説明

印鑑照合装置

【課題】登録印影画像に複数の印影が含まれている場合、目的とする登録印影を抽出すること。
【解決手段】複数の印影を含む登録印影画像32を記憶する登録印影画像記憶部21と、登録印影画像記憶部21に記憶する登録印影画像32の複数の印影の中から目的とする登録印影の候補を抽出する登録印影候補抽出部22と、登録印影候補抽出部22によって抽出した候補となる登録印影に対して、はみ出し印影か否かを判定するはみ出し印影判定部24と、はみ出し印影を対象外とし、残された登録印影Aと被照合印影Dとを照合する照合部15を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関において使用する印鑑照合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関の窓口取引における引出取引や振込取引においては、顧客が持参した被照合印と、予め登録した印鑑との照合を行っている。このような印鑑照合の方法によると、まず、登録印影と被照合印影の両方の印影を抽出し、それぞれの印影の印影形状と形状サイズを検出している。そして、傾きを考慮して回転を行い、そして、重ね合わせによる判定又は目視確認による判定により印鑑照合を行っている。
【0003】
特開2001−297327号公報(特許文献1)には、抽出された登録印影と被照合印影の両方が、印影形状が同じでサイズが異なる場合、或いは印影が異なる角度で傾いている場合について目視確認を容易にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−297327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1による技術によれば、登録印影画像に複数の印影が含まれている場合、目的とする登録印影以外の印影が抽出されることになると、被照合印影との照合作業が困難になるという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、登録印影画像に複数の印影(登録印影及びそれ以外の印影)が含まれている場合、複数の印影から目的とする登録印影を自動的に抽出することにより、登録印影と被照合印影との照合作業を簡単に行うことができる印鑑照合装置を提供することを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に関する印鑑照合装置は、登録印影と登録印影以外の印影とを含む登録印影画像を記憶する登録印影画像記憶部と、前記登録印影画像中に複数の印影がある場合に、前記複数の印影から登録印影の候補を抽出する登録印影候補抽出部と、登録印影候補抽出部によって抽出した登録印影候補に対して、所定の基準に基づいて目的とする登録印影を判定する登録印影判定部と、登録印影判定部によって判定された登録印影と被照合印影とを照合する照合部を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
上記構成を有する本発明によれば、登録印影画像に複数の印影が含まれている場合、複数の印影から目的とする登録印影を自動的に抽出することにより、登録印影と被照合印影との照合作業を簡単に行うことができる印鑑照合装置を提供することが可能になる。従って、印鑑照合業務の堅確性をより保つことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態に関する印鑑照合システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に関する営業店窓口端末10の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態に関する印鑑照合部15の機能ブロック図である。
【図4】第1の実施の形態に関する印鑑照合処理のフローチャートである。
【図5】第1の実施の形態に関する登録印影取得処理のフローチャートである。
【図6】第1の実施の形態に関するはみ出し印影の判定処理を示す説明図である。
【図7】第1の実施の形態に関するはみ出し印影の判定方法を示す説明図である。
【図8】第1の実施の形態に関する印鑑照合画面を示す説明図である。
【図9】第2の実施の形態に関する営業店窓口端末50の構成を示すブロック図である。
【図10】第2の実施の形態に関する印鑑照合部55の機能ブロック図である。
【図11】第2の実施の形態に関する登録印影抽出処理のフローチャートである。
【図12】第2の実施の形態に関する登録印影画像62の印影と文字を示す説明図である。
【図13】第2の実施の形態に関する特定文字と印影間の距離を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施の形態>
以下、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は第1の実施の形態に関する印鑑照合システムの構成を示すブロック図である。印鑑照合システムにおいて、営業店1は銀行、信用金庫、郵便局等の金融機関の本店、支店等である。営業店窓口端末10は営業店1の窓口に配設され、担当者が操作して入金、出金、通帳記帳、振込み、振替え等の勘定系の金融処理を行う。
【0011】
営業店1において、顧客が通帳や証書を用いて預金の払出しを行う場合、印鑑を押印した帳票8を営業店窓口端末10に提出して払出しを申し込む。すると、営業店窓口端末10では、帳票8に押印された印鑑の印影と口座を開設したときに登録された登録印鑑の印影とが照合され、二つの印影が合致すると預金が払い出される。そのため、営業店窓口端末10は、印鑑の印影を照合するための印鑑照合装置としての機能を有する。
【0012】
ここで、顧客が新規に口座を開設する場合、印鑑を押印した申込書を営業店窓口端末10に提出して口座の開設を申込む。営業店窓口端末10は申込書に押印された印鑑の印影を取得して登録する。なお、営業店窓口端末10には、印影を読み込むためのダイレクトスキャナ13が接続されている。そして、営業店窓口端末10は、LANから成る営業店内ネットワークとルータを介して、金融機関ネットワーク4に接続されている。
【0013】
金融機関ネットワーク4は、専用通信回線網又はINS(Information
Network System)である。そして、金融機関ネットワーク4には、金融機関の勘定系の上位装置として機能するホストコンピュータ3が接続される。営業店窓口端末10は、ホストコンピュータ3と通信を行って、勘定系の金融処理を実行する。また、金融機関ネットワーク4は事務センタ2に接続されている。
【0014】
事務センタ2は前記顧客の印鑑の印影等の情報を扱う。事務センタ2には、顧客の印鑑の印影を保持する印鑑サーバ5とこれを制御する印鑑コントローラ6を有する。これらは事務センタ2の内部に構築されたLANから成る事務センタ内ネットワークが、ルータを介して接続されている。更に、印鑑サーバ5には、顧客の印鑑の印影を格納する印鑑データベース7が接続されている。
【0015】
そして、印鑑サーバ5は、前記ホストコンピュータ3からその記憶手段に格納されている印鑑に関する情報を受信し、印鑑データベース7に格納されている印鑑の印影及び印鑑に関する情報をアップデートするようになっている。そして、営業店1の担当者が印鑑照合を行う場合には、印鑑照合装置としての営業店窓口端末10を操作して事務センタ2にアクセスして、印鑑サーバ5から該当する登録印鑑の印影を取得する。そして、営業店窓口端末10において、帳票8の被照合印影Dと登録印鑑Aの登録印影とが照合される。
【0016】
図2は第1の実施の形態に関する営業店窓口端末10の構成を示すブロック図である。印鑑照合装置としての営業店窓口端末10は、表示部としてのディスプレイ11と、入力部としてのマウス・キーボード12と、ダイレクトスキャナ13と、通伝プリンタ14と、印鑑照合部15と、端末記憶部16等からなる。
【0017】
ディスプレイ11はマウス・キーボード12により入力した情報を表示するとともに、印鑑照合において登録印影Aと被照合印影Dとを表示する。マウス・キーボード12は、担当者が操作して、帳票8に記載された店番、科目、口座番号等に基づいて所定事項を入力する。ダイレクトスキャナ13は、マット上にセットした帳票8をカメラ部にて画像取得し、取得した画像データを営業店端末制御部17へ転送する。通伝プリンタ14は、帳票8に対して所定の事項を印字する。印鑑照合部15は、登録印影Aと被照合印影Dとの照合を行う。端末記憶部16は半導体メモリ、磁気ディスクからなり制御用プログラムを記憶し、更に各種データを一時的に記憶する。更に、営業店端末制御部17は、制御用プログラムによってこれら各部を制御する。
【0018】
図3は第1の実施の形態に関する印鑑照合部15の機能ブロック図である。登録印影画像記憶部21は、印鑑照合のために印鑑サーバ5から取り寄せた登録印影画像32を記憶する。登録印影画像32には、後述する登録印影と登録印影以外の印影とを含む。登録印影候補抽出部22は、登録印影画像記憶部21に記憶した登録印影画像から登録印影の候補となる候補印影A、Bを抽出する。登録印影候補記憶部23は、登録印影候補抽出部22によって抽出された候補となる候補印影A、Bを一時記憶する。はみ出し印影判定部24は、登録印影候補記憶部23に記憶する候補となる候補印影A、Bについて、前記登録印影画像32からはみ出す印影か否か、即ち登録印影画像32に収まっているか否か判定する。
【0019】
更に、カウンタ部25は、はみ出し印影判定部24において登録印影画像32からはみ出す印影であると判定した回数Nをカウントする。はみ出し印影の抽出回数は変更することができる。登録印影記憶部26は、登録印影の候補となる候補印影A、Bから最終的に決定された登録印影Aを記憶する。被照合印影記憶部27は、営業店窓口端末10のダイレクトスキャナ13によって読み取った被照合印影Dを記憶する。そして、照合制御部28は印鑑照合部15内の各部を制御する。
【0020】
次に、第1の実施の形態に関する印鑑照合処理の動作を説明する。図4は第1の実施の形態に関する印鑑照合処理のフローチャートである。印鑑照合処理の動作に先立ち、顧客は、帳票8に自己の口座の店番、科目、口座番号を記入し、被照合印影Dとなるお届け印を押印する。更に顧客はこの帳票8を営業店窓口端末10の担当者に渡す。これを受取った担当者はダイレクトスキャナ13のマット上に帳票8をセットし、操作を開始する。
【0021】
S101:営業店窓口端末10の営業店端末制御部17は、ダイレクトスキャナ13に対して、マット上にセットされた帳票8を読み取るよう指示する。当該帳票8には店番、科目、口座番号が記載され、更に被照合印影Dが押印されている。営業店端末制御部17は、端末記憶部16に対し被照合印影Dを抽出し、当該被照合印影Dを記憶するよう指示する。
【0022】
S102:営業店端末制御部17は、図示しないOCR帳票読取部を制御し、店番、科目、口座番号を読取り、これらの情報を確定させる。なお、OCR帳票読取部によらない場合は、担当者はマウス・キーボード12を使って店番、科目、口座番号を入力するので、営業店端末制御部17は、マウス・キーボード12に対し、これらの入力を受け付けるよう指示する。マウス・キーボード12の入力により、これらの情報が確定する。
【0023】
S103:営業店端末制御部17は、印鑑照合のために、確定した店番、科目、口座番号を事務センタ2の印鑑サーバ5に送信する。そして、印鑑サーバ5に対して登録印影を要求し、登録印影を含む登録印影画像32を取得する。営業店端末制御部17は、印鑑照合部15に対し、取得した登録印影画像32中の複数の登録印影候補から正しい登録印影を抽出するよう指示する。なお、詳細は後に図5で説明する。
【0024】
S104:営業店端末制御部17は、同時にディスプレイ11に対し取引画面を表示するよう指示する。これにより、担当者は各種入力を行う。
S105:印鑑サーバ5から登録印影を含む登録印影画像32を取得すると、営業店端末制御部17は、端末記憶部16に対し登録印影を含む登録印影画像32を記憶するよう指示する。そして、営業店端末制御部17は、印鑑照合部15に対し、記憶部に記憶した登録印影を読み出し、当該登録印影Aと前記被照合印影Dの照合を行うよう指示する。
【0025】
S106:営業店端末制御部17は、ディスプレイ11に対し、印鑑照合画面を表示するよう指示する。これにより、担当者は印鑑照合画面を確認する。
S107:営業店端末制御部17は、担当者がマウス・キーボード12によって印鑑照合の確認を行ったか否かチェックする。
S108:担当者による確認がNGの場合、営業店端末制御部17は取消処理を行う。
S109:担当者による確認がOKの場合、営業店端末制御部17は、印鑑照合が完了したことを金融機関ネットワーク4を介してホストコンピュータ3へ送信する。
【0026】
図5は第1の実施の形態に関する登録印影取得処理のフローチャートである。
S201:印鑑照合部15の照合制御部28は、印鑑サーバ5から登録印影画像32を受信すると、登録印影画像記憶部21に対し、登録印影画像32を記憶するよう指示する。
S202:照合制御部28は、登録印影候補抽出部22に対し、登録印影画像記憶部21に記憶した登録印影画像32中の複数の印影から一つの登録印影候補を抽出するよう指示する。そして、登録印影候補記憶部23に対し、抽出した登録印影候補を一時記憶するよう指示する。
【0027】
なお、登録印影画像32から印影を抽出する方法としては、例えば登録印影画像32内の罫線を除去し、黒画像の連続する曲線を印影の外枠と判断して印影を検出するなど、従来周知の技術を用いて行うものとする。
【0028】
S203:照合制御部28は、はみ出し印影判定部24に対し、登録印影候補記憶部23に記憶した登録印影候補がはみ出し印影か否か判断するよう指示する。即ち、登録印影候補が登録印影画像32内に収まっているか否かを判断するよう指示する。同時に、抽出した登録印影候補の抽出回数NがN<4か否か判断する。抽出した登録印影候補がはみ出し印影であり、かつN<4であるときステップ204へ移行する。そうでないときは、ステップ206へ移行する。
【0029】
ここで、はみ出し印影判定部24が行うはみ出し印影の判定処理について説明する。図6は第1の実施の形態に関するはみ出し印影の判定処理を示す説明図である。同図(a)は登録印影画像32内に2個の印影A及びBがある場合を示し、同図(b)は登録印影画像32内に4個の印影A及びB1、B2、B3がある場合を示す。同図(a)において、印影Aは登録印影画像32内に収まっており、登録印影Aとして後に印鑑照合の対象となる。印影Bは登録印影画像32内には収まっておらず、登録印影以外の印影としてのはみ出し印影と判定される。はみ出し印影Bは印鑑照合の対象から除外される。同図(b)において、登録印影以外の印影としてのはみ出し印影B1乃至B3は印鑑照合の対象から除外される。はみ出し印影の判定処理は、各印影が候補として抽出され、次に示すはみ出し印影の判定方法に従ってはみ出し印影か否か判定される。
【0030】
図7は第1の実施の形態に関するはみ出し印影の判定方法を示す説明図である。同図において、Cは円形の印影を示す。はみ出し印影判定部24は、印影が円形であることを判読し、印影中心位置Qの座標位置を画像処理によって割り出す。印影中心位置Qを割り出す方法としては、例えば、円形の印影であれば、印影の外枠の異なった2点から垂線を引き、垂線の交点から印影の外枠までの垂線の長さがそれぞれ等しくなる交点を中心とする。また、印影が小判形であれば、外枠の曲率がもっともきつい点とゆるい点を検出し、2点から垂線を引き、垂線の交点を中心とする。印影が方形であれば、対角線の交点を中心とする。印影中心位置Qを割り出す方法は、上記のほか従来周知の技術を用いて行うようにすればよい。
【0031】
更に、はみ出し印影判定部24は、印影Cの幅dと高さhを画像処理によって算出する。これにより、はみ出し印影判定部24は、はみ出し量Sを算出することができる。S>0であれば印影Cははみ出し印影であると判定する。なお、印影Cが小判形及び方形である場合も同様に、印影中心位置Qの座標位置を割り出し、印影Cの幅dと高さhを算出した後、はみ出し量Sを算出する。更に、印影Cが小判形である場合で印影に傾きがあるときは、傾きを修正した後、はみ出しを判定することになる。
【0032】
また、はみ出しを判定するのに、上記のように印影中心位置Qの座標位置を割り出してはみ出し量Sを算出する方法の他に、例えば印影が円形または小判形の場合に、印影の形状が外枠から円形か小判形かが推定可能な程度に判別できる印影であれば、抽出した登録印影候補の外枠と一致する外枠を推定し、推定した外枠と抽出した登録印影候補の外枠とを重ねて一致しない場合ははみだし印と判定するようにしてもよい。こうすることで、印鑑中心位置Qの算出を行わずとも印影のはみ出しを判定することもできる。
【0033】
図5に戻り、ステップ204以降を説明する。
S204:ステップ203において、抽出した登録印影候補がはみ出し印影であり、かつN<4であるとき、抽出された印影候補を対象外とする。
S205:照合制御部28は、カウンタ部25に対し、リトライ回数は初期値=0であるところ、1加算するよう指示する。そして、ステップ202へ移行する。図6(b)に示すように候補とする印影は4個まで判定することができる。
【0034】
S206:ステップ203において、抽出した登録印影候補がはみ出し印影でなく、かつN<4でないとき、照合制御部28は、はみ出し印影判定部24に対し、候補の印影を登録印影として抽出するよう指示し、登録印影記憶部26に対し登録印影を記憶するよう指示する。
S207:更に、照合制御部28は、被照合印影記憶部27に対し、ダイレクトスキャナ13が読取った被照合印影Dを記憶するよう指示する。
【0035】
次に、登録印影Aと被照合印影Dの照合について説明する。図8は第1の実施の形態に関する印鑑照合画面を示す説明図である。営業店窓口端末10が、印鑑サーバ5から取得した登録印影画像32には、前述のように2個の印影A及びBが含まれている。前述のように、はみ出し判定によって印影Bがはみ出し印影であると判定され、印影Bは排除される。そして、登録印影部分画像34には登録印影Aが残ることになる。即ち、印影Aが登録印影Aと判定され、そして、登録印影部分画像34は登録印影記憶部26に記憶される。一方、ダイレクトスキャナ13が読取った帳票8からは被照合印影部分画像31が得られ、そこには被照合印影Dが含まれている。そして、被照合印影部分画像31は被照合印影記憶部27に記憶される。
【0036】
営業店窓口端末10の営業店端末制御部17は、印鑑照合部15を制御し、ディスプレイ11に対し、登録印影部分画像34と被照合印影部分画像31を表示するよう指示する。ここで、登録印影部分画像34の登録印影Aと被照合印影部分画像31の被照合印影Dを並べて表示するか又は重ねて表示することもできる。登録印影Aと被照合印影Dを並べて表示するときは、担当者が目視で印鑑照合を行う。登録印影Aと被照合印影Dを重ねて表示するときは、営業店端末制御部17は、ディスプレイ11に対し、形状が相違する部分は異なる表示をするよう指示する。同図は、登録印影Aと被照合印影Dを重ねて表示した印影Eに対し、登録印影Aと被照合印影Dの形状が異なる部分は異なる表示E−1であることを示す。これにより、担当者は登録印影Aと被照合印影Dの印鑑照合を行うことができる。
【0037】
以上、第1の実施の形態によれば、印鑑サーバ5に格納した登録印影画像32に複数の印影A、Bがある場合、登録印影画像32からはみ出し印影Bを判定することができるので、複数の印影A、Bから目的とする登録印影Aを自動的に抽出することにより、登録印影Aと被照合印影Dとの照合作業を簡単に行うことができる。更に、はみ出し印影Bの判定は、簡単な画像処理によって可能であるという効果を有する。
【0038】
なお、本実施の形態では上記抽出回数NがN<4か否かを判断するとして説明しているが、予め任意の基準値を設定すればよく、本発明は上記4という数字に限定されない。また、印鑑照合部15に第2の実施の形態において後述する登録印影候補数判定部43を設け、登録印影候補の抽出に先立って登録印影画像32から登録印影候補の数を計数した結果をMとして、N<MでS203の処理を行うようにしてもよい。この場合、例えば図6(a)に示すような登録印影画像32内に印影が2つある場合にはN<2となり、図6(b)に示すような場合にはN<4となる。
【0039】
また、本実施の形態では、登録印影画像32内に複数の印影が含まれていることを前提として説明したが、登録印影画像32内に印影が一つしか含まれていない場合は、はみ出し印影の判定を行わず、すぐにS104以降の処理を行うようにしてもよい。
【0040】
<第2の実施の形態>
図9は第2の実施の形態に関する営業店窓口端末50の構成を示すブロック図である。印鑑照合装置としての営業店窓口端末50は、表示部としてのディスプレイ11と、入力部としてのマウス・キーボード12と、ダイレクトスキャナ13と、通伝プリンタ14と、印鑑照合部55と、端末記憶部16等からなる。これらのうち、第1の実施の形態と同じ構成要素は同一の符号で示すことにより説明を省略する。第2の実施の形態においては、更に、特定文字記憶部51を有することが前記第1の実施の形態と異なる。
【0041】
特定文字記憶部51は、印鑑サーバ5から読み出した登録印影画像62に含まれている文字画像の中から特定の文字を検出するため、検出対象となる文字を記憶する。特定の文字とは、後述する「お届印」、「係印」及び「検印」である。これらの特定の文字は、営業店端末制御部57の制御によって特定文字記憶部51から読み出される。そして、この特定の文字と同じ文字が、次に説明する印鑑照合部55の文字検出部44によって登録印影画像62に中から検出される。
【0042】
図10は第2の実施の形態に関する印鑑照合部55の機能ブロック図である。登録印影画像記憶部41は、印鑑照合のために印鑑サーバ5から取り寄せた登録印影画像62を記憶する。登録印影画像62には、登録印影と登録印影以外の印影とを含む。登録印影候補抽出部42は、登録印影画像記憶部41に記憶した登録印影画像62から登録印影の候補となる候補印影A、F、Gを抽出し、その位置を算出する。登録印影候補数判定部43は、登録印影候補抽出部42によって抽出された登録印影候補となる候補印影A、F、Gの個数を判定する。
【0043】
更に、文字検出部44は、印鑑サーバ5から読み出した登録印影画像62に含まれている文字画像の中から特定文字記憶部51に記憶された「お届印」等の特定の文字を検出し、その位置を算出する。距離算出部45は、文字検出部44で検出された特定の文字の位置と、候補印影A、F、Gの位置から両者の距離を算出する。格上げ・格下げ処理部46は、距離算出部45で算出された特定の文字と候補印影間の距離に応じて、各々の候補印影について、格上げ・格下げ処理を行うことにより登録印影を選択する。登録印影記憶部47は、候補印影A、F、Gから格上げ・格下げ処理部46によって格上げされた、即ち最終的に決定された登録印影Aを記憶する。被照合印影記憶部48は、営業店窓口端末50のダイレクトスキャナ13によって読み取った被照合印影Dを記憶する。そして、照合制御部49は印鑑照合部55内の各部を制御する。
【0044】
図11は第2の実施の形態に関する登録印影抽出処理のフローチャートである。
S301:印鑑照合部55の照合制御部49は、印鑑サーバ5から登録印影画像62を受信すると、登録印影画像記憶部41に対し、登録印影画像62を記憶するよう指示する。
S302:照合制御部49は、登録印影候補抽出部42に対し、登録印影画像記憶部41に記憶した登録印影画像62内の1個又は複数の印影を抽出するよう指示する。
【0045】
S303:照合制御部49は、登録印影候補数判定部43に対し、登録印影候補抽出部42で抽出した候補印影の個数を判定するよう指示する。判定の結果1個である場合はステップ307へ移行し、複数個である場合はステップ304へ移行する。
【0046】
ここで、特定文字の位置と、候補印影の位置間の距離に応じて、格上げ・格下げ処理部46で行う格上げ・格下げ処理について説明する。まず、図12は第2の実施の形態に関する登録印影画像62の印影と文字を示す説明図である。登録印影画像62は、図示しない口座開設の申込書を読取った画像の一部である。口座開設の申込書には複数の罫線63が表示され、複数の罫線で囲まれた記載欄が形成されている。
【0047】
特定文字としての「お届印」の文字64は、登録印を押印する位置を示す文字であり、お届印押印欄65に予め印刷されている。お届印押印欄65には、お届印の印影Aが表示される。また、特定文字としての「係印」の文字66は、係印を押印する位置を示す文字であり、係印押印欄67に予め印刷されている。係印押印欄67には、係印の印影Fが表示される。更に、特定文字としての「検印」の文字68は、検印を押印する位置を示す文字であり、検印押印欄69に予め印刷されている。検印押印欄69には、検印の印影Gが表示される。
【0048】
図13は第2の実施の形態に関する特定文字と印影間の距離を示す説明図である。同図は、「お届印」の文字64、「係印」の文字66及び「検印」の文字68の各位置と、印影Aの中心AQ、印影Fの中心FQ及び印影Gの中心GQの各位置との距離が算出されることを示す。そして、破線で示す線分は、一定の距離外のため格上げ・格下げ処理を行わないことを示す。更に、実線で示す線分は、一定の距離内のため格上げ・格下げ処理を行うことを示す。即ち、格上げ・格下げ処理は、「お届印」の文字64と印影Aの中心AQ間、「係印」の文字66と印影Fの中心FQ間及び「検印」の文字68と印影Gの中心GQ間の距離に応じて判定される。即ち、格上げ・格下げ処理の結果、「お届印」の文字64から一定の距離内にある印影Aは格上げされる。そして、「係印」の文字66から一定の距離内にある印影F及び「検印」の文字68から一定の距離内にある印影Gは格下げされる。そうすることにより、最終的に「お届印」の文字64の真下にある印影Aが登録印影として抽出することができる。
【0049】
図11に戻り、ステップ304以降を説明する。
S304:ステップ303において、登録印影候補数判定部43が判定した登録印影候補数が複数であるとき、照合制御部49は、文字検出部44に対し、特定文字記憶部51から読み出した特定文字について、登録印影画像62内から検出するよう指示する。特定文字とは、口座開設時の申込書に使用されている「お届印」、「係印」及び「検印」である。金融機関によって口座開設時の申込書に使用される文字が異なるときは、検出する特定文字はそれに合わせた文字となる。文字検出部44は、検出した特定文字の登録印影画像62における位置を画像として記憶する。
【0050】
S305:照合制御部49は、距離算出部45に対し、各特定文字の位置と複数の印影間の距離を算出するよう指示する。この距離は、図10で説明した「お届印」の文字64、「係印」の文字66及び「検印」の文字68の各位置と、印影Aの中心AQ、印影Fの中心FQ及び印影Gの中心GQの各位置間の距離である。
【0051】
S306:照合制御部49は、格上げ・格下げ処理部46に対し、前記距離算出部45で算出した距離について、格上げ・格下げ処理を行うよう指示する。格上げ・格下げ処理部46は、図10で説明したように「お届印」の文字64と印影Aの中心AQ間を格上げする。これにより、照合制御部49は、印影Aについて登録印影と判定する。
【0052】
S307:照合制御部49は、登録印影記憶部47に対し、印影Aを登録印影として記憶するよう指示する。
S308:更に、照合制御部49は、被照合印影記憶部48に対し、ダイレクトスキャナ13が読取った被照合印影Dを記憶するよう指示する。最後の登録印影Aと被照合印影Dの照合については第1の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0053】
以上、第2の実施の形態によれば、登録印影画像62内にお届印以外に、係印や検印がある場合、「お届印」等の特定の文字を検出し、特定文字と印影との距離に応じて登録印影Aを判定することとしたので、複数の印影A、F、Gから目的とする登録印影Aを自動的に抽出することにより、登録印影Aと被照合印影Dとの照合作業を簡単に行うことができる。登録印影の判定は、特定文字と印影との距離に応じて格上げ・格下げ処理により行うこととしたので、登録印影を簡単に判定することができるという効果を有する。
【符号の説明】
【0054】
5 印鑑サーバ
10 営業店窓口端末
11 ディスプレイ
13 ダイレクトスキャナ
15 印鑑照合部
32 登録印影画像
A、B、D 印影


【特許請求の範囲】
【請求項1】
登録印影と登録印影以外の印影とを含む登録印影画像を記憶する登録印影画像記憶部と、
前記登録印影画像中に複数の印影がある場合に、前記複数の印影から登録印影の候補を抽出する登録印影候補抽出部と、
登録印影候補抽出部によって抽出した登録印影候補に対して、所定の基準に基づいて目的とする登録印影を判定する登録印影判定部と、
登録印影判定部によって判定された登録印影と被照合印影とを照合する照合部を有することを特徴とする印鑑照合装置。
【請求項2】
前記登録印影判定部は、登録印影候補抽出部によって抽出した登録印影候補に対して、前記登録印影画像に収まっているか否かを判定するはみ出し印影判定部であることを特徴とする請求項1記載の印鑑照合装置。
【請求項3】
前記登録印影画像に収まっているか否かの判定は、前記登録印影候補の中心位置、幅及び高さを算出し、前記登録印影候補が前記登録印影画像に収まっているか否かを判定することを特徴とする請求項2記載の印鑑照合装置。
【請求項4】
前記登録印影画像の中から特定の文字を検出する文字検出部を有し、
更に、前記登録印影候補抽出部は、複数の登録印影候補を抽出し、
前記登録印影判定部は、前記文字検出部の検出した前記特定の文字と前記登録印影候補抽出部が抽出した前記複数の登録印影候補との距離に応じて、登録印影を判定する格上げ格下げ判定部であることを特徴とする請求項1記載の印鑑照合装置。
【請求項5】
前記特定の文字は、登録印を押印する位置を示す文字であることを特徴とする請求項4記載の印鑑照合装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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