説明

原子力プラントの系統隔離システム

【課題】原子力プラントの定期点検作業における系統の隔離計画ならびに隔離の実施・復旧管理等の効率化に有用な原子力プラントの系統隔離システムに関し、管理の必要な隔離機器を合理的な範囲のものに削減することによって、効率的な隔離作業計画の実施と隔離実施段階における系統管理担当者の負担軽減を図り、ヒューマンエラーの発生確率を低減させる。
【解決手段】系統毎に多数の点検対象機器を有して構成されている原子力プラントにおいて、上記各系統内の多数の点検対象機器各々の点検を行うに際して採用される系統隔離システムであって、上記各系統内における複数の点検対象機器を包含する点検範囲を一括隔離区分として設定するとともに、上記点検範囲の上流側および下流側を仕切る所定の境界弁を、当該一括隔離区分を包括する一括隔離弁として、一括隔離を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、原子力プラントの定期点検作業等における系統の隔離計画、隔離の実施・復旧管理等の効率化に有用な原子力プラントの系統隔離システムの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に原子力プラントの定期点検等では、各種の配管・計装系統上に存在する多数の点検対象機器を所定の点検計画に基づいて順次点検するが、該点検作業に先立って点検対象機器を系続から隔離し、その上で配管内の水抜きを行うなどの安全対策が必要である。
【0003】
従来、この点検対象機器の系統からの隔離作業計画においては、一般に紙製の系統図(配管・計装線図)を用い、同系統図上に点検対象機器を書き込むことによって隔離操作を行う機器を決定し、それに対応して必要な隔離操作手順などを作業票(隔離操作票)に転記することによって実施している。
【0004】
今、このような従来の系統隔離方法の一例について、配管PIP−1〜PIP−10上に、点検対象機器として、液体貯留用タンク(T−1)、液体供給用ポンプ(P−1)、計装機器(I−1)、制御弁V−7、液体熱交換器(E−1)、その他の付属機器として、電動弁V−1、V−4、開閉弁V−2、V−3、V−5、V−6、V−8〜V−12、逆止弁V−20、V−21、ドレン弁V−13、V−15、V−16、V−22、ベント弁V−14、V−17、バイパス弁V−18、V−19等を備えた図9の系統図を参照して詳細に説明する。
【0005】
図9の系統図において、液体貯留用タンク(T−1)、液体供給用ポンプ(P−1)、制御弁(V−7)、計装機器(I−1)等の点検を行う場合、各々の点検機器(T−1)、(P−1)、(V−7)、(I−1)に対する隔離および配管の水抜き操作手順などを記載した作業票を作成する。
【0006】
例えば、ポンプ(P−1)の点検には、
・機器の隔離として入口弁V−5/出口弁V−6の閉止
・配管PIP−7の水抜きとして、ドレン弁V−16/ベント弁V−17の開操作
・ポンプ(P−1)の電源および操作スイッチの操作禁止措置
・・・・などがある。
【0007】
また、タンクT−1および計装機器I−1の点検には、
・機器の隔離として入口弁V−1、V−3/出口弁V−4の閉止
・タンクT−1の水抜きとして、ドレン弁V−15の開操作
・計装機器I−1の電源および操作スイッチの操作禁止措置
・・・などがある。
【0008】
さらに、制御弁V−7の点検には、
・機器の隔離として、入口弁V−6/出口弁V−8、V−9の閉止
・配管PIP−(後段部)の水抜きとして、バイパス弁V−18、ドレン弁V−22の開操作
・・・・などがある。
【0009】
図10は、上記図9のような系統における点検対象機器の点検工程の一例である。
【0010】
この図10の点検工程の場合、ポンプ(P−1)の点検と制御弁(V−7)の点検はn+7〜u日間の間隔が空くため、この期間における両方の点検に共通の隔離弁(V−6)の状態に注意しなければならない。
【0011】
すなわち、隔離弁(V−6)は通常運転状態では開であるため、ポンプ(P−1)の点検終了後に隔離弁(V−6)が復旧(開)されていれば、手動弁(V−7)点検時に再度隔離(閉)し、復旧時に開にすれば良い。
【0012】
しかし、ポンプ(P−1)の点検終了後に隔離を復旧せず、隔離弁(V−6/V−5)を閉状態のまま制御弁(V−7)の点検に引き継げば、制御弁(V−7)の点検終了後は、隔離弁(V−8/V−9/V−6)とポンプ(P−1)の隔離弁(V−5)についての復旧操作が必要となる。したがって、点検作業前に行う隔離操作機器と点検作業終了後に行う復旧操作機器が異なることになり、系統管理が複雑になる。
【0013】
ところで、上記のような定期点検において点検が必要な点検対象機器は、実際には1,000台規模に及び、上記隔離作業計画には多くの時間と労力を要する。
【0014】
したがって、最近では種々のシステム化が進められており、例えば個々の点検対象機器に対する隔離機器を予め抽出し、データべース化する技術(特許文献1)や、上述した紙製の系統図に変えてCADデータによる系統図を採用し、同系統図のCADデータ上において、上記点検対象機器の周辺機器を自動的に隔離機器として抽出する技術(特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第3164757号公報
【特許文献2】特開2001−344011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、上記図9のような点検対象機器毎に個別に系統を隔離する方法では、仮にデータベース化したとしても、全体として隔離すべき機器の数が膨大になり、隔離機器の重複や干渉(点検対象機器が他の点検対象機器の隔離機器になる等)を考慮した複雑な隔離作業計画が必要となり、このために多くの労力と時間がかかる問題がある。
【0017】
また、上記点検機器毎に隔離を行う方法では、系統内に配管の水抜きができていない箇所が残ることになり、点検作業毎の水抜き状態の確認などにより作業が複雑化する。
【0018】
さらに、隔離実施段階においても、点検工程に即した隔離・復旧操作が頻繁になり、系統状態を管理する系統管理担当者の負担が多くなり、誤操作などのヒューマンエラーが発生する確率も高くなる。
【0019】
本願発明は、このような従来技術の問題に鑑み、管理の必要な隔離機器の数を一括隔離により合理的に削減することによって、より効率的な隔離作業計画の実施と隔離実施・復旧段階における系統管理担当者の負担軽減を図り、可及的にヒューマンエラーの発生確率を低減させるようにした原子力プラントの系統隔離システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願発明は、上述の問題を解決するために、次のような有効な課題解決手段を備えて構成されている。
【0021】
(1) 請求項1の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、系統毎に多数の点検対象機器を有して構成されている原子力プラントにおいて、上記各系統内の多数の点検対象機器各々の点検を行うに際して採用される系統隔離システムであって、上記各系統内における複数の点検対象機器を包含する点検範囲を一括隔離区分として設定するとともに、上記点検範囲の上流側および下流側を仕切る所定の境界弁を、当該一括隔離区分を包括する一括隔離弁として、一括隔離を行うようにしたことを特徴としている。
【0022】
このような構成によると、定期点検の必要な原子力プラントの系統内における複数の点検対象機器を包含する範囲を所定の一括隔離区分として定義し、その範囲を区切る所定の境界弁を一群の点検機器を包括する一括隔離弁として系統を隔離し、1回の水抜き作業を行うだけで、上記複数の点検対象機器の全ての点検を行うことができるので、従来のように点検対象機器毎に系統を隔離する隔離システムに比べて、隔離操作ならびに管理対象の隔離機器を大きく削減することが可能となる。
【0023】
(2) 請求項2の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項1の発明の課題解決手段の構成において、各系統毎の点検対象機器および隔離機器を示す系統図としてCADデータを用い、同CADデータ上で一括隔離弁を設定し、該一括隔離弁による一括隔離区分内の配管・機器 を色塗り設定することによって、一群の点検対象機器に対する隔離操作機器を自動的に抽出するようにしたことを特徴としている。
このような構成によると、点検対象機器を配置した系統図のCADデータ上で一括隔離弁を設定し、同一括隔離弁で囲まれた隔離範囲内の配管または機器を起点として、当該一括隔離弁までの系統の色塗りを拡張するだけで、一括隔離範囲内にある各点検対象機器を一括隔離範囲と対応付ける作業を容易に機械化することができる。
【0024】
また、このような隔離範囲の色塗り(色分け)機能があると、もしも上記系統図CADデータ上の予期しない系統範囲に色塗りが拡張された場合、使用者は上述した一括隔離弁の設定が不適切であることに気付くため、一括隔離弁の設定ミスのチェック機能も実現されることになる。
【0025】
(3) 請求項3の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項1又は2の発明の課題解決手段の構成において、系統図であるCADデータ上に、隔離・復旧操作に対応した当該系統の状態を弁の開閉操作状態を示すシンボルと、該弁開閉操作の根拠となる隔離操作票の内容を検索できるシンボルとを表示することによって、隔離・復旧操作に対応した当該系統の状態を把握するようにしたことを特徴としている。
【0026】
このような構成によると、系統図のCADデータ上に隔離・復旧操作に対応した系統の状態を弁の開閉操作状態を示すシンボルと、隔離・復旧操作のための弁開閉操作の根拠となる隔離操作票の内容を検索することができるシンボルとを表示するだけで、隔離・復旧操作に対応した当該系統の状態を容易に把握することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本願発明の実施の形態に係る原子力プラントの一括隔離システムにおける一括隔離方法を示す図である。
【図2】同図1の一括隔離方法によって一括隔離を行った場合の点検工程の一例を示す図である。
【図3】同図1の一括隔離に際して、一括隔離範囲内における点検対象機器(配管その他の機器)を色塗りすることによって識別可能とした図である。
【図4】同図1の一括隔離方法を実施するに際して、一括隔離範囲内における点検対象機器(配管その他の機器)の繋がり情報の抽出方法を示す図である。
【図5】同図1の一括隔離方法を実施するに際しての一括隔離範囲の設定方法を示す図である。
【図6】同図1の一括隔離方法を実施するに際しての一括隔離操作票の作成方法を示す図である。
【図7】同図1の一括隔離方法を実施するに際しての一括隔離範囲内におけるピンボード表示方法を示す図である。
【図8】同図1の一括隔離方法における隔離実施・復旧パターンを示す図である。
【図9】従来の原子力プラントの隔離システムにおける隔離方法を示す図である。
【図10】同図9の隔離方法によって隔離を行った場合の点検工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本願発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
先ず図1〜図8は、本願発明の実施の形態に係る原子力プラントにおける系統隔離システムの構成を示している。
【0030】
この実施の形態における系統隔離システムは、その基本構成として、系統毎に多数の点検対象機器を有して構成されている原子力プラントにおいて、上記各系統内の多数の点検対象機器各々の点検を行うに際して採用される系統隔離システムであって、CAD機能を備えたコンピュータシステム上において、上記各系統内における所定の数の点検対象機器を包含する点検範囲を一括隔離区分エリアとして設定するとともに、同エリアと他のエリアを仕切る所定の境界弁を当該点検範囲を包括的に隔離する一括隔離弁として隔離し、点検するようにしたことを特徴としている。
【0031】
すなわち、この実施の形態における一括隔離とは、当該原子力プラントの所定の系統内における複数の点検対象機器を包含する所定の広さの包括的な点検範囲を、同範囲を仕切る所定の境界弁により一括して隔離することをいう。そして、同一括隔離範囲内については、1回の隔離操作によって同範囲内の全ての配管の水抜き、各種点検対象機器の駆動装置の電源、操作スイッチ等の隔離(操作禁止)を行う。
【0032】
今図1は、該一括隔離システムによる一括隔離の一例として、前述した従来例(図9)と同様の系統において、点検対象の機器である液体貯留用のタンク(T−1)、液体供給用のポンプ(P−1)、必要な計装機器(I−1)および制御弁(V-7)その他を包含する一括隔離区分A、ならびに同じく点検対象の機器である液体用の熱交換器(E−1)その他を包含する一括隔離区分Bの2つの区分エリアを示している。
【0033】
なお、以下の説明では、電動弁V−1、V−4も、単に開閉弁として説明する。
【0034】
この場合において、先ず一括隔離区分Aに着目すると、上流側開閉弁(V−1/V−2/V−3)と下流側の開閉弁(V−8/V−9)の各々で囲んだ複数の点検対象機器T−1、、I−1、P−1、V−7を有する所定の系統範囲(上述した従来の3つの隔離範囲)をまとめて隔離し、1回の作業で水抜きを可能とすることによって、基本的な点検作業条件を有効に確保できるようにしている。
【0035】
水抜きは、同系統の液体貯留用タンク(T−1)、液体供給ポンプ(P−1)、手動弁V−7、配管PIP−6、PIP−7の各々に設けられている各開閉弁(ドレン弁V−15)、(ドレン弁V−16)、(ドレン弁V−13)、(ドレン弁V−22)、(ベント弁V−14)、(ベント弁V−17)、(バイパス弁V−18)を開放することによって行う。
【0036】
ここで、上記一括隔離区分A,Bの各々を機器の干渉などを起こすことなく効果的に仕切る各区分A,Bの境界に位置する各開閉弁(V−1/V−2/V−3/V−8/V−9)のそれぞれを一括隔離弁と称する。
【0037】
次いで、機器の点検の都度、上記点検対象機器(T−1)、(I−1)、(P−1)、(V−7)毎に必要な固有の最少限の隔離操作(電源OFFその他の構造)を行った後、同点検対象機器の点検を実施する。
【0038】
一括隔離区分Bについても、これと同様にして隔離し、点検作業を行う。
【0039】
このように、この実施の形態における基本的な点検作業条件の確保(安全上の措置)は、複数の点検対象機器(T−1)、(I−1)、(P−1)、(V−7)を含む広い点検範囲(図9の3区分を含む1つの範囲)を一括隔離することで完了するため、機器の点検に伴う隔離および隔離範囲の設定は、その点検担当部所に任せることができ、系統管理者の管理すべき隔離機器の数は、先に述べた従来の技術の場合に比べて、格段に減少する。
【0040】
また、以上のように、系統の状態を複数の点検対象機器を包括する一括隔離区分単位A,Bで管理することにより、閉じるべき隔離弁の数を最少化することができ、隔離操作に係わる作業時間を大幅に短縮することができる。
【0041】
さらに、それらによって系統管理者の負担も低減することができ、可及的にヒューマンエラーの発生も抑制することができる。
【0042】
次に図2は、上述のようにして一括隔離を行った場合の対応する点検対象機器(T−1)、(I−1)、(P−1)、(V−7)、(E−1)の点検工程の例である。
【0043】
上述した一括隔離区分Aの場合、点検範囲内の全ての点検対象機器(T−1)、(I−1)、(P−1)、(V−7)の点検が可能な期間を一括隔離期間Aとし、また一括隔離区分Bの範囲内の全ての点検機器(E−1)の点検が可能な期間を一括隔離期間Bとして、それぞれ隔離工程を定める。
【0044】
そして、同一括隔離では、一括隔離区分A,B内の配管PIP−2,PIP−3,PIP−6,PIP−7,PIP−8の水抜き等の措置をまとめて1回で実施することができるため、従来のような点検機器毎のそれらの措置が不要になり、前述した従来技術の場合に比べて、全体として点検工程の短縮が可能となる(図10の場合と対比)。
【0045】
また、当該原子力プラントのプラント全域にわたって、予め標準的な一括隔離区分を定めることによって、一括隔離工程そのものをも標準化することができる。そして、同標準化によって、系統管理者の負担が大きく低減され、さらにヒューマンエラーの発生も抑制できるようになる。
【0046】
ところで、上記のような一括隔離区分A,Bの範囲を計画するにあたっては、例えば従来のものと同様の印刷された紙製の系統図上に点検対象機器並びに過去の実績などによって想定した一括隔離弁の印しを付け、さらに図3に示すような一括隔離区分A,B各範囲内の各配管PIP−2,PIP−3,PIP−6,PIP−7,PIP−8,PIP−10をマーカーなどによって色塗り(色分け)した一括隔離区分図(例えば一括隔離区分A内の配管PIP−2,PIP−3,PIP−6,PIP−7,PIP−8の色をマゼンタ色、一括隔離区分B内の配管PIP−10の色を緑色としたもの)を作成し、これに基いて一括隔離を計画することが考えられる。
【0047】
そして、この作業はプラント全域にわたって行われるが、この場合、上記対象とする系統図は200枚余りとなるため、きわめて多くの労力を要することになる。
【0048】
さらに、この図3の一括隔離区分図を参照しながら一括隔離区分A,Bの隔離操作を行うために必要な隔離機器(開閉弁、操作スイッチ、電源など)の隔離操作、ならびに配管の水抜きに必要な各種の弁(ベント弁V−14、V−17、ドレン弁V−13、V−15、V−16、V−22、バイパス弁V−18、V−19)の操作を一括隔離区分A,Bごとに作業票(一括隔離操作票)に抽出・記載する必要がある。
【0049】
そこで、このような負担を軽減する方法として、例えば市販のCADシステムを改良し、例えば図4に示すように、同CADシステムによって作成した系統図のCADデータD1から機器・配管の繋がり情報を抽出することによって、図4中のD2に示すような[図面番号FIG−6・・・、接続元機器番号PIP−1・・・、接続先機器番号V−1・・・]の組み合わせからなる繋がりデータD2を作成し、機器・配管の繋がり情報記録用のデータベースDB1に登録する。
【0050】
ここで、上記改良とは、市販CADシステムのAPI(アプリケーション・プログラム・インターフェイス)を使用して、市販CADシステムを外部のプログラムから制御することをいう。
【0051】
次に、上記のデータベースDB−1への登録を完了した系統図のCADデータD1′上に、図5のように一括隔離弁V−1、V−2、V−8、V−9を設定する(V−8、V−9の図示は省略)。
【0052】
次に、該一括隔離弁V−1、V−2、V−8、V−9を設定したCADデータD1′図上において、さらに図5に示すように、当該一括隔離区分に設定する色(マゼンタ)を指定した後、上記設定された一括隔離弁V−1、V−2、V−8、V−9で囲まれた系統の任意の配管PIP−2,PIP−3,PIP−6,PIP−7,PIP−8または機器をマウスで指定する。すると、その「隔離範囲色塗り機能」により、上記機器・配管繋がりデータベースD1から検索した機器・配管の繋がりデータD2に基づき、上記一括隔離区分A内の配管PIP−2,PIP−3,PIP−6,PIP−7,PIP−8を順次上述のように色塗り(色分け)することができる。
【0053】
この配管の色塗り(色分け)は、配管PIP−2,PIP−3,PIP−6,PIP−7,PIP−8が上記設定された一括隔離弁V−1、V−2、V−8、V−9に到達するまで自動的に継続される。
【0054】
このような隔離範囲の色塗り(色分け)機能により、もしも上記系統図CADデータD1′上の予期しない系統範囲に色塗りが拡張された場合、使用者は上述した一括隔離弁の設定が不適切であることに気付くため、一括隔離弁の設定ミスのチェック機能が実現される。
【0055】
その後、図示「隔離区分機器抽出機能」により、上記系統図CADデータD1′上に色塗りされた一括隔離区分Aの範囲内にある機器・配管を抽出し、[図面番号(FIG6・・・)、識別色(マゼンタ)、機器番号(V−1・・・)]からなる隔離区分設定データD3を作成し、隔離区分設定データベースDB2に登録する。
【0056】
また同じく図示「隔離区分機器抽出機能」により、上記系結図CADデータD1′上に設定された一括隔離弁(V−1、V−3・・・)を抽出し、[図面番号(FIG−6・・・)、機器番号(V−1、V−3・・・)]からなる一括隔離弁データD4を作成し、一括隔離弁データべースDB3に登録する。
【0057】
次に上記のようにして系統図CADデータD1′上に作成した図6のような一括隔離区分図から、マウスによって指定した図示のような一括隔離区分の隔離操作票データS1〜S3をそれぞれ抽出し、それらの各々に基いて「一括隔離操作票」を自動的に作成する。
【0058】
すなわち、該一括隔離票の作成にあたっては、図6に示すように、先ず上記図5の「一括隔離範囲設定機能」で作成した一括隔離弁データベースDB3から該当する一括隔離区分内の一括隔離弁の番号(V−n)を抽出し、機器情報データベースDB4から検索した機器番号(V−1・・・)、操作内容(閉・・・)、関連機器情報(V−1−E・・・)その他の情報(V−1−CS・・・)・・・D5と共に一括隔離操作票データS1として出力する。
【0059】
また上記図5の「一括隔離範囲設定機能」で作成した隔離区分設定データベースDB2から該当する一括隔離区分の識別色が設定されたベント弁、ドレン弁を抽出し、機器情報データベースDB4から検索した操作内容D5などと共に一括隔離操作票データS2として出力する。
【0060】
さらに図5の「一括隔離範囲設定機能」で作成した隔離区分設定データベースDB2から該当する一括隔離区分の識別色が設定された点検対象機器を抽出し、機器情報データベースDB4から検索した関連機器情報D5などを一括隔離操作票データS3として出力する。
【0061】
なお、機器情報データベースDB4は、上記[機器番号、操作内容、関連機器情報、その他情報]からなる機器情報データD5によって予め作成する。
【0062】
さらに、上記系統の隔離実施状況を管理するにあたっては、これまで操作手順書に基づく操作実績を帳票や計算機に入力して、復旧操作等の漏れがないように管理すると共に、系統の状態を把握するために、多くの系統図を壁等に掲示し、隔離・復旧操作を実施する都度、同系統図上の隔離機器に隔離操作を実施した場合にはピン(待針)を刺し、復旧操作を実施した場合は同ピンを抜くなどの標識付与を行うか、または消去可能なように表面をコーティングした系統図中に水性マーカ等で当該操作実績を記入または消去することにより管理していた。
【0063】
しかし、このような人為的作業では効率が悪く、折角のシステムの利点を生かすことができない。
【0064】
そこで、これについても、上述の場合と同様に市販CADシステムを改良し、計算機に登録された隔離操作の実施・復旧データにより、例えば図7に示すように、上述した系統図CADデータD1′上の各機器のシンボルに対して、操作内容ならびに関係する隔離操作票の件数を示す標識(1,2・・・の数字)を設定した待針形状のピンボード表示を行うようにする。
【0065】
すなわち、このピンボード表示における標識は、例えば図7のように隔離弁の操作内容(開/閉状態)を示すシンボルである開,閉の文字、各配管のドレン口に対する水抜きホースHの取付けを示すシンボルであるアルファベットHおよび隔離操作を行った隔離操作票の件数(図7中の数字1〜2参照)を表すシンボルである丸囲み数字1,2で構成する。
【0066】
また、例えば図8のように、隔離実施中において、上記ピン(待針)のシンボルが設定されている機器を計算機のマウスで指定し、当該機器ならびに当該機器の関連機器に対する隔離操作内容、操作者、復旧予定日などを検索表示するようにする(画面図D6参照)。
【0067】
このような構成を採用すると、上述した系統隔離システムの利便性が一層向上する。
【符号の説明】
【0068】
PIP−1〜PIP−10は配管、T−1は液体貯留用タンク、P−1は液体供給用ポンプ、I−1は計装機器、E−1は液体用熱交換器、A,Bは一括隔離区分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統毎に多数の点検対象機器を有して構成されている原子力プラントにおいて、上記各系統内の多数の点検対象機器各々の点検を行うに際して採用される系統隔離システムであって、上記各系統内における複数の点検対象機器を包含する点検範囲を一括隔離区分として設定するとともに、上記点検範囲の上流側および下流側を仕切る所定の境界弁を、当該一括隔離区分を包括する一括隔離弁として、一括隔離を行うようにしたことを特徴とする原子力プラントの系統隔離システム。
【請求項2】
各系統毎の点検対象機器および隔離機器を示す系統図としてCADデータを用い、同CADデータ上で一括隔離弁を設定し、該一括隔離弁による一括隔離区分内の配管・機器を色塗り設定することによって、一群の点検対象機器に対する隔離操作機器を自動的に抽出するようにしたことを特徴とする請求項1記載の原子力プラントの系統隔離システム
【請求項3】
各系統毎の点検対象機器を示す系統図としてCADデータを用い、同CADデータ上に、弁の開閉操作状態を示すシンボルと、該弁開閉操作の根拠となる隔離操作票の内容を検索することができるシンボルとを表示することによって、隔離・復旧操作に対応した当該系統の状態を把握するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の原子力プラントの系統隔離システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−257201(P2011−257201A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130578(P2010−130578)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【出願人】(000180438)四電エンジニアリング株式会社 (14)
【Fターム(参考)】