説明

印字消去装置及びリライタブルプリンタ

【課題】リライタブル媒体の厚さや搬送速度が変更されてもリライタブル媒体の印字消去を良好に行うことができるものとする。
【解決手段】加熱によって印字及び消去ができるリライタブル用紙Pの印字を消去する印字消去部200において、熱源を備え前記リライタブル媒体に接触してリライタブル用紙Pを加熱するヒートローラ201と、このヒートローラ201との間にリライタブル用紙Pを挟むプレスローラ202と、ヒートローラ201とプレスローラ202との圧接力を変更する圧接力変更機構210とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印字消去装置及びリライタブルプリンタに係り、特に加熱によって印字及び消去ができるリライタブル媒体の印字消去を行う印字消去装置及びこの消去装置を備えたリライタブルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱による印字及び消去が可能なリライタブル用紙が実用化されている。リライタブル用紙は、用紙の表面にロイコ染料や顕色剤などを含む可逆性感熱記録層が重層されており、加熱後の急冷によって印字内容が定着し、加熱後の徐冷によって印字内容が消去されるという特性を有している。
【0003】
このようにリライタブル媒体を使用するリライタブルプリンタは、印字されたリライタブル媒体の印字内容を消去し、この消去されたリライタブル媒体に印字を行い、リライタブル媒体を複数回にわたり使用できるようにしたものである。
【0004】
リライタブルプリンタにおいて、リライタブル用紙の消去は、消去装置によって行われる。消去装置は、所定の内容が印字されたリライタブル用紙にヒートローラなどの発熱体からリライタブル用紙の特性に応じた印字内容の消去に必要な熱エネルギーを加えた後、徐冷することで印字内容を消去する。
【0005】
また、リライタブル用紙への印字は、例えば、サーマルヘッドを備えた印字データに基づく印字を行う印字装置によって行われる。印字装置では、サーマルヘッドの発熱素子によるリライタブル媒体の加熱温度が消去のための加熱温度よりも高温に設定され、これによって加熱後の急冷を実現している。
【0006】
特許文献1には、このようなリライタブルプリンタとして、搬送路の上流側に消去機能を有する厚膜ヒータを、搬送路の下流側に印字機能を有するサーマルヘッドをそれぞれ備えて構成され、リライタブルプリンタ内部の環境温度やリライタブル用紙(特許文献1では記録媒体)の特性、サーマルヘッドなどの発熱体の特性が変化しても最適な消去品質及び印字品質を得ることができるように、環境温度やリライタブル用紙の種類に応じた印字情報の消去及び印字に最適な用紙搬送速度の制御や印字用ヘッドのパルス制御を行うものが記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2001−026132公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したリライタブルプリンタにおいて、リライタブル媒体の印字速度即ち、搬送速度は印字品質等に応じて制御される。即ち、高印字品質モード、バーコード印字モード、2次元コード印字モード等は低速で印字され、通常印字品質モード、大きな字モード、記号モード等では高速で印字される。
【0009】
そして、印字装置のサーマルヘッドの加熱はこの印字速度に応じて履歴制御され、適正な印字を実現している。
【0010】
しかしながら、従来の印字消去装置においては、印字消去用のヒータの熱応答特性が良好でないこともあり、印字速度が変更されたり、リライタブル媒体の厚みが変更されたりした場合にも一定とされ、リライタブル媒体の加熱が十分に行えず印字消去が不十分となる事態が発生することがある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、リライタブル媒体の搬送速度や厚さが変更されてもリライタブル媒体の印字消去を良好に行うことができる印字消去装置及びこれを備えたリライタブルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明において、前記の課題を解決するための手段は、加熱によって印字及び消去ができるリライタブル媒体の印字を消去するリライタブル媒体の印字消去装置において、前記リライタブル媒体に接触してリライタブル媒体を加熱する加熱部材と、この加熱部材との間に前記リライタブル媒体を挟む圧接部材と、前記加熱部材と前記圧接部材と間の圧接力を変更する圧接力変更機構と、を備えることを特徴とするリライタブル媒体の印字消去装置である。
【0013】
また、同じく本発明の手段は、加熱によって印字及び消去ができるリライタブル媒体の印字を消去するリライタブル媒体の印字消去装置において、前記リライタブル媒体に接触してリライタブル媒体を加熱する加熱部材と、この加熱部材との間に前記リライタブル媒体を挟む圧接部材とを備え、前記加熱部材及び前記圧接部材の少なくとも一方の部材は、硬度及び大きさの少なくとも一方が異なる部材と交換可能に配置され、前記一方の部材を交換することにより加熱部材と前記圧接部材との間の圧接力を変更することを特徴とするリライタブル媒体の印字消去装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リライタブル媒体の印字消去装置において加熱部材と圧接部材との圧接力を変更できるので、リライタブル媒体の搬送速度やリライタブル媒体の厚さが変更されても確実に印字消去を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係るリライタブルプリンタを図1乃至図5に基づいて説明する。図1はリライタブルプリンタの外観を示す斜視図である。本実施の形態のリライタブルプリンタ10は、後方部分11aの幅が前方部分11bの幅よりも狭い形態の筐体11に各部が収納されて構成されている。即ち、筐体11の後方部分11aには用紙収納部120と印字消去部200とが配置され、また前方部分11bには印字部160が配置されている(図2参照)。そして、筐体11の正面には、用紙発行口130が形成されている。
【0016】
また、用紙発行口130よりも左側上方部分には、表示部12と操作部13とが配置されている。表示部12は、横長に形成された液晶表示装置であり、数行程度の情報を表示することができる。また、前方部分11bの上側には取り外し可能なカバー部材14が配置されており、リライタブルプリンタ10の内部を露出できるようにしている。尚、用紙収納部120及び印字消去装置である印字消去部200を収納する筐体11の後方部分11aと印字部160を収納する筐体の前方部分11bとは、分離可能に構成されていてもよい。尚後方部分11aには、印字消去部200の圧接力変更レバー219が配置されている(図2参照)。
【0017】
図2はリライタブルプリンタの内部概略構成を示す断面図である。リライタブルプリンタ10は、筐体11内部にカットシート状のリライタブル媒体であるリライタブル用紙Pを格納する用紙収納部120と、用紙収納部120からリライタブル用紙Pを一枚ずつ取り出す給紙機構140と、リライタブル用紙の印字消去を行う印字消去部200と、前記リライタブル用紙Pを加熱して印字を行う印字部160とを備えている。また、本例では、リライタブルプリンタ10には、前記印字消去部200から印字部160まで配置され、リライタブル用紙Pの下面に接触して、リライタブル用紙Pを搬送する用紙搬送部110を備えている。
【0018】
用紙搬送部110には、3つのローラ部材111,112,113が配置され、これらのローラ部材111,112,113は、前記リライタブル媒体の下面に接触可能に筐体11に並設して配置され、ローラ部材111には対向ローラ116が、ローラ部材112には対向ローラ117が、ローラ部材113には対向ローラ118が配置されており、リライタブル用紙Pを用紙収納部120から印字部160にまで搬送する。
【0019】
用紙収納部120は、昇降自在に設けられたリフタ121を備えている。リフタ121は、複数枚のリライタブル用紙Pを積層状態で載置支持可能である。用紙収納部120の下流には給紙機構140が配置されており、給紙機構140は、リフタ121に載置されている最上位のリライタブル用紙Pのみが用紙搬送部110に給送されるようにする。
【0020】
給紙機構140は、ピックアップローラ141及びリバース方式の分離機構142を備える。ピックアップローラ141は、その回転によってリフタ121に載置されている最上位のリライタブル用紙Pに給送力を付与する。分離機構142は、ピックアップローラ141の回転によって重送される下位のリライタブル用紙Pを分離し、最上位のリライタブル用紙Pのみが用紙通路に給送される。このような用紙分離は、分離機構142が有しているリバースローラ143の給送方向とは逆方向の回転によってなされる。
【0021】
印字部160は、リライタブル用紙Pを加熱するサーマルヘッド161と、サーマルヘッド161に対向して配置されるプラテンローラ162と、用紙センサ163とを備えている。
【0022】
また、リライタブルプリンタ10には、各種のセンサが配置されている。即ち、リライタブルプリンタ10には、環境温度センサ171、媒体温度センサとしての用紙温度センサ172、給紙センサ173が配置されている。
【0023】
印字消去部200は、給紙機構140の下流に配置されている。
【0024】
次に印字消去部200について詳細に説明する。図3は印字消去部の構成を示す模式図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、図4及び図5は印字消去部の動作を示す模式図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【0025】
印字消去部200は、対向配置されているヒートローラ201とプレスローラ202とを備えている。ヒートローラ201は熱源を備えており、上方位置に配置され、プレスローラ202はヒートローラ201と接触するようヒートローラ201の下方位置に配置されている。
【0026】
また、印字消去部200は、ヒートローラ201のプレスローラ202への圧接力を変更できる圧接力変更機構210を備えている。この圧接力変更機構210は、筐体11の外側に配置された圧接力変更レバー219を回動操作することにより、ヒートローラ201を上下方向に移動可能に支持する。本例では、圧接力変更機構210は、ヒートローラ201をプレスローラ202に押し付けることにより圧接力を増し、ヒートローラ201をプレスローラ202から遠ざけることにより、圧接力を減じ、更にはヒートローラ201をプレスローラ202から離間させる。
【0027】
圧接力変更機構210は、筐体11に固定されたメインフレーム211と、メインフレーム211内に配置される圧接ブロック212とを備える。メインフレーム211は筐体11に固定された2枚の板部材211a、211bを備え、これらの板部材211a、211bの間に前記圧接ブロック212が上下動可能に保持されている他、プレスローラ202の軸204が回転可能に保持されている。また、これらの板部材211a、211bには、前記圧接力変更レバー219に連結された回動軸214が掛け渡されている他、上下方向に案内溝215が開設されている。
【0028】
圧接ブロック212は水平部材212aと、この水平部材の両端から垂下された垂下部材212b、212cとからなる略コ字状の部材である。前記垂下部材212b、212cの間には、ヒートローラ201の軸203が回転可能に保持されている。
【0029】
また、圧接ブロック212の垂下部材212b、212cの外側には、それぞれ2本の案内ピン213が形成されており、この案内ピン213は前記メインフレーム211の案内溝215に嵌入され、圧接ブロック212はメインフレーム211内で上下動可能に保持される。
【0030】
また、圧接ブロック212の水平部材212aの上側には2つのバネ保持部217が配置され、水平部材212aと平行に配置される板バネ部材216を保持する。
【0031】
そして、前記回動軸214には、前記板バネ部材216に上方から接触し、前記板バネ部材216に接触するカム部材218が配置され、このカム部材218の板バネ部材216への接触面を変更することによりヒートローラ201のプレスローラ202への圧接力を変更するものとしている。本例では、カム部材218を回転させることにより、ヒートローラ201のプレスローラ202への圧接力を大小の2段階に調整できる他、ヒートローラ201とプレスローラ202とを離間させることができる。
【0032】
カム部材218には、前記回動軸214から距離が異なる3個所の接触面218a、218b、218cを備えている。即ち、回動軸214からの距離は接触面218bが一番大きく、次いで接触面218a、接触面218cの順に小さくなっている。
【0033】
このため、圧接力変更レバー219を回転操作して、接触面218aを板バネ部材216に接触させたとき、図3に示すように、メインフレーム211が下方に押し付けられ板バネ部材216が小さく撓み、ヒートローラ201のプレスローラ202への圧接力が小となる。
【0034】
また、接触面218bを板バネ部材216に接触させたとき、図4に示すように、ヒートローラ201のプレスローラ202への圧接力が大となる。
【0035】
更に、接触面218cを板バネ部材216に接触させたとき、図5に示すように、ヒートローラ201とプレスローラ202とは離間する。
【0036】
従って、本例に係るリライタブルプリンタ10を使用するときには、オペレータは、印字モードに適合した印字速度、即ちリライタブル用紙Pの搬送速度及びリライタブル用紙Pの厚さに合わせて圧接力変更レバー219を操作してヒートローラ201のプレスローラ202への接触力を変更することができる。
【0037】
即ち、リライタブル用紙Pの搬送速度が遅い場合や、リライタブル用紙Pが厚く、ヒートローラ201のプレスローラ202への接触力を小さくする必要がある場合には、図3に示すように、圧接力変更レバー219を回転操作して、カム部材218の接触面218aが板バネ部材216に接触するようにする。すると、板バネ部材216のたわみ量が小さい状態となりヒートローラ201のプレスローラ202への接触力は小さいものとなる。
【0038】
一方、リライタブル用紙Pの搬送速度が速い場合や、リライタブル用紙Pが薄く、ヒートローラ201のプレスローラ202への接触力を大きくする必要がある場合には、図4に示すように、圧接力変更レバー219を回転操作して、カム部材218の接触面218bが板バネ部材216に接触するようにする。すると、板バネ部材216のたわみ量が大きい状態となりヒートローラ201のプレスローラ202への接触力は大きいものとなる。
【0039】
更に、メンテナンス時やリライタブル用紙Pのジャム時には、図5に示すように、圧接力変更レバー219を回転操作して、カム部材218の接触面218cが板バネ部材216に接触するようにする。すると、板バネ部材216は撓むことなくヒートローラ201とプレスローラ202とは離間してリライタブル用紙Pの取り出しなどを容易に行えるようになる。
【0040】
尚、上記の例では、圧接力変更機構は、ヒートローラだけを移動するように構成したが、プレスローラだけや、両方のローラを移動するように構成することができる。また、上記例では、加熱部材としてローラ状の部材を例として説明したが、加熱部材は平板状の加熱板とすることができる。
【0041】
更に上記例では、加熱部材を移動して接触圧を変更するようにしたが、加熱部材及び圧接部材の位置を固定して、加熱部材及び圧接部材の少なくとも一方の部材をその硬度や大きさが異なる複数の部材から選択された部材から選択するようにすることができる。このように、硬度や大きさが異なる部材を使用することにより、加熱部材と圧接部材の圧接力を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】リライタブルプリンタの外観を示す斜視図である。
【図2】リライタブルプリンタの内部概略構成を示す断面図である。
【図3】印字消去部の構成を示す模式図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】印字消去部の動作を示す模式図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図5】印字消去部の動作を示す模式図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0043】
10…リライタブルプリンタ、160…印字部、200…印字消去部、201…ヒートローラ(加熱部材)、202…プレスローラ(圧接部材)、210…圧接力変更機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱によって印字及び消去ができるリライタブル媒体の印字を消去するリライタブル媒体の印字消去装置において、
前記リライタブル媒体に接触してリライタブル媒体を加熱する加熱部材と、この加熱部材との間に前記リライタブル媒体を挟む圧接部材と、前記加熱部材と前記圧接部材と間の圧接力を変更する圧接力変更機構と、を備えることを特徴とするリライタブル媒体の印字消去装置。
【請求項2】
加熱によって印字及び消去ができるリライタブル媒体の印字を消去するリライタブル媒体の印字消去装置において、
前記リライタブル媒体に接触してリライタブル媒体を加熱する加熱部材と、この加熱部材との間に前記リライタブル媒体を挟む圧接部材とを備え、前記加熱部材及び前記圧接部材の少なくとも一方の部材は、硬度及び大きさの少なくとも一方が異なる部材と交換可能に配置され、前記一方の部材を交換することにより加熱部材と前記圧接部材との間の圧接力を変更することを特徴とするリライタブル媒体の印字消去装置。
【請求項3】
前記加熱部材は、回転可能であり前記リライタブル媒体にその周面が接触するローラ部材であることを特徴とする請求項1又は2記載のリライタブル媒体の印字消去装置。
【請求項4】
前記加熱部材は、平板状の加熱板であることを特徴とする請求項1又は2記載のリライタブル媒体の印字消去装置。
【請求項5】
前記圧接力変更機構は、前記加熱部材及び圧接部材の少なくとも一方の部材を移動させることを特徴とする請求項1、3及び4記載のいずれか記載のリライタブル媒体の印字消去装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか記載の印字消去装置と、前記リライタブル媒体の印字を行う印字装置と、を備えることを特徴とするリライタブルプリンタ


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−101525(P2009−101525A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272818(P2007−272818)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】