説明

印刷装置

【課題】複数のヘッド間で制御基板からの配線路の長さが異なるような場合、各ヘッドに対して安定したデータ信号を供給できなくなる可能性がある。
【解決手段】液体を噴射するノズルを有するヘッド42が複数配置されたヘッドユニット40と、ヘッド42を駆動するデータ信号を生成する制御基板90と、制御基板90からのデータ信号をヘッドユニット40に配置された複数のヘッド42に伝達するヘッド制御基板80と、を有し、複数のヘッド42はヘッド毎に、配線経路上所定距離以内のヘッド制御基板80上にコンデンサー81が配置され、ヘッド42とコンデンサー81が電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドを有する印刷装置において、ヘッドの駆動素子に駆動電力を供給するためにコンデンサー等の蓄電素子を実装した基板を設け、この基板からヘッドに電圧を印加するものが知られている。例えば、特許文献1では、サーマルヘッド駆動回路において、直流電源によって電力保持コンデンサーを充電後、コンデンサーの放電電流によって印字駆動を行う構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−068820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ラインプリンターのようにヘッドユニットを構成する複数のヘッドが、ヘッドを駆動させるためのデータ信号の供給元である制御基板から遠く、複数のヘッド間で制御基板からの配線路の長さが異なるような場合、特許文献1の方式では、各ヘッドに対して安定したデータ信号を供給できなくなる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]液体を噴射するノズルを有するヘッドが複数配置されたヘッドユニットと、前記ヘッドを駆動するデータ信号を生成する制御基板と、前記制御基板からの前記データ信号を前記ヘッドユニットに配置された前記複数のヘッドに伝達するヘッド制御基板と、を有し、前記複数のヘッドはヘッド毎に、配線経路上所定距離以内の前記ヘッド制御基板上にコンデンサーが配置され、前記ヘッドと前記コンデンサーが電気的に接続されていることを特徴とする印刷装置。
【0007】
[適用例2]所定の電圧を生成する複数のレギュレーターが前記ヘッド制御基板に更に配置され、前記ヘッド制御基板は、複数の前記コンデンサーの一部の前記コンデンサー及び複数の前記レギュレーターの一部の前記レギュレーターを含む第1の電源回路と、複数の前記コンデンサー及び複数の前記レギュレーターのうち、前記一部の前記コンデンサー以外の前記コンデンサー及び前記一部の前記レギュレーター以外の前記レギュレーターを含む第2の電源回路と、を有することを特徴とする上記印刷装置。
【0008】
[適用例3]前記所定距離は50mmであることを特徴する上記印刷装置。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】プリンターの構成を説明するブロック図。
【図2】ヘッドユニット及びヘッド制御基板の構成を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態に係る印刷装置について、図面を参照して説明する。
【0011】
<印刷装置の構成>
図1は、本実施形態に係る印刷装置としてのプリンター1の構成を説明するブロック図である。同図に示すプリンター1は、用紙搬送機構10、キャリッジ移動機構20、駆動信号生成回路30、ヘッドユニット40、検出器群50、コントローラー60、電源生成部70等を有する。
【0012】
用紙搬送機構10は、媒体としての用紙を搬送方向に搬送させる。キャリッジ移動機構20は、ヘッドユニット40を所定方向(例えば紙幅方向)に移動させる。ヘッドユニット40が有するヘッド42は、液体の一種であるインクを用紙に向けて吐出させる。駆動信号生成回路30は、駆動信号COMを生成する。この駆動信号COMは、用紙への印刷時に使用されるものであり、吐出パルスを含む一連の信号である。
【0013】
ヘッドユニット40は、ヘッド制御部41とヘッド42とを有する。ヘッド42は、インクの吐出口となる複数のノズル(図示略)と、インクの吐出動作等をする複数のピエゾ素子(図示略)を有する。ヘッド制御部41は、ヘッド42におけるインクの吐出を制御する。例えば、ピエゾ素子への駆動パルスの印加を制御する。これにより、インクの吐出等がノズル毎に制御される。検出器群50は、プリンター1の状況を監視する複数の検出器によって構成される。これらの検出器による検出結果は、コントローラー60に出力される。
【0014】
コントローラー60は、プリンター1における全体的な制御を行う。例えば、コントローラー60は、用紙搬送機構10、キャリッジ移動機構20、駆動信号生成回路30、ヘッドユニット40等を制御する。図1に示すように、コントローラー60は、インターフェイス(I/F)部61と、CPU62と、メモリー63と、制御ユニット64とを有する。
【0015】
インターフェイス部61は、外部装置であるコンピューター2との間でデータの受け渡しを行う。CPU62は、プリンター1の全体的な制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、コンピュータープログラムを格納する領域や作業領域等として用いられるものであり、RAM、EEPROM、ROM等の記憶素子によって構成される。CPU62は、メモリー63に記憶されているコンピュータープログラムに従い、各制御対象部を制御する。例えば、CPU62は、制御ユニット64を介して用紙搬送機構10やキャリッジ移動機構20を制御する。また、CPU62は、ヘッド42の動作を制御するためのヘッド制御信号をヘッド制御部41に送信したり、駆動信号COMを生成させるための制御信号を駆動信号生成回路30に送信したりする。
【0016】
電源生成部70は、プリンター1においてヘッド駆動のために使用される電源を生成する。
【0017】
<ヘッド制御基板の構成>
図2は、ヘッドユニット40及びヘッド制御基板80の構成を説明するための図である。同図におけるヘッドユニット40は、ヘッドユニット40の下面における複数のヘッド42の配列を示している。本実施形態では、ヘッドユニット40は、10個のヘッド42(1)〜(10)を有し、各ヘッド42は紙幅方向に千鳥状に配置されている。
【0018】
各ヘッド42の下面には、イエローインクノズル列Yと、マゼンタインクノズル列Mと、シアンインクノズル列Cと、ブラックインクノズル列Kとが形成され、各ノズル列はノズルを360個(#1〜#360)ずつ備えている。そして、各ノズル列のノズルは、紙幅方向に一定の間隔360dpiで整列している。また、紙幅方向に並ぶ2つのヘッド42のうち、左側のヘッド42のノズル#360と、右側のヘッド42のノズル#1との間隔が360dpiとなるように各ヘッド42が配置されている。即ち、ヘッドユニット40では、複数のノズルが紙幅方向に一定間隔(360dpi)で並んでいることになる。
【0019】
一方、図2におけるヘッド制御基板80では、ヘッド制御基板80に実装される各種電子部品の一部を示している。本実施形態では、ヘッド制御基板80に、電圧を安定させるための10個のコンデンサー81(1)〜(10)と、2個のレギュレーターIC82(1),(2)とが実装されている。図2に示すように、各コンデンサー81は、ヘッド制御基板80の長手方向に沿って、それぞれがヘッドユニット40の各ヘッド42に対応する位置に配置されている。各コンデンサー81は、それぞれが並列に電気的に接続されており、更に、ヘッドユニット40において対応する位置に配置されている各ヘッド42と電気的に接続されている。
また、各ヘッド42と、対応する位置にある各コンデンサー81とは、配線経路上の距離が50mm以内になるように電気的に接続されている。
【0020】
また、紙幅方向の左側のコンデンサー81(1)〜(5)とレギュレーターIC82(1)とで第1の電源回路としての電源回路85(1)を構成し、右側のコンデンサー81(6)〜(10)とレギュレーターIC82(2)とで第2の電源回路としての電源回路85(2)を構成している。
【0021】
ヘッド制御基板80は、プリンター1の動作を制御する各種制御回路が実装された制御基板90と電気的に接続されている。制御基板90は、各ヘッド42を駆動するデータ信号を生成する。そして、ヘッド制御基板80は、制御基板90から供給されるデータ信号と、アダプター(図示略)から供給される電力とを受け取る。続けて、電源回路85(1),(2)におけるレギュレーターIC82(1),(2)のそれぞれが、各ヘッド42において要求される電圧を生成する。レギュレーターIC82(1)において生成された電圧はコンデンサー81(1)〜(5)に充電され、レギュレーターIC82(2)において生成された電圧はコンデンサー81(6)〜(10)に充電されて、各コンデンサー81から各ヘッド42に電圧が印加され、ヘッド制御基板80は、データ信号を各ヘッド42に伝達する。
【0022】
上記したように、本実施形態では、各ヘッド42と、対応する位置にある各コンデンサー81とが、配線経路上の距離が50mm以内になるように電気的に接続されている。これにより、コンデンサー81が電流を流したときの電源の揺れが小さくなり、各ヘッド42の回路に安定した電圧を印加することができると共に、安定したデータ信号を供給することができる。この結果、各ヘッド42ではインクを安定して吐出することが可能になる。
【0023】
また、ヘッド制御基板80は、電源回路85(1),(2)の2つの電源回路で構成されていることにより、それぞれの電源回路の電圧を変えることができる。これにより、例えば、ヘッドユニット40の左側のヘッド42(1)〜(5)にはA電圧で都合の良いヘッドチップ、右側のヘッド42(6)〜(10)には左側とは異なるB電圧で都合の良いヘッドチップを製造することができる。この結果、ヘッドの歩留まりを向上させることが可能になる。
【0024】
更に、電源回路85(1),(2)におけるレギュレーターIC82(1),(2)についても、それぞれが左側のヘッド42(1)〜(5)と右側のヘッド42(6)〜(10)の近くに配置されていることから、ヘッド42(1)〜(5)とヘッド42(6)〜(10)のそれぞれに印加する電圧の精度を高くすることが可能になる。
【0025】
なお、上記した実施形態では、10個のヘッドが千鳥状に配置されているヘッドユニットの例について説明した。しかし、ヘッドユニットにおけるヘッドの個数及び配置は、これに限られず適宜定めることができる。また、1つのヘッドに形成されるノズル列数、及び各ノズル列に備えるノズル数についても適宜定めることができる。
【0026】
また、上記した実施形態では、ヘッド制御基板に、10個のコンデンサーと、2個のレギュレーターICとが実装されている例について説明した。しかし、ヘッド制御基板におけるコンデンサー及びレギュレーターICの各個数と、各配置とは、これに限られず、ヘッドユニットに配置されているヘッドの個数及び配置に応じて適宜定めることができる。例えば、ヘッドユニットに10個のヘッドが配置されている場合、ヘッド制御基板に5個のコンデンサーを配置して、それぞれ1個のコンデンサーが2個のヘッドの近くに配置されるようにしても良い。
【0027】
また、上記した実施形態では、ピエゾ素子への駆動パルスの印加を制御することによってインクの吐出を制御するピエゾ方式を例にして説明した。しかし、これに限られず、例えば、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってインクを吐出するサーマル方式でも良い。
【符号の説明】
【0028】
1…プリンター、2…コンピューター、10…用紙搬送機構、20…キャリッジ移動機構、30…駆動信号生成回路、40…ヘッドユニット、41…ヘッド制御部、42…ヘッド、50…検出器群、60…コントローラー、61…インターフェイス部、62…CPU、63…メモリー、64…制御ユニット、70…電源生成部、80…ヘッド制御基板、81…コンデンサー、82…レギュレーターIC、85…電源回路、90…制御基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズルを有するヘッドが複数配置されたヘッドユニットと、
前記ヘッドを駆動するデータ信号を生成する制御基板と、
前記制御基板からの前記データ信号を前記ヘッドユニットに配置された前記複数のヘッドに伝達するヘッド制御基板と、
を有し、
前記複数のヘッドはヘッド毎に、配線経路上所定距離以内の前記ヘッド制御基板上にコンデンサーが配置され、前記ヘッドと前記コンデンサーが電気的に接続されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
所定の電圧を生成する複数のレギュレーターが前記ヘッド制御基板に更に配置され、
前記ヘッド制御基板は、
複数の前記コンデンサーの一部の前記コンデンサー及び複数の前記レギュレーターの一部の前記レギュレーターを含む第1の電源回路と、
複数の前記コンデンサー及び複数の前記レギュレーターのうち、前記一部の前記コンデンサー以外の前記コンデンサー及び前記一部の前記レギュレーター以外の前記レギュレーターを含む第2の電源回路と、を有することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記所定距離は50mmであることを特徴する請求項1又は2に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−63571(P2013−63571A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203299(P2011−203299)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】