説明

印章照合システム、印章測定装置、印章照合装置、及び印章照合方法

【課題】遠隔地にいる利用者の印章の原本性を確実に判定する。
【解決手段】面上に並ぶ各点における圧力を計測する圧力分布センサを有する印章測定装置と、前記印章測定装置と通信可能に接続される印章照合装置と、を備え、前記印章照合装置は、前記圧力分布センサに登録印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データを前記登録印章の所有者の識別情報と対応付けて記憶する登録印章情報記憶部と、前記印章測定装置から、前記圧力分布センサに照合印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データと、前記照合印章の所有者の識別情報とを受信する印章データ受信部と、前記照合印章の各点における圧力データと前記所有者の識別情報と対応付けて記憶されている登録印章の各点における圧力データとに基づいて、前記照合印章が前記登録印章であるか否かを判定する印章判定部と、を有することを特徴とする印章照合システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔地にいる利用者の印章の原本性を判定する印章照合システム、印章測定装置、印章照合装置、及び印章照合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
役所や金融機関などで各種手続きを行う場合をはじめ、契約書等の重要な書類を取り交わす場合など、生活の様々な場面において、印章は本人を証明するものとして重要な役割を果たしている。
そして、使用された印章の真偽を判別するための様々な技術が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2898970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、今日、情報技術が進歩し、インタネットなどのコンピュータネットワークを利用して遠隔地から各種行政手続や金融取引等が行えるようになった。しかしこの場合、印章を使用して本人を証明することはできないため、様々な代替手段が用いられている。
【0004】
代表的なものとしてはパスワードが挙げられる。事前に登録してあるパスワードに一致するパスワードを入力することにより、本人であることを証明するものである。しかし本人がパスワードを忘れてしまうと手続きを行うことはできない。そのためパスワードは、誕生日や電話番号など第三者からも推測されやすいものが登録される傾向がある。
【0005】
また電子証明書を用いて本人を証明する方式もあるが、本人の電子証明書を記憶してあるコンピュータからしか手続きを行うことができない。また虹彩や指紋等の生体情報を用いて本人を証明する方式では、生体情報自体は一生変わらないものであるため、盗難防止に対する厳重な管理が必要とされる。
【0006】
このようなことから、コンピュータネットワークを用いた各種手続きや金融取引等において、印章を使用できるようにすることが望まれている。
【0007】
ここで、従来からある印章照合技術を応用して、コンピュータネットワークを用いた各種手続きや金融取引等において印章を使用するようにすることも考えられる。しかし、従来からある印章照合技術は、紙などに捺印された印章の印影を、事前に登録した印影と照合するものである。従ってこの場合、遠隔地にいる利用者から送信されてきた印影が、登録されている印影とたとえ一致したとしても、本当に、印影登録時に用いた印章により捺印されたものであるのかは分からない。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、遠隔地にいる利用者の印章の原本性を判定する印章照合システム、印章測定装置、印章照合装置、及び印章照合方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、面上に並ぶ各点における圧力を計測する圧力分布センサを有する印章測定装置と、前記印章測定装置と通信可能に接続される印章照合装置と、を備え、前記印章照合装置は、前記圧力分布センサに登録印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データを前記登録印章の所有者の識別情報と対応付けて記憶する登録印章情報記憶部と、前記印章測定装置から、前記圧力分布センサに照合印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データと、前記照合印章の所有者の識別情報とを受信する印章データ受信部と、前記照合印章の各点における圧力データと前記所有者の識別情報と対応付けて記憶されている登録印章の各点における圧力データとに基づいて、前記照合印章が前記登録印章であるか否かを判定する印章判定部と、を有することを特徴とする印章照合システムに関する。
【0010】
その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための最良の形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0011】
遠隔地にいる利用者の印章の原本性を確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
===全体構成例===
本実施の形態に係る印章照合システムの一例を図1に示す。
本実施の形態に係る印章照合システムは、印章測定装置300と通信可能に接続された利用者端末100が、A銀行サーバ200(特許請求の範囲に記載の印章照合装置に相当する)とネットワーク500を介して通信可能に接続されてなる。このようにして本実施の形態においては、A銀行サーバ200は利用者端末100を介して印章測定装置300と通信可能に接続される。
【0013】
<A銀行サーバ>
A銀行サーバ200は、利用者にオンラインバンキングサービスを提供するA銀行が有するコンピュータである。利用者は、利用者端末100を用いてネットワーク500を介してA銀行サーバ200にログインすることにより、A銀行による各種オンラインバンキングサービスの提供を受けることができる。
【0014】
A銀行のような、利用者に情報処理サービスの提供を行う情報処理サービス提供業者は、利用者が情報処理サービスの提供を受ける際に必要となる利用者IDやパスワード等の利用者識別情報を各利用者に付与する。この利用者識別情報は、利用者から情報処理サービス提供業者に対して情報処理サービス提供の申し込みがなされた場合に、情報処理サービス提供業者から利用者に書面や口頭、電子メール等により通知されるものである。もちろん、利用者識別情報は、利用者により指定されたものとすることも可能である。
【0015】
A銀行サーバ200はウェブサーバとして機能し、ネットワーク500を介して利用者識別情報を受信すると、情報処理サービスの提供のための処理を開始する。
【0016】
なお、本実施の形態においては情報処理サービスの一例としてオンラインバンキングを取り上げているが、情報処理サービスの内容はオンラインバンキングに限定されるものではない。例えば行政機関によるオンライン手続きサービスや、証券会社によるオンライン株式取引サービス、各種販売業者によるオンラインショッピング等とすることもできる。
【0017】
<利用者端末>
利用者端末100は、情報処理サービス提供業者により利用者識別情報が付与された利用者が有するコンピュータである。利用者端末100はウェブブラウザとしての機能を備え、上記ウェブサーバとして機能するA銀行サーバ200から送信されてくるウェブページをディスプレイなどに表示する。利用者端末100としては、例えば利用者が有するパソコンや、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)などとすることができる。
【0018】
<ネットワーク>
ネットワーク500は、利用者端末100とA銀行サーバ200とを通信可能に接続する通信網である。ネットワーク500は、例えばインタネットやATM通信網とすることができる。またインタネットのような公共的な通信網ではなく、プライベートの通信網とすることもできる。なお、ネットワーク500を介した利用者端末100とA銀行サーバ200との間の通信は、例えばTCP/IPプロトコルにより行われるようにすることができる。
【0019】
<印章測定装置>
印章測定装置300は、利用者が印章を使ってA銀行によるオンラインバンキングサービスの提供を受けようとする場合に使用する装置である。
【0020】
印章測定装置300の外観構成例を図2に示す。図2に示すように、本実施の形態に係る印章測定装置300は、印章装着部301と、入力装置350と、出力装置360と、外部I/F(Inter/Face)330(特許請求の範囲に記載のデータ送信部に相当する)とを備える。また印章測定装置300の内部構成図を図4に示す。図4に示すように、本実施の形態に係る印章測定装置300は、上記構成以外にも、ステッピングモータ390、波長計測器370、圧力分布センサ340、装置制御部310を備える。そして印章測定装置300のブロック構成図を図10に示す。
【0021】
印章装着部301は、印章を装着するために筒状の形状をしている。利用者は印章装着部301に印章を差し込んで押圧する。そして印章装着部301の底部に設けられる圧力分布センサ340に印章の彫刻面が押圧されることにより、圧力分布センサ340の面上に並ぶ各点における圧力が計測される。
【0022】
なお、印章装着部301に装着される印章には、様々な形状や大きさのものが存在する。そのため、図3に示すような各印章の形状に合わせた筒状のアダプタ305を用意しておき、アダプタ305と共に印章を印章装着部301に装着するようにすることもできる。なお、アダプタ305や印章装着部301の内側面には、印章を傷つけないように十分な柔軟性を有した部材によってクリアランスを補填するプロテクタを装着するようにすることもできる。
【0023】
圧力分布センサ340は、面上に並ぶ各点における圧力を計測するセンサである。例えば、面上に複数の圧力センサを配置してなり、圧力センサが配置された各点における圧力を計測する。図4に示す例では、圧力分布センサ340は四角形の形状をしている。また本実施の形態においては、圧力分布センサ340として、1mm程度の厚さを有し、75mm角程度の大きさのものを使用する。また、各圧力センサは、例えば600dpi(dot per inch)程度の密度で圧力分布センサ340の面上に配置されている。圧力分布センサ340に荷重が加えられた場合に、圧力分布センサ340により計測された各点における圧力は、各点の位置を示す情報とともに装置制御部310に送信され、圧力データとしてメモリ312に記憶される。そして外部I/F330から利用者端末100を介してA銀行サーバ200に送信される。もちろん、利用者端末100を介さずに直接A銀行サーバ200に送信するようにするようにすることもできる。
【0024】
波長計測器370は、物質に光を照射する部分と照射した光の散乱光を受光する部分とを備えて構成される。例えばレーザ光を照射しラマン散乱光を受光するラマン散乱光計測器とすることができる。本実施の形態においては、印章が印章装着部301に装着された状態で、波長計測器370から印章に対してレーザ光が照射される。そして印章からのラマン散乱光を受光する。このとき測定されるラマン散乱光の波長や振動数等のスペクトルにより、印章を構成する材質を特定することが可能となる。図4に示す例においては、印章装着部301の側面外周部に上段、中段、下段の3つの波長計測器370が設けられる。これにより、例えば印章を構成する材質が一様ではない場合には、一つの印章に対して複数の異なるラマン散乱光のスペクトルが得られることになる。このようにすることにより、印章の原本性をより確実に判定することが可能となる。
【0025】
なお図4に示すように、本実施の形態に係る印章測定装置300は、各波長計測器370が、ステッピングモータ390により、印章装着部301の側面外周部を周回可能に構成される。詳しくは後述する。
【0026】
入力装置350は、利用者による印章測定装置300へのデータ入力等のために用いられる装置である。例えば操作パネルにより構成することができる。利用者は、A銀行サーバ200へログインするための利用者識別情報である利用者IDやパスワードを、入力装置350を用いて印章測定装置300に入力するようにすることができる。入力された利用者識別情報は、直接A銀行サーバ200へ送信されるようにすることもできるし、利用者端末100を介してA銀行サーバ200に送信されるようにすることもできる。あるいは、利用者識別情報は印章測定装置300から入力するのではなく、利用者端末100から入力するようにすることもできる。
【0027】
出力装置360は、情報を外部に出力するための装置である。例えばLCDやLEDにより構成することができる。そして例えば上記入力装置350から利用者により入力された利用者識別情報が、出力装置360に表示される。あるいは、A銀行サーバ200により行われた印章照合の判定の結果を示す情報が出力装置360に表示されるようにすることもできる。
【0028】
外部I/F330は、他の機器と通信を行うための装置である。印章測定装置300は、外部I/F330を介して利用者端末100やA銀行サーバ200との間の通信を行うことができる。そして印章測定装置300は、外部I/F330を介して、測定した印章の圧力データや波長データをA銀行サーバ200に送信する。例えば図2に示す外観図において、外部I/F330に通信ケーブルを接続することによって、利用者端末100やA銀行サーバ200と通信を行うことができる。
【0029】
装置制御部310は、CPU(Central Processing Unit)311とメモリ312とを備え、印章測定装置300全体の制御を司る。装置制御部310は、メモリ312に記憶された印章測定装置制御プログラム720を実行することにより、印章測定装置300としての各機能を実現する。例えば、ステッピングモータ390の制御や、圧力分布センサ340による圧力の測定、波長計測器370によるラマン散乱光のスペクトルの測定などを制御する。メモリ312は例えば半導体記憶装置により構成することができる。メモリ312に印章測定装置制御プログラム720が記憶されている様子を図11に示す。
【0030】
===利用者端末、A銀行サーバの構成===
次に、利用者端末100及びA銀行サーバ200のそれぞれの構成について説明する。利用者端末100及びA銀行サーバ200はいずれもコンピュータであり、ハードウェア構成は基本的に同様である。そのため、これらのハードウェア構成をひとつのブロック図にまとめて図5に示す。また、これらの各機能をそれぞれ実現させるための制御プログラムやテーブルなどを記憶する記憶装置について、図6乃至図9に示す。
【0031】
<利用者端末の構成>
利用者端末100は、CPU110、メモリ120、ポート130、記録媒体読取装置140、入力装置150、出力装置160、記憶装置180を備える。
【0032】
CPU110は利用者端末100の全体の制御を司るもので、記憶装置180に記憶された利用者端末制御プログラム710をメモリ120に読み出して実行することにより、利用者端末100としての各種機能を実現する。
【0033】
記録媒体読取装置140は、記録媒体400に記録されているプログラムやデータを読み取るための装置である。読み取られたプログラムやデータはメモリ120や記憶装置180に格納される。従って、例えば記録媒体400に記録された利用者端末制御プログラム710を、記録媒体読取装置140を用いて上記記録媒体400から読み取って、メモリ120や記憶装置180に記憶するようにすることができる。記録媒体400としてはフレキシブルディスクや磁気テープ、コンパクトディスク等を用いることができる。記録媒体読取装置140は利用者端末100に内蔵されている形態とすることもできるし、外付されている形態とすることもできる。
【0034】
記憶装置180は、例えばハードディスク装置や半導体記憶装置等とすることができる。記憶装置180には利用者端末制御プログラム710が記憶される。その様子を図7に示す。なお、利用者端末制御プログラム710は複数のプログラムにより構成されるようにすることもできる。
【0035】
入力装置150は利用者による利用者端末100へのデータ入力等のために用いられる装置でありユーザインタフェースとして機能する。入力装置150としては例えばキーボードやマウス、タッチパネル等を用いることができる。出力装置160は情報を外部に出力するための装置でありユーザインタフェースとして機能する。出力装置160としては例えばディスプレイやプリンタ等を用いることができる。
【0036】
ポート130は通信を行うための装置である。例えばネットワーク500を介して行われる、A銀行サーバ200等の他の情報処理装置との通信や、印章測定装置300との通信は、ポート130を介して行われるようにすることができる。また例えば、利用者端末制御プログラム710をポート130を通じて他の情報処理装置からネットワーク500を介して受信して、メモリ120や記憶装置180に記憶するようにすることもできる。
【0037】
<A銀行サーバの構成>
次に、A銀行サーバ200の構成について説明する。A銀行サーバ200は、CPU210、メモリ220、ポート230、記録媒体読取装置240、入力装置250、出力装置260、記憶装置280を備える。これらの各装置の機能は、上述した利用者端末100が備える各装置と同様である。
【0038】
図6に示すように、A銀行サーバ200が備える記憶装置280には、サーバ制御プログラム700、利用者管理テーブル800、印章登録テーブル810が記憶される。CPU210によりサーバ制御プログラム700が実行され、メモリ220やポート230、入力装置250、出力装置260、記憶装置280等のハードウェア機器と協働することにより、特許請求の範囲に記載の登録印章情報記憶部、印章データ受信部、印章判定部が実現される。なおサーバ制御プログラム700は複数のプログラムにより構成されるようにすることもできる。
【0039】
利用者管理テーブル800は、A銀行が各利用者に付与した利用者IDやパスワード等の利用者識別情報を記憶したものである。利用者ID管理テーブル800を図8に示す。利用者管理テーブル800は「利用者ID」欄、「パスワード」欄、「氏名」欄、「ログイン方法」欄、「備考」欄を備える。
【0040】
「利用者ID」欄及び「パスワード」欄は、利用者が利用者端末100からA銀行サーバ200へログインし、オンラインバンキングサービスの提供を受ける際に必要な、利用者ID及びログインパスワードを利用者毎に記憶しておくための欄である。A銀行サーバ200は、利用者管理テーブル800に記憶されたものと一致する利用者ID及びログインパスワードが利用者端末100から送信されてきた場合に、その利用者端末100との間で、オンラインバンキングサービスの提供のための通信を行う。「氏名」欄には、ログインを許可した利用者端末100のウェブページに、利用者の氏名を表示させるためのデータが記憶される。
【0041】
「ログイン方法」欄は、利用者が利用者端末100からA銀行サーバ200にログインする際のログイン方法を記憶しておくための欄である。詳細は後述するが、利用者はA銀行サーバ200にログインする際に、利用者IDとパスワードとを入力してログインするか、利用者IDとパスワードと入力した上でさらに印章照合を行ってログインするか、利用者IDを入力する際にパスワードは入力せずに印章照合を行ってログインするか、を選択するようにすることができる。
【0042】
利用者IDとパスワードとを入力してログインする方法は、これまでも広く一般的に行われているログイン方法である。
【0043】
利用者IDとパスワードと入力した上でさらに印章照合を行ってログインする方法は、パスワードの照合に加え、印章照合をもパスしなければA銀行サーバ200にログインすることができないようにする方法である。このようにすることにより、第三者による不正なログインをより確実に防止することが可能となる。例えばキャッシュカードに記録された利用者IDが第三者に盗まれてしまった場合に、万が一パスワードが解読されてしまったとしても、その第三者は、印章の原本を持っていない限りA銀行サーバ200にログインすることはできない。
【0044】
利用者IDを入力する際にパスワードを入力せずに、A銀行サーバ200による印章照合をパスした場合にA銀行サーバ200にログインする方法では、利用者はパスワードを入力する必要がないというメリットを享受することができる。つまり利用者にとって、パスワードは覚えにくいものである上に、万が一忘れるとA銀行サーバ200にログインすることができなくなるという不便を被る場合がある。しかしパスワードを入力しなくても印章照合をパスすればログインを許可するようにしておけば、利用者は印章さえ持っていれば、ネットワーク500を利用したオンラインバンキングのサービスの提供を受けることができるようになるのである。
【0045】
またこの場合、仮に第三者によって印章が偽造されてしまったとしても、本実施の形態に係る印章照合方法によれば、利用者に実際に印章を押印させた上で得られる圧力データを登録印章の圧力データと比較することにより印章の原本性を判定するので、印章の彫刻面の形状によって定まる圧力データが登録印章の圧力データと一致しない限り、第三者が利用者になりすましてA銀行サーバ200にログインすることはできない。
【0046】
また印章の原本が第三者に盗まれてしまった場合には、利用者IDなどの情報が盗まれた場合とは違って、利用者は、第三者により不正な取引が行われる前に印章が盗難されたことに気付くことができる。第三者は印章の原本を盗んだとしても、利用者IDを取得しない限りA銀行サーバ200にログインすることはできないからである。このため、利用者は、第三者に利用者IDが知られる前に登録印章の変更手続きを行っておくことにより、もはや第三者にA銀行サーバ200にログインされることを心配する必要がなくなるのである。
【0047】
印章登録テーブル810は、登録印章の圧力データと波長データとを、登録印章の所有者の識別情報と対応付けて記憶しておくためのテーブルである。A銀行サーバ200は、印章測定装置300から送信されてきた照合印章の圧力データ及び波長データを、印章登録テーブル810に記憶されている登録印章の圧力データ及び波長データとそれぞれ比較することによって、照合印章が登録印章と同一か否かを判定する。
【0048】
圧力データは、圧力分布センサ340に印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力を示す値である。図9に示す例では、印章登録テーブル810において、各点における圧力を示す値が一次元上に並べて記憶されていることが示される。一次元に並べられたこれらの各圧力データを、圧力分布センサ340の面上の各圧力センサの配置に合わせて2次元平面上に並べ替えることにより、圧力分布センサ340上の各点における圧力と対応する圧力分布データが得られる。その他、例えば圧力分布センサ340の各点を示す座標を定義しておき、座標データと共に各点の圧力を示す値を記憶しておくようにすることもできる。
【0049】
このように、印章の原本性の判定に圧力データを用いることにより、遠隔地にいる利用者が使用した印章の原本性の判定をより確実に行うことが可能となるのである。例えば、印影の比較によって印章の原本性を判定しようとする場合には、精密にデジタル加工された印影を示すデータが遠隔地から送信されてきた場合には、もはや印章の偽造を見抜くことはできないのであるが、本実施の形態のように、遠隔地にいる利用者に印章を押圧させた上で得られる圧力データを登録印章の圧力データと比較するようにすれば、偽造した印章を用いることはほぼ不可能である。偽造された印章が使用された場合には、登録印章との圧力データの差分が検出できるからである。
【0050】
その上、本実施の形態においてはさらに、登録印章に照射したレーザ光に対するラマン散乱光の波長データを印章登録テーブル810に記憶しておき、照合印章からのラマン散乱光の波長データと比較するようにしている。ラマン散乱光は、物質の分子構造に応じた特有の波長をもつため、ラマン散乱光の波長を測定することにより、物質の分子構造、すなわち印章の材質を特定することができる。例えば、象牙やプラスチック、水晶、牛角、柘植の木など、それぞれ、印章のラマン散乱光の波長を測定することにより、材質を特定することが可能である。また、印章の内部に金属片などが埋め込まれている場合もあるが、このような場合であっても、その金属に特有のラマン散乱光の波長が得られるのである。このように、印章そのものの材質を特定しておくことにより、印章の原本性の判定をさらにより確実にすることが可能となる。
【0051】
なお本実施の形態では、一例として、ラマン散乱光の波長毎の強度分布を計測して、他の波長より強い強度を示すいくつかの波長(例えば上位2つ)を、強度の順に印章登録テーブル810に記憶しておくようにしている。そして照合印章のラマン散乱光の波長を計測して得られた強度分布から、他の波長より強い強度を示す上位2つの波長をそれぞれ比較することにより、照合印章の材質と登録印章の材質との同一性を判定するようにする。もちろん、印章登録テーブル810には、登録印章のラマン散乱光の強度分布そのものを記憶しておくようにすることもできる。
【0052】
===印章を用いてオンラインバンキングを利用する際の処理の流れ===
次に、本実施の形態に係る印章照合システムにおいて、利用者が、A銀行サーバ200によるオンラインバンキングサービスの提供を受ける際の処理の流れについて説明する。
【0053】
まず利用者はA銀行サーバ200へログインする。利用者は図12に示す画面において、利用者IDを入力して「OK」をマウス等でクリックする。そしてA銀行サーバ200により、利用者管理テーブル800に該当する利用者IDの記載があるかどうかがチェックされ、該当する利用者が特定できた場合には、その利用者の「ログイン方法」欄に記載されている方法により、パスワード又は印章照合あるいは両方による本人確認が行われる。
【0054】
まだ利用者が印章登録を行っていない場合には、A銀行サーバ200は、利用者端末100に対して、図13に示す画面のウェブページを送信する。そして利用者によりパスワードが入力されて「OK」がクリックされると、A銀行サーバ200は、利用者管理テーブル800に記憶されているパスワードと一致するかどうかをチェックする。パスワードが一致した場合にはログインを許可する。そしてA銀行サーバ200は利用者端末100に対して、図14に示す画面のウェブページを送信する。この画面において、利用者はA銀行サーバ200により提供される様々なオンラインバンキングサービスを選択することができる。
【0055】
<印章登録>
ここで、利用者が印章登録を行う場合の処理を説明する。また印章登録の処理の流れを示すフローチャートを図21に示す。利用者が、図14に示す画面において「お届け内容変更」を選択することにより表示される図示しない画面において所定のメニューを選択すると、利用者端末100からA銀行サーバ200に、印章登録要求が送信される(S1000、S1010)。
【0056】
そうすると、A銀行サーバ200から利用者端末100に対して、印章測定装置300の起動を指示する旨の情報と、図15に示す画面のウェブページとが送信される(S1020)。そして利用者端末100は、印章測定装置300を起動すると共に、図15に示す画面を表示する(S1030)。
【0057】
ここで利用者は、これから登録しようとする印章を印章測定装置300の印章装着部301に差し込んで押圧する。その間、印章測定装置300は、圧力分布センサ340及び波長計測器370により、圧力データ及び波長データを測定する(S1040〜S1060)。圧力データ及び波長データを計測するのに必要な時間がおおよそ決まっている場合には、測定の間、利用者端末100に、例えば「8秒ほどお待ち下さい」といった表示をするようにすることもできる。
【0058】
なお、測定した圧力データは、必要に応じて正規化しておくようにすることもできる(S1050)。例えば、得られた圧力値の最大値を1、最小値を0とするように各点における圧力値を変換しておくこともできる。あるいは、各点の圧力値を、各点の圧力値の平均値からの差に変換しておくこともできる。このようにすることにより、利用者が印章を押す際の力の相違をうち消すようにすることができる。特に、印章が会社の印章である場合などには印章押圧力の異なる様々な従業員により同一の印章が使用されるが、正規化をしておくことにより印章押圧力の個人差をうち消すことができる。もちろん正規化を行わないようにすることもできる。
【0059】
また圧力データの測定は複数回行うようにすることもできる。例えば利用者に印章を3回押圧させて、それぞれ得られる圧力データの平均値を算出するようにしても良い。
【0060】
圧力データ及び波長データの計測が終了したら、利用者端末100は、A銀行サーバ200に対して、計測した圧力データと波長データとを送信する(S1070)。そしてA銀行サーバ200は、それらの圧力データと波長データとを、利用者IDと対応付けて、印章登録テーブル810に記憶する(S1080)。その後A銀行サーバ200は利用者端末100に図16に示すウェブページを送信する。これで印章登録が完了する。
【0061】
<ログイン方法の設定>
また利用者は、図14に示す画面において「お届け内容変更」を選択して表示される図示しない画面において所定のメニューを選択することにより、ログイン方法の設定を行うことができる。この場合、利用者端末100からA銀行サーバ200に、ログイン方法の設定要求が送信されると、A銀行サーバ200は利用者端末100に対して、図17に示すようなログイン方法を設定するためのウェブページを送信する。図17に示す画面において、利用者が、「パスワードのみ」、「印章照合のみ」、「パスワードと印章照合の両方」のいずれかを選択して「登録」欄にマウスのカーソルを重ねてクリックすると、上記選択された内容を示す情報がA銀行サーバ200に送信される。そして利用者に選択されたログイン方法を示す情報が、利用者IDと対応付けてA銀行サーバ200の利用者管理テーブル800に登録される。
【0062】
<印章照合を用いたログイン>
ここで、利用者が「印章照合のみ」のログイン方法を選択している場合のログイン時の処理の流れを説明する。またログイン時の処理の流れを示すフローチャートを図22乃至図23に示す。
【0063】
まず利用者はA銀行サーバ200へログインする。利用者は図12に示す画面において、利用者IDを入力して「OK」をマウス等でクリックする(S2000)。そしてA銀行サーバ200により、利用者管理テーブル800に該当する利用者IDの記載があるかどうかがチェックされ、該当する利用者が特定できた場合には、その利用者のログイン方法を特定する(S2010、S2020)。
【0064】
もしパスワードを用いたログイン方法が選択されている場合には(S2030)、A銀行サーバ200は利用者端末100に対してパスワードの入力要求を送信し(S2040)、利用者により入力されたパスワードが利用者管理テーブル800に記憶されているパスワードと一致するか否かをチェックする(S2050〜S2070)。またパスワードが一致しない場合には、パスワードの再入力を指示する等のエラー処理を行う(S2080)。
【0065】
ここでは、「印章照合のみ」が利用者により選択されているので(S2090)、A銀行サーバ200は、利用者端末100に対して図18に示す画面のウェブページを送信する。そして利用者が照合印章を印章測定装置300の印章装着部301に装着して「OK」をクリックすると、A銀行サーバ200は 印章測定装置300の起動を指示する旨の情報と図19に示す画面のウェブページとを利用者端末100に送信する(S2100)。そして利用者端末100は、印章測定装置300を起動して、圧力分布センサ340による各点の圧力データの測定を開始する(S2110〜S2130)。圧力データの測定は、印章登録時における処理と同じようにして行うことができる。
【0066】
照合印章の各点における圧力データが利用者端末100からA銀行サーバ200に送信されると(S2140)、A銀行サーバ200は、照合印章の各点における圧力データと、印章登録テーブル810に記憶されている登録印章の圧力データと、に基づいて、上記照合印章が登録印章であるか否かを判定する。この判定は、例えば照合印章の各点における圧力データと登録印章の各点における圧力データとの一致度合いを示す指標値として、各点におけるそれぞれの圧力差の合計値を算出し、この合計値を所定の判定値と比較することにより行うことができる。例えば圧力差の合計値が判定値よりも小さい場合には、照合印章が登録印章と同一であると判定する。もちろん判定は上記以外にも様々な方法で行うことができる。例えば圧力差の自乗値の合計値が判定値よりも小さい場合に照合印章が登録印章と同一であると判定するようにすることもできる。その他、照合印章の圧力データ及び登録印章の圧力データのそれぞれに基づいて照合印章と登録印章との印影をそれぞれ画像化し、それらを公知のマッチング手法を用いて判定を行うようにすることもできる。
【0067】
本実施の形態においては、まずA銀行サーバ200は、照合印章の各点における圧力データを二次元化して、圧力分布センサ340のおける各点の圧力分布を示す圧力分布データを生成し、同様に印章登録テーブル810に記憶されている登録印章の各点における圧力データを二次元化して、圧力分布センサ340のおける各点の圧力分布を示す圧力分布データを生成する。そしてそれぞれの圧力分布データから、照合印章の中心と、登録印章の中心とを求める。各印章の中心を求める処理は、画像処理技術を応用することにより行うことができる。例えば各圧力分布データから押圧された印章の輪郭を抽出し、抽出された輪郭の中心を印章の中心として求めることができる。
【0068】
そしてA銀行サーバは、登録印章の圧力分布データと照合印章の圧力分布データの各印章の中心を重ねて、登録印章の各点における圧力データと照合印章の各点における圧力データとのそれぞれの圧力差の合計値を算出する。ここで、上述したように圧力データが正規化されている場合には、正規化された各圧力データによって、圧力差の合計値を算出することもできる。
【0069】
また正規化されていない場合であっても、照合印章の各点における圧力データの平均値から登録印章の各点における圧力データの平均値を引いた値を照合印章の各点における圧力データからそれぞれ引いて得られる各値と、登録印章の各点における圧力データと、の差分値の合計値を算出する様にすることができる。このようにすることによって、登録時における印章を押し込む力と、ログイン時における印章を押し込む力とが異なっていたとしても、印章の彫刻面の形状差に起因して生じる圧力差を正確に検出することが可能となる。
【0070】
そしてA銀行サーバ200は、登録印章の圧力分布データを基準に、照合印章の圧力分布データを、印章中心を軸に例えば右回転に1度ずつ回転させる。そして回転させる毎に登録印章の各点における圧力データと照合印章の各点における圧力データとのそれぞれの圧力差の合計値を算出する(S2150)。
【0071】
圧力分布データを回転させる結果、登録印章と照合印章との各点同士が重ならない場合は、例えば照合印章の圧力分布データにおいて、登録印章の圧力分布データの各点に重なる位置の圧力を、その位置を内包する周囲の4点の圧力により比例補完するようにして算出する。
【0072】
そして、上記算出した圧力差の合計値が最小となる回転角度を算出する(S2160)。上記圧力差が最小となった場合には、照合印章の印影と登録印章の印影が一致しているものと考えられる。
【0073】
そしてA銀行サーバ200は、上記算出した回転角度を利用者端末100に送信する(S2170)。そうすると利用者端末100は、印章測定装置300に対して、ステッピングモータ390を制御してその回転角度分だけ波長計測器370を照合印章の周囲に沿って回転させるようにする(S2180)。そして照合印章のラマン散乱光を測定して(S2190)、その波長データをA銀行サーバ200に送信する(S2200)。
【0074】
A銀行サーバ200は、上記圧力差の最小合計値を判定値(第1の判定値)と比較する。同様に、照合印章と登録印章との波長データの差分を判定値(第2の判定値)と比較する。その結果、上記圧力差の最小合計値が第1の判定値よりも小さく、かつ、照合印章と登録印章との波長データの差分が第2の判定値よりも小さい場合には、A銀行サーバ200は、照合印章は登録印章と同一であると判定する。なお、照合印章と登録印章とで複数の波長データを比較する場合には、各波長データの差分をそれぞれ第2の判定値と比較する。
【0075】
そしてA銀行サーバ200は、利用者端末100に、図14に示したような取引選択画面のウェブページを送信する(S2230)。利用者端末100は、利用者から取引処理の選択を受け付けると(S2240)、取引処理要求をA銀行サーバ200に送信する(S2250)。そしてA銀行サーバ200により取引処理が実行され(S2260)、実行結果が利用者端末100に送信される(S2270)。このようにして、利用者は、印章を用いてA銀行サーバ200にログインして、オンラインバンキングサービスの提供を受けることができる。またA銀行サーバ200により照合印章が登録印章と同一と判定された場合に、印章測定装置300の出力装置360にその旨を表示させるようにすることもできる。
【0076】
なお、S2210において、圧力差の最小合計値が第1の判定値以上か、または、照合印章と登録印章との波長データの差分が第2の判定値以上の場合には、A銀行サーバ200は、照合印章は登録印章と同一ではないと判定する(S2220)。そしてA銀行サーバ200は、利用者端末100に例えば図20に示すようなウェブページを送信し、利用者にログインを許可しない。またこのとき、印章測定装置300の出力装置360に、照合印章は登録印章と同一ではないと判定された旨を表示させるようにすることもできる。
【0077】
また、S2150やS2210において算出する圧力データの差分の合計値は、例えば差分の2乗値の合計値などとしてもよい。
【0078】
以上、本実施の形態について説明したが、本実施の形態によれば、遠隔地にいる利用者の印章の原本性を判定することができる。特に、利用者に実際に印章を押印してもらって得られる圧力データにより印章の原本性を判定するので、不正を行うことは困難である。例えば、本物の印章と印影が全く同一の印章を偽造したとしても、彫刻面の彫りの深さが異なれば、圧力分布の違いにより偽造であることを検出することが可能となる。このため、オンラインの取引や手続きをより安全に行えるようにすることができる。近年キャッシュカードやクレジットカードに記録された情報を盗み出すスキミングが問題となっているが、本実施の形態によれば、仮に情報が盗まれたとしても、登録印章そのものが盗まれない限り、第三者による不正な取引が行われることはない。
【0079】
また印章は長年の使用により磨り減ったり欠けたりすることがある。また朱肉の状態によっては、印影がにじんだりかすれたりすることもある。これらの場合に、従来の印影の比較による印章照合では、本物の印章であるにもかかわらず、偽物であると判定される場合がある。本実施の形態では、圧力データにより印章の原本性を判定するため、このような誤判定を防止することができる。
【0080】
また利用者の中には、パスワードを覚えておくのが面倒だと思う人や、パスワードだけではセキュリティ上の不安を感じる人など様々な人がいる。本実施の形態よれば、印章を用いた本人確認が可能となるので、各利用者のニーズにそれぞれあわせたサービスを提供することも可能となる。
【0081】
ところで、印章を押圧するという行為は利用者が行うものであるため、印章照合時に毎回同じ力で押圧されるとは限らない。また印章押圧時に斜めに力を加える場合や、押圧時に捻りを加える場合等も考えられる。このような場合、圧力分布センサ340上の各点の圧力分布が、登録されたものと異なってしまうこともあり得る。そのため本実施の形態においては、上述したように、事前に登録された印章の圧力データに対して所定の範囲内(第1の判定値の範囲内)において、照合印章の圧力データのばらつきを許容している。
【0082】
ばらつきを許容する範囲は、偽造された印章と本物の印章との識別を確実に行うためには極力小さな値に設定することが好ましいが、上記のように圧力データのばらつきを許容する必要性から、ゼロにはできない。
【0083】
そこで以下に説明するように、印章測定装置300に赤外線スキャン装置380(特許請求の範囲に記載の形状測定装置、距離測定器に相当する)を備えるようにすることもできる。この場合、照合印章と登録印章との圧力データ及び波形データの比較によって、照合印章が登録印章と同一であると判定された場合には、さらに、赤外線スキャン装置380を用いて計測した照合印章の彫刻面の形状データと、登録印章の彫刻面の形状データとを比較し、その結果に基づいて、照合印章が登録印章と同一であるか否かを判定するようにする。このようにすれば、照合印章と登録印章との圧力データのばらつきを許容しつつ、偽物の印章と本物の印章との識別も確実に行うことが可能となる。
【0084】
赤外線スキャン装置380を備えた印章測定装置300の外観構成は、図2と同様である。また赤外線スキャン装置380を備えた印章測定装置300の内部構成図を図24に示す。またこの印章測定装置300のブロック構成図を図27に示す。
【0085】
図24に示すように、本実施の形態に係る印章測定装置300は、圧力分布センサ340の下部に赤外線スキャン装置380が設けられている。印章測定装置300は、赤外線スキャン装置380を用いて印章の彫刻面の形状を測定する際には、圧力分布センサ340を移動させる。またその際、印章装着部301に装着された印章を保持するために、図25に示すように各ステッピングモータ390の円周内側には印章保持装置391が設けられている。印章測定装置300は、印章を保持する際には、図25の(b)に示すように印章保持装置391によって印章を周囲から締め付ける。
【0086】
このようにして印章が保持され、圧力分布センサ340が移動すると、赤外線スキャン装置380は印章の彫刻面に向けて赤外線レーザ光を照射する。そして赤外線スキャン装置380は、その反射光を受光するまでの時間を計測することにより、印章の彫刻面までの距離を測定する。赤外線スキャン装置380は、印章の彫刻面上を走査するようにして彫刻面上の各点に順次赤外線レーザ光を照射し、各点までの距離を測定する。このようにして赤外線スキャン装置380は印章の彫刻面の形状を測定する。
【0087】
なお、もちろん、距離の測定は、赤外線レーザ光を用いて行う場合に限られない。例えば可視光レーザ光や紫外線レーザ光を用いても良いし、超音波を用いても良い。超音波を用いた場合には、印章の彫刻面が透明な場合であっても距離を測定できる。また距離の測定は、レーザ光を照射してからその反射光を受光するまでの時間を計測することにより行う場合に限られず、例えば入射光と反射光の角度差から計測するようにしても良い。
【0088】
赤外線スキャン装置380により形状データとして測定された各点までの距離データは、各点の位置を示す情報とともに装置制御部310に送信され、メモリ312に記憶される。そして外部I/F330から利用者端末100を介してA銀行サーバ200に送信される。
【0089】
赤外線スキャン装置380によって測定された登録印章の彫刻面の各点までの距離データは、図26に示すように、A銀行サーバ200の印章登録テーブル810に登録印章の所有者の識別情報と対応付けて記憶される。
【0090】
図26に示す例では、印章登録テーブル810には、各点までの距離データが一次元に並べて記憶されているが、一次元に並べられたこれらの各距離データを2次元平面上に並べ替えることにより、登録印章の形状データが得られる。A銀行サーバ200は、照合印章の形状データを登録印章の形状データと比較することによって、照合印章が登録印章と同一か否かを判定する。
【0091】
次に、本実施の形態に係る印章照合システムにおいて、利用者が、A銀行サーバ200によるオンラインバンキングサービスの提供を受ける際の処理の流れについて説明する。
【0092】
赤外線スキャン装置380を用いて印章照合を行う場合は、赤外線スキャン装置380を用いない場合と比べ、印章登録時の処理と、印章照合時の処理とが異なる。
【0093】
まず、赤外線スキャン装置380を用いて印章照合を行う場合の印章登録の処理の流れを、図28のフローチャートを参照しながら説明する。
【0094】
利用者が、図14に示す画面において「お届け内容変更」を選択することにより表示される図示しない画面において所定のメニューを選択すると、利用者端末100からA銀行サーバ200に、印章登録要求が送信される(S3000、S3010)。
【0095】
そうすると、A銀行サーバ200から利用者端末100に対して、印章測定装置300の起動を指示する旨の情報と、図15に示す画面のウェブページとが送信される(S3020)。そして利用者端末100は、印章測定装置300を起動すると共に、図15に示す画面を表示する(S3030)。
【0096】
ここで利用者は、これから登録しようとする印章を印章測定装置300の印章装着部301に差し込んで押圧する。その間、印章測定装置300は、圧力分布センサ340、波長計測器370、赤外線スキャン装置380により、圧力データ、波長データ、形状データを測定する(S3040〜S3070)。ここで、本実施の形態においては、形状データの測定は、圧力データ及び波長データの測定が終わってから行う。つまり、印章測定装置300は、圧力データ及び波長データの測定が終わったら(S3040〜S3060)、印章保持装置391により登録印章を保持し、圧力分布センサ340を移動させて、それから赤外線スキャン装置390から赤外線レーザ光を照射する(S3070)。
【0097】
圧力データ、波長データ及び形状データの計測が終了したら、利用者端末100は、A銀行サーバ200に対して、計測した圧力データと波長データと形状データとを送信する(S3080)。そしてA銀行サーバ200は、それらの圧力データと波長データと形状データとを、利用者IDと対応付けて、印章登録テーブル810に記憶する(S3090)。その後A銀行サーバ200は利用者端末100に図16に示すウェブページを送信する。これで印章登録が完了する。
【0098】
次に、印章照合を行ってログインする際の処理の流れを、図29及び図30のフローチャートを参照しながら説明する。
【0099】
まず利用者はA銀行サーバ200へログインする。利用者は図12に示す画面において、利用者IDを入力して「OK」をマウス等でクリックする(S4000)。そしてA銀行サーバ200により、利用者管理テーブル800に該当する利用者IDの記載があるかどうかがチェックされ、該当する利用者が特定できた場合には、その利用者のログイン方法を特定する(S4010、S4020)。
【0100】
パスワードを用いたログイン方法が選択されている場合にはパスワードのチェックを行った後(S4030〜S4080)、A銀行サーバ200は、利用者端末100に対して図18に示す画面のウェブページを送信する。そして利用者が照合印章を印章測定装置300の印章装着部301に装着して「OK」をクリックすると、A銀行サーバ200は 印章測定装置300の起動を指示する旨の情報と図19に示す画面のウェブページとを利用者端末100に送信する(S4090、S4100)。そして利用者端末100は、印章測定装置300を起動して、圧力分布センサ340による各点の圧力データの測定、及び波長計測器370による波長データの測定を開始する(S4110〜S4200)。
【0101】
そしてA銀行サーバ200は、照合印章と登録印章の圧力データの差分の最小合計値を判定値(第1の判定値)と比較する。同様に、照合印章と登録印章との波長データの差分を判定値(第2の判定値)と比較する。その結果、上記圧力差の最小合計値が第1の判定値よりも小さく、かつ、照合印章と登録印章との波長データの差分が第2の判定値よりも小さい場合には、A銀行サーバ200は、照合印章は登録印章と同一であると判定する。
【0102】
ここでA銀行サーバ200は、照合印章が登録印章と同一であると判定した場合には(S4200)、さらに、照合印章の彫刻面の形状データと登録印章の彫刻面の形状データとに基づいて、上記照合印章が登録印章であるか否かを判定する。この判定は、例えば照合印章の彫刻面の形状データと登録印章の彫刻面の形状データとの一致度合いを示す指標値として、登録印章の彫刻面の各点までの距離と照合印章の彫刻面の各点までの距離との差の合計値を算出し、この合計値を所定の判定値(第3の判定値)と比較することにより行うことができる。例えば各点までの距離の差の合計値が判定値よりも小さい場合には、照合印章が登録印章と同一であると判定する。もちろん判定は上記以外にも様々な方法で行うことができる。例えば距離の差の自乗値の合計値が判定値よりも小さい場合に照合印章が登録印章と同一であると判定するようにすることもできる。
【0103】
このために、A銀行サーバ200は利用者端末100に、照合印章の彫刻面の形状測定の指示を送信する(S4230)。そうすると利用者端末100は、印章測定装置300を起動して、照合印章の彫刻面の形状測定を開始する(S4240)。つまり赤外線スキャン装置380による照合印章の彫刻面上の各点の距離データの測定が開始される。印章測定装置300は、照合印章の彫刻面の形状測定を行うために、まず、ステッピングモータ390の印章保持装置391を制御して、印章装着部301に装着されている照合印章を保持する。そして印章測定装置300は、圧力分布センサ340をスライドさせ、照合印章の彫刻面と赤外線スキャン装置380とを対面させる。そして印章測定装置300は、照合印章の彫刻面を走査するように、赤外線スキャン装置380から彫刻面上の各点に向けて順次赤外線レーザ光を発射して、各点までの距離を計測する。そして印章測定装置300は、計測した各点の距離データを利用者端末100に送信し、利用者端末100はA銀行サーバ200に送信する(S4050)。そうすると、A銀行サーバ200は、上述したように、照合印章の彫刻面の各点までの距離データと、印章登録テーブル810に記憶されている登録印章の彫刻面の各点までの距離データと、に基づいて、上記照合印章が登録印章であるか否かを判定する(S4260)。
【0104】
A銀行サーバ200は、照合印章が登録印章と同一であると判定した場合には、利用者端末100の利用者に対して、オンラインバンキングサービスを提供する(S4280〜S4320)。
【0105】
なお、S4210において、圧力差の最小合計値が第1の判定値以上か、または、照合印章と登録印章との波長データの差分が第2の判定値以上の場合、もしくは、S4260において、距離データの差分の合計値が第3の判定値以上の場合には、A銀行サーバ200は、照合印章は登録印章と同一ではないと判定する(S4220、S42700)。そしてA銀行サーバ200は、利用者端末100に例えば図20に示すようなウェブページを送信し、利用者にログインを許可しない。またこのとき、印章測定装置300の出力装置360に、照合印章は登録印章と同一ではないと判定された旨を表示させるようにしても良い。
【0106】
以上のように、彫刻面の形状に基づいた印章の照合も行うようにすることにより、圧力データの比較により印章照合を行う際に、照合印章と登録印章の圧力データの一致度合いにある程度の幅をもたせることができるようになるため、利用者の使い勝手が向上する。また、偽物の印章と本物の印章との圧力データの差が上記幅よりも小さかったとしても、彫刻面の彫りの深さ等の形状の違いにより識別が可能となる。このため、照合印章と登録印章との圧力データのばらつきを許容しつつ、偽物の印章と本物の印章との識別も確実に行うことが可能となる。
【0107】
なお本実施の形態においては、利用者端末100と印章測定装置300とは別個の装置である場合を例に説明したが、一体的に構成されていても良い。例えば、コンビニエンスストアなどに設置されている銀行ATM装置などに印鑑測定装置300の機能を付加させた形態とすることもできる。この場合には、利用者端末100と印章測定装置300とが一体的に構成された装置が、印章測定装置300としてネットワーク500を通じてA銀行サーバ200と通信を行うことになる。
【0108】
以上発明を実施するための最良の形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本実施の形態に係る印章照合システムの全体構成を示す図である。
【図2】本実施の形態に係る印章測定装置の外観図の一例を示す図である。
【図3】本実施の形態に係るアダプタを示す図である。
【図4】本実施の形態に係る印章測定装置の内部構成図を示す図である。
【図5】本実施の形態に係るA銀行サーバ、利用者端末のハードウェア構成を示す図である。
【図6】本実施の形態に係るA銀行サーバの記憶装置を示す図である。
【図7】本実施の形態に係る利用者端末の記憶装置を示す図である。
【図8】本実施の形態に係る利用者管理テーブルを示す図である。
【図9】本実施の形態に係る印章登録テーブルを示す図である。
【図10】本実施の形態に係る印章測定装置のハードウェア構成を示す図である。
【図11】本実施の形態に係る印章測定装置のメモリを示す図である。
【図12】本実施の形態に係るA銀行サーバへのログイン時の画面を示す図である。
【図13】本実施の形態に係るA銀行サーバへのパスワード入力画面を示す図である。
【図14】本実施の形態に係るA銀行サーバの取引選択画面を示す図である。
【図15】本実施の形態に係る印章登録時の画面を示す図である。
【図16】本実施の形態に係る印章登録時の画面を示す図である。
【図17】本実施の形態に係るログイン方法選択の画面を示す図である。
【図18】本実施の形態に係る印章照合時の画面を示す図である。
【図19】本実施の形態に係る印章照合時の画面を示す図である。
【図20】本実施の形態に係る印章照合失敗時の画面を示す図である。
【図21】本実施の形態に係る印章登録時の処理の流れを示すフローチャートである。
【図22】本実施の形態に係る印章照合時の処理の流れを示すフローチャートである。
【図23】本実施の形態に係る印章照合時の処理の流れを示すフローチャートである。
【図24】本実施の形態に係る印章測定装置の内部構成図を示す図である。
【図25】本実施の形態に係る印章保持装置の構成を示す図である。
【図26】本実施の形態に係る印章登録テーブルを示す図である。
【図27】本実施の形態に係る印章測定装置のハードウェア構成を示す図である。
【図28】本実施の形態に係る印章登録時の処理の流れを示すフローチャートである。
【図29】本実施の形態に係る印章照合時の処理の流れを示すフローチャートである。
【図30】本実施の形態に係る印章照合時の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0110】
100 利用者端末 200 A銀行サーバ
300 印章測定装置 310 装置制御部
330 外部I/F 340 圧力分布センサ
350 入力センサ 360 出力センサ
370 波長計測器 380 赤外線スキャン装置
390 ステッピングモータ 391 印章保持装置
400 記録媒体 500 ネットワーク
700 サーバ制御プログラム 710 利用者端末制御プログラム
720 印章測定装置制御プログラム 800 利用者管理テーブル
810 印章登録テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面上に並ぶ各点における圧力を計測する圧力分布センサを有する印章測定装置と、前記印章測定装置と通信可能に接続される印章照合装置と、を備え、
前記印章照合装置は、
前記圧力分布センサに登録印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データを前記登録印章の所有者の識別情報と対応付けて記憶する登録印章情報記憶部と、
前記印章測定装置から、前記圧力分布センサに照合印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データと、前記照合印章の所有者の識別情報とを受信する印章データ受信部と、
前記照合印章の各点における圧力データと前記所有者の識別情報と対応付けて記憶されている登録印章の各点における圧力データとに基づいて、前記照合印章が前記登録印章であるか否かを判定する印章判定部と、
を有することを特徴とする印章照合システム。
【請求項2】
前記印章判定部は、
前記照合印章の各点における圧力データと前記登録印章の各点における圧力データとの差分から両データの一致度合いを示す指標値を算出し、この指標値と所定の判定値との比較に基づいて、前記照合印章が前記登録印章であるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の印章照合システム。
【請求項3】
前記指標値は、
前記照合印章の各点における圧力データと前記登録印章の各点における圧力データとの差分又はその自乗値の合計値である
ことを特徴とする請求項2に記載の印章照合システム。
【請求項4】
面上に並ぶ各点における圧力を計測する圧力分布センサ及び物質に照射した光の散乱光の波長を計測する波長計測器を有する印章測定装置と、前記印章測定装置と通信可能に接続される印章照合装置と、を備え、
前記印章照合装置は、
前記圧力分布センサに登録印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データと前記波長計測器により計測される前記登録印章からの散乱光の波長データとを、前記登録印章の所有者の識別情報と対応付けて記憶する登録印章情報記憶部と、
前記印章測定装置から、前記圧力分布センサに照合印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データと、前記波長計測器により計測された前記照合印章からの散乱光の波長データと、前記照合印章の所有者の識別情報とを受信する印章データ受信部と、
前記照合印章の各点における圧力データと、前記所有者の識別情報と対応付けて記憶されている登録印章の各点における圧力データと、前記照合印章の波長データと、前記登録印章の波長データと、に基づいて、前記照合印章が前記登録印章であるか否かを判定する印章判定部と、
を有することを特徴とする印章照合システム。
【請求項5】
前記波長計測器は、物質に照射したレーザ光のラマン散乱光の波長を計測するラマン散乱光計測器である
ことを特徴とする請求項5に記載の印章照合システム。
【請求項6】
面上に並ぶ各点における圧力を計測する圧力分布センサと、
物質に照射した光の散乱光の波長を計測する波長計測器と、
前記圧力分布センサに登録印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データ及び前記波長計測器により計測される前記登録印章からの散乱光の波長データを前記登録印章の所有者の識別情報と対応付けて記憶し、前記圧力分布センサに照合印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データと、前記照合印章と所有者の識別情報が一致する登録印章の各点における圧力データと、前記波長計測器により計測される前記照合印章からの散乱光の波長データと、前記登録印章の波長データと、に基づいて前記照合印章が前記登録印章であるか否かを判定する印章照合装置に、前記照合印章の各点における圧力データと前記照合印章からの散乱光の波長データと前記照合印章の所有者の識別情報とを送信するデータ送信部と、
を備えることを特徴とする印章測定装置。
【請求項7】
面上に並ぶ各点における圧力を計測する圧力分布センサを備える印章測定装置と通信可能に接続され、
前記圧力分布センサに登録印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データを、前記登録印章の所有者の識別情報と対応付けて記憶する登録印章情報記憶部と、
前記印章測定装置から、前記圧力分布センサに照合印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データと、前記照合印章の所有者の識別情報とを受信する印章データ受信部と、
前記照合印章の各点における圧力データと前記所有者の識別情報と対応付けて記憶されている登録印章の各点における圧力データとに基づいて前記照合印章が前記登録印章であるか否かを判定する印章判定部と、
を備えることを特徴とする印章照合装置。
【請求項8】
面上に並ぶ各点における圧力を計測する圧力分布センサを備える印章測定装置と通信可能に接続され、前記圧力分布センサに登録印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データを、前記登録印章の所有者の識別情報と対応付けて記憶する印章照合装置を用いた印章照合方法であって、
前記印章照合装置が、前記印章測定装置から、前記圧力分布センサに照合印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データと、前記照合印章の所有者の識別情報とを受信し、
前記印章照合装置が、前記照合印章の各点における圧力データと前記所有者の識別情報と対応付けて記憶されている登録印章の各点における圧力データとに基づいて前記照合印章が前記登録印章であるか否かを判定する
ことを特徴とする印章照合方法。
【請求項9】
面上に並ぶ各点における圧力を計測する圧力分布センサ、物質に照射した光の散乱光の波長を計測する波長計測器、及び物体の表面の形状を測定する形状測定装置、を有する印章測定装置と、前記印章測定装置と通信可能に接続される印章照合装置と、を備え、
前記印章照合装置は、
前記圧力分布センサに登録印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データと、前記波長計測器により計測される前記登録印章からの散乱光の波長データと、前記形状測定装置により測定される前記登録印章の彫刻面の形状データと、を前記登録印章の所有者の識別情報と対応付けて記憶する登録印章情報記憶部と、
前記印章測定装置から、前記圧力分布センサに照合印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データと、前記波長計測器により計測される前記照合印章からの散乱光の波長データと、前記形状測定装置により測定される前記照合印章の彫刻面の形状データと、前記照合印章の所有者の識別情報とを受信する印章データ受信部と、
前記照合印章の各点における圧力データと、前記照合印章の波長データと、前記照合印章の彫刻面の形状データと、前記所有者の識別情報と対応付けて記憶されている登録印章の各点における圧力データと、前記登録印章の波長データと、前記登録印章の彫刻面の形状データと、に基づいて、前記照合印章が前記登録印章であるか否かを判定する印章判定部と、
を有することを特徴とする印章照合システム。
【請求項10】
前記印章判定部は、
前記照合印章の各点における圧力データと前記登録印章の各点における圧力データとの差分から両データの一致度合いを示す第1の指標値を算出し、前記照合印章の波長データと前記登録印章の波長データとの差分から両データの一致度合いを示す第2の指標値を算出し、前記第1及び第2の指標値をそれぞれ第1及び第2の判定値と比較した結果に基づいて、前記照合印章が前記登録印章であるか否かを判定し、
前記照合印章が前記登録印章であると判定した場合には、さらに、前記照合印章の彫刻面の形状データと前記登録印章の彫刻面の形状データとの差分から両データの一致度合いを示す第3の指標値を算出し、前記第3の指標値を第3の判定値と比較した結果に基づいて、前記照合印章が前記登録印章であるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項9に記載の印章照合システム。
【請求項11】
前記形状測定装置は、登録印章又は照合印章の彫刻面上の各点にレーザ光を照射し、その反射光を計測することにより、各点までのそれぞれの距離を計測する距離測定器であり、
前記形状データは、レーザ光を照射した各点までの距離を示すデータである
ことを特徴とする請求項9に記載の印章照合システム。
【請求項12】
面上に並ぶ各点における圧力を計測する圧力分布センサと、
物質に照射した光の散乱光の波長を計測する波長計測器と、
物体の表面の形状を測定する形状測定装置と、
前記圧力分布センサに登録印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データ、前記波長計測器により計測される前記登録印章からの散乱光の波長データ、及び前記形状測定装置により計測される前記登録印章の彫刻面の形状データを、前記登録印章の所有者の識別情報と対応付けて記憶し、前記圧力分布センサに照合印章の彫刻面を押圧して得られる各点における圧力データと、前記波長計測器により計測される前記照合印章からの散乱光の波長データと、前記形状測定装置により測定される前記照合印章の彫刻面の形状データと、前記照合印章と所有者の識別情報が一致する登録印章の各点における圧力データと、前記登録印章の波長データと、前記登録印章の彫刻面の形状データと、に基づいて前記照合印章が前記登録印章であるか否かを判定する印章照合装置に、前記照合印章の各点における圧力データと前記照合印章からの散乱光の波長データと前記照合印章の彫刻面の形状データと前記照合印章の所有者の識別情報とを送信するデータ送信部と、
を備えることを特徴とする印章測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2006−309695(P2006−309695A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278441(P2005−278441)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(598049322)株式会社三菱東京UFJ銀行 (200)
【Fターム(参考)】