説明

印字機用印字位置指示装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、印字手段として活字輪又はプリンタを使用するタイムスタンプとかタイムレコーダ或はナンバリングと云った印字機の技術分野で利用されるものであって、具体的には、差込まれた印字用紙に対する印字位置を指示することができる印字機用印字位置指示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】印字手段として活字輪又はプリンタを使用する従来のタイムスタンプの場合は、図9に示すようにタイムスタンプTSの滑り板THの上面に、印字位置を示す長穴Xaを穿設した薄いプラスチック板又はフイルムXを載置することによって、滑り板THの上面に沿って差込まれて来る印字用紙(図示せず)に対する印字位置を目視確認できる仕組に成っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、タイムスタンプTSは活字輪又はプリンタ用としてインクパッドとかインクリボンと云った印字手段を使用するため、長時間使用しているうちにプラスチック板とかフイルムXの面に上記のインクが付着して、滑り板の面をきたなくしたり、差込まれた印字用紙をインクで汚してしまう問題があり、更に、印字用紙に対する印字の巾が異なった場合には、その都度その印字巾に合った長穴Xaが穿設されているプラスチック板又はフイルムXと交換する必要があって、その作業が非常に面倒であった。
【0004】従って本発明の技術的課題は、滑り板の面とか印字用紙をインクで汚すことなく、印字用紙に対する印字位置を光マークによって明確に指示することができ、且つ、印字巾の変更にも容易に対処できるように工夫した印字機用印字位置指示装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の技術的課題を解決するために本発明で講じた手段は以下の如くである。滑り板の面に沿って差込まれた印字用紙に対して、活字輪又はプリンタを用いて時刻等を印字するように構成した印字機に於いて、
【0006】(1) 上記の滑り板とその上方に設けた光源との間に、光源から出射された光ビームを上記印字の印字巾に合せた大きさに集光して、上記滑り板の印字位置に光マークを照射することができる印字位置指定用のプリズムレンズと、光源から出射される光ビームを細い線状に集光して、滑り板面の長手方向に印字用紙の差込みをガイドするガイドライン用の光マークを照射することができるガイドライン用のプリズムレンズを設けること。
【0007】(2) 上記の滑り板とその上方に設けた光源との間に、光源から出射された光ビームを上記印字の印字巾に合せた大きさに集光して、上記滑り板の印字位置に光マークを照射することができる全体を横長に造った凹面鏡と、光源から出射される光ビームを細い線状に集光して、滑り板面の長手方向に印字用紙の差込みをガイドするガイドライン用の光マークを照射することができるガイドライン用の凹面鏡を設けること。
【0008】() 印字位置指示用のプリズムレンズ又は凹面鏡の取付位置を、滑り板との距離を任意に調整できるように移動調節自在に構成すること。
【0009】() 光ビームの光源として、印字機のパイロットランプとして兼用可能なLEDを用いること。
【0010】
【作用】上記の手段は以下の如く作用する。上記(1)で述べた手段によれば、印字用紙を差込む滑り板の面に、プリズムレンズによって印字巾の大きさに集光された光マークが照射されるため、印字機による印字位置を正しく目視確認することができ、更に、滑り板の面にプリズムレンズ又は凹面鏡によって細いライン状に集光されたガイドライン用の光マークを照射することができるから、印字用紙の差込みをこのガイドライン用の光マークに合せて正しく行うことを可能にすることができると共に、印字位置の指示ガイドラインの指示にプラスチック板とかフイルムを使用しないため、インクによる汚れを防止してきれいな印字を行うことを可能にする。
【0011】上記(2)で述べた手段によれば、凹面鏡の使用によってプリズムレンズを使用した場合と同様に滑り板印字位置用の光マークとガイドライン用の光マークを照射して、印字位置とガイドラインをこの光マークによって明確に指示することを可能にする。
【0012】上記()で述べた手段によれば、プリズムレンズ又は凹面鏡の取付位置を移動することにより、プリズムレンズ又は凹面鏡と滑り板との間の距離を調節して、光ビームの集光による光マークの大きさを印字巾の長さに合せることができるため、印字巾が変更される度に部品類(プラスチック板とかフイルム)を交換する必要がなくなって、印字巾の変更に基づく調整作業を頗る簡単に行うことを可能にする。
【0013】上記()で述べた手段によれば、光ビームの光源として専用のランプを設ける必要がなく、印字機のパイロットランプとして使用するLEDをそのまま光源として使用することによって、装置の簡素化と低コスト化を可能にする。
【0014】以上の如くであるから、上記(1)〜(4)で述べた手段によって上述した技術的課題を解決して、前記従来の技術の問題点を解消することができる。
【0015】
【実施例】以下に、上述した本発明に係る印字機用印字位置指示装置の好適な実施例を添付した図面と共に詳細に説明する。
【0016】図1は本発明を実施したタイムスタンプの内部構造を説明した側面図であって、符号1で全体的に示したタイムスタンプは上ケース体1Aと下ケース体1Bとによって構成され、上ケース体1Aの内部には後部に設けた取付軸3を支点にして上下動する主フレーム2が取付けられており、且つ、この主フレーム2には先端に表示器とかスイッチ盤(いずれも図示せず)等の部品類を取付ける取付板2bを連設した支持フレーム2aが取付けられていて、主フレーム2と一体に上下動する仕組に成っている。
【0017】また、Mと4及び5は上記の主フレーム2に取付けたモータと第1及び第2の連動ギヤであって、下ケース体1Bの滑り板1G上に設けたタッチプレート9を押すとモータMが起動して、モータMのピニオンMaに噛合した第1連動ギヤ4が連動回転し、更に、この第1連動ギヤ4のピニオン4aに噛合している第2連動ギヤ5が連動回転すると共に、第2連動ギヤ5の回転軸5aに取付けた偏心カム5Tが連動回転する仕組に成っていて、この偏心カム5Tの周面を押接させた下ケース体1B側のベアリング6と、主フレーム2を常時下方に牽引するスプリング7とによって、偏心カム5Tが回転する度に主フレーム2を取付軸3を支点にして下ケース体1Bの滑り板1Gに対して上下作動(接離作動)を繰返す仕組に成っている。
【0018】同じく図1に於いて、8は上述した支持フレーム2aに横架されているガイド軸8aに取付けたプリンタであって、上述したモータMによる偏心カム5Tの回転によって主フレーム2が支持フレーム2aを降下回動すると、滑り板1Gに沿って差込まれた印字用紙CK(図5参照)の印字面に上記プリンタ8のヘッドを近接して印字面に対して図6と図7に示したような日付と時刻或は番号等を印字する仕組に成っているが、このプリンタ8に代えて活字輪と印字用ハンマー又はローラを用いた活字印字ブロックを使用して、印字用紙CKに対する印字を活字で行う場合もあり、その選択は任意とする。
【0019】図2乃至図4に於いて、符号11と12で示したのは全体を断面略かまぼこ型に形成し、且つ、後部の左右両側に夫々取付穴11e,11eを設けた取付台11d,11dを連設した印字位置指定用とガイドライン用のプリズムレンズ(シリンドリカルレンズ)であって、11aと11bはレンズ体11Lの上面側と下面側に形成した入光面と出光面、11cは反射面を示し、印字位置指定用のプリズムレンズ11は図1の如く取付台11d,11dを用いて上述した取付板2bの裏面に印字用紙CKの差込み方向に対して直角に横に向けた状態で取付けられ、また、ガイドライン用のプリズムレンズ12は、同じく取付台11d,11dを用いて上記主フレーム2の先端部2cに印字用紙CKの差込み方向に沿わせて取付けられていて、これ等両プリズムレンズ11と12は、上記取付板2bの上側裏面に取付けた光源、即ち、パイロットランプ用のLED10から出射される光ビームを集光して、図5に示すように滑り板1Gの印字位置に印字巾と同じ長さの印字位置指定用の光マークEと、印字用紙CKの差込みをガイドするガイドライン用の光マークRを夫々照射するように構成されている。
【0020】図3と図4は、光源であるLED10から出射された光ビームを集光して滑り板1Gの面に光マークE又はRとして照射する各プリズムレンズ11,12の働きを説明した構成図であって、レンズ体11Lの入光と出光の角度A°とB°は同一角度に構成され、且つ、印字位置指示用のプリズムレンズ11の場合は、滑り板1Gに対して焦点距離Tよりも近い位置に取付けることによって、印字丈に相当する高さSと印字巾の長さに相当する横巾Hを持つ光マークEを図5に示すように滑り板1Gの印字位置に照射し、また、ガイドライン用のプリズムレンズ12の場合は、滑り板1Gに対して焦点距離Tと同じ位置に取付けることによって、長さHの細長いガイドライン用光マークRを同じく図5に示すように滑り板1Gの面に照射する仕組に成っている。
【0021】尚、図1に於いてガイドライン用のプリズムレンズ12を印字位置指示用のプリズムレンズ11よりも下側に取付けているのは、ガイドライン用として焦点距離の短い小型のプリズムレンズを使用しているためであって、仮りに、各プリズムレンズ11,12として焦点距離Tが同一の同形のレンズを使用した場合は、ガイドライン用のプリズムレンズ12を焦点距離Tを合せて印字位置指示用のプリズムレンズ11よりも少し上方に取付けて使用することは勿論である。また、レンズとして図示した如きプリズムレンズ11と12を使用したのは、LED10と滑り板1Gを結ぶ線上にあるプリンタ18等の印字部を避けて、光の屈折を利用するためである。
【0022】図6と図7は滑り板1Gの面に照射される光マークEのサイズと種類を示したものであって、図中Eaは日付と時刻の印字位置を指示する標準サイズの光マークで、Ebは日付と時刻に番号を加えた印字位置を指示する少し大きいサイズの光マーク、Ecはダイプレートの印字位置を指示する特殊サイズの光マークであって、少し大きいサイズの光マークEbはプリズムレンズ11の取付位置を標準サイズのものEaよりも少し下方に移動して、図4に示した印字巾Hを広げることによって照射でき、また、特殊サイズの光マークEcは専用のプリズムレンズ(図示せず)を使用することによって照射することが可能になる。
【0023】図8に於いて20は、上述したプリズムレンズ11,12に代えて印字位置指示用とガイドライン用の各光マークEとRを滑り板1Gの上面に照射することができる凹面鏡であって、全体を横長に形成し、且つ、反射面20aを凹面に形成したこの凹面鏡20は、前述したタイムスタンプ1の取付板2bに下向きに取付けることによって、LED10から出射される光ビームを反射及び集光して滑り板1Gの面に印字位置指示用の光マークEを照射したり、或は、凹面鏡20の取付角度と取付位置を変えることによって、同じく滑り板1Gの面に印字用紙CK用のガイドラインRを照射することができる。
【0024】本発明に係る印字機用印字位置指示装置は以上述べた如き構成であるから、これを図1に示したようなタイムスタンプ1とかタイムレコーダ(図示せず)の内部に取付ければ、印字用紙CKの差込みをガイドする滑り板1Gの印字位置とガイドライン位置に、プリズムレンズ11と12又は凹面鏡20によって集光された印字位置指示用の光マークEとガイドラインRを夫々照射することができるから、打刻者は先ずガイドライン用の光マークRに沿わせて印字用紙CKを正しく差込み、次いで、印字位置指示用の光マークEの位置を目視確認しながら時刻等の印字を行うことができ、また、この印字巾Hの変更は、プリズムレンズ11又は凹面鏡20の取付位置を移動して滑り板1Gとの距離を調節することによって、印字の内容に合せて長短自由に変更することができる。
【0025】
【発明の効果】以上述べた次第で、本発明に係る印字機用印字位置指示装置によれば、印字機の滑り板の面に印字位置とガイドラインを指示する光マークを照射できるから、打刻者はこれ等の光マークに従って印字用紙を差込んで指示された位置に日時等の印字を正しく行うことができると共に、印字位置指示用のプラスチック板とかフイルムを使用しないため、インクの付着による汚れの問題を解消でき、きれいで光を利用した高級イメージ感のある印字機を提供できるものであって、光源として印字機のパイロットランプを利用してコスト的にメカ式と同等に造れる点、及び、部品類を交換しなくてもプリズムレンズ又は凹面鏡の取付位置を移動するだけで極めて簡単に文字巾の異なる印字に対応できる点と相俟って、タイムスタンプとかタイムレコーダ或はナンバリングと云った印字機に実施して洵に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る印字位置指示装置を備えたタイムスタンプの内部構造を説明した側面図である。
【図2】本発明で使用するプリズムレンズ(シリンドリカルレンズ)の一例を示した斜視図である。
【図3】プリズムレンズによる光ビームの屈折状態と光マークの照射状態を側面から示した説明図である。
【図4】同じくプリズムレンズによる光ビームの屈折状態と光マークの照射状態を正面から示した説明図である。
【図5】滑り板に対する光マークの照射状態を説明した平面図である。
【図6】印字位置指示用の光マークのサイズを説明した構成図である。
【図7】同じく印字位置指示用の光マークの他のサイズを説明した構成図である。
【図8】プリズムレンズの代りに使用される凹面鏡の実施例を示した斜視図である。
【図9】従来例の構成を説明した斜視図である。
【符号の説明】
1 タイムスタンプ
1G 滑り板
2 主フレーム
2b 取付板
8 プリンタ
10 パイロットランプを兼ねるLED
11 印字位置指示用プリズムレンズ
12 ガイドライン指示用プリズムレンズ
20 凹面鏡
E 印字位置指示用光マーク
R ガイドライン指示用光マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】 滑り板の面に沿って差込まれた印字用紙に対して、活字輪又はプリンタを用いて時刻等を印字するように構成した印字機に於いて、上記の滑り板とその上方に設けた光源との間に、光源から出射された光ビームを上記印字の印字巾に合せた大きさに集光して、上記滑り板の印字位置に印字巾と同じ長さの光マークを照射することができる印字位置指定用のプリズムレンズと、光源から出射される光ビームを細い線状に集光して、滑り板面の長手方向に印字用紙の差込みをガイドするガイドライン用の光マークを照射することができるガイドライン用のプリズムレンズを設けたことを特徴とする印字機用印字位置指示装置。
【請求項2】 滑り板の面に沿って差込まれた印字用紙に対して、活字輪又はプリンタを用いて時刻等を印字するように構成した印字機に於いて、上記の滑り板とその上方に設けた光源との間に、光源から出射された光ビームを上記印字の印字巾に合せた大きさに集光して、上記滑り板の印字位置に印字巾と同じ長さの光マークを照射することができる全体を横長に造った凹面鏡と、光源から出射される光ビームを細い線状に集光して、滑り板面の長手方向に印字用紙の差込みをガイドするガイドライン用の光マークを照射することができるガイドライン用の凹面鏡を設けたことを特徴とする印字機用印字位置指示装置
【請求項3】 印字位置指示用のプリズムレンズ又は凹面鏡の取付位置を、滑り板との距離を任意に調整できるように移動調節自在に構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の印字機用印字位置指示装置。
【請求項4】 光ビームの光源として、印字機のパイロットランプとして兼用可能なLEDを用いたことを特徴とする請求項1又は2記載の印字機用印字位置指示装置。

【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【特許番号】特許第3162893号(P3162893)
【登録日】平成13年2月23日(2001.2.23)
【発行日】平成13年5月8日(2001.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−294208
【出願日】平成5年10月29日(1993.10.29)
【公開番号】特開平7−125385
【公開日】平成7年5月16日(1995.5.16)
【審査請求日】平成11年6月16日(1999.6.16)
【出願人】(000101617)アマノ株式会社 (174)
【参考文献】
【文献】特開 平1−157876(JP,A)
【文献】特開 平1−288549(JP,A)
【文献】特開 平2−277680(JP,A)
【文献】実開 昭58−31157(JP,U)