印字ヘッド用マスクの取付け金具
【目的】 取付け金具の形状、構造を単純化することを可能にし、もって、加工工数の削減、加工所要時間の短縮を可能にして製造コストを低減し、さらに、取付けの際は、印字ヘッドとプラテンと間のギャップ調整を不要にすることができるマスク取付け金具を提供する。
【構成】 印字ヘッドのキャリッジに対して固着される固着部と、その固着部の両側部において、斜線に沿って、かつ、その固着部に対して直角に折曲され、かつ、互いに最遠位置から最近位置にかけて下り傾斜し、最近端部間が隔てられている左右一対の腕部とを一体に有し、その腕部間にマスクを取付けるようにした。
【構成】 印字ヘッドのキャリッジに対して固着される固着部と、その固着部の両側部において、斜線に沿って、かつ、その固着部に対して直角に折曲され、かつ、互いに最遠位置から最近位置にかけて下り傾斜し、最近端部間が隔てられている左右一対の腕部とを一体に有し、その腕部間にマスクを取付けるようにした。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、ワイヤドットプリンタの印字ヘッド用マスクを印字ヘッドに対して所定距離に取付けるための金具に関する。
【0002】
【従来の技術】
ワイヤドットプリンタにおいて、所要の印字品質を確保するためには、印字ヘッドとプラテンとの間に最適のギャップを設定する必要がある。また、ワイヤドットプリンタでは、インクリボンに上側からワイヤでインパクトを与えて印字するが、インクリボンのワイヤで叩かれない部分が媒体に接触しないようにするため、ワイヤ先端に対応する部分にのみ窓を有するマスクが、印字ヘッドのフェース面と媒体との間に取付けられるから、上記所要のギャップの確保の可否は、結局、このマスクの設置位置精度に依存する。
【0003】
ところで、従来のドットプリンタにおけるマスクの取付け金具は、図7ないし図11に示すようなものであった。すなわち、取付け金具20は、経年変形の少ない材料、例えば、薄鋼板の打抜きと曲げ加工とにより作られている。図11の20M,30Mは、それぞれ取付け金具及び補強部材の打抜き後、加工前の形状を示す。図11における点線は曲げる位置を示す。図7〜11の取付け金具は、取付け部201と、その取付け部の両端から直角に手前に延出する張出し部202と、各張出し部の端部から直角に前記取付け部201と平行に、かつ、互いに接近する方向に延びる腕部203とを一体に有する者であって、二段L形に屈曲した補強金具30を架橋し、腕部203の先端にマスク部材40が固着されている。そして、取付け金具20と補強金具30及び取付け金具20とマスク40とは、それぞれプラズマ溶接(P)により、それぞれ接合してある。
【0004】
【解決しようとする技術課題】
上記のように、従来のマスク取付け金具は、加工工数が多く、かつ、形状が複雑であるため、第一には、加工が困難で製造コストが高くなる問題があり、第二に、曲げ工数が多いため、さらに、溶接や半田付けの際の加熱により、取付け部201からマスク40を固着する腕部203の先端までの寸法精度を高くすることが難しく、かつ、加工品ごとのバラツキがあるため、マスクを印字ヘッドに対して取付ける場合に、上記所要のギャップを確保するためには、ギャップ調整が必要であり、そのため、取付け部201をヘッドキャリッジに取付けるためのねじ孔205を長孔として、スキマゲージなどの特殊工具を用いてギャップ調整をしながら取付ける必要があって、取付けが面倒であった。
【0005】
本考案は、上記の点に鑑みてなされたものであり、取付け金具の形状、構造を単純化することを可能にし、もって、加工工数の削減、加工所要時間の短縮を可能にして製造コストを低減し、さらに、取付けの際は、印字ヘッドとプラテンと間のギャップ調整を不要にすることができるマスク取付け金具を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本考案に係るマスク取付け金具は、印字ヘッドのキャリッジに対して固着される固着部と、その固着部の両側部において、斜線に沿って、かつ、その固着部に対して直角に折曲され、かつ、互いに最遠位置から最近位置にかけて下り傾斜し、最近端部間が所定距離隔てられている左右一対の腕部とを一体に有し、その腕部間にマスクを取付けるようにしたことを特徴としている。
【0007】
【作用】
曲げ加工は、取付け部から腕部が屈曲される部分のみである。従って、加工工数が少なく、経年変形も少ない。マスク部材を接合した状態の寸法精度も高い。
【0008】
マスクをプラテンに突き当ててキャリッジにねじで取付けることができ、寸法精度が高いから、ねじ孔は真円で良い。さらに、印字ヘッドは、マスク取付け金具の基準線に突き当ててねじで固定するので、所定のギャップを取ることができる。
【0009】
【実施例】
次に、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本実施例によるマスク取付け金具の斜視図、図2は同正面図、図3は同平面図、図4は同側面図である。図5は曲げ加工前の打抜き材の平面図である。
【0010】
図から明らかなように、本考案に係る取付け金具Aは、固着部1と、左右一対の腕部2,3とを一体に有し、固着部1に、この金具を印字ヘッドキャリッジに固着するためのねじ孔4が設けられている。
【0011】
そして、取付け金具Aは、図5の打抜き材AMの固着部1に真円のねじ孔4を設け、腕部2,3を固着部1の左右両端部において、斜線5に沿って、かつ、固着部1に対して直角に曲げるだけで完成しており、非常に簡単な形状である。つまり、この金具は、平板な打抜き材をわずか1本の直線に沿った位置に曲げ部を有するのみである。また、この取付け金具Aに対するマスクBの固着には、腕部2,3の先端において、一例として、レーザ溶接により行っている。
【0012】
このように、取付け金具の曲げ加工数が少なく、半田付けがないので、残留応力による復帰誤差が生じないから、加工後の経年変形は絶無に近い。また、加工寸法精度が従来品に比し、格段に高いため、固着部の基準線SLからマスクBのフェース面までの公差を正確に設定することができる。
【0013】
従って、本考案に係る取付け金具Aに取付けたマスクBを印字ヘッドDに対して取付けるには、マスクBをプラテンCに突き当て、ねじ孔4に通したねじをキャリッジフレームEにねじ込み、次に、印字ヘッドDをそのマスクBに突き当て、その印字ヘッドをキャリッジフレームFに固着することにより、完了することができる。
【0014】
上記のように、取付け金具は、曲げ工数が少なく、寸法精度が非常に高いので、キャリッジフレームに取付ける際にギャップ調整が不要である。
【0015】
【考案の効果】
上述のように、本考案によれば、加工工数及び部品点数が削減されるので、製造コストが低減される。また、曲げ工数が最少限にされているので、寸法精度が高く、取付け時にギャップ調整が不要であるので、取付け工数も短縮されるとともに、特殊工具が不要であるから、工具管理費が削減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の実施例に係るマスク取付け金具の斜視図である。
【図2】同じく正面図である。
【図3】同じく平面図である。
【図4】同じく側面図である。
【図5】打抜き材の曲げ加工前の平面図である。
【図6】印字ヘッドキャリッジに取付けた状態を示す正面図である。
【図7】従来のマスク取付け金具の斜視図である。
【図8】同じく正面図である。
【図9】同じく平面図である。
【図10】同じく側面図である。
【図11】打抜き材の曲げ加工前の平面図である。
【符号の説明】
A マスク取付け金具
1 固着部
2,3 腕部
4 ねじ孔
B マスク
C プラテン
D 印字ヘッド
E キャリッジ
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、ワイヤドットプリンタの印字ヘッド用マスクを印字ヘッドに対して所定距離に取付けるための金具に関する。
【0002】
【従来の技術】
ワイヤドットプリンタにおいて、所要の印字品質を確保するためには、印字ヘッドとプラテンとの間に最適のギャップを設定する必要がある。また、ワイヤドットプリンタでは、インクリボンに上側からワイヤでインパクトを与えて印字するが、インクリボンのワイヤで叩かれない部分が媒体に接触しないようにするため、ワイヤ先端に対応する部分にのみ窓を有するマスクが、印字ヘッドのフェース面と媒体との間に取付けられるから、上記所要のギャップの確保の可否は、結局、このマスクの設置位置精度に依存する。
【0003】
ところで、従来のドットプリンタにおけるマスクの取付け金具は、図7ないし図11に示すようなものであった。すなわち、取付け金具20は、経年変形の少ない材料、例えば、薄鋼板の打抜きと曲げ加工とにより作られている。図11の20M,30Mは、それぞれ取付け金具及び補強部材の打抜き後、加工前の形状を示す。図11における点線は曲げる位置を示す。図7〜11の取付け金具は、取付け部201と、その取付け部の両端から直角に手前に延出する張出し部202と、各張出し部の端部から直角に前記取付け部201と平行に、かつ、互いに接近する方向に延びる腕部203とを一体に有する者であって、二段L形に屈曲した補強金具30を架橋し、腕部203の先端にマスク部材40が固着されている。そして、取付け金具20と補強金具30及び取付け金具20とマスク40とは、それぞれプラズマ溶接(P)により、それぞれ接合してある。
【0004】
【解決しようとする技術課題】
上記のように、従来のマスク取付け金具は、加工工数が多く、かつ、形状が複雑であるため、第一には、加工が困難で製造コストが高くなる問題があり、第二に、曲げ工数が多いため、さらに、溶接や半田付けの際の加熱により、取付け部201からマスク40を固着する腕部203の先端までの寸法精度を高くすることが難しく、かつ、加工品ごとのバラツキがあるため、マスクを印字ヘッドに対して取付ける場合に、上記所要のギャップを確保するためには、ギャップ調整が必要であり、そのため、取付け部201をヘッドキャリッジに取付けるためのねじ孔205を長孔として、スキマゲージなどの特殊工具を用いてギャップ調整をしながら取付ける必要があって、取付けが面倒であった。
【0005】
本考案は、上記の点に鑑みてなされたものであり、取付け金具の形状、構造を単純化することを可能にし、もって、加工工数の削減、加工所要時間の短縮を可能にして製造コストを低減し、さらに、取付けの際は、印字ヘッドとプラテンと間のギャップ調整を不要にすることができるマスク取付け金具を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本考案に係るマスク取付け金具は、印字ヘッドのキャリッジに対して固着される固着部と、その固着部の両側部において、斜線に沿って、かつ、その固着部に対して直角に折曲され、かつ、互いに最遠位置から最近位置にかけて下り傾斜し、最近端部間が所定距離隔てられている左右一対の腕部とを一体に有し、その腕部間にマスクを取付けるようにしたことを特徴としている。
【0007】
【作用】
曲げ加工は、取付け部から腕部が屈曲される部分のみである。従って、加工工数が少なく、経年変形も少ない。マスク部材を接合した状態の寸法精度も高い。
【0008】
マスクをプラテンに突き当ててキャリッジにねじで取付けることができ、寸法精度が高いから、ねじ孔は真円で良い。さらに、印字ヘッドは、マスク取付け金具の基準線に突き当ててねじで固定するので、所定のギャップを取ることができる。
【0009】
【実施例】
次に、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本実施例によるマスク取付け金具の斜視図、図2は同正面図、図3は同平面図、図4は同側面図である。図5は曲げ加工前の打抜き材の平面図である。
【0010】
図から明らかなように、本考案に係る取付け金具Aは、固着部1と、左右一対の腕部2,3とを一体に有し、固着部1に、この金具を印字ヘッドキャリッジに固着するためのねじ孔4が設けられている。
【0011】
そして、取付け金具Aは、図5の打抜き材AMの固着部1に真円のねじ孔4を設け、腕部2,3を固着部1の左右両端部において、斜線5に沿って、かつ、固着部1に対して直角に曲げるだけで完成しており、非常に簡単な形状である。つまり、この金具は、平板な打抜き材をわずか1本の直線に沿った位置に曲げ部を有するのみである。また、この取付け金具Aに対するマスクBの固着には、腕部2,3の先端において、一例として、レーザ溶接により行っている。
【0012】
このように、取付け金具の曲げ加工数が少なく、半田付けがないので、残留応力による復帰誤差が生じないから、加工後の経年変形は絶無に近い。また、加工寸法精度が従来品に比し、格段に高いため、固着部の基準線SLからマスクBのフェース面までの公差を正確に設定することができる。
【0013】
従って、本考案に係る取付け金具Aに取付けたマスクBを印字ヘッドDに対して取付けるには、マスクBをプラテンCに突き当て、ねじ孔4に通したねじをキャリッジフレームEにねじ込み、次に、印字ヘッドDをそのマスクBに突き当て、その印字ヘッドをキャリッジフレームFに固着することにより、完了することができる。
【0014】
上記のように、取付け金具は、曲げ工数が少なく、寸法精度が非常に高いので、キャリッジフレームに取付ける際にギャップ調整が不要である。
【0015】
【考案の効果】
上述のように、本考案によれば、加工工数及び部品点数が削減されるので、製造コストが低減される。また、曲げ工数が最少限にされているので、寸法精度が高く、取付け時にギャップ調整が不要であるので、取付け工数も短縮されるとともに、特殊工具が不要であるから、工具管理費が削減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の実施例に係るマスク取付け金具の斜視図である。
【図2】同じく正面図である。
【図3】同じく平面図である。
【図4】同じく側面図である。
【図5】打抜き材の曲げ加工前の平面図である。
【図6】印字ヘッドキャリッジに取付けた状態を示す正面図である。
【図7】従来のマスク取付け金具の斜視図である。
【図8】同じく正面図である。
【図9】同じく平面図である。
【図10】同じく側面図である。
【図11】打抜き材の曲げ加工前の平面図である。
【符号の説明】
A マスク取付け金具
1 固着部
2,3 腕部
4 ねじ孔
B マスク
C プラテン
D 印字ヘッド
E キャリッジ
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 印字ヘッドのキャリッジに対して固着される固着部と、その固着部の両側部において、斜線に沿って、かつ、その固着部に対して直角に折曲され、かつ、互いに最遠位置から最近位置にかけて下り傾斜し、最近端部間が隔てられている左右一対の腕部とを一体に有し、その腕部間にマスクを取付けるようにしたことを特徴とする印字ヘッド用マスクの取付け金具。
【請求項1】 印字ヘッドのキャリッジに対して固着される固着部と、その固着部の両側部において、斜線に沿って、かつ、その固着部に対して直角に折曲され、かつ、互いに最遠位置から最近位置にかけて下り傾斜し、最近端部間が隔てられている左右一対の腕部とを一体に有し、その腕部間にマスクを取付けるようにしたことを特徴とする印字ヘッド用マスクの取付け金具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図9】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図9】
【図11】
【公開番号】実開平5−68653
【公開日】平成5年(1993)9月17日
【考案の名称】印字ヘッド用マスクの取付け金具
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−36624
【出願日】平成3年(1991)4月22日
【出願人】(000146663)株式会社新興製作所 (60)
【公開日】平成5年(1993)9月17日
【考案の名称】印字ヘッド用マスクの取付け金具
【国際特許分類】
【出願日】平成3年(1991)4月22日
【出願人】(000146663)株式会社新興製作所 (60)
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