説明

厚鋼板のオフライン処理方法

【課題】圧延ラインで熱間圧延された厚鋼板の表面に識別ラベルを貼付した後、厚鋼板を圧延ラインの下流の剪断・精整ラインから降ろしてオフライン処理するときに識別ラベルが厚鋼板から剥れ落ちることなどを防止することのできる厚鋼板のオフライン処理方法を提供する。
【解決手段】圧延ラインで熱間圧延された厚鋼板14の一側面と上面に識別ラベル14をL字状に貼付した後、厚鋼板14を圧延ラインの下流の剪断・精整ラインから降ろしてオフライン処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延ラインで熱間圧延された厚鋼板の切断処理や熱処理などを圧延ラインと連続しないオフラインで処理する厚鋼板のオフライン処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延ラインで熱間圧延された厚鋼板は、通常、圧延ラインの下流に配置された剪断・精整ラインにてクロップシャー等の剪断機に搬送され、この剪断機で所定の長さにオンラインで切断される。しかし、厚鋼板の厚さが剪断機の剪断能力を超える場合には、剪断・精整ライン上の厚鋼板をクレーン等により剪断・精整ラインから降ろした後、ガス切断機等で厚鋼板を所定の長さに切断するようにしている。
【0003】
このように圧延ラインで熱間圧延された厚鋼板を剪断・精整ラインから降ろしてオフラインで切断する場合には、切断される厚鋼板がどのオーダーに対応するものであるかなどを確認してから厚鋼板を切断する必要がある。そこで、従来では、厚鋼板を剪断・精整ラインから降ろすときに厚鋼板の側面や上面に識別ラベルを貼付し、識別ラベルの表面に印字された識別情報とオフライン処理命令書に記載された識別情報とを照合してから厚鋼板をオフラインで切断するようにしている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭51−123600号公報
【特許文献2】特開2002−301517号公報
【特許文献3】特開昭51−108600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、識別ラベルを厚鋼板の側面のみに貼付すると、厚鋼板の側面は平坦でないため、識別ラベルが貼付された厚鋼板の左右側縁部をハンドリングして厚鋼板を剪断・精整ラインから降ろしたときに識別ラベルが厚鋼板から剥れ落ち、識別ラベルの表面に印字された識別情報とオフライン処理命令書に記載された識別情報とを照合することができなくなるという問題点があった。
【0006】
また、識別ラベルを厚鋼板の上面に貼付した場合には、識別ラベルが厚鋼板から剥がれ落ちることはあまりないが、識別ラベルが貼付された厚鋼板を剪断・精整ラインから降ろして積み重ねたときに識別ラベルが厚鋼板と擦れ合うことによって損傷し、識別ラベルの表面に印字された識別情報を読み取ることができなくなるなどの問題がある。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、圧延ラインで熱間圧延された厚鋼板の表面に識別ラベルを貼付した後、厚鋼板を圧延ラインの下流の剪断・精整ラインから降ろしてオフライン処理するときに識別ラベルが厚鋼板から剥れ落ちることなどを防止することのできる厚鋼板のオフライン処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、圧延ラインで熱間圧延された厚鋼板の表面に前記厚鋼板の識別情報が印字された識別ラベルを貼付した後、前記厚鋼板を前記圧延ラインの下流の剪断・精整ラインから降ろしてオフライン処理する方法であって、前記識別ラベルを前記厚鋼板の一側面と上面にL字状に貼付した後、前記厚鋼板を前記剪断・精整ラインから降ろしてオフライン処理することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の厚鋼板のオフライン処理方法において、前記識別情報が前記厚鋼板の一側面に位置するように前記識別ラベルを前記厚鋼板の一側面と上面にL字状に貼付した後、前記厚鋼板を前記剪断・精整ラインから降ろしてオフライン処理することを特徴とするものである。
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1に記載の厚鋼板のオフライン処理方法において、前記識別情報を前記識別ラベルの予め定めた二箇所に印字し、次いで前記識別情報が前記厚鋼板の一側面と上面に位置するように前記識別ラベルを前記厚鋼板の一側面と上面にL字状に貼付した後、前記厚鋼板を前記剪断・精整ラインから降ろしてオフライン処理することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1〜3の発明に係る厚鋼板のオフライン処理方法によれば、厚鋼板の上面は厚鋼板の側面よりも平坦であるため、識別ラベルを厚鋼板の側面のみに貼付した場合と比較して、識別ラベルが厚鋼板の表面から剥がれにくくなる。これにより、厚鋼板を剪断・精整ラインから降ろしてオフライン処理するときに識別ラベルが厚鋼板から剥れ落ちることを防止でき、識別ラベルの表面に印字された識別情報とオフライン処理命令書に記載された識別情報とを照合することができる。
また、請求項3の発明に係る厚鋼板のオフライン処理方法によれば、識別ラベルが貼付された厚鋼板を剪断・精整ラインから降ろして平置きした場合に識別ラベルの表面に印字された識別情報を厚鋼板の上方から読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】圧延ラインで熱間圧延された厚鋼板の表面に識別ラベルを貼付するラベル貼付装置の一例を示す図である。
【図2】図1のA−A断面を示す図である。
【図3】図1のB−B断面を示す図である。
【図4】台紙の表面に剥離可能に貼着された識別ラベルを示す図である。
【図5】識別ラベルの表面に識別情報が印字される領域を示す図である。
【図6】図1に示す第1のラベル貼付機構の動作を説明するための図である。
【図7】図1に示す第2のラベル貼付機構の動作を説明するための図である。
【図8】厚鋼板の一側面と上面の両方に貼付された識別ラベルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜図8を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は圧延ラインで熱間圧延された厚鋼板の表面に識別ラベルを貼付するラベル貼付装置の一例を示す図、図2は図1のA−A断面を示す図、図3は図1のB−B断面を示す図で、図1に示されるラベル貼付装置10は、台紙繰出リール11、プリンター16、識別ラベル剥し部材19、第1のラベル貼付機構21及び第2のラベル貼付機構25(図2及び図3参照)を備えている。
【0012】
台紙繰出リール11はロール状に巻かれたテープ状の台紙12を繰り出すものであって、この台紙繰出リール11から繰り出される台紙12の表面には、図4に示すように、複数の識別ラベル13が台紙12の長手方向に一定間隔で剥離可能に貼着されている。
識別ラベル13は圧延ラインで熱間圧延された厚鋼板14を圧延ラインの下流に配置された剪断・精整ラインのローラテーブル15から降ろしてオフライン処理するときに厚鋼板14の表面に貼付されるものであって、例えば1000℃以上の耐熱性を有している。また、識別ラベル13は厚鋼板14の厚さより大きい幅寸法で矩形状に形成されている。
【0013】
プリンター16は識別ラベル13の表面に厚鋼板固有の識別情報を印字するものであって、このプリンター16は圧延ラインや剪断・精整ラインの操業を管理する操業管理コンピュータから供給される厚鋼板情報に基づいて識別ラベル13の表面に識別情報を印字するように構成されている。また、プリンター16は、図5に示すように、識別ラベル13の表面上に形成された第1の識別情報印字領域17と第2の識別情報印字領域18に識別情報をそれぞれ印字するように構成されている。
【0014】
識別ラベル剥し部材19はプリンター16により識別情報が印字された識別ラベル13を台紙12の表面から剥がすものであって、この識別ラベル剥し部材19は例えば台紙12を三角形状に屈曲させて識別ラベル13を台紙12の表面から剥すように構成されている。なお、識別ラベル剥し部材19により識別ラベル13が剥された台紙12は台紙巻取リール20によりロール状に巻き取られるようになっている。
【0015】
第1のラベル貼付機構21は識別ラベル剥し部材19により台紙12の表面から剥された識別ラベル13の裏面(接着面)の下部を厚鋼板14の一側面に貼付するものであって、ラベル吸引ヘッド22及びラベル押付けシリンダ23を備えている。
ラベル吸引ヘッド22は識別ラベル剥し部材19により台紙12の表面から剥された識別ラベル13の表面を吸引するものであって、台紙12の表面から剥された識別ラベル13の表面はラベル吸引ヘッド22に形成された矩形状のラベル吸着面221に吸着するようになっている。
【0016】
ラベル押付けシリンダ23はラベル吸引ヘッド22のラベル吸着面221に吸着した識別ラベル13の裏面を厚鋼板14の一側面に押付けるものであって、このラベル押付けシリンダ23は鉛直な軸回りに回転動作する回転テーブル24の上面に設置されている。また、ラベル押付けシリンダ23は水平方向に伸縮動作するシリンダロッド231を有し、このシリンダロッド231の先端部にラベル吸引ヘッド22が装着されている。
【0017】
第2のラベル貼付機構25は第1のラベル貼付機構21により厚鋼板14の一側面に貼付された識別ラベル13の裏面(接着面)の上部を厚鋼板14の上面に貼付するものであって、ラベル押付けローラ26を介して識別ラベル13の裏面を厚鋼板14の上面に貼付するラベル貼付用シリンダ27を備えている。
ラベル貼付用シリンダ27は厚鋼板14の幅方向に伸縮動作するシリンダロッド271を有し、このシリンダロッド271の先端部にラベル押付けローラ26が回転自在に設けられている
【0018】
図6は第1のラベル貼付機構21の動作を示す図で、図6(a)に示すように、第1のラベル貼付機構21のラベル吸引ヘッド22に形成されたラベル吸着面221に識別ラベル13が吸着すると、第1のラベル貼付機構21の回転テーブル24が鉛直な軸回りに1/2回転し、これにより、図6(b)に示すように、ラベル吸引ヘッド22のラベル吸着面221に吸着した識別ラベル13の裏面が厚鋼板14の一側面と対向する。そして、ラベル吸引ヘッド22のラベル吸着面221に吸着した識別ラベル13の裏面が厚鋼板14の一側面に対向すると、図6(c)に示すように、ラベル押付けシリンダ23のシリンダロッド231が厚鋼板14の幅方向に伸長動作する。これにより、ラベル吸引ヘッド22のラベル吸着面221に吸着した識別ラベル13の裏面下部が厚鋼板14の一側面に押付けられ、厚鋼板14の一側面に識別ラベル13が図6(d)に示す状態で貼付される。
【0019】
なお、識別ラベル剥し部材19により台紙12の表面から剥された識別ラベル13が厚鋼板14の一側面に貼付されると、厚鋼板14の一側面に貼付された識別ラベル13が第2のラベル貼付機構25のラベル押付けローラ26と対向するまで厚鋼板14がローラテーブル15により所定の距離だけ搬送される。
【0020】
図7は第2のラベル貼付機構25の動作を示す図で、図7(a)に示すように、第1のラベル貼付機構21により厚鋼板14の一側面に貼付された識別ラベル13が第2のラベル貼付機構25のラベル押付けローラ26と対向する位置に到達すると、図7(b)に示すように、ラベル貼付用シリンダ27のシリンダロッド271が厚鋼板14の幅方向に所定のストロークだけ伸長動作する。これにより、厚鋼板14の一側面に貼付された識別ラベル13のうち厚鋼板14の上面側に突出する部分がシリンダロッド271の先端部に設けられたラベル押付けローラ26により厚鋼板14の上面側に屈曲し、図7(c)に示すように、識別ラベル13の裏面がラベル押付けローラ26によって厚鋼板14の上面に押付けられる。
【0021】
図8はラベル貼付装置10により厚鋼板14の一側面と上面に貼付された識別ラベル13を示す図で、図8に示すように、識別ラベル13は厚鋼板14の一側面と上面の両方にL字状に貼付される。
上述のように、圧延ラインで熱間圧延された厚鋼板14の表面に識別ラベル13を貼付した後、厚鋼板14を圧延ラインの下流の剪断・精整ラインから降ろしてオフライン処理するに際して、識別ラベル13を厚鋼板14の一側面と上面にL字状に貼付すると、厚鋼板14の上面は厚鋼板14の側面よりも平坦であるため、識別ラベル13を厚鋼板14の側面のみに貼付した場合と比較して、識別ラベル13が厚鋼板14の表面から剥がれにくくなる。したがって、識別ラベル13を厚鋼板14の一側面と上面にL字状に貼付した後、厚鋼板14を剪断・精整ラインから降ろしてオフライン処理することで、厚鋼板14を剪断・精整ラインから降ろしてオフライン処理するときに識別ラベル13が厚鋼板14から剥れ落ちることを防止でき、識別ラベル13の表面に印字された識別情報とオフライン処理命令書に記載された識別情報とを照合することができる。
【0022】
また、図8に示すように、識別ラベル13の表面上に形成された第1の識別情報印字領域17と第2の識別情報印字領域18に印字された識別情報(図示せず)が厚鋼板14の一側面と上面に位置するように識別ラベル13を厚鋼板14の一側面と上面にL字状に貼付することで、識別ラベル13が貼付された厚鋼板14を剪断・精整ラインから降ろして平置きした場合に識別ラベル13の表面に印字された識別情報を厚鋼板14の上方から読み取ることができる。
【0023】
さらに、識別ラベル13の表面上に形成された第1の識別情報印字領域17と第2の識別情報印字領域18に印字された識別情報(図示せず)が厚鋼板14の一側面と上面に位置するように識別ラベル13を厚鋼板14の一側面と上面にL字状に貼付することで、厚鋼板14を剪断・精整ラインから降ろして積み重ねたときに識別ラベル13が厚鋼板14と擦れ合うことによって損傷しても第1の識別情報印字領域17に印字された識別情報を厚鋼板14の側方から読み取ることができる。
【0024】
なお、上述した本発明の一実施形態では、識別ラベル13の表面上に形成された第1の識別情報印字領域17と第2の識別情報印字領域18に識別情報を印字するようにしたが、例えば第1の識別情報印字領域17のみに識別情報を印字し、第1の識別情報印字領域17に印字された識別情報が厚鋼板14の側面上に位置するように識別ラベル13を厚鋼板14の一側面と上面にL字状に貼付してもよい。
また、上述した本発明の一実施形態では、図1〜図3に示すラベル貼付装置10を用いて識別ラベル13を厚鋼板14の一側面と上面にL字状に貼付するようにしたが、ラベル貼付装置の構成は図1〜図3に示した構成に限られるものではない。
【符号の説明】
【0025】
10…ラベル貼付装置、11…台紙繰出リール、12…台紙、13…識別ラベル、14…厚鋼板、15…ローラテーブル、16…プリンター、17…第1の識別情報印字領域、18…第2の識別情報印字領域、19…識別ラベル剥し部材、20…台紙巻取リール、21…第1のラベル貼付機構、22…ラベル吸引ヘッド、23…ラベル押付けシリンダ、24…回転テーブル、25…第2のラベル貼付機構、26…ラベル押付けローラ、27…ラベル貼付用シリンダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延ラインで熱間圧延された厚鋼板の表面に前記厚鋼板の識別情報が印字された識別ラベルを貼付した後、前記厚鋼板を前記圧延ラインの下流の剪断・精整ラインから降ろしてオフライン処理する方法であって、前記識別ラベルを前記厚鋼板の一側面と上面にL字状に貼付した後、前記厚鋼板を前記剪断・精整ラインから降ろしてオフライン処理することを特徴とする厚鋼板のオフライン処理方法。
【請求項2】
前記識別情報が前記厚鋼板の一側面に位置するように前記識別ラベルを前記厚鋼板の一側面と上面にL字状に貼付した後、前記厚鋼板を前記剪断・精整ラインから降ろしてオフライン処理することを特徴とする請求項1に記載の厚鋼板のオフライン処理方法。
【請求項3】
前記識別情報を前記識別ラベルの予め定めた二箇所に印字し、次いで前記識別情報が前記厚鋼板の一側面と上面に位置するように前記識別ラベルを前記厚鋼板の一側面と上面にL字状に貼付した後、前記厚鋼板を前記下流の剪断・精整ラインから降ろしてオフライン処理することを特徴とする請求項1に記載の厚鋼板のオフライン処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−206812(P2011−206812A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77083(P2010−77083)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】