説明

危険映像検出方法、映像相違検出方法及び装置

【課題】危険映像修正の指針として正しく修正された映像の修正方法を把握するため、修正映像から映像の修正方法を検出し、危険映像修正の指針を修正者へ示すため、過去の修正方法を適用した映像の修正案を提示すること。
【解決手段】修正前の危険映像データ1110と修正後映像データ1140とに対し、映像のシーン毎にシーンの特徴を表すシーン特徴量を算出し、それぞれの映像のシーン特徴量の時系列の並び1420、1430を比較することによりシーン構成の修正方法1150を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、危険映像検出方法、映像相違検出方法及び装置に係り、特に、2つの映像のシーン構成の相違を検出して映像の相違を検出する危険映像検出方法、映像相違検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、動画等の映像に含まれる短時間で明滅を繰り返すフリッカー映像や、人が認識できない程度の短時間の画像を挿入するサブリミナル映像等の映像は、人体に害を及ぼす可能性があることが判っている。このような映像の人体への影響度合いは、個人差があり、同じ映像を試聴しても影響のある人と影響のない人とがいる。また、この影響は、映像の試聴環境によっても変わってくると言われており、視聴者と映像モニタとの位置関係や、試聴する場所の明るさの状態にも関連する。
【0003】
テレビ放送等の不特定多数の人が試聴する映像に前述のような映像が入り込むとその影響範囲は非常に大きく、映像提供者側の社会的責任が問われる可能性がある。このため、放送局等の不特定多数へ映像を提供する映像提供者は、映像を提供する前にこのような危険映像が入り込んでいないかを事前にチェックして検出している。また、放送事業者を会員とする日本民間放送連盟では、このような危険映像のガイドラインを策定している。
【0004】
危険映像は、短時間(数フレーム〜数秒)の間の映像変化であることから、目視では充分にチェックすることが難しく、また、目視でチェックした場合には、検査する人の主観が入ってしまう危険性がある。危険映像の影響は、試聴側の環境にも依存するため、検査の環境で問題のない映像と判定した場合でも、実際の試聴の条件によっては影響を及ぼす可能性もある。
【0005】
このため、危険映像の検査を機械的に行う方法に関する従来技術が、例えば、特許文献1等に記載されて知られている。この従来技術は、映像の点滅場面を検出し、検出結果として検出時の特徴量と検出部位の静止画とを提示するというものである。
【特許文献1】特開2005−124188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来技術は、危険映像の機械的な検出を行うことができるというだけのものであり、検出された危険映像をどのように修正すればよいかという指針がないため、検出された危険映像に対してどのような修正を行えばよいかが判らないという問題点を有している。このため、検査結果を映像制作者へ上手く伝えることができず、映像制作者による修正映像が再度危険映像として検出されてしまうことがある。特に、テレビ放送の場合には、危険映像の検査者は放送局であり、映像の修正者は映像プロダクションであるというように、検査と修正とが異なる組織、人により行われることが多く、前述のような問題が多く生じている。
【0007】
前述のような問題を解決するため、危険映像修正の指針として、過去に同様の理由で修正し問題がないと判定された修正方法を活用することが考えられる。この場合、映像の修正方法を蓄積するために修正された映像の修正方法を把握しなければならない。しかし、映像修正者から修正された映像のみが渡される場合や、また、修正者から修正方法が渡された場合でも、渡された修正方法が正しいことを保証する方法がないため、映像修正方法を正しく把握することができないという問題を生じてしまう。
【0008】
本発明の目的は、前述した問題点に鑑み、危険映像修正の指針として正しく修正された映像の修正方法を把握するため、修正映像から映像の修正方法を検出し、危険映像修正の指針を修正者へ示すため、過去の修正方法を適用した映像の修正案を提示することを可能にした危険映像検出方法、映像相違検出方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば前記目的は、危険映像を検出し検出結果を提示する危険映像検出方法であって、過去の危険映像に対する修正事例を格納したデータベースを備え、入力された検査対象映像に危険映像が含まれているか否かを検出し、危険映像が含まれていた場合、検出された危険映像の危険理由をキーとして前記データベースを検索して修正事例を取得し、映像の危険部位に修正事例を適用して修正案を作成し、前記検出された危険映像の危険理由、危険部位及び修正案を前記危険映像の修正のために出力することにより達成される。
【0010】
また、前記目的は、危険映像を検出し検出結果を提示する危険映像検出方法であって、過去の危険映像に対する修正事例を格納したデータベースと、映像差異検出手段とを備え、危険映像に対する修正を行った後の映像を検査対象映像として入力し、この映像に危険映像が含まれているか否かを検出し、危険映像が含まれていなかった場合、前記映像差異検出手段は、修正前の映像と修正後の映像とに対しシーン内のフレーム画像の特徴量を元としたシーン特徴量を算出し、2つの映像それぞれのシーン特徴量の時系列の並びを比較し、シーン特徴量の並びの違いから2つの映像のシーン構成の相違を検出すると共に修正方法を検出し、前記データベースに格納することにより達成される。
【0011】
また、前記目的は、それぞれが複数のシーンから構成される2つの映像の相違を検出する映像相違検出方法であって、2つの映像のシーン内のフレーム画像の特徴量を元としたシーン特徴量を算出し、2つの映像それぞれのシーン特徴量の時系列の並びを比較し、シーン特徴量の並びの違いから2つの映像のシーン構成の相違を検出することにより達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、修正映像と修正前映像とから映像の修正方法を検出することができ、危険映像の検出において検出した危険映像に対する修正案を提示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明による危険映像検出方法、映像相違検出方法及び装置の実施形態を図面により詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態による映像相違検出装置により得られた過去の修正方法を適用して危険映像の修正案を提示する危険映像検出システムの機能構成及び処理を示すブロック図である。図1において、1000はフリッカー・サブリミナル映像検出部、1010は修正事例検索部、1020は修正案生成部、1030は検出結果提示部、1100は検出結果データ、1110は危険映像データ、1120は修正方法、1130は修正候補映像、1160は危険部位、1170は危険理由、1200は映像制作者、1210は検査対象映像、2000は危険映像検出端末、2200は修正事例DBである。
【0015】
図1に示す危険映像検出端末2000は、映像制作者1200が制作した検査対象映像1210から危険映像を検出し、過去の修正事例から修正案を作成して映像制作者1200に戻すまでの処理に必要な機能を持つものとして示している。この危険映像検出端末2000は、フリッカー・サブリミナル映像検出部1000、修正事例検索部1010、修正案生成部1020、検出結果提示部1030、映像データ一時保管領域、修正事例DB2200を備えて構成されている。
【0016】
映像制作者1200が制作し、危険映像検出端末2000に入力される検査対象映像1210は、VTRテープ等のメディアに記録されていることもあれば、MPEG等のファイル形式で表現されることもある。VTRテープである場合、検査対象映像1210は、VTRデッキでテープを再生されて危険映像検出端末2000に入力される。また、ファイル形式であれば、検査対象映像1210は、その形式のまま危険映像検出端末2000に入力される。
【0017】
危険映像検出端末2000のフリッカー・サブリミナル映像検出部1000は、入力された検査対象映像に対し、短時間内に繰り返される映像の明滅や人が意識できない程の短時間での画像の挿入を検出する。これらは、人体に悪影響を及ぼす可能性のある映像である。フリッカー・サブリミナル映像検出部1000は、検出結果として、映像の危険部位1160と危険理由1170とを合わせた検出結果データ1100を出力する。
【0018】
危険部位1160は、映像の位置を示す時間データである。この時間データは、映像の収録メディアあるいは映像ファイルにタイムコード情報が付与されている場合、そのタイムコード値となり、また、タイムコード情報がない場合、映像の先頭からの経過時間となる。例えば、映像の先頭から10分後の部位を示す場合、「00:10:00:00」 という値となる。これらは、映像の位置を一意に示すことができる値である。
【0019】
危険理由1170は、危険映像として検出した要因を示すデータである。このデータには、危険映像がフリッカー映像であれば「明滅区間の時間長、輝度変化の割合(%)、輝度変化の回数、色成分、明滅を起こしている画面上の部位」の各情報が含まれ、また、危険映像がサブリミナル映像であれば「サブリミナル画像挿入の時間長、サブリミナル画像の画面上の部位」の各情報が含まれる。
【0020】
フリッカー・サブリミナル映像検出部1000は、検出結果データ1100を映像データ一時保管領域に記録すると共に、修正事例検索部1010に渡す。また、危険映像の検出処理では、検出のため入力された映像の危険が検出された危険映像データ1110を映像データ一時保管領域に記録する。この映像データ1110は、映像の解像度・ビットレートを縮小したプロキシ映像として生成して記録される。
【0021】
修正事例検索部1010は、検出結果データ1100を受け取ると、検出結果データ1100の危険理由1170を検索キーとして、修正事例DB2200から過去に類似の危険理由による修正事例があるか否かを検索する。修正事例検索部1010は、類似の危険理由による修正事例がある場合、それに対応する修正方法1120を取得する。修正方法1120には、シーン構成の変更やシーンに対する編集効果の変更の情報が含まれている。修正方法1120のデータ構造の詳細については後述する。過去の修正方法1120は、検出した危険理由1170に最も類似する理由に対応する修正方法を1件だけ取得するようにしてもよく、また、危険理由の類似度に基づきある閾値内の類似性を持つ理由に対応する修正方法を複数件取得してもよい。修正事例検索部1010は、検出結果データ1100と修正方法1120とを修正案生成部1020に渡す。
【0022】
修正案生成部1020は、映像データ一時保管領域から映像データ1110を取得し、危険部位1160で示される映像の部位に対して修正方法1120で示される内容に従いシーン構成の変更、または、シーンに対する編集効果の変更を施し、修正候補映像1130を生成する。この処理の詳細については後述する。修正案生成部1020は、検出結果データ1100と修正候補映像1130とを検出結果提示部1030へ渡す。
【0023】
検出結果提示部1030は、危険映像の検出結果として危険部位1160、危険理由1170、修正候補映像1130を危険映像検出端末2000のモニタ上に表示する。また、データファイルとしてこれらデータを出力する。
【0024】
入力された検査対象映像1210に、フリッカー・サブリミナル映像検出部1000で危険映像が検出されなかった場合、修正事例検索部1010、修正案生成部1020での処理を行わず、検出結果提示部1030で検出されなかった旨の表示を行う。検査にパスした検査対象映像1210は、修正することなくそれぞれの利用が行われる。放送用映像であれば放送に用いられる。
【0025】
入力された検査対象映像1210から危険映像が検出された場合、検査者は、検出結果提示部1030で出力した検出結果データ1100、修正候補映像1130を映像制作者1200に渡す。映像制作者1200は、渡された内容に基づいて映像の修正を行う。映像の修正は、シーン構成の入れ替え、シーンの挿入・削除、シーン長の変更、明滅する輝度の変更、明滅回数の変更等の映像編集処理を行うことにより実施される。修正した映像は、再度危険映像の有無についての検査を行うこととなる。
【0026】
図2は修正した映像の再検査において本発明の一実施形態による映像相違検出装置により修正方法を検出して事例として蓄積する危険映像検出システムの機能構成及び処理を示すブロック図である。図2において、1040は映像差異検出部、1140は修正版映像データ、1150は修正方法であり、他の符号は図1の場合と同一である。なお、図2に示している映像差異検出部1040は、図1に示した危険映像検出端末2000に含まれるものであり、説明の都合上、図2には、映像相違検出に必要な構成のみを示している。
【0027】
図1に示す処理で提示された検出結果データ1100と修正候補映像1130に基づいて修正された映像1220は、再度フリッカー・サブリミナル映像検出部1000で危険映像の有無の検査が行われる。この検査で再度危険部位が検出された場合、図1に示して説明した処理を再度行い、検出結果データを映像制作者1200へ通知し、映像の再修正を行ってもらう。
【0028】
フリッカー・サブリミナル映像検出部1000で危険部位が検出されなかった場合、すなわち、修正が上手く行われた場合、フリッカー・サブリミナル映像検出部1000は、図1に示す処理と同様に検出のために入力された映像を、修正版映像データ1140として映像データ一時保管領域に記録する。記録される映像データ1140は、映像の解像度・ビットレートを縮小したプロキシ映像である。その後、映像差異検出部1040へ処理が移行する。
【0029】
映像差異検出部1040は、修正後の映像データである修正版映像データ1140と修正前の映像データ1110とを比較することにより、その修正方法を検出する。検出された修正方法は、映像の修正方法1150として出力される。修正方法1150は、修正事例DB2200に危険理由と共に記録される。
【0030】
図3は映像差異検出部1040の機能構成及び処理を示すブロック図、図4は修正方法を検出する処理における映像特徴量とシーン特徴量との関係を説明する図であり、次に、映像差異検出部1040での処理の詳細を図3、図4を参照して説明する。図3、図4において、1300は映像特徴量算出部、1310はシーン特徴量算出部、1320はシーン特徴量比較部である。
【0031】
映像差異検出部1040は、映像特徴量算出部1300、シーン特徴量算出部1310、シーン特徴量比較部1320を備えて構成されている。映像差異検出部1040は、修正版(後)映像データ1140と修正前映像データ1110とが入力されると、まず、映像特徴量算出部1300が修正前映像データ1110と修正後映像データ1140とのそれぞれに対して各フレーム画像の特徴量である修正後映像特徴量1410、修正前映像特徴量1400を算出して出力する。この特徴量は、図4に示すように、1つのフレーム画像1450毎に対応して1つの特徴量1460として算出される。その特徴量の時系列の並びを映像特徴量と呼び、このような映像特徴量が、修正前映像データ1110と修正後映像データ1140とに対応して映像特徴量算出部1300から出力される。フレーム画像の特徴量は、画像の輝度、色のヒストグラム等の画像の特徴を示す値のことである。
【0032】
シーン特徴量算出部1310は、映像特徴量算出部1300から出力された修正前後の映像特徴量1400、1410を入力とし、これらの特徴量に対して、シーン毎の特徴量を算出する。シーンは、フレーム画像の特徴量を時系列順に見た際にその類似性を元にフレーム画像のグルーピングを行ったものである。例えば、図4において、映像特徴量1400のフレーム画像特徴量A1〜C6について、「A1〜A5」、「B1〜B4」、「C1〜C6」の各組に含まれれフレーム画像の類似度が高い場合、「A1〜A5」に対応するフレーム画像の組をシーンA1470、「B1〜B4」の組をシーンB1480、「C1〜C6」の組をシーンC1490とする。このシーンの映像としては、1度のカメラワークで撮影された一連の映像を示すものとなり、一般的に「カット」と呼ばれるものである。
【0033】
シーン特徴量とは、シーン場面の特徴を代表する値であり、本発明の実施形態では、シーンを構成するフレーム画像の特徴量の平均値を用いることとするが、シーンの先頭フレームの特徴量を用いても、シーンを構成するフレーム画像の特徴量の中間値を用いてもよい。また、シーン特徴量には、シーン長の情報を含ませている。例えば、図4のシーンA1470は、シーン長が5フレームである。シーンA1470のシーン特徴量1440の値「A−5」の「5」は、シーン長が5フレームであることを示しており、「A−5」の「A」は、フレーム画像の特徴量「A1〜A5」の平均値を示している。
【0034】
シーン特徴量の時系列の並びを「シーン特徴量列」と呼ぶ。シーン特徴量列1420は、シーンA1470のシーン特徴量1440、シーンB1480のシーン特徴量1500、シーンC1490のシーン特徴量1510の並びを含むこととなる。
【0035】
シーン特徴量算出部1310は、映像特徴量1400、1410に対しシーン特徴量列1420、1430を算出して出力する。
【0036】
シーン特徴量比較部1320は、シーン特徴量算出部1310で算出された2つのシーン特徴量列1420、1430を比較し映像の修正方法を検出する。このシーン特徴量比較部1320による映像修正方法の検出処理の詳細を図5を参照して説明する。
【0037】
図5は修正方法の検出のマッチング処理における比較元シーン特徴量列と比較先シーン特徴量列との関係を示す図である。
【0038】
映像修正方法の検出処理は、次に説明する手順で行われる。
【0039】
(1)修正前映像のシーン特徴量列1420から、危険部位1160で示される部位を含むシーンを中心として前後nシーンずつのシーン特徴量を抽出する。抽出したシーン特徴量は、比較元シーン特徴量列1600となる。図5に示す例では、nを4としている。
【0040】
(2)修正後映像のシーン特徴量列1430の危険部位1160で示される部位に対し、比較元シーン特徴量列1600とのマッチングを行う。マッチングは、修正後映像のシーン特徴量列1430の危険部位1160で示される位置に対して前後にmシーン内でずらしながら修正前映像のシーン特徴量列1420から抽出した比較元シーン特徴量列1600と修正後映像のシーン特徴量列1430から抽出したシーン特徴量列1600との対応するシーンについてのマッチング計算を行うことにより実施される。マッチング計算は、シーン特徴量の差の合計値を求め、最も低い値となる位置をマッチング位置とするという計算である。図5に示す例では、mを1としており、マッチング開始位置1610から1シーンずつ位置を1620、1630とずらしながらマッチング計算を行う。この例では、マッチング位置が1620と決定される。そして、マッチング位置に対応する修正後映像のシーン特徴量列1430の部位を比較先シーン特徴量列1640とする。
【0041】
(3)比較元シーン特徴量列1600と比較先シーン特徴量列1640との各シーンをシーン毎に比較し、シーン特徴量の違いを検出する。比較先シーン特徴量列1640の比較元シーン特徴量列1600に対して検出されたシーン特徴量の相違は、次のような映像修正が行われたものとして扱う。
【0042】
・検出されたシーン特徴量の相違が、シーン長の変更によると検出された場合、シーンの長さを長く、あるいは、シーン長の長さを短くする修正を行った。
【0043】
・検出されたシーン特徴量の相違が、シーン特徴量の順番の変更によると検出された場合、シーンの順番を入れ替える修正を行った。例えば、シーンA、B、CをシーンB、A、Cの順番とするなど。
【0044】
・検出されたシーン特徴量の相違が、新規のシーン特徴量があることによると検出された場合、新規のシーンを追加する修正を行った。例えば、シーンA、B、CにシーンXを挿入しシーンA、X、B、Cとするなど。
【0045】
・検出されたシーン特徴量の相違が、シーン特徴量がなくなっていることによると検出された場合、シーンを削除する修正を行った。例えば、シーンA、B、CからシーンBを削除しシーンA、Cとするなど。
【0046】
・検出されたシーン特徴量の相違が、特徴量が類似していることによると検出された場合、シーンの映像効果を変更する修正を行った。シーン特徴量に用いる映像特徴量の種別に応じて検出可能な映像効果が変わる。例えば、特徴量として輝度ヒストグラムを用いていれば輝度の変化を検出することができる。映像編集の例としては、シーンA、B、CのシーンBの輝度を下げてシーンB’としシーンA、B’、Cとするなどの例がある。なお、特徴量の類似度がある閾値以上離れている場合には、新規シーンの挿入として扱う。
【0047】
前述したような変更は、1種類だけ行われることもあれば、複数種類が同時に行われることもある。
【0048】
図3に示す映像差異検出部1040のシーン特徴量比較部1320は、前述の処理を行い映像の修正方法を検出し修正方法1150を生成する。修正方法1150は、「変更前のシーン構成、変更後のシーン構成、危険部位となるシーン」から構成される。シーン構成には、シーン長やシーン特徴量の情報を含む。
【0049】
図3に示す映像特徴量算出部1300での各フレーム画像の特徴量の算出は、危険部位1160の周辺のフレーム画像だけを対象にしてもよい。この場合、シーン特徴量列は、危険部位1160の周辺のシーンに対してのみ算出される。フレーム画像の特徴量の算出の範囲は、比較元シーン特徴量列1600と比較先シーン特徴量列1640のマッチング演算を行うために必要な範囲のみでよい。
【0050】
図6は図1における修正案生成部1020での処理の概要を説明する図であり、次に、図6を参照して、危険部位に修正方法を適用して修正候補映像を生成する処理について説明する。
【0051】
修正案生成部1020は、危険部位が検出された危険映像データ1110に対し、危険理由をキーに事例DBから検索した修正方法1120を適用し、危険映像データ1110の危険部位を含むシーンB1700に対し、修正方法1120の内容に従い映像を修正する。図6に示す例では、修正方法1120には、危険部位を含むシーンのシーン長を2倍とし、シーンの映像輝度を50%下げることが記載されている。修正案生成部1020は、この内容に従い、シーンB1700のシーン長を2倍の長さとし、輝度を50%下げる処理を施してシーンB´1710を生成する。具体的には、シーンB1700の各フレーム画像を1枚ずつ増やし、各フレーム画像の輝度が50%下がるよう画像フィルタ処理を施す。このような処理により、修正案としての修正候補映像1130が生成される。
【0052】
図7は図1、図2に示す危険映像検出端末2000のハードウェア構成を示すブロック図である。図7において、2010、2020、2030は二次記憶装置、2040はCPU、2050はメモリ、2060はバス、2070はOS、2100は映像キャプチャー装置であり、他の符号は図1、図2、図3に示す場合と同一である。
【0053】
危険映像検出端末端末2000は、二次記憶装置2010、2020及び2030と、映像信号を入力するための映像キャプチャー装置2100と、CPU2040と、メモリ2050とを備え、これらがバス2060で接続されて構成されている。
【0054】
二次記憶装置2010には、フリッカー・サブリミナル映像検出部1000、修正事例検索部1010、修正案生成部1020、検出結果提示部1030、映像差異検出部1040、OS2070が格納される。映像差異検出部1040は、図3に説明したように、映像特徴量算出部1300、シーン特徴量算出部1310、シーン特徴量比較部1320を含んで構成されている。フリッカー・サブリミナル映像検出部1000は、映像キャプチャー装置2100を操作して映像信号からフレーム画像のデータを取得する。
【0055】
二次記憶装置2010に格納される、フリッカー・サブリミナル映像検出部1000、修正事例検索部1010、修正案生成部1020、検出結果提示部1030、映像差異検出部1040は、プログラムとして構成して計算機が備えるCPUに実行させることができ、また、それらのプログラムは、FD、CDROM、DVD等の記録媒体に格納して提供することができ、また、ネットワークを介してディジタル情報により提供することができる。
【0056】
二次記憶装置2020は、一時保管領域として利用されるものであり、この二次記憶装置2020には、フリッカー・サブリミナル映像検出部1000が出力する検出結果データ1100、危険映像データ1110、修正映像データ1140が格納される。二次記憶装置2030には、修正事例DB2200が格納される。
【0057】
二次記憶装置2010、2020、2030の構成の概要は、図1、図2の危険映像検出端末2000に示されている。なお、二次記憶装置2020、2030は、二次記憶装置2010と同一の装置であってもよい。
【0058】
前述した本発明の実施形態は、危険映像を検出し、修正事例DBに基づいてその修正方法を指示すると共に、映像差異検出部が、修正された映像と修正前の映像とを比較して、修正方法を抽出し、この修正方法を修正事例DBに反映させるとして説明したが、映像差異検出部は、比較する映像が危険映像とその修正映像とに限らず、なんらかの関連のあるの2つの映像を比較することにも利用することができる。例えば、放送等の映像を作成した後に、プロデューサー等による指示に基づいて映像の修正が行われたような場合に、2つの映像を比較して、修正方法を抽出してデータベースに保存しておき、その後の映像作成時に、データベース内の修正方法を参照する等として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態による映像相違検出装置により得られた過去の修正方法を適用して危険映像の修正案を提示する危険映像検出システムの機能構成及び処理を示すブロック図である。
【図2】修正した映像の再検査において本発明の一実施形態による映像相違検出装置により修正方法を検出して事例として蓄積する危険映像検出システムの機能構成及び処理を示すブロック図である。
【図3】映像差異検出部の機能構成及び処理を示すブロック図である。
【図4】修正方法を検出する処理における映像特徴量とシーン特徴量との関係を説明する図である。
【図5】修正方法の検出のマッチング処理における比較元シーン特徴量列と比較先シーン特徴量列との関係を示す図である。
【図6】図1における修正案生成部での処理の概要を説明する図である。
【図7】図1、図2に示す危険映像検出端末ハードウェア構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0060】
1000 フリッカー・サブリミナル映像検出部
1010 修正事例検索部
1020 修正案生成部
1030 検出結果提示部
1100 検出結果データ
1110 危険映像データ
1120 修正方法
1130 修正候補映像
1160 危険部位
1170 危険理由
1200 映像制作者
1210 検査対象映像
2000 危険映像検出端末
2200 修正事例DB
1040 映像差異検出部
1140 修正版映像データ
1150 修正方法
1300 映像特徴量算出部
1310 シーン特徴量算出部
1320 シーン特徴量比較部
2010、2020、2030 二次記憶装置
2040 CPU
2050 メモリ
2060 バス
2070 OS
2100 映像キャプチャー装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
危険映像を検出し検出結果を提示する危険映像検出方法であって、過去の危険映像に対する修正事例を格納したデータベースを備え、入力された検査対象映像に危険映像が含まれているか否かを検出し、危険映像が含まれていた場合、検出された危険映像の危険理由をキーとして前記データベースを検索して修正事例を取得し、映像の危険部位に修正事例を適用して修正案を作成し、前記検出された危険映像の危険理由、危険部位及び修正案を前記危険映像の修正のために出力することを特徴とする危険映像検出方法。
【請求項2】
危険映像を検出し検出結果を提示する危険映像検出方法であって、過去の危険映像に対する修正事例を格納したデータベースと、映像差異検出手段とを備え、危険映像に対する修正を行った後の映像を検査対象映像として入力し、この映像に危険映像が含まれているか否かを検出し、危険映像が含まれていなかった場合、前記映像差異検出手段は、修正前の映像と修正後の映像とに対しシーン内のフレーム画像の特徴量を元としたシーン特徴量を算出し、2つの映像それぞれのシーン特徴量の時系列の並びを比較し、シーン特徴量の並びの違いから2つの映像のシーン構成の相違を検出すると共に修正方法を検出し、前記データベースに格納することを特徴とする危険映像検出方法。
【請求項3】
前記シーン特徴量は、映像の編集効果に関する特徴量を元に算出され、シーン特徴量の並びの比較により2つの映像のシーン特徴量値の差からシーンに施された編集効果の相違を検出することにより前記シーン構成の相違が検出されることを特徴とする請求項2記載の危険映像検出方法。
【請求項4】
前記シーン特徴量は、シーン内のフレーム画像の特徴量の平均値であることを特徴とする請求項2記載の危険映像検出方法。
【請求項5】
危険映像を検出し検出結果を提示する危険映像検出装置であって、過去の危険映像に対する修正事例を格納したデータベースと、入力された検査対象映像に危険映像が含まれているか否かを検出する手段と、危険映像が含まれていた場合、検出された危険映像の危険理由をキーとして前記データベースを検索して修正事例を取得する手段と、映像の危険部位に修正事例を適用して修正案を作成する手段と、前記検出された危険映像の危険理由、危険部位及び修正案を前記危険映像の修正のために出力する手段とを備えることを特徴とする危険映像検出装置。
【請求項6】
危険映像を検出し検出結果を提示する危険映像検出装置であって、過去の危険映像に対する修正事例を格納したデータベースと、映像差異検出手段と、危険映像に対する修正を行った後の映像を検査対象映像として入力し、この映像に危険映像が含まれているか否かを検出する手段とを備え、危険映像が含まれていなかった場合、前記映像差異検出手段は、修正前の映像と修正後の映像とに対しシーン内のフレーム画像の特徴量を元としたシーン特徴量を算出し、2つの映像それぞれのシーン特徴量の時系列の並びを比較し、シーン特徴量の並びの違いから2つの映像のシーン構成の相違を検出すると共に修正方法を検出し、前記データベースに格納することを特徴とする危険映像検出装置。
【請求項7】
前記シーン特徴量は、映像の編集効果に関する特徴量を元に算出され、シーン特徴量の並びの比較により2つの映像のシーン特徴量値の差からシーンに施された編集効果の相違を検出することにより前記シーン構成の相違が検出されることを特徴とする請求項6記載の危険映像検出装置。
【請求項8】
前記シーン特徴量は、シーン内のフレーム画像の特徴量の平均値であることを特徴とする請求項6記載の危険映像検出装置。
【請求項9】
それぞれが複数のシーンから構成される2つの映像の相違を検出する映像相違検出方法であって、2つの映像のシーン内のフレーム画像の特徴量を元としたシーン特徴量を算出し、2つの映像それぞれのシーン特徴量の時系列の並びを比較し、シーン特徴量の並びの違いから2つの映像のシーン構成の相違を検出することを特徴とする映像相違検出方法。
【請求項10】
それぞれが複数のシーンから構成される2つの映像の相違を検出する映像相違検出装置であって、2つの映像のシーン内のフレーム画像の特徴量を元としたシーン特徴量を算出する手段と、2つの映像それぞれのシーン特徴量の時系列の並びを比較し、シーン特徴量の並びの違いから2つの映像のシーン構成の相違を検出する手段とを備えたことを特徴とする映像相違検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−158673(P2007−158673A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350616(P2005−350616)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】