説明

即席麺類又は乾麺類の製造方法

【課題】即席麺類、特に麺線の比較的太い即席麺類については喫食時に麺線が所定時間内に速やかに復元し、また、乾麺類、特に麺線の比較的太い乾麺類については茹で時間を短縮し、かつ、復元後のこれら麺類は、滑らかで、粘弾性のある食感を有し、細麺や太麺にも適用し得る即席麺類又は乾麺類の製造方法を提供すること。
【解決手段】麺類生地中に、穀粉原料100質量部に対して、粒径0.2〜1.5mmであるゼラチン発泡体の粒状乾燥物0.1〜5質量部を均一に分散混合させた後、製麺を行い、以下常法によりうどん、中華麺、パスタ等の即席製麺類又は乾麺類を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺類生地中に、ゼラチン発泡体の粒状乾燥物を均一に分散混合させた後に製麺を行う即席麺類又は乾麺類の製造方法に関する。詳細には、特定の粒径を有するゼラチン発泡体の粒状乾燥物を特定量麺類生地に添加することにより、復元時間や茹で時間を大幅に短縮し、且つ生麺に近い食感を有する即席麺類又は乾麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
即席麺類又は乾麺類は、良好な保存性等の特徴から消費者の幅広い支持を得ている。しかし、比較的麺線の太い即席麺類は復元時間が長く、食感に硬さが残るという問題があり、また、比較的麺線の太い乾麺類は調理時間が長くかかるという問題があった。これらの問題解決のために種々の提案がなされており、膨張剤を添加成分の一つとする技術としては、穀粉類および膨張剤と寒天、ゼラチン、糖類から選ばれる少なくとも1種の添加剤とを含有する、即席麺用粉(例えば、特許文献1参照)や、乾麺製造用の主原料中に、重炭酸アルカリと酸性剤を含む膨張剤を主原料に対して0.1〜5重量%の割合で配合したものを用いる早茹乾麺類の製造方法(例えば、特許文献2参照)や、ガス発生基剤を含有する麺帯を、通常配合の麺帯でサンドイッチ構造とし、麺線の内部組織のみを発泡させて粗の状態とする早茹で性を有する乾麺の製造方法(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0003】
また、製麺の製造過程でイースト菌や発酵を促す働きをする菌を粉体に0.1%〜5%混入した後、通常の製造工程で製麺すると菌の発酵の作用により、無数の気泡を発生させるうどん、麺類の製造方法(例えば、特許文献4参照)が知られている。しかし、これらの技術は、食味等の問題があり、充分満足される方法ではない。
【0004】
また、ゼラチンを用いる麺類の製造法に関する技術としては、澱粉質を主体とする麺類等加工食品の原料粉末100重量部にゼラチン粉末1〜5重量部を添加混合し、茹で後も一定時間、腰(コシ)のある麺類とし得る麺類用原料粉末組成物(例えば、特許文献5参照)や、ゼラチン、サイリウム、アルカリ剤および食塩を含有する麺生地より調製される、美容と薬理効果を付与し得るゼラチン含有麺類(例えば、特許文献6参照)が提案されている。しかし、これらの技術は、即席麺類の復元性や乾麺類の茹で時間を短縮する点で充分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−34130号公報
【特許文献2】特開平6−343409号公報
【特許文献3】特開平10−4898号公報
【特許文献4】特開2008−136429号公報
【特許文献5】特開平4−210567号公報
【特許文献6】特開2000−262232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、即席麺類、特に麺線の比較的太い即席麺類については喫食時に麺線が所定時間内に速やかに復元し、また、乾麺類、特に麺線の比較的太い乾麺類については茹で時間を短縮し、かつ、復元後のこれら麺類は、滑らかで、粘弾性のある食感を有し、細麺や太麺にも適用し得る即席麺類又は乾麺類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するため種々検討を行った。その結果、特定の粒径を有するゼラチン発泡体の粒状乾燥物を特定量穀粉原料に添加して製造したところ、得られた即席麺類については復元性にすぐれ、且つ食感もよく、また乾燥麺類については、茹で時間が短くなる等の顕著な効果があることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は(1)麺類生地中に、穀粉原料100質量部に対して、粒径0.2〜1.5mmであるゼラチン発泡体の粒状乾燥物0.1〜5質量部を均一に分散混合させた後、製麺を行い、以下常法により、即席麺類又は乾麺類を製造することを特徴とする即席麺類又は乾麺類の製造方法や、(2)ゼラチン発泡体の粒状乾燥物が、比重0.05〜0.4、膜厚0.08〜0.4mmであることを特徴とする、上記(1)記載の即席麺類又は乾麺類の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、特定の粒径を有するゼラチン発泡体の粒状乾燥物を特定量穀粉原料に添加し、常法により製造した即席麺類は復元性にすぐれ、且つ滑らかで、粘弾性がよい等、すぐれた食感を有し、また、乾燥麺類は茹で時間が短く、且つすぐれた食感を有する等、従来のゼラチン粉末等を添加した麺類に比べて顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の製造方法としては、麺類生地中に、穀粉原料100質量部に対して、粒径0.2〜1.5mmであるゼラチン発泡体の粒状乾燥物を0.1〜5質量部を均一に分散混合させた後、製麺を行い、以下常法により即席麺類又は乾麺類を製造する方法であれば、特に制限されるものではない。
【0011】
ゼラチン発泡体の粒状乾燥物の添加量は、穀粉原料100質量部に対して0.1〜5質量部、好ましくは1〜3質量部である。添加量が0.1質量部未満では、本発明の効果が得られず、即席麺類の復元時間が長くかかり、また、乾麺類の茹で時間が長くかかる。また、添加量が5質量部を超えると即席麺類では、復元性はよいが、麺表面が荒れるため、復元後の食感や、食味が劣り、添加量をより多くすると製麺が不可能になる。乾麺類では、茹で時間は短くなるが、麺表面が荒れ、食感が劣るようになる。
【0012】
ゼラチン発泡体の粒状乾燥物の原料として、豚皮、豚骨、魚、牛骨など様々な原料が挙げられるが、特に制限されない。ゼラチン発泡体の粒状乾燥物の物性としては、粒径は、0.2〜1.5mm、特に0.3〜1.0mmが好ましく、比重は、0.05〜0.40、特に0.15〜0.30が好ましい。膜厚は0.08〜0.4mmが好ましい。なお、本発明でいう膜厚の測定は、無作為に抽出した20粒のゼラチン発泡体の粒状乾燥物について測定し、この平均値を求めたものである。
【0013】
ゼラチン発泡体の粒状乾燥物の製造方法は特に制限されないが、例えば、平均粒径1.0mm以下のゼラチン粉末に必要により少量の水分を含有させながら、130〜160℃の高温条件下で攪拌しながら急激に加熱処理して、短時間(例えば20秒〜2分間程度)に含有水分の蒸発による発泡を起こさせる方法があり、加熱処理の具体的な方法としては、回転する容器内にゼラチン粉末を入れ少量の水分(ゼラチン粉末の質量に対して1〜10質量%程度の水分)を含有させた状態で外部から急激に加熱する方法や、ゼラチン粉末に前記と同様の水分を含有させたものをフライパン等でかき混ぜながら炒る方法や、加熱した食用油でフライする方法等が挙げられる。フライした場合は、余分な食用油をろ紙等で除去するか、遠心分離機で除去すればよい。
【0014】
本発明における即席麺類の種類としては、即席中華麺、即席うどん、即席日本そば、即席きしめん、即席そうめん、即席ひやむぎ、即席焼きそば、即席パスタなどを挙げることができ、ノンフライ即席麺、フライ即席麺のいずれでもよい。また、乾麺類の種類としては、うどん、ひらめん、ひやむぎ、そうめん、中華麺、そば、パスタ等を挙げることができる。これら麺類は、細麺でも太麺でもよいが、麺線が比較的太い麺類が本発明の効果を十分享受しうる点で好ましく、これらの麺線が比較的太い麺類としては、例えばうどんで幅及び/又は厚さが2.0〜3.5mm、中華麺で幅1.5〜3.0mm及び/又は厚さが1.0〜3.0mm、パスタ類で幅1.5〜8.0mm及び/又は厚さ1.0〜3.0mmの形状を好適に例示することができる。
【0015】
本発明の穀粉原料としては、小麦粉、ソバ粉、コーンフラワー、ライ麦粉、大麦粉、オーツ粉、米粉等を挙げることができ、単独又は二種以上を混合して用いることができる。また、澱粉として、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、甘藷澱粉等の澱粉類、又はこれらの架橋、エステル化、エーテル化、酸化、α化等の加工澱粉類を配合することができる。前記穀粉や澱粉、加工澱粉の配合割合は、即席麺の種類や、乾麺の種類により、適宜の配合割合で用いることができる。
【0016】
製麺用副資材として、食塩;かんすい;卵白粉、全卵粉等の卵粉;キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸及びその塩、寒天、ゼラチン、ペクチン等の増粘剤;動植物油脂、乳化油脂、ショートニング等の油脂類;レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤;炭酸塩、リン酸塩等の無機塩類;グルテン、大豆蛋白質、カゼイン等の蛋白類;その他ソルビット、エチルアルコール、酵素剤等を例示することができる。
【0017】
本発明における製麺方法としては、穀粉原料や製麺用副資材を仕込み水とともに混合して十分混捏し、グルテンを形成した生地を調製した後ゼラチン発泡体の粒状乾燥物を添加し、均一に分散混合させた後に圧延する方法が好ましい。他方、穀粉原料や製麺用副資材とともに最初からゼラチン発泡体の粒状乾燥物を混合し生地を調製する方法や、仕込み水にゼラチン発泡体の粒状乾燥物を混合後常法により混捏する方法や、グルテンを形成した生地にゼラチン発泡体の粒状乾燥物を少量の水に混合後、分散させる方法では、本発明の効果を十分に享受することはできない。
【0018】
即席麺類の製造方法としては、穀粉原料に食塩水、かんすい等の製麺用副資材等を必要に応じて加え、混合し、混捏して十分なグルテンを形成した生地を調製し、この生地にゼラチン発泡体の粒状乾燥物を均一に分散混合させ、次いで製麺ロールを用いて複合・圧延して麺帯を得、この麺帯を、切刃等を用いて切り出して麺線を得るか、あるいは、生地から押し出し成型により麺線を得る。かかる製麺工程に続いて行われる乾燥工程では、型に詰め90〜100℃の熱風で約25〜15分間乾燥する熱風乾燥方法(ノンフライ即席麺)や、型に詰め140〜150℃で、1分〜2分間の油揚げ方法(フライ即席麺)を採用することができる。
【0019】
また、乾麺類の製造方法としては、穀粉原料と食塩水等の製麺用副資材とを常法によって混捏して生地を製造し、この生地にゼラチン発泡体の粒状乾燥物を均一に分散混合させ、次いで製麺ロールを用いて複合・圧延して麺帯を得、この麺帯を、切刃等を用いて切り出して麺線を得、切り出した麺線を乾燥することにより製造することができる。なお、いずれの場合も、ゼラチン発泡体の粒状乾燥物を均一に分散混合させるには、低速のミキサーを用いて1〜2分間程度混合することにより行うことができる。
【0020】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[ゼラチン発泡体の粒状乾燥物の製造例1]
粒径が1.0mm以下(平均粒径0.5mm)のゼラチン粉末(新田ゼラチン社製「NC」)にゼラチン粉末の質量に対して1〜2質量%の水分を霧吹きして攪拌しながらフライパンで炒って(約1〜2分間)、ゼラチン発泡体の粒状乾燥物(以下、単に「ゼラチン発泡体」ということがある)を得(粒径は0.1〜2.0mm超まで分布)、これを篩い分けして粒径0.2〜1.5mm、比重が0.05〜0.4、膜厚が約0.08〜0.4mmであるゼラチン発泡体を得た。
【0021】
[ゼラチン発泡体の粒状乾燥物の製造例2]
製造例1で得られたゼラチン発泡体をさらに篩い分けして、粒径が0.3〜1.0mmのゼラチン発泡体及び製造例1で最初の篩い分けにより除去された部分のうち粒径が1.5mm超〜2.0mm以下のゼラチン発泡体を得た。
【0022】
[試験例1](ゼラチン発泡体の添加量について)
<ノンフライ即席中華麺の製造方法>
(1)中力小麦粉(日清製粉社製「特雀」)75質量部と、馬鈴薯澱粉(松谷化学社製「スタビローズ1300」)25質量部とを均一に混合し、穀粉原料を調製した。
(2)食塩1質量部、かんすい(オリエンタル酵母社製「赤かんすい」)0.4質量部を共に水35質量部に溶かした水溶液を調製し、上記(1)の穀粉原料に添加して常法によって10分間混捏して十分なグルテンを形成した生地を作製した。
(3)続いて、この生地に製造例1で得られたゼラチン発泡体を表1に示す0.05〜10質量部(穀粉原料100質量部に対する)それぞれ加え、低速で2分間混合し均一に分散混合させた。
(4)次いで、この生地を製麺ロールを用いて複合、圧延して厚さ1.5mmの麺帯にした後、16番(麺線幅約1.9mm)の角の切刃を用いて麺線に切り出した。
(5)切り出した麺線を温度100℃の蒸気で2分30秒蒸熱処理した後、110℃の熱風で18分間乾燥してノンフライ即席中華麺をそれぞれ製造した。
(6)上記(5)で得られたそれぞれのノンフライ即席中華麺70gを入れた密封容器中に、450mlの沸騰水を注ぎ4分間かけて復元し、濃縮スープを入れた。この麺を10名のパネラーに食してもらって下記の表7に示す評価基準にしたがって官能試験を行い、その平均値を採ったところ下記の表1に示す通りになった。なお、官能試験はゼラチン発泡体を含まない比較例4を標準とした。
【0023】
【表1】

【0024】
表1に示すように、ゼラチン発泡体の添加量については、穀粉原料(小麦粉及び澱粉)100質量部に対し、実施例1〜4において添加する0.1〜5質量部のものでは、以下のとおり比較例に比べて極めてすぐれている。すなわち、比較例1の7質量部添加のものは、表面が若干荒れており、そのため滑らかさと粘弾性において劣り、また比較例2の10質量部添加のものは、麺帯表面が荒れ、裂けたため、製麺が不可能であり、さらに、比較例3の0.05質量部の添加のものでは、無添加とほぼ同様の結果を示したのに比して、本発明のものでは、表7の評価基準で示す復元性、滑らかさ、粘弾性において、良好であり、特に実施例3は、復元性が極めて良好であり、滑らかさ、粘弾性も同様に極めて良好であった。以上より、本発明のゼラチン発泡体の添加量は、穀粉原料100質量部に対して0.1〜5質量部であることが適切な範囲であることが分かる。
【0025】
[試験例2](ゼラチン発泡体の添加方法について)
実施例3と同じ配合割合で小麦粉、澱粉、ゼラチン発泡体を用いるが、小麦粉、澱粉、ゼラチン発泡体を粉体混合(同時混合)した後、前記(2)と同様にして十分なグルテンを形成した生地を作製した。以後、前記(4)〜(6)と同様にしてノンフライ即席中華麺を製造し、比較例5とした。また、実施例3と同じ配合割合で小麦粉、澱粉、ゼラチン発泡体を用いるが、仕込み水にゼラチン発泡体を混合後、前記(2)と同様にして十分なグルテンを形成した生地を作製した。以後、前記(4)〜(6)と同様にしてノンフライ即席中華麺を製造し、比較例6とした。さらに、実施例3と同じ配合割合で小麦粉、澱粉、ゼラチン発泡体を用いるが、前記(2)と同様にして十分なグルテンを形成した生地を作製した。このグルテンを形成した生地に、ゼラチン発泡体を少量の水に混合後、これを全体的に分散混合するよう低速で2分間混合したものを比較例7とした。
【0026】
前記実施例3及び比較例4、並びに上記比較例5〜7で得られた、それぞれの即席麺70gを入れた密封容器中に、450mlの沸騰水を注ぎ4分間かけて復元し、濃縮スープを入れた。この麺を10名のパネラーに食してもらって下記の表7に示す評価基準にしたがって官能試験を行い、その平均値を採ったところ下記の表2に示す通りになった。なお、ゼラチン発泡体を含まない比較例4を官能試験の標準とした。
【0027】
【表2】

【0028】
表2に示すように、ゼラチン発泡体の添加量を3質量部(一定)にして、ゼラチン発泡体の添加方法を、本発明(実施例3)のものでは、以下のとおり比較例に比べて極めてすぐれていた。すなわち、比較例5の原材料の粉体とともにゼラチン発泡体を混合したものや、比較例6の仕込み水にゼラチン発泡体を混合したものは、無添加とほぼ同じ程度であり、比較例7のゼラチン発泡体を少量の水に混合後に生地に分散混合させたものでは一部に芯が残り(復元性)、一部にざらつきや、一部に硬さが残る食感を示した。これに対して、本発明のものは、復元性、滑らかさ及び粘弾性において、極めて良好であった。このように、ゼラチン発泡体の添加方法としては、十分なグルテンを形成した麺類生地中にゼラチン発泡体を均一に分散混合することが重要であることが分かる。
【0029】
[試験例3](ゼラチン・増粘剤の種類について)
下記表3に示すように、ゼラチン発泡体の代わりに、ゼラチン粉末及び他の増粘剤(比較例8〜比較例13)を穀類原料100質量部(小麦粉75質量部及び澱粉25質量部)に3質量部用い、実施例3と同様の方法により、ノンフライ即席中華麺を製造した。得られたそれぞれのノンフライ即席中華麺70gを入れた密封容器中に、450mlの沸騰水を注ぎ4分間かけて復元し、濃縮スープを入れた。この麺を10名のパネラーに食してもらって下記の表7に示す評価基準にしたがって官能試験を行い、その平均値を採ったところ下記の表3に示す通りになった。なお、官能試験はゼラチン発泡体を含まない比較例4を標準とした。
【0030】
【表3】

【0031】
表3に示すように、本発明(実施例3)のゼラチン発泡体を用いたものでは、以下のとおり比較例に比べて極めてすぐれていた。すなわち、比較例8のゼラチン粉末、比較例9の寒天粉末、比較例10のコラーゲン粉末、比較例11のカラギーナン粉末、比較例12のグルコマンナン粉末、比較例13のペクチン粉末を用いたものに比べて、本発明は、復元性、滑らかさ及び粘弾性の点で極めて良好なものであった。これらのことから、ゼラチン発泡体を用いることにより、ゼラチン粉末や、他の増粘剤粉末と比べて、すぐれた復元性等の効果を奏することが分かる。
【0032】
[試験例4](ゼラチン発泡体の粒径について)
下記表4に示すように、製造例2で得られた粒径が0.3〜1.0mmのゼラチン発泡体を実施例3のゼラチン発泡体の代わりに用いた以外は実施例3と同様にしてノンフライ即席中華麺を製造したものを実施例5とし、粒径が1.5mm超〜2.0mm以下のゼラチン発泡体を実施例3のゼラチン発泡体の代わりに用いた以外は実施例3と同様にしてノンフライ即席中華麺を製造したものを比較例14とした。得られたそれぞれのノンフライ即席中華麺70gを入れた密封容器中に、450mlの沸騰水を注ぎ4分間かけて復元し、濃縮スープを入れた。この麺を10名のパネラーに食してもらって下記の表7に示す評価基準にしたがって官能試験を行い、その平均値を採ったところ下記の表4に示す通りになった。なお、官能試験はゼラチン発泡体を含まない比較例4を標準とした。また、比較例14については製麺自体が不可能であったため、官能試験はおこなわなかった。
【0033】
【表4】

【0034】
表4に示すように、本発明のゼラチン発泡体の粒径の範囲内である、実施例3、5は、以下のとおり比較例に比べて極めてすぐれている。すなわち、その粒径が比較例14の1.5mm超〜2.0mm以下では、製麺不可能であり、実施例3、5(本発明)では、復元性、滑らかさ及び粘弾性においてすぐれたものであった。また、上記表4には掲載していないが、ゼラチン発泡体の粒径が本発明の範囲よりも小さい(0.1mm以下の)場合は、実質的に発泡しておらず、ゼラチン粉末を添加したものとほぼ同様の結果となり、前記比較例8の評価結果と同じような評価であった。以上より、本発明のゼラチン発泡体の粒径は0.2〜1.5mmが適切な範囲であり、0.3〜1.0mmが好ましい範囲であることが分かる。
【0035】
[試験例5](膨張剤との比較)
比較例15は、実施例3においてゼラチン発泡体に代えて、膨張剤(アイコク社製「ベーキングパウダー普通タイプ赤」)を使用する以外は実施例3と同様にノンフライ即席中華麺を製造した。得られたノンフライ即席中華麺70gを入れた密封容器中に、450mlの沸騰水を注ぎ4分間かけて復元し、濃縮スープを入れた。この麺を10名のパネラーに食してもらって下記の表7に示す評価基準にしたがって官能試験を行い、その平均値を採ったところ下記の表5に示す通りになった。なお、官能試験はゼラチン発泡体を含まない比較例4を標準とした。
【0036】
【表5】

【0037】
表5に示すように、本発明(実施例3)のゼラチン発泡体を用いたものは、以下のとおり比較例に比べて極めてすぐれていた。すなわち、比較例15のベーキングパウダーを用いたものは、粘弾性では、無添加と同じであり、復元性では、大部分は可食状態であるが一部に芯が残り、粘弾性では芯が残るような硬さが残っているのに比して、本発明(実施例3)では、復元性、滑らかさ及び粘弾性において極めて良好である。以上より、本発明のゼラチン発泡体は、生地内で膨張性を有するベーキングパウダーに比して復元性等に効果を有することが分かる。
【0038】
[実施例6]
<乾麺(乾燥うどん)の製造方法>
(1)食塩4質量部を水35質量部に溶かした水溶液を調製し、中力小麦粉(日清製粉社製「特雀」)100質量部に加えて常法によって10分間混捏して十分なグルテンを形成した生地を作製した。
(2)続いて、この生地にゼラチン発泡体を3質量部加え、2分間混合し均一に分散させた。
(3)次に、この生地を製麺ロールを用いて複合、圧延して厚さ2.0mmの麺帯にした後、10番の角の切刃(麺線幅約3.0mm)を用いて麺線に切り出した。
(4)切り出した麺線を常法により乾燥させ、乾麺(乾燥うどん)をそれぞれ製造した。
(5)上記(4)で得られた乾麺(乾燥うどん)100gを沸騰水中で最適な可食状態になるまで茹で、水洗、冷却した。この麺を10名のパネラーに食してもらって下記の表8に示す評価基準にしたがって官能試験を行い、その平均値を採ったところ下記の表6に示す通りになった。なお、官能試験はゼラチンを含まない比較例16の乾麺(乾燥うどん)を標準とした。
【0039】
【表6】

【0040】
表6に示すように、ゼラチン発泡体を含む実施例6の乾麺(乾燥うどん)では、無添加の比較例16に比して、茹で時間が3分も短縮されており、食感も極めて良好であった。以上より、本発明によると、即席麺ばかりでなく、乾麺においても茹で時間を短縮するという効果を有することが分かる。
【0041】
【表7】

【0042】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺類生地中に、穀粉原料100質量部に対して、粒径0.2〜1.5mmであるゼラチン発泡体の粒状乾燥物0.1〜5質量部を均一に分散混合させた後、製麺を行い、以下常法により、即席麺類又は乾麺類を製造することを特徴とする即席麺類又は乾麺類の製造方法。
【請求項2】
ゼラチン発泡体の粒状乾燥物が、比重0.05〜0.4、膜厚0.08〜0.4mmであることを特徴とする、請求項1記載の即席麺類又は乾麺類の製造方法。