説明

印刷装置

【課題】印刷装置における生産性の低下の抑制を図る。
【解決手段】制御部11は、印刷部3に設定されている印刷搬送速度に対して次の用紙の設定印刷搬送速度が異なる場合、印刷搬送速度の変更処理を実行し、印刷部3に設定されている印刷搬送速度に対して次の用紙の設定印刷搬送速度が異なる場合でも、設定されている印刷搬送速度で次の用紙が印刷可能である場合、取得済みの印刷データに応じた、印刷搬送速度の変更処理を省略した場合および実行した場合の、印刷搬送速度の変更処理に要する時間を含む予測所要印刷時間を比較し、印刷搬送速度の変更処理を省略した場合の方が実行した場合より予測所要印刷時間が小さいとき、印刷搬送速度の変更処理を省略する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙等に印刷を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙を搬送しつつ用紙に印刷を行う印刷装置が知られている。このような印刷装置では、用紙の種類等に応じて、印刷を行う際の各種設定を変更する必要が生じることがある。
【0003】
特許文献1には、搬送中の媒体にインクジェットヘッドからインクを吐出して印刷を行う印刷装置において、媒体の厚さに基づいてヘッドギャップを調整する技術が開示されている。特許文献1の技術では、搬送する媒体の種類により媒体の厚さが変化しても、現在のヘッドギャップでも搬送が可能である場合は、ヘッドギャップの調整動作を省略している。これにより、特許文献1の印刷装置は、印刷開始から印刷終了までの時間を短縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4590316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような用紙を搬送しつつ印刷を行う印刷装置では、印刷中の搬送速度(印刷搬送速度)を変更することがある。例えば、インクジェットヘッドから搬送中の用紙にインクを吐出して印刷を行う印刷装置では、印刷解像度が高い場合は低い場合より、印刷搬送速度を遅くしている。印刷搬送速度を変更する場合、搬送中の用紙を排出してから印刷搬送速度の変更を行っている。このため、印刷搬送速度を変更する際には、そのための処理時間を消費する。
【0006】
特許文献1の技術では、ヘッドギャップの調整に要する時間を省略可能であるが、搬送速度を変更する必要が生じるたびに上述の処理時間を消費する。このため、特許文献1の印刷装置では、生産性が低下することがあった。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、生産性の低下を抑制可能な印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置の第1の特徴は、印刷媒体を給紙する給紙部と、前記給紙部から給紙された印刷媒体を搬送しつつ印刷媒体に記録材を付与して印刷を行う印刷部と、印刷媒体ごとに、印刷部における記録材付与動作に関する設定に応じた設定印刷搬送速度を設定し、当該設定印刷搬送速度で印刷媒体を搬送しつつ印刷を行うよう前記印刷部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記印刷部に設定されている印刷搬送速度に対して次の印刷媒体の設定印刷搬送速度が異なる場合、印刷搬送速度の変更処理を実行し、前記設定されている印刷搬送速度に対して次の印刷媒体の設定印刷搬送速度が異なる場合でも、前記設定されている印刷搬送速度で前記次の印刷媒体が印刷可能である場合、取得済みの印刷データに応じた、前記印刷搬送速度の変更処理を省略した場合および実行した場合の、前記印刷搬送速度の変更処理に要する時間を含む予測所要印刷時間を比較し、前記印刷搬送速度の変更処理を省略した場合の方が実行した場合より前記予測所要印刷時間が小さいとき、前記印刷搬送速度の変更処理を省略することにある。
【0009】
本発明に係る印刷装置の第2の特徴は、前記制御部は、互いに異なる種類の印刷媒体を含む複数の印刷媒体からなる印刷媒体グループの各印刷媒体に対して共通の設定印刷搬送速度を設定可能であることにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る印刷装置の第1の特徴によれば、制御部は、適用中の印刷搬送速度に対して次の印刷媒体の設定印刷搬送速度が異なる場合でも、適用中の印刷搬送速度で次の印刷媒体が印刷可能である場合、取得済みの印刷データに応じた、印刷搬送速度の変更処理を省略した場合および実行した場合の予測所要印刷時間を比較する。そして、制御部は、印刷搬送速度の変更処理を省略した場合の方が実行した場合より予測所要印刷時間が小さいとき、印刷搬送速度の変更処理を省略する。これにより、印刷装置は、一連の印刷動作における印刷の開始から終了までの時間を短縮でき、生産性の低下を抑制できる。
【0011】
本発明に係る印刷装置の第2の特徴によれば、印刷媒体グループの各印刷媒体に対して共通の設定印刷搬送速度を設定することで、印刷媒体グループ内における印刷搬送速度の変更処理を省略でき、生産性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態に係る印刷装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】最大ドロップ数テーブルの一例を示す図である。
【図4】印刷搬送速度テーブルの一例を示す図である。
【図5】第1の実施の形態における印刷装置の印刷搬送速度を調整する処理のフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態における印刷装置の印刷搬送速度を調整する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0014】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る印刷装置の概略構成図、図2は、図1に示す印刷装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【0016】
図1、図2に示すように、第1の実施の形態に係る印刷装置1は、給紙部2と、印刷部3と、連絡部4と、上面搬送部5と、排紙部6と、反転部7と、画像読取部8と、通信部9と、操作パネル部10と、制御部11と、各部を収納または保持する筐体12とを備える。
【0017】
なお、図1において太線で示す経路が、印刷媒体が搬送される搬送経路である。印刷装置1における搬送経路のうち、実線で示す経路が通常経路RC、一点鎖線で示す経路が反転経路RR、長破線で示す経路が排紙経路RD、短破線で示す経路が連絡経路RJ、二点鎖線で示す経路が給紙経路RSである。以下の説明における上流、下流は、搬送経路における上流、下流を意味する。また、以下の説明における上下方向、左右方向は、図1において示す上下方向、左右方向を示すものとする。
【0018】
給紙部2は、印刷部3に給紙する。給紙部2は、搬送経路の最も上流側に配置されている。給紙部2は、外部給紙台21と、外部給紙ローラ22と、複数の内部給紙台23と、複数の内部給紙ローラ24と、複数対の縦搬送ローラ25と、レジストローラ26とを備える。
【0019】
外部給紙台21は、一部が筐体12の外部に露出して設置され、印刷媒体である用紙Pが積載されるものである。
【0020】
外部給紙ローラ22は、外部給紙台21から用紙Pを1枚ずつ取り出して給紙経路RSに沿ってレジストローラ26に向けて搬送する。外部給紙ローラ22は、外部給紙台21の上側に配置されている。
【0021】
内部給紙台23は、筐体12の内部に設けられ、用紙Pが積載されるものである。
【0022】
内部給紙ローラ24は、内部給紙台23から用紙Pを1枚ずつ取り出して給紙経路RSへと送り出す。内部給紙ローラ24は、内部給紙台23の上側に設けられている。
【0023】
縦搬送ローラ25は、給紙経路RSに沿って配置され、内部給紙台23から取り出された用紙Pをレジストローラ26に向けて搬送する。
【0024】
レジストローラ26は、外部給紙台21、内部給紙台23、反転部7から搬送されてきた用紙Pを一旦止めた後、印刷部3へと送り出す。レジストローラ26は、給紙経路RSと反転経路RRとの合流地点の近傍の通常経路RC上に配置されている。
【0025】
また、給紙部2は、外部給紙ローラ22および最も下流側の縦搬送ローラ25を回転駆動させるモータと、内部給紙ローラ24および他の縦搬送ローラ25を回転駆動させるモータと、レジストローラ26を回転駆動させるモータ(いずれも図示せず)とを備える。
【0026】
印刷部3は、用紙Pを搬送しつつ、用紙Pにインク(記録材)を吐出(付与)して印刷を行う。印刷部3は、給紙部2の下流側に配置されている。印刷部3は、ベルト搬送部31と、インクジェットヘッド部32とを備える。
【0027】
ベルト搬送部31は、レジストローラ26から搬送されてきた用紙Pを保持して搬送する。ベルト搬送部31は、レジストローラ26の下流側で、インクジェットヘッド部32の下方に配置されている。ベルト搬送部31は、搬送ベルト33と、ベルト駆動ローラ34と、従動ローラ35〜37と、ベルトモータ38とを備える。
【0028】
搬送ベルト33は、ベルト駆動ローラ34および従動ローラ35〜37に掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト33には、用紙Pを吸着保持するためのベルト穴が多数形成されている。搬送ベルト33は、ファン(図示せず)の駆動によりベルト穴に発生する吸着力により、用紙Pを吸着保持する。搬送ベルト33は、ベルト駆動ローラ34の駆動により図1における時計回り方向に回転することで、搬送面(上面)に吸着保持した用紙Pを右方向に搬送する。
【0029】
ベルト駆動ローラ34および従動ローラ35〜37は、搬送ベルト33が掛け渡されるものである。ベルト駆動ローラ34は、搬送ベルト33を回転させる。従動ローラ35〜37は、搬送ベルト33を介してベルト駆動ローラ34に従動する。
【0030】
ベルトモータ38は、ベルト駆動ローラ34を回転駆動させる。
【0031】
インクジェットヘッド部32は、ベルト搬送部31の上方に配置され、用紙Pの搬送方向と直交する方向に複数のノズルが配列されたラインタイプの複数のインクジェットヘッドを有する。各インクジェットヘッドは、互いに異なる色のインクを吐出する。インクジェットヘッド部32は、ベルト搬送部31により搬送される用紙Pにインクジェットヘッドからインクを吐出して画像を印刷する。
【0032】
連絡部4は、印刷済みの用紙Pを後処理装置70へと送り出す。ここで、後処理装置70は、印刷装置1で印刷された用紙Pに対する後処理を行う装置である。後処理は、オフセット排紙、ステープル、小冊子作成等の処理である。後処理装置70は、印刷装置1の下流側(右側)に接続されている。後処理装置70は、導入経路RFに沿って配置された導入ローラ71を有する。導入ローラ71は、印刷装置1から用紙Pを後処理装置70内へと導入するものである。
【0033】
連絡部4は、切替部41と、連絡ローラ42と、切替部41を駆動させるソレノイド(図示せず)と、連絡ローラ42を回転駆動させるモータ(図示せず)とを備える。
【0034】
切替部41は、用紙Pの搬送経路を通常経路RCと連絡経路RJとの間で切り替える。切替部41は、通常経路RCと連絡経路RJとの分岐点に配置されている。連絡経路RJは、印刷部3と上面搬送部5との境界から後処理装置70に向けて右側に延びる経路である。連絡経路RJの下流側の端部は、後処理装置70の導入経路RFの上流側の端部に接続されている。
【0035】
連絡ローラ42は、ベルト搬送部31から搬送されてきた用紙Pを搬送して後処理装置70へと送り出す。連絡ローラ42は、連絡経路RJに沿って切替部41の下流側に配置されている。
【0036】
上面搬送部5は、ベルト搬送部31によって搬送されてきた用紙Pを右方向から左方向へとUターンするように搬送する。上面搬送部5は、複数対の上面搬送ローラ45と、複数対の上面搬送ローラ45を回転駆動させる複数のモータ(図示せず)とを備える。
【0037】
上面搬送ローラ45は、用紙Pをニップして搬送する。複数対の上面搬送ローラ45は、印刷部3と排紙部6との間の通常経路RCに沿って配置されている。1対の上面搬送ローラ45は、反転経路RRの上流部に配置されている。
【0038】
排紙部6は、印刷済みの用紙Pを排紙して積載する。排紙部6は、切替部51と、排紙ローラ52と、排紙台53と、切替部51を駆動させるソレノイド(図示せず)と、排紙ローラ52を回転駆動させるモータ(図示せず)とを備える。
【0039】
切替部51は、排紙経路RDと反転経路RRとの分岐点に配置され、用紙Pの搬送経路を排紙経路RDと反転経路RRとの間で切り替える。
【0040】
排紙ローラ52は、切替部51と排紙台53との間に配置され、上面搬送部5により搬送されてきた用紙Pを排紙経路RDに沿って搬送して排紙台53へと排出する。
【0041】
排紙台53は、排紙ローラ52により搬送されてきた用紙Pを積載する。
【0042】
反転部7は、両面印刷の際に、片面印刷済みの用紙Pを印刷部3に再給紙するために、片面印刷済みの用紙Pを反転させてレジストローラ26へと搬送する。反転部7は、反転ローラ55と、スイッチバック部56と、再給紙ローラ57と、切替ゲート58と、反転ローラ55を回転駆動させるモータ(図示せず)と、再給紙ローラ57を回転駆動させるモータ(図示せず)とを備える。
【0043】
反転ローラ55は、上面搬送部5により搬送されてきた用紙Pをスイッチバック部56に一時的に搬入した後に搬出して、再給紙ローラ57へと搬送する。反転ローラ55は、最も下流側の上面搬送ローラ45とスイッチバック部56の搬入口との間の反転経路RR上に配置されている。
【0044】
スイッチバック部56は、反転ローラ55が用紙Pを一時的に搬入するための空間であり、排紙台53の下部に形成されている。スイッチバック部56は、反転ローラ55の近傍が用紙Pを搬入するために開口されている。
【0045】
再給紙ローラ57は、反転ローラ55により搬送されてきた用紙Pをレジストローラ26へと搬送する。再給紙ローラ57は、反転ローラ55とレジストローラ26との間の反転経路RR上に配置されている。
【0046】
切替ゲート58は、上面搬送ローラ45によって搬送されてきた用紙Pを反転ローラ55へとガイドする。また、切替ゲート58は、反転ローラ55によってスイッチバック部56から搬出される用紙Pを再給紙ローラ57へとガイドする。切替ゲート58は、最も下流側の上面搬送ローラ45、反転ローラ55、および再給紙ローラ57の3個所の重心近傍に配置されている。
【0047】
画像読取部8は、原稿の画像を光学的に読み取り、画像データを生成する。画像読取部8は、CCD(Charge Coupled Device)、光源、原稿台、原稿台カバー、CCDを走査させる駆動モータ(いずれも図示せず)を備える。画像読取部8は、原稿台に載置された原稿に光源の光を照射し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)で読み取ることで、原稿の画像データを生成する。
【0048】
通信部9は、PC(パーソナルコンピュータ)等の外部装置との通信処理を行う。通信部9は、外部装置から印刷データを受信する。
【0049】
操作パネル部10は、各種の入力画面等を表示するとともに、ユーザによる各種設定等のための入力操作を受け付けるものである。操作パネル部10は、各種の入力画面等を表示する液晶表示パネル等、ユーザが各種の入力操作を行うための操作ボタンおよびタッチパネル等を備える。
【0050】
制御部11は、印刷装置1全体の動作を制御する。制御部11は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶装置を備えて構成される。
【0051】
制御部11は、図3に示す最大ドロップ数テーブル61、および図4に示す印刷搬送速度テーブル62を予め記憶している。
【0052】
最大ドロップ数テーブル61は、用紙種類(普通紙、マット紙等)と、最大ドロップ数との関係を示すテーブルである。最大ドロップ数は、インクジェットヘッド部32の各インクジェットヘッドが1画素に対して吐出するインクの最大のドロップ数である。インクが裏抜けしにくい用紙種類ほど、最大ドロップ数が大きく設定される。
【0053】
印刷搬送速度テーブル62は、最大ドロップ数と、印刷解像度と、印刷搬送速度との関係を示すテーブルである。印刷搬送速度は、印刷時におけるベルト搬送部31による用紙Pの搬送速度である。印刷搬送速度は、印刷部3におけるインク吐出動作(記録材付与動作)に関する設定である最大ドロップ数および印刷解像度に応じて、良好な画質で印刷可能な速度に設定される。印刷搬送速度は、同じ印刷解像度であれば、最大ドロップ数が大きいほど遅く設定される。すなわち、図4において、v5<v3<v1,v6<v4<v2となっている。また、印刷搬送速度は、最大ドロップ数が同じであれば、印刷解像度が大きいほど遅く設定される。すなわち、v2<v1,v4<v3,v6<v5となっている。
【0054】
制御部11は、印刷データから、インクジェットヘッド部32による印刷に対応した形式のデータであるドロップデータを生成する。ドロップデータは、インクジェットヘッド部32の各インクジェットヘッドが画素ごとに吐出するインクのドロップ数を示すデータである。制御部11は、最大ドロップ数テーブル61を参照して、用紙種類に応じた最大ドロップ数のドロップデータを生成する。また、制御部11は、印刷搬送速度テーブル62を参照して、最大ドロップ数および印刷解像度に応じた印刷搬送速度を設定する。印刷搬送速度は、印刷される用紙1枚ごとに設定される。
【0055】
制御部11は、印刷部3のベルト搬送部31に現在設定されている(現在適用中)の印刷搬送速度に対して、次に印刷される用紙Pに対して設定された印刷搬送速度(設定印刷搬送速度)が異なり、印刷搬送速度の変更を要する場合、印刷搬送速度の変更処理を実行する。印刷搬送速度の変更処理は、次に印刷される用紙Pの給紙を延期して、印刷装置1内の用紙Pをすべて装置外に排出させるとともに、ベルトモータ38の制御により搬送ベルト33による搬送速度を変更させる処理である。ただし、制御部11は、印刷搬送速度の変更を要する場合でも、次に印刷される用紙Pが現在適用中の印刷搬送速度で印刷可能であるとき、指定された変更省略条件に応じて印刷搬送速度の変更処理を省略可能である。変更省略条件は、印刷搬送速度の変更処理を省略可能とするか否かを判断するために用いられるものであり、例えば、ユーザ操作により予め指定される。
【0056】
次に、印刷装置1の動作について説明する。
【0057】
通信部9を介して印刷対象の印刷データを取得した場合、制御部11は、印刷データに基づきドロップデータを生成する。この際、制御部11は、印刷データに含まれる用紙種類の情報に基づき最大ドロップ数テーブル61を参照して、用紙種類に応じた最大ドロップ数でドロップデータを生成する。また、制御部11は、印刷データに含まれる印刷解像度の情報に応じた解像度でドロップデータを生成する。そして、制御部11は、印刷搬送速度テーブル62を参照して、最大ドロップ数および印刷解像度に応じた印刷搬送速度を、印刷する用紙ごとに設定する。
【0058】
一方、画像読取部8から印刷データとしての画像データを取得した場合、制御部11は、画像データからドロップデータを生成する。この際、制御部11は、操作パネル部10に対するユーザ操作により設定された用紙種類に基づき最大ドロップ数テーブル61を参照して、用紙種類に応じた最大ドロップ数でドロップデータを生成する。また、画像読取部8が生成する画像データは、操作パネル部10に対するユーザ操作により設定された印刷解像度のデータとなっており、制御部11は、この解像度でドロップデータを生成する。そして、制御部11は、印刷搬送速度テーブル62を参照して、最大ドロップ数および印刷解像度に応じた印刷搬送速度を、印刷する用紙ごとに設定する。
【0059】
印刷データを取得してドロップデータを生成すると、制御部11は、外部給紙台21および複数の内部給紙台23のいずれかから印刷に用いる用紙種類の用紙Pを取り出し、レジストローラ26に向けて搬送するよう給紙部2を制御する。また、制御部11は、ベルトモータ38によりベルト搬送部31のベルト駆動ローラ34を回転駆動させる。
【0060】
用紙Pがレジストローラ26に突き当たると、制御部11は、所定のタイミングでレジストローラ26の駆動を開始させる。これにより、レジストローラ26は、用紙Pをベルト搬送部31へと送り出す。ベルト搬送部31は、レジストローラ26から送られてきた用紙Pを搬送ベルト33上に保持して、設定された印刷搬送速度で搬送する。制御部11は、搬送ベルト33により搬送される用紙Pに対して、インクジェットヘッド部32からインクを吐出させ、画像を印刷させる。
【0061】
片面印刷の場合、印刷部3で印刷された用紙Pは、ベルト搬送部31によって搬送されつつ、連絡部4の切替部41により上面搬送部5へと導かれ、上面搬送部5により搬送される。そして、用紙Pは、排紙部6の切替部51によって排紙ローラ52へと導かれ、排紙台53へと排紙される。
【0062】
一方、片面印刷であって、後処理装置70が用いられる場合、印刷された用紙Pは、ベルト搬送部31によって搬送されつつ、連絡部4の切替部41により連絡経路RJへと導かれ、連絡ローラ42により後処理装置70へと送り出される。
【0063】
両面印刷の場合、印刷部3で一方の面が印刷された用紙Pは、連絡部4の切替部41により上面搬送部5へと導かれる。用紙Pは、上面搬送部5により排紙部6の切替部51まで搬送され、切替部51により反転部7へと導かれる。反転部7では、用紙Pは、切替ゲート58により反転ローラ55へと導かれ、反転ローラ55によりスイッチバック部56へと搬入される。その後、用紙Pは、反転ローラ55によりスイッチバック部56から搬出されるとともに、切替ゲート58により再給紙ローラ57へと導かれ、再給紙ローラ57によりレジストローラ26へと搬送される。用紙Pは、レジストローラ26により印刷部3へと送り出される。ここで、用紙Pは、反転部7によって反転されているので、未印刷面(他方の面)が上に向けられており、インクジェットヘッド部32により他方の面に印刷される。そして、両面印刷済みの用紙Pは、上面搬送部5により排紙部6へと搬送され、排紙台53へと排紙される。
【0064】
一方、両面印刷であって、後処理装置70が用いられる場合、両面印刷済みの用紙Pは、ベルト搬送部31によって搬送されつつ、連絡部4の切替部41により連絡経路RJへと導かれる。そして、用紙Pは、連絡ローラ42により後処理装置70へと送り出される。
【0065】
複数枚の印刷を行う場合、制御部11は、給紙部2から所定間隔で連続して用紙Pを給紙させ、印刷部3により順次印刷を行わせる。印刷動作中において、制御部11は、用紙ごとの最大ドロップ数および印刷解像度に応じてベルト搬送部31における印刷搬送速度を調整する処理を行う。
【0066】
この印刷搬送速度を調整する処理について説明する。図5は、印刷装置1の印刷搬送速度を調整する処理のフローチャートである。
【0067】
まず、ステップS10において、制御部11は、印刷対象の印刷データからドロップデータを生成するとともに、印刷搬送速度を設定する。
【0068】
次いで、ステップS20において、制御部11は、現在が印刷中であるか否かを判断する。具体的には、制御部11は、ベルト搬送部31が駆動中である場合、印刷中であると判断する。ここで、複数枚の用紙を所定間隔で連続して印刷部3に給紙して印刷を行う場合、制御部11は、当該複数枚のうち最後の用紙の後端がベルト搬送部31を抜けるまでベルト搬送部31の駆動を継続している。
【0069】
現在が印刷中でないと判断した場合(ステップS20:NO)、ステップS30において、制御部11は、ベルトモータ38により、ステップS10で設定した印刷搬送速度での搬送ベルト33の駆動を開始させる。そして、制御部11は、給紙部2により用紙Pを給紙させる。給紙された用紙Pは、印刷部3で搬送されつつ印刷される。
【0070】
現在が印刷中であると判断した場合(ステップS20:YES)、ステップS40において、制御部11は、ステップS10で設定した印刷搬送速度が、現在適用中の印刷搬送速度と同じであるか否かを判断する。
【0071】
ステップS10で設定した印刷搬送速度が、現在適用中の印刷搬送速度と同じであると判断した場合(ステップS40:YES)、ステップS50において、制御部11は、給紙部2により用紙Pを給紙させる。給紙された用紙Pは、印刷部3で搬送されつつ印刷される。
【0072】
ステップS10で設定した印刷搬送速度が、現在適用中の印刷搬送速度と異なると判断した場合(ステップS40:NO)、ステップS60において、制御部11は、次に給紙(印刷)する用紙Pが、現在適用中の印刷搬送速度を変更せずに印刷可能であるか否かを判断する。次に給紙する用紙Pは、ステップS10で生成されたドロップデータにより、ステップS10で設定された印刷搬送速度で印刷されるものである。
【0073】
ここで、次に給紙する用紙Pに対して設定された印刷搬送速度が現在適用中の印刷搬送速度とは異なるが、現在適用中の印刷搬送速度を変更せずに印刷可能である場合とは、現在適用中の印刷搬送速度が、次に給紙する用紙Pに対して設定された印刷搬送速度よりも遅い場合である。前述のように、印刷搬送速度は、同じ印刷解像度であれば、最大ドロップ数が大きいほど遅く設定され、最大ドロップ数が同じであれば、印刷解像度が大きいほど遅く設定される。すなわち、狭い範囲に多くのインクドロップを吐出する場合ほど、印刷搬送速度を遅くする必要がある。印刷搬送速度を速くすると、狭い範囲に多くのインクドロップを正確に吐出することが困難となるため、設定された印刷搬送速度より速い印刷搬送速度では良好な画質での印刷は困難である。これに対し、設定された印刷搬送速度より遅い印刷搬送速度であれば、吐出タイミングを適切に制御することで、良好な画質で印刷可能である。このため、制御部11は、現在適用中の印刷搬送速度が、次に給紙する用紙Pに対して設定された印刷搬送速度よりも遅い場合、現在適用中の印刷搬送速度を変更せずに、次に給紙する用紙Pを印刷可能であると判断する。
【0074】
次に給紙する用紙Pが現在適用中の印刷搬送速度を変更せずに印刷可能ではないと判断した場合(ステップS60:NO)、ステップS70において、制御部11は、印刷搬送速度の変更処理を実行する。具体的には、制御部11は、次に印刷される用紙Pの給紙を延期し、印刷装置1内の用紙Pをすべて装置外に排出させる。そして、制御部11は、ベルトモータ38を制御して、搬送ベルト33による印刷搬送速度を、現在適用中の印刷搬送速度から、次に給紙する用紙Pに対して設定された印刷搬送速度へと変更させる。
【0075】
印刷搬送速度の変更が完了すると、ステップS50において、制御部11は、給紙部2により次の用紙Pを給紙させる。給紙された用紙Pは、印刷部3で搬送されつつ印刷される。
【0076】
一方、ステップS60において、次に給紙する用紙Pが現在適用中の印刷搬送速度を変更せずに印刷可能であると判断した場合(ステップS60:YES)、ステップS80において、制御部11は、次に給紙する用紙Pが、所定の印刷機能における印刷が設定された印刷データを印刷するものであるか否かを判断する。所定の印刷機能は、例えば、後処理装置70による小冊子作成機能に対応した小冊子印刷機能である。このような印刷機能を示す情報は、例えば、印刷データに含まれている。
【0077】
小冊子は、2つ折りされた表紙用の用紙に、2つ折りされた本文用の用紙を挟んで、用紙中心部で綴じたものである。後処理装置70の小冊子作成機能を用いる場合、印刷装置1では、1枚の表紙用の用紙に両面印刷した後、1枚以上の本文用の用紙に両面印刷を行い、これらを順次、後処理装置70へと送る小冊子印刷を行う。後処理装置70では、表紙用の用紙上に本文用の用紙が積載される。後処理装置70は、このように積載された印刷物を、本文用の用紙側に折り曲げることで、小冊子を作成する。
【0078】
一般に小冊子の表紙用の用紙には、本文用の用紙より厚く、最大ドロップ数が大きい用紙種類が用いられる。このため、印刷装置1において、表紙用の用紙に対する印刷搬送速度が、本文用の用紙に対する印刷搬送速度よりも遅く設定される。すなわち、表紙用の用紙の給紙後、次の用紙Pとして1枚目の本文用の用紙を給紙する際には、ステップS60において、「YES」と判断される。
【0079】
表紙用の用紙の給紙後、本文用の用紙に応じた印刷搬送速度への変更処理を省略すると、表紙用の用紙に対応した遅い印刷搬送速度のまま本文用の用紙の印刷が行われる。このため、本文用の用紙の印刷に要する時間は、印刷搬送速度の変更処理を行った場合よりも長くなる。一方、印刷搬送速度の変更処理を行う場合、1枚目の本文用の用紙の給紙タイミングが遅くなる。しかしながら、小冊子においては、本文用の用紙の枚数は比較的少ない。したがって、印刷搬送速度の変更処理を省略しても、小冊子作成用の印刷の開始から終了までに要する時間は、印刷搬送速度の変更処理を行った場合よりも短くなる。
【0080】
そこで、制御部11は、次に給紙する用紙Pが、小冊子印刷機能のような、所定の印刷機能における印刷が設定された印刷データを印刷するものであると判断した場合(ステップS80:YES)、印刷搬送速度の変更処理を省略し、ステップS50において、給紙部2により次の用紙Pを給紙させる。給紙された用紙Pは、印刷部3で搬送されつつ印刷される。なお、上述した小冊子印刷機能は一例であり、他の機能であってもよい。
【0081】
上述した図5のフローチャートの処理は、給紙、印刷される用紙1枚ごとに行われる。なお、制御部11は、印刷データを随時取得し、複数枚分の印刷データを蓄積することが可能である。
【0082】
以上説明したように、第1の実施の形態では、現在適用中の印刷搬送速度から印刷搬送速度の変更を要する場合でも、次に印刷される用紙Pが現在適用中の印刷搬送速度で印刷可能であるとき、指定された変更省略条件に応じて印刷搬送速度の変更処理を省略可能である。これにより、印刷搬送速度の変更処理に要する時間を低減して印刷開始から終了までの時間を短縮することが可能となり、生産性の低下を抑制可能となる。
【0083】
具体的には、制御部11は、次に印刷される用紙Pに対応する印刷データによる印刷機能に関する情報を用いて、印刷搬送速度の変更処理を省略するか否かを判断する。例えば、制御部11は、次に印刷される用紙Pが、小冊子印刷機能等の所定の印刷機能における印刷が設定された印刷データを印刷するものである場合、印刷搬送速度の変更処理を省略する。これにより、必要な状況でのみ印刷搬送速度の変更処理を省略でき、印刷搬送速度の変更処理の省略により遅い印刷搬送速度のまま印刷が継続されて生産性の低下を招くことは回避できる。
【0084】
なお、変更省略条件として、ユーザ設定による変更省略可能設定情報を用いてもよい。この場合、上述した図5のステップS80の処理内容にかえて、制御部11は、変更省略可能設定が有効であるか否かを判断する。変更省略可能設定が有効であると判断した場合、制御部11は、印刷搬送速度の変更処理を省略し、給紙部2により次の用紙Pを給紙させる(ステップS50)。変更省略可能設定が有効でないと判断した場合、制御部11は、印刷搬送速度の変更処理を実行し(ステップS70)、その後、給紙部2により次の用紙Pを給紙させる(ステップS50)。
【0085】
変更省略可能設定は、現在適用中の印刷搬送速度から印刷搬送速度の変更を要する場合でも、次に印刷される用紙Pが現在適用中の印刷搬送速度で印刷可能であれば、印刷搬送速度の変更処理を省略するようにする設定である。変更省略可能設定は、例えば、ユーザが操作パネル部10を操作して予め設定可能である。
【0086】
例えば、印刷装置1が、少ページで多部数の印刷が多く行われるような使用状況におかれる場合、印刷搬送速度の変更処理の省略により本来より遅い印刷搬送速度のまま印刷が長期間継続されて生産性が低下する状況は生じにくい。このため、印刷搬送速度の変更処理を省略することが、印刷開始から終了までの時間を短縮するために有効となる。このような場合、印刷装置1において変更省略可能設定を有効にしておくことで、生産性の低下を抑制できる。
【0087】
上記のように、変更省略条件として、印刷データによる印刷機能の情報、または、ユーザ設定による変更省略可能設定情報を用いて、印刷搬送速度の変更処理を省略するか否かを判断することで、印刷搬送速度の変更処理の省略が生産性の低下を招く状況を回避して、確実に生産性の低下を抑制できる。なお、変更省略条件として、他の設定情報等を用いてもよい。
【0088】
なお、制御部11が、互いに異なる種類の用紙を含む、連続して印刷される複数の用紙からなる用紙グループの各用紙に対して共通の設定印刷搬送速度を設定可能としてもよい。この場合、具体的には、制御部11は、用紙グループ内で最も遅い設定印刷搬送速度となる用紙種類に対応する設定印刷搬送速度を、当該用紙グループにおける各用紙に共通の設定印刷搬送速度とする。用紙グループは、所定の印刷機能における印刷単位に対応する複数枚の用紙からなるものである。ここでの所定の印刷機能としては、例えば、後処理装置70が封書を作製する封入封緘装置である場合に印刷装置1で行われる封書作製印刷機能が挙げられる。封書作製印刷においては、1通分の封書に対応する1枚の封筒用紙および1枚以上の内容物用紙が用紙グループを構成する。封書は、印刷済みの内容物用紙が折り畳まれ、この内容物用紙が印刷済みの封筒用紙にくるまれつつ封入され、封筒用紙が封緘されることで作製される。
【0089】
一般に封書の封筒用紙には、内容物用紙より厚く、最大ドロップ数が大きい用紙種類が用いられる。このため、封筒用紙に対する印刷搬送速度は、内容物用紙に対する印刷搬送速度よりも遅い。すなわち、印刷される用紙1枚ごとに上述した図5のフローチャートの処理を適用すると、内容物用紙の給紙後、次の用紙Pとして封筒用紙を給紙する際には、ステップS60において、「NO」と判断され、印刷搬送速度の変更処理を省略することができない。さらに、内容物用紙には、封筒用紙よりも厚く、最大ドロップ数が大きい招待券などに使用される上質な用紙が混在することもある。この場合、内容物用紙の印刷中に給紙する際にも、ステップS60において、「NO」と判断され、印刷搬送速度の変更処理を省略することができない。
【0090】
そこで、この場合、図5のステップS10において、制御部11は、印刷搬送速度を設定する際、封書作製印刷か否かの判断を行う。封書作製印刷であることを示す情報は、例えば、印刷データに含まれている。封書作製印刷である場合、制御部11は、用紙グループ内で最も遅い設定印刷搬送速度となる用紙種類に対応する設定印刷搬送速度を、当該用紙グループにおける各用紙に共通の設定印刷搬送速度とする。なお、制御部11は、封書作製印刷の用紙グループにおける1枚目の用紙の給紙前に用紙グループ内で共通の設定印刷搬送速度を決定し、2枚目以降に対しては、ステップS10において、1枚目の用紙の給紙前に決定済みの共通の設定印刷搬送速度を採用する。
【0091】
ここで、用紙グループにおける各用紙に共通の印刷搬送速度を設定するためには、各用紙に対応するすべての印刷データを制御部11がスプールし、各用紙に対応する印刷搬送速度のうちもっとも遅い印刷搬送速度を決定した上で印刷が行われる。このため、用紙グループの印刷に要する時間は、印刷データのスプール時間だけ、さらに長くなる。しかしながら、封書作製印刷においては、内容物用紙の枚数は比較的少ない。また、昨今のネットワーク通信速度や電子デバイス動作速度の目覚ましい向上により印刷データのスプール時間は短くなる傾向にある。したがって、印刷データのスプール時間を必要としても、封書作製印刷の開始から終了までに要する時間は、印刷搬送速度の変更処理を行った場合よりも短くなる。
【0092】
上記のように、用紙グループの各用紙に対して共通の設定印刷搬送速度を設定することで、用紙グループ内における印刷搬送速度の変更処理を省略でき、生産性の低下を抑制できる。
【0093】
なお、上述した封書作製印刷機能は一例であり、これに限定されない。また、上述した用紙グループは、封書作製印刷機能等における1つの印刷単位ではなく、印刷ジョブごとや、ユーザが指定する範囲ごとに設定してもよい。
【0094】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る印刷装置は、図1、図2に示した第1の実施の形態の印刷装置1と同様の構成であるため、第2の実施の形態においても図1、図2を用いる。
【0095】
図6は、第2の実施の形態における印刷装置1の印刷搬送速度を調整する処理のフローチャートである。図6において、第1の実施の形態で説明した図5のフローチャートと同様のステップには、図5と同じステップ番号を付し、説明を省略もしくは簡略化する。
【0096】
図6に示すように、制御部11は、第1の実施の形態で説明したステップS10〜S60の処理を行う。
【0097】
ステップS60において、次に給紙する用紙Pが現在適用中の印刷搬送速度を変更せずに印刷可能であると判断した場合(ステップS60:YES)、ステップS110において、制御部11は、第1および第2の予測時間T1,T2を算出する。
【0098】
具体的には、制御部11は、取得済みの印刷データから、用紙ごとに対応する印刷搬送速度を求め、次に給紙する用紙P以降に連続し、次に給紙する用紙Pと同じ印刷搬送速度の設定となる用紙Pの枚数である継続枚数を求める。
【0099】
次いで、制御部11は、現在適用中の印刷搬送速度で継続枚数の印刷に要する時間を第1の予測時間T1として算出する。また、制御部11は、次に給紙する用紙Pに対する印刷搬送速度で継続枚数の印刷に要する時間に、印刷搬送速度の変更処理に要する時間を加えた時間を第2の予測時間T2として算出する。第1および第2の予測時間T1,T2は、印刷搬送速度、用紙サイズ等を用いて算出される。
【0100】
次いで、ステップS120において、制御部11は、第1の予測時間T1が第2の予測時間T2より小さいか否かを判断する。
【0101】
第1の予測時間T1が第2の予測時間T2より小さいと判断した場合(ステップS120:YES)、制御部11は、印刷搬送速度の変更処理を省略し、ステップS50において、給紙部2により次の用紙Pを給紙させる。
【0102】
第1の予測時間T1が第2の予測時間T2以上であると判断した場合(ステップS120:NO)、制御部11は、ステップS70において、印刷搬送速度の変更処理を実行し、その後、ステップS50において、給紙部2により次の用紙Pを給紙させる。
【0103】
このように第2の実施の形態では、制御部11は、変更省略条件として、取得済みの印刷データに応じた、印刷搬送速度の変更処理を省略した場合および実行した場合の予測所要印刷時間としての第1および第2の予測時間T1,T2の比較結果を用いる。印刷搬送速度の変更処理を実行した場合、予測所要印刷時間には、印刷搬送速度の変更処理に要する時間が含まれる。そして、制御部11は、印刷搬送速度の変更処理を省略した場合の方が実行した場合より予測所要印刷時間が小さい(T1<T2)とき、印刷搬送速度の変更処理を省略する。これにより、印刷装置1は、一連の印刷動作における印刷の開始から終了までの時間を確実に短縮でき、生産性の低下を抑制できる。
【0104】
なお、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、用紙グループの各用紙に対して共通の設定印刷搬送速度を設定可能としてもよい。
【0105】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1および第2の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0106】
上記の各実施の形態では、インクジェット方式の印刷装置について説明したが、印刷媒体を搬送しつつ印刷を行う他の方式の印刷装置にも本発明は適用可能である。
【0107】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0108】
1 印刷装置
2 給紙部
3 印刷部
4 連絡部
5 上面搬送部
6 排紙部
7 反転部
8 画像読取部
9 通信部
10 操作パネル部
11 制御部
31 ベルト搬送部
32 インクジェットヘッド部
38 ベルトモータ
61 最大ドロップ数テーブル
62 印刷搬送速度テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体を給紙する給紙部と、
前記給紙部から給紙された印刷媒体を搬送しつつ印刷媒体に記録材を付与して印刷を行う印刷部と、
印刷媒体ごとに、印刷部における記録材付与動作に関する設定に応じた設定印刷搬送速度を設定し、当該設定印刷搬送速度で印刷媒体を搬送しつつ印刷を行うよう前記印刷部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記印刷部に設定されている印刷搬送速度に対して次の印刷媒体の設定印刷搬送速度が異なる場合、印刷搬送速度の変更処理を実行し、
前記設定されている印刷搬送速度に対して前記次の印刷媒体の設定印刷搬送速度が異なる場合でも、前記設定されている印刷搬送速度で前記次の印刷媒体が印刷可能である場合、取得済みの印刷データに応じた、前記印刷搬送速度の変更処理を省略した場合および実行した場合の、前記印刷搬送速度の変更処理に要する時間を含む予測所要印刷時間を比較し、前記印刷搬送速度の変更処理を省略した場合の方が実行した場合より前記予測所要印刷時間が小さいとき、前記印刷搬送速度の変更処理を省略することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、互いに異なる種類の印刷媒体を含む複数の印刷媒体からなる印刷媒体グループの各印刷媒体に対して共通の設定印刷搬送速度を設定可能であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−95004(P2013−95004A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238312(P2011−238312)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】