。
【0057】
2.回路の詳細な構成例
図6に、短絡検出部310及び高電圧印加制御部320の詳細な構成例を示す。短絡検出部310は、コンパレーターCMP及び抵抗素子RSを含む。また、高電圧印加制御部320は、P型トランジスターTPを含む。なお、本実施形態の短絡検出部310及び高電圧印加制御部320は図6の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0058】
上述したように、短絡が発生している場合には、装着検出の際に検出ノードNDには、接地電圧(低電位側電源電圧)VSS(例えば0V)より高い電圧が生じる。検出ノードNDの電圧は、コンパレーターCMPの一方の入力端子(+)に印加される。また、コンパレーターCMPの他方の入力端子(−)には、参照電圧VREFが印加される。
【0059】
コンパレーターCMPは、入力端子(+)の電圧が参照電圧VREFより低い場合には、短絡検出信号VSHTとしてLレベル(低電位レベル)を出力し、入力端子(+)の電圧が参照電圧VREFより高い場合には、短絡検出信号VSHTとしてHレベル(高電位レベル)を出力する。従って、短絡が発生している場合には、検出ノードNDの電圧が参照電圧VREFより高くなることで、短絡検出信号VSHTはHレベルに設定される。参照電圧VREFは、短絡が生じた場合に、記憶装置203などが破壊されない電圧値に設定される。
【0060】
制御部350は、短絡検出部310が短絡を検出した場合、即ち短絡検出信号VSHTがLレベルからHレベルに変化した場合に、制御信号VCNTをLレベルからHレベルに変化させる。
【0061】
P型トランジスターTPは、ソースが高電圧電源ノードVHVに接続され、ゲートには制御部350からの制御信号VCNTが入力する。制御信号VCNTがLレベルの場合にはトランジスターTPがオン状態であるから、ドレインから高電圧VHOが出力される。一方、制御信号VCNTがHレベルの場合、即ち短絡が検出された場合にはトランジスターTPがオフ状態になるから、高電圧の供給が遮断される。従って、短絡検出部310が短絡を検出した場合には、制御部350からの制御信号VCNTがHレベルに設定され、トランジスターTPがオフ状態になり、その結果、高電圧出力VHOは遮断される。
【0062】
高電圧出力VHOが遮断されると、印刷材収容体100の第1の装着検出端子DT1には高電圧が印加されなくなるから、検出ノードNDの電圧はLレベルに降下する。この場合には、短絡検出信号VSHTは再びLレベルに変化するが、制御部350は制御信号VCNTをHレベルに保持し続ける。このようにすることで、端子間の短絡が発生した場合に、短絡を検出して、高電圧の供給を遮断することができる。
【0063】
図7は、抵抗素子RA及び静電容量素子CAの効果を説明する図である。図7には、装着検出の際に短絡が発生している場合の、検出ノードNDの電圧V(ND)の時間的変化を示している。実線は、抵抗素子RAの抵抗値と静電容量素子CAの容量値との積(時定数)が大きい場合を示し、破線はその積が小さい場合を示す。
【0064】
高電圧VHOが印加されると、図7に示すように、検出ノードNDの電圧V(ND)が上昇していく。この電圧上昇は、時定数が大きいほど緩やかであり、逆に時定数が小さいほど急峻になる。V(ND)が参照電圧VREFを越えるタイミングで、短絡検出部310は短絡を検出する。例えば図7では、時定数が大きい場合(実線)にはt1で、時定数が小さい場合(破線)にはt3で、短絡検出部310が短絡を検出する。
【0065】
短絡検出部310が短絡を検出してから、高電圧印加制御部320が高電圧VHOを遮断するまでには、一定の時間(遅延時間)TDを要する。例えば図7に示すように、時定数が大きい場合(実線)にはt2で高電圧VHOが遮断され、この時にはV(ND)は電圧値V1まで上昇している。一方、時定数が小さい場合(破線)にはt4で高電圧VHOが遮断され、この時にはV(ND)は電圧値V3(V3>V1)まで上昇している。このように、時定数を大きく設定することで、高電圧VHOが遮断されるまでに到達する電圧値を低くすることができる。
【0066】
例えば図7に示すように、V(ND)が電圧値V2を越えた場合に記憶装置203などが破壊されるおそれがある場合には、上記の時定数を調整することで、高電圧VHOが遮断されるまでに到達する電圧値をV2より低い値に設定することができる。なお、具体的には、抵抗素子RAの抵抗値及び静電容量素子CAの容量値は、回路シミュレーション等により、装着検出に支障を与えない範囲で望ましい値に設定することができる。
【0067】
図8(A)、図8(B)は、本実施形態の印刷装置におけるカートリッジ(印刷材収容体)の装着検出の手法を説明する図である。図8(A)では、印刷装置のカートリッジ装着部1100に装着可能なカートリッジIC1〜IC4が全て装着された状態を示している。4つのカートリッジIC1〜IC4の装着検出用抵抗素子RDの抵抗値は、同一の値Rに設定されている。各カートリッジの装着検出用抵抗素子RDとそれぞれ直列接続される抵抗素子RB1〜RB4が設けられている。これらの抵抗素子RB1〜RB4の抵抗値は、互いに異なる値に設定されている。具体的には、これらの抵抗素子RB1〜RB4のうち、n番目(n=1〜4)のカートリッジICnに対応づけられた抵抗素子RBnの抵抗値は、(2−1)R(Rは一定値)に設定されている。この結果、n番目のカートリッジ内の装着検出用抵抗素子RDと、抵抗素子RBnとの直列接続によって、2Rの抵抗値を有する抵抗が形成される。n番目(n=1〜N)のカートリッジに対する2Rの抵抗は、装着検出部330に対して互いに並列に接続される。なお、以下では、装着検出用抵抗素子RDと抵抗素子RB1〜RB4との直列接続により形成される合成抵抗701〜704を単に「抵抗」とも呼ぶ。
【0068】
装着検出部330で検出される検出電流IDETは、装着検出部330のバイアス電圧をVREFとすると、これらの4つの抵抗701〜704の合成抵抗値Rcで電圧(VHO−VREF)を除した値(VHO−VREF)/Rcである。ここで、カートリッジの個数をNとしたとき、N個のカートリッジが全て装着されている場合には、検出電流IDETは以下の式で与えられる。
【0069】
【数1】

【0070】
【数2】

【0071】
1つ以上のカートリッジが未装着であれば、これに応じて合成抵抗値Rcが上昇し、検出電流IDETは低下する。
【0072】
図8(B)は、カートリッジIC1〜IC4の装着状態と、検出電流IDETとの関係を示している。図の横軸は、16種類の装着状態を示しており、縦軸はこれらの装着状態における検出電流IDETの値を示している。16種類の装着状態は、4つのカートリッジIC1〜IC4から任意に1〜4個を選択することによって得られる16個の組み合わせに対応している。なお、これらの個々の組み合わせを「サブセット」とも呼ぶ。検出電流IDETは、これらの16種類の装着状態を一意に識別可能な電流値となる。換言すれば、4つのカートリッジIC1〜IC4に対応づけられた4つの抵抗701〜704の個々の抵抗値は、4つのカートリッジが取り得る16種類の装着状態が、互いに異なる合成抵抗値Rcを与えるように設定されている。
【0073】
4つのカートリッジIC1〜IC4が全て装着状態にあれば、検出電流IDETはその最大値Imaxとなる。一方、最も抵抗値の大きな抵抗704に対応づけられたカートリッジIC4のみが未装着の状態では、検出電流IDETは最大値Imaxの0.93倍となる。従って、検出電流IDETが、これらの2つの電流値の間の値として予め設定されたしきい値電流Ithmax以上であるか否かを調べれば、4つのカートリッジIC1〜IC4が全て装着されているか否かを検出することが可能である。なお、装着検出のために、通常のロジック回路の電源電圧(約3.3V)よりも高い電圧VHOを使用する理由は、検出電流IDETのダイナミックレンジを広くとることによって、検出精度を高めるためである。
【0074】
装着検出部330は、検出電流IDETをデジタル検出信号SIDETに変換して、CPU410(図4)にそのデジタル検出信号SIDETを送信する。CPU410は、このデジタル検出信号SIDETの値から、16種類の装着状態のいずれであるかを判定することが可能である。1つ以上のカートリッジが未装着であると判定された場合には、CPU410は、表示部430にその未装着状態を示す情報(文字や画像)を表示してユーザーに通知する。
【0075】
上述したカートリッジの装着検出処理は、N個のカートリッジに関する2種類の装着状態に応じて合成抵抗値Rcが一意に決まり、これに応じて検出電流IDETが一意に決まることを利用している。ここで、抵抗701〜704の抵抗値の許容誤差をεと仮定する。また、全カートリッジIC1〜IC4が装着された状態の第1の合成抵抗値をRc1とし、4番目のカートリッジIC4のみが非装着である状態の第2の合成抵抗値をRc2とすると、Rc1<Rc2が成立する(図8(B))。この関係Rc1<Rc2は、各抵抗701〜704の抵抗値が許容誤差±εの範囲内で変動する場合にも成立することが好ましい。このとき、最悪条件は、許容誤差±εを考慮した場合に、第1の合成抵抗値Rc1がその最大値Rc1maxを取り、第2の合成抵抗値Rc2がその最小値Rc2minを取る場合である。これらの合成抵抗値Rc1max、Rc2minを識別できるようにするためには、Rc1max<Rc2minという条件が満足されていれば良い。この条件Rc1max<Rc2minから、以下の式が導かれる。
【0076】
【数3】

【0077】
すなわち、許容誤差±εが(3)式を満足すれば、常にN個のカートリッジの装着状態に応じて合成抵抗値Rcが一意に決まり、これに応じて検出電流IDETが一意に決まることを保証することができる。但し、実際の設計上の抵抗値の許容誤差は、(3)式の右辺の値よりも小さな値に設定することが好ましい。また、上述のような検討を行わずに、抵抗701〜704の抵抗値の許容誤差を十分に小さな値(例えば1%以下の値)に設定するようにしてもよい。
【0078】
図9は、本実施形態の印刷装置の装着検出部330の詳細な構成例である。装着検出部330は、電流−電圧変換部710と、電圧比較部720と、比較結果記億部730と、電圧補正部740とを含む。なお、本実施形態の装着検出部330は図9の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0079】
電流−電圧変換部710は、オペアンプ712と帰還抵抗R11とで構成される反転増幅回路である。オペアンプ712の出力電圧VDETは、以下の式で与えられる。
【0080】
【数4】

【0081】
ここで、VHOは高電圧印加制御部320(図4)の出力電圧、Rcは4つの抵抗701〜704(図8(A))の合成抵抗である。この出力電圧VDETは、検出電流IDETに対応する電圧値を有する。
【0082】
なお、(4)式で与えられる電圧VDETは、検出電流IDETによる電圧(IDET・R11)を反転した値を示す。そこで、電流−電圧変換部710に反転増幅器を追加し、この追加の反転増幅器で電圧VDETを反転した電圧を、電流−電圧変換部710の出力電圧として出力してもよい。この追加の反転増幅器の増幅率の絶対値は、1とすることが好ましい。
【0083】
電圧比較部720は、しきい値電圧生成部722とコンパレーター724(オペアンプ)と切換制御部726とを有している。しきい値電圧生成部722は、参照電圧VREFを複数の抵抗R1〜Rmで分圧して得られる複数のしきい値電圧Vth(j)の一つを、切換スイッチ723で選択して出力する。これらの複数のしきい値電圧Vth(j)は、図8(B)に示した16種類の装着状態における検出電流IDETの値を識別するしきい値に相当する。コンパレーター724は、電流−電圧変換部710の出力電圧VDETと、しきい値電圧生成部722から出力されるしきい値電圧Vth(j)とを比較して、2値の比較結果を出力する。
【0084】
切換制御部726は、出力電圧VDETとしきい値電圧Vth(j)との比較結果に基づいて、次にしきい値電圧生成部722から出力すべき電圧値Vth(j)を切り換える制御を行う。
【0085】
比較結果記億部730は、電圧比較部720から出力される2値の比較結果に基づいて、ビットレジスター734内の適切なビット位置にフラグを立てる(例えば1を書き込む)。この切換スイッチ732の切り換えタイミングは、切換制御部726から指定される。ビットレジスター734は、印刷装置に装着可能な個々のカートリッジの装着の有無を示すN個(ここではN=4)のカートリッジ検出ビットと、異常な電流値が検出されたことを示す異常フラグビットとを有している。異常フラグビットは、全てのカートリッジが装着されている状態での電流値Imax(図8(B))に比べて有意に大きな電流が流れている場合にHレベルとなる。但し、異常フラグビットは省略可能である。ビットレジスター734に格納された複数のビット値は、デジタル検出信号SIDET(検出電流信号)として主制御部400のCPU410(図4)に送信される。CPU410は、このデジタル検出信号SIDETのビット値から、個々のカートリッジが装着されているか否かを判定する。前述したように、デジタル検出信号SIDETの4つのビット値は、個々のカートリッジが装着されているか否かを示している。従って、CPU410は、デジタル検出信号SIDETの個々のビット値から、個々のカートリッジが装着されているか否かを直ちに判定することが可能である。
【0086】
電圧比較部720と比較結果記億部730の両者は、いわゆるA−D変換部を構成している。A−D変換部としては、図9に示した電圧比較部720と比較結果記億部730の代わりに、周知の他の種々の構成を採用することが可能である。
【0087】
電圧補正部740は、しきい値電圧生成部722で生成される複数のしきい値電圧Vth(j)を、装着検出用の高電圧VHOの変動に追従して補正するための回路である。電圧補正部740は、オペアンプ742と2つの抵抗R21、R22とを含む反転増幅回路として構成されている。オペアンプ742の反転入力端子には、入力抵抗R22を介して高電圧印加制御部320の出力電圧VHOが入力されており、非反転入力端子には参照電圧VREFが入力されている。このとき、オペアンプ742の出力電圧AGNDは以下の式で与えられる。
【0088】
【数5】

【0089】
この電圧AGNDは、しきい値電圧生成部722の低電圧側の基準電圧AGNDとして使用される。例えば、VREF=2.4V、VHO=42V、R21=20kΩ、R22=400kΩとすれば、AGND=0.42Vとなる。上述した(4)式と、(5)式とを比較すれば理解できるように、しきい値電圧生成部722の低電圧側の基準電圧AGNDは、検出電圧値VDETと同様に、高電圧印加制御部320の出力電圧VHO(すなわち高電圧電源VHV)の値に応じて変化する。これらの2つの電圧AGND、VDETの差異は、抵抗比R21/R22、R11/Rcの差から生じている。このような電圧補正部740を使用すれば、電源電圧VHVが何らかの原因で変動しても、しきい値電圧生成部722で生成される複数のしきい値電圧Vth(j)が、電源電圧VHVの変動に追従して変化する。この結果、検出電圧値VDETと複数のしきい値電圧Vth(j)の両方が、電源電圧VHVの変動に追従して変化するので、電圧比較部720において正確な装着状態を表す比較結果を得ることができる。特に、抵抗比R21/R22と抵抗比R11/Rc1(Rc1は全カートリッジ装着時の合成抵抗値)の値を等しく設定すれば、検出電圧値VDETと複数のしきい値電圧Vth(j)を、電源電圧VHVの変動に対してほぼ同じ変化幅で変化するように正確に追従させることが可能である。但し、電圧補正部740は省略してもよい。
【0090】
以上説明したように、本実施形態の印刷装置によれば、複数の印刷材収容体(インクカートリッジ)を用いる場合において、どのインクカートリッジが未装着であるかを検出することができる。さらにこの装着検出時において、インクカートリッジの端子間で短絡が発生している場合に、その短絡を検出して装着検出に用いる高電圧の供給を遮断することができる。また、さらに抵抗素子と静電容量素子とを設けることで、端子に印加される電圧の急峻な上昇を抑えることができる。その結果、端子に印加される電圧が記憶装置などの回路を破壊するおそれのある電圧値に到達する前に、高電圧の供給を遮断することができる。その結果、確実で安全な装着検出が可能であって、信頼性の高い印刷装置を実現することなどができる。
【0091】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は全て本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また印刷装置の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0092】
100 印刷材収容体、200 基板、201 ボス溝、202 ボス穴、
203 記憶装置、300 集積回路装置、310 短絡検出部、
320 高電圧印加制御部、330 装着検出部、340 CO検出部、
350 制御部、400 主制御部、410 CPU、420 メモリー、
430 表示部、441 低電圧電源、442 高電圧電源、
CO1、CO2 第1、第2の短絡検出端子、
DT1、DT2 第1、第2の装着検出端子、
ND 検出ノード、RA 抵抗素子、CA 静電容量素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の短絡検出端子と、第2の短絡検出端子と、第1の装着検出端子と、第2の装着検出端子とを有する印刷材収容体と、
前記第1の装着検出端子に高電圧を印加するための高電圧電源と、
前記第1の短絡検出端子及び前記第2の短絡検出端子の少なくとも一方と、前記第1の装着検出端子及び前記第2の装着検出端子の少なくとも一方との間の短絡を、検出ノードの電圧と参照電圧との比較に基づいて検出する短絡検出部と、
前記短絡検出部が短絡を検出した場合に、前記高電圧電源からの高電圧の供給を遮断する高電圧印加制御部と、
前記高電圧電源と前記第1の装着検出端子との間に設けられる抵抗素子と、
前記短絡検出部の前記検出ノードと低電位側電源ノードとの間に設けられる静電容量素子とを含み、
前記短絡が検出される場合に、前記第1の装着検出端子に前記高電圧が印加されてから、前記短絡検出部の前記検出ノードの電圧が所定の電圧になるまでの時間が、前記抵抗素子の抵抗値と前記静電容量素子の容量値とに基づいて設定されることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1において、
集積回路装置を含み、
前記短絡検出部及び前記高電圧印加制御部は、前記集積回路装置に設けられ、
前記抵抗素子は、
前記高電圧電源と前記集積回路装置との間に設けられ、前記高電圧電源に対する過電流保護用抵抗素子であることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記抵抗素子は、
前記集積回路装置に含まれる高電圧電源ノードと前記低電位側電源ノードとの短絡を検出する短絡検出用抵抗素子であることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記印刷材収容体は、
前記第1の装着検出端子と前記第2の装着検出端子との間に設けられる装着検出用抵抗素子を含み、
前記集積回路装置は、
前記印刷材収容体の装着を検出する装着検出部を含み、
前記装着検出部は、
前記高電圧電源から供給される前記高電圧に基づいて生成される基準電圧と、前記装着検出用抵抗素子を流れる電流とに基づいて、前記印刷材収容体の装着を検出することを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
複数の前記印刷材収容体を含み、
前記複数の印刷材収容体の各印刷材収容体の前記第1の短絡検出端子及び前記第2の短絡検出端子は、複数のダイオード素子を介して1つの前記短絡検出部の前記検出ノードに接続されることを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記印刷材収容体は、記憶装置を含み、
前記参照電圧は、前記短絡が生じた場合に、前記記憶装置が破壊されない電圧値に設定されることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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