説明

卵料理用加工素材および卵料理の製造法。

【課題】卵または液卵の加熱調理用の加工素材および卵料理の製造方法を提供すること。
【解決手段】膨張剤と澱粉を含有する卵料理用加工素材であって、膨張剤は重曹に2種類以上の助剤と分散剤を加えた素材を用いる。この卵料理用加工素材と、具材となる食品素材を耐熱容器に充填密封し、加熱処理して得られた調味液と、卵及び液卵と混合し卵料理を得る。
【効果】卵を加えて調理する、高度な調理技術を必要とする卵料理において、優れた食感を再現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵料理用加工食品およびその製造法に関し、卵または液卵に加えて加熱調理した際に優れた食感を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
オムレツや卵焼き、かに玉といった卵料理の美味しさは、ほどよく焼けた表面とふっくらした厚みとふんわりとした内面の柔らかくふわふわした食感に寄るものである。卵の熱凝固性に影響を及ぼす要因には、調理時の加熱条件(温度、時間)、添加物(油脂、塩、砂糖、酢等)の有無、空気の含有度合い、卵の希釈液の液性と希釈倍率等が挙げられ、これらが複雑に関与することにより、その食感が決定される。したがって、これらの卵料理を良好な食感に仕上げるには高度な調理技術が必要とされてきた。
【0003】
従来技術として卵料理に澱粉を加える卵料理用調味料の発明がある(特許文献1)が、この発明は消費者の調理技術やオケージョンをカバーするまでの改良には至っていない。なかでも卵料理用加工食品は、消費者の調理熟練度による仕上り品質への影響が大きく、消費者が充分満足のいく食感が得られていないのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開2004−298100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、卵を加えて調理する、高度な調理技術を必要とする卵料理において、優れた食感を再現することができる卵料理用加工素材を提供することが望まれてきた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、この課題を解決すべく検討した結果、卵料理用加工素材として膨張剤と澱粉を混合させたものと調味液を、卵または液卵に加えて調理した際、簡便性はもとより、従来の問題点であった調理熟練度の影響を受けることなく安定して優れた食感の卵料理が得られることを発見し、本発明の完成に至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明の卵料理用加工素材は、特に、卵または液卵に加えて調理する卵料理用加工食品において有用であり、例えば、オムレツ、卵焼き、かに玉等を加熱調理して作る時に用いれば、高度な調理技術を要する卵料理の理想的な食感を調理熟練度に寄ることなく安定的に得ることができる。更に本発明の卵料理用加工素材は、保存安定性に優れ、卵に加えて調理した際に、保存期間後も簡便性はもとより、調理熟練者が作る理想的な卵料理の食感を安定的に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明について具体的詳細に説明する。
本発明で用いる膨張剤とは、2種類以上の化学薬品による、化学変化によって発生する炭酸ガス又はアンモニアガスの力で、菓子の生地(生麺)を膨張させて多孔性にすると共に、物理的味覚を増加させる物質を言う。食品に用いる膨張剤は、一般に重曹、ベーキングパウダーがあり、助剤の種類や組み合わせにより、適した温度やスピードでガスを発生させることができる。以下の助剤と分散剤とを溶液にしたときにpH6.5〜7.8になるようにする。
【0009】
助剤とは、重曹に作用して分散を助け、ガス発生の温度やスピードを調整している。助剤として酒石酸、クエン酸、第1リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、グルコノデルタラクトン、フマル酸などの酸性剤を使用することができる。
【0010】
分散剤とは、ガス発生源と助剤が保存中に反応しないように、また吸湿した場合の対応として一般的に乾燥したコーンスターチや小麦粉を用いている。
膨張剤の含有量は卵料理用加工素材100重量部に対し30〜70重量部となるように調整することが好ましく、卵または液卵100重量部に対し、1〜6重量部となるように調整する。含有量1重量部未満では本発明の効果が得られず、また含有量6重量部を超えると不自然な食感になり好ましくない。
【0011】
本発明で用いることのできる澱粉とは、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、とうもろこし澱粉、その他の澱粉のことであり、その原料や製法にはこだわらない。また、これらの中から1種または2種以上を併用することもできる。澱粉の含有量は卵料理用加工素材100重量部に対し30〜70重量部とすることが好ましい。含有量30重量部未満では本発明の添加効果が認められず、含有量が70重量部を超えると不自然な食感を付与してしまい、好ましくない食感となってしまう。
【0012】
本発明で用いる調味液は、澱粉、油脂、増粘剤の他にL−グルタミン酸ナトリウム(以下「MSG」とする)、核酸、食塩等の調味料、各種エキス類、香辛料等の食品素材を混合し、必要により予備加熱して用いることができる。予備加熱の程度は30〜100℃にて達温〜30分程度行なうことが好ましい。
【0013】
また具材としての食品素材は、人参やじゃが芋等の野菜や、挽肉等の畜肉加工素材、蟹肉や蒲鉾等の水産加工素材、海藻等も加工食品の用途に応じて適宜添加することができる。
【0014】
これらの食品素材はブレンダーやカッター等で適当な大きさにカット及び
適宜加熱され、調味液と攪拌混合または耐熱容器に直接充填される。
【0015】
各種素材の添加方法は特に限定されるものではなく、調味液に混合分散させるか、食品素材と調味液に混合分散させるかの方法等、製造において任意の工程が選ばれる。また、pH、Brix、粘度などを調整することができる。
【0016】
具材と調味液をレトルト容器等の耐熱容器(合成樹脂または金属、またはこれらを多層に合わせたものを袋状またはその他形状に成型したもの)に重量調整しながら充填密封後、加熱殺菌される。加熱殺菌の条件は、充填された内容物により適宜選択することができるが、65〜140℃にて、1〜60分加熱殺菌することにより達成される。
【実施例】
【0017】
本発明を、実施例及び比較例により詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0018】
[実施例1]
重曹35重量部、助剤として焼ミョウバン28重量部、リン酸二水素カルシウム12重量部、分散剤としてコーンスターチ28重量部の成分からなる膨張剤に、澱粉(ポテトスターチ)100重量部を混合して、本発明の卵料理用加工素材を得た。一方、野菜30重量部、魚肉加工品等(魚肉ねり製品、カニエキス)20重量部、トレハロース10重量部、澱粉5重量部、油5重量部の食品素材、その他水を加えて調味液を混合して85℃達温の予備加熱を行なった後、レトルトパウチに充填密封し、126℃10分のレトルト処理を施した調味液70gと卵150gとに、前記卵料理用加工素材6gを加えて静かに攪拌し、予め少量の食用油を含ませ強火で加温したフライパンに注ぎ軽く攪拌した。卵が凝固しかけたら裏返し、弱火で約30秒加熱した後フライパンより取り出し、かに玉を得た。対照として膨張剤と澱粉を除いた無添加品を調整した。
【0019】
得られたかに玉の品質を熟練したパネル5名により官能検査を行なった。評価基準は、非常に強く感じる(+++)、強く感じる(++)、やや感じる(+)、ほとんど感じない(−)として評価結果を表1に併記した。また、加熱調理直後の卵焼きの断面の厚みをノギスで測定し、対照品に対して厚みの割合を算出した結果を表2に併記した。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
表1に示すように複数からなる膨張剤を配合した本発明品は、対照品(膨張剤を含まないもの)と比較し、ふんわりとした柔らかい食感であり、優れた品質のものが得られた。表2の結果より、本発明品は加熱調理時に厚みが厚く焼けることを確認した。
【0023】
[実施例2]
実施例1と同様の方法で、かに玉を得た。比較対照として卵料理用加工素材中の膨張剤と澱粉量の条件を表3のように変えた比較品を調整した。
【0024】
得られたかに玉の品質を熟練したパネル5名により官能検査を行なった。評価基準は、非常に強く感じる(+++)、強く感じる(++)、やや感じる(+)、ほとんど感じない(−)として評価結果を表3に併記した。
【0025】
【表3】

【0026】
表3に示すように複数からなる膨張剤を配合した本発明品は、比較対照品(膨張剤含有量を増減させたもの)と比較し、ふんわりとした柔らかい食感であり、優れた品質のものが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重曹に、2種類以上の助剤と分散剤を卵料理用加工素材100重量部に対し30〜70重量部加えた膨張剤と、澱粉を含有することを特徴とする卵料理用加工素材。
【請求項2】
請求項1に記載の卵料理用加工素材1重量部に対して、調味液5〜20重量部、卵又は液卵5〜50重量部を加え、加熱調理することを特徴とする卵料理の製造法。
【請求項3】
澱粉、油脂、増粘剤を含有する調味液を、具材となる食品素材と共に耐熱容器に充填密封し加熱殺菌した調味液を、請求項1または2に記載の卵料理用加工素材にあわせて調理することを特徴とする卵料理の製造法。

【公開番号】特開2008−5757(P2008−5757A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179293(P2006−179293)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】