説明

原子力プラント水処理装置およびその水処理方法

【課題】 復水浄化系配管または原子炉浄化系配管にTOCを含む水を晒さずに、イオン交換樹脂からTOCを溶出させ除去する。
【解決手段】 原子力プラント水処理装置1は、原子力プラント100の復水浄化系配管41または原子炉浄化系配管42から循環水21を導入してイオン交換を行い、復水浄化系配管41または原子炉浄化系配管42に導出するイオン交換樹脂2と、有機物除去槽3と、イオン交換樹脂2から水を導入し有機物除去槽3に導出する有機物除去槽入口配管6と、有機物除去槽3から水を導入しイオン交換樹脂2に導出する有機物除去槽出口配管7とを備え、イオン交換樹脂2、有機物除去槽入口配管6、有機物除去槽3、有機物除去槽出口配管7を流通する閉ループを形成し、この閉ループ内で浄化水22を循環させ、イオン交換樹脂2から浄化水21に溶出する全有機炭素を有機物除去槽3によって除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換樹脂から溶出する全有機炭素を除去する原子力プラント水処理装置およびその水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの炉内構造物や配管は、主にステンレス鋼やニッケル基合金等の金属材料が適用される。これら金属材料はプラント運転時や起動、停止時における様々な環境下において応力腐食割れが発生する可能性がある。さらに、この応力腐食割れは水質に大きく影響を受け、特にイオン性不純物がその感受性を高めることが知られている。
【0003】
そこで、原子力プラントの復水器内には復水浄化系配管が接続され、この復水浄化系配管にカチオン樹脂を内部に充填したイオン交換樹脂を設け、塩素イオンや硫酸イオンを除去している。しかし、特に原子力プラントの起動時において、イオン交換樹脂から全有機炭素(Total Organic Carbon 以下、TOCと称す。)が溶出して炉内に流入し、炉内の熱や放射線分解によって上述したイオン性不純物が発生する可能性がある。
【0004】
そこで、イオン交換樹脂から溶出したTOCを除去するために以下の技術が開発されている。イオン交換樹脂を充填した脱塩塔内の保有水を循環させる循環ラインを形成し、この循環ラインに有機物分解装置を設け、保有水に溶出したTOCを除去する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、イオン交換樹脂で処理された補給水中に含まれるTOCを除去するために、補給水を収容する貯水槽に有機物分解装置を有するTOC除去の循環系を接続する技術が開発されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−4784号公報
【特許文献2】特開2003−117548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の技術は、TOC除去のための循環ラインが脱塩塔の出口から復水浄化系配管の一部を通って脱塩塔の入口に戻るように形成されているため、復水浄化系配管がTOCの溶出した保有水に晒され、侵食されるおそれがある。また上述した特許文献2に記載の技術は、プラント運転に用いる補給水に溶出したTOCを分解除去しているため、有機物分解装置における処理液量が増大し、さらに貯水槽内のTOCが除去していない補給水が復水浄化系配管に流入するおそれがある。
【0008】
そこで本発明では、プラント停止時において復水浄化系配管または原子炉浄化系配管にTOCの溶出した水を晒さずに、イオン交換樹脂からTOCを溶出させ除去することができる原子力プラント水処理装置およびその水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の原子力プラント水処理装置は、復水浄化系配管または原子炉浄化系配管によって原子力プラント内の循環水を内部に導入してイオン交換を行い、復水浄化系配管または原子炉浄化系配管によって循環水を前記原子力プラントに再び導出するイオン交換樹脂と、内部に導入した水に含まれる有機物を除去する有機物除去槽と、イオン交換樹脂から水を導入し、有機物除去槽に導出する有機物除去槽入口配管と、有機物除去槽から水を導入し、イオン交換樹脂に導出する有機物除去槽出口配管とを備え、イオン交換樹脂から有機物除去槽入口配管を通り、有機物除去槽を経て、有機物除去槽出口配管からイオン交換樹脂に戻る閉ループを形成し、この閉ループ内で浄化水を循環させてイオン交換樹脂から浄化水に全有機炭素を溶出させ、この全有機炭素を有機物除去槽によって除去することを特徴とする。
【0010】
さらに上記目的を達成するために、本発明の原子力プラントの水処理方法は、復水浄化系配管または原子炉浄化系配管に流通する循環水をイオン交換樹脂に導入し、循環水に含まれるイオンを除去する工程と、イオン交換樹脂から有機物除去槽に水を導入し、この有機物除去槽からイオン交換樹脂へ水を導出する閉ループを形成する工程と、閉ループで浄化水を循環させてイオン交換樹脂から浄化水に溶出した全有機炭素を有機物除去槽において除去する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プラント停止時において、復水浄化系配管または原子炉浄化系配管にTOCを含む水を晒さずに、イオン交換樹脂からTOCを溶出させ除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る原子力プラント水処理装置のプラント通常運転時の作用を示す概略縦断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る原子力プラント水処理装置が設けられる原子力プラントを示す概略系統図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る原子力プラント水処理装置のプラント停止時の作用を示す概略縦断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る原子力プラント水処理装置のプラント停止時の作用を示す概略縦断面図。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る原子力プラント水処理装置のプラント停止時の作用を示す概略縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
(構成)
以下、本発明の第1の実施形態に係る原子力プラント水処理装置について図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る原子力プラント水処理装置のプラント通常運転時の作用を示す概略縦断面図である。
【0015】
原子力プラント水処理装置1は、イオン交換樹脂2と、有機物除去槽3と、イオン交換樹脂入口配管4と、イオン交換樹脂出口配管5と、有機物除去槽入口配管6と、有機物除去槽出口配管7と、弁8a、8b、8c、8dと、加熱器11と、循環ポンプ12とから構成される。
【0016】
イオン交換樹脂2は、内部にポリスチレンスルホン酸を重合したカチオン樹脂が充填される。または、アミン基を重合したアニオン樹脂をカチオン樹脂と交互に積層したものを充填してもよい。さらにイオン交換樹脂2は、内部に水を導入する導入口2aと、外部へ水を導出する導出口2bとを有する。また有機物除去槽3は、内部に活性炭13が充填され、入口から内部に水を導入し、出口から外部へ水を導出する。
【0017】
イオン交換樹脂入口配管4の一端4aはイオン交換樹脂2の導入口2aに接続される。また、イオン交換樹脂出口配管5の一端5aはイオン交換樹脂2の導出口2bに接続される。さらに弁8a、8bがそれぞれイオン交換樹脂入口配管4の一端4a、イオン交換樹脂出口配管5の一端5aの近傍に設けられる。
【0018】
さらに、有機物除去槽入口配管6の一端6aはイオン交換樹脂2の導出口2bに接続され、有機物除去槽出口配管7の一端7aはイオン交換樹脂2の導入口2aに接続される。また、有機物除去槽入口配管6の他端6bは有機物除去槽3の入口に接続され、有機物除去槽出口配管7の他端7bは有機物除去槽3の出口に接続される。加熱器11および循環ポンプ12は、有機物除去槽入口配管6または有機物除去槽出口配管7のいずれかにおいて設けられる。
【0019】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る原子力プラント水処理装置が設けられる原子力プラントを示す概略系統図である。図2に示すように原子力プラント100は主な構成として、原子炉31と、再循環ポンプ32と、高圧タービン33と、湿分分離器34と、低圧タービン35と、復水器36と、低圧給水加熱器37と、高圧給水加熱器38とを有する。図2に示す再循環系配管40には、再循環ポンプ32が設けられ、原子炉31内の炉水を強制循環させる構成となっている。また、原子炉給水配管43には、低圧給水加熱器37ならびに高圧給水加熱器38から原子炉31内へ復水を給水する構成となっている。
【0020】
原子力プラント水処理装置1のうちイオン交換樹脂入口配管4およびイオン交換樹脂出口配管5は、原子炉浄化系配管41または復水浄化系配管42を構成する。イオン交換樹脂入口配管4およびイオン交換樹脂出口配管5が原子炉浄化系配管41を構成する場合は、イオン交換樹脂入口配管4の他端4bを再循環系配管40に接続し、イオン交換樹脂出口配管5の他端5bを原子炉給水配管43に接続する。このとき、原子力プラント水処理装置1は主に原子炉31の循環水21を浄化する原子炉浄化系として作用する。
【0021】
また、イオン交換樹脂入口配管4およびイオン交換樹脂出口配管5が復水浄化系配管42を構成する場合は、イオン交換樹脂入口配管4の他端4bを復水器36に接続し、イオン交換樹脂出口配管5の他端5bを低圧給水加熱器37に接続する。このとき、原子力プラント水処理装置1は主に復水器36内の水を浄化する復水浄化系として作用する。さらに、原子炉浄化系配管41および復水浄化系配管42には水の導入および導出を促すポンプを適宜設けることができる。
【0022】
(作用)
以下、本発明の第1の実施形態の作用について説明する。以下、原子力プラント水処理装置1のイオン交換樹脂入口配管4およびイオン交換樹脂出口配管5が原子炉浄化系配管41を構成する場合を代表して説明する。まず、プラント運転時の作用について説明し、プラント停止時の作用については後述する。
【0023】
プラント運転時において、図1に示すように弁8a、8bを開放し、弁8c、8dを閉鎖することによって、イオン交換樹脂入口配管4からイオン交換樹脂2を経てイオン交換樹脂出口配管5へ循環水21を流通させる流路を形成する。このとき、弁8c、8dは閉鎖されているため、循環水21が有機物除去槽入口配管6および有機物除去槽出口配管7内に導入されて循環水31の流れが阻害されることが抑制される。
【0024】
循環水21は、プラント運転中に原子力プラント100内を循環する水である。循環水21は、原子炉31内で加熱されて蒸気化し、高圧タービン33および低圧タービン35に仕事を与えた後、復水器36で再び復水として凝縮する。さらに循環水21は、低圧給水加熱器37および高圧給水加熱器38によって原子炉31に給水される。また循環水31は、再循環ポンプ32によって再循環系配管内を循環される。
【0025】
循環水21は、上述したように原子力プラント100内で循環するとともに、図1に示すように再循環系配管40からイオン交換樹脂入口配管4を経てイオン交換樹脂2内に導入される。イオン交換樹脂2内では、カチオン樹脂のイオン交換作用によって塩素イオンや硫酸イオン等のイオン分が除去される。イオン分を除去した後、循環水21はイオン交換樹脂出口配管5を経て原子炉給水配管43に導出される。
【0026】
次に、プラントの停止時の作用について説明する。図3は、本発明の第1の実施形態に係る原子力プラント水処理装置のプラント停止時の作用を示す概略縦断面図である。プラント停止時において、弁8a、8bを閉鎖し、弁8c、8dを開放することによって、イオン交換樹脂2から有機物除去槽入口配管6を通り、有機物除去槽3を経て、有機物除去槽出口配管7からイオン交換樹脂2に戻る閉ループを形成し、この閉ループにおいて浄化水22を循環させる。このとき循環水21は、弁8a、8bが閉鎖されているためイオン交換樹脂2および有機物除去槽3内には流入しない。ここで浄化水22は、循環水21を閉ループに導入することによって浄化水22として利用してもよいし、外部の水供給手段から閉ループに設けた水導入弁(図示せず。)を介して浄化水22を供給してもよい。
【0027】
この状態で循環ポンプ12を起動し、イオン交換樹脂2内の浄化水22を循環させる。循環ポンプ12は、あらかじめ求められたイオン交換樹脂2からのTOCの流出、ならびに有機物除去槽3におけるTOCの吸着に適した流量で浄化水22を循環させる。さらに加熱器11によってイオン交換樹脂内の浄化水22を加熱する。水温は最もTOCが流出しやすい40℃〜50℃に加熱することが望ましい。このとき、カチオン樹脂から24時間当り1〜5mg/Lの速度で有機物が溶出することを確認している。
【0028】
イオン交換樹脂2内でTOCが溶出した浄化水22は有機物除去槽入口配管6を通って、有機物除去槽3内に導入される。有機物除去槽3内部では、浄化水22中のTOCが活性炭13に吸着される。有機物除去槽3でTOCが除去された浄化水22は、有機物除去槽出口配管7を経て再びイオン交換樹脂2へ導出される。そして浄化水22は、再びイオン交換樹脂2で浄化水22にTOCを溶出させて、有機物除去槽3へ導入する。この循環を複数繰り返すことによって浄化水22のTOC濃度は低下し、イオン交換樹脂2内のTOC量は減少する。
【0029】
プラント停止時に浄化水22の循環を行った後、弁8a、8bを開放し、弁8c、8dを閉鎖してプラントを起動する。プラント停止時における浄化水22の循環によってイオン交換樹脂2からはTOCが十分に溶出しているため、プラント運転中にイオン交換樹脂2中のTOCが循環水21に溶出し、原子炉31等に流入することが抑制される。
【0030】
また、プラント停止時において上述したTOC除去専用の閉ループ内でのみ浄化水22を循環させるため、原子炉浄化系配管41を構成するイオン交換樹脂入口配管4やイオン交換樹脂出口配管5にTOCを含む浄化水22は流入しない。結果、イオン交換樹脂入口配管4やイオン交換樹脂出口配管5をはじめとする配管中の循環水21のTOC濃度を上昇させることなくプラントが起動され、炉内構造物や原子炉一次系配管の応力腐食割れを抑制することができる。
【0031】
そして、TOCが溶出した浄化水22が流通する配管は閉ループを形成する有機物除去槽入口配管6および有機物除去槽出口配管7のみであり、復水浄化系配管41または原子炉浄化系配管42はTOCを含む浄化水22に晒されない。結果、TOCを含む浄化水22によって侵食されうる配管が限定され、配管の交換や点検が容易となる。さらに、閉ループ内で浄化水22を繰り返し循環させることで、TOCの除去処理に用いる浄化水22の処理液量を最小にすることができる。
【0032】
(効果)
本発明の第1の実施形態によれば、有機物除去槽入口配管6、イオン交換樹脂2、有機物除去槽出口配管7、有機物除去槽3を循環する閉ループを形成し、閉ループ内で浄化水22を循環させて有機物除去槽3で活性炭13によってTOCの吸着除去を行うことによって、TOCを含む浄化水22を復水浄化系配管41または原子炉浄化系配管42に晒さずに、イオン交換樹脂2内のTOCを除去することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
(構成)
以下、本発明の第2の実施形態に係る原子力プラント水処理装置について図4を参照して説明する。第1の実施形態に係る原子力プラント水処理装置の各部と同一部分には同一符号を付し、同一の構成についての説明は省略する。
【0034】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る原子力プラント水処理装置のプラント停止時の作用を示す概略縦断面図である。第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、活性炭13に代えて紫外線発生装置14によって浄化水22中のTOCを除去する点である。
【0035】
紫外線発生装置14は、有機物除去槽3内部に紫外線を照射することができるように、紫外線発生装置14は有機物除去槽3に設けられる。さらに、有機物除去槽3内面に光触媒15を設ける。光触媒15には、例えば酸化チタン(TiO)を適用することができる。
【0036】
(作用)
以下、本発明の第2の実施形態の作用について説明する。プラント運転時の作用については第1の実施形態と同様であるため省略し、プラント停止時の作用について説明する。
【0037】
プラント停止時において、弁8a、8bを閉鎖し、弁8c、8dを開放して、上述した閉ループにおいて浄化水22を循環させる。循環ポンプ12および加熱器11は上述した流量ならびに温度で運転される。
【0038】
紫外線発生装置14は、紫外線を有機物除去槽3の内部に照射する。有機物除去槽3内において浄化水22中のTOCは、自身の結合エネルギーを越えて紫外線エネルギーの照射を受けると、二酸化炭素(CO)、水(HO)、硫酸イオン(SO2−)、塩素イオン(Cl)等に直接分解される。
【0039】
さらに光触媒15に紫外線が照射されると、周囲の浄化水22からヒドロキシラジカル(・OH)とスーパーオキサイドラジカル(O)が活性ラジカルとして生成される。この活性ラジカルは、TOCを二酸化炭素(CO)、水(HO)、硫酸イオン(SO2−)等に分解する。例として、ヒドロキシラジカルがアセトンを分解する反応を式(1)に示す。
【0040】
CHCOCH+16OH→3CO+11H0・・・(1)
さらに、有機物除去槽3内で分解された二酸化炭素(CO)を系外へ排出するために、排出弁を有機物除去槽3に設ける構成としてもよい。また、TOCを分解して発生したイオン分を除去するために、硫酸イオンや塩素イオンのイオン交換樹脂を有機物除去槽3の後段に設ける構成としてもよい。
【0041】
(効果)
本発明の第2の実施形態によれば、有機物除去槽入口配管6、イオン交換樹脂2、有機物除去槽出口配管7、有機物除去槽3を循環する閉ループを形成し、閉ループ内で浄化水22を循環させ、有機物除去槽3内部への紫外線発生装置14の紫外線照射によってTOCの分解を行うことによって、TOCを含む浄化水22を復水浄化系配管41または原子炉浄化系配管42に晒さずに、イオン交換樹脂2内のTOCを除去することができる。さらに紫外線発生装置14によってTOCを分解除去しているため、吸着による除去と異なりフィルターの詰まり等を起こさず、交換やメンテナンスのコストを削減することができる。
【0042】
(第3の実施形態)
(構成)
以下、本発明の第3の実施形態に係る原子力プラント水処理装置について図5を参照して説明する。第1の実施形態に係る原子力プラント水処理装置の各部と同一部分には同一符号を付し、同一の構成についての説明は省略する。
【0043】
図5は、本発明の第3の実施形態に係る原子力プラント水処理装置のプラント停止時の作用を示す概略縦断面図である。第3の実施形態が第2の実施形態と異なる点は、酸化剤容器16および酸化剤注入装置18をさらに設けた点である。
【0044】
酸化剤容器16は内部に酸化剤17を収容する容器である。酸化剤17として、例えばオゾン(0)または過酸化水素(H)を適用することができる。酸化剤注入装置18によって酸化剤容器16内の酸化剤17を有機物除去槽3内に注入することができるように、酸化剤容器16および酸化剤注入装置18は有機物除去槽3に接続される。
【0045】
(作用)
以下、本発明の第3の実施形態の作用について説明する。プラント運転時の作用は第1の実施形態と同様であり、プラント停止時の14による紫外線照射の作用については第2の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0046】
プラント停止時において、酸化剤注入装置18によって酸化剤容器16内の酸化剤17を有機物除去槽3内に注入する。酸化剤17として過酸化水素を適用した場合について説明する。過酸化水素は紫外線の照射を受けると、下記式(2)のようにヒドロキシラジカル(・OH)に分解される。
【0047】
→2・OH・・・(2)
このヒドロキシラジカルは、酸化反応によって浄化水22中のTOCを二酸化炭素(CO)、水(HO)、硫酸イオン(SO2−)等に分解する。
【0048】
(効果)
本発明の第3の実施形態によれば、有機物除去槽入口配管6、イオン交換樹脂2、有機物除去槽出口配管7、有機物除去槽3を循環する閉ループを形成し、閉ループ内で浄化水22を循環させて有機物除去槽3に酸化剤注入装置18によって酸化剤容器16内の酸化剤17を注入することによりTOCを分解することによって、TOCを含む浄化水22を復水浄化系配管41または原子炉浄化系配管42に晒さずに、イオン交換樹脂2内のTOCを除去することができる。
【0049】
なお、本発明の実施形態は上述した実施形態に限られないことは言うまでもない。例えば、浄化水22の循環によるTOCの除去はプラント停止時に毎時行う必要はなく、イオン交換樹脂2の運転期間や容量によって適宜実施時期を決定することができる。
【0050】
さらに、弁8a、8b、8c、8dによって循環水21および浄化水22の2つの流路を切替えて形成するだけでなく、循環水21または浄化水22を切換可能に導入し、切換可能に排出する切換装置をイオン交換樹脂2の導入口2aおよび導出口2bに設けることによって2つの流路を形成してもよい。また、浄化水22中のTOC濃度が十分規定値を下回るときには、プラント起動時に弁8a、8bを開放して浄化水22を循環水21として用いることもできる。
【0051】
また、有機物除去槽入口配管6の一端6aを導出口2bに接続され、有機物除去槽出口配管7の一端7aを導入口2aに接続するだけでなく、有機物除去槽入口配管6の一端6aを導入口2aに接続し、有機物除去槽出口配管7の一端7aを導出口2bに接続することによって浄化水22の循環方向を逆にしてもよい。
【0052】
さらにイオン交換樹脂2に循環水21とは独立した浄化水22の導入口および導出口を設ける構成としてもよい。このとき、循環水21の導入口2aおよび導出口2bを閉鎖し、浄化水22の導入口および導出口を開放することによって上述した浄化水22の閉ループを形成することができる。
【0053】
また、復水浄化系配管42は、復水器36から循環水21を導入し、再び復水器36へ循環水21を導出するように接続しても良い。すなわち、原子炉浄化系配管41および復水浄化系配管42は原子力プラント100内の循環水21を導入し、再び原子力プラント100に導出する構成であれば上述した接続関係に限定されない。
【0054】
なお、上述した第1から第3の実施形態は適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・原子力プラント水処理装置
2・・・イオン交換樹脂
2a・・・導入口
2b・・・導出口
3・・・有機物除去槽
4・・・イオン交換樹脂入口配管
5・・・イオン交換樹脂出口配管
6・・・有機物除去槽入口配管
7・・・有機物除去槽出口配管
8a、8b、8c、8d・・・弁
11・・・加熱器
12・・・循環ポンプ
13・・・活性炭
14・・・紫外線発生装置
15・・・光触媒
16・・・酸化剤容器
17・・・酸化剤
18・・・酸化剤注入装置
21・・・循環水
22・・・浄化水
31・・・原子炉
32・・・再循環ポンプ
33・・・高圧タービン
34・・・湿分分離器
35・・・低圧タービン
36・・・復水器
37・・・低圧給水加熱器
38・・・高圧給水加熱器
40・・・再循環系配管
41・・・復水浄化系配管
42・・・原子炉浄化系配管
43・・・原子炉給水配管
100・・・原子力プラント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
復水浄化系配管または原子炉浄化系配管によって原子力プラント内の循環水を内部に導入してイオン交換を行い、前記復水浄化系配管または前記原子炉浄化系配管によって前記循環水を前記原子力プラントに再び導出するイオン交換樹脂と、
内部に導入した水に含まれる有機物を除去する有機物除去槽と、
前記イオン交換樹脂から水を導入し、前記有機物除去槽に導出することができる有機物除去槽入口配管と、
前記有機物除去槽から水を導入し、前記イオン交換樹脂に導出することができる有機物除去槽出口配管とを備え、
前記イオン交換樹脂から前記有機物除去槽入口配管を通り、前記有機物除去槽を経て、前記有機物除去槽出口配管から前記イオン交換樹脂に戻る閉ループを形成し、この閉ループ内で浄化水を循環させて前記イオン交換樹脂から前記浄化水に全有機炭素を溶出させ、この全有機炭素を前記有機物除去槽において除去することを特徴とする原子力プラント水処理装置。
【請求項2】
前記閉ループにおいて、前記浄化水を循環させる循環ポンプをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の原子力プラント水処理装置。
【請求項3】
前記閉ループにおいて、前記浄化水を加熱する加熱器をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の原子力プラント水処理装置。
【請求項4】
前記加熱器による前記浄化水の加熱温度は、40〜50℃であることを特徴とする請求項3に記載の原子力プラント水処理装置。
【請求項5】
前記有機物除去槽は、内部に充填した活性炭によって前記浄化水に溶出させた前記全有機炭素を吸着除去することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の原子力プラント水処理装置。
【請求項6】
前記有機物除去槽は、内部に設けられた紫外線照射装置によって前記浄化水に紫外線を照射することによって前記浄化水に溶出させた前記全有機炭素を分解除去することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の原子力プラント水処理装置。
【請求項7】
前記有機物除去槽の内面に光触媒をさらに設けたことを特徴とする請求項6に記載の原子力プラント水処理装置。
【請求項8】
前記有機物除去槽の内部に酸化剤を注入する酸化剤注入装置をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の原子力プラント水処理装置。
【請求項9】
復水浄化系配管または原子炉浄化系配管に流通する循環水をイオン交換樹脂に導入し、前記循環水に含まれるイオンを除去する工程と、
前記イオン交換樹脂から有機物除去槽に水を導入し、この有機物除去槽から前記イオン交換樹脂へ水を導出する閉ループを形成する工程と、
この閉ループで浄化水を循環させて前記イオン交換樹脂から前記浄化水に溶出した全有機炭素を前記有機物除去槽において除去する工程とを備えることを特徴とする原子力プラントの水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−96833(P2013−96833A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239787(P2011−239787)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)